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JP5586702B2 - 調合香料の製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、調合香料の製造方法に関する。
近年、各分野の製品において天然物、天然香料等のにおい物質の香気を高度に再現する調合香料(リコンストラクション)が求められている。天然物、天然香料等のにおい物質の香気は、通常、非常に多様なにおいの質を持つ多数の香気成分から成り立っている。リコンストラクションによる調合香料の製造に際しては、これら香気成分のうち、におい物質の香気の特徴を表現するのに特に重要な香気成分をスクリーニングすることが必要となる。
そのようなスクリーニング手法として、ガスクロマトグラフィーオルファクトメトリー法(GC−O法)を用いて、GCにより分離された成分のにおいを人の鼻で嗅ぐことにより、におい物質からその香気成分を同定し、次いでアロマ・エキストラクト・ダイリューション・アナリシス(Aroma Extract Dilution Analysis)法(AEDA法)やチャーム・アナリシス(Charm Analysis)法等を用いて重要香気成分をスクリーニングする手法が知られている。例えば、AEDA法では、同定された香気成分のそれぞれについて濃度を順次希釈し、各希釈試料についてGC−Oによるにおい嗅ぎを繰り返し行う。そして、各成分のにおいが感じられる最大の希釈倍率をフレーバー・ダイリューション・ファクタ(Flavor Dilution Factor)(FDファクタ)と定義し、FDファクタの値が大きいほど、元のにおい物質全体の香気への貢献度の高い成分として同定する。AEDA法は、例えば特許文献1、非特許文献1に説明されている。
リコンストラクションによる調合香料の製造においては、元のにおい物質全体の香気への貢献度の高い成分を、例えば上位30成分というように、製造の手続上混合可能な成分数に応じて選択する。
上記方法により選別された香気成分を混合することにより製造される調合香料は、元のにおい物質の香気に対してある程度の類似性を示すことが、例えば特許文献1、非特許文献2等において確認されている。しかしながら、これら従来の方法で製造された調合香料は、元のにおい物質全体の香気に対する類似性がなお低いものである。
特開2004−325116号公報
川崎通昭、中島基貴、外池光雄著、「におい物質の特性と分析・評価」、フレグランスジャーナル社、2003年5月30日発行、133頁〜135頁 P. Steinhaus, P. Schieberle, J. Agric. Food Chem., 55, 6262-9 (Jun 30, 2007)
本発明者らは、上記従来技術について検討した結果、上記従来技術では、重要香気成分の選別にあたり、香気成分を各成分のにおいの検出限界、すなわちにおいの強度という要素により選別しているだけであり、そのため、選別された重要香気成分の中には、調合香料に対して同一のにおいの質の貢献をしている成分が重複して選定され得るという問題点があることを見いだした。さらには、においの強度が他の成分と比較して強くない成分は、たとえ他の成分と全く異なるにおいの質を有していても、選別段階で排除されるという問題点がある。
したがって、本発明は、製造の手続上制限される構成成分数においても、元のにおい物質の香気を高度に再現し得る調合香料の製造を提供することを目的とする。
本発明者らは、重要香気成分の選別にあたり、分析・同定された香気成分の中からにおいの強度が強い香気成分を選別した後、それら香気成分を、においの質を基準として複数の群(におい質群)に分類し、各におい質群から1つの香気成分を選定することによって、制限される香気成分数においても元のにおい物質のにおいの質の多様性を確保し、ひいては元のにおい物質の香気を高度に再現する調合香料を製造することができることを見いだした。本発明はかかる知見に基づく。
したがって、本発明によれば、におい物質の香気成分を分析・同定する第1の工程と、前記同定された香気成分の中から、においの強度が強い順に複数の香気成分を選別する第2の工程と、前記第2の工程において選別された香気成分をにおいの質を基準として複数のにおい質群に分類する第3の工程と、前記におい質群のそれぞれから1つの香気成分を選定する第4の工程、前記第4の工程で選定された香気成分を調合する第5の工程を含む調合香料の製造方法が提供される。
本発明によれば、従来の構成成分のにおいの強度のみに基づいて重要香気成分を選別して調合した調合香料に比して、元のにおい物質の香気に対しより類似性の高い調合香料を製造することができる。
図1は、視覚的アナログスケールを示す図である。 図2は、1つの香気成分の、基準香気成分に対する類似度プロファイルを示す図。 図3は、類似度プロファイルの結果を多変量解析することにより、クラスタ図である。
本発明の調合香料の製造方法は、調合によって元のにおい物質の香気を再現することを含むいわゆるリコンストラクション技術に属する。
本発明では、まず、におい物質の香気成分を分析・同定する(第1の工程)。におい物質としては、例えば、タバコ、果実類、野菜類、穀物類、茶類、ハーブなどの植物性原料およびそれらの加工品、天然香料類、コーヒー、アルコール飲料等の嗜好飲料類等が挙げられる。これらのうち、好ましいものとしては、タバコ、緑茶、紅茶などの茶葉類、嗜好飲料類が挙げられる。
この第1の工程において、におい物質の香気成分を分析・同定する手法に特に制限はないが、GC−O法を用いることができる。
GC−O法では、ガスクロマトグラフの分離カラムに試料(におい物質)を、移動相としてのキャリヤーガス(例えば、ヘリウムガス)とともに注入する。分離カラムでは、分離カラムに充填された固定相と上記移動相との間での各香気成分の分配係数の差に基づいて香気成分の分離が行われる。分離カラムの出口では、分離された各香気成分が、一方では、質量分析器(MS)へ、他方ではにおい嗅ぎ器具に送られ、MSで香気成分の定性・定量分析が行われ、におい嗅ぎ器具のところで人の嗅覚によって各香気成分のにおいが検出される。こうして、におい物質の香気成分を同定することができる。
次に、上記第1の工程で同定された香気成分についてそのにおい強度を測定し、におい強度が強い順に香気成分を選定する(第2の工程)。
この第2の工程において、におい強度を測定する手法に特に制限はないが、AEDA法を用いることができる。
AEDA法では、上記同定された香気成分のそれぞれについて、例えば、22倍、23倍・・・2n倍、あるいは42、43・・・4n倍というように順次希釈を行い、各希釈試料について上記GC−O法を行なう。香気成分のにおいが感じられる最大の希釈倍率をその香気成分のFDファクタとして記録する。FDファクタが大きい香気成分ほど薄く希釈されてもにおいが検知されるので、元のにおい物質の香気への貢献度が大きい。
こうしてにおい強度を測定し、におい強度が強い順に香気成分を選別する。
次に、上記第2の工程で選別された香気成分をにおいの質を基準として複数のにおい質群(におい質群)に分類する(第3の工程)。
この第3の工程において、香気成分をにおいの質で香気成分を複数のにおい質群に分類する手法に特に制限はないが、例えば、文献R.H. WRIGHT, K.M. MICHELS, Ann NY Acad Sci, 116, 535-551 (Jul 30, 1964)に記載された類似度プロファイルを用いることができる。
より具体的には、上記第2の工程で選別された香気成分の中から、パネラーにより容易ににおい質を記憶することができ、においの質が互いにはっきりと識別できることを基準とし、基準成分をいくつか(例えば、10成分)選定する。次に、上記第2の工程で選別された香気成分(選定した基準成分を含む)と基準成分との間の類似度をパネラーにより、視覚的アナログスケール(VAS)(図1参照)を用いて評価する。このVASは、dissimilar(数値データ上は0として扱う)とsimilar(数値データ上は100として扱う)を両端のディスクリプタとして持つ。
ついで、全パネラーによる類似値を算術平均して得た値を各成分間の類似度とし、類似度プロファイルを作成する。1つの香気成分についての例えば10の基準成分(基準成分1〜10)に対する類似度プロファイルの例を図2に示す。得られた類似度プロファイルの結果を多変量解析することにより、クラスタ図を得る。そして、このクラスタにおいて、はじめに選定した例えば10の基準成分がそれぞれ別のクラスタに入る中で最も群数が少なくなるような位置(図3中点線a)でクラスタを切り分ける。かくして、上記第2の工程で選別された香気成分は、複数のにおい質群(図3では、10のにおい質群A〜J)に分類される。におい質群の数は、特に限定されないが、10より少ない場合は天然香気に対する類似度が低く、一方、30より多い場合は生産性が低下するため、好ましくは10〜30である。
しかる後、各におい質群の中から1つの香気成分を任意に選定する(第4の工程)。
第4の工程において、各におい質群からの香気成分の選定は任意に行うことができるが、好ましくは同一におい質群内の香気成分の全一対組合せについてにおい質距離を側定し、総和におい質距離が最小の成分を選定することにより、元のにおい物質に対してより高い類似度を有する調合香料を製造することができる。より具体的には、同一におい質群内の香気成分の全一対組合せについてにおい質距離を、VAS法を用いて側定する。そして、同一におい質群内の各成分の中でにおい質距離の総和が最小となる成分(言い換えると、同一におい質群内の各成分を空間上に配置したとき、他の全ての成分から比較的近い位置にある、すなわちその空間の中心に最も近い成分)を選定する。
最後に、第4の工程で選定された香気成分を調合して、所望の調合香料を製造する(第5の工程)。
上記第5の工程において、第4の工程で選定された香気成分の調合比は任意に設定することができるが、製造された調合香料においてすべてのにおいの質が均等に知覚されるように、各香気成分を等強度で混合することが好ましい。
以上述べたようにして、元のにおい物質の香気にきわめて類似する香気を発する調合香料を製造することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はそれら実施例により限定されるものではない。
例1
<香気成分の分析および香気成分の選別>
フィルターを除去したキャビンマイルドシガレット8本を、自動喫煙装置を用いて燃焼させた。ケンブリッジフィルターに付着した粗タールを100mLのジエチルエーテルで抽出した後、迅速溶媒抽出装置を用いて常温、常圧で2mLに濃縮し、サンプルとした。
上記サンプルを下記条件にて、GC−Oにより香気成分の定性、定量分析(におい嗅ぎ(ODP)GC/MS分析)を行った。さらに、同条件で、AEDA法により、サンプルを4倍ずつ順次希釈を行い、各香気成分のFDファクタを測定した。FDファクタが大きい上位100成分(成分1〜成分100)を重要香気成分として選定した(下記表1)。
[GC−O分析条件]
装置:Agilent 6890GC/5973MSD
カラム:J & W DB−WAX(0.25μm(フィルム厚)×25mm(内径)×60m(長さ)
ODP:MSスプリット比:1:1
インレットモード(CIS4):Solvent Vent
注入量:1μL
CIS温度:−100℃(0.1分)→昇温(12℃/秒)→300℃(3分)
移動相:へリウムガス
カラム温度:50℃(0分)→昇温(5℃/分)→250℃(20分)
ODPトランスフアーライン温度:280℃
MSトランスファーライン温度:250℃
MSソース温度:230℃
MS四重極温度:150℃。
<におい質群への分類>
表1に示す100成分の中から基準成分として10成分を選定した。基準成分1〜10は、容易ににおい質を記憶することができ、かつにおい質が互いにはっきりと識別できることを基準とし、実験者により選定した。次いで、表1に示す100成分(基準成分1〜10を含む)と基準成分それぞれとの間の類似度を20名のパネラーによる官能評価でVAS法により測定した。用いたVASは、dissimilar(数値データ上は0として扱う)とsimilar(数値データ上は100として扱う)を両端のディスクリプタとして持つものである(図1参照)。20名のパネラーにより得た類似度の算術平均値を各成分間の類似度とした類似度プロファイルを作成した。この類似度プロファイルを図2に示す。類似度プロファイルの結果を多変量解析することにより、図3に示すクラスタ図を得た。このクラスタにおいて、はじめに設定した基準成分1〜10がそれぞれ別のクラスタに入る中で最も群数が少なくなるような位置(図3中点線a)でクラスタを切り分けた。その結果、図3に示す10のにおい質群A〜Jに分類された(表1をも参照)。群A〜Jは、それぞれ、Onion、Sulfur、Gassy、Animal、Roast、Sour、Caramel、Floral、Fruity、Medicinalのにおい質のものであった。
<におい質群からの香気成分の選別および香料の調合>
上記10のにおい質群A〜Jのそれぞれから、1成分ずつを任意に選定し(表1中、○印で示す)、各成分のにおい強度が等強度になる濃度で調合することにより、表1に示すような構成成分を持つ調合香料を得た。
例2
例2で得られた100成分のうち、従来どおり強度の情報のみに基づいて、すなわちFDファクタの上位10成分を選定し(表1中、○印で示す)、各成分のにおい強度が等強度になる濃度で調合することにより、表1に示すような構成成分を持つ調合香料を得た。
Figure 0005586702
例1で得られた調合香料と例2で得られた調合香料のどちらが喫煙時のタバコのにおいに近いと感じるかを20名のパネラーに対して調査した。その結果17名のパネラーが、例1で得られた調合香料の方が、喫煙時のタバコのにおいに近いと感じると評価した。これは1%の危険率で有意差があるということを示している。本発明の方法では、においの質に応じた重要香気成分の選別により、同一の香気成分数においては、従来法と比較して、元のタバコのにおいにより類似性の高い調合香料が製造できることがわかった。
例3
例1と同様の方法により、上記100の重要香気成分を5のにおい質群に分類し(図3中、点線bで切り分け)、各群から1成分ずつ任意に選定し、各成分のにおい強度が等強度になるように、合成香料を調合した。
例4
例1と同様の方法により、上記100の重要香気成分を30のにおい質群に分類し(図3中、点線cで切り分け)、各群から1成分ずつ任意に選定し、各成分のにおい強度が等強度になるように、合成香料を調合した。
例5
上記100の重要香気成分をそのまま100のにおい質群とし、各成分のにおい強度が等強度になるように、合成香料を調合した。
例1および例3〜5の全組合せについて、どちらが喫煙時のタバコのにおいに近いと感じるかを20名のパネラーに対して調査した。その結果を表2に示す。
表2において、各記号は、以下の意味を持つ。
+:危険率5%で有意に選ばれた;++:危険率1%で有意に選ばれた;−:危険率5%で有意に選ばれなかった;−−:危険率1%で有意に選ばれなかった;NS:有意差なし。
におい質群の数が増えるほど、より喫煙時のタバコのにおいに近づくことがわかった。一方で、におい質群の数が増加するほど、調合香料の生産性は低下した。類似度と、生産性およびそれらの総合評価を表3に示す。表3からわかるように、におい質群の数が10〜30の範囲では、少なくとも例2以上の喫煙時のタバコのにおいに対する類似度を示し、生産性も十分確保されていた。
なお、表3において、類似度の評価基準は以下の通りである。
◎:例1に対して有意に類似度が高い;○:例1と同等の類似度を有する;×:例1に対して有意に類似度が低い。
また、表3において、生産性の評価基準は、以下の通りである。
◎:手作業により容易に調合ができる;○:手作業による調合は可能であるが、一定の時間を要する;×:手作業による調合には膨大な時間を要する;
さらに、表3において、総合評価基準は以下の通りである。
○:再現香料の構成におい質群の数として適している;×:再現香料の構成におい質群の数として適していない。
Figure 0005586702
Figure 0005586702
例6
例1において、におい質群への分類後、同一におい質群内の成分の全一対組合せについてのにおい質距離を、VAS法を用いて側定した。そして、同一におい質群内の各成分の中でにおい質距離の総和が最小となる成分を選定し、これらを等強度になる濃度で調合することにより合成香料を得た。
例1と例6のどちらが喫煙時のタバコのにおいに近いと感じるかを20名のパネラーに対して調査した。その結果、15名のパネラーが、例6で得られた調合香料の方が、喫煙時のタバコのにおいに近いと感じると評価した。これは5%の危険率で有意差があるということを示している。各におい質群から選別する成分は、任意に選別するよりも、各におい質群内の中心に位置する成分を選別する方が、より喫煙時のタバコのにおいに近づくことがわかった。
例7
マイルドセブン・ワンシガレットのタバコ刻部に例6で得られた調合香料10μLをマイクロシリンジにより添加したシガレットを作製し、通常のマイルドセブン・ワンシガレットとどちらが喫煙時のタバコのにおいが強いと感じるかを20名のパネラーに対して喫煙評価を行った。その結果、18名のパネラーが、例6で得られた調合香料を添加したシガレットの方が、喫煙時のタバコのにおいが強いと感じると評価した。これは1%の危険率で有意差があるということを示している。本発明の方法により作製した調合香料を添加することにより、喫煙時のタバコのにおいを増強できることがわかった。

Claims (3)

  1. におい物質の香気成分を分析・同定する第1の工程と、前記同定された香気成分の中から、においの強度が強い順に複数の香気成分を選別する第2の工程と、前記第2の工程において選別された香気成分をにおいの質を基準として複数のにおい質群に分類する第3の工程と、前記におい質群のそれぞれから1つの香気成分を選定する第4の工程、前記第4の工程で選定された香気成分を調合する第5の工程を含む調合香料の製造方法。
  2. 前記におい質群は、10〜30の群からなる請求項1に記載の方法。
  3. 前記第4の工程において、同一におい質群内の香気成分の全一対組合せについてのにおい質距離を側定し、そして同一におい質群内の各成分の中でにおい質距離の総和が最小となる成分を選定する請求項1または2に記載の方法。
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