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JP5646865B2 - 垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法に関するものである。
近年の情報処理の大容量化に伴い、各種の情報記録技術が開発されている。特に磁気記録技術を用いたHDDの面記録密度は年率100%程度の割合で増加し続けている。最近では、HDD等に用いられる2.5インチ径の磁気記録媒体にして、1枚あたり200GBを超える情報記録容量が求められるようになってきており、このような要請にこたえるためには1平方インチあたり400GBを超える情報記録密度を実現することが求められる。
HDD等に用いられる磁気記録媒体において高記録密度を達成するために、近年、垂直磁気記録方式が提案されている。垂直磁気記録方式に用いられる垂直磁気記録媒体は、磁気記録層の磁化容易軸が基板面に対して垂直方向に配向するよう調整されている。垂直磁気記録方式は従来の面内記録方式に比べて、超常磁性現象により記録信号の熱的安定性が損なわれ、記録信号が消失してしまう、いわゆる熱揺らぎ現象を抑制することができるので、高記録密度化に対して好適である。
垂直磁気記録方式に用いる磁気記録媒体としては、高い熱安定性と良好な記録特性を示すことから、CoCrPt−SiO垂直磁気記録媒体(非特許文献1参照)が提案されている。これは磁気記録層において、Coのhcp構造(六方最密結晶格子)の結晶が柱状に連続して成長した磁性粒子の間に、SiOが偏析した非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造を構成し、磁性粒子の微細化と保磁力Hcの向上をあわせて図るものである。非磁性の粒界(磁性粒子間の非磁性部分)には酸化物を用いることが知られており、例えばSiO、Cr、TiO、TiO、Taのいずれか1つを用いることが提案されている(特許文献1)。
特開2006−024346号公報
T. Oikawa et. al.、 IEEE Trans. Magn、 vol.38、 1976-1978(2002)
上記の如く高記録密度化している磁気記録媒体であるが、今後さらなる記録密度の向上が要請されている。高記録密度化のために重要な要素としては、保磁力Hcや逆磁区核形成磁界Hnなどの静磁気特性の向上と、オーバーライト特性(OW特性)やSNR(Signal to Noise Ratio:シグナルノイズ比)、トラック幅の狭小化などの電磁変換特性の向上がある。その中でもSNRの向上は、面積の小さな記録ビットにおいても正確に且つ高速に読み書きするために重要である。
SNRの向上は、主に磁気記録層の磁化遷移領域ノイズの低減により行われる。ノイズ低減のために有効な要素としては、磁気記録層の結晶配向性の向上、磁性粒子の粒径の微細化、および磁性粒子の孤立化が挙げられる。中でも、磁性粒子の孤立化が促進されると、隣接する磁性粒子との磁気的相互作用が遮断されるため、ノイズを大幅に低減することができ、SNRを著しく向上させることが可能となる。上述のグラニュラー構造の垂直磁気記録媒体では、酸化物によって粒界を形成することによって磁性粒子を孤立化および微細化し、SNRを向上させている。
しかし、むやみに磁性粒子の孤立化を促進させることは、磁気記録層の結晶配向性の劣化に繋がるおそれがある。磁気記録層の結晶配向性を劣化させてしまえば、当初の目的であるSNRの向上は成し得ない。このように、磁気記録媒体の更なる高記録密度化の達成には、高い保磁力Hcの確保と、SNRのさらなる向上を両立可能な新たな手法の確立が課題となっている。
本発明は、このような課題に鑑み、磁気記録層のSNRの向上を図り、更なる高記録密度化を達成し得る垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために発明者らが鋭意検討したところ、磁気記録層の成分分析を行うと、酸化物として含有されているはずの酸素の分量が少ないことに着目した。ここで、酸化物がスパッタリングの際にSiやTi等の元素と酸素に分解されているのか、当初からターゲット内で酸素が欠損しているのかは不明である。ともあれ成膜された磁気記録層に酸素が欠損しているとなると、余剰の元素が単体の原子として存在することになる。そして単体で存在する原子は、Coが結晶化する際に粒界に吐き出されず、磁性粒子の中に取り込まれると考えられる。その結果として磁性粒子の結晶配向性が低下し、SNRが低下している可能性があると考えた。
そこで、発明者は研究を重ね、欠損した酸素を付加して補うことにより、単体で存在する元素を酸化物にし、予定通り粒界に偏析させることができることを見出した。そして、磁気記録層の成分に酸化剤を混入して垂直磁気記録媒体を作製し、そのSNRの評価を行った。
しかし、上記の手法を用いた垂直磁気記録媒体のSNRは、酸化剤の混入による磁性粒子の結晶配向性の向上に伴って一旦は向上するものの、結晶配向性がある程度に達すると低下し始めることがわかった。したがって、その原因を突き止めるべく、かかる垂直磁気記録媒体を精査した結果、磁性粒子内における酸素量が大幅に変動し過ぎたため、今度は酸素過多の状態となり、結果としてSNRの低下に繋がっているということが考察された。
さらにしかし、酸化剤の混入量の変更のみでは、酸素の付加量の微細な調整が極めて困難であった。そこで、発明者は適正な量の酸素を付加すべく更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するために本発明にかかる垂直磁気記録媒体の代表的な構成は、基体上に少なくとも、柱状に連続して成長した磁性粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の磁気記録層を備える垂直磁気記録媒体において、磁気記録層の磁性粒子はCo、Cr、Ptを含み、磁気記録層はSiO、TiO、CrからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、A群よりもギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物からなるB群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物と、B群よりもギブスの自由エネルギーΔGが小さい酸化物からなるC群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物を含むことを特徴とする。
上記の構成によれば、磁気記録層の粒界部に含有される酸化物(A群)よりも、ギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物(B群)を含有させて、磁気記録層の成膜を行う。また、A群を酸化するB群の酸素量を制御するため還元剤としての酸化物(C群)を含有させる。したがって、A群の酸化物により磁性粒子の微細化、孤立化、電磁変換特性を向上させることができ、またA群の酸化物において酸素欠損が生じても、B群の酸化物が酸化剤となり補うことができる。さらにギブスの自由エネルギーΔGが小さい酸化物(C群)からなる還元剤によって、B群からA群に供給される酸素量を、B群自体の混入量を変更するよりも微細に調節することができる。これにより、酸化物の元素を磁性粒子から確実に排斥(粒界部に析出)させ、酸化物が磁性粒子の結晶中に残留することによる磁性粒子の結晶配向性の低下を防止することで、磁気記録層のSNRの向上を図り、更なる高記録密度化を達成し得る垂直磁気記録媒体を提供することが可能となる。
なお、C群の酸化物は、粒界部に含まれる酸化物から酸素が欠乏した組成であるとよい。これによれば、還元剤を混入して磁気記録層の成膜を行っても、還元剤は磁性粒子の結晶中に取り込まれることなく、粒界部に析出されることになる。したがって、磁性粒子の結晶配向性に影響を与えることなく、酸素を適正に調節することが可能となる。
なお、上記のA群とB群、B群とC群の関係は、ギブスの自由エネルギーΔGの関係であり、A群とC群の間には大小の制限はない。一方、B群とC群の関係においては、B群の酸化物とC群の酸化物で分子中の酸素数が異なることが好ましい。これにより、B群またはC群を単位量(例えばmol%)ごとに添加した場合に、最終的な酸素数を微調整することができる。例えば、B群がCoであって酸素数が4であるとき、C群をSiOとして酸素数が1であれば、Coによって大幅に増加させた酸素の一部を、少しずつSiOによって還元することができる。
C群の酸化物はSiO、TiO、Cr、Crであることよい。この構成によれば、Si、Ti、CrはA群に含まれる元素であり、A群の元素は磁気記録層の粒界部に排斥される。これにより、還元剤が磁性粒子に取り込まれることによる磁性粒子の結晶配向性の低下を防ぎ、SNRを担保したままの還元剤の供給が可能となる。
B群の酸化物はCoO、Co、CuO、AgO、WOを含むとよい。これらの酸化物の元素は、磁性粒子の結晶中に取り込まれたとしても磁性粒子の結晶配向性を低下させることはない。よって、磁気記録層のSNRを担保したままの酸素の供給が可能となる。
磁気記録層はCoCrPt-TiO-SiO-Co-SiOで構成されることよい。この構成によれば、磁性粒子であるCoCrPtの微細化および孤立化を、SiOによって促進させることができ、またTiOによって電磁変換特性(特にSNR)を向上させることができる。さらにCoによって、CoCrPtの結晶配向性を低下させることなくSiO、TiOへ酸素の供給ができ、SiOがCoに対する還元剤となることで、磁性粒子の結晶の結合性を担保したまま酸素量の微細な調整が可能となる。これにより、SNRが向上した垂直磁気記録媒体を提供することが可能となる。
本発明にかかる垂直磁気記録媒体の製造方法の代表的な構成は、基体上に、Co、Cr、Ptを含む金属と、SiO、TiO、CrからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、A群よりもギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物からなるB群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物と、B群よりもギブスの自由エネルギーΔGが小さい酸化物からなるC群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物とを含むターゲットを用いて磁気記録層を成膜することを特徴とする。
上述した垂直磁気記録媒体の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該垂直磁気記録媒体の製造方法にも適用可能である。
本発明によれば、磁気記録層のSNRの向上を図り、更なる高記録密度化を達成し得る垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することが可能となる。
本実施形態における垂直磁気記録媒体の構成を説明する図である。 酸化物の自由エネルギーを示すエリンガム図である。 酸化剤と還元剤を混在させた場合に排出される単元素の酸素の量を説明する図である。 C群の酸化物としてのSiOを添加した実施例の有効性を説明する図である。 C群の酸化物としてのSiOを添加した実施例の有効性をさらに説明する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(実施形態)
[垂直磁気記録媒体]
図1は、本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体100の構成を説明する図である。図1に示す垂直磁気記録媒体100は、ディスク基体110、付着層112、第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114c、前下地層116、第1下地層118a、第2下地層118b、非磁性グラニュラー層120、第1磁気記録層122a、第2磁気記録層122b、補助記録層124、保護層126、潤滑層128で構成されている。なお第1軟磁性層114a、スペーサ層114b、第2軟磁性層114cは、あわせて軟磁性層114を構成する。第1下地層118aと第2下地層118bはあわせて下地層118を構成する。第1磁気記録層122aと第2磁気記録層122bとはあわせて磁気記録層122を構成する。
ディスク基体110は、アモルファスのアルミノシリケートガラスをダイレクトプレスで円板状に成型したガラスディスクを用いることができる。なおガラスディスクの種類、サイズ、厚さ等は特に制限されない。ガラスディスクの材質としては、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。このガラスディスクに研削、研磨、化学強化を順次施し、化学強化ガラスディスクからなる平滑な非磁性のディスク基体110を得ることができる。
ディスク基体110上に、DCマグネトロンスパッタリング法にて付着層112から補助記録層124まで順次成膜を行い、保護層126はCVD法により成膜することができる。この後、潤滑層128をディップコート法により形成することができる。なお、生産性が高いという点で、インライン型成膜方法を用いることも好ましい。以下、各層の構成について説明する。
付着層112はディスク基体110に接して形成され、この上に成膜される軟磁性層114とディスク基体110との付着強度を高める機能と、この上に成膜される各層の結晶グレインを微細化及び均一化させる機能を備えている。付着層112は、ディスク基体110がアモルファスガラスからなる場合、そのアモルファスガラス表面に対応させる為にアモルファス(非晶質)の合金膜とすることが好ましい。
付着層112としては、例えばCrTi系非晶質層、CoW系非晶質層、CrW系非晶質層、CrTa系非晶質層、CrNb系非晶質層から選択することができる。中でもCoW系合金膜は、微結晶を含むアモルファス金属膜を形成するので特に好ましい。付着層112は単一材料からなる単層でも良いが、複数層を積層して形成してもよい。例えばCrTi層の上にCoW層またはCrW層を形成してもよい。またこれらの付着層112は、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、又は酸素を含む材料によってスパッタを行うか、もしくは表面層をこれらのガスで暴露したものであることが好ましい。
軟磁性層114は、垂直磁気記録方式において記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一時的に磁路を形成する層である。軟磁性層114は第1軟磁性層114aと第2軟磁性層114cの間に非磁性のスペーサ層114bを介在させることによって、AFC(Antiferro-magnetic exchange coupling:反強磁性交換結合)を備えるように構成することができる。これにより軟磁性層114の磁化方向を高い精度で磁路(磁気回路)に沿って整列させることができ、磁化方向の垂直成分が極めて少なくなるため、軟磁性層114から生じるノイズを低減することができる。第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成としては、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoCrFeB、CoFeTaZrなどのCo−Fe系合金、[Ni−Fe/Sn]n多層構造のようなNi−Fe系合金などを用いることができる。
前下地層116は非磁性の合金層であり、軟磁性層114を防護する作用と、この上に成膜される下地層118に含まれる六方最密充填構造(hcp構造)の磁化容易軸をディスク垂直方向に配向させる機能を備える。前下地層116は面心立方構造(fcc構造)の(111)面がディスク基体110の主表面と平行となっていることが好ましい。また前下地層116は、これらの結晶構造とアモルファスとが混在した構成としてもよい。前下地層116の材質としては、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nb、Taから選択することができる。さらにこれらの金属を主成分とし、Ti、V、Cr、Mo、Wのいずれか1つ以上の添加元素を含む合金としてもよい。例えばfcc構造を取る合金としてはNiW、CuW、CuCrを好適に選択することができる。
下地層118はhcp構造であって、磁気記録層122のCoのhcp構造の結晶をグラニュラー構造として成長させる作用を有している。したがって、下地層118の結晶配向性が高いほど、すなわち下地層118の結晶の(0001)面がディスク基体110の主表面と平行になっているほど、磁気記録層122の配向性を向上させることができる。下地層118の材質としてはRuが代表的であるが、その他に、RuCr、RuCoから選択することができる。Ruはhcp構造をとり、また結晶の格子間隔がCoと近いため、Coを主成分とする磁気記録層122を良好に配向させることができる。
下地層118をRuとした場合において、スパッタ時のガス圧を変更することによりRuからなる2層構造とすることができる。具体的には、下層側の第1下地層118aを形成する際にはArのガス圧を所定圧力、すなわち低圧にし、上層側の第2下地層118bを形成する際には、下層側の第1下地層118aを形成するときよりもArのガス圧を高くする、すなわち高圧にする。これにより、第1下地層118aによる磁気記録層122の結晶配向性の向上、および第2下地層118bによる磁気記録層122の磁性粒子の粒径の微細化が可能となる。
また、ガス圧を高くするとスパッタリングされるプラズマイオンの平均自由行程が短くなるため、成膜速度が遅くなり、皮膜が粗になるため、Ruの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、Coの微細化も可能となる。
さらに、下地層118のRuに酸素を微少量含有させてもよい。これによりさらにRuの結晶粒子の分離微細化を促進することができ、磁気記録層のさらなる孤立化と微細化を図ることができる。なお酸素はリアクティブスパッタによって含有させてもよいが、スパッタリング成膜する際に酸素を含有するターゲットを用いることが好ましい。
非磁性グラニュラー層120はグラニュラー構造を有する非磁性の層である。下地層118のhcp結晶構造の上に非磁性のグラニュラー層を形成し、この上に第1磁気記録層122a(または磁気記録層122)のグラニュラー層を成長させることにより、磁性のグラニュラー層を初期成長の段階(立ち上がり)から分離させる作用を有している。これにより、磁気記録層122の磁性粒子の孤立化を促進することができる。非磁性グラニュラー層120の組成は、Co系合金からなる非磁性の結晶粒子の間に、非磁性物質を偏析させて粒界を形成することにより、グラニュラー構造とすることができる。
本実施形態においては、かかる非磁性グラニュラー層120にCoCr−SiOを用いる。これにより、Co系合金(非磁性の結晶粒子)の間にSiO(非磁性物質)が偏析して粒界を形成し、非磁性グラニュラー層120がグラニュラー構造となる。なお、CoCr−SiOは一例であり、これに限定されるものではない。他には、CoCrRu−SiOを好適に用いることができ、さらにRuに代えてRh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Au(金)も利用することができる。また非磁性物質とは、磁性粒(磁性グレイン)間の交換相互作用が抑制、または、遮断されるように、磁性粒の周囲に粒界部を形成しうる物質であって、コバルト(Co)と固溶しない非磁性物質であればよい。例えば酸化珪素(SiOx)、クロム(Cr)、酸化クロム(CrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコン(ZrO)、酸化タンタル(Ta)を例示できる。
なお本実施形態では、下地層188(第2下地層188b)の上に非磁性グラニュラー層120を設けているが、これに限定されるものではなく、非磁性グラニュラー層120を設けずに垂直磁気記録媒体100を構成することも可能である。
磁気記録層122は、Co系合金、Fe系合金、Ni系合金から選択される硬磁性体の磁性粒の周囲に非磁性物質を偏析させて粒界を形成した柱状のグラニュラー構造を有している。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層120を設けることにより、そのグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長することができる。磁気記録層122は単層でもよいが、本実施形態では組成および膜厚の異なる第1磁気記録層122aと、第2磁気記録層122bとから構成されている。第1磁気記録層122aは膜厚は薄いが酸化物を少なめにして磁性粒子を大きくすることにより保磁力Hcを獲得し、主記録層たる第2磁気記録層122bでは膜厚を厚くして保磁力Hcを確保すると共に、酸化物を多めにして磁性粒子の孤立微細化を図ることによりSNRの向上を図っている。
本実施形態では、第1磁気記録層122aに(CoCrPt)−(Cr)や(CoCrPt)−(Cr)−(SiO)を用いることができる。これらの組成であれば、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に、非磁性物質であるCrおよびSiO(酸化物)が偏析して粒界を形成するため、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成させることができる。この磁性粒は、非磁性グラニュラー層のグラニュラー構造から継続してエピタキシャル成長している。第1磁気記録層122aの非磁性領域を形成するための非磁性物質としては、例えば酸化珪素(SiO)、クロム(Cr)、酸化クロム(Cr)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコン(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化鉄(Fe)、酸化ボロン(B)等の酸化物を例示できる。なお、BN等の窒化物、B等の炭化物も好適に用いることができる。
また、第2磁気記録層122bには非磁性物質として、SiO、TiO、CrからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、A群よりもギブスの自由エネルギーΔG(以下、単に「△G」として記載)が大きい酸化物であるCoO、Co、CuO、AgO、WO等からなるB群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物とを含む。具体例としては、(CoCrPt)-(TiO)-(SiO)-(Co)を用いることができる。第2磁気記録層122bにおいても、CoCrPtからなる磁性粒(グレイン)の周囲に、非磁性物質であるTiOおよびSiO(複合酸化物)が偏析して粒界を形成するため、磁性粒が柱状に成長したグラニュラー構造を形成することができる。またB群の酸化物であるCoはCoとOに分離し、Coは磁性粒子に入り込み(磁性粒子から排出されず)、OはA群の酸化物であるSiO、TiOの酸素欠損を補填する。
またさらに、第2磁気記録層122bには、上記のB群の酸化物を還元するC群の酸化物(還元剤)が含まれる。還元剤を構成するC群の酸化物としては、酸素に対するΔGがB群の酸化物以下である元素、例えば、SiO、TiO、Cr、Cr等の、粒界部に含まれる酸化物から酸素が欠乏した組成の元素を用いることができる。すなわち、第2磁気記録層122bは、Co、Cr、Ptを含む金属と、SiO、TiO、CrからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、A群よりもギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物からなるB群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物と、B群よりもギブスの自由エネルギーΔGが小さい酸化物からなるC群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物とを含むターゲットを用いて磁気記録層を成膜する。
これにより、還元剤が酸素を得たときに粒界に存在する酸化物と同一の組成となり、磁気記録層としての所望の機能を損なうことがない。還元剤はB群の酸化物から分離したOと結合(還元)し、B群からA群に供給される酸素量をB群自体の混入量を変更するよりも微細に調節することができる。また還元剤は、粒界部を形成する元素を用いているため、Oと結合した還元剤は磁性粒子から排出され、酸化物が磁性粒子の結晶中に残留することによる磁性粒子の結晶配向性の低下を防止できる。
図2は酸化物の自由エネルギーを示すエリンガム図である。図2に示すように、磁気記録層の粒界を構成するために有益な酸化物(A群)であるSiO、TiO、Cr、ZrO、Ta、Bよりも、B群の酸化物(酸化剤)はΔGが大きい必要がある。さらに、B群の酸化物の元素は単体の原子として排出され、磁性粒子の中に取り込まれる可能性がある。このためB群の酸化物は、酸化物として磁気記録層の特性を向上する必要はないが、単体の元素が磁性粒子の中に取り込まれても結晶配向性が低下しないものを選択する必要がある。そして種々の酸化物を検討した結果、B群の酸化物の元素をCo、Cu、Ag、Wのいずれかとすることができることがわかった。
なお、B群の酸化物としてはCoO、Co、CuO、AgO、WOから選択することができるが、1つとは限らず、複数の酸化物を選択することができる。A群の酸化物は、第1磁気記録層122aの酸化物と同様に、例えば酸化珪素(SiO)、クロム(Cr)、酸化クロム(CrxOy)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコン(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化鉄(Fe)、酸化ボロン(B)等の酸化物を例示できる。中でもSiO、TiO、Crを含んでいることが好ましい。
また、C群の還元剤は、B群よりもΔGが小さい必要がある。B群のA群に対する酸化剤としての機能を確保する必要があるからである。また、酸素と結合したC群の還元剤が、磁性粒子の結晶配向性に影響することがないようにその材料を選択する必要がある。この踏まえて検討した結果、C群の還元剤をSiO、TiO、Cr、Crからなる酸化物から選択できるということが判明した。このSi、Ti、CrはA群に含まれる元素であり、A群の元素は磁気記録層の粒界部に排斥される。このため、還元剤が磁性粒子に取り込まれることによる磁性粒子の結晶配向性の低下を防ぎ、SNRを担保したままの還元剤の供給が可能となる。
また、酸化剤としてのB群の酸化物の酸素数(例えばCoの場合、酸素数は4)よりも、C群の還元剤において欠乏した酸素数(例えばSiOがSiOに対して欠乏する酸素数は1)の方が、少ないことが望ましい。これにより、最終的に分離する酸素の量をより適切に調節することが可能となる。
図3は酸化剤と還元剤を混在させた場合に排出される単元素の酸素の量を説明する図である。例えば還元剤(B群の酸化物)がCoであり、還元剤がSiOであるとする。この場合、Coを1mol%添加させ、仮に全ての酸素が分離したとすると、4mol%の単原子の酸素が排出される。これに対し還元剤としてのSiOの添加量を0mol%から1mol%ずつ増やしていくと、SiOが酸素を取り込んでSiOになるために、排出される単原子の酸素の量が1mol%ずつ減っていくことがわかる。実際には完全に分離・結合するわけではないので数値は例示に過ぎないが、多すぎる単原子の酸素を取り込むことができることに変わりはない。
なお、本実施形態では、第1磁気記録層122aにおいて1種類の酸化物、第2磁気記録層122bにおいてA群、B群の酸化物および還元剤を用いているが、これに限定されるものではなく、第1磁気記録層122aまたは第2磁気記録層122bのいずれかまたは両方においてA群、B群の酸化物および還元剤を用いることも可能である。したがって、本実施形態とは異なり、磁気記録層122が1層のみで構成される場合、かかる磁気記録層122はCoCrPt−TiO−SiO-Co-SiOからなることが好ましい。
補助記録層124は基体主表面の面内方向に磁気的にほぼ連続した磁性層である。補助記録層124は磁気記録層122に対して磁気的相互作用を有するように、隣接または近接している必要がある。補助記録層124の材質としては、例えばCoCrPt、CoCrPtB、またはこれらに微少量の酸化物を含有させて構成することができる。補助記録層124は逆磁区核形成磁界Hnの調整、保磁力Hcの調整を行い、これにより耐熱揺らぎ特性、OW特性、およびSNRの改善を図ることを目的としている。この目的を達成するために、補助記録層は垂直磁気異方性Kuおよび飽和磁化Msが高いことが望ましい。なお本実施形態において補助記録層124は磁気記録層122の上方に設けているが、下方に設けてもよい。
なお、「磁気的に連続している」とは磁性が連続していることを意味している。「ほぼ連続している」とは、補助記録層124全体で観察すれば一つの磁石ではなく、結晶粒子の粒界などによって磁性が不連続となっていてもよいことを意味している。粒界は結晶の不連続のみではなく、Crが偏析していてもよく、さらに微少量の酸化物を含有させて偏析させても良い。ただし補助記録層124に酸化物を含有する粒界を形成した場合であっても、磁気記録層122の粒界よりも面積が小さい(酸化物の含有量が少ない)ことが好ましい。補助記録層124の機能と作用については必ずしも明確ではないが、磁気記録層122のグラニュラー磁性粒と磁気的相互作用を有する(交換結合を行う)ことによってHnおよびHcを調整することができ、耐熱揺らぎ特性およびSNRを向上させていると考えられる。またグラニュラー磁性粒と接続する結晶粒子(磁気的相互作用を有する結晶粒子)がグラニュラー磁性粒の断面よりも広面積となるため磁気ヘッドから多くの磁束を受けて磁化反転しやすくなり、全体のOW特性を向上させるものと考えられる。
保護層126は、真空を保ったままカーボンをCVD法により成膜して形成することができる。保護層126は、磁気ヘッドの衝撃から垂直磁気記録媒体100を防護するための層である。一般にCVD法によって成膜されたカーボンはスパッタ法によって成膜したものと比べて膜硬度が向上するので、磁気ヘッドからの衝撃に対してより有効に垂直磁気記録媒体100を防護することができる。
潤滑層128は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。PFPEは長い鎖状の分子構造を有し、保護層126表面のN原子と高い親和性をもって結合する。この潤滑層128の作用により、垂直磁気記録媒体100の表面に磁気ヘッドが接触しても、保護層126の損傷や欠損を防止することができる。
以上の製造工程により、垂直磁気記録媒体100を得ることができた。次に、本発明の特徴である磁気記録層122についてさらに詳述する。
上記のように、磁気記録層122(第2磁気記録層122b)は、Co系合金と、SiO、TiO、CrからなるA群から選択される少なくとも1つの酸化物と、A群よりもΔGが大きい酸化物からなるB群の酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物と、B群の酸化物を還元する還元剤とを含んで構成されている。
換言すれば、磁気記録層122の粒界部に含有される酸化物(A群)よりも、ギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物(B群)と、ΔGがB群より小さい還元剤を含有させて、磁気記録層122の成膜を行う。ΔGが大きいほど元素と酸素が分離しやすく、ΔGが小さいと安定な酸化物になりやすいことを意味している。このため、A群とB群と還元剤を混在させてスパッタリングを行うと、A群の酸化物はB群の酸化物よりも酸化されやすいため、B群の酸化物は還元され、A群の酸化物が酸化される。つまり、B群の酸化物から分離した酸素が、A群の酸化物の元素と結合して酸化物を構成する。また、そのときの余剰した酸素は還元剤と結合する。すなわちB群の酸化物の元素はA群の酸化物の元素に対して酸素を供給する担体として、還元剤の元素は余剰な酸素を回収する担体として機能する。これによりA群の酸化物において酸素欠損が生じていても、B群の酸化物から分離した酸素によって補われて酸化物となり、A群の酸化物は粒界に偏析して析出し、余剰な酸素は、還元剤と結合することで、磁性粒子の結晶中に残留することなく粒界部に析出される。したがって、A群の酸化物を用いて磁性粒子の孤立化や微細化などの効果を得ると共に、A群の酸化物の元素を磁性粒子から確実に排斥する(粒界に析出させる)ことによって結晶配向性の低下を防止し、SNRの向上を図ることができる。なお、還元剤は、B群より供給される酸素の量を調節するという役割のため、当該還元剤とA群との△Gの大小関係は不問である。
一方、B群の酸化物においては、より大きな酸素欠損が生じることになり、B群の酸化物の元素が単体の原子として排出される。このB群の酸化物の元素は磁性粒子の中に取り込まれる可能性があるが、B群の酸化物の元素をCo、Cu、Ag、Wのいずれかとすることにより、磁性粒子の中に取り込まれても結晶配向性が低下することはない。
また、余剰な酸素と結合する還元剤は、粒界部に含まれる酸化物から酸素が欠乏した組成、例えばSiO、TiO、Cr、CrからなるC群の酸化物から選択されているため、粒界部に排斥される。このため、還元剤が磁性粒子に取り込まれることによる磁性粒子の結晶配向性の低下を防ぎ、SNRを担保したままの還元剤の供給が可能となる。
(実施例)
ディスク基体110上に、真空引きを行った成膜装置を用いて、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、付着層112から補助記録層124まで順次成膜を行った。なお、スパッタリング成膜時の圧力については、断りのない場合は0.6Pa、磁気記録層122の成膜時は3Paとした。付着層112は、Cr−50Ti(10nm)とした。軟磁性層114は、第1軟磁性層114a、第2軟磁性層114cの組成は92(60Co−40Fe)−5Zr−3Ta(それぞれ20nm)とし、スペーサ層114bの組成はRu(0.7nm)とした。前下地層116の組成はfcc構造の93Ni−7W合金(8nm)とした。第1下地層118aは所定圧力(低圧:例えば0.6〜0.7Pa)のAr雰囲気下でRu膜を10nm成膜した。第2下地層118bは、酸素が含まれているターゲットを用いて所定圧力より高い圧力(高圧:例えば4.5〜7Pa)のAr雰囲気下で、Ru膜を10nm成膜した。非磁性グラニュラー層120の組成は非磁性の88(Co−50Cr)−12(SiO)とした。第1磁気記録層122aは粒界部に酸化物の例としてCrを含有し、95(70Co−12Cr−18Pt−)−5(Cr)を2nm形成した。第2磁気記録層122bは、粒界部にA群からなる酸化物とB群からなる酸化物とC群からなる酸化物(還元剤)を含有させ、その組成および有無を下記のように様々に変えて実施例と比較例を作成した。補助記録層124の組成は62Co−18Cr−15Pt−5B(5.5nm)とした。保護層126はCVD法によりCおよびCNを用いて4nm成膜し、潤滑層128はディップコート法によりPFPEを用いて1nm形成した。
以下に、本実施形態にかかるC群からなる酸化物(還元剤)を添加した実施例の有効性を検討する。上述したように、本実施形態にかかる垂直磁気記録媒体では、磁気記録層122(詳細には第2磁気記録素122b)に酸化剤であるB群の酸化物と、還元剤であるC群の酸化物とを含有させている。例えば、酸化剤であるB群の酸化物としてはCoを用い、還元剤であるC群の酸化物としてはSiOを用いることができる。
例えば、Coを1mol%添加したとき、全ての酸素原子が単原子として排出されたと仮定すると、4mol%の酸素原子が排出される。このとき、酸化剤も還元剤も添加しない場合に比べてSNRが向上したとする。ここで、還元剤としてのSiOを1mol%添加した場合、全てのSiOがSiOになると仮定すると、単原子の酸素は3mol%に減少する。このとき、Coを1mol%添加した時点、すなわち4mol%の酸素原子を第2磁気記録層122bへ添加した時点でのSNRの値が、Coの添加量の増大とともにSNRの値が描くピークを過ぎていた場合、SiOの添加によって磁気記録層122への酸素原子の添加量が減少することで、SNRの値をよりピークに近い値に向上できると考えられる。
上記の説明で挙げた組成やピークの位置等は一例に過ぎず、磁気記録層全体の組成によって適宜変更される。しかし、ここで重要なことは、B群の酸化剤とC群の還元剤とを併用することにより、任意の量の単原子の酸素を膜中に排出できることである。これにより酸素欠損により不足した酸素を適切に過不足なく補うことが可能となり、磁気記録層122の本来の機能を十分に発揮させることが可能となる。
図4は本実施形態にかかるC群の酸化物としてのSiOを添加した実施例の有効性を説明する図である。図4(a)は実施例および比較例の磁気記録層122(詳細には第2磁気記録層122b)の組成とそのSNRの測定値を示す表、図4(b)は図4(a)のSNRの測定値を例示するグラフであって、実施例および比較例を、Coが0mol%の場合の測定値を標準値としてそれぞれ標準化したグラフである。なお、図4(a)では、実施例においてCoが0mol%の場合(SNR=17.3)は比較例に分類されるが、実施例の標準化にあたってはその値を標準値として利用している。また、図4(b)の横軸は、B群の酸化物の例として添加したCoの添加量であり、縦軸はSNRである。
図4(a)に示すように、実施例の磁気記録層122(第2磁気記録層122b)の組成は、(89−x)(70Co−13Cr−17Pt)-5(SiO)-5(TiO)-x(Co)−1(SiO)とし、Coの添加量(x=mo1%)を順次変更して試験を行った。比較例の磁気記録層122(第2磁気記録層122b)の組成は、(90−x)(70Co−13Cr−17Pt)-5(SiO)-5(TiO)-x(Co)とし、実施例と同様にCoの添加量(x=mo1%)を順次変更して試験を行った。なお、第2磁気記録層122b以外の膜組成については、実施例および比較例ともに同様の組成とした。
図4(b)においてまず比較例を参照すると、Coを1mo1%添加することによってSNRが向上している。これは、SiO等の酸化物を含むターゲットを用いて成膜した際に、SiO等よりもギブスの自由エネルギーΔGが大きい(不安定な)Coを添加することで、成膜中にCoから分離したO(酸素原子)が供給され、単原子となったSiおよびCrを酸化させ、磁性粒子の分離が促進されたためと考えられる。また、添加したCoから分離したCoが磁性粒子内部へ入り、磁気記録層122の出力が増加するためと考えられる。
しかし、Coの添加量が2mol%以上になると、SNRが急激に低下する傾向にある。これは、Coの添加量が2mol%以上になると、Coから分離したOおよびCoの磁性粒子への供給が過剰になり、磁性粒子内部のCrが過剰に酸化して磁性粒子同士の相互作用が強くなること、および磁性粒子内部のCoの量が過剰になること等によってノイズが増え、SNRが低下したものと考えられる。そして、Coを3mol%添加させた時点で、SNRの値が、Coの添加量が0mol%である標準値よりも低下している。
比較例では、Coの添加量は1mol%にSNRのピークを有していることから、真のピークは0〜1mol%に存在すると考えられる。換言すれば、Coを1mol%添加した時点で、その添加量は既に過剰であると考えることができる。
一方、実施例を参照すると、Coを1mol%添加することによって、比較例と同じくSNRが向上している。しかしそれだけではなく、Coを1mol%添加した実施例のSNRの値は、同じくCoを1mol%添加した比較例の値を超えている。実施例では、Coを3mol%添加させても、そのSNRの値は標準値17.3dBよりも約0.8dB高く、その値は18.1dBと一般に高記録密度化に必要とされるSNR18.0dB以上という条件を満たしている。そして、Coを5mol%添加しても比較例のような急激なSNRの低下は現れなかった。これらは、SiOがCoに対する還元剤として機能することで、Coによる磁性粒子へのOの供給が微細に調節され、上述した0〜1mol%に存在すると考えられるSNRの真のピークにより近い値のSNRが発揮された結果であると考えられる。
上記のように、図4からは、酸化剤であるCoと還元剤であるSiOとを組み合わせて磁気記録層122の成膜に用いることにより、酸素原子の供給量の微細な調節が可能となり、より適正な量の酸素原子を供給できるようになったことが分かる。またSiOを添加することによって、Coの添加量の増加によるSNRの急激な低下を防止できるため、磁気記録層122の成膜時、ひいては垂直磁気記録媒体100の生産時の安定性も高まることが予想される。
図5は、本実施形態にかかるC群の酸化物としてのSiOを添加した実施例の有効性をさらに説明する図である。図5(a)は、実施例の磁気記録層122(第2磁気記録層122b)の組成とそのSNRの測定値を示す表、図5(b)は図5(a)のSNRの測定値を例示するグラフである。図5(b)の横軸は、C群の酸化物としてのSiOの添加量であり、縦軸はSNRである。なお、図5(a)および図5(b)においても、図4と同様に、Coが0mol%の場合(比較例に分類)のSNRの測定値を標準値とし、それぞれのSNRの値を標準化している。
図5(a)および図5(b)では、図4においてCoを3mol%添加させた場合の実施例に対し、SiOの添加量(y=mo1%)を変更することによるSNRの値の推移を示している。図5(a)に例示するように、実施例の組成は(87−y)(70Co−13Cr−17Pt)-5(SiO)-5(TiO)-3(Co)−y(SiO)である。図5(a)では、SiOの添加量(y=mo1%)が0mol%の場合を比較例としている。
図5(b)に示すように、SiOを1mol%添加することによって、実施例のSNRは比較例よりも向上する。そして、SiOの添加量が2mol%以上になると、SNRの値は低下する傾向に推移する。そして、SiOの添加量が3mol%まで増加すると、SNRの値はSiOの添加量が0mol%の場合とほぼ同じ値にまで低下する。これは、SiOの添加が過剰量となると、Coによる磁性粒子の分離促進作用が失われてしまうためと考えられる。
図5からは、Coを3mol%添加させたターゲットの場合、SiOの添加量は、少なくとも0mol%〜2mol%の範囲であれば、SNRを向上させることが可能であることが分かる。
上記説明したように、実施例では、酸化剤としてのCoを添加するだけでなく、さらに還元剤としてのSiOを含有することで、SNRを向上させることができた。これは、Coよりもギブスの自由エネルギーΔGが小さいSiOを含有させることで、Coから生じる余剰のOを吸着させ、磁性粒子を構成するCrの酸化を最低限に留めることにより、SNRのさらなる向上を図ることができたものと考えることができる。
上記のとおり、磁気記録層を成膜するためのターゲットに、粒界部を主に形成するA群の酸化物と、A群よりもギブスの自由エネルギーΔGが大きい酸化物からなるB群の酸化物と、B群よりもギブスの自由エネルギーΔGが小さいC群の酸化物を含ませることにより、磁気記録媒体の結晶配向性を向上させ、SNRを向上させることができた。ここで、C群の酸化物は、B群の酸化物の放出酸素数よりも少ない数の酸素欠損を有することが好ましい。特に、B群の酸化物から出る酸素の数とC群の酸化物が吸着する酸素の数が異なることにより、B群またはC群を単位量(例えばmol%)ごとに添加した場合に、最終的な酸素数を微調整することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、垂直磁気記録方式のHDD(ハードディスクドライブ)などに搭載される垂直磁気記録媒体および垂直磁気記録媒体の製造方法に利用することができる。
100…垂直磁気記録媒体
110…ディスク基体
112…付着層
114…軟磁性層
114a…第1軟磁性層
114b…スペーサ層
114c…第2軟磁性層
116…前下地層
118…下地層
118a…第1下地層
118b…第2下地層
120…非磁性グラニュラー層
122…磁気記録層
122a…第1磁気記録層
122b…第2磁気記録層
124…補助記録層
126…保護層
128…潤滑層

Claims (2)

  1. 基体上に少なくとも、柱状に連続して成長した磁性粒子の間に非磁性の粒界部を形成したグラニュラー構造の磁気記録層を備える垂直磁気記録媒体において、
    前記磁性粒子はCo、Cr、Ptを含み、
    前記磁気記録層はCoCrPt-TiO2-SiO2-Co3O4-SiOで構成されることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 基体上に、
    Co、Cr、Ptを含む金属と、
    TiO2、SiO2、Co3O4、SiOを含むターゲットを用いて磁気記録層を成膜することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
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