以下、本発明に係る実施形態の津波防護システムについて、図面を参照して具体的に説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。ここで説明する下記の実施形態はいずれも、海岸付近に設置されているプラントの一例をとりあげて説明する。
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る津波防護システムの第1の実施形態について、図1ないし図8を参照して説明する。
はじめに、図1および図2を用いて第1の実施形態を説明する。ここで、図1は第1の実施形態の津波防護システムを適用するプラント全体の構成例を示す立面図であり、図2は第1の実施形態の津波防護システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態の津波防護システムは、一または複数の建屋、設備、設備の構造およびこれらを防護するための防護設備を含む施設を有するプラントを津波から防護する。そのために、本実施形態の津波防護システムでは、津波情報に基づいて、当該プラントに到達する津波高さを予測または当該情報を受信して、プラント内のエリアにおける浸水エリアを予測して、防護装置を起動する信号を発信する。
プラント内では、数々の施設がその立地する場所(立地条件)、施設の種類・形態などによって、予めエリアとして区分されて管理される。例えば、以下に説明するような、施設が立地する場所の標高によって、プラント内をエリアとして区分する。
例えば、図1に示すプラントは海岸線近郊に立地している。プラントには、図1に示すように、標高ごとに区分された複数のエリアが存在する。複数のエリアは、例えば標高h1に位置するエリアA、標高h2に位置するエリアB、標高h3に位置するエリアC、標高h4に位置するエリアDなどである。
また、図1に示すように、防波堤13は、例えばプラント近郊の沿岸付近に設けられ、その防波堤13の高さは満潮における海水面(例えば、標高h0)よりも高く、標高h1までの津波等に対して防波できるように設けられている。
図1に示すプラントには、プラント内のエリアごとに、1または複数の施設があり、第1の実施形態の津波防護システムでは、例えば施設の立地位置、立地場所の標高、建屋の高さ、地下構造物の地下深さ、エリア間をまたぐ地中配管などを含む施設情報が、予め記憶装置(施設情報データベース21)に格納されている。
本実施形態の津波防護システムでは、エリアの区分は、図1に示すように、各施設が設置されている標高に基づいて予め定められる。また、各施設内に地下構造物が存在する場合には、地下構造物を通じた浸水経路も考慮するために、施設ごとに、浸水経路となる可能性の構造物を予めデータとして、後述する施設情報データベース21に登録する。なお、エリアの区分は、図1において、説明を簡単化するために、プラントの縦断面に対して1つの基準の標高に1つのエリアを示す例で示している。
具体的には、第1の実施形態の津波防護システムは、図2に示すように、津波情報受信部1、施設情報データベース21、防護装置情報データベース22、浸水エリア判定部2、判定結果処理部3、防護装置制御部4、表示装置5および警報装置6を備えている。
本実施形態の津波防護システムは、例えば発電所等のプラントの周辺で地震が発生した場合や、大規模な地震が発生した場合に、地震に起因する津波の高さや到達時刻などを含む津波情報を必要とする。
津波情報受信部1は、少なくとも津波の予測高さの情報を含む津波情報をプラントの外部のシステムから受信する。なお、津波情報は、プラント内外の計器等から収集される計測データを用いてもよく、また、それらの情報や計測データを組み合わせて予測する手段等から発信されるデータであってもよい。
施設情報データベース21は、プラント内の施設を標高および地理的範囲を特定するエリアに予め区分し、区分したエリアごとに、エリアが立地する標高、施設を識別するための施設ID(Identification)、地下構造物などの有無を示してそれを識別するための地下構造物ID、この地下構造物などがどの施設と経路を通じているかを識別するための連絡側施設ID、地下構造物がある場合にそのエリアからの地下深さなどのデータを含む施設情報を格納する。これらの情報は、予め用意されて施設情報データベース21に格納される。
なお、施設ID、地下構造物ID、連絡側施設IDは、施設識別情報であり、各々の施設が識別可能となるように予めデータが付与される。この施設識別情報は、例えば第1の施設識別情報、第2の施設識別情報のように区分される。第1の施設識別情報は、例えば建屋などの対象エリア内の標高以上の施設に付与されるID(施設IDとする)である。また、第2の施設識別情報は、例えば第1の施設識別情報以外の対象エリア内の標高より低い地下構造物に付与されるID(地下構造物IDとする)である。連絡側施設IDは、第1の施設識別情報または第2の施設識別情報とされる。すなわち、施設IDまたは地下構造物IDである。
以上のように、施設情報データベース21は、エリアごとに、標高、第1の施設識別情報、第2の施設識別情報などを含む情報を格納している。
本実施形態の津波防護システムでは、施設情報データベース21に格納された施設情報を用いて、エリアの区分、その標高、エリア内の施設(建屋、地下構造物、地下通路など)、エリア内または複数のエリア間における浸水経路となる構造についての情報を取得することができる。
防護装置情報データベース22は、エリアおよび施設に設けられた防護装置の有無などについての情報を含む防護装置情報を格納する。これらの情報は、予め用意されて防護装置情報データベース22に格納される。
図2に示す施設情報データベース21および防護装置情報データベース22のデータベース構成例について、図3に施設情報データベース21Aとする一例を示し、図4に防護装置情報データベース22Aとする一例を示す。
なお、図3に示す施設情報データベース21Aは、図1に示すプラントについての施設情報が予め格納されたものである。また、図4に示す防護装置情報データベース22Aは、図1に示すプラントについての防護装置情報が予め格納されたものである。
以下、図1および図2を参照しながら、図3および図4に示すデータベースの内容について説明する。
図3に示す施設情報データベース21Aには、エリアの区分ごとに、その標高、エリア内の施設(建屋、地下構造物、地下通路など)を示す施設ID、エリア内または複数のエリア間における浸水経路となる地下構造物ID、地下構造物などの連絡(対向)側となる連絡側施設ID、地下構造物の地下深さ(そのエリアの地上からの深さ)などを含む施設情報が格納されている。
津波防護システムにおいて、図1に示すように、プラント内を標高ごとに予め区分する。例えば、図1に示すプラントは、標高h1、h2、h3およびh4に、それぞれの標高の位置にあるエリアとして、エリアA、エリアB、エリアCおよびエリアDのように区分されている。なお、図1では、標高h1<標高h2<標高h3<標高h4の関係にある。
図1に示すように、プラント内で最も低い標高h1に位置するエリアAには、施設9がある。その施設9は、建屋91および建屋91下にある地下構造物93、建屋92を有している。
同じく、標高h2に位置するエリアBには、施設10がある。その施設10は、建屋101、建屋102および建屋102下に設けられる地下構造物104、建屋103を有している。
また、標高h3に位置するエリアCには、施設11がある。その施設11は、建屋111および建屋112を有している。さらに、図1に示すプラント内では、最も高台にある標高h4に位置するエリアDには、施設12があり、施設12は建屋121を有している。
これらの施設情報は、図3に示すように、施設の建屋や設備などごとに、それぞれが識別可能なように予め施設IDが付与される。例えば、図1に示すエリアAの建屋91には施設ID=施設A1、同じく建屋92には施設ID=施設A2のように第1の施設識別情報が予め付与されている。
なお、これらの施設等の識別情報は、例えば本実施形態の津波防護システム以外の外部システムに備えられる建築設計などのデータベースのデータと関連付けられて、利用されてもよい。その場合には、例えば建屋の高さ、建屋の階数等に応じて、後述するような浸水の危険度を判定することができる。
本津波防護システムでは、これらの施設IDにより、プラント内の各エリアに属する各施設の建屋や設備などを識別可能に判断することができる。
図3に示す施設情報データベース21Aでは、例えば図1に示す地下構造物93に地下構造物ID=地下UA1のように第2の施設識別情報が付与されており、建屋91の施設ID=施設A1の第1の施設識別情報と所定の関連付けがなされて付与されている。同様に、地下構造物104には地下UB2のように第2の施設識別情報が付与されている。
また、浸水エリア判定部2は、施設情報データベース21Aの「連絡側施設ID」の情報(第1または第2の施設識別情報)により、地下構造物93と地下構造物104とは、地下連絡路94を介して浸水する可能性のある浸水経路であると判断することができる。これらの地下構造物の「連絡側施設ID」には、エリアが区分された標高よりも低い位置(標高)にある外部の構造物、外部とエリアとの間または他のエリアとの間をまたぐ排水路や給水路なども対象とされる。
図4に示す防護装置情報データベース22Aは、エリアの区分ごとに、エリア内の施設を示す施設IDや地下構造物ID、その施設に設けられている防護装置についての情報を含む防護装置情報が格納されている。
例えば、図4に示すように、エリアAの施設ID「施設A1」に対応する施設は、防護装置「門扉a1」を有するものとして予め登録されている。また、エリアAの施設ID「地下UA1」に対応する施設は、防護装置「防水蓋ua1」を有するものとして予め登録されている。その他の施設ID(地下構造物IDも含む)に対応する施設についても、同様に、図4に示すとおりに予め登録される。
浸水エリア判定部2は、津波情報受信部1が受信した津波情報から津波の予測高さを取得して、施設情報データベース21に格納された施設情報に基づいて、津波の予測高さに対する浸水エリアおよびプラント内の施設などの浸水の危険度を判定する。
以下、図5を参照しながら、第1の実施形態の津波防護システムの浸水エリア判定処理の一例を説明する。なお、図5では、津波の予測高さが標高h1以上、標高h2より低い場合における、浸水エリア判定処理の一例を示している。
はじめに、浸水エリア判定部2は、津波情報および施設情報に基づいて、プラント内の浸水エリアを判定する。具体的には、浸水エリア判定部2は、津波情報から到達する津波の高さを予測しまたは予測された津波の高さを取得し、これを津波の予測高さとして施設情報から以下のように浸水エリアを判定する。なお、防護対象となるプラントは、図1に示すプラントであるとする。
図1において、津波情報から予測される津波高さが標高h1以上、標高h2より低い場合に、浸水エリア判定部2は、施設情報データベース21Aに基づき、標高h1に位置するエリアA内の施設9にある建屋91(施設ID=施設A1)、建屋92(同じく施設A2)が浸水すると判定する。
例えば、津波情報から得られたプラントに到達する津波の予測高さが標高h1以上かつ標高h2よりも低い場合に、図5に示すように、浸水エリア判定部2は、最初に、施設情報データベース21Aに格納された施設情報から、浸水エリアとしてエリアAと判定する。
次に、浸水エリア判定部2は、判定した浸水エリアについて、エリア内の施設、施設内の地下構造物を通じた浸水経路の情報を含む施設情報に基づいて、浸水の危険度を判定する。
具体的には、浸水エリア判定部2は、施設情報データベース21Aに格納された施設情報に基づき、浸水エリアと判定したエリアAについて浸水経路となる地下構造物が有るか否か判定する。浸水エリア判定部2は、参照した施設ID=施設A1から施設ID=地下UA1である地下構造物93を特定する。また、浸水エリア判定部2は、同様に、特定した地下構造物93について浸水経路となる他方側として、連絡側施設ID=地下UB2(地下構造物104)であると特定する。同様に、浸水エリア判定部2は、判定した浸水エリア内の施設9について、異なるエリアの施設間を経由する浸水経路を探索し、その他の施設の浸水の危険度を判定する。
浸水エリア判定部2は、図5に示すように、施設情報データベース21Aに格納された施設情報を参照することにより、この浸水経路を判断する。また、浸水エリア判定部2は、地下構造物93の地下深さZ1であり、地下構造物104の地下深さZ2であることを、同じく施設情報データベース21Aに格納された施設情報を参照することにより判断する。
例えば、Z2>=h2−h1+Z1のような関係にある場合に、浸水エリア判定部2は、地下構造物104がどの程度の浸水の危険度を有するかを判定することができる。これより、浸水エリア判定部2は、地下構造物104が浸水の危険度を有すると判定する。
以上のように、浸水エリア判定部2は、エリアAが浸水し、また、エリアBについても例えば一部浸水(施設B2:「建屋102」)の可能性があると浸水の危険度を判定する。
以上により、浸水エリア判定部2は、地下構造物104について、浸水経路(地下連絡路94)を介して浸水の危険度を有すると判断する。すなわち、図1に示すエリアAの施設9よりも標高の高いエリアBの施設10であっても、エリアBがエリアAの建屋91の地下構造物93を通じて海水が浸入する浸水経路のある場合、浸水エリア判定部2は、エリアBの施設10における地下構造物104が浸水の危険度としてエリアAと同程度の危険度を判定する。その危険度を、例えば半分浸水、一部浸水、水没等としてその危険度をレベル分けしてもよい。
次に、浸水エリア判定部2は、判定した浸水の危険度に基づき、防護装置情報データベース22Aに格納された防護装置情報を参照して、エリアAの施設ID=施設A1、地下UA1および施設A2に対応する防護装置、および、地下UB2に対応する防護装置を起動対象として特定する。すなわち、浸水エリア判定部2は、図5に示すように、例えば門扉a1、防水蓋ua1、防水扉a2、防水蓋ub2を防護装置の起動対象として特定する。
以上、図1および図5の具体例で説明したように、浸水エリア判定部2は、津波情報を受信すると、施設情報データベース21Aに格納された施設情報を用いて浸水エリア(浸水の危険度)を判定する。さらに、浸水エリア判定部2は、この判定結果および防護装置情報データベース22Aに格納された防護装置情報を用いて、津波から防護すべき施設の防護装置(起動対象)を特定する。そして、浸水エリア判定部2は、この判定結果を判定結果処理部3に通知する。
判定結果処理部3は、浸水エリア判定部2による判定結果を、表示装置5、警報装置6などの出力装置や防護装置制御部4等が受信可能なデータに変換し、当該変換したデータをそれぞれの装置に送信する。
例えば、判定結果処理部3は、プラントに到達する津波の高さおよび到達時刻についての予測情報、津波の高さに応じて判定された浸水エリア、および防護装置の実行情況について、表示情報または音声情報として、出力装置に出力する。
なお、図2の構成例では、判定結果処理部3を介して、表示装置5、警報装置6などの出力装置や防護装置制御部4等が受信可能なデータに変換する構成としているが、浸水エリア判定部2が判定結果処理部3の機能部を有する構成であってもよい。
防護装置制御部4は、判定結果処理部3から送られた起動対象の防護装置の情報に基づいて、当該防護装置に対して起動命令を含む制御情報を送信する。このために、防護装置制御部4と、各防護装置との間には、無線、有線などの通信可能な通信手段を有している。防護装置制御部4は、プラント内に設置された代替の対象設備の代替設備への切り替え手段を有していてもよい。この場合には、浸水エリア判定部2は、浸水エリア内に代替の対象設備を有するエリアがあると判定した場合に、防護装置制御部4に対して代替設備への切り替えを指示する。
以上説明したように、浸水エリア判定部2は、津波情報および施設情報に基づいて、プラントに到達する津波の予測高さによって、浸水する可能性が高い浸水エリアおよび施設の浸水の危険度を判定する。これらの判定された浸水エリア等の情報は、防護装置制御部4を介して、表示装置5や警報装置6によってプラントの保守員に通知される。
さらに、浸水エリア判定部2は、これらの浸水エリア等の判定結果および防護装置情報データベース22に格納された防護装置情報に基づいて、起動する防護装置を特定する。
表示装置5は、津波防護システムで扱う津波情報、浸水エリア判定結果、作動させる防護装置などを含む情報を表示するための出力装置である。例えば、液晶モニタ、CRTディスプレイ、大型パネルなどであり、この表示装置5を介して、保守員が津波防護システムの運用状況を確認することができる。
警報装置6は、津波情報、プラント内の浸水エリアの判定結果等の緊急情報の内容を、音声や警報音を介して、保守員などに周知徹底させるための出力装置である。
また、津波防護システムの図示しない構成として、保守員が前述した出力情報を確認するための操作手段として、キーボード、マウス、タッチパネル等を有してもよい。また、通信手段(無線、有線)等を介して、外部から発信される津波情報を受信する構成や、前述した出力情報を外部に転送する構成を備えてもよい。
図示しない防護装置は、浸水エリア内の施設を津波から防護または浸水等の被害を抑えるための浸水防止装置などである。防護装置は、防護装置制御部4から制御信号を受信すると、制御信号に基づいてプラント内のエリアごとに設けられる施設や設備への浸水の防止を行う。例えば、浸水防止装置は、建屋の出入口や搬入口において海水の流入を遮断しかつ津波の波力や漂流物の衝撃力に耐えうるように設けられた防水扉、施設内の通気口や給排水口や地下構造物への侵入口を遮断する防水蓋を起動する。また、例えば海水の侵入口付近の空間を区切って、区切られた空間内の気圧を高めることにより、海水の流入を防ぐ装置であってもよい。
また、防護装置には、浸水エリア内に設置された設備の一時的な代替能力を有する代替設備への系統切替装置を含んでもよい。また、このような代替設備は、津波の被害が及ばない高台に用意されて、津波襲来時またはその前には系統切替装置によって、例えば代替設備の系統へ切り替えられる。
具体的には、プラント内には、例えば常用電源設備と非常用電源設備とを有する。例えば、図1に示すプラント内では、常用電源設備はエリアB内の建屋102にあり、非常用電源設備はエリアD内の建屋121にあるものとする。
代替設備への系統切替装置とは、地震後にプラントを停止させるために連続して運転する必要がある設備を、一時的に同じ働きをする代替設備に系統を切替えるものである。例えば、標高の低いエリアBの建屋102にある常用電源設備が、浸水防止装置を作動させたために外部と遮断されて使用できなくなる場合に、代替設備への系統切替装置が、プラント内の電源系統を高台(エリアD)の建屋121に設置された非常用電源設備に系統を切替える。
なお、本実施形態の津波防護システムでは、図1において、防護装置を備える構成としていないが、津波防護システムの他の実施形態として、防護装置を備える構成であってもよい。本実施形態の津波防護システムは、プラント内で津波から最も安全な場所、例えば高台(エリアD)に備えられてよく、また、プラント外に備えられてもよい。また、プラント内とプラント外に備えられて、冗長化されたシステムとして運用されてもよい。
次に、図6ないし図8に、第1の実施形態の津波防護システムにおける津波防護処理フローを示す。特に、図6は津波防護処理フローの全体であり、図7および図8は浸水エリア判定処理フローである。はじめに、図6に示す津波防護処理フローの内容について、図2を参照しながら説明する。
津波防護処理が開始されると、津波情報受信部1は、外部システムから津波情報を受信したか否か確認する(ステップS1)。津波情報を受信していない場合には(ステップS1のNo)、継続して受信の状況を確認する。
一方、津波情報を受信した場合には(ステップS1のYes)、津波情報受信部1は津波情報を取得する(ステップS2)。
続いて、浸水エリア判定部2は、津波情報受信部1から受信した津波情報を受けると、この津波情報および施設情報データベース21に格納された施設情報に基づいて、プラント内の浸水エリアを判定する(ステップS3)。なお、ステップS3の詳細な処理については、後述する図6に示す処理フローの説明で行う。
続いて、浸水エリア判定部2は、判定結果をもとに、防護装置情報データベース22に格納された防護装置に関する情報から起動する防護装置を特定する(ステップS4)。
判定結果処理部3は、この浸水エリア判定部2の特定に従って、起動する防護装置を決定し(ステップS5のYes)、判定結果処理部3は起動対象の防護装置にその旨の制御指令(起動指示)を発信する(ステップS6)。一方、起動の必要がない防護装置に対しては(ステップS5のNo)、制御指令を発信しないで、判定結果処理部3はステップS7へ処理を進める。
判定結果処理部3は、浸水エリアの判定結果および起動する防護装置についての情報を表示装置5と警報装置6などに出力する(ステップS7)。
以降は、ステップS1〜ステップS7の処理が繰り返される。
次に、図7および図8に示す浸水エリア判定処理フローの内容について、図2ないし図4を参照しながら説明する。
図6に示すステップS3の浸水エリア判定処理が開始されると、浸水エリア判定部2は、津波情報受信部1から取得した津波情報に基づいて、プラントに到達する津波の高さを予測する(ステップS11)。
次に、浸水エリア判定部2は、施設情報データベース21に格納された施設情報、および防護装置情報データベース22に格納された防護装置情報を取得する(ステップS12)。
予測した津波の高さが標高h1よりも低い場合(ステップS13のYes)、浸水エリア判定部2は、プラント内の浸水エリアはないと判断して、予め定めた通常の地震対応処理を実施する(ステップS14)。このステップS14の後、処理をステップS112に進める。一方、予測した津波の高さが標高h1以上の場合(ステップS13のNo)、さらに、標高h2よりも低いか否か判定する(ステップS15)。
予測した津波の高さが標高h2より小さい場合(ステップS15のYes)、浸水エリア判定部2は、プラント内の浸水エリアはエリアAであると判断して、エリアAの防護設定を行う(ステップS16)。このステップS16の後、処理をステップS112に進める。一方、予測した津波の高さが標高h2以上の場合(ステップS15のNo)、さらに、標高h3よりも低いか否か判定する(ステップS17)。
予測した津波の高さが標高h3より小さい場合(ステップS17のYes)、浸水エリア判定部2は、プラント内の浸水エリアはエリアAおよびBであると判断して、エリアAおよびBの防護設定を行う(ステップS18)。このステップS18の後、処理がステップS112に進められる。一方、予測した津波の高さが標高h3以上の場合(ステップS17のNo)、さらに、浸水エリア判定部2は、標高h4よりも低いか否か判定する(ステップS19)。
予測した津波の高さが標高h4より小さい場合(ステップS19のYes)、浸水エリア判定部2は、プラント内の浸水エリアはエリアA、BおよびCであると判断して、エリアA、BおよびCの防護設定を行う(ステップS110)。このステップS110の後、処理がステップS112に進められる。
一方、予測した津波の高さが標高h4以上の場合(ステップS19のNo)、浸水エリア判定部2は、プラント内の浸水エリアが全てのエリアであると判断して最緊急処理設定を行い、処理をステップS112に進める。
浸水エリア判定部2は、さらに、この浸水エリアについて、施設情報データベース21から施設情報の地下構造物等のデータを取得し(ステップS112)、地下構造物等が存在するか否か確認する(ステップS113)。
浸水エリア判定部2は、浸水エリアについて、地下構造物等が存在すると確認した場合に(ステップS113のYes)、浸水エリア判定部2は、エリア間をまたぎ、かつ、地下構造物の深さ等の構造条件を判断して、その浸水経路等を介して浸水の可能性があると判断した施設を、さらに防護対象の施設に加える(ステップS114)。一方、浸水エリア判定部2は、浸水エリアについて、地下構造物等が存在しないと確認した場合に(ステップS113のNo)、処理をステップS115に進める。
最終的に、浸水エリア判定部2は、これらの結果(防護対象)および防護装置情報データベース22に格納された防護装置情報に基づいて、起動する防護装置を特定する(ステップS115)。この処理を終了すると、図6に示すステップS3の処理が終了することとなる。
例えば、発電所のような大規模なプラントにおいては、津波防護すべき箇所は多岐に渡るため、所員による手動操作のみでは津波の襲来に間に合わない可能性があり、また、常時行う操作でないために操作漏れも発生し易い。前述の津波防護操作を自動的に行うことにより、津波防護体制を整えるまでの時間を短縮することが可能となる。
本実施形態によれば、予め区分されたエリアに対して、津波情報に基づいて、防護装置を起動することができる。また、津波防護操作の一部または全てを自動化して時間を短縮することにより、地震発生から津波到達までの間に効率的にプラントの津波防護体制を整えることができる。これにより、プラントへの津波被害を極力抑えて、プラントを機能維持することができ、または、重大事故に至ることを防止することができる。
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る津波防護システムの第2の実施形態を図9および図10を用いて説明する。なお、図9および図10において、図1および図2に示す第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。ここで、図9は第2の実施形態の津波防護システムを適用するプラント全体の構成例を示す立面図であり、図10は第2の実施形態の津波防護システムの構成を示すブロック図である。
図9に示すプラントでは、図1に示すプラントと同様な建屋などを有する施設9ないし施設12であり、さらに、プラント周辺およびプラント内に、津波を監視するための様々な計測器、監視装置等を備えている。
図9に示すように、プラント沿岸付近には、津波検知計16、潮位計14を設けている。また、鉄塔などに据え付けられて遠方の海水の状態を監視する監視カメラを備えている画像処理部17、各施設の建屋、構造物等の床面などに設けられる複数の水位計15などである。
本実施形態の津波防護システムは、図10に示すように、津波情報受信部1、浸水エリア判定部2、施設情報データベース21、防護装置情報データベース22、判定結果処理部3、防護装置制御部4、表示装置5および警報装置6の図1と同等な構成に加えて、さらに、前述した図9に示す潮位計14、水位計15、津波検知計16および画像処理部17、到達津波予測部7などを備えている。
津波情報は、外部から得られる緊急地震速報および津波警報、プラント敷地内およびプラント周辺地域に設置された潮位計14からの検出信号、プラント内の各種設備に設置された海水の浸入を検知する水位計15からの検出信号、およびプラント周辺の沖合に設置された複数の津波検知計16から発信される信号などを含む。
また、津波情報は、プラント内およびプラント周辺地域に設置されたカメラを備える画像処理部17が所定の処理を施して得られる情報、または前述の複数の検出信号を含む組み合わせた情報であってもよい。画像処理部17が所定の処理を施して得られる情報とは、例えば、プラント内およびプラント周辺地域に設置されプラント近辺の海洋の様子を撮影する監視カメラの画像に、所定の画像処理を施して得られる津波の高さを推定する画像処理などである。
また、浸水エリアの判定に用いる津波の予測高さは、緊急地震速報や津波警報などの外部システム(例えば気象庁のシステム)から送られる外部情報を用いるものであってもよい。あるいは、プラント周辺の海岸に設置された潮位計14、プラント周辺の沖合に設置された1または複数個の津波検知計16などから発信される測定信号を用いてもよい。
これらの情報は、津波情報受信部1を介して到達津波予測部7に送られ、到達津波予測部7は、これらの情報に基づいて、津波の予測高さおよび予測到達時刻を判定する。
到達津波予測部7は、津波情報に基づいてプラントに到達する津波の予測高さを求め、求めた津波の予測高さを浸水エリア判定部2の浸水エリアの判定の際に使用させる。
到達津波予測部7は、津波情報から得られる津波の予測高さに、例えば所定の係数に応じて割増した津波の高さを求めて、この求めた値を第2の津波の予測高さとしてもよい。また、第2の津波の予測高さは、地震の震度や、震源地からの距離などに応じて求められてもよい。これらは、例えば経験的に求められた値を用いてもよいし、シミュレーション等で計算された値を用いてもよい。
到達津波予測部7は、津波情報に基づいて求めた津波の予測高さに対して、前述したような所定の演算等を施して第2の津波の予測高さを求め、この求めた第2の津波の予測高さを浸水エリア判定部2の浸水エリアの判定の際に使用させる。
浸水エリア判定部2は、到達津波予測部7から第2の津波の予測高さを受けて、第2の浸水エリアを判定して、起動する防護装置を特定する。
第2の実施形態の津波防護システムは、プラントに到達する津波の予測高さ、津波の予測高さに応じて判定された浸水エリア、プラント内の各設備における直近の浸水情況、および防護装置の実行情況について、表示情報または音声情報として、表示装置5および警報装置6などの出力装置に出力する。
第2の実施形態の津波防護システムによれば、プラントの浸水エリアの判定に用いる津波の予測高さを、より安全サイドで用いることができる。さらに、第2の実施形態の津波防護システムにおいて、津波の高さや、現に津波がプラントの近くに到達またはプラント内に到達している場合に、さらに、予測した津波の高さを修正して対応することが可能となる。
本実施形態の津波防護システムでは、例えば大地震が発生した場合など、到達津波予測部7は、これらの津波情報を用いて、プラントに到来する津波の予測高さをより安全サイドの観点から推定してもよい。具体的には、津波情報から得られる津波の予測高さを任意に割増(係数倍)した第2の津波の予測高さとして、プラントの浸水エリアを判定することにより、より安全サイドの津波防護体制をとることができる。
また、前述の津波検知計16が作動しなかった場合にも、プラント内の各施設に浸水を検知する水位計15などのセンサを設けていることにより、これらセンサから検出された浸水検知信号を用いる。これらセンサの検出信号に基づいて、浸水検知された施設や、当該施設の標高より所定の高さだけ高い位置に設置された施設の浸水防止装置を対象に、実際に到来した津波の高さが津波の予測高さを超えた場合に、再度津波の予測高さを修正し、浸水エリアを再判定することができる。これにより、さらなる浸水エリアに対する防護手段をとることができ、被害の拡大を防止することが可能となる。
これにより、当初の津波の予測高さを超えた津波が実際に到来しても、瞬時に津波の予測高さを修正し、修正した津波の予測高さで、防護すべき防護範囲を早期に修正して、被害の拡大を抑えることが可能となる。
また、本実施形態の津波防護システムでは、表示装置5や警報装置6でプラントの保守員に通知する構成である。これにより、津波襲来前の浸水エリアの予測情報、津波襲来時の各施設の浸水情況を常に把握することができるため、プラント内の保守員は、早期にプラントの被害状況を予測および把握することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、発電所などのプラント以外でも同様の津波防災対策設備を有するシステムに適用できる。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。