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JP5672002B2 - 大麦選抜方法 - Google Patents
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JP5672002B2 - 大麦選抜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大麦選抜方法、麦芽及び麦芽発酵飲料に関する。
麦芽エキスは、ビール醸造において経済性に直結する重要な麦芽品質である。また、麦芽エキスは、麦芽のとけ、酵素力、穀皮の薄さ、粗蛋白含量など様々な形質が関わる複雑な麦芽品質である。麦芽エキスの高い大麦を育種することは、大麦育種における主要な目標の一つとなっている。
近年大麦でもゲノム解析が進み、多数のDNAマーカー情報が入手できるようになった。このため、世界中の育種機関において、麦芽品質の遺伝解析によって育種上有用な量的形質遺伝子座(QTL)を検出し、育種に利用する動きが活発となっており、これまでに多くの研究成果が報告されている(非特許文献1〜5)。
麦芽エキスに関しては、様々な大麦集団を用いたQTL解析の結果がこれまでに報告されている。Harrington×TR306系統では染色体1H及び5H(非特許文献1)、Harrington×Morex系統では染色体1H及び2H(非特許文献2)、Chebec×Harrington系統では染色体5H(非特許文献3)、Galleon×Haruna Nijo系統では染色体2H(非特許文献4)、Steptoe×Morex系統では染色体1H、2H、5H及び7H(非特許文献5)、にそれぞれ麦芽エキスに関するQTLが検出されている。
D.E.Mather,et al,1997年,Crop Sci.,37巻,pp.544−554 L.A.Marquez−Cedillo,et al,2000年,Theor.Appl.Genet.,101巻,pp.173−184 A.R.Barr,et al,2003年,Australian J.Agric.Res.,54巻,pp.1125−1130 H.M.Collins,et al,2003年,Australian J.Agric.Res.,54巻,pp.1223−1240 P.M.Hayes,et al,1993年,Theor.Appl.Genet.,87巻,pp.392−401
非特許文献1〜5では、用いた大麦集団によって麦芽エキスに関するQTLの検出される染色体上の位置が異なっている。その原因としては、両親がその遺伝子を有していないこと、解析に供した系統数の規模、環境要因等が考えられる。このため、麦芽エキスに関与する遺伝領域は未だ明らかとはいえず、大麦育種上汎用性のあるDNAマーカーの開発が強く望まれる。
そこで、本発明は、麦芽エキスの高い大麦を信頼性よく選抜することが可能な汎用性ある大麦選抜方法を提供することを目的とする。
本発明は、麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列(5’−GANTC−3’)(認識配列中、Nは任意の塩基を示す。)を有する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法を提供する。
本発明において、「MWG655A配列」とは、MWG655A遺伝子座中の塩基配列を意味する。また、「配列番号1の塩基配列に相当する」とは、配列番号1の塩基配列の染色体位置と同じ染色体位置にあることをいう。
本発明の大麦選抜方法では、被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有するか否かを判定することによって、麦芽エキスの高い大麦を選抜することができる。本発明の大麦選抜方法は、遺伝子型に基づく選抜方法であることから、産地や産年度による自然環境の変動の影響を受けることなく、麦芽エキスの高い大麦を信頼性よく選抜することができる。また、被検大麦から多量の種子サンプルを採取する必要がなく、大麦育種の初期段階で(例えば、雑種第2世代)、麦芽エキスの高い大麦を選抜することができる。
被検大麦が上記MWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有するか否かの判定は、上記MWG655A配列を増幅可能なプライマーセットを用い、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って、増幅DNA断片を得る工程と、増幅DNA断片を制限酵素HinfIで消化処理する工程と、を実施し、得られた制限酵素処理物中に制限酵素により切断されたDNA断片が存在するか否かを判定することによって行うのが好ましい。
すなわち、本発明はまた、麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列を増幅可能なプライマーセットを用い、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行って、増幅DNA断片を得る増幅工程と、増幅DNA断片を制限酵素HinfIで消化処理する消化工程と、を含み、消化工程で得られた制限酵素処理物中に前記制限酵素により切断されたDNA断片が存在する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法を提供する。
この大麦選抜方法は、PCRにより増幅したDNA断片を制限酵素HinfIで処理して多型を検出する、いわゆるCleaved Amplified Polymorphic Sequence(CAPS)法に基づくものである。これにより、作業がより容易になり、かつ多検体をより短時間で処理することが可能となる。また、多数の被検大麦を対象とする選抜を同時に行うことができるため、育種現場での大麦選抜に好適である。
上記プライマーセットとしては、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなり、その少なくとも一方が、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列の多重整列結果において配列番号1の塩基配列が他のいずれの塩基配列とも異なる配列番号1の塩基配列中の多型部位にアニーリングするものが好ましい。
MWG655A遺伝子座には、塩基配列の相同性が非常に高いオルソログ(MWG655B、MWG655C及びMWG655e遺伝子座)が存在するが、そのようなプライマーセットをPCRに用いることにより、MWG655B及びMWG655C遺伝子座に由来するDNA断片の非特異的増幅を抑制することができる。したがって、選抜効率を向上させ、選抜にかかる労力を低減することが可能となる。
DNA断片の非特異的増幅をより確実に抑制するという観点から、上記プライマーセットとしては、例えば、フォワードプライマーが配列番号1の塩基配列の第1〜11番目の塩基配列を含むものがさらに好ましく、また、配列番号4の塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号5の塩基配列からなるリバースプライマーと、からなるものが特に好ましい。
本発明はまた、上記大麦選抜方法により選抜された大麦同士を交配することにより得ることのできる交配後代系統の大麦を提供する。
本発明の方法により選抜された大麦は、麦芽エキスに影響を及ぼすMWG655A遺伝子座中のDNAマーカーの遺伝子型が一致している。そして、これらの大麦同士を交配することにより得られる交配後代系統の大麦は、上記DNAマーカーに関して両親と同じ遺伝子型を有することから、麦芽エキスの高い大麦となる。
本発明はまた、上記大麦選抜方法により選抜された大麦又は上記交配後代系統の大麦を製麦する製麦工程を含む麦芽製造方法を提供する。また、該方法により得ることのできる麦芽を提供する。
本発明の麦芽は、上記大麦選抜方法により選抜された大麦又は上記交配後代系統の大麦を製麦して得られるものであるため、麦芽エキスが高く、麦芽発酵飲料の原料として有用である。
本発明はまた、仕込工程と発酵工程とを含む麦芽発酵飲料の製造方法であって、仕込工程において、上記大麦選抜方法により選抜された大麦、上記交配後代系統の大麦又は上記麦芽を原料として使用する方法を提供する。また、該方法により得ることのできる麦芽発酵飲料を提供する。
本発明の麦芽発酵飲料の製造方法では、仕込工程において、上記大麦選抜方法により選抜された大麦、上記交配後代系統の大麦又は上記麦芽を原料として使用するため、同量の原料からより多くの麦芽発酵飲料を製造することができ、製造コストの低減が可能となる。また、原料に含まれる麦芽エキスが高いことから、栄養分の含有量が高い麦芽発酵飲料を製造することができる。
本発明によれば、麦芽エキスの高い大麦を信頼性よく選抜することが可能な汎用性ある大麦選抜方法が提供される。また、麦芽エキスの高い大麦・麦芽、及びそのような大麦・麦芽を原料とする高品質の麦芽発酵飲料が提供される。
配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列の多重整列結果である。 本発明の大麦選抜方法で使用されるDNAマーカーの遺伝子型と麦芽エキスとの関係を示すグラフである。 本発明の大麦選抜方法を実施する際に得られたPCR産物のHinfI処理物のアガロースゲル電気泳動像である。 本発明の方法により選抜された大麦の麦芽エキスの程度を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
〔大麦選抜方法〕
本発明の大麦選抜方法は、麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列(5’−GANTC−3’)(認識配列中、Nは任意の塩基を示す。)を有する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法である。
本発明において、「麦芽エキス」とは、乾燥重量あたりの麦芽のエキス含有率を意味する。麦芽のエキス含有率は、例えば、コングレス麦汁のエキス含有率から求めることができる。コングレス麦汁のエキス含有率は、水の比重に対するコングレス麦汁の比重の増加分から計算することができる。この比重の増加分は、例えば、糖、アミノ酸、ビタミン等によるものである。
本発明において、「MWG655A配列」とは、MWG655A遺伝子座中の塩基配列を意味する。また、「配列番号1の塩基配列に相当する」とは、配列番号1の塩基配列の染色体位置と同じ染色体位置にあることをいう。「配列番号1の塩基配列に相当する」塩基配列は、例えば、配列番号1の塩基配列と一塩基多型(SNP)による数塩基程度の不一致があってもよい。
被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有するか否かを判定する方法としては、本技術分野で汎用されている方法を採用することができる。そのような方法としては、Restriction fragment length polymorphism(RFLP)法、シークエンス法、CAPS法等が挙げられる。
RFLP法による判定は、例えば、次のように行うことができる。まず、被検大麦のゲノムDNAを制限酵素HinfIで消化処理し、得られたDNA断片(HinfI処理物)をゲル電気泳動し、さらにこれをメンブレンに転写する。そして、配列番号1の塩基配列を検出可能なプローブを上記メンブレンと接触させ、生じたハイブリダイゼーションを検出する。ハイブリダイゼーションが検出されたDNA断片のサイズ及び/又は数を解析することにより、上記MWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列が存在するか否かを判定することができる。ミカモゴールデン種又はHarrington種のゲノムDNAを対照として用いることにより、判定をより簡便に行うことができる。
配列番号1の塩基配列を検出可能なプローブとしては、例えば、配列番号1の塩基配列を含む配列を有するプローブ、配列番号1の塩基配列からなるプローブ、配列番号1の塩基配列の一部からなるプローブを使用することができる。
ハイブリダイゼーションの検出は、本技術分野で汎用されている方法により行うことができる。例えば、プローブを蛍光物質、放射性核種、ジゴキシゲニン(DIG)等で標識し、蛍光、放射線、抗DIG抗体との結合等を検出することによって行うことができる。
シークエンス法による判定は、例えば、次のように行うことができる。まず、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたPCRにより、上記MWG655A配列を含むDNA断片を増幅する。そして、増幅DNA断片(PCR産物)を鋳型としたダイレクトシークエンスを実施する。また、PCR産物を組み込んだ任意のベクターを用いて大腸菌、酵母等の形質転換を行い、PCR産物を保持する形質転換体を選別し、その形質転換体が保持するベクターを鋳型としてシークエンスしてもよい。また、選別された形質転換体が保持するベクターを鋳型としてPCRし、ダイレクトシークエンスを実施してもよい。
CAPS法による判定は、例えば、次のように行うことができる。まず、上記MWG655A配列を増幅可能なプライマーセットを用い、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、得られた増幅DNA断片(PCR産物)を制限酵素HinfIで消化処理する。そして、制限酵素処理DNA断片のサイズ及び/又は数を解析し、HinfIにより切断されたDNA断片が存在するか否かを判定する。
本発明の大麦選抜方法において、被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有するか否かの判定は、作業の容易性・効率性の点でCAPS法に基づいて行うのが好ましい。
すなわち、本発明の大麦選抜方法は、好適な一実施形態において、麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列を増幅可能なプライマーセットを用い、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行って、増幅DNA断片を得る増幅工程と、増幅DNA断片を制限酵素HinfIで消化処理する消化工程と、を含み、消化工程で得られた制限酵素処理物(制限酵素処理DNA断片)中に制限酵素により切断されたDNA断片が存在する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法である。消化工程の後に、制限酵素処理DNA断片のサイズ及び/又は数を解析する解析工程を、さらに実施してもよい。
上記プライマーセットは、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列を増幅可能なものであればよい。このようなプライマーセットは、配列番号1の塩基配列に基づいて当業者であれば容易に設計することができる。
上記プライマーセットとしては、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなり、その少なくとも一方が、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列の多重整列結果において配列番号1の塩基配列が他のいずれの塩基配列とも異なる配列番号1の塩基配列中の多型部位にアニーリングするものが好ましい。
本発明において、「多重整列(マルチプルアラインメント)」とは、複数の塩基配列を相互に比較可能なものにするため、一致する塩基が可能な限り多くなるように、適宜空白(ギャップ)を入れて塩基配列を整列させることをいう。多重整列は、公知の多重整列作成プログラム(Clustal W、Clustal X等)を用いて行うことができる。
図1は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列の多重整列結果である。配列番号1の塩基配列(図1中、「SEQ−1」と表示する。)はMWG655A遺伝子座中の配列である。配列番号2の塩基配列(図1中、「SEQ−2」と表示する。)はMWG655B遺伝子座中の配列である。配列番号3の塩基配列(図1中、「SEQ−3」と表示する。)はMWG655C遺伝子座中の配列である。図1中、「*」を付した塩基部位は、上記3つの塩基配列が一致する塩基部位を示し、「−」はギャップを表す。また、図1の配列中、下線を付した部分は、実施例で使用したプライマー(MWG−A3、MWG−C2)の塩基配列又はその相補配列と同じ塩基配列を有する部分である。なお、配列番号1〜3の塩基配列は、ミカモゴールデン/Harrington倍化半数体(MH−DH)系統の大麦から抽出したゲノムDNAを鋳型としてシークエンスして得られたものである。
図1から明らかなように、配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列は非常に高い塩基配列相同性を有する。また、大麦染色体中には、MWG655A遺伝子座中の配列と塩基配列の相同性が非常に高いオルソログがMWG655B、MWG655C及びMWG655e遺伝子座の各々に存在する。これらのオルソログは、PCRに用いるプライマーの配列によっては、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列と一緒に非特異的に増幅され得る。
フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方が、上記多型部位にアニーリングするものであれば、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方と、MWG655B及びMWG655C遺伝子座中のオルソログと、の間にミスマッチが生じる。このため、MWG655B及びMWG655C遺伝子座中の塩基配列がPCRで非特異的に増幅されるのが抑制され、その後の制限酵素処理による遺伝子型判定をより容易に行うことが可能となる。
本発明において、プライマー(フォワードプライマー又はリバースプライマー)の長さは特に制限されるものではないが、例えば、7塩基以上とすることができ、10塩基以上とすることが好ましく、15塩基以上とすることがより好ましい。また、例えば、50塩基以下とすることができ、40塩基以下とすることが好ましく、30塩基以上とすることがより好ましい。
フォワードプライマーとしては、例えば、配列番号4の塩基配列を含むものが好ましく、配列番号4の塩基配列からなるものがより好ましい。また、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号5の塩基配列を含むものが好ましく、配列番号5の塩基配列からなるものがより好ましい。
被検大麦のゲノムDNAは、例えば、植物の組織からのゲノムDNA抽出に常用される方法(CTAB法等)で抽出を行うことによって得ることができる。市販のゲノムDNA抽出用キット類も好適に使用可能である。ゲノムDNAは被検大麦の葉、茎、根、種子等のいずれの部位から抽出されてもよいが、本発明の大麦選抜方法を育種の初期段階で実施する場合は葉が好適である。
PCRに用いる耐熱性ポリメラーゼとしては、例えば、市販の耐熱性ポリメラーゼ(Premix Taq、Ex Taq version 2.0(TAKARAバイオ)等)を適宜選択して使用することができる。
アニーリングの際の温度は60.0〜65.0℃とするのが好ましく、例えば、62.5℃とすることができる。アニーリング温度をこの範囲に設定することにより、非標的領域の増幅をより効率よく抑えることができる。
制限酵素HinfIによるPCR産物の消化処理は、制限酵素HinfIに至適な緩衝液中、至適な温度で実施することができる。例えば、緩衝液(20mM Tris−acetate、50mM potassium acetate、10mM Magnesium Acetate、1mM Dithiothreitol、pH7.9)中、37℃で実施することができる。
制限酵素処理DNA断片のサイズ及び/又は数の解析は、例えば、アガロースゲル電気泳動により行うことができる。また、公知の適切なカラムを用いたHPLC法で断片をサイズ分画することによって行うこともできる。
なお、本発明者らの知見によれば、大麦は、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有するか否かによって、大麦ミカモゴールデン種と同じ遺伝子型(以下、「Mi型」又は「Mi型の遺伝子型」という。)を有するものと、大麦Harrington種と同じ遺伝子型(以下、「Hr型」又は「Hr型の遺伝子型」という。)を有するものと、に分類することができ、Mi型の大麦は、Hr型の大麦に比べて麦芽エキスが高い。
したがって、麦芽エキスの高い大麦を選抜するためのDNAマーカーは、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中のものに限定されるものではなく、MWG655A遺伝子座中、Mi型とHr型に分類可能な多型を示す任意のDNAマーカーを使用することができる。すなわち、そのようなDNAマーカーに基づいて被検大麦の遺伝子型を同定し、Mi型と同定された大麦を選抜することによっても、麦芽エキスの高い大麦を選抜することができる。
〔交配後代系統の大麦〕
本発明の交配後代系統の大麦は、上記大麦選抜方法により選抜された大麦同士を交配して得ることのできる交配後代系統の大麦である。上記大麦選抜方法により選抜された大麦は、麦芽エキスに関わるMWG655A遺伝子座の遺伝子型がMi型であることから、それらを交配して得られる交配後代系統の大麦も麦芽エキスの高いMi型の大麦となる。
〔麦芽製造方法〕
本発明の麦芽製造方法は、上記大麦選抜方法により選抜された大麦又はその交配後代系統の大麦を用いて麦芽を得る製麦工程を含む方法である。麦芽エキスの高い大麦として選抜された大麦又はその交配後代系統の大麦を用いて製麦が行われることから、この方法により得られる麦芽は麦芽エキスの高いものとなる。製麦は公知の方法で行うことができ、例えば、浸麦度が40%〜45%に達するまで浸麦後、10〜20℃で3〜6日間発芽させ、焙燥することによって麦芽を得ることができる。
〔麦芽発酵飲料の製造方法〕
本発明の麦芽発酵飲料の製造方法は、仕込工程及び発酵工程を含み、仕込工程において、上記大麦選抜方法により選抜された大麦、上記交配後代系統の大麦又は上記麦芽を原料として使用するものである。
仕込工程は、麦芽を糖化させて麦汁を得る工程である。より具体的には、麦芽や大麦を含む原料と仕込用水とを混合し、得られた混合物を加温することにより麦芽や大麦を糖化させ、糖化された麦芽や大麦から麦汁を採取する工程である。
仕込工程で使用される麦芽としては、製麦工程において大麦に水分と空気を与えて発芽させ、乾燥して幼根を取り除いたものが好ましい。麦芽は、麦汁製造に必要な酵素源であると同時に、糖化の原料として主要なデンプン源となる。麦芽発酵飲料特有の香味と色素を与えるために、発芽させた麦芽を焙燥したものを麦汁製造に使用するのが好ましい。また、原料の一部として、麦芽以外に、大麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、糖類等の副原料を添加してもよい。また、原料の一部として、一般大麦より調製されたモルトエキス、大麦分解物、大麦加工物等を使用してもよい。
仕込用水は、製造する麦芽発酵飲料に応じて好適な水を選択すればよい。また、糖化は一般的な条件で行えばよい。こうして得られた麦芽糖化液をろ過した後、香り、苦味等を付与できる原料(ホップ、ハーブ等)を添加して煮沸を行い、それを冷却することによって冷麦汁が得られる。
発酵工程は、仕込工程で得られた冷麦汁に酵母を添加して発酵させ、麦芽発酵飲料を得る工程である。ここで用いられる酵母としては、例えば、サッカロミセス・パトリアヌス、サッカロミセス・セレビシェ、サッカロミセス・ウバルム等が挙げられる。
麦芽発酵飲料は、大麦又は麦芽を原料の一部として発酵により製造される飲料であればよい。そのような飲料としては、例えば、ビールや発泡酒が挙げられる。また、いわゆるノンアルコールビールやノンアルコール発泡酒も、ビール等と同様の製法で製造されることから麦芽発酵飲料に当たる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例において、「MWG655A配列」、「MWG655B配列」、「MWG655C配列」及び「MWG655e配列」とは、それぞれMWG655A、B、C及びe遺伝子座中の塩基配列を意味するものとする。
〔麦芽エキスのQTL解析〕
(大麦サンプル)
産年度及び産地の異なるミカモゴールデン/Harrington倍化半数体(MH−DH)95系統の大麦(1998年栃木産、2002年栃木産、2006年カナダ産)をサンプルとした。
(麦芽エキスの測定)
上記MH−DH系統の大麦種子を小製麦して麦芽を得た。得られた麦芽の乾燥重量を測定した後、コングレス麦汁を調製した。コングレス麦汁の比重を振動式密度計(Density Meter DMA4500M:Anton Paar社製)を用いて測定し、文献[European Brewery Convention, Analytica (1987) European Brewery Convention, fourth ed. Brauerei und Getraenke Rundschau, Zurich]に記載のEuropean Brewery Convention(EBC)標準法により麦芽エキスを測定した。
(QTL解析)
CTAB法で抽出したミカモゴールデン種、Harrington種のDNAを、Illumina GoldenGate BeadArrayを用いた一塩基多型(SNPs)解析に供した。多型が得られたSNPsについてはMH−DH系統で多型調査を実施した。さらに、RFLP、ホルデイン、SSR、ESTマーカーでもMH−DHの多型解析を実施した。MH−DH系統の550の多型データを用いて、リンケージマップを作成した。このマップを用いてQTL解析を実施した。QTL解析は、JoinMap v3.0(http://www.kyazma.nl/index.php/mc.JoinMap/)を用いて実施した。
(結果)
産地・産年度の異なる3種のMH−DH系統(1998年及び2002年栃木産、2006年カナダ産)による麦芽エキスのQTL解析の結果、いずれのサンプルでも、染色体2H(QTLのピーク:33.2cM、寄与率:14.7〜22.7%)に麦芽エキスのQTLが検出された。このQTLの効果を検証したところ、MWG655A遺伝子座の遺伝子型をMi型及びHr型に分類できることが判明した。さらに、いずれの産地・産年度においても、MWG655A遺伝子座の遺伝子型がMi型のものは、Hr型のものと比較して有意に麦芽エキスが高かった(図2)。図2において、各データは平均±標準偏差で示されている。また、Mi型のデータに付された「**」は、当該データが、Hr型と比較して有意差(危険率:1%)のあるデータであることを示す。有意差の有無は、t−検定を用いて判定した。なお、図2において2006年カナダ産大麦の麦芽エキスが栃木産より低くなっているのは、粗蛋白含量が栃木産より多いためであると考えられる。
以上により、MWG655A遺伝子座の遺伝子型がMi型であれば、麦芽エキスが高くなることが示唆された。また、産年度及び産地の異なるMH−DH系統大麦を用いた解析に基づくものであるため、汎用性の高いDNAマーカーになると考えられた。
〔CAPSマーカーの構築〕
MWG655AマーカーはRFLPマーカーとして知られている。RFLPによるMWG655A遺伝子座の遺伝子型の同定は、MWG655クローンをプローブとして行い、検出される4つのバンドパターンによって、A、B、C及びeの4種類の異なるマーカーとして同定する。MWG655遺伝子座には、少なくともA、B、C及びeという4つの類似した塩基配列が存在するが、これまで各々の塩基配列は知られていなかった。
MWG655A配列を解析するため、PCRによるMWG655A配列の増幅を試みた。そのために、まず、RFLPプローブであるMWG655クローンの塩基配列を解析し、得られた塩基配列に基づいて、MWG655クローンの5’及び3’末端でプライマーをデザインした(MWG−3、MWG−4)。このプライマーセット(MWG−3、MWG−4)を用いて、ミカモゴールデン種及びHarrington種のゲノムDNAを鋳型にしてPCRを行った。増幅されたDNA断片をそれぞれシークエンスし、塩基配列を比較したところ、数箇所に多型が検出された。
検出された多型のうち、制限酵素HinfIの認識配列を含む一塩基多型を暫定CAPSマーカーとして、MH−DH95系統大麦の遺伝子型の決定を試みたところ、Mi型、Hr型及びヘテロ型に分離した。しかしながら、MH−DH系統は倍化半数体で、遺伝的には固定されているため、増幅DNA断片がMWG655A、B、C及びe遺伝子座のいずれか1種に由来するものとすれば、ヘテロ型は出現しないはずである。したがって、このプライマーセット(MW−3、MW−4)で増幅したDNA断片中には、MWG655A、B、C及びe配列のうちの2種以上の配列が混在するものと考えられた。
そこで、Mi型、Hr型及びヘテロ型を示すMH−DH系統大麦について、本暫定CAPSマーカーによるパターンとRFLPパターンとの比較解析を行った。その結果、MWG655B及びCについてRFLPパターンで同じ遺伝子型を示す大麦は、本暫定CAPSマーカーではMi型又はHr型を示し、RFLPパターンで異なる遺伝子型を示す大麦は、本暫定CAPSマーカーではヘテロ型を示した。すなわち、このプライマーセット(MW−3、MW−4)で増幅したDNA断片中には、少なくともMWG655B及びC配列が混在することが示唆された。
さらに、ヘテロ型を示したMH−DH系統大麦に関するRFLPの結果を用いて、本暫定CAPSマーカーで検出されたヘテロ型のDNA断片の塩基配列を解析し、MWG655B及びC配列を得た(配列番号2、3)。これらの塩基配列とMWG655クローンの塩基配列との間に存在する多型に基づいて、プライマーMWG−C2(MWG655Bを増幅しないプライマー)及びMWG−7(多型部位を含むMWG655クローン中の一領域と同じ塩基配列を有する。)を設計した。MWG−7及びMWG−C2を用いてPCRを行い、得られたDNA断片の塩基配列を解析した(配列番号1)。
配列番号1〜3の塩基配列を比較して、配列番号1の塩基配列と配列番号2及び3の塩基配列との間で多型を検出した(図1)。配列番号1の塩基配列中の多型部位を含むようにプライマーをデザインし(MWG−A3)、MWG−A3及びMWG−C2を用いてPCRを行った。得られた増幅DNA断片を主要な制限酵素45種の各々で消化処理し、制限酵素のスクリーニングを行った。その結果、HinfIで消化処理した場合に、MH−DH95系統大麦の遺伝子型がMWG655A配列に関するRFLPの結果と一致することが判明した。
図3に示されるように、HinfI処理物についてアガロースゲル電気泳動を行ったところ、Mi型では約240bpにバンドが検出されたが、Hr型ではこのバンドが検出されなかった。また、Mi型、Hr型ともに約270bpにバンドが検出されたが、このバンドはMWG655A配列ではなく、MWG655A配列類似の塩基配列を有するMWG655e配列と考えられた(MH−DH系統において、MWG655e遺伝子座の多型は存在しない)。なお、図3中、矢印で示したバンドは、Mi型のみで検出される約240bpのバンドである。このバンドの有無によってMi型(バンド有)かHr型(バンド無)かを同定できる。
以上により、配列番号1の塩基配列がMWG655A配列であること、及び配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中にHinfIの認識配列が存在するか否かで大麦の遺伝子型を同定できる(存在すればMi型、存在しなければHr型)ことが確認された。
〔CAPSマーカーによる大麦選抜〕
(大麦サンプル)
サッポロビール社木崎圃場で栽培された主要なビール麦品種38種(2000年産:15種、2004年産:30種、2005年産:29種、2006年産:27種、2009年産:26種)をサンプルとした。
(麦芽エキスの測定)
麦芽エキスの測定は、上記と同様に行った。
(CAPS法)
各品種のゲノムDNAを鋳型にし、下記プライマーを用いて下記条件でPCRを行った。得られたPCR産物をHinfIで消化処理後、アガロースゲル電気泳動を行い、バンド位置(DNA断片長)で遺伝子型を同定した。
MWG−A3(フォワードプライマー):5’−TGTAGTCAGTCACAGGTGTTATTCCAC−3’(配列番号4)
MWG−C2(リバースプライマー):5’−CGGGTTGAACTATGTCTATCTC−3’(配列番号5)
PCR条件:94℃、1分間の変性、62.5℃、1分間のアニーリング、72℃、5分間の伸長反応を1サイクルとして、これを35サイクル繰り返し、さらに70℃、5分間の伸長反応を行う。
(結果)
調査した38品種のうち、遺伝子型がMi型を示したのは5種であり、Hr型を示したのは33種であった。産年度ごとの内訳は下記のとおりである。
2000年産:Mi型3種/Hr型12種
2004年産:Mi型4種/Hr型26種
2005年産:Mi型3種/Hr型26種
2006年産:Mi型3種/Hr型24種
2009年産:Mi型3種/Hr型23種
遺伝子型ごとの麦芽エキスの平均値を比較したところ、いずれの産年度においても、Mi型の大麦はHr型と比較して有意に麦芽エキスが高かった(図4)。図4において、各データは平均±標準偏差で示されている。また、Mi型のデータに付された「*」及び「**」は、当該データが、Hr型と比較して有意差(危険率:それぞれ5%及び1%)のあるデータであることを示す。有意差の有無は、t−検定を用いて判定した。
以上の実施例により、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有する大麦は、そうでない大麦に比べて麦芽エキスが高いことが確認された。また、本発明の大麦選抜方法によれば、産年度、産地、環境要因等の影響を受けることなく、麦芽エキスの高い大麦を信頼性よく選抜できることが確認された。
配列番号4;フォワードプライマーMWG−A3
配列番号5;リバースプライマーMWG−C2

Claims (5)

  1. 麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、
    被検大麦が、配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列中に制限酵素HinfIの認識配列を有する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法。
  2. 麦芽エキスの高い大麦を選抜するための方法であって、
    配列番号1の塩基配列に相当するMWG655A配列を増幅可能なプライマーセットを用い、被検大麦のゲノムDNAを鋳型としたポリメラーゼ連鎖反応を行って、増幅DNA断片を得る増幅工程と、増幅DNA断片を制限酵素HinfIで消化処理する消化工程と、を含み、
    消化工程で得られた制限酵素処理物中に前記制限酵素により切断されたDNA断片が存在する場合に、該被検大麦を麦芽エキスの高い大麦として選抜する方法。
  3. 前記プライマーセットがフォワードプライマー及びリバースプライマーからなり、
    該フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方は、
    配列番号1、配列番号2及び配列番号3の塩基配列の多重整列結果において配列番号1の塩基配列が他のいずれの塩基配列とも異なる配列番号1の塩基配列中の多型部位にアニーリングするものである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記フォワードプライマーは、配列番号1の塩基配列の第1〜11番目の塩基配列を含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記プライマーセットは、配列番号4の塩基配列からなるフォワードプライマーと、配列番号5の塩基配列からなるリバースプライマーと、からなる、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
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