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JP5700059B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents
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JP5700059B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、交流電動機の制御装置に関する。
近年、低燃費、低排気エミッションの社会的要請から車両の動力源として交流電動機を搭載した電気自動車やハイブリッド自動車が注目されている。例えば、ハイブリッド自動車においては、二次電池等からなる直流電源と交流電動機とを、インバータ等で構成された電力変換装置を介して接続し、直流電源の直流電圧をインバータで交流電圧に変換して交流電動機を駆動するようにしたものがある。
このようなハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される交流電動機の制御装置において、相電流を検出する電流センサを1相に設けることで、電流センサの数を減らし、インバータの3相出力端子近傍の小型化や交流電動機の制御系統のコスト低減を図る技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2008−86139号公報
特許文献1では、1相の電流センサ値に加え、他相はd軸電流指令値およびq軸電流指令値と電気角とで逆dq変換することにより得られる3相交流電流指令値を電流推定値として用いることにより1相制御としている。d軸電流指令値およびq軸電流指令値を逆dq変換した3相交流電流指令値は、実際の交流電動機の電流を正確に反映した情報とはならない。特に、交流電動機の回転数が小さい場合、サンプリング間隔あたりの電流センサ値の電流変化量や回転角移動量が小さくなるため、実機情報が更に乏しくなり、制御がより不安定となる虞がある。また、電流指令値に対し、実電流値と偏差の極性が逆向きの電流推定値がフィードバックされると、実電流値と電流指令値との差が増大する方向に制御される。また、電流指令値に対し、実電流と偏差の極性が逆向きの電流推定値がフィードバックされる状態が継続すると、実電流値と電流指令値との差が増大し続け、実電流値が発散する。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、交流電動機の回転数が小さい低回転域において制御の発散を抑制可能な交流電動機の制御装置を提供することにある。
本発明の交流電動機の制御装置は、インバータによって印加電圧が制御される3相の交流電動機の駆動を制御するものであって、電流取得手段と、回転角取得手段と、回転数演算手段と、電流推定手段と、偏差演算手段と、第1の電圧指令値演算手段と、偏差反転手段と、を備える。
電流取得手段は、交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる電流センサから電流検出値を取得する。回転角取得手段は、交流電動機の回転角を検出する回転角センサから回転角検出値を取得する。回転数演算手段は、回転角検出値に基づき、交流電動機の回転数を演算する。
電流推定手段は、電流検出値および回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する。なお、電流検出値および回転角検出値に加え、例えば電流指令値に基づいて電流推定値を演算してもよい。
偏差演算手段は、交流電動機の駆動に係る電流指令値とフィードバックされる電流推定値との偏差を演算する。第1の電圧指令値演算手段は、偏差に基づき、インバータの駆動に係る駆動信号の生成に用いる第1の電圧指令値を演算する。
偏差反転手段は、回転数が第1の判定閾値以下である場合、第1の電圧指令値の演算に用いる偏差の正負を反転期間ごとに反転する。
低回転域においては、サンプリング間隔あたりの電流検出値の電流変化量や回転角移動量が小さくなる。電流検出値の電流変化量や回転角移動量が小さくなると、フィードバックされる電流推定値がほとんど変化しなくなる。そのため、電流指令値に対し、実電流値と偏差極性が逆向きの電流推定値がフィードバックされると、その状態が継続され、実電流値と電流指令値との差が増大しつづけ、実電流値が発散する虞がある。そこで本発明では、電流指令値と電流推定値との偏差の正負を反転期間ごとに反転している。これにより、電流指令値に対し、実電流値と偏差の極性が逆向きの電流推定値がフィードバックされ続けるのを防ぐことができる。そのため、実電流値と電流指令値との差が増大し続けることがなく、実電流値の発散を抑制することができる。したがって、回転数が低回転域であっても、1相の電流検出値による電流フィードバック制御により、交流電動機の駆動を安定して制御することができる。
本発明の第1実施形態の交流電動機駆動システムの構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の電動機制御装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態おける回転数による制御モードの切り替えを説明する説明図である。 高回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 中回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 低回転域における交流電動機の挙動を説明するタイムチャートである。 電流の発散を模式的に説明する説明図である。 電流の発散を説明するタイムチャートである。 本発明の第1実施形態による偏差反転制御を模式的に説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態による偏差反転制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態による偏差反転制御処理を行った場合の交流電動機の挙動を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による偏差反転制御処理を行った場合の交流電動機の挙動を説明する説明図である。 本発明の第2実施形態の制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の第3実施形態における電流指令ベクトルの位相角について説明する説明図である。 推定電流FB制御にて始動可能の具体例を説明するタイムチャートである。 推定電流FB制御にて始動不可の具体例を説明するタイムチャートである。 本発明の第3実施形態による始動可能範囲を説明する説明図である。 本発明の第3実施形態おける回転数による制御モードの切り替えを説明する説明図である。 本発明の第3実施形態による駆動制御処理を説明するフローチャートである。 本発明の変形例による制御部の構成を説明するブロック図である。
以下、本発明による交流電動機の制御装置を図面に基づいて説明する。なお、以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の第1実施形態による交流電動機2の制御装置としての電動機制御装置10は、電動車両を駆動する電動機駆動システム1に適用される。
電動機駆動システム1は、交流電動機2、直流電源8、および、電動機制御装置10等を備える。
交流電動機2は、例えば電動車両の駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機である。本実施形態の交流電動機2は、永久磁石式同期型の三相交流電動機である。
電動車両には、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等、電気エネルギによって駆動輪6を駆動する車両が含まれるものとする。本実施形態の電動車両は、エンジン3を備えるハイブリッド車両であり、交流電動機2は、駆動輪6を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、および、エンジン3や駆動輪6から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する、所謂モータジェネレータ(図中、「MG」と記す。)である。
交流電動機2は、例えば変速機等のギア4を介して車軸5に接続される。これにより、交流電動機2の駆動により生じるトルクは、ギア4を介して車軸5を回転させることにより、駆動輪6を駆動する。
直流電源8は、例えばニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等、充放電可能な蓄電装置である。直流電源8は、電動機制御装置10のインバータ12(図2参照)と接続され、インバータ12を介して交流電動機2と電力の授受可能に構成されている。
車両制御回路9は、マイクロコンピュータ等により構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。車両制御回路9は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理により、電動車両全体を制御する。
車両制御回路9は、いずれも図示しないアクセルセンサからのアクセル信号、ブレーキスイッチからのブレーキ信号、および、シフトスイッチからのシフト信号等の各種センサやスイッチ等から信号を取得可能に構成されている。また、車両制御回路9では、取得されたこれらの信号等に基づいて車両の運転状態を検出し、運転状態に応じたトルク指令値trq*を電動機制御装置10に出力する。また、車両制御回路9は、エンジン3の運転を制御する図示しないエンジン制御回路に対し、指令信号を出力する。
図2に示すように、電動機制御装置10は、インバータ12および制御部15を備える。
インバータ12には、交流電動機2の駆動状態や車両要求等に応じて、直流電源8の直流電圧を図示しない昇圧コンバータにより昇圧したインバータ入力電圧VHが印加される。また、インバータ12は、ブリッジ接続される図示しない6つのスイッチング素子を有する。詳細には、スイッチング素子は、高電位側に設けられる上側スイッチング素子(以下、「上SW」という。)、および、低電位側に設けられる下側スイッチング素子(以下、「下SW」という。)からなる。直列に接続される上SWおよび下SWは、交流電動機2の各相に対応して設けられる。スイッチング素子には、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子は、制御部15のPWM信号生成部29(図3参照)から出力されるPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてオン/オフが制御される。これにより、インバータ12は、交流電動機2に印加される3相交流電圧vu、vv、vwを制御する。交流電動機2は、インバータ12により生成された3相交流電圧vu、vv、vwが印加されることにより駆動が制御される。
電流センサ13は、交流電動機2のいずれか1相に設けられる。本実施形態では、電流センサ13は、W相に設けられており、以下、電流センサ13の設けられるW相を「センサ相」という。電流センサ13は、センサ相であるW相に通電されるW相電流検出値iw_snsを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、W相電流検出値iw_snsを取得する。なお、本実施形態では、電流センサ13はW相に設けられているが、どの相に設けてもよい。以下、本実施形態では、センサ相をW相とする構成について説明する。
回転角センサ14は、交流電動機2の図示しないロータ近傍に設けられ、電気角θeを検出し、制御部15に出力する。制御部15では、電気角θeを取得する。本実施形態の回転角センサ14は、レゾルバである。その他、回転角センサ14は、ロータリエンコーダ等、他種のセンサでもよい。本実施形態では、電気角θeは、U相軸を基準とした角度である。
ここで、交流電動機2の駆動制御について説明する。電動機制御装置10は、回転角センサ14が検出した電気角θeに基づく交流電動機2のロータの回転数N(以下適宜、単に「交流電動機2の回転数N」という。)および車両制御回路9からのトルク指令値trq*に応じて、交流電動機2を「電動機としての力行動作」により電力を消費し、または、「発電機としての回生動作」により電力を生成する。具体的には、回転数Nおよびトルク指令値trq*の正負によって、以下の4つのパターンで動作を切り替える。
<1.正転力行> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が正のとき、電力消費。
<2.正転回生> 回転数Nが正でトルク指令値trq*が負のとき、発電。
<3.逆転力行> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が負のとき、電力消費。
<4.逆転回生> 回転数Nが負でトルク指令値trq*が正のとき、発電。
回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*>0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*<0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、直流電源8側から供給される直流電力を交流電力に変換してトルクを出力する(力行動作する)ように、交流電動機2を駆動する。
一方、回転数N>0(正転)でトルク指令値trq*<0である場合、または、回転数N<0(逆転)でトルク指令値trq*>0である場合、インバータ12は、スイッチング素子のスイッチング動作により、交流電動機2が発電した交流電力を直流電力に変換し、直流電源8側へ供給することにより、回生動作する。
次に、制御部15の詳細について、図3に基づいて説明する。図3に示すように、制御部15は、回転数演算部16、電流指令値演算部21、減算器22、PI演算部24、電圧指令基準値演算部25、電圧指令基準値補正部26、切替判定部27、3相電圧指令値演算部28、PWM信号生成部29、電流推定部30、および、偏差反転部33等を有する。
回転数演算部16は、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する。
電流指令値演算部21は、車両制御回路9から取得されるトルク指令値trq*に基づき、交流電動機2の回転座標として設定される回転座標系(d−q座標系)におけるd軸電流指令値id*、および、q軸電流指令値iq*を演算する。本実施形態では、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*は、予め記憶されているマップを参照することにより演算されるが、数式等から演算するように構成してもよい。
減算器22は、d軸電流減算器221およびq軸電流減算器222を有する。d軸電流減算器221では、後述する電流推定部30からフィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびd軸電流指令値id*との差であるd軸電流偏差Δidを演算する。また、q軸電流減算器222では、電流推定部30からフィードバックされるq軸電流推定値iq_estおよびq軸電流指令値iq*との差であるq軸電流偏差Δiqを演算する。
PI演算部24は、d軸PI演算部241およびq軸PI演算部242を有する。d軸PI演算部241では、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差Δidが0[A]に収束するようにPI演算により第1のd軸電圧指令値vd*_1を演算する。また、q軸PI演算部242では、q軸電流推定値iq_estをq軸電流指令値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差Δiqが0[A]に収束するようにPI演算により第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。
電圧指令基準値演算部25では、電動機の理論式である電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを演算する。d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refは、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*から直接的に演算されるものであり、フィードフォワード(以下、「FF」という。)項であると捉えることもできる。
まず、電動機の電圧方程式は、一般に式(1)、(2)で表される。
vd=Ra×id+Ld×(d/dt)id−ω×Lq×iq ・・・(1)
vq=Ra×iq+Lq×(d/dt)iq+ω×Ld×id+ω×ψ
・・・(2)
また、過渡特性を表す時間微分(d/dt)項を無視し、式(1)中のvdとしてd軸電圧指令基準値vd_ref、idとしてd軸電圧指令値id*を用い、式(2)中のvqとしてq軸電圧指令基準値vq_ref、iqとしてq軸電圧指令値iq*を用いると、式(1)、(2)は、式(3)、(4)のように書き換えられる。
vd_ref=Ra×id*−ω×Lq×iq* ・・・(3)
vq_ref=Ra×iq*+ω×Ld×id*+ω×ψ ・・・(4)
式中の記号は以下の通りである。
Ra:電機子抵抗
Ld:d軸自己インダクタンス、Lq:q軸自己インダクタンス
ω:電気角速度
ψ:永久磁石の電機子鎖交磁束
なお、交流電動機2の機器定数である電機子抵抗Ra、d軸自己インダクタンスLd、q軸自己インダクタンスLq、および電機子鎖交磁束ψは、固定値としてもよいし、計算にて算出してもよい。また、実際の特性に近い値や実測値をマップ化しておき、トルク指令値trq*(またはd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*)に基づいて演算してもよい。
電気角速度ωは、電圧指令基準値演算部25にて、電気角θeに基づいて演算される。また、電気角速度ωは、回転数Nから演算してもよい。
ここで、回転数Nが0[rpm]の場合、電気角速度ωも0[rad/s]となるので、式(3)、(4)のω項がゼロとなり、抵抗項のみが残る。抵抗項は、電機子抵抗Raの値および電流指令値によっては小さい値となる。また、交流電動機2や電動機制御装置10等に関する物理的な要因等により、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値とが乖離することがある。そのため、交流電動機2が始動可能となるように、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを適宜補正することが望ましい。そのため本実施形態では、電圧指令基準値補正部26にてd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正している。
電圧指令基準値補正部26では、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。本実施形態では、電圧方程式から算出される理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値との差分に対応するd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpを演算する。
d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを、d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpにて補正した第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を、式(5)、(6)に示す。
vd*_2=vd_ref+vd_cmp ・・・(5)
vq*_2=vq_ref+vq_cmp ・・・(6)
d軸電圧指令補正値vd_cmp、およびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正可能な値であれば、どのような値であってもよい。例えば、d軸電圧指令補正値vd_cmp、およびq軸電圧指令補正値vq_cmpは、上下のスイッチング素子が同時オンとなることによる短絡防止のために設けられるデッドタイムに起因する電圧誤差に相当するデッドタイム補正値としてもよい。また例えば、d軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpを実機データに基づくマップ参照等により演算してもよい。
また、式(5)、(6)に係数Kを乗じることにより、d軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを補正して、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算してもよい。係数Kは、どのような値であってもよく、例えば、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*のW相成分であるW相電流指令値iw*とW相電流検出値iw_snsとの比率としてもよい。
切替判定部27では、インバータ12の駆動に係る駆動信号(後述のPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WL)の演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択するか、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択するか、を切り替える。本実施形態では、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きい場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。また、回転数Nが第2の判定閾値A2以下の場合、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。本実施形態では、第2の判定閾値A2は、後述の第1の判定閾値A1より小さい値である。
3相電圧指令値演算部28では、回転角センサ14から取得される電気角θeに基づく逆dq変換により、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を、U相電圧指令値vu*、V相電圧指令値vv*、および、W相電圧指令値vw*に変換する。
PWM信号生成部29では、インバータ12のスイッチング素子のオン/オフの切り替えに係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを、3相交流の電圧指令値vu*、vv*、vw*、および、インバータ12に印加される電圧であるインバータ入力電圧VHに基づいて演算する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力されるように、交流電動機2の駆動が制御される。なお、3相交流電圧vu、vv、vwが「印加電圧」に対応する。
電流推定部30では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refを演算する。本実施形態では、電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refを演算する。具体的には、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*の逆dq変換により算出されるU相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*を、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estとする。そして、U相電流推定値iu_est、V相電流推定値iv_est、および、W相電流検出値iw_snsのdq変換によりd軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refを演算する。
d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refの演算方法は、これに限らず、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づいて算出されていれば、どのようであってもよい。また、U相電流推定値iu_estおよびV相電流推定値iv_estは、どのように演算してもよいし、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの演算に不要であれば、演算しなくてもよい。
偏差反転部33では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、フィードバックするd軸電流推定値id_estを、電流推定部30にて演算されたd軸電流推定値(基準値)id_est_refそのものとするか、d軸電流推定値(反転値)id_est_revとするかを、反転期間Trごとに切り替える。同様に、フィードバックするq軸電流推定値iq_estを、電流推定部30にて演算されたq軸電流推定値(基準値)iq_est_refそのものとするか、q軸電流推定値(反転値)iq_est_revとするか、を反転期間Trごとに切り替える。回転数Nが第1の判定閾値A1より大きい場合、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、電流推定部30にて演算されたd軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refそのものとする。
d軸電流推定値(反転値)id_est_revおよびq軸電流推定値(反転値)iq_est_revは、フィードバックして演算されるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負が反転する値であり、以下の式(7)、(8)のように表される。
id_est_rev=2id*−id_est ・・・(7)
iq_est_rev=2iq*−iq_est ・・・(8)
本実施形態では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、偏差反転部33にて、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refとするか、d軸電流推定値(反転値)id_est_revおよびq軸電流推定値(反転値)iq_est_revとするか、を反転期間Trごとに切り替えている。したがって、減算器22にて演算されるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqは、反転期間Trごとに正負が反転することになる。
すなわち、「d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負が反転するd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックする」ことは、「d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転する」ことと本質的に同じことである。
ここで、本実施形態における回転数Nによる制御モードの切り替えについて、図4に基づいて説明する。
回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号(PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WL)を生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「FF電圧指令制御モード(以下適宜、「FF制御」という。)」とする。
回転数Nが第2の判定閾値A2より大きい場合、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてインバータ12の駆動に係る駆動信号(PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WL)を生成し、交流電動機2の駆動を制御することを「電流フィードバック制御モード(以下、フィードバックを適宜「FB」と記載する。)」とする。補足しておくと、「電流フィードバック制御モード」は、交流電動機2に通電された電流の検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)をフィードバックして第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1の演算に用いる制御モードである。
また、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きく、第1の判定閾値A1以下である場合、d軸電圧偏差Δidおよびq軸電圧偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転させる「偏差反転制御モード」とする。
回転数Nが第1の判定閾値A1より大きい場合、d軸電圧偏差Δidおよびq軸電圧偏差Δiqの正負反転を行なわず、「推定電流FB制御モード」とする。
本実施形態では、「偏差反転モード」および「推定電流FB制御モード」が「電流FB制御モード」に含まれる。
本実施形態では、「電流FB制御モード」が「第1の制御モード」に対応し、「FF電圧指令制御(FF制御)モード」が「第2の制御モード」に対応する。なお、本実施形態では、電流センサが1相に設けられていることを鑑みれば、「電流FB制御」のみならず「FF制御」も広義の1相制御と捉えることもできる。
ここで、推定電流FB制御について、図5〜図9に基づいて説明する。図5は高回転域、図6は中回転域、図7は低回転域の例である。ここでいう「高回転、中回転、低回転」は、相対的な意味でのみ用い、具体的な回転数を意味しない。すなわち、図5での回転数をN1、図6での回転数をN2、図7での回転数をN3とすると、単にN1≧N2≧N3である、ということである。また、図5〜図7において、サンプリング間隔Tsは、同じであるものとする。図5〜図7においては、(a)がd軸電流、(b)がq軸電流、(c)が電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwとサンプリング間隔Tsとの関係を説明する図である。また、(a)、(b)において、時間Tcよりも前段は、2相に電流センサを設け、2相の電流検出値に基づく2相制御を行った場合を示し、時間Tcにて1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)に基づく推定電流FB制御に切り替えた場合を示している。また、図9では、(a)がトルク、(b)が回転数、(c)がd軸電流、(d)がq軸電流、(e)がd軸電圧、(f)がq軸電圧、(g)がU相電流、(h)がV相電流、(i)がW相電流を示している。また、図5〜図9の各図において、実線が実値、破線が指令値、2点鎖線が推定値を示している。
図5(a)、(b)に示すように、回転数Nが高回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと変動幅に大きな差はない。
これは、図5(c)に示すように、サンプリング間隔Tsが回転数Nによらず同じである場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが比較的大きな値となっており、推定電流FB制御においても実機情報を反映させやすいためである。
一方、図6(a)、(b)に示すように、回転数Nが中回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、2相制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqよりも変動幅が大きくなり、制御が不安定になる。
これは、図6(c)に示すように、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが、回転数Nが高回転域のときよりも減少し、実機情報が乏しくなることに起因する。
さらに、図7(a)、(b)に示すように、低回転域にて2相制御から推定電流FB制御に切り替えた場合、推定電流FB制御におけるd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqは、回転数Nが中回転域の場合よりもさらに変動幅が大きくなり、制御がより不安定になる。
図7(c)に示すように、回転数Nが小さい場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが0[A]に近くなる。本実施形態では、U相電流推定値iu_estとしてU相電流指令値iu*、V相電流推定値iv_estとしてV相電流指令値iv*を用いているため、指令に対して変化する値である電流変化量Δiwが略0[A]となると、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがほとんど変化しなくなるためである。
このように、回転数Nが低回転域である場合、サンプリング間隔Tsにおける電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなる。換言すると、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estに反映される実機情報が乏しくなる、ということである。そのため、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が低下する虞がある。
図8(a)に模式的に示すように、d軸電流推定値id_estの推定精度が低下すると、d軸電流指令値id*とd軸電流推定値id_estとの偏差の極性と、d軸電流指令値id*とd軸実電流値idとの偏差の極性とが逆向きになる虞がある。
d軸電流指令値id*に対し、d軸実電流値idと偏差の極性が逆向きとなるd軸電流推定値id_estがフィードバックされ、d軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との偏差が小さくなる方向(図8(a)の例では上方向)に制御すると、d軸実電流値idとd軸電流指令値id*との偏差が大きくなる方向(図8(a)の例では上方向)に制御されることになる。q軸電流についても同様である。
そのため、図8(b)に示すように、d軸電流指令値id*に対し、d軸実電流値idと偏差の極性が逆向きのd軸電流推定値id_estをフィードバックすると、d軸実電流値idがd軸電流指令値id*から離れる方向に制御される。また、d軸電流指令値id*に対し、d軸実電流値idと偏差の極性が逆向きのd軸電流推定値id_estのフィードバックが継続すると、d軸電流指令値id*とd軸実電流値idとの差が増大し続け、d軸実電流値idが発散する。
同様に、q軸電流指令値iq*に対し、q軸実電流iqと偏差の極性が逆向きのq軸電流推定値iq_estをフィードバックすると、q軸実電流値iqがq軸電流指令値iq*から離れる方向に制御される。また、q軸電流指令値iq*に対し、q軸実電流iqと偏差の極性が逆向きのq軸電流推定値iq_estのフィードバックが継続すると、q軸電流指令値iq*とq軸実電流iqとの差が増大し続け、q軸実電流値iqが発散する。
詳細には、図9に示すように、低回転域にて推定電流FB制御とすると、センサ相であるW相は、W相電流iwがW相電流指令値iw*に追従しているが、U相電流iuおよびV相電流ivは、単調増加または単調減少する。
同様に、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqも単調増加または単調減少する。これに伴い、d軸電圧指令値vd*、q軸電圧指令値vq*、実トルク値trq、および、回転数Nも変動が大きく、制御が不安定になっている。
なお、制御系や動作点により、単調増加と単調減少とが成り行きで転換することがある。また、成り行きによっては、単調増加と単調減少とが繰り返されることもある。
すなわち、図10(a)に示すように、d軸電流指令値id*に対し、実電流値idと偏差の極性が逆向きのd軸電流推定値id_estがフィードバックされ続けることにより、d軸実電流値idが発散してしまう。このことは、q軸電流についても同様である。
そこで本実施形態では、図10(b)に示すように、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが発散するのを防ぐべく、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、偏差反転部23にて、d軸電流推定値id_estとd軸電流指令値id*との偏差であるΔid、および、q軸電流推定値iq_estとq軸電流指令値iq*との偏差であるΔiqの正負を反転期間Trごとに反転している。これにより、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが発散するのを防いでいる。
反転期間Trは、交流電動機2の応答性や、PI演算部24におけるPI演算の特性(ゲイン)等を考慮し、適宜設定することができる。具体的には、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqの傾きは、交流電動機2の応答性やPI演算の特性(ゲイン)によって決まる。そのため、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqがd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対する変動許容範囲F内に収まるように、計算や予めの実測に基づき、反転期間Tr(または反転期間Trに対応する制御回数)を設定することが望ましい。
また、制御周期TuやPWM信号生成に用いる三角波の周波数であるキャリア周波数fcにより、電気1周期中の電圧指令の更新回数が変わる。ここでは、電圧指令更新周期は、制御周期Tuに依るものであり、印加電圧パルス期間はキャリア周波数に依るものである。また、制御周期Tuは、キャリア周波数fcにより決める方法に限定されない。
制御周期Tuが長くなると、同じ電圧指令値に基づく電圧を印加する期間が長くなる。加えて、キャリア周波数fcが低いと、1つ1つの印加電圧パルス期間も長くなる。また、回転数Nが大きくなると、電気1周期が短くなり、同じ制御周期Tuである場合には、電気1周期中の電圧指令の更新回数が減少する。このことは、キャリア周波数fcの場合においても同様である。
そのため、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが変動許容範囲F内に収まるように、制御周期Tu、キャリア周波数fc、および、回転数N等に基づき、反転期間Trを可変とすることが望ましい。
ここで、本実施形態による駆動制御処理を図11および図12に示すフローチャートに基づいて説明する。図11および図12に示す処理は、制御部15にて実行されるものである。また、図12は、図11中の偏差反転制御処理を説明するサブフローである。
図11に示すように、最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、回転角センサ14から電気角θeを取得し、回転数Nを演算する。また、電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する。
S102では、電流推定部30にて、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。すなわち本実施形態では、回転数Nによらず、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを常時演算している。
S103では、回転数Nが第2の判定閾値A2以下か否かを判断する。回転数Nが第2の判定閾値A2より大きいと判断された場合(S103:NO)、S106へ移行する。回転数Nが第2の判定閾値A2以下であると判断された場合(S103:YES)、S104へ移行する。
S104では、FF制御モードとし、電圧指令基準値演算部25および電圧指令基準値補正部26にて、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算する。
S105では、切替判定部27にて、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。
回転数Nが第2の判定閾値A2より大きいと判断された場合(S103:NO)に移行するS106では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下か否かを判断する。回転数Nが第1の判定閾値A1より大きいと判断された場合(S106:NO)、S108へ移行する。回転数Nが第1の判定閾値A1以下であると判断された場合(S106:YES)、すなわちA2<N≦A1の場合、S107へ移行する。
S107では、偏差反転部23にて、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転する偏差反転モードとする。
ここで、S106における偏差反転処理を図12に示すフローチャートに基づいて説明する。
S171では、制御周期情報として、制御周期Tuおよびキャリア周波数fcを取得する。
S172では、制御周期Tu、キャリア周波数fc、および、回転数Nに基づき、反転周期Trに対応する制御回数閾値R1およびR2を決定する。通常、R2はR1の2倍の値とするが、R1<R2の範囲で適宜設定可能である。
S173では、制御回数カウンタのカウント値Rをインクリメントする。
S174では、制御回数カウンタのカウント値Rが制御回数閾値R1より大きいか否かを判断する。カウント値Rが制御回数閾値R1より大きいと判断された場合(S174:YES)、S176へ移行する。カウント値Rが制御回数閾値R1以下であると判断された場合(S174:NO)、S175へ移行する。
S175では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転しない。すなわち、偏差反転部33にて、フィードバックするd軸電流推定値id_estをd軸電流推定値(基準値)id_est_refとし、フィードバックするq軸電流推定値iq_estをq軸電流推定値(基準値)iq_est_refとする。
制御回数カウンタのカウント値Rが制御回数閾値R1より大きいと判断された場合(S174:YES)に移行するS176では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転する。すなわち、偏差反転部33にて、フィードバックするd軸電流推定値id_estをd軸電流推定値(反転値)id_est_revとし、フィードバックするq軸電流推定値iq_estをq軸電流推定値(反転値)iq_est_revとする。
S177では、制御回数カウンタのカウント値Rが制御回数閾値R2より大きいか否かを判断する。カウント値Rが制御回数閾値R2以下であると判断された場合(S177:NO)、S179へ移行する。カウント値Rが制御回数閾値R2より大きいと判断された場合(S177:YES)、S178へ移行する。
S178では、制御回数カウンタのカウント値Rをリセットする。
S179では、PI演算部24にて、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqが0に収束するように、PI演算により第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。ここで、直前までFF制御であった場合、PI演算において、直前のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*をPI積分項の初期値として設定することが望ましい。これによりFF制御から電流FB制御への切り替え時のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*の急変を抑制することが出来る。
図11に戻り、回転数Nが第1の判定閾値A1より大きいと判断された場合(S106:NO)に移行するS108では、減算器22にて、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを演算する。また、偏差反転部23にてd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負反転を行わずに演算された第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。
S107およびS108に続いて移行するS109では、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。
S105およびS109に続いて移行するS110では、3相電圧指令値演算部28にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*を電気角θeに基づいて逆dq変換し、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*を演算する。
S111では、PWM信号生成部29にて、3相電圧指令値vu*、vv*、vw*をインバータ入力電圧VHに基づいてPWM変調してPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを算出し、インバータ12へ出力する。
そして、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLに基づいてインバータ12のスイッチング素子のオン/オフが制御されることにより、3相交流電圧vu、vv、vwが生成され、この3相交流電圧vu、vv、vwが交流電動機2に印加されることにより、トルク指令値trq*に応じたトルクが出力される。
図13は、回転数NがA2から増加してA1となるまでを偏差反転モードにて制御した場合の交流電動機2の挙動を示したものである。また図14は、回転数NがA1から減少してA2となるまでを偏差反転モードにて制御した場合の交流電動機2の挙動を示したものである。図13および図14において、(a)はトルク、(b)は回転数、(c)はd軸電流、(d)はq軸電流、(e)はd軸電圧、(f)はq軸電圧を示している。また、実線が実値、破線が指令値、2点鎖線が推定値を示している。
d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転周期Trごとに反転することにより、図13(e)、(f)に示すように、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*が比較的安定して制御されている。そのため、図13(c)、(d)に示すように、図9に示す例とは異なり、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが単調増加および単調減少を繰り返すことなく、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に追従している。同様に、実トルク値trqもトルク指令値trq*に追従しており、回転数NがA2からA1に達するまで、安定して交流電動機2を制御している。
同様に図14に示すように、回転数NがA1からA2まで概ね指令に沿って安定して交流電動機2を制御している。
以上詳述したように、本実施形態の電動機制御装置10は、インバータ12によって印加電圧vu、vv、vwが制御される3相の交流電動機2の駆動を制御する。
電動機制御装置10の制御部15では、以下の処理が実行される。交流電動機2のいずれか1相(本実施形態ではW相)であるセンサ相に設けられる電流センサ13からW相電流検出値iw_snsを取得する(図11中のS101)。また、交流電動機2の回転角を検出する回転角センサ14から電気角θeを取得する(S101)。
回転数演算部16では、電気角θeに基づき、交流電動機2の回転数Nを演算する(S101)。
電流推定部30では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに基づき、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refを演算する(S102)。本実施形態では、W相電流検出値iw_snsおよび電気角θeに加え、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refを演算する。
減算器22では、交流電動機2の駆動に係るd軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*とフィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estとの偏差であるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを演算する(S175、S176、S108)。
PI演算部24では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqに基づき、インバータ12の駆動に係るPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの生成に用いる第1のd軸電圧指令値id*_1および第1のq軸電圧指令値iq*_1を演算する(S108、S179)。
本実施形態では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1の演算に用いるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転する(S175、S176)。本実施形態では、偏差反転部33にて、フィードバックするd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを、d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refそのものとするか、d軸電流推定値(反転値)id_est_revおよびq軸電流推定値(反転値)iq_est_revとするかを、反転期間Trごとに切り替える。これにより、減算器22にて演算されるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負は、反転期間Trごとに反転する。
本実施形態のようにd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負が反転期間Trごとに反転するようなd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックすることにより、電流指令値演算部21、減算器22、および、PI演算部24の一連の演算を変更する必要がない。そのため、例えば電流指令値演算部21、減算器22、および、PI演算部24等がハードウェアにて構成されている場合にも容易に適用することができる。
本実施形態では、W相に電流センサ13を設け、U相およびV相の電流センサを省略しており、つまりは電流センサの数を減らすことができる。これにより、インバータ12の3相出力端子近傍の小型化や電動機制御装置10のコストを低減することができる。
1相(本実施形態ではW相)の電流検出値iw_snsを用いて推定されるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estをフィードバックして交流電動機2の駆動を制御する推定電流FB制御とする場合、回転数Nが小さい低回転域では、サンプリング間隔Tsあたりの電気角移動量Δθeおよび電流変化量Δiwが小さくなり、実機情報が乏しくなるため、制御が不安定になる虞がある。特に、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対し、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと偏差の極性が逆向きのd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがフィードバックされる状態が継続すると、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に収束せず、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*との差が増大し続け、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが発散する。
低回転域においては、サンプリング間隔TsあたりのW相電流検出値iw_snsの電流変化量Δiwや電気角移動量Δθeが小さくなる。W相電流検出値iw_snsの電流変化量Δiwや電気角移動量Δθeが小さくなると、フィードバックされるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがほとんど変化しなくなる。そのため、d軸電流指令値id*に対し、d軸実電流値idと偏差極性が逆向きのd軸電流推定値id_estがフィードバックされると、その状態が継続され、d軸実電流値idとd軸電流指令値id*との差が増大しつづけ、d軸実電流値idが発散する虞がある。同様に、q軸電流指令値iq*に対し、q軸実電流値iqと偏差極性が逆向きのq軸電流推定値iq_estがフィードバックされると、その状態が継続され、q軸実電流値iqとd軸電流指令値id*との差が増大しつづけ発散する虞がある。
そこで本実施形態では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転している。これにより、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対し、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと偏差極性が逆向きのd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがフィードバックされつづけるのを防ぐことができる。そのため、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと、d軸電流指令値id*およびq軸実電流値iq*との差が増大し続けることがなく、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqの発散を抑制することができる。したがって、回転数Nが低回転域であっても、1相の電流検出値(本実施形態ではW相電流検出値iw_sns)による電流FB制御により交流電動機2の駆動を安定して制御することができる。
本実施形態では、反転期間Trは、キャリア周波数fc、制御周期Tu、および、回転数Nに基づいて可変としている。これにより、d軸実電流値idおよびq軸電流値iqが、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対する変動許容範囲F内に収まるように、適切に制御することができ、d軸実電流値idおよびq軸電流値iqの発散をより抑制することができる。
また本実施形態では、電圧指令基準値演算部25および電圧指令基準値補正部26にて、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づき、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの生成に用いる第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している(S104)。
また、切替判定部27にて、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1に基づいてPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成する電流FB制御モードと、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2に基づいてPWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLを生成するFF制御モードとを切り替える。
本実施形態では、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きい場合(S103:NO)、電流FB制御モードとし、回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合(S103:YES)、FF制御モードとする。具体的には、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きい場合(S103:NO)、切替判定部27にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する(S109)。また、回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合(S103:YES)、切替判定部27にて、d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する(S105)
本実施形態では、回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合、電流FB制御モードに替えて、FF制御モードとし、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいて第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までを安定して制御することができる。
特に本実施形態では、電動機の理論式である電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電圧指令値iq*に基づいて算出されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refを、理論上の電圧指令基準値と、指令通りのトルクが得られる交流電動機2の実際の駆動に係る電圧指令値との差分に対応するd軸電圧指令補正値vd_cmpおよびq軸電圧指令補正値vq_cmpに基づいて補正し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を演算している。これにより、低回転域において、始動から駆動、停止までをより安定して制御することができる。
本実施形態では、制御部15が「電流取得手段」、「回転角取得手段」、「回転数演算手段」、「電流推定手段」、「偏差演算手段」、「第1の電圧指令値演算手段」、「偏差反転手段」、「第2の電圧指令値演算手段」、「制御モード切替手段」を構成する。より詳細には、電流推定部30が「電流推定手段」を構成し、減算器22が「偏差演算手段」を構成し、PI演算部24が「第1の電圧指令値演算手段」を構成し、偏差反転部33が「偏差反転手段」を構成する。また、電圧指令基準値補正部26が「第2の電圧指令値演算手段」を構成し、切替判定部27が「制御モード切替手段」を構成する。
図11中のS101が「電流取得手段」、「回転角取得手段」および「回転数演算手段」の機能としての処理に相当し、S102が「電流推定手段」の機能としての処理に相当し、S179およびS108が「偏差演算手段」および「第1の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S175およびS176が「偏差反転手段」の機能としての処理に相当する。また、S104が「第2の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S105、S109が「制御モード切替手段」の機能としての処理に相当する。
また、W相が「センサ相」に対応し、W相電流検出値iw_snsが「電流検出値」に対応し、電気角θeが「回転角検出値」に対応する。d軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refが「電流推定値」に対応し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が「電流指令値」に対応し、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqが「偏差」に対応し、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1が「第1の電圧指令値」に対応し、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2が「第2の電圧指令値」に対応する。また、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLが「駆動信号」に対応する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、偏差反転部が第1実施形態と異なるので、この点を中心に説明する。
上記実施形態では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転すべく、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負が反転期間Trごとに反転するようなd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを減算器22にフィードバックした。本実施形態では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を直接反転する。
具体的には、図15に示すように、減算器22とPI演算部24との間に、偏差反転部23が設けられている。
本実施形態では、電流推定部30にて演算されたd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが、減算器22に直接入力される。本実施形態におけるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estは、上記実施形態のd軸電流推定値(基準値)id_est_refおよびq軸電流推定値(基準値)iq_est_refと同じである。
減算器22では、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqが演算される。
偏差反転部23では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下である場合、反転期間Trごとにd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転し、d軸電流偏差確定値Δid_fixおよびq軸電流偏差確定値Δiq_fixを演算する。回転数Nが第1の判定閾値A1より大きい場合は、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負反転を行わない。
PI演算部24では、d軸電流推定値id_estをd軸電流指令値id*に追従させるべく、d軸電流偏差確定値Δid_fixが0[A]に収束するようにPI演算により第1のd軸電圧指令値vd*_1を演算する。また、q軸PI演算部242では、q軸電流推定値iq_estをq軸電流指令値iq*に追従させるべく、q軸電流偏差確定値Δiq_fixが0[A]に収束するようにPI演算により第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。
フローチャートについて言及しておくと、図12中のS175では、減算器22にて、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを演算する。また、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転しない。すなわち、偏差反転部23にて、d軸電流偏差確定値Δid_fixおよびq軸電流偏差確定値Δiq_fixとして、正負を反転しないΔidおよびΔiqをPI演算部24に出力する。
また、S176では、減算器22にて、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqを演算する。また、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転する。すなわち、偏差反転部23にて、d軸電流偏差確定値Δid_fixおよびq軸電流偏差確定値Δiq_fixとして、正負を反転した−Δidおよび−ΔiqをPI演算部24に出力する。
S179では、PI演算部24にて、d軸電流偏差確定値Δid_fixおよびq軸電流偏差確定値Δiq_fixが0に収束するように、PI演算により第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。また、第1実施形態と同様、直前までFF制御であった場合、PI演算において、直前のd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*をPI積分項の初期値として設定することが望ましい。
また、このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
上記実施形態と異なる点について言及すると、制御部15の偏差反転部23が「偏差反転手段」を構成する。また、本実施形態では、S179に替えて、S175およびS176が「偏差演算手段」の機能としての処理に相当する。また、本実施形態では、電流推定部30にて演算されるd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estが「電流推定値」に対応する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図16〜図21を用いて説明する。
上記実施形態では、回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合、電流FB制御からFF制御に切り替えていた。本実施形態では、電流指令ベクトルi*の位相角θiによっては電流FB制御でも始動可能であることに着目し、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲P内にある場合、回転数Nが第2の判定閾値A2以下であっても電流FB制御としている。
ここで、電流FB制御にて始動可能である場合と始動不可である場合について説明する。
まず、電流指令ベクトルi*の位相角θiについて、図16に基づいて説明する。
図16に示すように、本実施形態では、電気角θeは、U相軸を基準として0[°]から反時計回り方向に定義される。また、W相軸は、U相軸に対し、電気角として240[°]ずれている。
また、d−q座標において、d軸成分がd軸電流指令値id*、q軸成分がq軸電流指令値iq*からなる電流指令ベクトルi*の位相φは、q軸から反時計回り方向に定義される。U相軸を基準とする電流指令ベクトルi*の位相角θiは、式(9)のように表される。
θi=θe+φ+90[°] ・・・(9)
また、基準軸の取り方を特定せず、式(9)を一般化すると、式(10)のようになる。
θi=θe+φ+C (ただしCは定数) ・・・(10)
図17は、電流指令ベクトルi*がW相軸に近い位置である場合の例であり、図18は、電流指令ベクトルi*がW相軸に直交するW相直交軸に近い位置である場合の例である。図17および図18は、いずれも回転数Nが0[rpm]から推定電流FB制御にて始動する例を示している。また、(a)はトルク、(b)は回転数、(c)はd軸電流、(d)はq軸電流、(e)は回転情報を示している。また、(a)〜(d)においては、実線が実値、破線が指令値、2点鎖線が推定値を示し、(e)においては、実線が位相角θi、破線が電気角θeを示している。
図17(c)、(d)に示すように、電流指令ベクトルi*がW相軸に近い位置である場合、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に比較的沿ったd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが通電されている。そのため図17(a)に示すように、トルク指令値trq*に比較的沿った実トルク値trqが出力されており、交流電動機2を始動することができる(図17(b)、(e)参照)。
一方、図18(a)、(c)、(d)に示すように、電流指令ベクトルi*がW相軸に直交するW相直交軸に近い位置である場合、トルク指令値trq*、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*が上昇しても、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが略0のままである。そのため、実トルク値trqも略0[Nm]のままであり、トルクが発生せず、交流電動機2を始動することができない。
電流指令ベクトルi*がW相直交軸上にある場合、電流指令ベクトルi*のW相軸成分であるW相電流指令値iw*が0[A]となり、W相電流検出値iw_snsも0[A]となってしまう。すると、d軸電流推定値id_estは、U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*に基づいて演算されることになる。指令のみに基づくd軸電流推定値id_estがフィードバックされると、d軸電流偏差Δidが0[A]となり、d軸電圧指令値vd*もゼロとなってしまう。q軸についても同様、W相電流検出値iw_snsが0[A]となり、指令のみに基づくq軸電流推定値iq_estがフィードバックされると、q軸電流偏差Δiqが0[A]となり、q軸電圧指令値vq*もゼロとなってしまう。d軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*がゼロとなると、交流電動機2に電圧が印加されず、交流電動機2を始動することができない。
また、電流指令ベクトルi*がW相直交軸上になくとも、W相直交軸の近くにある場合、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estにおけるW相成分が小さくなるため、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が悪化する虞がある。上記第1実施形態にて説明したように、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が悪化し、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に対して、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqと偏差極性が逆向きのd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estがフィードバックされ、その状態が継続すれば、d軸実電流値idおよびq軸実電流値iqが発散してしまうため、交流電動機2を始動できない虞がある。
一方、電流指令ベクトルi*がW相軸上、或いは、W相軸の近くにある場合、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estにおけるW相成分が大きいため、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estの推定精度が比較的良好であり、推定電流FB制御であっても、交流電動機2を始動可能である
そこで本実施形態では、図19に示すように、電流指令ベクトルi*の位相角θiについて、始動可能範囲Pを設定し、位相角θiが始動可能範囲P内にある場合、回転数Nが第2の判定閾値A2以下であっても電流FB制御とし、位相角θiが始動可能範囲P内にない場合、回転数Nが第2の判定閾値A2に達するまではFF制御としている。本実施形態では、図19に示すように、始動可能範囲Pは、2つの始動可能範囲P1、P2からなる。始動可能範囲P1は、W相軸に対応する240[°]を基準とし、240[°]−θp11≦θi<240[°]+θp12とする。始動可能範囲P2は、−W相軸に対応する60[°]を基準とし、60[°]−θp21≦θi≦60[°]+θp22とする。θp11、θp12、θp21、θp22は、全て同じ角度に設定してもよいし、例えば実験結果等に基づき、異なる値に設定してもよい。
制御モードの切り替えについて第1実施形態にて説明した図4と対応させて説明すると、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲内P内にある場合、図20に示すように、回転数Nが第2の判定閾値A2以下であっても電流FB制御とする。また、第1の判定閾値以下である場合、偏差反転制御モードとする。回転数Nが第1の判定閾値A1より大きい場合、推定電流FB制御モードとする。
また、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲P内にない場合、図4に示すように、第1実施形態と同様、回転数Nが第2の判定閾値A2以下である場合、FF制御モードとし、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きく第1の判定閾値A1以下である場合、偏差反転制御モードとし、回転数Nが第1の判定閾値A1より大きい場合、推定電流FB制御とする。
なお、偏差反転モードにおけるd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負反転方法は、第1実施形態のようにしてもよいし、第2実施形態のようにしてもよい。
ここで本実施形態における駆動制御処理を図21に基づいて説明する。
S201およびS202の処理は、図11中のS101およびS102の処理と同様である。
S203では、回転数Nが第2の判定閾値A2以下か否かを判断する。回転数Nが第2の判定閾値A2より大きいと判断された場合(S203:YES、)S207へ移行する。回転数Nが第2の判定閾値A2以下であると判断された場合(S203:NO)、S204へ移行する。
S204では、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲P内であるか否かを判断する。位相角θiが始動可能範囲P内であると判断された場合(S204:YES)、S208へ移行する。位相角θiが始動可能範囲P内ではないと判断された場合(S204:YES)、S205へ移行する。
S205およびS206は、図11中のS104およびS105と同様であり、FF制御モードとし、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第2のd軸電圧指令値vd*_2および第2のq軸電圧指令値vq*_2を選択する。
回転数Nが第2の判定閾値A2より大きいと判断された場合(S203:NO)に移行するS207では、回転数Nが第1の判定閾値A1以下か否かを判断する。回転数Nが第1の判定閾値A1より大きいと判断された場合(S207:NO)、S209へ移行する。回転数Nが第1の判定閾値A1以下であると判断された場合(S207:YES)、S208へ移行する。
回転数Nが第2の判定閾値A2以下であり、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲P内であると判断された場合(S203:YES、S204:YES)、および、回転数Nが第2の判定閾値A2より大きく、第1の判定閾値A1以下であると判断された場合(S203:NO、S207:YES)に移行するS208は、図11中のS107と同様であり、d軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqの正負を反転期間Trごとに反転する偏差反転モードとする。また、反転期間Trごとに正負が反転されたd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。
回転数Nが第1の判定閾値A1より大きいと判断された場合(S207:NO)に移行するS209は、図11中のS108と同様であり、正負反転されていないd軸電流偏差Δidおよびq軸電流偏差Δiqに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。
S210は、図11中のS109と同様であり、PWM信号UU、UL、VU、VL、WU、WLの演算に用いるd軸電圧指令値vd*およびq軸電圧指令値vq*として、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第1のq軸電圧指令値vq*_1を選択する。
S209およびS210の処理は、S108およびS109と同様である。
本実施形態では、電流指令ベクトルi*の位相角θiが始動可能範囲P内である場合(S204:YES)、回転数Nが第2の判定閾値A2以下であっても(S203:YES)、電流FB制御モードとしている。これにより、位相角θiが始動可能範囲P内である場合には、FF制御に替えて、電流FB制御とすることができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、図21中のS201が「電流取得手段」、「回転角取得手段」および「回転数演算手段」の機能としての処理に相当し、S202が「電流推定手段」の機能としての処理に相当し、S208およびS209が「第1の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S208が「偏差反転手段」の機能としての処理に相当する。また、S205が「第2の電圧指令値演算手段」の機能としての処理に相当し、S206およびS210が「制御モード切替手段」の機能としての処理に相当する。
(他の実施形態)
(ア)電流FB制御
上記実施形態では、PI演算部24におけるPI演算により第1の電圧指令値を演算した。他の実施形態では、図22に示すように、PI演算部24に替えて電圧指令値演算部240としてもよい。電圧指令値演算部240では、d軸電流偏差確定値Δid_fixおよびq軸電流偏差確定値Δiq_fixに加え、d軸FF項補正値FFadおよびq軸FF項補正値FFaqに基づき、第1のd軸電圧指令値vd*_1および第2のq軸電圧指令値vq*_1を演算する。電圧指令値演算部240における演算は、例えばPI演算等、どのような演算としてもよい。d軸FF項補正値FFadおよびq軸FF項補正値FFaqは、例えば電動機の理論式である電圧方程式を用い、d軸電流指令値id*およびq軸電流指令値iq*に基づいて演算されるd軸電圧指令基準値vd_refおよびq軸電圧指令基準値vq_refでも良いし、d軸デッドタイム補正値vd_dtおよびq軸デッドタイム補正値vq_dtでも良いし、或いはその両方を合わせた値とすることができる。その他、どのような値としてもよい。なお、図22では第2実施形態の制御部15に電圧指令値演算部240を設ける例について説明したが、もちろん第1実施形態の制御部15において、PI演算部24に替えて電圧指令値演算部240を設けるように構成してもよい。
(イ)推定電流FB制御
上記実施形態では、電流推定部において、センサ相以外の相については電流指令値を推定値とみなし、d軸電流推定値およびq軸電流推定値を演算していた。
電流推定部における演算方法は、これに限らず、電流検出値および電気角に基づいて演算されていれば、どのような方法であってもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。また、第1の電圧指令値は、電流指令値、および、フィードバックされた電流推定値に基づいて算出されていれば、どのような方法で算出してもよく、さらに他のパラメータ等を用いてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値は、回転数によらず、常時演算されていた。他の実施形態では、回転数が第2の判定閾値より大きい場合にd軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値を演算し、回転数が第2の判定閾値以下の場合、d軸電流推定値、q軸電流推定値、第1のd軸電圧指令値、および、第1のq軸電圧指令値の演算を中止してもよい。
以下、電流推定部にて採用可能な電流推定方法を例示しておく。
(i)電流指令位相を用いた基準角と振幅に基づく演算
例えば、特開2004−159391号公報のように、電流指令位相角と電気角から生成したU相電流基準角(θ’)」で除して電流振幅(Ia)を算出し、この電流振幅を、U相電流基準角から±120[°]ずらした電気角におけるsin値に乗じて他の2相の電流推定値Iv、Iwを算出する(式11.1〜11.3)。
Ia=Iu/[√(1/3)×({−sin(θ’)}] ・・・(11.1)
Iv=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+120[°])}・・・(11.2)
Iw=√(1/3)×Ia×{−sin(θ’+240[°])}・・・(11.3)
以下、(ii)〜(iv)では、センサ相をW相として説明する。
(ii)電流指令値を用いたセンサ相基準位相に基づく演算
U相電流指令値iu*およびV相電流指令値iv*の少なくとも一方、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeを用い、センサ相に一致するα軸方向のα軸電流iαおよびセンサ相に直交するβ軸方向のβ軸電流iβを演算し、α軸電流iαおよびβ軸電流iβの逆正接関数(arctan)によりセンサ相基準電流位相θxを算出する。センサ相基準電流位相θxの演算式を式(12)に示す。
θx=tan-1(iβ/iα) ・・・(12)
また、センサ相基準電流位相θxおよびW相電流検出値iw_snsに基づき、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estを演算し、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_est、W相電流検出値iw_sns、および、電気角θeに基づき、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。なお、U相電流推定値iu_estまたはV相電流推定値iv_estの演算において、ゼロで除算する「ゼロ割り」やゼロで乗算する「ゼロ掛け」を回避するような補正処理を行ってもよい。
(iii)α軸電流の微分による演算
α軸電流iαとβ軸電流iβが「sin波とcos波」の関係にあり、α軸電流iαとβ軸電流iβとの位相差が90[°]であることに着目し、α軸電流微分値Δiαに基づいてβ軸電流推定値iβ_estを演算する。ここで、制御部における演算が離散系である場合、α軸電流微分値Δiαは、実際のβ軸電流iβに対し、電気角移動量Δθeの半分だけ遅れる。この点を考慮し、α軸電流iαの前回値と今回値との平均値に電気角移動量Δθeの半分(Δθe/2)を乗じた補正量Hにて補正したβ軸電流推定値iβ_estとすることが好ましい。そして、α軸電流iαおよびβ軸電流推定値iβ_estを用いてセンサ相基準電流位相θxを演算する。以降の演算は(ii)と同様である。
(iv)漸化式による演算
回転座標系であるd−q座標上でW相軸が相対的に回転することを利用し、W相推定誤差Δiw_estを積算してd軸実電流値idおよびq軸実電流値iqに漸近させる。
前回のd軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_est、および今回の電気角θeに基づき、センサ相成分であるW相電流基準値iw_bfを演算し、W相電流基準値iw_bfとW相電流検出値iw_snsとの差であるW相推定誤差Δiw_estを算出する。W相推定誤差Δiw_estにフィルタ要素であるゲインKを乗じた補正後誤差KΔiw_estを算出し、Δiu=0、Δiv=0とし、dq変換によりセンサ相方向補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrを演算する。そして算出されたd軸補正値id_crrおよびq軸補正値iq_crrをセンサ相方向の補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算することにより、d軸電流推定値id_estおよびq軸電流推定値iq_estを演算する。また、センサ相に直交する直交方向補正値をさらに演算し、センサ相方向補正値および直交方向補正値の合成ベクトルを補正ベクトルとし、当該補正ベクトルをd−q座標にて積算するようにしてもよい。
(ウ)制御モードに切り替えに係る第1の判定閾値および第2の判定閾値は、推定電流FB制御モードの低回転化の限界値や、推定電流FB制御の演算精度等、各制御モードの特性を考慮し、適宜設定することができる。
また、上記実施形態では、1つの第1の判定閾値により、偏差反転制御と推定電流FB制御とを切り替えていた。また、1つの第2の判定閾値により、FF制御と電流FB制御とを切り替えていた。他の実施形態では、制御モードの切り替えによる切り替えハンチングを避けるため、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値と異なる値としてもよい。すなわち、回転数が上昇する側と下降する側とで回転数の判定閾値にヒステリシス(ヒス)を設けてもよい、ということである。この場合、上昇側の第1の判定閾値をA1u、下降側の第1の判定閾値をA1dとした場合、例えばA1u>A1dとすることが好ましいが、A1u<A1dとしてもよい。同様に、上昇側の第2の判定閾値をA2u、下降側の第2の判定閾値をA2dとした場合、例えばA2u>A2dとすることが好ましいが、A2u<A2dとしてもよい。
(エ)上記実施形態では、第2の電圧指令値は、電動機の理論式である電圧方程式に基づいて算出される電圧指令基準値を補正して演算された。他の実施形態では、電圧指令基準値は、予め記憶されたマップを参照することによるマップ演算等、電流指令値に基づいてどのように演算してもよい。すなわち、第2の電圧指令値は、電動機の理論式である電圧方程式に基づく演算に限らず、電流指令値に基づき、どのように演算してもよい。尚、電圧指令基準値あるいは電圧指令値の演算においては、電流指令値の他、電流指令値の基となるトルク指令、回転数等を適宜用いてよい。
(オ)上記実施形態では、「電流推定値」、「電流指令値」、「第1の電圧指令値」、および、「第2の電圧指令値」は、いずれもd−q座標のものについて説明したが、交流電動機の制御に利用可能な値であれば、各相の値や、その他の軸に基づくものであってもよい。
(カ)交流電動機の印加電圧を制御するインバータは、どのような方法で制御されてもよい。例えば、正弦波PWM制御モード、および、過変調PWM制御モード等を適宜切り替えて制御されるように構成してもよい。
(キ)上記実施形態では、電流センサがW相に設けられ、W相がセンサ相である例について説明した。他の実施形態では、電流センサがU相に設けられ、U相をセンサ相としてもよい。また、電流センサがV相に設けられ、V相をセンサ相としてもよい。
(ク)上記実施形態では、電流センサが1相に設けられている例について説明した。他の実施形態では、例えば制御に用いる電流を検出する電流センサ(以下、制御用センサ)の異常検出をするための独立した電流センサ(以下:異常検出用センサ)がセンサ相またはセンサ相以外の相に設けられていてもよい。例として、1相に制御用センサと異常検出用センサを設けた1相2チャンネルや、1相に制御用センサを設け、それ以外の相のいずれかに1相に異常検出用センサを設けた2相1チャンネルなどのセンサ構成が挙げられるが、どの相にいくつ設けられてもよい。
(ケ)上記実施形態では、回転角センサは電気角θeを検出し、制御部へ出力した。他の実施形態では、回転角センサは機械角θmを検出し、制御部へ出力し、制御部の内部にて電気角θeに換算してもよい。また、電気角θeに替えて、機械角θmを「回転角検出値」としてもよい。さらにまた、回転数Nは、機械角θmに基づいて算出してもよい。
(コ)上記実施形態では、交流電動機は、永久磁石式同期型の三相交流電動機であったが、他の実施形態では、誘導電動機やその他の同期電動機であってもよい。また、上記実施形態の交流電動機は、電動機としての機能および発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであったが、他の実施形態では、発電機としての機能を持たない電動機であってもよい。
交流電動機は、エンジンに対して電動機として動作し、エンジンの始動を行うように構成されていてもよい。また、エンジンを設けなくてもよい。さらに、交流電動機を複数設けてもよいし、複数の交流電動機における動力を分割する動力分割機構等をさらに設けてもよい。
(サ)本発明による交流電動機の制御装置は、上記実施形態のようにインバータと交流電動機を1組設けたシステムに限らず、インバータと交流電動機を2組以上設けたシステムに適用してもよい。また、1台のインバータに複数台の交流電動機を並列接続させた電車等のシステムに適用してもよい。
また、交流電動機の制御装置は、電動車両に適用されていたが、電動車両以外に用いてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
2・・・交流電動機
10・・・電動機制御装置(交流電動機の制御装置)
12・・・インバータ
13・・・電流センサ
14・・・回転角センサ
15・・・制御部(電流取得手段、回転角取得手段、電流推定手段、偏差演算手段、第1の電圧指令値演算手段、偏差反転手段、第2の電圧指令値演算手段、制御モード切替手段)

Claims (5)

  1. インバータ(12)によって印加電圧が制御される3相の交流電動機(2)の駆動を制御する交流電動機の制御装置(10)であって、
    前記交流電動機のいずれか1相であるセンサ相に設けられる電流センサ(13)から電流検出値を取得する電流取得手段(15)と、
    前記交流電動機の回転角を検出する回転角センサ(14)から回転角検出値を取得する回転角取得手段(15)と、
    前記回転角検出値に基づき、前記交流電動機の回転数を演算する回転数演算手段(16)と、
    前記電流検出値および前記回転角検出値に基づき、電流推定値を演算する電流推定手段(30)と、
    前記交流電動機の駆動に係る電流指令値とフィードバックされる前記電流推定値との偏差を演算する偏差演算手段(22)と、
    前記偏差に基づき、前記インバータの駆動に係る駆動信号の生成に用いる第1の電圧指令値を演算する第1の電圧指令値演算手段(24)と、
    前記回転数が第1の判定閾値以下である場合、前記第1の電圧指令値の演算に用いる前記偏差の正負を反転期間ごとに反転する偏差反転手段(23、33)と、
    を備えることを特徴とする交流電動機の制御装置。
  2. 前記電流指令値に基づき、前記駆動信号の生成に用いる第2の電圧指令値を演算する第2の電圧指令値演算手段(25、26)と、
    前記第1の電圧指令値に基づいて前記駆動信号を生成する第1の制御モードと、前記第2の電圧指令値に基づいて前記駆動信号を生成する第2の制御モードと、を切り替える制御モード切替手段(27)と、
    をさらに備え、
    前記制御モード切替手段は、前記回転数が前記第1の判定閾値より小さい第2の判定閾値より大きい場合、前記第1の制御モードとし、前記回転数が前記第2の判定閾値以下である場合、前記第2の制御モードとすることを特徴とする請求項1に記載の交流電動機の制御装置。
  3. 前記制御モード切替手段は、電流指令ベクトルの位相角が始動可能範囲内である場合、前記回転数が前記第2の判定閾値以下であっても、前記第1の制御モードとすることを特徴とする請求項2に記載の交流電動機の制御装置。
  4. 前記第2の電圧指令値演算手段は、電動機の理論式を用い、前記電流指令値に基づいて算出される電圧指令基準値を補正して前記第2の電圧指令値を演算することを特徴とする請求項2または3に記載の交流電動機の制御装置。
  5. 前記反転期間は、キャリア周波数、制御周期、および、前記回転数の少なくとも1つに基づいて可変とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の交流電動機の制御装置。
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