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JP5664483B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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JP5664483B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の気筒内に噴射される燃料量を制御する燃料噴射制御装置に関する。
従来、内燃機関の排気系に設けられた排気触媒で排ガス中の各種成分を浄化する排気浄化システムが普及している。このような排気浄化システムでは、排気温度を変化させることで排気触媒の浄化性能が制御されている。例えば、ディーゼルエンジンやリーンバーンガソリンエンジンを搭載した自動車の排気浄化システムでは、排ガス中のPM(パティキュレートマター)を取り除くためのDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)が排気通路上に介装され、排気温度を上昇させることでDPF上のPMを燃焼除去する制御が実施される。また、触媒表面に付着しうる硫黄化合物等の被毒成分を除去するために、排気温度を一時的に上昇させる触媒再生制御に関する技術も知られている。
直噴式エンジンでの典型的な排気温度の昇温手法には、シリンダー内で排気を昇温させる手法と、シリンダーから排出された後の排気を排気通路上で昇温させる手法とが存在する。前者は、エンジン出力に寄与する主燃料噴射よりもやや遅れたタイミングで(例えば膨張行程中に)燃料を噴射するものである。この種の燃料噴射は、燃焼熱を生成するためのポスト噴射であることから「燃焼ポスト噴射」と呼ばれる。
一方、後者は燃焼ポスト噴射よりもさらに遅いタイミング(例えばクランク下死点付近)で、触媒上で燃焼させるための燃料を噴射するものである。この種の燃料噴射は、燃料をシリンダー内で燃焼させることなく排気系へと供給するためのポスト噴射であることから「未燃ポスト噴射」と呼ばれる。これらの多段噴射は、エンジン出力を確保しながら排気温度を柔軟に制御するのに用いて好適である。
ところで、未燃ポスト噴射の燃料は、ピストンがシリンダー内の下方に位置するときに噴射されるため、シリンダー壁に衝突しやすい傾向がある。ピストン頂面に燃焼室キャビティが形成されたエンジンの場合であっても、キャビティの外側への燃料流出を完全に防ぐことは難しく、未燃ポスト噴射の燃料の一部は壁面に付着する。この燃料付着量が増加すれば、壁面を介したクランクケース側への燃料流出量も増加する。そのため、上記のような燃料の多段噴射を実施するエンジンでは、オイル希釈(ダイリューション)が進行しやすく、希釈されたオイルによるエンジンの潤滑性能の低下が懸念されている。
このような課題に対し、シリンダー内の温度や排気温度に基づいて多段噴射の実施タイミングを制御する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、膨張行程で燃料のポスト噴射を実施する燃料噴射制御装置において、シリンダー内の温度に基づいて噴射タイミングを決定するものが記載されている。この技術では、ポスト噴射された燃料噴霧がシリンダー壁面に到達しない温度が目標温度に設定され、筒内温度の推定値が目標温度になったときにポスト噴射が実施されている。このような制御により、ポスト噴射に起因するエンジンオイルの希釈を防止できるとされている。
なお、特許文献2には、膨張行程から排気行程にかけてポスト噴射を実施する燃料噴射制御に関し、排気弁開時期の筒内温度やこれに相関する排気通路内の排気温度に基づき、ポスト噴射のタイミングを設定するものが記載されている。この技術では、筒内温度や排気温度に応じた噴射タイミングの変更により、触媒の昇温に優れたポスト噴射制御を実施できるとされている。
特許第3358552号公報 特開2010−121505号公報
しかしながら、エンジンの筒内温度は一回の燃焼サイクルの期間内でも急激に変動するため、従来の制御では効果的にオイル希釈を防止することができないという課題がある。すなわち、筒内温度とはシリンダー内の気体温度(ガス温度)であり、圧縮行程で急激に上昇するとともに、膨張行程で急激に下降する。一般に、エンジンの筒内温度は燃焼サイクルを単位として周期的に増減変動する。そのため、例えば特許文献1,2に記載のように、筒内温度に基づいてポスト噴射のタイミングを制御したとしても、ポスト噴射を実施した直後に筒内温度が大きく低下した状態となる。したがって、シリンダー壁面への燃料付着を適切に制御することができず、燃料流出を抑制できない場合がある。
また、ポスト噴射に伴うオイル希釈は、燃料がシリンダー壁面に付着した後、ピストンの摺動に伴ってクランクケース側へと引き摺られるプロセスを経て発生する。つまり、たとえシリンダー壁面に燃料が付着したとしても、その後にクランクケース側へと引き摺られる燃料量を減少させることができれば、オイル希釈も生じにくくなる。したがって、オイル希釈をより効率的に抑制するには、燃料のシリンダー壁面への付着量だけでなく、シリンダー壁面からの蒸発量をも考慮した制御とすることが望まれる。
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、内燃機関の多段噴射に伴うオイル希釈を抑制することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
(1)ここで開示する内燃機関の燃料噴射制御装置は、内燃機関の気筒内に対して主噴射後にポスト噴射を実施するポスト噴射手段と、前記気筒の壁面温度を推定する推定手段とを備える。また、前記推定手段で推定された前記壁面温度に基づき、前記ポスト噴射手段が実施する前記ポスト噴射の燃料量を制御する制御手段を備える。
また、前記ポスト噴射手段が、排気温度の昇温に係る燃焼ポスト噴射を実施する燃焼ポスト噴射手段と、前記燃焼ポスト噴射後に排気系への未燃成分の供給に係る未燃ポスト噴射を実施する未燃ポスト噴射手段とを有する。前記制御手段は、前記壁面温度に応じて、前記未燃ポスト噴射手段が実施する前記未燃ポスト噴射の燃料量を減少させる。
例えば、前記制御手段は、前記壁面温度が所定温度よりも低温である場合に、前記ポスト噴射の燃料量を減少させることが好ましい。あるいは、前記壁面温度が低温であるほど、前記ポスト噴射の燃料量を減少させることが好ましい。
(2)また、前記壁面温度が所定温度未満である燃焼サイクルでの所定期間において前記ポスト噴射手段による前記ポスト噴射の実施に制限を加えることが好ましい。つまりこの場合、前記壁面温度が所定温度以上になる燃焼サイクルまでポスト噴射に制限が加えられる。
)また、前記制御手段が、前記壁面温度に応じて、前記燃焼ポスト噴射手段が実施する前記燃焼ポスト噴射の燃料量を増加させることが好ましい。
)また、前記ポスト噴射手段が、前記壁面温度に関わらず、各燃焼サイクルで前記ポスト噴射が実施されるタイミングを所定タイミングに維持することが好ましい。つまり、前記ポスト噴射が実施されるクランク角が、前記壁面温度に関わらず変更されることがなく一定値となるように制御されることが好ましい。
)また、前記推定手段が、前記気筒内のガス温度と前記内燃機関の冷却水温とから演算される前記気筒の壁体の平衡温度に基づき、前記壁面温度を推定することが好ましい。
)また、前記推定手段が、前記平衡温度の経時変動に遅延処理を施して前記壁面温度を推定することが好ましい。
)また、前記推定手段が、燃焼サイクル毎の前記気筒内の気体温度の平均値を前記ガス温度として演算することが好ましい。
開示の内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、主噴射後に実施されるポスト噴射時の燃料量を壁面温度に応じて制御することで、ポスト噴射燃料の壁面への付着量を調整できる。これにより、筒内温度の変動にかかわらず、燃料のクランクケース内への流出を抑制することができ、オイル希釈度が低い状態を維持することができる。また、壁面温度に応じて未燃ポスト噴射の燃料量を減少させることで、燃料の気筒壁面への付着量を減少させることができ、壁面温度を上昇させながら効果的にオイル希釈化を抑制することができる。
一実施形態に係る内燃機関の燃焼噴射制御装置の全体構成を示す図である。 図1の燃料噴射制御装置で制御される多段噴射を説明するためのグラフであり、(a)はシリンダー内圧力の経時変動を例示するもの、(b)は燃料の制御パルス信号及びその名称を例示するものである。 図1の燃料噴射制御装置で推定される壁面温度を説明するための図であり、(a)はガス温度,壁面温度及び冷却水温度の平衡温度分布を例示するグラフ、(b)は各温度の短期的な変動を説明するためのグラフ、(c)は各温度の長期的な変動を説明するためのグラフである。 図1の燃料噴射制御装置で実施される制御手順を例示するフローチャートである。 (a)〜(c)はそれぞれ、図1の燃料噴射制御装置による制御内容を説明するためのグラフである。
図面を参照して内燃機関の燃料噴射制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。また、以下の実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよく、実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
[1.装置構成]
本実施形態の燃料噴射制御装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン10に適用される。図1では、このエンジン10に設けられた複数のシリンダー11(気筒)のうちの一つを示す。シリンダー11内を往復摺動するピストン12は、コネクティングロッドを介してクランクシャフト13に接続される。
シリンダー11の上部には、燃料噴射用のインジェクター14が設けられる。インジェクター14の先端部はシリンダー11の筒内空間11aに突出するように設けられ、各シリンダー11内に直接的に燃料を噴射する。なお、ピストン12の頂面には燃焼室となるキャビティ12aが形成され、インジェクター14から供給される燃料の噴射方向はキャビティ12a内に向かう方向に設定される。また、インジェクター14の基端部側には燃料配管14a(デリバリーパイプ)が接続され、図示しないフィードポンプで加圧された燃料が各インジェクター14に供給される。
シリンダー11の天井面には吸気ポート及び排気ポートが設けられ、これらの各ポートを開閉するための吸気弁及び排気弁が設けられる。これらの吸気ポート及び排気ポートのそれぞれには、吸気通路16及び排気通路17が接続され、排気通路17上には触媒装置18が介装される。この触媒装置18は、排気を浄化するための触媒装置であり、例えば三元触媒や酸化触媒,DPF等がこれに含まれる。
インジェクター14からの燃料噴射量やその噴射タイミングは、後述するエンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1から各インジェクター14に制御パルス信号(噴射信号)が伝達され、その制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に対応する期間だけ、各インジェクター14の噴射口が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさに応じた量となり、噴射タイミングは制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
シリンダー11の周囲には、冷却水の流路となるウォータージャケット15が設けられる。ここでいう冷却水とは、エンジン10を冷却するための冷媒である。ウォータージャケット15には、図示しないラジエーター等の熱交換器に冷却水を導くための冷却水通路が接続される。冷却水は、これらのウォータージャケット15,ラジエーター及び冷却水通路の内部を循環している。
シリンダー11の筒内空間11aとウォータージャケット15とを区画する隔壁のことを、以下、シリンダー壁11bと呼ぶ。シリンダー壁11bは、例えば鋳鉄やアルミニウム合金からなり、エンジンブロックと一体に成形された壁体である。また、ピストン12との摺動面にシリンダライナーが装着されている場合には、そのシリンダライナーを含めた壁体をシリンダー壁11bとする。
吸気通路16内には、シリンダー11に吸入される気体の温度Tair(気体温度)を検出する温度センサー21が設けられる。ここで検出対象となる気体の種類は、例えば新気(空気)のみであってもよいし、EGR(Exhaust Gas Recirculation)システムを備えたエンジン10の場合には新気とEGRガスとの混合気体であってもよい。また、ウォータージャケット15内には、冷却水の温度Twat(冷却水温)を検出する冷却水温センサー22が設けられる。これらのセンサー21,22で検出された気体温度Tair及び冷却水温Twatの情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
クランクシャフト13の近傍には、クランクシャフト13の回転速度を検出するクランク角センサー23(クランク角速度検出手段)が設けられる。クランクシャフト13には、例えば外縁部に凹凸13bが形成された円盤状のクランク板13aが固定される。一方、クランク角センサー23は、クランク板の外縁部の近傍に固定され、クランク板13aの凹凸13bの形状を検出してクランクパルス信号を出力する。ここで出力されたクランクパルス信号は、エンジン制御装置1に伝達される。
なお、クランク角センサー23から出力されるクランクパルス信号の周期は、クランクシャフト13が速く回転するほど短くなり、クランクパルス信号の時間密度はエンジンの実回転数Ne(エンジン回転数)やクランクシャフト13の角速度ωに対応したものとなる。したがって、クランク角センサー23は、エンジン回転数Neやクランク角度,角速度ωを検出する手段ともいえる。
[2.制御構成]
[2−1.概要]
この車両には電子制御装置として、エンジン制御装置1(Engine Electronic Control Unit)が設けられる。エンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、通信線や車載ネットワークを介して他の電子制御装置や温度センサー21,冷却水温センサー22,クランク角センサー23等の各種センサー類と接続される。
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系,動弁系といった広汎なシステムを制御する電子制御装置である。エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、インジェクター14からの燃料噴射量や噴射タイミング,吸気弁及び排気弁のバルブリフト量及びバルブタイミング,吸気量(スロットルバルブの開度),EGR量(EGRバルブの開度)などが挙げられる。本実施形態では、燃料の多段噴射制御に着目して、エンジン制御装置1の機能を説明する。
図1に示すように、エンジン制御装置1には、メイン噴射部2,ポスト噴射部3,壁面温度推定部4及び制御部5が設けられる。これらの各機能は、電子回路(ハードウェア)で実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
[2−2.メイン噴射部]
メイン噴射部2は、エンジン10のエンジン出力に寄与する主噴射を実施するものである。ここでは、例えば図2(a),(b)に示すように、燃焼サイクルの圧縮行程から膨張行程(燃焼行程)にかけてのクランク上死点を挟んで、燃料のプレ噴射,メイン噴射及びアフター噴射の三種類の主噴射が制御される。メイン噴射部2は、これらの三種類の主噴射で噴射すべき燃料噴射量をインジェクター14の制御パルス信号に変換し、各主噴射のタイミングに応じてその制御パルス信号をインジェクター14に伝達する。
クランク角度に対するメイン噴射のタイミングは、それぞれの燃焼サイクルで変更されることなく一定とされる。なお、エンジン10のクランク角度は、クランク角センサー23で検出されたクランクパルス信号に基づいて把握される。
プレ噴射とは、メイン噴射に先行してシリンダー11内に燃料を噴射することであり、例えばピストン12がクランク上死点を通過する時刻よりも前の圧縮行程での噴射がこれに該当する。プレ噴射時に噴射された燃料は、着火遅れ時間を短縮するように作用する。
メイン噴射は、エンジン10に要求される出力を得るための噴射であり、ピストン12がクランク上死点を通過する時刻に前後してシリンダー11内に噴射されるものである。エンジン10に要求される出力の大きさは、例えばドライバーの要求や外部負荷による要求,車両の運転状態等に応じて設定される。
アフター噴射は、メイン噴射の後にシリンダー11内に燃料を噴射することであり、例えばピストン12がクランク上死点を通過する時刻よりも後の膨張行程での噴射がこれに該当する。アフター噴射時に噴射された燃料は、メイン噴射時に噴射された燃料中の未燃成分やPM等をシリンダー11内で再燃焼させるように作用する。
メイン噴射部2で制御される主噴射に関する情報は、壁面温度推定部4に伝達される。本実施形態では、主噴射時の燃料噴射量,噴射タイミング,噴射段数に関する情報が壁面温度推定部4に伝達される。
[2−3.ポスト噴射部]
ポスト噴射部3(ポスト噴射手段)は、メイン噴射部2で制御される主噴射の後にポスト噴射を実施して、排気温度や排気系を昇温させるもの(すなわち、昇温制御を実施するもの)である。ここでは、図2(a),(b)に示すように、燃焼サイクルの膨張行程でアフター噴射の後に、燃焼ポスト噴射及び未燃ポスト噴射の二種類のポスト噴射が制御される。
ポスト噴射部3は、これらの二種類のポスト噴射で噴射すべき燃料噴射量をインジェクター14の制御パルス信号に変換し、各ポスト噴射のタイミングに応じてその制御パルス信号をインジェクター14に伝達する。ポスト噴射も、メイン噴射と同様に、クランク角度に対するタイミングがそれぞれの燃焼サイクルで変更されることなく一定とされる。
なお、図2(b)では、未燃ポスト噴射の噴射タイミングが膨張行程内で実施されるものが示されているが、さらに遅いタイミングで排気行程(ピストン12がクランク下死点を通過する時刻よりも後)に実施されるものとしてもよい。
上記の二種類のポスト噴射に対応するように、ポスト噴射部3には燃焼ポスト噴射部3a及び未燃ポスト噴射部3bが設けられる。
燃焼ポスト噴射部3a(燃焼ポスト噴射手段)は、排気温度を昇温させるためのポスト噴射を実施するものである。燃焼ポスト噴射時に噴射された燃料は、シリンダー11内で燃焼して排気中に熱エネルギーを放出するように作用する。なお、燃焼ポスト噴射はエンジン出力に若干の影響を与える場合があるため、所望の出力を得るにはメイン噴射部2によるメイン噴射の調整が必要となることがある。
ここでは、排気通路17を流れる排気の状態や触媒装置18の状態に応じて、排気温度が制御される。例えば、エンジン10の始動直後に温度センサー21で検出される気体温度Tairから推定される排気温度が所定温度に達していない場合や、触媒装置18の触媒温度が活性温度に達していない場合、触媒装置18の被毒再生が要求された場合等には、燃焼ポスト噴射部3aが燃焼ポスト噴射を実施し、排気温度を上昇させる。
未燃ポスト噴射部3b(未燃ポスト噴射手段)は、排気通路17側に未燃成分を供給するためのポスト噴射を実施するものである。未燃ポスト噴射時に噴射された燃料は、シリンダー11内でほとんど燃焼することなく排気中に残留する。そのため、未燃ポスト噴射はシリンダー11から排出された直後の排気温度にはほとんど影響を与えない。なお、未燃ポスト噴射がエンジン出力に与える影響はごく僅かである。
ここでは、排気通路17を流れる排気の状態や触媒装置18の状態に応じて、排気中の未燃燃料量(あるいは、排気空燃比)が制御される。例えば、触媒装置18への未燃燃料の供給が必要となる場合や触媒装置18の被毒再生が要求された場合等には、未燃ポスト噴射部3bが未燃ポスト噴射を実施し、排気中の未燃成分を増加させる。
上記の通り、ポスト噴射部3では、エンジン10の運転状態や排気系の状態に応じて燃焼ポスト噴射及び未燃ポスト噴射が制御される。一方、以下に詳述する壁面温度推定部4及び制御部5により、シリンダー11の壁面温度に応じてポスト噴射部3でのポスト噴射に制限を加える制御も併せて実施される。壁面温度に応じたポスト噴射の制限は、ポスト噴射部3での各制御よりも優先して実施される。つまり、壁面温度推定部4及び制御部5による判断とポスト噴射部3での判断とが衝突した場合には、壁面温度推定部4及び制御部5による判断に基づいてポスト噴射が実施される。
ポスト噴射部3で制御されるポスト噴射に関する情報も、主噴射の情報と同様に壁面温度推定部4に伝達される。本実施形態では、ポスト噴射時の燃料噴射量,噴射タイミング,噴射段数に関する情報等が壁面温度推定部4に伝達される。
[2−4.壁面温度推定部]
壁面温度推定部4(推定手段)は、シリンダー11の壁面温度Twalを推定するものである。ここでは、シリンダー11内の筒内温度(実ガス温度)ではなく、シリンダー11の内周面を構成する壁面の温度が推定される。筒内温度は、図3(c)中に破線で示すように、燃焼サイクルを単位として周期的に変動する。これに対して、シリンダー11の実際の壁面の温度は、筒内温度(実ガス温度)と冷却水温Twatの変動の影響を受けながら、時間的に緩慢に変動する。
そこで、壁面温度推定部4は、ガス温度Tgasと冷却水温Twatとからの伝熱特性に応じて推定される壁面の温度に系の応答遅れを考慮して、壁面温度Twalを演算する。このような演算により、壁面温度Twalの演算値は、図3(c)中に太実線で示すように、燃焼サイクル毎の筒内温度の変動に関わらず比較的安定した挙動を示すものとなり、実際の壁面の温度の状態が反映されたものとなる。
壁面温度Twalを精度よく推定するための手段として、壁面温度推定部4には、ガス温度推定部4a,平衡温度推定部4b及び遅れフィルター処理部4cが設けられる。
ガス温度推定部4aは、シリンダー11内のガス温度Tgasを演算するものである。ここでは、燃焼サイクル毎の筒内空間11aの温度(いわゆる筒内温度)の平均値がガス温度Tgasとして演算される。つまり、ガス温度推定部4aは、周期的に変動する筒内温度を演算するのではなく、その筒内温度を燃焼サイクル毎に平均化したものに相当するガス温度Tgasを演算する。
ガス温度Tgasは、シリンダー11内のガス量(新気量及びEGRガス量)とガス比熱,燃料噴射量,噴射タイミング,噴射段数等に基づいて演算される。例えば、吸気行程でシリンダー11内に導入されたガスの温度が温度センサー21で検出された気体温度Tairであるものとして、そのガスを圧縮行程で断熱圧縮させたときの温度が演算され、これに燃料の燃焼時に発生した熱量による温度上昇分を加算したものがガス温度Tgasとして演算される。ここで演算されたガス温度Tgasの情報は平衡温度推定部4bに伝達される。
燃焼時に発生した熱量は、燃焼エネルギーの熱への変換割合に基づいて演算される。また、燃料の燃焼エネルギーの全体に対する熱エネルギーの割合は、メイン噴射部2及びポスト噴射部3から伝達される燃料噴射量,噴射タイミング,噴射段数に関する情報に基づいて演算される。例えば、ガス温度Tgasを気体温度Tair,ガス量,ガス比熱,燃料噴射量,噴射タイミング,噴射段数等の関数として記述し、その関数を利用してガス温度Tgasを演算する構成としてもよい。あるいは、これらの関係を予めマップ化してガス温度推定部4aに記憶させておいてもよい。なお、ガス温度Tgasの演算に関して、平均値の演算時に参照される筒内温度の幅は、一回の燃焼サイクルに限定されず、例えば二回の燃焼サイクルでの筒内温度の平均値をガス温度Tgasとしてもよい。
平衡温度推定部4bは、ガス温度推定部4aで演算されたガス温度Tgasと、冷却水温センサー22で検出された冷却水温Twatとに基づき、シリンダー壁11bの代表平衡温度Teq2を推定するものである。ここでは、シリンダー壁11bの一方の面がガス温度Tgasのガスに接触し、かつ、他方の面が冷却水温Twatの冷却水に接触しているときの平衡状態での温度Teq1(平衡温度)の分布が推定され、その代表値が代表平衡温度Teq2として演算される。
シリンダー壁11bの平衡温度Teq1の分布は、例えば、ガス温度Tgas,ガスからの熱伝達率,シリンダー壁11bの内部での熱伝導率,冷却水温Twat,冷却水に対する熱伝達率等に基づいて演算される。また、エンジン10のエンジン回転数や筒内空間11aでのガスの流速,冷却水の流速等の情報を加味して平衡温度Teq1の分布を演算してもよい。より簡便な手法として、上記の各種パラメータの関係を予めマップ化して平衡温度推定部4bに記憶させておいてもよい。
平衡温度Teq1は、図3(a)に示すように、シリンダー壁11bの厚み方向に一定の勾配で変化する分布となる。したがって、代表平衡温度Teq2は筒内空間11a側の温度から冷却水側の温度までの間で設定すればよい。例えば、シリンダー壁11b内での平衡温度Teq1の平均値を代表平衡温度Teq2としてもよいし、平衡温度Teq1の最大値(筒内空間11a側の端部の平衡温度Teq1)を代表平衡温度Teq2としてもよい。ここで推定された代表平衡温度Teq2は、遅れフィルター処理部4cに伝達される。
遅れフィルター処理部4cは、代表平衡温度Teq2の経時変動に遅延処理を施して壁面温度Twalを推定するものである。ここでは、代表平衡温度Teq2の変化に対して遅れて応答するモデルに基づいて壁面温度Twalが推定される。例えば、図3(b)に示すように、代表平衡温度Teq2が増加したときに、一次遅れや無駄時間,二次遅れ等の遅延を伴って壁面温度Twalが変動するようなモデルが使用される。より簡便な手法としては、信号処理用の遅延フィルターを用いて代表平衡温度Teq2をフィルタリングしたものを壁面温度Twalとしてもよい。ここで取得された壁面温度Twalは、制御部5に伝達される。
[2−5.制御部]
制御部5(制御手段)は、壁面温度推定部4で推定された壁面温度Twalに基づいてポスト噴射部3でのポスト噴射を制限するものである。ここでは、壁面温度Twalが所定温度TA未満であるときに、未燃ポスト噴射の燃料量を減少させる制御信号が未燃ポスト噴射部3bに伝達される。あるいは、燃料量を0にする制御信号が未燃ポスト噴射部3bに伝達される。一方、壁面温度Twalが所定温度TA以上であるときには、上記のような制限が取り払われ、未燃ポスト噴射部3bによる燃料噴射量の制御が実施される。
また、制御部5は、未燃ポスト噴射部3bで設定される未燃ポスト噴射の噴射タイミングを変更せず、燃料噴射量のみを変更するように機能する。つまり、図2(b)に示すように、ポスト噴射が実施される時刻に対応するクランク角度は、壁面温度Twalに関わらず一定とされる。
例えば、壁面温度Twalが所定温度TA未満の状態から所定温度TA以上の状態に上昇したとき、そのときの燃焼サイクルですでに未燃ポスト噴射の噴射タイミングが過ぎている場合には、次回の燃焼サイクルから通常の未燃ポスト噴射が実施される。これにより、燃焼サイクル単位で増減を繰り返す筒内温度を制御指標としたものと比較して、シリンダー壁11bへの燃料付着量が適切に制御される。
[3.フローチャート]
エンジン制御装置1で実施される昇温制御のフローチャートを図4に例示する。このフローチャートに示される一連の制御は、エンジン制御装置1において予め設定された所定周期で繰り返し実施される。
ステップA10では、イベント実施フラグがオンであるか否かが判定される。ここでいうイベントとは、排気温度(又は排気系)を昇温させるための各種制御を意味し、例えば触媒装置18の被毒再生が要求された場合などにイベント実施フラグがオンに設定される。また、排気温度を昇温させる必要がなくなると、イベント実施フラグがオフに設定される。なお、イベント実施フラグがオンに設定される条件は、例えばエンジン10の運転状態や走行環境,排気系の各種装置の作動状態等に応じて設定される。
ここでイベント実施フラグがオンである場合にはステップA20へ進む。一方、オフである場合には排気温度を昇温させる必要がないため、そのままこのフローを終了する。この場合、メイン噴射部2ではエンジン10に要求される出力に応じて主噴射の燃料噴射量や噴射タイミングが制御される。
ステップA20では、排気温度を上昇させるための昇温制御が実施される。例えば、吸気量に関する制御としては、新気量やEGR量といったシリンダー11への吸気量が減少するように、吸気系の各種絞り(スロットルバルブやEGRバルブ)が制御される。なお、過給機を備えたエンジン10の場合には、ステップA20で過給圧を上昇させる制御を実施してもよいし、あるいは空調装置や発電装置を駆動してエンジン10の負荷を上昇させる制御を実施してもよい。
続くステップA30では、予め設定された燃焼ポスト噴射の開始条件が成立するか否かが判定される。ここでは、イベント実施フラグがオンであることを検出してからの経過時間や、ステップA20で実施された各種絞りの作動状態等に応じて燃焼ポスト噴射の開始条件が判定される。ここで開始条件が成立すると制御がステップA40に進む。また、開始条件が成立しない場合にはそのままこのフローを終了する。
ステップA40では、燃焼ポスト噴射部3aにより燃焼ポスト噴射が実施される。すなわち、ポスト噴射部3からインジェクター14に向けて、燃焼ポスト噴射に対応する制御パルス信号が出力され、主噴射の後に昇温用の燃料が噴射される。またこのとき、メイン噴射部2からインジェクター14へと出力される主噴射の制御パルス信号も変更される。例えば、メイン噴射量が減少方向に補正されるとともに、アフター噴射量が増加方向に補正される。
このステップA40では、燃焼ポスト噴射によって排気温度がさらに上昇する。ただし、燃焼ポスト噴射はエンジン出力に影響を与える場合があるため、出力を一定とするには主噴射およびアフター噴射量を適宜調整することが望ましい。
続くステップA50では、壁面温度推定部4において、シリンダー11の壁面温度Twalが推定される。ここではまず、ガス温度推定部4aにおいてシリンダー11内の筒内温度が演算され、この筒内温度の変動を一回の燃焼サイクルにかかる時間で平均化したガス温度Tgasが演算される。続いて、平衡温度推定部4bにおいて、ガス温度Tgasと冷却水温Twatとに基づきシリンダー壁11bの平衡温度Teq1の分布が演算され、その代表平衡温度Teq2が推定される。さらに、遅れフィルター処理部4cでは代表平衡温度Teq2の経時変動に時間遅延が加えられ、最終的な壁面温度Twalが推定される。ここで取得される壁面温度Twalは、図3(a)に示すように、ガス温度Tgasと冷却水温Twatとの間で温度平衡状態となるシリンダー壁11bの実際の温度を精度良く模したものとなる。
そしてステップA60では、前ステップで推定された壁面温度Twalが所定温度TA以上であるか否かが判定される。ここで、壁面温度Twal<所定温度TAであるときには、そのままこのフローを終了する。この場合、二種類のポスト噴射のうち、燃焼ポスト噴射のみが実施される。一方、ステップA60で壁面温度Twal≧所定温度TAであるときには、ステップA70へ進む。なお、ステップA60での判定内容は、未燃ポスト噴射の開始条件に相当する。したがって、このステップで壁面温度Twal以外の諸条件を判定する構成としてもよい。
ステップA70では、未燃ポスト噴射が未完了であるか否かが判定される。これは、後述するステップA100が現在のイベント中に実施されたか否かを判定するものであり、未燃ポスト噴射が実施されていないときや実施中のときにはステップA80へ進む。また、すでにステップA100が完了している場合(未燃ポスト噴射が終了している場合)には、ステップA110へ進む。
ステップA80では、未燃ポスト噴射部3bにおいて、未燃ポスト噴射が実施される。すなわち、ポスト噴射部3からインジェクター14に向けて、未燃ポスト噴射に対応する制御パルス信号が出力され、燃焼ポスト噴射の後に未燃ポスト噴射が実施される。
また、ステップA90では、開始時点からの経過時間(制御時間)が所定時間以上になったか否かが判定される。ここで、未燃ポスト噴射の経過時間が所定時間以上であると判定された場合には、ステップA100へ進み、未燃ポスト噴射が終了する。一方、経過時間が所定時間未満である場合には、そのままこのフローを終了する。つまり、未燃ポスト噴射が十分な期間実施されるまでの間は、ステップA10〜A90間の制御が繰り返される。なお、ステップA90での判定内容は、未燃ポスト噴射の終了条件に相当するものであり、他の諸条件を判定する構成としてもよい。
ステップA100で未燃ポスト噴射が終了すると、二種類のポスト噴射のうち、燃焼ポスト噴射のみが実施される状態となる。また、これに続くステップA110では、燃焼ポスト噴射の経過時間(制御時間)が第二所定時間以上になったか否かが判定される。ここで燃焼ポスト噴射の経過時間が第二所定時間以上であると判定された場合には、ステップA120へ進み、燃焼ポスト噴射も終了する。なお、未燃ポスト噴射と燃焼ポスト噴射の終了時期は、上記の様に区別せず同時に設定してもよい。
また、ステップA20で制御された吸気量や過給圧,エンジン負荷等はこのステップA120に前後して終了する構成であってもよいし、あるいはステップA100に前後して終了する構成としてもよい。その後、イベント実施フラグがオンになる前の状態までエンジン10の運転状態が復帰すると、イベント実施フラグがオフに設定され、昇温制御が完了する。
[4.作用]
上記のフローチャートに沿って昇温制御を実施したときの燃料噴射量等の変動を、図5(a)に例示する。図5(a)は、上から順に、イベント実施フラグ,壁面温度Twal,メイン噴射量,アフター噴射量,燃焼ポスト噴射量,未燃ポスト噴射量のそれぞれの変動をグラフ化したものである。
時刻t0よりも以前のエンジン10の運転状態は、イベント実施フラグがオフに設定された通常の運転状態であり、エンジン10に要求される出力に応じてメイン噴射部2で主噴射の燃料噴射量や噴射タイミングが制御される。
時刻t0にイベント実施フラグがオンに設定されると、排気の昇温制御が開始され、シリンダー11への吸気量が減少する。その後、時刻t1に燃焼ポスト噴射の開始条件が成立すると、ポスト噴射部3から燃焼ポスト噴射に対応する制御パルス信号が出力され、燃焼ポスト噴射が開始される。同時に、メイン噴射部2からも制御パルス信号が出力され、メイン噴射量が減少方向に補正されるとともに、アフター噴射量が増加方向に補正される。
これらの昇温制御により、壁面温度Twalは徐々に上昇する。また、メイン噴射量の減少量とアフター噴射量の増加量とを適宜調整することで、エンジン出力が一定に維持される。一方、壁面温度Twalが所定温度TA未満の状態では、制御部5により未燃ポスト噴射の燃料量が0に設定される。したがって、時刻t1以降もしばらくの間は未燃ポスト噴射が不実施とされる。
時刻t2に壁面温度Twalが所定温度TA以上になると、制御部5による未燃ポスト噴射の制限が解除される。これを受けて、ポスト噴射部3から未燃ポスト噴射に対応する制御パルス信号が出力され、未燃ポスト噴射が開始される。ここで未燃ポスト噴射が開始される時刻t3は、図2(b)に示すように、未燃ポスト噴射が実施されるべきクランク角度に対応する時刻である。したがって、時刻t2と時刻t3との間には、時刻t2での燃焼サイクルの周期よりも小さい時間差が生じうる。
つまり、未燃ポスト噴射は、必ずしも壁面温度Twalが所定温度TA以上になった時刻t2から開始されるのではなく、あくまでも燃焼サイクル毎のクランク角度に応じた噴射タイミングで、時刻t2以降の時刻t3に開始される。これにより、一回の燃焼サイクル内での燃料噴射タイミングを可変とした制御と比較すると、インジェクター14から噴射される燃料量に与えられる燃料配管14aの脈動の影響が小さくなる。
未燃ポスト噴射が開始されることで、排気中の未燃成分が増加する。この未燃成分は、排気通路17上の触媒装置18に供給され、触媒温度の昇温や被毒再生のために消費される。また、時刻t3以降も燃焼ポスト噴射が継続され、壁面温度Twalが徐々に上昇する。
時刻t3から所定時間が経過した時刻t4に未燃ポスト噴射の終了条件が成立すると、ポスト噴射部3から出力されていた未燃ポスト噴射の制御パルス信号が停止し、未燃ポスト噴射が終了する。一方、未燃ポスト噴射の終了後であっても、エンジン10の出力調整を目的としてしばらくの間は燃焼ポスト噴射が継続され、これに伴って主噴射(メイン噴射,アフター噴射)の補正も継続される。
その後、時刻t1から第二所定時間が経過した時刻t5には燃焼ポスト噴射の終了条件が成立し、ポスト噴射部3からの燃焼ポスト噴射の制御パルス信号が停止する。また、メイン噴射部2ではメイン噴射量及びアフター噴射量の補正が解除され、時刻t1よりも以前と同様の制御パルス信号が出力される。これにより、壁面温度Twalが低下し、所定の定常温度に安定する。また、イベント実施フラグがオンからオフに再設定され、排気の昇温制御が完了する。
[5.効果]
上記の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記のエンジン制御装置1では、主噴射後に実施されるポスト噴射時の燃料量が、壁面温度Twalに応じて制御される。例えば、壁面温度Twalが所定温度TA未満であるときには、未燃ポスト噴射の燃料量が削減され、あるいは0に設定される。このように、壁面温度Twalを参照してポスト燃料噴射量を制御することにより、燃焼サイクル毎に大きく変動する筒内温度を参照する場合と比較して、ポスト噴射燃料の壁面への付着量を精度よく調整することができる。
また、壁面温度Twalが所定温度TA未満のときに未燃ポスト噴射の燃料量が制限されるため、燃料のシリンダー壁11bへの付着量を減少させることができる。一方、この制限は壁面温度Twalが所定温度TA以上のときに撤廃されるため、燃料がシリンダー壁11bに付着した場合であっても壁面からの蒸発量を増加させることができる。したがって、オイル希釈化を抑制することができる。
さらに、上記のポスト噴射の制御は、壁面温度Twalを用いた制御であることから、筒内温度の変動にかかわらず、燃料のクランクケース内への流出を抑制することができ、オイル希釈度が低い状態を維持することができる。
(2)また、例えば図4や図5(a)に示すように、制御部5において、壁面温度Twalが所定温度TA未満である燃焼サイクルでの未燃ポスト噴射の燃料量を0に制御した場合には、壁面温度Twalが所定温度TA以上となった燃焼サイクルでのみ未燃ポスト噴射が実施される。つまり、シリンダー壁11bの壁面に未燃ポスト噴射の燃料が付着したとしても、その未燃燃料は蒸発しやすいため、オイル希釈度が上昇しにくくなる。
このように、排気系からの要求に基づいて単純にポスト噴射を実施するのではなく、付着燃料が蒸発しにくい燃焼サイクルを推定した上でその燃焼サイクルで壁面に付着する燃料量を抑制するようにポスト噴射を制限して未燃ポスト噴射を禁止し、蒸発しやすい燃焼サイクルでのみ未燃ポスト噴射を許可することで、オイル希釈度の上昇を効果的に抑制することができる。
(3)また、上記のエンジン制御装置1では、図5(a)に示すように、ポスト噴射量の制限に際し、オイル希釈に最も影響を与えやすい未燃ポスト噴射に限って燃料噴射量を減少させおり、燃焼ポスト噴射は未燃ポスト噴射が実施されていない状態(時刻t1〜t3間)であっても維持される。このような制御により、壁面温度Twalを上昇させながら効果的にオイル希釈度の上昇を抑制することができる。
(4)また、上記のエンジン制御装置1では、壁面温度Twalにかかわらず未燃ポスト噴射の噴射タイミングが変更されない。つまり、図2(b)に示すように、ポスト噴射が実施される時刻に対応するクランク角度は、壁面温度Twalに関わらず一定である。
これにより、インジェクター14に接続された燃料配管14aの内部の脈動による燃料噴射量の変動を防止することができ、ポスト噴射燃料の噴射量を適切に調整することができる。したがって、インジェクター14から意図せず多量の燃料が噴射されるような不具合を防止することができ、シリンダー壁11bの壁面への燃料付着量やオイル希釈量を減少させることができる。
(5)また、上記のエンジン制御装置1では、ガス温度Tgasと冷却水温Twatとから平衡温度Teq1が演算され、その分布から代表平衡温度Teq2が演算される。このように、熱平衡条件下でのシリンダー壁11bの温度を演算することで、シリンダー壁11bの壁面温度Twalの推定精度を向上させることができる。また、壁面温度Twalの推定精度が向上することにより、燃料の壁面からの蒸発しやすさを正確に評価することが可能となり、ポスト噴射燃料の壁面への付着量を適切に制御することができる。
(6)さらに、上記のエンジン制御装置1では、代表平衡温度Teq2の経時変動に遅延処理を施して壁面温度Twalが推定される。これにより、シリンダー11内の燃焼ガスからシリンダー壁11bへの熱伝達の遅れや、シリンダー壁11bから冷却水への熱伝達の遅れが考慮された正確な壁面温度Twalを推定することができる。したがって、壁面温度Twalの推定精度をより向上させることができる。
(7)なお、上記のエンジン制御装置1では、燃焼サイクル毎のシリンダー11内の温度(いわゆる筒内温度)の平均値がガス温度Tgasとして演算される。つまり、筒内温度を燃焼サイクル毎に平均化したものに相当するガス温度Tgasが演算される。このように、燃焼サイクルの各行程で大きく急激に変動する気筒温度を平均化する処理を行うことで、シリンダー壁11bを主体として捉えた熱的環境の特徴を維持したまま、熱量の演算量を削減することができる。したがって、上記のエンジン制御装置1は、高速な演算速度と確かな演算精度とを両立する信頼性の高い温度推定モデルを提供することができる。
[6.変形例]
上述の実施形態の図5(a)では、壁面温度Twalが所定温度TA未満であるときに未燃ポスト噴射の燃料量を0にする制御を例示したが、未燃ポスト噴射を完全に停止させなくてもよい。例えば、壁面温度Twalが所定温度TA未満であるときに、壁面温度Twalが所定温度TA以上のときよりも燃料量を減少させる制御とすることが考えられる。壁面からの燃料の蒸発量が少ない状態での未燃ポスト噴射量を減少させることで、燃料のクランクケース内への流出を抑制することができ、オイルの希釈化を防ぐことができる。
なお、壁面温度Twalと未燃ポスト噴射量との関係は多様に想定することが可能である。例えば、図5(b)に示すように、壁面温度Twalに応じて未燃ポスト噴射量を定めてもよい。この場合、壁面温度Twalが低いほど未燃ポスト噴射量を減少させ(制限量を増加させ)、壁面温度Twalが高いほど未燃ポスト噴射量を増加させることが考えられる。このような制御により、ポスト噴射燃料の壁面への付着量を精度よく調整することができ、燃料のクランクケース内への流出を効果的に抑制することができる。
また、図5(c)に示すように、未燃ポスト噴射量を減少させるとともに、燃焼ポスト噴射量を増加させるような制御とすることも考えられる。例えば、ポスト噴射での燃料噴射量を一定にする必要がある場合には、未燃ポスト噴射での減少量に対応するように燃焼ポスト噴射量を増加させてもよい。つまり、燃焼ポスト噴射の増加量と未燃ポスト噴射の減少量とを一致させる。このように、ポスト噴射の範疇で燃料噴射量を振り分けることにより、エンジン10運転状態や他の燃料噴射に係る制御に与える影響を小さくしつつ、オイルの希釈化を防止することができる。
また、燃料ポスト噴射量を増加させることで、壁面温度Twalを積極的に上昇させることができ、壁面温度Twalが所定温度TA以上となるまでにかかる時間を短縮することができる。これにより、排気性能を短時間で向上させることができる。
なお、上述の実施形態では、壁面温度Twalが低いときの未燃ポスト噴射量に制限を加える制御を例示したが、これは、壁面温度Twalが高いときに未燃ポスト噴射量を増加させる制御と捉えることも可能である。燃料の壁面からの蒸発に十分な壁面温度Twalが確保されている場合には、未燃ポスト噴射量を増加させることで、排気中の未燃成分を増加させることができ、触媒装置18の昇温速度を高めることができ、排気性能をより向上させることができる。
また、上述の実施形態では、ガス温度Tgasと冷却水温Twatとからの伝熱特性に応じて推定される壁面の温度に系の応答遅れを考慮して、壁面温度Twalを演算するものを示したが、具体的な壁面温度Twalの演算手法は多様に考えられる。例えば、冷却水温Twatとその変化傾向とに基づいてシリンダー壁11bの平衡温度Teq1を演算し、この平衡温度Teq1に基づいて壁面温度Twalを演算する構成としてもよい。あるいは、シリンダー壁11bの平衡温度Teq1を演算しない場合には、シリンダー壁11bの内部に壁体内部の温度を検出するセンサーを埋設し、ここで検出された温度に基づいて壁面温度Twalを推定する構成としてもよい。
また、上述の実施形態ではディーゼルエンジン10の燃料噴射を制御するものを示したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。少なくともシリンダー11内に燃料を噴射する直噴エンジンであって、燃料の多段噴射が可能なものであれば、本発明を適用することができる。
1 エンジン制御装置
2 メイン噴射部
3 ポスト噴射部(ポスト噴射手段)
3a 燃焼ポスト噴射部(燃焼ポスト噴射手段)
3b 未燃ポスト噴射部(未燃ポスト噴射手段)
4 壁面温度推定部(推定手段)
4a ガス温度推定部
4b 平衡温度演算部
4c 遅れフィルター処理部
5 制御部(制御手段)
10 エンジン
11 シリンダー
14 インジェクター
15 ウォータージャケット
Tgas ガス温度,Twat 冷却水温,Teq1 平衡温度,Teq2 代表平衡温度
Twal 壁面温度,TA 所定温度(壁面温度の判定閾値)

Claims (7)

  1. 内燃機関の気筒内に対して主噴射後にポスト噴射を実施するポスト噴射手段と、
    前記気筒の壁面温度を推定する推定手段と、
    前記推定手段で推定された前記壁面温度に基づき、前記ポスト噴射手段が実施する前記ポスト噴射の燃料量を制御する制御手段とを備え、
    前記ポスト噴射手段が、
    排気温度の昇温に係る燃焼ポスト噴射を実施する燃焼ポスト噴射手段と、
    前記燃焼ポスト噴射の後に排気系への未燃成分の供給に係る未燃ポスト噴射を実施する未燃ポスト噴射手段とを有し、
    前記制御手段が、前記壁面温度に応じて、前記未燃ポスト噴射手段が実施する前記未燃ポスト噴射の燃料量を減少させる
    ことを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 前記制御手段が、前記壁面温度が所定温度未満である燃焼サイクルでの所定期間において前記ポスト噴射手段による前記ポスト噴射の実施に制限を加える
    ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 前記制御手段が、前記壁面温度に応じて、前記燃焼ポスト噴射手段が実施する前記燃焼ポスト噴射の燃料量を増加させる
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  4. 前記ポスト噴射手段が、前記壁面温度に関わらず、各燃焼サイクルで前記ポスト噴射が実施されるタイミングを所定タイミングに維持する
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  5. 前記推定手段が、前記気筒内のガス温度と前記内燃機関の冷却水温とから演算される前記気筒の壁体の平衡温度に基づき、前記壁面温度を推定する
    ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  6. 前記推定手段が、前記平衡温度の経時変動に遅延処理を施して前記壁面温度を推定する
    ことを特徴とする、請求項記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  7. 前記推定手段が、燃焼サイクル毎の前記気筒内の気体温度の平均値を前記ガス温度として演算する
    ことを特徴とする、請求項又は記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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