JP5688893B2 - コリン高含有酵母及びコリン高含有酵母破砕物、並びに食品 - Google Patents
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Description
しかしながら、この方法は、特定の突然変異株を必要とするため製造が簡便でなく、また代謝回転を促進しているため、コリンを菌体内へ取り込んだ後の菌体外への排出も速く、コリン高含有酵母の製造には不向きである点で問題であった。
<1> 菌体におけるコリン含有量が乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%であることを特徴とするコリン高含有酵母である。
<2> 食用酵母である前記<1>に記載のコリン高含有酵母である。
<3> 食用酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、及び味噌醤油酵母の少なくともいずれかである前記<2>に記載のコリン高含有酵母である。
<4> 食用酵母がSaccharomyces cerevisiaeである前記<2>から<3>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<5> 培養液の総液量に対するコリン化合物の添加量が2質量%〜5質量%となるようにして酵母を培養することにより得られる前記<1>から<4>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<6> 培養液のpHが6〜10となるようにして酵母を培養することにより得られる前記<1>から<5>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<7> 培養液への糖の初期添加量が1質量%〜10質量%となるようにして酵母を培養することにより得られる前記<1>から<6>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<8> 通気して酵母を培養することにより得られる前記<1>から<7>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<9> 酵母を流加培養して得られる前記<1>から<8>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<10> 食品に添加されて用いられる前記<1>から<9>のいずれかに記載のコリン高含有酵母である。
<11> 食品が流動食である前記<10>に記載のコリン高含有酵母である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のコリン高含有酵母の破砕物を少なくとも含むことを特徴とするコリン高含有酵母破砕物である。
<13> コリン高含有酵母が食用酵母である前記<12>に記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<14> 食用酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、及び味噌醤油酵母の少なくともいずれかである前記<13>に記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<15> 食用酵母がSaccharomyces cerevisiaeである前記<13>から<14>のいずれかに記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<16> コリン高含有酵母の破砕物が乾燥物である前記<12>から<15>のいずれかに記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<17> コリン高含有酵母の破砕物が液状物である前記<12>から<15>のいずれかに記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<18> 食品に添加されて用いられる前記<12>から<17>のいずれかに記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<19> 食品が流動食である前記<18>に記載のコリン高含有酵母破砕物である。
<20> 培養液の総液量に対するコリン化合物の添加量が2質量%〜5質量%となるようにして酵母を培養することを特徴とするコリン高含有酵母の製造方法である。
<21> pHが6〜10となるように調整して酵母を培養する前記<20>に記載のコリン高含有酵母の製造方法である。
<22> 培養液への糖の初期添加量が1質量%〜10質量%となるようにして酵母を培養する前記<20>から<21>のいずれかに記載のコリン高含有酵母の製造方法である。
<23> 通気して酵母を培養する前記<20>から<22>のいずれかに記載のコリン高含有酵母の製造方法である。
<24> 培養が流加培養である前記<20>から<23>のいずれかに記載のコリン高含有酵母の製造方法である。
<25> 流加培養が、流加連続培養及び流加回分培養の少なくともいずれかである前記<24>に記載のコリン高含有酵母の製造方法である。
<26> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のコリン高含有酵母を少なくとも含むことを特徴とする食品である。
<27> 前記<12>から<19>のいずれかに記載のコリン高含有酵母破砕物を少なくとも含むことを特徴とする食品である。
<28> 流動食である前記<26>から<27>のいずれかに記載の食品である。
本発明のコリン高含有酵母は、菌体におけるコリン含有量が乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%である酵母である。
前記菌体が、25℃のイオン交換水で洗浄した菌体であっても、前記菌体におけるコリン含有量は、乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%であり、洗浄後においてもコリン含有量が高く維持される。
なお、前記コリン高含有酵母破砕物とは、顕微鏡観察下で未破砕菌体がなくなった状態をいう。
前記ダイノミルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、WAB社製のDynomill Model Type KDLなどが挙げられる。
また、前記コリン高含有酵母の前記ダイノミルにおける前記シリンダー内での滞在時間としては、10分間程度が好ましい。
なお、前記破砕の前に、イオン交換水で前記ダイノミルにおける前記シリンダー内を予め洗浄しておくことが好ましい。また、前記顕微鏡観察下での未破砕菌体の有無は、適宜サンプリングをして顕微鏡観察を行うことにより確認することができる。
前記コリン高含有酵母におけるコリンの含有量としては、乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%であるが、該コリン高含有酵母をコリン強化食品素材などとして用いる場合には多いほど好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。前記コリン含有量の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記コリンを抽出する方法としては、特に制限はなく、公知の測定方法から適宜選択することができ、例えば、ライネッケ塩沈殿法(分析法フローチャート、財団法人 日本食品分析センター参照)などが挙げられる。なお、前記ライネッケ塩沈殿法は、酵母細胞中のホスファチジルコリン等のコリン化合物を熱分解して、コリン単体(分子量104.17)として抽出し、総コリン量として定量する方法である。
前記菌体の洗浄は、前記菌体の表面に付着したコリンを除去する目的で、25℃のイオン交換水を用いて行い、一般的には、25℃のイオン交換水で2回以上洗浄すると前記菌体表面に付着しているだけで該菌体内に取り込まれていないコリンを十分に除去することができる。
前記コリン高含有酵母としては、食品素材などとして用いる場合には、食用酵母であることが特に好ましい。
前記食用酵母としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、及び味噌醤油酵母から選択されることが好ましく、パン酵母が特に好ましい。
これらの中でも、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensisが好ましく、Saccharomyces cerevisiae が特に好ましい。
本発明のコリン高含有酵母の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、食品に添加されて用いられる食品素材、飼料、餌料などとしての用途が好ましく、これらの中でも、前記食品素材としての用途が特に好ましい。本発明のコリン高含有酵母を用いることにより、コリン高含有食品、コリン高含有飼料、コリン高含有餌料などが得られる。
本発明のコリン高含有酵母は、本発明のコリン高含有酵母の製造方法により好適に製造することができる。
本発明のコリン高含有酵母の製造方法に用いる培地としては、少なくともコリン化合物を含有し、必要に応じて、更に、糖、pH調整試薬、水などのその他の成分を含有する。
−コリン化合物−
前記培地に添加するコリン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化コリン、重酒石酸コリン、クエン酸水素コリン、クエン酸二水素コリン、アセチルコリン、塩化アセチルコリン、ホスファチジルコリン、コリン酒石酸水素塩などが挙げられる。また、コリン混合物としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆由来レシチン、酵素分解レシチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記コリン化合物は、培地に初期添加させておいてもよく、流加液中に添加させておき、これを前記培養液中に流加することにより、培養液中のコリン化合物濃度を制御してもよいが、初期添加することが乾燥菌体当たりのコリン含有量を増加させることができる点で好ましい。
なお、流加液中のコリン化合物の含有量としては、培養液の総液量に対するコリン化合物の添加量が上述の範囲内となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記培地に添加する糖としては、酵母が資化できる糖であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコース、シュークロース、フラクトース、マルトースなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記糖としては、グルコースが特に好ましい。
これらの中でも、前記糖は、流加液中に添加させることが、乾燥菌体当たりのコリン含有量を増加させることができる点で好ましい。
前記培養液のpHとしては、菌体へのコリン取り込みの観点から、6〜10が好ましく、酵母の増殖の観点から6〜8がより好ましく、7が更に好ましい。前記pHが、6未満であると、酵母へのコリンの取り込み効率が悪くなり、所望の乾燥菌体当たりのコリン含有量を得ることができないことがあり、10を超えると、微生物が繁殖しやすく、また酵母の自己消化が起こることがある。
これらの中でも、前記pH調整試薬は、流加液中に添加させることが、培養中の培養液のpHを一定に維持することができ、菌体の増殖が良好であり、所望の乾燥菌体当たりのコリン含有量を得ることができる点で好ましい。
前記培養液への前記pH調整試薬の添加量、及び流加液中のpH調整試薬の濃度としては、培養液のpHが上述の範囲内となる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記糖及びpH調整試薬を流加する場合は、それぞれ異なるシリンジで流加することが好ましい。
−培養方法−
前記コリン高含有酵母の培養方法としては、コリンを取り込むことができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回分培養法、流加培養法(流加連続培養法、流加回分培養法)などが挙げられる。これらの中でも、前記糖及び前記pH調整試薬を流加して培養することが、乾燥菌体当たりのコリン含有量を増加させることができる点で好ましい。
なお、流加培養を行う場合は、培養0時間(培養開始時)から培養終了時までの間、連続的に流加することが好ましく、定置流加することがより好ましい。
前記培養は、ジャーファーメンターを用いて好適に行うことができる。
前記培養を行う酵母としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記食用酵母が好適に挙げられ、該食用酵母の菌株の属及び具体例としては、前記食用酵母と同様のものが挙げられる。前記酵母は、1種単独で培養してもよいし、2種以上を同時に培養してもよい。
前記培養の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、28℃〜33℃が好ましく、コリンを高含有させる観点から30℃がより好ましい。
前記培養時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14時間〜24時間が好ましく、14時間〜15時間がより好ましい。前記培養時間が、14時間未満であると、所望の乾燥菌体当たりのコリン含有量を得ることができないことがあり、23時間を超えると、製造上効率が悪い。
前記培養時は、通気してもよく、通気しなくてもよいが、通気することが、コリンを高含有させることができる点で好ましい。
前記通気量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5vvm〜4vvmが好ましく、1vvm〜2vvmがより好ましい。前記通気量が、0.5vvm未満であると、コリンの取り込みが不安定になることがあり、4vvmを超えると、培養時に激しい発泡を生じ、工業生産に支障をきたすことがある。
前記培養時の攪拌速度としては、菌体が沈まない程度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100rpm〜600rpmが好ましく、400rpm〜500rpmがより好ましい。
本発明の食品は、前記コリン高含有酵母及びコリン高含有酵母破砕物の少なくともいずれかを含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
ここで、前記食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;流動食等の種々の形態の栄養補助食品、健康食品、医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下に示す方法を用い、培養前に培地のpHを10に調整した条件(初期添加条件)、経時的に培養液のpHを10に調整した条件(分割添加条件)、及び流加添加により培養液のpHを10に調整した条件(流加添加条件)の3つの条件で、酵母菌体におけるコリン含有へのpH調整の影響について検討を行った。
水300mL中に、パン酵母(オリエンタル酵母工株式会社製、レギュラーイースト)60g(20質量%/総液量)の湿菌体、及び塩化コリン(和光純薬工業株式会社製)3g(1質量%/総液量)を初期添加して500mL容の三角フラスコ内に収容させ、1N水酸化ナトリウムで培地のpHを10に調整後、前記パン酵母を培養した。なお、その後は、pH調整を行わなかった。
培養条件は、温度を30℃、時間を40時間、攪拌速度を200rpm(スターラー:MAG−MIXER M−66、ヤマト科学株式会社製)とし、通気は行わなかった。培養条件について、表1にまとめて示した。
前記初期添加条件において、培地のpHを培養前に1N水酸化ナトリウムでpH10に調整後、更に培養16.5時間目及び培養22時間目に1N水酸化ナトリウムを添加してpH10に調整した以外は、前記初期添加条件と同様の方法で、前記パン酵母を培養した。培養条件について、表1にまとめて示した。
前記初期添加条件において、培地のpHを培養前に1N水酸化ナトリウムでpH10に調整後、更に前記三角フラスコ内に、1N水酸化ナトリウムを流加液として、ペリスタポンプ(PERISTA PUMP SJ−1215、アトー株式会社製)を用いて3mL/時間の速度で、培養16.5時間まで連続的に定値流加してpH調整を行いながら、前記パン酵母を流加培養にて培養した以外は、前記初期添加条件と同様の方法で、前記パン酵母を培養した。培養条件について、表1にまとめて示した。
その後、培養液約110mLを3,000rpmにて5分間遠心分離し、上清を廃棄した。菌体(沈殿)に25℃のイオン交換水150mLを添加し懸濁後、3,000rpmにて5分間遠心分離し、上清を廃棄して洗浄した。この洗浄を2回行った後、菌体を噴霧乾燥して乾燥させた。
各時間における乾燥菌体当たりのコリン含有量(質量%)を、下記方法にて測定した結果を表2に示す。また、図1に培養液のpHの経時変化、図2に乾燥菌体当たりのコリン含有量(質量%)の経時変化を示す。
−ライネッケ塩沈殿法によるコリンの抽出−
前記酵母3g(乾燥質量)を分解ビンに秤量し、25質量%硝酸溶液25mLに懸濁し150℃で5時間30分間加熱することで、コリン化合物をコリン単体に分解した。分解後、試料溶液を室温に戻し、10モル/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加し、試料溶液を中和した。次いで、メタノール40mLを添加し、4℃にて5時間以上静置し、タンパク質成分などを沈殿させた。この試料溶液を、ろ紙3種(アドバンテック東洋株式会社製、No.131)でろ過し、約80mLのろ液を100mL容フラスコに回収した。得られた濾液を氷水中で5℃以下に冷却し、ライネッケ塩試液(ライネッケ塩一水和物4gをメタノール100mLに定容した。)16mLを添加し、ときどきかき混ぜながら1晩以上静置してコリンライネッケ塩の結晶を生成させた。生成した結晶をガラスろ過器(3G3)で吸引ろ過し、先の三角フラスコを冷水で洗浄し、同様に吸引ろ過した。ガラスろ過器内の結晶の洗浄を、冷水5mLを用いて3回行い、更にメタノール1mLを用いた洗浄を5回行った後、洗液を吸引して結晶を乾燥させた。ガラスろ過器内の結晶にアセトン20mLを加えて溶かし、溶液を吸引して50mLのメスフラスコに入れ、更に標線までアセトンを加え、測定に供する試料溶液とした。
塩化コリン[C5H14ClNO](和光純薬工業株式会社製)10gを正確に量り100mL容メスフラスコに入れ、蒸留水を加えて溶かし、更に標線まで水を加えて塩化コリン標準原液を調製した。
前記塩化コリン標準液を用い、下記HPLC測定条件により検量線を作成した。同様にして前記ライネッケ塩沈殿法で抽出したコリンを測定し、酵母に含まれるコリン含有量を定量し、乾燥菌体当たりのコリン含有量(質量%)を算出した。
[HPLC測定条件]
カラム:Shodex RSpak DE−613(6.0mmID×150mm)
溶媒:0.1M リン酸水溶液、300mg/L 1−デカンスルホン酸ナトリウム、65mg/L テトラメチルアンモニウムクロリド(1M 水酸化ナトリウムにてpH8に調整した)
流速:1.0mL/分間
検出器:RI(Refractive Index)
カラム温度:37℃
また、結果には示さないが、培養液のpHを11及び12にした場合、乾燥菌体当たりのコリン含有量の増加はほとんど認められず、異臭の発生、並びに酵母の自己消化が認められた。
したがって、コリン高含有酵母の製造において、培養液のpHは、6〜10の範囲が好ましく、7〜10がより好ましく、7超10以下が特に好ましいと考えられる。
水100mL中に、パン酵母(オリエンタル酵母工業株式会社製、レギュラーイースト)20g(20質量%/総液量)の湿菌体、及び塩化コリン(和光純薬工業株式会社製)1g(1質量%/総液量)を初期添加して200mL容のメスシリンダー内に収容させ、このメスシリンダー内に、1N水酸化ナトリウムを流加液として、pH10となるように、流加ポンプ(HARVARD APPARATUS製)を用いて0.714mL/時間の速度で連続的に流加し、前記パン酵母を流加培養にて培養した。
更に糖を添加する場合は、培養液のグルコースの添加量が5g(5質量%/培養液)となるように初期添加し、培養中は30質量%グルコース溶液を流加液として、前記流加ポンプを用いて、水酸化ナトリウムとは異なるシリンジで0.714mL/時間の速度で連続的に流加し、前記パン酵母を流加培養にて培養した。
培養条件は、温度を30℃、時間を21時間、攪拌速度を200rpm(スターラー:MAGNETIC STIRRER OCUTOPUS CB−1、アズワン株式会社製)とした。通気する場合は、4vvmの速度で通気した。培養条件について、表3にまとめて示した。
下記に示す「条件1」及び「条件2」を用い、培地へのコリン添加濃度の検討を行った。
前記試験例2において、塩化コリンの添加量を1g、2g、5g、及び10g(総液量に対して、1質量%、2質量%、5質量%、及び10質量%)のいずれかの添加量とし、流加液の流速を1.07mL/時間とし、培養時間を14時間とした以外は、試験例2と同様の方法で前記パン酵母を培養した。培養条件について、表5にまとめて示した。
前記条件1において、前記パン酵母(湿菌体)の添加量を1.2g(1.2質量%/総液量)に変え、副原料として、尿素0.37g、リン酸一ナトリウム(NaH2PO4・2H2O)0.087g、ビタミンB1 0.065mg、ビタミンB6 0.065mg、糖(廃糖蜜)5g、及び硫酸亜鉛2.17mgを添加し、流加液としてのグルコースを糖蜜糖溶液に代えた以外は、条件1と同様の方法で前記パン酵母を培養した。培養条件について、表5にまとめて示した。
前記「条件1」及び前記「条件2」で培養した、培養終了後の乾燥菌体の質量を測定し、対糖収率を算出した。また、乾燥菌体当たりのコリン含有量(質量%)を試験例1と同様の方法にて測定した結果を表6に示す。
試験例3における「条件1」の塩化コリン5質量%の場合と同様にしてパン酵母の培養を行った。培養液を試験例1と同様の方法で洗浄(2回)を行った後、更に同様の洗浄を2回行った(再洗浄)。
試験例3における「条件1」に基づき、コリン高含有酵母の最適な条件について検討を行った。即ち、下記に示す、糖液を初期添加した「条件3」及び糖液を流加した「条件4」により培養を行った。
「条件1」において、塩化コリンの添加量を5g(5質量%/総液量)とし、グルコース5g(5質量%/培養液)は、流加液に代えて初期添加し、1N水酸化ナトリウムの流加速度を1.19mL/時間とし、培養時間を23時間とした以外は、「条件1」と同様の方法で、前記パン酵母を培養した。培養条件について、表8にまとめて示した。
「条件1」において、塩化コリンの添加量を5g(5質量%/総液量)とし、30質量%グルコース及び1N水酸化ナトリウムの流加速度を1.19mL/時間とし、培養時間を23時間とした以外は、「条件1」と同様の方法で、前記パン酵母を培養した。培養条件について、表8にまとめて示した。
乾燥菌体当たりに取り込まれたコリン量(g)=乾燥菌体質量(g)×コリン含有量(質量%)
また、条件3では、培養23時間目のコリン含有量は4.6質量%であり、菌体質量の顕著な増加は認められなかった。一方、条件4では、培養14時間目でコリン含有量が5質量%に達し、菌体質量の増加も顕著であった(図4及び図5)。
これらの結果より、乾燥菌体に取り込まれたコリン量としては、条件4の方が多く、優れていた(図6)。培養液のpHとしては、菌体へのコリン取り込みの観点からは7超10以下程度のアルカリ側が好ましいが、酵母の増殖の観点からは中性付近が好ましく、コリン高含有酵母の製造としては、6〜8程度が好ましいと考えられる。
30L容のジャーファーメンターを用い、糖を初期添加した条件と、糖を流加添加した条件との2つの条件でパン酵母(オリエンタル酵母工株式会社製、レギュラーイースト)の培養を行った。
水11.5L中に、パン酵母2,300g(20質量%/総液量)の湿菌体、塩化コリン(和光純薬工業株式会社製)575g(5質量%/総液量)、グルコース575g(5質量%/培養液)を初期添加して30L容のジャーファーメンター内に収容させた。ジャーファーメンター内に、1N水酸化ナトリウムを流加液として137mL/時間の速度で連続的に定値流加して培養を行った。
培養条件は、温度を30℃、時間を14時間、攪拌速度を500rpm、通気量1vvmで行った。培養条件について、表10にまとめて示した。
水11.5L中に、パン酵母2,300g(20質量%/総液量)の湿菌体、塩化コリン(和光純薬工業株式会社製)575g(5質量%/総液量)を初期添加して30L容のジャーファーメンター内に収容させた。ここへ、1N水酸化ナトリウム及び30質量%グルコース溶液を流加液として137mL/時間の速度で連続的に定値流加して培養を行った。ここで、グルコース溶液は、5質量%/培養液となるように、水酸化ナトリウムとは異なる流加用ポンプで添加した。
培養条件は、温度を30℃、時間を14時間、攪拌速度を500rpm、通気量1vvmで行った。培養条件について、表10にまとめて示した。
また、本発明の前記コリン高含有酵母及び前記リン高含有酵母破砕物を含有する食品は、酵母を使用しているため安全性が高く、添加した食品の風味などを損なうことがなく、レシチンのような乳化作用を有さず、ホモジナイズ時に多量の泡を形成して成分の不均一化が生じることもないため、流動食などに好適に利用可能であり、高齢者をはじめとする摂取者のQOL(Quality Of Life)を向上させることが可能である。
Claims (6)
- 菌体におけるコリン含有量が乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%であるコリン高含有酵母であって、
前記コリン高含有酵母が、パン酵母を、培養液の総液量に対するコリン化合物の添加量が1質量%〜10質量%である培養液を用い、糖及びpH調整試薬を流加して培養することにより得られ、
前記パン酵母の培地への接種量が、湿潤質量で、1質量%〜30質量%であり、
前記培養液における糖の濃度が、1質量%〜10質量%であり、
前記培養液のpHが、6〜10であり、
前記培養時の通気量が、0.5vvm〜4vvmであり、
前記培養の温度が、28℃〜33℃であり、
前記培養の時間が、14時間〜24時間であることを特徴とするコリン高含有酵母。 - 請求項1に記載のコリン高含有酵母の破砕物を少なくとも含むことを特徴とするコリン高含有酵母破砕物。
- 請求項1に記載のコリン高含有酵母を少なくとも含むことを特徴とする食品。
- 請求項2に記載のコリン高含有酵母破砕物を少なくとも含むことを特徴とする食品。
- 流動食である請求項3から4のいずれかに記載の食品。
- 菌体におけるコリン含有量が乾燥菌体当たり少なくとも2.5質量%であるコリン高含有酵母の製造方法であって、
パン酵母を、培養液の総液量に対するコリン化合物の添加量が1質量%〜10質量%である培養液を用い、糖及びpH調整試薬を流加して培養することを含み、
前記パン酵母の培地への接種量が、湿潤質量で、1質量%〜30質量%であり、
前記培養液における糖の濃度が、1質量%〜10質量%であり、
前記培養液のpHが、6〜10であり、
前記培養時の通気量が、0.5vvm〜4vvmであり、
前記培養の温度が、28℃〜33℃であり、
前記培養の時間が、14時間〜24時間であることを特徴とするコリン高含有酵母の製造方法。
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