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JP5633489B2 - Ni基合金およびNi基合金の製造方法 - Google Patents
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JP5633489B2 - Ni基合金およびNi基合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温構造材料(耐熱材料)として使用される、良好な靱性を備えたNi基合金に関する。また、本発明は、良好な靱性を備えたNi基合金の製造方法に関する。
別に記載がない限り、本明細書における用語の定義は次のとおりである。
「%」:対象物に含まれる各成分の質量百分率(質量%)を表す。
「Cr析出量」:本発明のNi基合金の製造工程において、熱間加工後または熱間加工に加えて冷間加工を行った後で熱処理を施す際に、主として結晶粒界に析出するCrの析出物(主として、炭化物)中のCr量の当該Ni基合金に対する比率(質量%:質量百分率表示)をいう。この「Cr析出量」は、熱処理を施した後のNi基合金を電解して抽出残渣を得て、この抽出残渣を定量分析することにより求められる。
火力発電用ボイラ、蒸気タービンおよびガスタービン、化学工業用各種反応装置、原子力プラント等において使用される耐熱材料には、高温強度(引張強さ、クリープ強さ)が高く、高温耐酸化性・耐食性に優れていることに加え、延性、靱性も良好であることが要求される。耐熱材料としては、実際の使用環境の温度(使用温度)に応じて、Cr−Mo系低合金鋼、Cr量が9%以上のフェライト系およびマルテンサイト系ステンレス鋼、18Cr−8NiにMo、Nb、Ti等の合金元素を添加し、またはさらにCrやNiを増量したオーステナイト系ステンレス鋼、Niを主成分とし、Cr量を増した高Cr高Ni合金、Feをほとんど含まないNi基合金等が使用されている。
Ni基合金は、耐用温度の高い耐熱材料として、従来から火力発電プラントやガスタービンの高温部、原子力プラントの蒸気発生器等において使用されてきた。
Ni基合金のうちでNi−Cr−Co合金では、製造の過程で、耐熱材料に要求される重要な特性の一つである靭性(シャルピー衝撃試験における20℃の衝撃値、以下、「20℃シャルピー衝撃値」、または単に「20℃衝撃値」ともいう)が低くなる場合があった。
Ni基合金は、合金管の場合、例えば、下記の各工程を経ることにより製造できる。
(1)電気炉により溶製して得られたNi基合金塊に、均熱処理、分塊(鍛造)、熱間での圧延または押出し加工を施してNi基合金素管(Ni基合金素材)とし、
(2)必要に応じて、合金素管(合金素材)に引き抜きまたは圧延による冷間加工を施し、
(3)さらに合金素管(合金素材)に溶体化熱処理およびスケール除去のための酸洗等を施してNi基合金管(成品)とする。
Ni基合金であるNi−Cr−Co合金に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば特許文献1〜7がある。特許文献1〜7では、Ni−Cr−Co合金において、Moおよび/またはWを含有させて固溶強化を図り、さらにAlおよびTiを含有させて金属間化合物であるγ‘相、具体的にはNi3(Al,Ti)の析出強化を活用することにより、過酷な温度環境下で使用可能としたNi−Cr−Co合金が開示されている。
しかし、上記特許文献1〜7に開示された組成を有するNi基合金からなる合金管(具体的な例をあげると、Crを22.2%、Coを11.9%およびMoを9.1%含有し、C、Si、Mn、Ti、Nb、AlおよびBが特定され、残部がNiおよび不純物であるNi基合金管)では、溶体化熱処理後に靭性(20℃シャルピー衝撃値)が低下する場合がある。靱性の低下は、後に詳述するように、溶体化熱処理の際にCr炭化物が粒界に析出したことによるものである。同様の靭性低下は、Crを20.0%、Coを19.8%およびMoを5.9%含有し、C、Si、Mn、Ti、AlおよびBが特定され、残部がNiおよび不純物であるNi基合金からなる合金素管を、溶体化熱処理した材料でも確認された。
特開昭51−84727号公報 特開平7−150277号公報 特開平9−157779号公報 特表2002−518599号公報 特開2010−150593号公報 国際公開WO2010/038826号公報 国際公開WO2011/071054号公報
前述の通り、耐熱材料として使用されるNi基合金では、製造の過程で靭性(20℃シャルピー衝撃値)が低くなる場合があった。前記特許文献1〜7で開示された組成を有するNi基合金管でも溶体化熱処理後に靭性が低下する場合があることが確認された。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、靭性(20℃シャルピー衝撃値)が低下することなく、良好な靱性を備えたNi基合金およびNi基合金の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:19〜25%、Mo+0.5W:5.5〜10%、Co:9〜21%、Ti:0.2〜2.5%、Al:0.3〜1.5%およびB:0.001〜0.005%を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金であって、当該Ni基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3質量%以下であることを特徴とするNi基合金。
(2)Niの一部に代えて、質量%で、下記の第1グループから第3グループまでのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴する上記(1)に記載のNi基合金。
第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta:0.2%以下およびZr:0.2%以下
第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
第3グループ:Fe:5.0%以下
(3)質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:19〜25%、Mo+0.5W:5.5〜10%、Co:9〜21%、Ti:0.2〜2.5%、Al:0.3〜1.5%およびB:0.001〜0.005%を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金の製造方法であって、熱間加工後または熱間加工に加えて冷間加工を行った後のNi基合金素材の熱処理において、当該Ni基合金素材を1150℃以上に加熱する均熱処理を行った後、放冷に続き、下記(1)式を満たす条件でヘリウムガスによる制御冷却または水冷により急冷を開始して、当該熱処理後のNi基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量を0.3質量%以下にすることを特徴とするNi基合金の製造方法。
ΔT×Δt/2.5≦75 ・・・(1)
ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
(4)Niの一部に代えて、質量%で、下記の第1グループから第3グループまでのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴する上記(3)に記載のNi基合金の製造方法。
第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta:0.2%以下およびZr:0.2%以下
第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
第3グループ:Fe:5.0%以下
本発明において「Cr析出量」とは、前記定義のとおりである。
本発明のNi基合金は、下記の顕著な効果を有する。
(1)本発明のNi基合金は、Cr析出量が0.3質量%以下であることから、靭性(20℃シャルピー衝撃値)が低下することなく、良好な靱性を備えたNi基合金である。
(2)このため、本発明のNi基合金は、管、板その他いかなる形状の部材やそれらの加工品であっても良好な靱性を備える。
本発明のNi基合金の製造方法によれば、溶体化熱処理の際にCr炭化物の粒界析出によって靭性が低下しないことから、良好な靱性を備えたNi基合金を製造することができる。
Cr析出量と20℃衝撃値の関係を示し、図1(a)は試験片Aにおける関係を、図1(b)は試験片Bにおける関係をそれぞれ示す。 ΔT×Δt/2.5とCr析出量の関係を示す図であり、図2(a)は試験片Aにおける関係を、図2(b)は試験片Bにおける関係をそれぞれ示す。 熱処理における合金素管の経時的な温度変化を模式的に示す図である。
本発明者らは、靭性(20℃シャルピー衝撃値)の低下を抑えて良好な靱性を備えたNi基合金を得るために、靱性が低下した材料について第1および第2の調査を行った。靱性が低下した材料は、溶体化熱処理により、シャルピー衝撃試験における20℃の衝撃値が、一般に良好とされている範囲(150J/cm2以上)から外れて100J/cm2程度まで低下したNi基合金の小径管(外径50.8mm)とした。調査では、材料表面およびその近傍の組織を観察した。
第1の調査に用いたNi基合金管は、化学組成が質量%で、C:0.07%、Si:0.10%、Mn:0.10%、P:0.010%、S:0.0004%、Cr:22.2%、Co:11.9%、Mo+0.5W:9.1%、Ti:0.41%、Al:1.01%およびB:0.0023%を含有し、残部がNiおよび不純物であり、すなわち、Ni−Cr−Co合金管であった。第1の調査の結果、光学顕微鏡観察による組織観察から、結晶粒界に比較的粗大な析出物が析出していることが判明した。この粗大な析出物が靭性低下の一因になっていると推定された。
また、第1の調査に用いたNi基合金管の材料表面を観察したところ、酸洗による材料表面の荒れ(以下、「酸荒れ」という)が認められた。
第2の調査に用いたNi合金管は、化学組成が、質量%で、C:0.07%、Si:0.12%、Mn:0.11%、P:0.009%、S:0.0005%、Cr:20.0%、Co:19.8%、Mo+0.5W:5.9%、Ti:2.29%、Al:0.48%およびB:0.0026%を含有し、残部がNiおよび不純物であり、すなわち、Ni−Cr−Co合金管であった。第2の調査の結果、光学顕微鏡による組織観察から、結晶粒界に比較的粗大な析出物が析出していることが判明した。この粗大な析出物が靭性低下の一因になっていると推定された。
また、第2の調査に用いたNi基合金管の材料表面を観察したところ、酸荒れが認められた。
そこで、材料を10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液で電解して析出物を残渣として抽出し、抽出残渣の定量分析を実施した。分析の結果、Cr析出量(すなわち、析出物中のCr量の材料質量に対する百分率)は、第1の調査に用いた材料では0.42%、第2の調査に用いた材料では0.39%であることが明らかになった。また、分析結果から、粒界に析出している炭化物はM236などのCr炭化物と推定された。
以上の結果を総合すると、以下のように結論づけることができる。
(a)調査に用いたNi基合金管では、溶体化熱処理の際にCr炭化物が粒界に析出して靭性が低下する。
(b)炭化物の周囲(粒界近傍)にはCr濃度の低い領域(以下、「Cr欠乏領域」という)が形成されると推定される。材料中のCr濃度が25%以下の材料ではCr欠乏領域の形成により、酸洗処理の際に粒界近傍の酸による腐食が促進され、酸荒れや粒界に沿った割れが生じることがある。
したがって、Ni基合金の靭性を確保するためには、溶体化熱処理後の粒界への炭化物の析出を抑制することが重要であると考えられる。
そこで、溶体化熱処理後の結晶粒界への炭化物の析出を抑制するために、具体的にどのような熱処理が必要であるかを検討した。
前記第1の調査に用いたNi基合金管と同様の合金素材から試験片Aを採取し、前記第2の調査に用いたNi基合金管と同様の合金素材から試験片Bを採取した。採取した試験片AおよびBの寸法は、肉厚11mm×幅11mm×長さ55mmであった。これらの試験片に熱処理を施し、熱処理では、試験片の中央部10mmを高周波誘導加熱した後で均熱処理し、その後、急冷した。均熱処理の均熱温度は1180℃とし、急冷はヘリウムガスによる制御冷却を実施し、均熱処理終了から急冷開始までの温度勾配は、時間に対して直線関係になるように設定した。表1に試験片Aに施した熱処理条件を、表2に試験片Bに施した熱処理条件をそれぞれ示す。
熱処理後の試験片から衝撃試験片(JIS Z 2202で規定されるVノッチシャルピー試験片)を採取して20℃で衝撃試験を行うとともに、抽出残渣を採取してCr析出量を調査した。試験片Aの結果を表1に示し、試験片Bの結果を表2にそれぞれ併せて示す。
Figure 0005633489
Figure 0005633489
表1および表2の「20℃衝撃値」欄の記号の意味は次のとおりである。
○:良好。20℃衝撃値が150J/cm2以上であることを示す。
×:不良。20℃衝撃値が150J/cm2未満であることを示す。
図1は、表1および表2に示した結果を図示したものであり、Cr析出量と20℃衝撃値の関係を示し、図1(a)は試験片Aにおける関係を、図1(b)は試験片Bにおける関係をそれぞれ示す。図1(a)および(b)によれば、Cr析出量と20℃衝撃値の間には明瞭な相関関係がある。20℃衝撃値が150J/cm2以上であれば、Ni基合金系耐熱材料の靱性として良好であるといえる。
図1(a)および(b)から、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上のときのCr析出量は0.3質量%以下であることが分かる。したがって、溶体化熱処理後の粒界への炭化物の析出をCr析出量で0.3質量%以下とすることにより、靭性の低下を抑えた良好な靱性を備えるNi基合金を得ることができる。
図2は、前記図1と同じく表1および表2に示した結果を図示したものであり、ΔT×Δt/2.5とCr析出量の関係を示す図であり、図2(a)は試験片Aにおける関係を、図2(b)は試験片Bにおける関係をそれぞれ示す。図2(a)および(b)によれば、ΔT×Δt/2.5とCr析出量の間には明瞭な相関関係が認められる。
図2(a)および(b)から、Cr析出量を0.3質量%以下とするためには、溶体化熱処理後の冷却条件を制御して、ΔT×Δt/2.5を75℃・min以下とすればよいことが分かる。
本発明は、上記の知見に基づきなされたものである。
以下に、本発明において、Ni基合金の化学組成、冷間加工後の熱処理条件、さらには当該合金の電解抽出残渣中のCr析出量を上記のように定めた理由について詳細に説明する。
1.Ni基合金の化学組成
C:0.03〜0.09%
Cは炭化物を形成してNi基合金として必要な高温引張強さ、高温クリープ強度を確保する上で必要な成分であり、0.03%以上含有させることが必要である。しかし、その含有量が0.09%を超えると、Crの炭化物が増えてNi基合金の靱性に悪影響を及ぼすおそれがあるので上限は0.09%とした。望ましいC含有量は0.05〜0.085%である。
Si:0.05〜0.4%
Siは、溶製時の脱酸剤として必要な元素であり、最低でも0.05%含有させることが必要である。しかし、その含有量が過剰になると当該合金の加工性が低下するので上限は0.4%とした。望ましいSi含有量は0.08〜0.3%である。
Mn:0.01〜1.0%
Mnは、当該合金中に含まれる不純物のSと結合してMnSを形成し、熱間加工性を向上させるが、その含有量が0.01%未満ではこの効果が十分ではない。一方、その含有量が過剰になると合金が硬くなり、加工性や溶接性が損なわれるので上限は1.0%とした。望ましいMn含有量は0.05〜0.8%である。
P:0.015%以下
Pは不純物として不可避的に混入する。過剰なPは溶接性および加工性を害するので、上限は0.015%とする。望ましい上限は0.012%である。
S:0.005%以下
SもPと同様に不純物として不可避的に混入する。過剰なSは溶接性および加工性を害するので、上限は0.005%とする。望ましい上限は0.0015%である。
Cr:19〜25%
Crは、高温耐酸化性・耐食性を確保するための重要な合金元素である。高温下での十分な耐食性を確保するためには19%以上含有させることが必要である。一方、Cr含有量が25%を超えるとオーステナイト組織が不安定になりクリープ強度の低下を招くので上限は25%とした。
Mo+0.5W:5.5〜10%
MoおよびWは固溶強化作用によりクリープ強度を向上させる元素である。MoとWの効果は似通っており、その含有量からMo+0.5Wで計算される値でその効果を整理することができる。含有量がMo+0.5Wで5.5%未満ではこの効果が得られない。一方、その含有量が過剰になると当該合金を著しく硬化させ、加工性および溶接性を劣化させるので、Mo+0.5Wで上限を10%とした。望ましい含有量はMo+0.5Wで5.5〜9.5%である。MoおよびWは、両方を含有させても、MoまたはWの一方のみを含有させてもよく、Mo+0.5Wで計算される値が上記の範囲内であればよい。
Co:9〜21%
Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、オーステナイト相の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。高温強度と耐食性に優れた耐熱合金においてCoの効果を確実に得るためには、9%以上を含有させることが必要である。Co含有量は、9.5%を超えることが望ましく、10%以上とするのがより望ましい。一方、Co含有量が21%を超えると熱間加工性が低下するうえ、Ni基合金の価格が極めて高くなり実用的でなくなるため、その上限は21%とした。なお、Co含有量は20.5%以下とすることが望ましい。
Ti:0.2〜2.5%
Al:0.3〜1.5%
TiおよびAlは、高温域で使用中にNiとNi3(Al,Ti)などの金属間化合物を作成してクリープ強度に寄与する。その効果を得るためにはTiが0.2%以上、Alが0.3%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が過剰になると不均一なクリープ変形や延性低下の原因となるのでその上限はTiが2.5%、Alが1.5%とした。
B:0.001〜0.005%
Bは、クリープ抑制作用を有する元素であるが、その含有量が0.001%未満ではこの効果が得られない。一方、その含有量が過剰になると溶接性が損なわれるのでその上限は0.005%とした。望ましいB含有量は0.001〜0.003%である。
本発明のNi基合金の残部における「Ni」は、オーステナイト組織を安定にする元素であり、本発明のNi基耐熱合金において、耐食性を確保するためにも重要な元素である。なお、本発明においては、Niの含有量については特に規定する必要はなく、残部のうちで不純物の含有量を除いたものとする。しかしながら、残部におけるNiの含有量は50%を超えることが望ましい。
また、本発明のNi基合金の残部における「不純物」は、合金を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するものをいう。このような化学組成を有する本発明のNi基合金は、Ni−Cr−Co合金である。
本発明のNi基合金は、Niの一部に代えて、下記の第1グループから第3グループまでのいずれかに属する1種以上の元素を含有することが望ましい。
第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta :0.2%以下およびZr:0.2%以下
第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
第3グループ:Fe:5.0%以下
以下、上記の任意元素に関して説明する。
第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta :0.2%以下およびZr:0.2%以下
第1グループの元素であるNb、V、TaおよびZrは、いずれも高温での強度を向上させる作用を有するので、この効果を得るために上記の元素を含有させてもよい。以下、第1グループの元素について詳しく説明する。
Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta :0.2%以下およびZr:0.2%以下
第1グループの元素であるNb、V、TaおよびZrは、マトリックスであるオーステナイト組織に固溶あるいは炭化物として析出し、高温での強度向上に寄与するので、こうした効果を得るために上記の元素を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素を過剰に含有すると炭化物の析出量が多くなり、特に、いずれの元素についても、その含有量が0.2%を超えると、多量の炭化物が析出して靱性の低下を招く。そのため、含有させる場合のNb、V、TaおよびZrの含有量は、いずれも0.2%以下とする。なお、含有量の望ましい上限は、いずれの元素についても0.1%である。一方、前記したNb、V、TaおよびZrの効果を確実に得るためには、含有量の下限はいずれの元素についても0.003%とすることが望ましく、0.005%とすればより望ましい。
第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
第2グループの元素であるCa、MgおよびNdは、いずれも熱間加工性を向上させる作用を有するので、この効果を得るために上記の元素を含有させてもよい。以下、第2グループの元素について詳しく説明する。
Ca:0.005%以下およびMg:0.005%以下
CaおよびMgは、熱間加工性を向上させる作用を有するので、この効果を得るために上記の元素を含有させてもよい。しかしながら、これらの元素を過剰に含有するとOと結合して合金の清浄性が低下し、特に、いずれの元素についても、その含有量が0.005%を超えると、合金の清浄性が著しく低下して却って熱間加工性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のCaおよびMgの含有量は、いずれも0.005%以下とする。なお、含有量の望ましい上限は、いずれの元素についても0.004%である。一方、前記したCaおよびMgの効果を確実に得るためには、含有量の下限はいずれの元素についても0.0005%とすることが望ましく、0.001%とすればより望ましい。
Nd:0.05%以下
Ndは、熱間加工性を向上させる作用を有するので、この効果を得るためにNdを含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有するとOと結合して合金の清浄性が低下し、特に、Nd含有量が0.05%を超えると、合金の清浄性が著しく低下して却って熱間加工性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のNd含有量は、0.05%以下とする。なお、Nd含有量の望ましい上限は、0.04%である。一方、前記したNdの効果を確実に得るためには、Nd含有量の下限は0.003%とすることが望ましく、0.005%とすればより望ましい。
第3グループ:Fe:5.0%以下
第3グループの元素であるFeは、Ni基合金の熱間加工性を改善する作用を有するため必要に応じて含有させてもよい。なお、実際の製造工程では電気炉等の炉壁からの汚染等により、不純物として0.5〜1%程度のFeを含有することがある。Feを含有させる場合、Fe含有量が5.0%を超えると、合金の熱膨張係数が大きくなり、また耐酸化性も劣化する。そのため、Feを含有させる場合の含有量の上限は5.0%とする。一方、上記Feの効果を得るためには、Fe含有量の下限を1.2%とすることが望ましい。
2.Cr析出量
前述したように、Ni基合金は、溶体化熱処理時の冷却過程でCr炭化物が粒界に析出して靭性が低下することがある。本発明のNi基合金は、上記の化学組成を有し、Ni基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3質量%以下である。前記図1(a)および(b)に示したように、Cr析出量が0.3質量%以下であれば、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上となるので、本発明のNi基合金は、良好な靱性を備える。
Ni基合金の電解および抽出残渣の定量分析(Crの定量)は、常法に準じて行えばよい。例えば、Ni基合金の電解は、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を用い、常温で電解することにより行うことができる。また、抽出残渣中のCrの定量は、ICP分光分析法(誘導結合高周波プラズマ分光分析)等により行うことができる。
3.熱間加工または冷間加工後の熱処理条件
本発明のNi基合金の製造では、上記の化学組成を有する合金を溶製する。次いで、得られた合金塊を均熱し、分塊(鍛造)、熱間加工(圧延または押出など)の順に処理した後、必要に応じて冷間加工を実施し、熱処理を行う管や板形状のNi基合金素材を得る。冷間加工としては管の場合は引抜または圧延、板や棒材の場合は圧延による加工が挙げられる。その後、Ni基合金素材に熱処理(すなわち、均熱後、急冷する溶体化熱処理)を実施する。必要に応じて、熱処理を実施したNi基合金素材に酸洗または機械的処理(工具による内外削やショットブラストなど)を施し、Ni基合金とする。
本発明のNi基合金の製造方法では、熱間加工後または熱間加工に加えて冷間加工を行った後のNi基合金素材に実施する熱処理において、Ni基合金素材を1150℃以上に加熱する均熱処理を行う。これは、Ni基合金素材中の析出物を十分に固溶させるためである。均熱温度が1150℃未満の場合には、処理後の合金素材中に安定なTi、AlやB、およびCrを含む未固溶の炭化物や酸化物が存在するようになり、均質化しない。なお、加熱温度の上限は特に限定しないが、1270℃を超える温度まで加熱すると、粒界溶融が生じるので、加熱温度の上限は1270℃とするのがよい。
加熱時間は特に規定しない。従来の作業管理基準等を勘案して、均熱の目的が達せられるよう適宜定めればよい。
本発明のNi基合金の製造方法では、前記の熱処理において、均熱処理後、下記(1)式を満たす条件で冷却する。溶体化熱処理後の結晶粒界への炭化物の析出を抑制するためである。(1)式のΔTおよびΔtについての下記定義において、「均熱温度」とは、実際に均熱処理を行った温度である。「急冷開始温度」とは、水冷を開始する温度である(次に述べる図3参照)。
ΔT×Δt/2.5≦75 ・・・(1)
ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
図3は、熱処理における合金素管の経時的な温度変化を模式的に示す図である。この図は、溶体化熱処理を実施したときの合金素管の温度を示し、溶体化熱処理は、Ni基合金素材である合金素管を、送管速度1000mm/分で連続式均熱炉内を通過させつつ1150℃以上に均熱した後で冷却することにより実施した。
図3において、破線Aが連続式均熱炉の出口位置を表す。連続式均熱炉内を通過した合金素管は冷却されるが、冷却の過程を詳細に述べると、合金素管が連続式均熱炉から排出された直後の「放冷」過程(図3中の破線Aと破線Bの間)と、放冷過程に続く「急冷」過程(図3中の破線B以降)とがある。図3に示すように、合金素管が連続式均熱炉内を通過した後放冷過程おかれる時間がΔt(min)である。また、均熱温度と均熱後の急冷開始温度(つまり、「水冷」を開始する温度)との差がΔT(℃)である。
前記(1)式の関係は、前述したように、Ni基合金素材から採取した試験片を用いて、前記表1および表2に示した条件で(すなわち、ΔTおよびΔtを変化させて)熱処理を行い、20℃シャルピー衝撃値およびCr析出量を調査した結果導き出された関係である。
すなわち、前記図2(a)および(b)に示したように、ΔT×Δt/2.5が75℃・min以下であれば、Cr析出量が0.3質量%以下となる。そして、前記図1(a)および(b)に示したように、Cr析出量が0.3質量%以下であれば、20℃シャルピー衝撃値が150J/cm2以上となるので、前記(1)式を満たす条件で冷却することにより、Cr炭化物の結晶粒界への析出を抑制して良好な靱性を備えたNi基合金を得ることができる。
本発明のNi基合金の製造方法で規定する熱処理は、必ずしも前述した連続式均熱炉で実施する必要はなく、バッチ式の熱処理炉を用いて均熱後水冷する場合にも、前述の定義と同様のΔTおよびΔtを制御すれば良好な靭性が得られる。
本発明のNi基合金の製造方法は、上述の熱処理を実施することから、熱処理後のNi基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3質量%以下である。このため、本発明のNi基合金の製造方法は、靱性が低下することなく、安定して良好な靱性を備えるNi基合金を得ることができる。
本発明のNi基合金の製造方法における「熱処理後のNi基合金」とは、上述の熱処理を実施した後のものであればよく、合金管の場合は、酸洗処理前の合金素管であっても、酸洗処理後の成品としての合金管であってもよい。
本発明のNi基合金およびNi基合金の製造方法による効果を検証するため、外径:50.8mm、内径:33.2mm、肉厚:8.8mm、長さ:7000mmであるNi基合金管を製造し、製造された合金管のCr析出量および靱性を調査する試験を行った。
[試験方法]
表3に、本試験に用いた供試材1〜4の化学組成をそれぞれ示す。
Figure 0005633489
本試験では、合金管の製造に際し、ビレットから熱間押出しにより合金素管を製造し、一部はそのままNi合金素材として熱処理に供した。また、一部は、熱間押出しに加えて冷間圧延を行って前記寸法の合金素管とし、Ni合金素材として熱処理に供した。
熱処理は、連続式均熱炉またはバッチ式熱処理炉を用いて実施した。連続式均熱炉は、加熱帯:15m、加熱帯から水冷帯までの距離:750mmであった。加熱帯では、均熱温度を1180℃に設定した。バッチ式熱処理炉は長さ9000mmのガス焚き雰囲気炉であり、均熱温度を1180℃に設定した。
均熱処理後の冷却過程では、ΔTを70〜252℃の範囲内で、Δtを0.25〜1.80分の範囲内で変化させた。また、連続式均熱炉を用いた試験では、送管速度を300〜1500mm/分の範囲内で変化させた。表4に各試験の熱処理条件を示す。
Figure 0005633489
熱処理後、酸洗または機械加工により脱スケールを行った。酸洗は、合金素管を弗硝酸(弗酸:5%、硝酸:10%)に浸漬することにより行った。
脱スケール後の合金管から、JIS Z 2202で規定されるVノッチシャルピー試験片を採取し、20℃でシャルピー衝撃試験を行った。また、当該合金管を10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール溶液を用いて電解し、抽出残渣に含まれるCrをICP分光分析法により定量してCr析出量を求めた。20℃シャルピー衝撃値およびCr析出量の調査結果を表4に併せて示す。
[評価基準]
表4の「20℃衝撃試験」欄の記号の意味は、前記表1および表2の場合と同様で、次のとおりである。
○:良好。20℃衝撃値が150J/cm2以上であることを示す。
×:不良。20℃衝撃値が150J/cm2未満であることを示す。
[試験結果]
表4の結果から、本発明のNi基合金の製造方法で規定するΔT×Δt/2.5≦75の条件が満たされる場合、Cr析出量がいずれも0.3質量%以下となった。また、本発明のNi基合金で規定するCr析出量が0.3質量%以下という条件が満たされる場合、20℃シャルピー衝撃値がいずれも150J/cm2以上であり、Ni基合金は良好な靱性を備えることが確認できた。これらの場合、酸洗による酸荒れも認められなかった。
本発明のNi基合金は、Cr析出量が0.3質量%以下であり、良好な靱性を備えることから、火力発電用ボイラや蒸気タービンおよびガスタービン、化学工業用各種反応装置、原子力プラントにおいて使用される耐熱材料として好適である。本発明のNi基合金の製造方法は、熱処理条件を規定することにより、Cr析出量が0.3質量%以下であり、良好な靱性を備えたNi基合金を得ることができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:19〜25%、Mo+0.5W:5.5〜10%、Co:9〜21%、Ti:0.2〜2.5%、Al:0.3〜1.5%およびB:0.001〜0.005%を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金であって、
    当該Ni基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量が0.3質量%以下であることを特徴とするNi基合金。
  2. Niの一部に代えて、質量%で、下記の第1グループから第3グループまでのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴する請求項1に記載のNi基合金。
    第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta:0.2%以下およびZr:0.2%以下
    第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
    第3グループ:Fe:5.0%以下
  3. 質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cr:19〜25%、Mo+0.5W:5.5〜10%、Co:9〜21%、Ti:0.2〜2.5%、Al:0.3〜1.5%およびB:0.001〜0.005%を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金の製造方法であって、
    熱間加工後または熱間加工に加えて冷間加工を行った後のNi基合金素材の熱処理において、当該Ni基合金素材を1150℃以上に加熱する均熱処理を行った後、放冷に続き、下記(1)式を満たす条件でヘリウムガスによる制御冷却または水冷により急冷を開始して、
    当該熱処理後のNi基合金を電解して得られた抽出残渣の定量分析により求められるCr析出量を0.3質量%以下にすることを特徴とするNi基合金の製造方法。
    ΔT×Δt/2.5≦75 ・・・(1)
    ただし、ΔT:均熱温度と均熱後の急冷開始温度との差(℃)
    Δt:均熱後、急冷開始までの時間(min)
  4. Niの一部に代えて、質量%で、下記の第1グループから第3グループまでのいずれかに属する1種以上の元素を含有することを特徴する請求項3に記載のNi基合金の製造方法。
    第1グループ:Nb:0.2%以下、V:0.2%以下、Ta:0.2%以下およびZr:0.2%以下
    第2グループ:Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下およびNd:0.05%以下
    第3グループ:Fe:5.0%以下
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