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JP5635779B2 - Stx毒性阻害ペプチドおよびStxに起因する疾患の治療薬 - Google Patents
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Stx毒性阻害ペプチドおよびStxに起因する疾患の治療薬 Download PDF

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Description

本発明は、Stx毒性阻害ペプチドに関するものである。
Shiga toxin (Stx)は、腸管出血性大腸菌が産生する主要な病原因子であり、消化管障害のみならず、その後の一連の微小血管障害である重症合併症〔たとえば、溶血性尿毒症症候群(HUS)〕などを引き起こすことが知られている。
さらに、Stxは、Stx1とStx2の2つのファミリーから構成されることも知られている。
そして、Stx1およびStx2は、いずれも、A−B型の毒素で、Bサブユニットが細胞膜上の受容体、Gb(globotriaosylceramide:Galα(1−4)−Galβ(1−4)−Glcβ1−Ceramide)に結合することにより細胞内に取り込まれること、また、放射対称状に並んだBサブユニットペンタマーはGb3の糖鎖部(グロボ3糖:Galα(1−4)−Galβ(1−4)−Glcβ1−)を特異的に認識すること、などが解明されるに伴って、Bサブユニットと受容体の結合を選択的に阻害する方法が注目され、様々な観点からの検討が進められてきた。
そして、この出願の発明者らは、Stx1およびStx2のBサブユニットとグロボ3糖の結合にはクラスター効果が存在するとの知見から、多価型ペプチドライブラリーを利用したスクリーニング方法を確立している(特許文献1)。
ここで、「クラスター効果」とは、ある機能分子とそのリガンドとの相互作用において、1対1の場合に比べて多価対多価の相互作用によって、著しくその結合親和性が亢進する現象をいい、特許文献1では、ペプチドライブラリーを多価にすることによって、Stx2のBサブユニットとの間にクラスター効果を発揮させ、Stx2との高結合親和性を有するStx2阻害ペプチドを特定している。なお、本発明者らがStx2阻害剤としてペプチドに着目した理由は、合成が比較的容易であり、また、一般に薬物としての適用に対して安全性が高いからである。
しかしながら、特許文献1のスクリーニング方法は、対象物とライブラリーとの結合からアミノ酸の選択性を導き出すことによってペプチドを特定するものであるため、一般的には、特定されたペプチドの毒性阻害効果までをも予測することは難しかった。そして、特許文献1では、Stx2毒性阻害ペプチドについての検討がなされているが、Stx1毒性阻害ペプチドについては具体的な検討がなされていなかった。
Stx1は、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae Type I)の産生する志賀毒素と同一であることから、Stx1毒性阻害剤が開発されれば、腸管出血性大腸菌感染症のみならず、赤痢に対する有効な治療薬になり得ると考えられている。実際、アジアでは、年間9100万人が細菌性赤痢に罹患し、そのうち41万人が死亡しているため、Stx1毒性阻害剤の開発が急がれるが、現状では、臨床応用に耐え得るStx1毒性阻害剤は開発されていない。
一方、特許文献1でも指摘されているように、Stx1およびStx2のうち、より重篤な合併症を引き起こすのはStx2であり、臨床的には、Stx2毒性阻害剤の開発が重要であると考えることができる。
したがって、Stx1およびStx2の両方に対して毒性阻害作用を発揮するペプチドを見出すことができれば、このペプチドを薬剤の有効成分とすることで、Stx1およびStx2に起因する様々な疾患が効果的に治療可能になると考えらえる。
WO2006/001542
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、Stx1およびStx2の両方に対して優れた毒性阻害作用を発揮するペプチド、および、Stx1およびStx2に起因する疾患の治療薬を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明のStx毒性阻害ペプチドおよびStxに起因する疾患の治療薬は、以下のことを特徴としている。
<1>本発明のStx毒性阻害ペプチドは、Stx1およびStx2に対する結合性を有するとともに、Stx1およびStx2の細胞毒性を阻害するペプチドであって、3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基の各々に、配列番号1のペプチドが、直接またはスペーサーを介して結合している。
<2>本発明のStx毒性阻害ペプチドは、スペーサーが、炭素数4〜10の炭化水素鎖を有する。
<3>本発明の治療薬は、Stx1およびStx2に起因する疾患の治療薬であって、前記<1>または<2>のStx毒性阻害ペプチドを含有する。
<4>本発明の治療薬は、Stx1およびStx2に起因する疾患、すなわち、腸管出血性大腸菌感染症または赤痢の治療薬である。
本発明のStx毒性阻害ペプチドによれば、Stx1およびStx2の細胞毒性を阻害することができる。したがって、このStx毒性阻害ペプチドを含有する薬剤は、Stx1、2に起因する疾患、例えば、腸管出血性大腸菌感染症(Stx1産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx2産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx1、Stx2両毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症を含む)、赤痢に対して極めて有効である。
Stx1に対するPPR−tet、PPP−tetの毒性阻害効果を示す図である。 Stx1毒性阻害ペプチドのスクリーニング方法を例示する概要図である。 Stx1細胞障害活性に対する阻害効果を示す図である。5種のペプチドモチーフについて検討した。 MMA−tetが、STX1Bサブユニットのサイト1に特異的に結合していることを示す図である。 Stx2細胞障害活性に対する阻害効果を示す図である。5種のペプチドモチーフについて検討した。 マウスを用いた感染実験の結果を示す図である。
本発明の実施形態について説明する。以下、単に「Stx」という場合は、Stx1とStx2の両方を含むものとする。
本発明のStx毒性阻害ペプチドは、Stx1およびStx2に強い結合親和性で結合することによって、Stx1およびStx2の細胞毒性を阻害するものである。具体的には、本発明のStx毒性阻害ペプチドは、3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基の各々に、ペプチドモチーフとして、配列番号1のMet-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg(以下、MMARRRRと記すことがある)が結合したものである。
すなわち、本発明のStx毒性阻害ペプチドは、例えば、以下の化学式、
Figure 0005635779
において、XXXX部に、MMARRRR(配列番号1)を有するものが例示される。なお、上記化学式1では、分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基の各々に、スペーサーを有する形態を例示しているが、スペーサーを介さず、4つのアミノ基の各々に、直接、MMARRRR(配列番号1)を結合させることもできる。スペーサーを設ける場合、Stx毒性阻害活性を損なわないものであればよく、具体的な分子、長さは限定されない。スペーサーとしては、例えば、末端にアミノ酸を有する炭素数4〜10程度の鎖長のものが好ましく、Stx1毒性阻害活性としては、特に上記化学式1中の「U」で示される、amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]が好ましい。また、前記アミノ酸は、例えば、アラニン(A)が例示され、上記MMARRRR(配列番号1)と結合する。
さらに、本発明のStx毒性阻害ペプチドは、4つのペプチドモチーフ、MMARRRR(配列番号1)の各々の末端に修飾分子を有していることが好ましい。
なお、上記化学式1で例示するペプチドは、末端にMA(Met‐Ala)を有してしているが、これは、後述の実施例において、スクリーニングの際に導入したものを例示しており、上記化学式1のMAは、本発明のStx毒性阻害ペプチドにおいては必ずしも必要ではない。
また、ペプチドモチーフの末端にNHが露出するとプラス電荷になることから、電荷調節の観点からは、MMARRRR(配列番号1)の各々の末端に、修飾分子としては、電荷がない分子、さらには、疎水性の分子が考慮される。例えば、Stx毒性阻害ペプチド、またはこれを含有する薬剤を経口投与する場合、消化管内でのプロテアーゼによる分解を抑えるための安定化を目的として、末端のNHをアセチル基により保護することができる。これによって、Stx毒性阻害活性が増大する。このように、ペプチドモチーフの末端の修飾分子は適宜選択することができる。
そして、本発明のStx毒性阻害ペプチドの作成方法は、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、ペプチド合成装置等を利用するなどの方法によって作製することができる。
以上のとおり、本発明のStx毒性阻害ペプチドは、ペプチドモチーフ、MMARRRR(配列番号1)を4つ有する4価のペプチドであり、クラスター効果によって、Stx1およびStx2に対して強い結合親和性を有しており、効果的にStx1およびStx2の細胞毒性を阻害することができるため、本発明のStx毒性阻害ペプチドを含有する薬剤によれば、Stx1、2に起因する疾患、例えば、腸管出血性大腸菌感染症(Stx1産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx2産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx1、Stx2両毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症を含む)、赤痢を効果的に治療することができる。
以下、本発明の実施形態として、上記のStx毒性阻害ペプチドを含有する疾患の治療薬について説明する。ここでは、Stx毒性阻害ペプチド自体についての説明は省略する。
Stx1およびStx2に起因する疾患の治療薬には、上記Stx毒性阻害ペプチド以外に、任意の製薬上許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより調製され保存される。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる用量および濃度において患者に非毒性であることを条件として、剤形や投与経路に応じて適宜に選択することができる。例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)またはトゥイーン(TWEEN)(商品名)、プルロニクス(PLURONICS)(商品名)、およびポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤等である。
なお、体内に投与される薬剤は無菌でなければならない。また、徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス(例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形状)である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商品名)(乳酸-グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸等である。
このようにして製剤化した治療薬は、例えば、疾患の種類や症状に応じて、経口投与、局所投与、あるいは静脈等を介して全身投与することができる。投与量は、患者の体重、症状等に応じて決定することができ、例えば、1回当たり約5〜100mg/Kg、目安としては、約5〜10mg/Kg程度とすることができる。
そして、本発明の治療薬によれば、Stx1産生性腸管出血性大腸菌感染症、赤痢に対して極めて有効であるとともに、より症状の重篤化と関係の深いStx2産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx1ならびにStx2両毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症等の治療が可能となる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(1)Stx1とStx2は、アミノ酸レベルで60%近いホモロジーを有することから、特許文献1で同定されたStx2阻害ペプチドのうち、特に阻害効果が強かったペプチドのStx1に対する効果を検討した。
具体的には、次式
Figure 0005635779
で表される3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の両端に、位置する4つのアミノ基の各々に、スペーサーを介して、XXXX部分に、以下のペプチド、
配列番号2:Pro-Pro-Arg-Arg-Asn-Arg-Arg (PPRRNRR)
配列番号3:Pro-Pro-Pro-Arg-Arg-Arg-Arg(PPPRRRR)
が結合した4価ペプチドを使用して、Stx1に対する効果を検討した。
以下、便宜的に、配列番号2のペプチドモチーフを有する4価ぺプチドを「PPR−tet」、配列番号3のペプチドモチーフを有する4価ぺプチドを「PPP−tet」と記す。
なお、上記化学式1の末端のMA(Met‐Ala)は、アミノ酸シークエンスを確認するために、スクリーニングの際に導入されるものであり、スペーサー長は、Stxに最適化されている。具体的には、スペーサーとして、amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH]を使用した。
(2)結果を図1に示す。図1に示されるように、PPR−tet、PPP−tetは、Stx1に対しては毒性阻害効果が低いことが確認された。
このように、Stx2阻害性が確認されているPPR−tet、PPP−tetがStx1に対する阻害効果が低い理由は、Stx1とStx2のBサブユニットの受容体結合表面に表面電荷がわずかに異なる領域が存在するためであると考えられる。
<実施例2>
(1)実施例1の結果を受け、以下の方法で、Stx1毒性阻害ペプチドの特定を試みた。
Stx1毒性阻害ペプチドを開発するためには、まず、どの結合サイトを標的とするかが問題となる。グロボ3糖結合サイトは、Stx1Bサブユニットのサイト1、サイト2およびサイト3からなることが知られている。また、Stx1Bサブユニットは、放射対称状に並んでペンタマーを形成するが、サイト1、サイト2は、Bサブユニットの辺縁部、サイト3は、Bサブユニットの中心に近い位置に存在していることが知られている。
そして、本発明者らは、サイト1が、Stx1とグロボ3糖(Gb3)との結合に最も寄与していること、この結合には、サイト1に存在するフェニルアラニン30の芳香環の疎水的な相互作用が重要であること、に着目し、サイト1をStx1毒性阻害ペプチドの標的サイトとして、F30A(Phe30をAlaで置換)のミュータントを作成し、特許文献1と同様の多価型ペプチドライブラリー法を用いて、Stx1毒性阻害ペプチドをスクリーニングした。
(2)スクリーニング方法は、特許文献1に記載の方法に準じるが、具体的には、上記の多価型ペプチドライブラリーを用いて行った。その概要を図2に示す。
上記化学式1と図2に示す多価型ペプチドライブラリーのXXXX部は、Cys以外の19種のアミノ酸のミックスチャーからなるdegenerate positionを示す。
まず、野生型Stx1Bサブユニット、ならびにサイト1に変異を有するF30A(約1 mg)を固定したアフィニィティーカラムを調整し、1次スクリーニングとして、500μg程度の前記ライブラリーを添加して十分に結合させた。そのあと、PBS等で十分に洗浄し、結合しなかったライブラリーを洗い出し、最後に、カラムに留まっているライブラリーを30%酢酸で溶出させ、回収された画分を乾燥させ、アミノ酸配列解析を行った。
その結果、各々のdegenerate positionで得られたアミノ酸について、どのアミノ酸がどの程度の強さで選択されるか、数値化された結果が得られた。
すなわち、野生型Stx1Bサブユニットを用いるときに、前記のようにして得られた、各degenerate positionの各アミノ酸の値を、mutant type:F30Aを用いたときに、前記のようにして得られた、対応するdegenerate positionの、対応するアミノ酸の値で割り、その結果、そのアミノ酸が野生型Stx1BサブユニットではF30Aにくらべて何倍選択されるようになったかが数値化された結果を得た。そして、19種のアミノ酸の値をすべてたすと19になるように標準化した。このとき、各アミノ酸の間で、選択性に差がないと値は1となる。この値が1.3を越えると強い選択性がみられたと判断した。結果を[表1]の1st-libraryの下段に示す。
Figure 0005635779
1次クリーニングで、degenerate position:5〜7にアルギニン(R)が強く選択されたことから、このアルギニン(R)をlocking positionとして、上記[表1]に示す2nd-librariesを作製し、2次スクリーニングを行った。locking positionの導入によって、library全体としてのStx1Bサブユニットに対する結合性が増加するので、より特異的なモチーフが得られやすくなる。この2nd-libraryを用いて、前記と同様にwild type STX1B−サブユニットに結合するペプチドモチーフを、またサイト1のmutant STX1B−サブユニットに結合するペプチドモチーフを決定した。
結果は、上記[表1]の2nd-libraries下段に示すとおり、degenerate position:5〜7は、アルギニン(R)と特定した。そして、degenerate position:1〜3では、メチオニン(M)、アラニン(A)が強く選択された。
この結果、以下の4つ、
配列番号1:Met-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg(MMARRRR)
配列番号4:Met-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg (MAARRRR)
配列番号5:Ala-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg (AMARRRR)
配列番号6:Ala-Ala-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg (AAARRRR)
のペプチドモチーフが特定された。
<実施例3>
(1)上記のペプチドモチーフ:MMARRRR(配列番号1)、MAARRRR(配列番号4)、AMARRRR(配列番号5)、AAARRRR(配列番号6)の各々を、3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基に、スペーサーを介して結合させ、上記各々のペプチドモチーフによる、STX1Bサブユニットへの結合親和性(K値)を調べた。以下、配列番号1、4―6のペプチドモチーフを有する4価ペプチドを、それぞれ、「MMA−tet」、「MAA−tet」、「AMA−tet」、「AAA−tet」と記す。また、コントロールとして、ペプチドモチーフを持たない核構造だけの化合物MA-tetについも、同様に結合親和性を(K値)を調べた。K値の測定は、BIAcoreTMシステム(BIAcore, Uppsala, Sweden)を用いておこなった。本システムでは、センサーチップ上にSTX1Bサブユニットを固定し、ここに種々の濃度の4価ペプチドを流すことにより結合量を測定する。解析はBIAEVALIATION 3.0(BIAcore)により行い、最大結合量(RUmax)ならびにK値を算出した。
なお、上記化学式1では、末端にMA(Met‐Ala)が結合しているが、これは、スクリーニングの際に導入したものであって、本発明のStx1毒性阻害ペプチドにおいては必ずしも必要ではない。また、スペーサーの具体的構成、長さもこの実施例に限定されることはない。
(2)結果を[表2]に示す。K値が低いほど、結合親和性が高いことを示している。
Figure 0005635779
[表2]に示されるように、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetはいずれも、Stx1Bサブユニットに対し非常に高い結合親和性を示すことが確認された。 一方、MA-tetでは結合は観察されなかった。このことから、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetはペプチドモチーフ依存的にSTX1Bサブユニットに強く結合することが示された。なお、RUMAX(AU)は、最大結合量を示している。
<実施例4>
(1)実施例3で、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetのSTX1Bサブユニットに対する結合親和性が確認されたことから、前記各々のペプチドによるSTX1細胞毒性の阻害効果について検討した。
具体的な、実験条件は、STXに対して感受性が高いVero細胞を用い、1 pg/mlのSTX1ならびに、各濃度の4価ペプチドの共存下、3日間培養を行い、生存細胞の割合を測定した。
また、PPP−tetについてもSTX1による細胞毒性活性に対する阻害効果を検討した。
(2)結果は、図3に示すように、MMA−tetは、濃度依存的に、STX1細胞毒性を顕著に阻害することが確認された。具体的には、ペプチド濃度100μg/mlで、細胞生存率は100%となった。IC50値は25μg/mlであった。
一方、AMA−tet、PPP-tetでは阻害効果は低下し、IC50値はそれぞれ100μg/ml、130μg/mlであった。MAA−tet、AAA−tetではさらに阻害効果は低下し、IC50値はそれぞれ250μg/ml、300μg/mlであった。さらに、MMA−tet は、これまでに同定したSTX2阻害ペプチドPPP−tetに比べ、5倍以上の強いSTX1毒性阻害活性を示すことが明らかとなった。
以上のとおり、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetは、いずれもSTX1Bサブユニットに対する結合親和性を有するものの、中でも、MMA−tetは、その他のペプチドと比較して、STX1の細胞毒性阻害効果が際立って顕著であった。すなわち、STX1に対する結合親和性(表2)と細胞毒性阻害効果(図3)には必ずしも相関関係がないことが示された。
また、図3に示される、MMA−tet、AMA−tetおよびMAA−tetの阻害活性の比較から、MMA−tetのペプチドモチーフである配列番号1の2つのMet(M)はともに阻害活性に必要であること、しかしながら2番目のMet(M)のほうが1番目のMet(M)よりもSTX1毒性阻害活性により重要な働きをしていること、が明らかとなった。
以上のことから、MMA−tetを含有する薬剤は、Stx1に起因する疾患、例えば、腸管出血性大腸菌感染症、赤痢の治療薬として有効であることが示された。
<実施例5>
(1)実施例4の結果を受け、MMA−tetのSTX1に対する結合特異性をELISA法により検討した。
具体的な、実験条件は、各濃度のMMA−tetをELISAプレートに固定し、野生型STX1と、STX1Bサブユニットのサイト1に変異を有する前記F30A各々を結合させた。その後洗浄し、特異的に結合した各Bサブユニット量を特異的抗体を用いて定量した。
(2)結果を、図4に示す。縦軸は、490nmの光の吸光度である。MMA−tetのF30Aに対する結合活性は、野生型STX1への結合に比べ、約1/10に低下していた。このことから、MMA−tetは、STX1Bサブユニットのサイト1に特異的に結合していることが確認された。
<実施例6>
前記の特許文献1に記載されているように、これまでにも、本発明者は、STXBサブユニットに結合し、その毒性を阻害する化合物として、カルボシランデンドリマーを核構造としてグロボ3糖部を集積させた化合物を創案し、例えば、グロボ3糖部を6個有する化合物をSUPER TWIG(1) 6などと命名している。特許文献1では、STX2Bサブユニットのサイト1、サイト2、サイト3の各々にmutationを導入し、各mutantと、前記SUPER TWIG(1) 6と結合親和性の比較から、SUPER TWIG(1) 6とSTX2Bサブユニットとの結合には、サイト3が使用されているとの知見を得、この知見に基づいて、STX2Bのサイト3を標的にしたペプチドライブラリー法を利用し、STX2に対して高結合親和性を発揮するペプチドモチーフ(PPP−tet、PPR−tetなど)を決定し、その毒性阻害作用の検討を進めてきた。
そして、前記実施例4、5において、MMA−tetのSTX1毒性阻害活性およびSTX1Bサブユニットのサイト1に対する特異的結合性が確認されたことから、新たに本実施例において、MMA−tetならびにMAA−tet、AMA−tet、AAA−tetによるSTX2Bサブユニットに対する結合親和性およびSTX2毒性阻害活性についての検討を試みた。
(1)結合親和性
実施例3と同様の方法で、MMA−tetならびにMAA−tet、AMA−tet、AAA−tetによるSTX2Bサブユニットに対する結合親和性(K値)を調べた。また、PPP−tet、PPR−tet、およびコントロールとして、ペプチドモチーフを持たない核構造だけの化合物MA-tetについても、同様に結合親和性を(K値)を調べた。この結果を[表3]に示す。
Figure 0005635779
[表3]に示されるように、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetはいずれも、STX2Bサブユニットに対する結合親和性が確認された。このことから、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetはペプチドモチーフ依存的にSTX2Bサブユニットに強く結合することが示された。
また、同じ条件下で、PPP−tet、PPR−tetについてもSTX2Bサブユニットに対する結合親和性が確認された。結合親和性においては、MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetと顕著な違いは確認されなかった。
一方、MA-tetでは結合は観察されなかった。なお、RUMAX(AU)は、最大結合量を示している。
(2)細胞毒性阻害効果
MMA−tet、MAA−tet、AMA−tet、AAA−tetによるSTX2による細胞毒性阻害効果について検討した。具体的な実験条件は、実施例4と同様に、Vero細胞を用い、1 pg/mlのSTX2ならびに、各濃度のペプチドの共存下、3日間培養を行い、生存細胞の割合を測定した。
また、PPP−tetについてもSTX2による細胞毒性活性に対する阻害効果を検討した。
具体的には、図5に示すように、MMA−tetは、濃度依存的に、STX2細胞毒性を顕著に阻害することが確認された。140%の生存率を最大効果とすると、IC50値は17 μg/mlであった。
一方、AMA−tet、PPP-tetでは阻害効果は低下し、IC50値はそれぞれ62μg/ml、42μg/mlであった。MAA−tet、AAA−tetではさらに阻害効果は低下し、IC50値はそれぞれ140μg/ml、130μg/mlであった。すなわち、MMA−tet は、これまでに同定したSTX2阻害ペプチドPPP−tetに比べ、約2.5倍の強いSTX2毒性阻害活性を示すことが明らかとなった。
このように、MMA−tetは、STX2Bを標的にして同定されたPPP−tetよりも優れた毒性阻害作用を発揮することが明らかになった。
<実施例7>
実施例4、6において、MMA−tetは、STX1およびSTX2による細胞毒性に対する強い阻害活性があること確認された。このような結果を踏まえ、実際にマウスを用いた感染実験を行った。
マウスは、低蛋白飼育C57BL/6(SPF,female)を使用し、感染菌は、STEC strain N9-D6 (stx1+,stx2+)を7.5×106cfu使用した。そして、感染第2日病日〜第5日病日のマウスに1日2回、Ac−MMA−tet(0.15 mg/mouse、0.5mg/mouse)を経口投与した。消化管内でのプロテアーゼによる分解を抑えるための安定化を目的として、MMAの末端にアセチル基を修飾した。
具体的には、以下の3グループに分けた。
グループ1(0.15 mg/mouse群):平均体重20.3g(6匹)
グループ2(0.5mg/mouse群):平均体重20.3g(6匹)
グループ3(control mouse群):平均体重21.4g(8匹)
結果を図6に示す。図6に示されるように、control mouse群は、10日〜13日しか生存しなかったのに対し、グループ1(0.15 mg/mouse群)では5匹が、グループ2(0.5mg/mouse群)では6匹すべてが60日以上生存した。したがって、Ac−MMA−tetの投与によってStx1、2毒性が阻害され、感染マウスの疾患が改善された結果、マウスの生存が維持されたと考えられる。
すなわち、MMA−tetを含有する薬剤によって、Stx1に起因する疾患、例えば、Stx1産生性腸管出血性大腸菌感染症、赤痢に対して極めて有効であるとともに、より症状の重篤化と関係の深いStx2産生性腸管出血性大腸菌感染症、Stx1ならびにStx2両毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症が治療可能であることが示された。

Claims (4)

  1. Stx1およびStx2に対する結合性を有するとともに、Stx1およびStx2の細胞毒性を阻害するペプチドであって、3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基の各々に、配列番号1のペプチドが、直接またはスペーサーを介して結合していることを特徴とするStx毒性阻害ペプチド。
  2. スペーサーは、炭素数4〜10の炭化水素鎖を有することを特徴とする請求項1のStx毒性阻害ペプチド。
  3. Stx1およびStx2に起因する疾患の治療薬であって、請求項1または2のStx毒性阻害ペプチドを含有することを特徴とする治療薬。
  4. Stx1およびStx2に起因する疾患が、腸管出血性大腸菌感染症または赤痢であることを特徴とする請求項3の治療薬。
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