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JP5717053B2 - ガラスフィルムの製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Description

本発明は、ガラスフィルムの製造方法およびその製造装置に関し、特にガラスフィルムをロール状に巻き取ることも可能となる長尺なガラスフィルムの製造技術に関する。
周知のように、近年における画像表示装置は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ(OLED)などに代表されるフラットパネルディスプレイ(以下、単にFPDという)が主流となっている。これらのFPDについては軽量化が推進されていることから、当該FPDに使用されるガラス基板についても薄板化の一途を辿っているのが現状である。
また、例えば有機ELは、ディスプレイのように微細な三原色をTFTにより明滅させるに留まらず、単色(例えば白色)のみで発光させてLCDのバックライトや屋内照明の光源などの平面光源としても利用されつつある。さらに、有機ELを用いた照明装置であれば、ガラス基板に可撓性を付与できさえすれば、自由に発光面を変形させることが可能である。そのため、この種の照明装置に使用されるガラス基板についても、充分な可撓性確保の観点から大幅な薄板化(ガラスフィルム化)が推進されている。
ここで、薄板化された帯状のガラス、いわゆるガラスフィルムの製造方法として、例えば下記特許文献1には、ダウンドロー法、特にスロットダウンドロー法により、板厚が30μm〜2000μmのガラスフィルムリボンを成形し、鉛直下方に引き出したガラスフィルムリボンを水平方向に向けて折り曲げた(湾曲させた)後、レーザーを用いてガラスフィルムリボンの両端を切り落とし、続いてガラスフィルムリボンを所定長さに切断することで、所定寸法のガラス基板を切り出す技術が提案されている。また、板厚が30μm〜400μmのガラスフィルムリボンであれば、その両端を切り落とした後、所定の長さに切断することなく(所定のローラーなどによって)巻き上げ可能な旨が記載されている。
また、下記特許文献2には、いわゆるフロート法により成形した、板厚が0.7mm未満のガラスフィルムリボンの幅方向両端部を溶融スズ槽上で切断したものをロール状に巻き上げる技術が提案されている。
このように、ガラスフィルムリボンは、従来のガラス基板とは異なり、その優れた可撓性を活かしてロール状に巻き取ることが可能であり、例えばRoll to Roll製法等の生産方式に供給することが可能となる。
特開2000−335928号公報 特表2002−544104号公報
ガラスフィルムリボンは、溶融ガラスが薄板状に成形され、その粘度が比較的低い間にさらに延伸されて所定の幅方向寸法および厚み寸法に成形される。このとき、ガラスフィルムリボンには、反りや、ガラスフィルムリボンの幅方向に大きな曲率で湾曲する湾曲変形が生じることがある。多くの場合、ガラスフィルムリボンの成形時には、これらの変形が組み合わさった形で現れる。そして、これらの変形は、溶融ガラスがガラスフィルムリボンに成形され、冷却を終えるまでの間にほぼ固定化されてしまう。
長尺のガラスフィルムリボンを巻き取る場合には、上述した変形のうち、特に湾曲変形が問題となる場合が多い。しかしながら、湾曲変形を生じた長尺なガラスフィルムリボンにおいては、その幅方向に大きな曲率で湾曲変形した状態で固定化されるため、ガラスフィルムリボンの幅方向にいわゆる竹の子状にずれた形態でロール状に巻き取られ易い。これでは、ガラスフィルムをガラスロールとして提供することができず、歩留まりの低下につながる。
この問題を解決すべく、例えば下記特許文献1には、ガラスフィルムリボンの湾曲変形度合い(湾曲変形の有無も含めて)を監視し調整する機構を、ガラスフィルムリボンの成形装置に組み込むことにより、ガラスフィルムリボンに湾曲変形が生じないようにする技術が開示されている。ところが、上記特許文献1に開示された技術では、ガラスフィルムリボンが充分に、又はある程度冷却された箇所に、当該ガラスフィルムリボンの湾曲変形度合いを監視する装置を設置している。上述のように、ガラスフィルムリボンの変形は、溶融ガラスがガラスフィルムリボンの形状に成形され、冷却を終えるまでの間に生じ、固定化されるので、監視装置で既に冷却されたガラスフィルムリボンの湾曲変形の発生を感知して、引き抜きローラーの変位機構などの調整機構にフィードバックを掛けたとしても、必然的に時間的な遅れを生じる。よって、上記調整作業を開始するまでの間に湾曲変形のあるガラスフィルムリボンを巻き取ってなるガラスフィルムのロール体に、竹の子状にずれた巻き取り部分が残ることになり、歩留まりの低下を招く。
また、上記特許文献1のように、ガラスフィルムリボンに対して積極的に矯正力を付与してその湾曲変形を矯正しようとする手法では、矯正力を付与することによる新たな歪みが発生し、この新たな歪みによる湾曲変形等の変形を再度矯正する作業を絶えず行う必要が生じる。ガラスは脆性材料であるため、ガラスフィルムリボンに矯正力を付与し続けると、ガラスフィルムリボンに歪が蓄積し、ついにはガラスフィルムリボンが破損(破断)する事態を招きかねない。これでは、ガラスフィルムリボンの巻き取り作業を精度よく且つ安定して続けることは困難であり、そのための無駄も多い。
以上の事情に鑑み、本明細書では、歩留まりの低下を招くことなく、また湾曲変形もなく、ロール状に巻き取り可能なガラスフィルムリボンを精度よく製造することを、本発明により解決すべき技術的な課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、溶融ガラスもしくは二次加工用のガラス母材からガラスフィルムリボンを成形すると共に、冷却を伴って下方に引き出されたガラスフィルムリボンをロール状に巻き取り、その巻き取り位置の手前でガラスフィルムリボンを幅方向に沿って切断するガラスフィルムの製造方法において、ガラスフィルムリボンの成形開始位置から、ガラスフィルムリボンの切断位置までの鉛直方向距離が、ガラスフィルムリボンの幅方向寸法の5倍以上となるようにした点をもって特徴づけられる。なお、ここでいう、「ガラスフィルムリボンの成形開始位置」は、採用する成形方法によって異なり、例えばガラスフィルムリボンの成形方法にスロットダウンドロー法を採用する場合であれば、溶融ガラスを下方に引き出すためのスロット(スリット)開口部が上記成形開始位置に相当する。また、オーバーフローダウンドロー法を採用する場合であれば、溢れ出た溶融ガラスが合流する成形体の下端が上記成形開始位置に相当し、リドロー法を採用する場合であれば、バーナー等で二次加工用のガラス母材を加熱し所定方向への引き伸ばしを開始する位置が上記成形開始位置に相当する。
上記のように、所定形状に成形された後、冷却を伴って下方に引き出されたガラスフィルムリボンには、ガラスフィルムリボンをロール状に巻き取るためのローラーによる牽引力に加え、下方に引き出したガラスフィルムリボンの重量がガラスフィルムリボン自身に付加される。すなわち、鉛直方向に沿って引き出されるガラスフィルムリボンの所定の部位(例えば冷却中の部位)を基準として見た場合、当該所定の部位よりも下方に位置する部位の重量が、ガラスフィルムリボンの上記所定の部位に対する鉛直下方への牽引力となる。この牽引力は、鉛直方向に、且つガラスフィルムリボンの幅方向全域にわたって均等に作用するはずであるが、ガラスフィルムリボンが何らかの理由で反ったり湾曲変形を生じたりすることで、その重心が成形開始位置を通る仮想鉛直線上からずれる場合がある。このとき、上述の牽引力が不十分だと、このような状態が、長時間にわたって継続して生じ、その後にガラスフィルムリボンの重心を上記仮想鉛直線上に戻そうとする力が作用したとしても、時間的な遅れが原因となって、ガラスフィルムリボンの変形が大きく残り、品質面で致命的な欠陥を招きかねない。そこで、本発明者は、上記のように、ガラスフィルムリボンの成形開始位置から、ガラスフィルムリボンの幅方向に沿った切断位置までの鉛直方向距離と、当該ガラスフィルムリボンの幅方向寸法との比率に着目し、これら幅方向寸法に対する鉛直方向距離の比率につき鋭意検討した結果、上記比率を所定の大きさ以上としたときに、具体的には、上記比率を5以上としたときに、ガラスフィルムリボンの重心を鉛直線上に戻そうとする力が、巻き取り前のガラスフィルムリボンに対して時間的な遅れを生じることなく迅速且つ有効に作用することを見出した。従って、例えば所定の幅方向寸法を有するガラスフィルムリボンを製造する場合、当該ガラスフィルムリボンの幅方向寸法に応じて、鉛直方向距離を大きく取るようにすることで、連続的に成形されるガラスフィルムリボンのうち比較的上方に位置する部位、すなわち成形直後から冷却中にかけての部位が、当該部位よりも下方に位置する部分の自重により自然と鉛直下方に向けて牽引される。そして、この牽引力により、仮にガラスフィルムリボンの重心が仮想鉛直線上から外れ、又は外れそうになる場合においても、当該重心を仮想鉛直線上に戻そうとする力が迅速に作用するので、下方に引き出されるガラスフィルムリボンの湾曲変形を含む変形を可及的に低減することができる。そのため、特に監視装置や調整機構を設けずとも、ガラスフィルムリボンを幅方向に沿って切断し、ロール状に巻き取った際、いわゆる竹の子状にずれた状態とはならずに済む。また、本発明に係る製造方法によれば、自重により引出し中のガラスフィルムリボンの重心位置を調整することになるため、上記幅方向寸法に対する鉛直方向距離の比を一旦定めてしまえば、後は安定して長尺のガラスフィルムリボンの製造を続けることが可能となる。従って、当該長尺のガラスフィルムリボンを巻き取ることで、幅方向の巻き取り位置が常に揃った状態の高精度なガラスフィルムの巻き取りロール体を安定して得続けることが可能となる。
この場合、ガラスフィルムリボンの幅方向中央部における厚み寸法を300μm以下としてもよい。
これは、ロール状に巻き取るべきガラスフィルムリボンの厚み寸法が300μmを超えると、ガラスフィルムのロール体の内径が、理論上、420mm以上(好ましくは700mm以上)必要となり、また巻き取り後のガラスロールの外径が2000mmを超え易くなり、コンテナなどによるガラスロールの輸送が現実的に困難となるためである。以上の理由から、ロール状に巻き取ることを前提とした場合、ガラスフィルムリボンの幅方向中央部の厚み寸法は300μm以下であることが好ましく、100μm以下であればより好ましく、50μm以下であればさらに好ましい。
また、溶融ガラスからガラスフィルムリボンを成形するための方法に、オーバーフローダウンドロー法を採用してもよい。
ガラスフィルムリボンをロール状に巻き取ったガラスフィルムのロール状製品は、上述のようにいわゆるRoll to Roll製法に係る後工程に供給されることも少なくなく、これらの後工程においては、通常、ガラスフィルムリボンの表面に微細な素子や配線を設ける作業がなされる。そのため、ガラスフィルムリボンの表面には非常に優れた平滑性(平面度)が要求される。しかしながら、例えばスロットダウンドロー法などのノズルを用いた成形法では、成形ノズルから溶融ガラスを排出するために、成形されるガラスフィルムリボンの表面に成形ノズルスロットの内面形状が反映(いわば転写)されてしまう場合がある。そのために、ガラスフィルムリボンの表面を平滑且つ高精度に得ることが難しい。一方、オーバーフローダウンドロー法によれば、ガラスフィルムリボンの表面は外気(成形装置中の雰囲気ガス)に接触するだけで済むため、非常に平滑な面を得ることが可能となる。同様の効果は、一旦固化した二次加工用のガラス母材を加熱して所定の方向に引き伸ばすことで行う、いわゆるリドロー法によっても得ることが可能である。
また、ガラスフィルムリボンの幅方向両端部を、レーザー割断により切断するようにしてもよい。
溶融ガラスからガラスフィルムリボンを成形する場合、特に上述したオーバーフローダウンドロー法によりガラスフィルムリボンを成形する場合、その幅方向両端部の厚み寸法は、主に製品部分として使用される幅方向中央部の厚み寸法よりも厚くなることが多い。このため、一定の厚み寸法を有するガラスフィルム製品を得ることを目的としてガラスフィルムリボンを製造する場合、成形したガラスフィルムリボンの幅方向両端部は所定の方法により切断される。ここで、ガラスフィルムリボンの幅方向両端部を切断する好適な方法の1つに、レーザー割断を用いた方法を挙げることができる。レーザー割断により幅方向両端部を切断することで生じた側端面は平滑であり、傷が非常に少ないことからガラスロール製品用のガラスフィルムリボンに適している。ここで、レーザー割断とは、レーザーによる加熱と、冷媒による冷却とによる熱応力をガラスフィルムリボンに生じさせ、この熱応力により、予めガラスフィルムリボンに付与しておいた初期き裂を進展させることでガラスフィルムリボンの切断を行うものである。本発明によれば、ガラスフィルムリボンの幅方向両端部の一方が切断時に浮き上がる心配もないので、確実且つ高精度に上記両端部を切断することが可能になる。
さらには、ガラスフィルムリボンの成形開始位置の下方に位置する徐冷領域の鉛直方向距離を、ガラスフィルムリボンの成形開始位置から、ガラスフィルムリボンの切断位置までの鉛直方向距離の50%以上80%以下に設定するとよい。
このようにすることで、ガラスフィルムリボンの成形速度を低下させずに、溶融ガラスから成形されたガラスフィルムリボンの冷却速度を低減させる(小さくする)ことが可能となり、ガラスフィルムリボンの残留歪を小さくすることが可能となる。このように成形されたガラスフィルムリボンの残留歪は光の位相角差で、0.5nm以下とすることができる。なお、徐冷領域の鉛直方向距離は、ガラスフィルムリボンの成形開始位置から切断位置までの鉛直方向距離の60%以上80%以下が好ましく、より好ましくは70%以上80%以下に設定するとよい。
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラスフィルムの製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、溶融ガラスもしくは二次加工用のガラス母材からガラスフィルムリボンを成形するガラスフィルムリボンの成形装置と、冷却を伴って下方に引き出されたガラスフィルムリボンをロール状に巻き取る巻き取り装置と、この巻き取り装置による巻き取り位置の手前でガラスフィルムリボンを幅方向に沿って切断する幅方向切断装置とを備えたガラスフィルムの製造装置において、成形装置によるガラスフィルムリボンの成形開始位置から、幅方向切断装置によるガラスフィルムリボンの切断位置までの鉛直方向距離が、ガラスフィルムリボンの幅方向寸法の5倍以上となるようにした点をもって特徴づけられる。
上記の製造装置についても、本欄の冒頭で述べた製造方法と同一の技術的特徴を有することから、上記による作用効果と同一の作用効果を得ることができる。
以上のように、本発明に係るガラスフィルムの製造方法およびその製造装置によれば、歩留まりの低下を招くことなく、また湾曲変形もなく、ロール状に巻き取り可能なガラスフィルムリボンを精度よく製造することができる。
本発明の一実施形態に係るガラスフィルムの製造装置の側面図である。 図1に示すガラスフィルムの製造装置の正面図である。
以下、本発明の一実施形態を図1および図2に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガラスフィルムの製造装置1の側面図である。同図に示すように、この製造装置1は、いわゆるオーバーフローダウンドロー法により、溶融ガラスからガラスフィルムリボンGを成形する成形装置10と、冷却を伴って下方に引き出されたガラスフィルムリボンGをロール状に巻き取る巻き取り装置20とを備えるもので、巻き取り装置20よりも上流側に配設した幅方向切断装置30により、下方に引き出されたガラスフィルムリボンGを幅方向に沿って切断することで、所定のロール厚みを有するガラスフィルムのロール体Grを得られるようになっている。
詳述すると、成形装置10の内部には、断面楔状の外表面形状を有する成形体11が配設されており、図示しない溶融窯で溶融されたガラス(溶融ガラス)を成形体11に供給することで、当該溶融ガラスが成形体11の頂部から溢れ出るようになっている。そして、溢れ出た溶融ガラスは、成形体11の断面楔状を呈する両側面を伝って下端で合流することで、溶融ガラスからガラスフィルムリボンGへの成形が開始されるようになっている。このように、成形装置10の最も上部に位置する成形領域10A(図1および図2を参照)で成形されたガラスフィルムリボンGは、そのまま下方に流下し、成形領域10Aの下方に位置する徐冷領域10Bに至る。そして、この徐冷領域10Bでは、ガラスフィルムリボンGを徐冷しながらその残留ひずみを除去(アニール処理)するようになっている。徐冷領域10Bのさらに下流側(下方)には冷却領域10Cが設けられており、徐冷されたガラスフィルムリボンGを室温程度の温度にまで十分に冷却するようになっている。徐冷領域10Bと冷却領域10Cには、ガラスフィルムリボンGを下方に案内する複数のローラー12が配置されている。なお、この実施形態では、成形装置10内の各領域10B,10Cの最上部(図1で説明)に配設されたローラー12が、ガラスフィルムリボンGを冷却する冷却ローラーとして機能すると共に、ガラスフィルムリボンGに下方への引出し力(牽引力)を付与するための駆動ローラーとしても機能している。残りのローラー12は、空転ローラーないし引張りローラー等としてガラスフィルムリボンGを下方に案内しながら引き出す機能を果たしている。
冷却領域10Cを通過したガラスフィルムリボンGは、鉛直方向から水平方向へと進行方向を変えながら、ガラスフィルムの製造装置1の最も下流側に配置した巻き取り装置20に向けて引き出される。具体的には、冷却領域10Cの下方には、引き続きガラスフィルムリボンGが鉛直下方に向けて引出される鉛直引き出し領域30Aが連続すると共に、その下方には、ガラスフィルムリボンGを湾曲させて、その引き出し方向を鉛直方向から略水平方向へと変換する湾曲領域30Bが連続している。この実施形態では、図1に示すように、湾曲領域30BにおいてガラスフィルムリボンGを所定の曲率半径で湾曲させるための複数の湾曲補助ローラー31が設けられており、これら複数の湾曲補助ローラー31の働きにより、後述する水平引き出し領域30Cに向けてガラスフィルムリボンGを送り出すようになっている。さらに、湾曲領域30Bの下流側(図1でいえば湾曲領域30Bの左側)には、湾曲領域30Bを通過したガラスフィルムリボンGを略水平方向に向けて引き出す水平引き出し領域30Cが連続している。
また、図示は省略するが、水平引き出し領域30Cには、ガラスフィルムリボンGをその長手方向に沿って切断可能な長手方向切断装置が配設されており、湾曲領域30Bを通過して水平引き出し領域30Cに到達したガラスフィルムリボンGの幅方向両端部Ge(図2を参照)をその長手方向に沿って連続的に切断できるようになっている。ここで、長手方向切断装置としては、図示は省略するが、ダイヤモンドカッターを利用してスクライブラインを形成すると共に、耳部(幅方向両端部Ge)を折り割ることで、当該耳部をスクライブラインに沿って切断する装置を用いることができるが、切断面の強度向上を図る観点からは、例えば局部加熱手段と、冷却手段と、ガラスフィルムリボンの切断予定線の周囲の裏面を支持する支持部材と、切断予定線に初期き裂を形成するき裂形成手段とを備えたレーザー割断装置を用いることが好ましい。これにより、ガラスフィルムリボンGを、その幅方向両端部GeとガラスフィルムリボンGの有効部とに、いわゆるフルボディ切断することができる。
上述のようにして、ガラスフィルムリボンGの幅方向両端部Geを切断した後、これら幅方向両端部Geを除くガラスフィルムリボンGの有効部が、巻き取り装置20の巻き芯21まわりにロール状に巻き取られる。そして、巻き取られて出来たガラスフィルムのロール体Grのロール径(厚み寸法)が所定の寸法に達した時点で、幅方向切断装置30によりガラスフィルムリボンGを幅方向に切断する。この場合、幅方向切断装置30は長手方向切断装置よりもガラスフィルムリボンGの引き出し経路の下流側に位置しているが、これとは逆に、長手方向切断装置が幅方向切断装置30よりも下流側に位置していてもよい。以上の工程を経て、最終製品となるガラスフィルムのロール体Grが得られる。なお、この実施形態では、図1および図2に示すように、巻き取り装置20の近傍に保護シート供給装置22が配設されており、この保護シート供給装置22から供給される保護シート23をガラスフィルムリボンGと共に巻き取り装置20の巻き芯21まわりにロール状に巻き取るようになっている。
ここで、ガラスフィルムリボンGの成形開始位置、すなわち、溢れ出た溶融ガラスの成形体11下方での合流位置から、幅方向切断装置30によるガラスフィルムリボンGの切断位置までの鉛直方向距離h(図1を参照)が、ガラスフィルムリボンGの幅方向寸法、より正確には、冷却領域10Cを出たガラスフィルムリボンGの幅方向寸法w(図2を参照)の5倍以上になっている。すなわち、幅方向寸法wに対する鉛直方向距離hの比h/wが5以上になっている。これにより、連続的に成形されるガラスフィルムリボンのうち、比較的上方に位置する部位、すなわち成形領域10A中の成形開始位置(成形体11の下端位置)よりも下方の部位や徐冷領域10Bなどの部位が、これらの部位よりも下方に位置する部位の自重により鉛直下方に牽引される。そして、この牽引力により、仮にガラスフィルムリボンGの重心が、当該ガラスフィルムリボンGの成形開始位置の幅方向中央を通過する仮想鉛直線上から外れる場合においても、上記重心を仮想鉛直線上に戻そうとする力が迅速に作用するので、下方に引き出されるガラスフィルムリボンGの湾曲変形を含む変形を可及的に低減することができる。そのため、ガラスフィルムリボンGをさらに下流域で幅方向に切断し、巻き取り装置20でロール状に巻き取った際、いわゆる竹の子状にずれた状態とはならずに済む。また、この製造方法であれば、自重により引出し中のガラスフィルムリボンGの重心位置を調整することになるので、上記幅方向寸法wに対する鉛直方向距離hの比h/wを一旦定めてしまえば、後は安定した巻き取り作業を続けることが可能となる。従って、幅方向の巻き取り位置が常に揃った状態の高精度なガラスフィルムのロール体Grを安定して得ることができる。
特に、この実施形態のように、冷却領域10Cの下方に、鉛直引き出し領域30A、湾曲領域30B、および水平引き出し領域30Cが順に形成される場合、成形領域10Aと冷却領域10C、および湾曲領域30Bの寸法については、成形するガラスフィルムリボンGの材質や寸法に応じてある程度自動的に定まるので、現実的には、鉛直引き出し領域30Aの長さを、h/w≧5となるように、従来に比べて大きく設定するのがよい。これにより、特に従来構成を大幅に変更することなく、ガラスフィルムリボンGの巻き取りを高精度に実施することが可能となる。
また、上記方法を採る場合、上記幅方向寸法wに対する上記鉛直方向距離hの比h/wは7以上であればさらによく、10以上であればなおさらよい。このように設定することで、後述の結果に示すように、ガラスフィルムリボンGの湾曲度を大幅に減らすことができるので、非常に高品質のガラスフィルムのロール体Grを得ることが可能となる。
ここで、ガラスフィルムリボンGの幅方向中央部における厚み寸法は300μm以下が好ましく、100μm以下であればより好ましく、50μm以下であればさらに好ましい。ロール状に巻き取り可能な程度の可撓性をガラスフィルムリボンGが有しておればよい。
また、ガラスフィルムリボンGの幅方向寸法wについては、500mm以上であることが好ましい。すなわち、ガラスフィルムリボンGの幅方向寸法wが500mm以上でないと、ガラスフィルムリボンGが自重により牽引される効果を充分に得ることができない。ここで、下限値については、1000mm以上であればより好ましく、1500mm以上であればさらに好ましい。また、上限値については、6000mm以下であることが好ましい。機能面、性能面で見ればいくら大きくても問題はないが、あまりに大きくなり過ぎると(6000mmを超えると)、その分設備の高さが必要となり、コスト面で不具合が生じる可能性があるためである。
以上、本発明に係るガラスフィルムの製造方法とその製造装置の一実施形態を説明したが、これらは、上記例示の形態に限定されることなく、本発明の範囲内において任意の形態を採り得る。
例えば、上記実施形態では、図1に示すように、水平引出し領域30Cにおいて、ガラスフィルムリボンGを巻き取り装置20側に向かって下降傾斜させた構成となっているが、略水平でもよく、あるいは逆に若干上方に向けて傾斜させるようにしてもよい。この場合も、鉛直方向距離hの下側の基準位置は、幅方向切断装置30によるガラスフィルムリボンGの切断位置となる。
また、上記実施形態では、ガラスフィルムリボンGの幅方向両端部Geの切断位置を、水平引き出し領域30C中に設けるようにした場合を説明したが、特にこの位置には限定されない。巻き取り装置20よりも上流側で切断可能な限りにおいて、その切断位置は任意であり、例えば、湾曲領域30Bや鉛直引き出し領域30Aで切断することも可能である。幅方向切断装置30についても同様であり、鉛直引き出し領域30Aや湾曲領域30BでガラスフィルムリボンGを幅方向に沿って切断するようにしてもよい。
また、上述のように、幅方向切断装置30や長手方向切断装置を鉛直引き出し領域30A中に設ける場合、水平引き出し領域30C、又は湾曲領域30Bと水平引き出し領域30Cを省略することもできる。この場合、巻き取り装置20は、鉛直引き出し領域30A又は湾曲領域30Bの下流端に配設することができる。
また、以上の説明では、いわゆるオーバーフローダウンドロー法を用いたガラスフィルムの製造工程に本発明を適用する場合を例示したが、もちろん上記以外の成形方法、例えばスロットダウンドロー法などの各種ダウンドロー法や、二次加工用のガラス母材を利用するリドロー法など、種々のガラスフィルムの成形方法を採用することが可能である。
以上の説明に係るガラスフィルムの製造方法とその製造装置によれば、歩留まりの低下を招くことなく、また湾曲変形もなく、ロール状に巻き取り可能なガラスフィルムリボンを精度よく製造することができるので、FPD等の映像表示装置用ガラス基板に留まらず、品質の確保が要求される全てのガラスフィルムの量産工程に本発明を適用することができる。
また、上記以外の事項についても、本発明の技術的意義を没却しない限りにおいて他の具体的形態を採り得ることはもちろんである。
以下、本発明の有用性を立証するため本発明者が行った実験について記述する。今回の実験では、ガラスフィルムリボンの成形開始位置から幅方向に沿った切断位置までの鉛直方向距離と、幅方向寸法との比率を異ならせた場合に得られたガラスフィルムリボンの製品状態での湾曲度を測定し、本発明の有用性について評価した。
具体的には、下記の表1に示すように、ガラスフィルムリボンの幅方向寸法や、ガラスフィルムリボンの成形体の下端位置から当該ガラスフィルムリボンの幅方向に沿った切断位置までの鉛直方向距離を異ならせた状態でガラスフィルムリボンの製造を行った。この際に採用した製造方法は、オーバーフローダウンドロー法である。また、ガラスフィルムリボンの幅方向中央部の厚み寸法は何れも100μmとした。
Figure 0005717053
上記の条件下で製造したガラスフィルムリボンをガラスフィルムのロール体から10m引出し、定盤上に載置されたガラスフィルムリボンの長手方向両端同士を当該長手方向に結んだ仮想直線から、当該ガラスフィルムリボンの湾曲凹端面までの離間距離の最大値[mm]を湾曲度として測定した。
湾曲度の測定結果を、上記表1の最下欄に示す。この表から分かるように、幅方向寸法wに対する鉛直方向距離hの比h/wが5未満の場合、ガラスフィルム製品として好ましくない大きさの湾曲度を示している。これに対して、h/wが5以上の場合、特にh/wが10の場合、測定される湾曲度は非常に小さくなることがわかった。
1 ガラスフィルムの製造装置
10 成形装置
10A 成形領域
10B 徐冷領域
10C 冷却領域
11 成形体
12 ローラー
20 巻き取り装置
21 巻き芯
22 保護シート供給装置
23 保護シート
30 幅方向切断装置
30A 鉛直引出し領域
30B 湾曲領域
30C 水平引出し領域
31 湾曲補助ローラー
G ガラスフィルムリボン
Ge 幅方向両端部
Gr ガラスフィルムのロール体
h 鉛直方向距離
w 幅方向寸法

Claims (5)

  1. 溶融ガラスもしくは二次加工用のガラス母材からガラスフィルムリボンを成形すると共に、冷却を伴って下方に引き出された前記ガラスフィルムリボンをロール状に巻き取り、その巻き取り位置の手前で前記ガラスフィルムリボンを幅方向に沿って切断するガラスフィルムの製造方法において、
    前記ガラスフィルムリボンの成形開始位置から、前記ガラスフィルムリボンの切断位置までの鉛直方向距離が、前記ガラスフィルムリボンの幅方向寸法の5倍以上となるようにしたことを特徴とするガラスフィルムの製造方法。
  2. 前記ガラスフィルムリボンの幅方向中央部における厚み寸法を300μm以下とした請求項1に記載のガラスフィルムの製造方法。
  3. 前記溶融ガラスから前記ガラスフィルムリボンを成形するための方法に、オーバーフローダウンドロー法を採用した請求項1又は2に記載のガラスフィルムの製造方法。
  4. 前記ガラスフィルムリボンの幅方向両端部を、レーザー割断により切断するようにした請求項1〜3の何れかに記載のガラスフィルムリボンの製造方法。
  5. 溶融ガラスもしくは二次加工用のガラス母材からガラスフィルムリボンを成形するガラスフィルムリボンの成形装置と、冷却を伴って下方に引き出された前記ガラスフィルムリボンをロール状に巻き取る巻き取り装置と、この巻き取り装置による巻き取り位置の手前で前記ガラスフィルムリボンを幅方向に沿って切断する幅方向切断装置とを備えたガラスフィルムの製造装置において、
    前記成形装置による前記ガラスフィルムリボンの成形開始位置から、前記幅方向切断装置による前記ガラスフィルムリボンの切断位置までの鉛直方向距離が、前記ガラスフィルムリボンの幅方向寸法の5倍以上となるようにしたことを特徴とするガラスフィルムの製造装置。
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