JP5648766B2 - チルト式ステアリングコラム装置 - Google Patents
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Description
本発明は、自動車用ステアリング装置に組み込まれる、チルト式ステアリングコラム装置に関する。
図5に示すように、自動車用ステアリング装置は、ステアリングホイール1の回転が、ステアリングシャフト5、自在継手7、中間シャフト8、自在継手9を介して、ステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達され、入力軸3の回転に伴って、左右1対のタイロッド4が押し引きされて、前車輪に舵角が付与されるように構成されている。ステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、車体に支持されたステアリングコラム6に回転自在に支持される。なお、図示の例では、電動式パワーステアリング装置が組み込まれており、補助動力源となる電動モータ10が、ステアリングコラム6の前端部に固定されたハウジング11に、支持されている。
自動車用ステアリング装置には、運転者の体格や運転姿勢に応じてステアリングホイール1の高さ位置を調節するためのチルト機構が組み込まれている。チルト機構を備えるステアリング装置の構造は、たとえば、特開2009−227181号公報、特開2010-254159号公報、特開2011-121443号公報などに記載されている。図5に示した従来構造では、ハウジング11の上部前端部が、車体の幅方向に配置されたチルト軸13により、車体12に対して揺動変位可能に支持される。また、ステアリングコラム6の軸方向中間部の後端寄り部分には、幅方向に離隔した1対の支持板部15を備え、車体12に対して支持される、支持ブラケット14が設置されている。ステアリングコラム6の軸方向中間部の後端寄り部分は、1対の支持板部15により幅方向両側から挟まれた状態で、支持ブラケット14を介して車体12に対して支持される。ステアリングコラム6の軸方向中間部下面で1対の支持板部15に挟持される部分には、変位ブラケット16が設けられている。
1対の支持板部15のそれぞれには、チルト軸13を中心とする円弧状で上下方向に伸長する長孔17が形成されている。また、変位ブラケット16の一部でこれらの長孔17の一部に整合する部分に通孔18が形成されている。なお、図5に記載された構造には、ステアリングホイール1の上下位置に加えて、前後位置も調節できるチルト・テレスコピック機構が組み込まれているため、通孔18は、ステアリングシャフト5およびステアリングコラム6の軸方向に伸長する長孔として形成されている。これに合わせて、ステアリングシャフト5およびステアリングコラム6は伸縮可能な構造を備えている。
図6および図7は、特願2011−214698号公報に記載された構造を有する、チルト・テレスコピック機構を備えるステアリング装置に組み込まれるチルト式ステアリングコラム装置を示している。このチルト式ステアリングコラム装置において、ステアリングコラム6は、後側に配置したアウタコラム19の前部と前側に配置したインナコラム20の後部とが摺動可能に嵌合して、その全長が伸縮可能となるように構成されている。アウタコラム19は、たとえば軽合金をダイキャスト成形することにより製造され、その前部にはスリット21が設けられ、その内径が弾性的に拡縮可能となっている。スリット21を幅方向両側から挟む部分には、変位ブラケット16を構成する1対の被挟持板部22が設けられている。これらの被挟持板部22のそれぞれに、前後方向に伸長する通孔18が長孔として形成されている。支持ブラケット14は、ステアリングコラム6の上側に配置された上板部34、および、この上板部34の幅方向両端部から下方に向けて直角に折れ曲がり、変位ブラケット16を幅方向両側から挟持する部分に配置された、1対の支持板部15から構成される。このうち、1対の支持板部15には、チルト軸13(図5参照)を中心とする部分円弧状で上下方向に伸長する長孔17が形成されている。そして、これらの長孔17および通孔18に、チルトボルト、押し引き用ロッドなどのチルト用杆状部材23が、幅方向に挿通されている。支持ブラケット14は、上板部34の上面に溶接固定された係止部材35を介して、車体12(図5参照)に支持固定された車体側ブラケット36に対し支持されている。
チルト用杆状部材23の軸方向一端部には、チルトレバーである調節レバー24が設けられ、チルト用杆状部材23の軸方向他端部には、アンカ部25が設けられ、チルト用杆状部材23の軸方向中間部の一端寄り部分には、カム装置26が設けられている。このような構成により、調節レバー24の揺動に基づいて1対の支持板部15の内側面同士の間隔を拡縮するチルトロック機構が構成される。アンカ部25は、ボルトの頭部のように、全体が円板状であり、その内側面には、第1の係合凸部27が形成されている。第1の係合凸部27は、一方(図7の右方)の長孔17に、この長孔17に沿った変位のみを可能に係合している。したがって、チルト用杆状部材23は、長孔17に沿って昇降することはできるが、それ自身の軸を中心として回転することはない。
カム装置26は、駆動側カム28と、押圧部材として機能する被駆動側カム29とが組み合わされて構成される。駆動側カム28および被駆動側カム29は、それぞれ全体を円輪状に形成され、かつ、チルト用杆状部材23が挿通する中心孔を有する。駆動側カム28と被駆動側カム29の互いに対向する面には、それぞれが周方向に関して凹凸が連続するカム面(駆動側カム面と被駆動側カム面)が形成されている。被駆動側カム29の内側面には、第2の係合凸部30が形成されており、第2の係合凸部30は、他方(図7の左方)の長孔17に、この長孔17に沿った変位のみを可能に係合している。したがって、被駆動側カム29も、長孔17に沿って昇降することはできるが、それ自身の軸を中心として回転することはない。なお、「内側面」は、ステアリングコラム6の幅方向に関して中央寄りの側面と定義され、また、「外側面」は、ステアリングコラム6の幅方向に関して外寄りの側面と定義される。駆動側カム28は、調節レバー24の基端部に結合固定されており、調節レバー24の往復揺動に伴って、チルト用杆状部材23の周囲で往復回転するように構成されている。なお、チルト用杆状部材23の他端部に螺着したナット31と調節レバー24の基端部外側面との間には、駆動側カム28に作用するスラスト荷重を支承しつつ、駆動側カム28の往復揺動を可能にする、スラストベアリング32が設けられている。なお、ナット31は、かしめなどによって緩み止めが図られている。
ステアリングホイール1の位置調節を行う際には、調節レバー24を所定方向(一般的には下方)に揺動させることにより、カム装置26の軸方向寸法を縮め、被駆動側カム29とアンカ部25との間隔を拡げる。この結果、1対の支持板部15の内側面と被挟持板部22の外側面との当接部の面圧が低下ないしは喪失し、かつ、アウタコラム19の前端部の内径が弾性的に拡がり、アウタコラム19の前端部内周面とインナコラム20の後端部外周面との当接部の面圧が低下する。この状態で、チルト用杆状部材23が、長孔17および通孔18内で動ける範囲内で、ステアリングホイール1の上下位置および前後位置を調節することが可能となる。ステアリングホイール1を所望の位置に移動させた後、調節レバー24を逆方向(一般的には上方)に揺動させて、カム装置26の軸方向寸法を拡げ、支持板部15の内側面同士の間隔を縮めれば、支持板部15の内側面と被挟持板部22の外側面との当接部の面圧が上昇し、かつ、アウタコラム19の前端部の内径が弾性的に縮まって、アウタコラム19の前端部内周面とインナコラム20の後端部外周面との当接部の面圧が上昇し、ステアリングホイール1が、調節後の位置に保持される。
なお、支持ブラケットを構成する1対の支持板部の外側面を押圧する力を調節して、ステアリングホイールの位置を調節可能にしたり、このステアリングホイールを調節後の位置に保持したりする機構は、図6および図7に示した構造のほかにも、各種の構造が知られている。たとえば、チルト用杆状部材がそれ自身の中心軸回りの回転を可能に支持される構造も知られている。この構造では、アンカ部25と一方の支持板部15の外側面との間にスラストベアリングが設けられ、かつ、チルト用杆状部材23の他端部に調節レバー24の基端部が結合固定される。あるいは、アンカ部25の第1の係合凸部27が、一方の長孔17に、この長孔17に沿った変位のみを可能に係合しており、かつ、チルト用杆状部材23の他端部に螺着され、押圧部材として機能するナット31に、調節レバー24の基端部が結合固定されている構造も知られている。この構造では、調節レバー24によりナット31を回転させることで、ナット31とアンカ部25との間隔が拡縮される。
いずれの構造においても、少なくとも1箇所で、係合凸部が、一方の長孔に、この長孔に沿った変位を可能に、かつ、チルト用杆状部材を中心とする回転が阻止された状態で係合していることが必要である。また、ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を十分に確保するためには、調節レバー24の操作により、アンカ部25と被駆動側カム29などにより構成される押圧部材との間隔を縮めた状態で、1対の支持板部15の内側面と変位ブラケット16の外側面との当接部の面圧を確保する必要がある。そして、これらの当接部の面圧を確保するためには、1対の支持板部15のうちで、変位ブラケット16を挟持している部分の間隔を確実に縮める必要がある。図6および図7に示したように、変位ブラケット16がステアリングコラム6の下側に設けられた構造の場合、これらの当接部の面圧を確保することは比較的容易である。この理由は、ステアリングホイール1を調節範囲の上端に位置させた場合でも、1対の支持板部15のうちで変位ブラケット16を挟持している部分が、これらの支持板部15の上端から離れており、この挟持部分同士を近付ける方向に作用するモーメントを比較的大きくできるためである。
これに対して、特開2004−001562号公報に記載されているように、変位ブラケットがステアリングコラムの上側に設けられた構造では、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させた場合に、1対の支持板部の内側面と変位ブラケットの外側面との当接部の面圧を確保しがたくなる。図8〜図10は、ステアリングコラム6aを構成するアウタコラム19aの上側に変位ブラケット16aを設けた構造の1例を示している。この構造には、変位ブラケット16aがステアリングコラム6aの下方に突出していないため、衝突事故の際に運転者の膝などを保護するための設計の自由度が向上するといった利点がある。
しかしながら、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させると、変位ブラケット16aが、支持ブラケット14aを構成する1対の支持板部15aの上端部(基端部)のきわめて近傍に位置する状態となる。調節レバー24aの操作に基づき、アンカ部25と被駆動側カム29との間隔を縮めた場合、1対の支持板部15aは、それぞれの上端部を中心に変位する。これらの支持板部15aに作用するモーメントは、支持板部15aの変位中心となる支持板部15aの上端部に近いほど小さくなる。このため、図8〜図10に示した構造において、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させた状態で、1対の支持板部15aの内側面と変位ブラケット16aの外側面の当接部の面圧を確保しようとすると、図6および図7の構造と比較して、調節レバー24aと1対の支持板部15aの上端部との距離が短く、支持板部15a同士を互いに近づける方向に作用するモーメントが小さいため、調節レバー24aに加える操作力を大きくする必要がある。このように、ステアリングホイール1の上下位置の相違に伴って、調節レバー24aの操作力に大きな差が生じることは、調節レバー24aを操作する運転者に違和感を与えるため、好ましくない。
1対の支持板部15aの高さ寸法を大きくして、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させた状態でも、変位ブラケット16aと支持板部15aの上端部との距離を確保できる構成を採用すれば、このような違和感を緩和することができる。ただし、この構成では、車体側に設ける、支持ブラケット14aの組み付け部分の高さ位置が同じである限り、ステアリングコラム6aの設置位置がより下側に位置することになるため、ステアリングコラム装置の設置空間に余裕がある場合を除けば、この構成を採用することは難しい。
特開2004−001562号公報に記載された構造の場合、アンカ部および被駆動側カムの内側面の上半部を下半部に比べて凹ませたり、支持板部の外側面で長孔の上端部の周囲部分を凹ませたりしている。ただし、前者の構造では、アンカ部および被駆動側カムの組み付け方向が限定されるため、組み付け作業性が低下する。一方、後者の構造では、面押し加工などにより支持板部の外側面を凹ませる工程が余分に必要になるだけでなく、この加工に伴って生じたバリを除去する工程も必要になり、製造コストが嵩んでしまう。
本発明は、上述のような事情に鑑みて、ステアリングホイールの上下位置にかかわらず、調節レバーの操作に要する力に大きな差を生じさせることがなく、低コストで製造すること可能なチルト式ステアリングコラム装置を提供することにある。
本発明のチルト式ステアリングコラム装置は、
前部に幅方向に設けられたチルト軸を中心として揺動変位するステアリングコラムと、
該ステアリングコラムの軸方向中間部に固設された変位ブラケットと、
該ステアリングコラムの内径側に回転自在に支持されたステアリングシャフトと、
車体に支持される上板部、および、該上板部から下方に垂れ下がり、前記変位ブラケットを幅方向から両側から挟む1対の支持板部を備えた支持ブラケットと、
前記1対の支持板部のそれぞれの互いに整合する部分に設けられ、前記チルト軸を中心とする部分円弧状で上下方向に伸長する1対の長孔と、
前記変位ブラケットの一部で前記1対の長孔に整合する部分に、幅方向に貫通するように形成された通孔と、
前記1対の長孔および前記通孔を幅方向に挿通したチルト用杆状部材と、
該チルト用杆状部材の基端部に設けられたアンカ部と、
該チルト用杆状部材の先端部に設けられたチルトレバーと、
該チルトレバーの揺動に基づいて前記アンカ部との間隔を拡縮する押圧部材と、
を備え、前記アンカ部と前記押圧部材との間隔の拡縮により、前記1対の支持板部の内側面同士の間隔が拡縮されるようになっている。
前部に幅方向に設けられたチルト軸を中心として揺動変位するステアリングコラムと、
該ステアリングコラムの軸方向中間部に固設された変位ブラケットと、
該ステアリングコラムの内径側に回転自在に支持されたステアリングシャフトと、
車体に支持される上板部、および、該上板部から下方に垂れ下がり、前記変位ブラケットを幅方向から両側から挟む1対の支持板部を備えた支持ブラケットと、
前記1対の支持板部のそれぞれの互いに整合する部分に設けられ、前記チルト軸を中心とする部分円弧状で上下方向に伸長する1対の長孔と、
前記変位ブラケットの一部で前記1対の長孔に整合する部分に、幅方向に貫通するように形成された通孔と、
前記1対の長孔および前記通孔を幅方向に挿通したチルト用杆状部材と、
該チルト用杆状部材の基端部に設けられたアンカ部と、
該チルト用杆状部材の先端部に設けられたチルトレバーと、
該チルトレバーの揺動に基づいて前記アンカ部との間隔を拡縮する押圧部材と、
を備え、前記アンカ部と前記押圧部材との間隔の拡縮により、前記1対の支持板部の内側面同士の間隔が拡縮されるようになっている。
特に、本発明のチルト式ステアリングコラム装置においては、前記1対の長孔のうちの少なくとも一方の長孔の上端部に、前記アンカ部または前記押圧部材の上半部の前後方向に関する幅寸法以上の幅寸法、好ましくより大きい幅寸法を有する幅広部が設けられている。本発明は、特に、前記変位ブラケットが前記ステアリングコラムの上側に設けられているステアリングコラム装置に好適に適用される。なお、前記アンカ部または前記押圧部の上半部は、前記チルト用杆状部材を前記1対の長孔内で最も上端部側に位置させた状態で、幅方向から見て、前記幅広部と重畳する、これらの部材の上側の半部を意味し、これらの上側70%〜30%程度、好ましくは60%〜40%程度の範囲に設定される。
本発明の一態様では、前記幅広部は、前記一方の長孔の上端部にのみ設けられ、かつ、前記1対の長孔のうちの他方の長孔の上端縁が、該一方の長孔の上端縁よりも下側に位置するようになっている。そして、前記チルト用杆状部材を前記他方の長孔の上端まで移動させた状態で、前記アンカ部または前記押圧部材の下半部が前記幅広部よりも下側に位置するようになっている。すなわち、前記アンカ部または前記押圧部材の下半部は、前記チルト用杆状部材を前記1対の長孔内で最も上端部側に位置させた状態で、幅方向から見て、前記幅広部と重畳しない、これらの部材の下側の半部を意味し、これらの部材の下側30%〜70%程度、好ましくは40%〜60%程度の範囲に設定される。また、本発明の別の態様では、前記1対の長孔の上端部のいずれにも、前記幅広部が設けられる。この場合、ステアリングホイールを調節範囲の上端位置に移動させた状態で、前記アンカ部および前記押圧部材の下半部が前記幅広部よりも下側に位置するように、前記チルト用杆状部材の上昇量を規制するための規制手段を設けることが好ましい。
本発明によれば、ステアリングホイールの上下位置にかかわらず、調節レバーを操作するのに要する力に大きな差が生じないチルト式ステアリングコラム装置が提供される。すなわち、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させ、変位ブラケットが支持ブラケットを構成する1対の支持板部の上端部近傍部分に位置する状態でも、アンカ部と押圧部材とのうちの少なくとも一方の上半部は、長孔の上端部に設けられた幅広部の存在により、支持板部の外側面と当接することがない。したがって、アンカ部と押圧部材とのうちの少なくとも一方は、支持板部の上端部から少し離れた、下半部のみで、一方の支持板部を他方の支持板部に対して押圧することになる。
アンカ部と押圧部材の下半部は、支持板部の変位中心となる、支持板部の上端部からある程度離れているので、ステアリングホイールの高さ位置が最も上側にある場合でも、アンカ部と押圧部材の下半部により支持板部に作用するモーメントが小さすぎることなく、ある程度確保される。しかも、支持板部のうちでアンカ部と押圧部材の下半部により押される部分と支持板部の上端部との間には幅広部が存在し、この幅広部が存在する部分における支持板部の剛性が、この幅広部の寸法分だけ低下する。したがって、ステアリングホイールを調節範囲の上端に位置させた状態でも、1対の支持板部の内側面と変位ブラケットの外側面との当接部の面圧を確保する場合に、調節レバーに加える操作力を特に大きくする必要がなくなり、この調節レバーを操作する運転者に与える違和感を緩和できる。しかも、支持板部の剛性は、幅広部が存在する部分のみで必要最小限だけ低下するのみであり、支持板部全体の剛性が損なわれることがない。
さらに、幅広部は長孔を形成するのと同時に、プレスによる打ち抜き加工により容易に形成される。また、アンカ部と押圧部材とのいずれに関しても、組み付け方向が限定されることはない。したがって、本発明のチルト式ステアリングコラム装置の製造コストが嵩むこともない。
図1〜図4は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の構造では、ステアリングホイール1(図5参照)の上下位置を調節するためのチルト機構に加えて、前後位置を調節するためのテレスコピック機構も組み込まれている。本例のチルト式ステアリングコラム装置は、前部に幅方向に設けられたチルト軸13(図5参照)を中心として揺動変位するステアリングコラム6aと、ステアリングコラム6aの軸方向中間部に固設された変位ブラケット16aと、ステアリングコラム6aの内径側に回転自在に支持され、ステアリングコラム6aの後端開口から突出した後端部分にステアリングホイール1が固定される、ステアリングシャフト5と、ステアリングコラム6aの上側に配置され、係止部材35aを介して車体に支持される上板部34a、および、上板部34aの下面の幅方向2箇所に、その上端部を溶接固定され、上板部34から下方に垂れ下がり、かつ、変位ブラケット16aを幅方向両側から挟むように構成された、1対の支持板部15b、15cを備えた支持ブラケット14bと、1対の支持板部15b、15cのそれぞれの互いに整合する部分に設けられ、チルト軸13を中心とする部分円弧状で上下方向に伸長する1対の長孔17a、17bと、変位ブラケット16aの一部で1対の長孔17a、17bに整合する部分に、幅方向に貫通するように形成された通孔18と、1対の長孔17a、17bおよび通孔18を幅方向に挿通したチルト用杆状部材23と、チルト用杆状部材23の基端部に設けられたアンカ部25と、チルト用杆状部材23の先端部に設けられたチルトレバーである調節レバー24aと、調節レバー24aの揺動に基づいてアンカ部25との間隔を拡縮する押圧部材である被駆動側カム29とを備える。本例の構造では、アンカ部25と被駆動側カム29との間隔の拡縮により、1対の支持板部15b、15cの内側面同士の間隔が拡縮されるようになっている。そして、1対の支持板部15b、15cの内側面間の間隔が縮小することにより、ステアリングコラム6aが1対の支持板部15b、15cにより挟持され、一方、1対の支持板部15b、15cの内側面間の間隔が拡大することにより、ステアリングコラム6aの上下方向の変位が可能な状態となる。
特に、本例のチルト式ステアリングコラム装置は、ステアリングコラム6aを構成するアウタコラム19aの上側に変位ブラケット16aが設けられている構造を備えるが、ステアリングホイール1を調節範囲の上端に位置させた状態でも、調節レバー24aの操作力が大きくなることを抑えるために、長孔17aの上端部に幅広部33が形成されている点に特徴がある。チルト式ステアリングコラム装置およびこれが組み込まれたステアリング装置の基本構造については、従来構造と同様である。従来構造と同様部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略もしくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
支持ブラケット14bを構成する1対の支持板部15b、15cのそれぞれの互いに整合する部分に形成されている長孔17a、17bのうち、チルト用杆状部材23のアンカ部25が係合する長孔17aの上端部には、幅広部33が形成されている。幅広部33は、前後方向に関する幅寸法が、長孔17aの中間部から下端部までに比べて大きい。これに対して、本例では、被駆動側カム29の内側面から幅方向内方に向け突出した状態で形成された第2の係合凸部30が係合する長孔17bの上端縁には、幅広部は形成されておらず、長孔17bの幅寸法は、上下両端部の隅R部を形成した部分を除き、全長にわたって同じとなっている。すなわち、長孔17aの中間部から下端部までの前後方向に関する幅寸法と長孔17bの前後方向に関する幅寸法は、いずれもアンカ部25の内側面に設けられた第1の係合凸部27の前後方向に関する幅寸法および被駆動側カム29の内側面に設けられた第2の係合凸部30よりも、これらの第1係合凸部27および第2の係合凸部30が、長孔17a、17bに沿った変位のみが可能となる程度に、わずかに大きくなっており、被駆動側カム29の内側面の前後方向に関する幅寸法は、長孔17bの前後方向に関する幅寸法よりも特に被駆動側カム29の中間部において十分に大きくなっている。これに対して、幅広部33の前後方向に関する幅寸法は、チルト用杆状部材23に外嵌した被駆動側カム29の第2の係合凸部30を、幅広部33を形成していない長孔17bの上端まで移動させた状態で、アンカ部25のうち、幅方向から見て幅広部33と重畳する上半部の内側面の前後方向に関する幅寸法と少なくとも等しく、好ましくはより大きくなっている。
また、幅広部33を形成した長孔17aの上端縁(幅広部33の上縁)よりも、幅広部を形成していない長孔17bの上端縁が下側に位置している。この長孔17aの上端縁の位置および長孔17bの上端縁の位置、ならびに、これらの上端縁の位置関係は、チルト用杆状部材23に外嵌した被駆動側カム29の第2の係合凸部30を、幅広部33を形成していない長孔17bの上端まで移動させた状態で、アンカ部25の下半部が、幅広部33よりも下側に位置するように、かつ、アンカ部25の上端部が、幅広部33の上縁よりも下側に位置するように決定される。すなわち、アンカ部25の下半部は、この状態で、幅方向から見て、幅広部33とは重畳しない。なお、アンカ部25の下半部は、アンカ部25の下側30%〜70%程度、好ましくは40%〜60%程度の範囲に設定される。したがって、アンカ部25の上半部は、アンカ部25の上側70%〜30%程度、好ましくは60%〜40%程度の範囲に設定される。
本例の構造によれば、ステアリングホイール1の上下位置にかかわらず、調節レバー24aを操作するのに要する力に大きな差が生じないようにできる。すなわち、ステアリングホイール1を調節範囲の上端に位置させると、第2の係合凸部30の上端部と、幅広部を形成していない長孔17bの上端縁とが当接し、チルト用杆状部材23がそれ以上は上昇しなくなる。そして、この状態で、チルト用杆状部材23の基端部に設けた、アンカ部25の上半部は、図1および図2に示すように、長孔17aの上端部に設けた幅広部33に対向する。したがって、アンカ部25の上半部が、長孔17aを形成した支持板部15bの外側面を押圧することがない。このような観点から、好ましくは、幅広部33の前後方向に関する幅寸法は、アンカ部25の上半部の前後方向に関する最大幅寸法(第2の係合凸部30を、幅広部33を形成していない長孔17bの上端まで移動させた状態で、その内側面が支持板部15aの外側面と接触しない部分の、前後方向に関する最大幅寸法)の1倍〜1.5倍、好ましくは、1.05倍〜1.2倍程度とする。また、幅広部33の高さ寸法は、アンカ部25の上半部の高さ寸法の1倍〜1.5倍、好ましくは、1.05倍〜1.2倍程度とする。
この状態から、ステアリングホイール1を、調節後の上端位置もしくは上端近傍位置に保持するため、調節レバー24aの操作に基づいてカム装置26の軸方向寸法を拡大すると、チルト用杆状部材23が引っ張られ、アンカ部25の下半部の一部が、支持板部15bの上部外側面のうち長孔17aの両側にあり、かつ、幅広部33の下側にある部分に押し付けられる。アンカ部25の下半部により押される幅広部33の下側部分は、支持板部15bの変位中心となる、支持板部15bの上端部からある程度離れているので、支持板部15bに作用するモーメントをある程度確保することができる。すなわち、本例では、図8〜図10に記載された従来構造の場合との比較では、1対の支持板部15b、15c同士を互いに近づける方向に作用するモーメントを十分に大きく確保することが可能となっている。しかも、支持板部15bのうちでアンカ部25の下半部により押される部分は、幅広部33を設けることにより長孔17aの前後両側縁が不連続となった、角状に出っ張った部分であり、それ自体の剛性が低くなっている部分である。さらには、この部分と支持板部15bの上端部との間には幅広部33が存在し、この部分では、支持板部15bの剛性が、幅広部33の寸法分だけ低下している。
したがって、ステアリングホイール1を調節範囲の上端に位置させた状態でも、調節レバー24aの操作により、支持板部15bの内側面のうち、幅広部33の下側部分が、変位ブラケット16aの片側外側面に強く押し付けられる。そして、この反作用として、別の支持板部15cの内側面と変位ブラケット16aの他側外側面とも、強く当接する。このように、調節レバー24aに加える操作力を特に大きくすることなく、ステアリングホイール1を、調節後の上端位置に保持するため、支持板部15b、15cの内側面と変位ブラケット16aの外側面との当接部の面圧を確保することが可能となり、調節レバー24aの操作力に大きな差が生じることに起因する、調節レバー24aを操作する運転者に与えられる違和感が緩和される。本例の場合、一方の支持板部15bの長孔17aの上端部に幅広部33を設けることで、前記違和感を緩和できるため、支持板部15bの剛性の低下を必要最小限に抑えられる。すなわち、一方の支持板部15bの剛性を十分に確保できて、チルト式ステアリングコラム装置全体の支持剛性も十分に確保できる。
さらに、幅広部33は、支持板部15bに長孔17aを形成するのと同時に、プレスによる打ち抜き加工により容易に形成される。そして、アンカ部25を設けたチルト用杆状部材23と被駆動側カム29とのいずれも、組み付け方向が限定されることはない。したがって、本例のチルト式ステアリングコラム装置の製造コストが嵩むこともない。また、本例の場合、第2の係合凸部30が係合する長孔17bの幅が、上端部まで狭い。したがって、第2の係合凸部30の回り止め機能が十分に確保され、ステアリングホイール1を調節後の位置に保持するために、調節レバー24aを回動させる際に大きなモーメントが加わっても、被駆動側カム29の回転阻止を確実に図ることができる。
本発明による効果は、本例の構造のように、変位ブラケット16aをステアリングコラム6aの上側に設けた構造で顕著に得られる。ただし、図6および図7に示される、変位ブラケット16をステアリングコラム6の下側に設けた構造であっても、本発明を適用することによる効果がある程度は得られる。すなわち、本発明は、変位ブラケットをステアリングコラムの下側に設けた構造に対しても、適用可能である。
また、図示の例では幅広部33を、チルト用杆状部材23のアンカ部25が係合する側の長孔17aの上端部にのみ設けているが、代替的に、調節レバー24aの設置側(図示の例では被駆動側カム29が係合している側)の上端部にのみ幅広部を設けることもできる。このように、いずれか一方の長孔17a、17bの上端部に幅広部33を設ければ、長孔17a、17bを形成した支持板部15b、15cの剛性を低く抑えて、本発明の作用および効果を得ることができる。この場合、ステアリングホイール1を調節可能な上端位置にまで移動させた状態で、アンカ部25または押圧部材である被駆動側カム29と幅広部33との位置関係を適正に規制するための構造も、容易に実現できる。
ただし、長孔17a、17bの上端部にそれぞれ幅広部33を設けることにより、本発明の作用および効果をより顕著に得ることができる。ただし、両方の長孔17a、17bに幅広部33を設ける場合、すなわち、長孔17a、17bの上端縁(幅広部33の上端縁)の上下方向の位置が一致する場合、ステアリングホイール1を調節範囲の上端位置に移動させた状態で、アンカ部25および押圧部材である被駆動側カム29の下半部が幅広部33よりも下側に位置するように、チルト用杆状部材23の上昇量を規制するための規制手段が必要になる。この規制手段としては、たとえば、アンカ部25と押圧部材である被駆動側カム29とのうちの少なくとも一方を、支持ブラケット14bのうちの車体に支持される上部(取付板部)の下面に当接させたり、支持板部15b、15cの外側面に突設したストッパに当接させたりするなどの構造が採用可能である。
いずれの場合でも、アンカ部25と押圧部材である被駆動側カム29とのうち、回り止めする必要がある部分が係合する長孔17a、17bの上端部に幅広部33を形成する場合には、この幅広部33の存在により回り止め機能が損なわれないように、この幅広部33の高さ寸法や、残り部分の幅寸法を適切に規制する。要するに、回り止め機構を構成するための凸部を、長孔17a、17bのうちで幅広部33の下側部分に、十分な高さ寸法で、精度よく係合させて、幅寸法のがたつきを僅少に抑えることが必要である。
なお、本発明は、本例の構造に限られず、アンカ部と一方の支持板部の外側面との間にスラストベアリングが設けられ、かつ、チルト用杆状部材の他端部に調節レバーの基端部が結合固定されていて、チルト用杆状部材がそれ自身の中心軸回りの回転を可能に支持される構造や、アンカ部の第1の係合凸部が、一方の長孔に、この長孔に沿った変位のみを可能に係合しており、かつ、チルト用杆状部材の他端部に螺着され、押圧部材として機能するナットに、調節レバーの基端部が結合固定されており、調節レバーによりナットを回転させることで、ナットとアンカ部との間隔が拡縮される構造にも適用可能である。いずれの構造の場合も、アンカ部側の長孔に本例の幅広部が設けられる。また、支持ブラケットは、図6および図7に示した従来構造のように、1対の支持板部15が上板部34と一体に構成され、上板部34の幅方向両端部から下方に向け折れ曲がって伸長するように構成を採用することもできる。
本発明は、ステアリングホイールの高さ位置のみを調節可能としたチルト式ステアリング装置のみならず、ステアリングホイールの高さ位置に加えて前後位置の調節も可能としたチルト・テレスコピック式ステアリング装置にも広く適用される。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5 ステアリングシャフト
6、6a ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10 電動モータ
11 ハウジング
12 車体
13、13a チルト軸
14、14a、14b 支持ブラケット
15、15a、15b、15c 支持板部
16、16a 変位ブラケット
17、17a、17b 長孔
18 通孔
19、19a アウタコラム
20 インナコラム
21 スリット
22 被挟持板部
23 チルト用杆状部材
24、24a 調節レバー
25 アンカ部
26 カム装置
27 第1の係合凸部
28 駆動側カム
29 被駆動側カム
30 第2の係合凸部
31 ナット
32 スラストベアリング
33 幅広部
34、34a 上板部
35、35a 係止部材
36 車体側ブラケット
2 ステアリングギヤユニット
3 入力軸
4 タイロッド
5 ステアリングシャフト
6、6a ステアリングコラム
7 自在継手
8 中間シャフト
9 自在継手
10 電動モータ
11 ハウジング
12 車体
13、13a チルト軸
14、14a、14b 支持ブラケット
15、15a、15b、15c 支持板部
16、16a 変位ブラケット
17、17a、17b 長孔
18 通孔
19、19a アウタコラム
20 インナコラム
21 スリット
22 被挟持板部
23 チルト用杆状部材
24、24a 調節レバー
25 アンカ部
26 カム装置
27 第1の係合凸部
28 駆動側カム
29 被駆動側カム
30 第2の係合凸部
31 ナット
32 スラストベアリング
33 幅広部
34、34a 上板部
35、35a 係止部材
36 車体側ブラケット
Claims (4)
- 前部に幅方向に設けられたチルト軸を中心として揺動変位するステアリングコラムと、
該ステアリングコラムの軸方向中間部に固設された変位ブラケットと、
該ステアリングコラムの内径側に回転自在に支持されたステアリングシャフトと、
車体に支持される上板部、および、該上板部から下方に垂れ下がり、前記変位ブラケットを幅方向から両側から挟む1対の支持板部を備えた支持ブラケットと、
前記1対の支持板部のそれぞれの互いに整合する部分に設けられ、前記チルト軸を中心とする部分円弧状で上下方向に伸長する1対の長孔と、
前記変位ブラケットの一部で前記1対の長孔に整合する部分に、幅方向に貫通するように形成された通孔と、
前記1対の長孔および前記通孔を幅方向に挿通したチルト用杆状部材と、
該チルト用杆状部材の基端部に設けられたアンカ部と、
該チルト用杆状部材の先端部に設けられたチルトレバーと、
該チルトレバーの揺動に基づいて前記アンカ部との間隔を拡縮する押圧部材と、
を備え、
前記アンカ部と前記押圧部材との間隔の拡縮により、前記1対の支持板部の内側面同士の間隔が拡縮されるようになっており、および、
前記1対の長孔のうちの少なくとも一方の長孔の上端部に、前記アンカ部または前記押圧部材の上半部の前後方向に関する幅寸法以上の幅寸法を有する幅広部が設けられている、
チルト式ステアリングコラム装置。 - 前記変位ブラケットが、前記ステアリングコラムの上側に設けられている、請求項1に記載したチルト式ステアリングコラム装置。
- 前記幅広部は、前記一方の長孔の上端部にのみ設けられ、かつ、前記1対の長孔のうちの他方の長孔の上端縁が、該一方の長孔の上端縁よりも下側に位置しており、前記チルト用杆状部材を該他方の長孔の上端まで移動させた状態で、前記アンカ部または前記押圧部材の下半部が前記幅広部よりも下側に位置するようになっている、請求項1または2に記載したチルト式ステアリングコラム装置。
- 前記1対の長孔の上端部のいずれにも、前記幅広部が設けられている、請求項1または2に記載したチルト式ステアリング装置。
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