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JP5722641B2 - 穿孔性害虫の防除方法 - Google Patents
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本発明は、穿孔性害虫の防除方法に関する。
従来、穿孔性害虫の駆除は、化学農薬を利用した薫蒸処理(例えば下記の特許文献1参照)や、生物農薬を利用した方法(例えば下記の特許文献2参照)で行われてきた。
特開2003−147096号公報 特開2005−330184号公報
しかしながら、前者の薫蒸処理による穿孔性害虫の駆除方法は、化学農薬を利用するため、環境・健康面に注意が必要であり、また、作業効率が悪かった。また、後者の生物農薬を利用した穿孔性害虫の駆除方法は、環境を考慮した薬剤ではあるが、その効果にばらつきが大きく、生物農薬の調達にコストがかかり、さらに、取扱い等に注意を払う必要があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、作業効率の向上を図るとともに、環境に負荷を与えることなく、穿孔性害虫の防除を実現することを目的とする。
本発明の穿孔性害虫の防除方法は、病原体の媒介昆虫である穿孔性害虫を被覆シート内に閉じ込めて死滅させる穿孔性害虫の防除方法であって、病原体の被害木に網目の大きさが3mm以上5mm以下である網目状の粘着シートを被せる工程と、前記粘着シートを被せた前記被害木の上部に枝条をかける工程と、前記粘着シートを被せた前記被害木を、前記枝条を介して、厚さが0.1mm以上で網目のない農業用POフィルムの被覆シートで覆工程とを有し、前記粘着シートと前記被覆シートとの間には、前記被覆シートが前記粘着シートに引っ付かないように空間が設けられている
本発明によれば、作業効率の向上を図るとともに、環境に負荷を与えることなく、穿孔性害虫の防除を実現することができる。
本発明の第1の実施形態を示し、病原体であるマツノザイセンチュウと、穿孔性害虫であるマツノマダラカミキリとの関係の一例を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る穿孔性害虫の防除方法の一例を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS12における処理の一例を示す写真である。 本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS13における処理の一例を示す写真である。 本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS14における処理の一例を示す写真である。 本発明の第2の実施形態に係る穿孔性害虫の防除方法の一例を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態を示し、図6のフローチャートにおける処理の一例を示す写真である。
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態では、マツ材線虫病の場合について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を示し、病原体であるマツノザイセンチュウと、穿孔性害虫であるマツノマダラカミキリとの関係の一例を示す模式図である。
まず、図1(a)では、マツノマダラカミキリの成虫20が、体長1mmほどのマツノザイセンチュウ10を体等に付けて、マツ30の中から羽化脱出をした様子を示している。
続いて、図1(b)では、マツノマダラカミキリの成虫20が、羽化後生殖細胞を発達させるために新鮮なマツ30の樹皮を摂食(「後食」という)し、一方、マツノマダラカミキリの成虫20の体等に付いていたマツノザイセンチュウ10が、マツノマダラカミキリの成虫20の後食痕から健全なマツ30の樹体内に侵入した様子を示している。
続いて、図1(c)では、マツノマダラカミキリの成虫20が、新鮮なマツ30の樹皮を摂食し、一方、マツノザイセンチュウ10が、マツ30の樹体内の全体に広がって、マツ30が衰弱した様子を示している。
続いて、図1(d)では、マツ30の樹体内の全体に広がったマツノザイセンチュウ10が大量増殖し、マツ30が枯死した様子を示している。マツノザイセンチュウ10が大量増殖すると、ついには、マツ30の樹体内での水分の移動が停止し、マツ30が枯れてしまう。また、図1(d)では、マツノマダラカミキリの幼虫21が、マツ30の樹体内に侵入した様子を示している。
上述したように、マツノマダラカミキリの成虫20は、羽化後生殖細胞を発達させるために新鮮なマツ30の樹皮を摂食する必要があり、そして、交尾、産卵をするが、健全なマツ30に産卵しても、卵が松ヤニにまかれて死滅してしまうので、健全なマツ30では繁殖できない。したがって、マツノマダラカミキリの繁殖は、衰弱木や枯死木でのみ可能となっている。マツノマダラカミキリの成虫20の後食痕から健全なマツ30の樹体内に侵入したマツノザイセンチュウ10により、マツ30の衰弱木や枯死木が大量に発生することは、マツノマダラカミキリにとって、繁殖場所の確保に繋がる。つまり、マツノザイセンチュウ10は、マツノマダラカミキリに新しい産卵、繁殖場所の提供をしていることがわかる。
続いて、図1(e)では、マツノマダラカミキリの幼虫21が、マツ30の樹体内部に侵入し、越冬を迎えた様子を示している。
続いて、図1(f)では、マツノマダラカミキリが蛹22になった様子を示している。また、図1(f)では、マツ30の樹体内の全体に広がったマツノザイセンチュウ10が、マツノマダラカミキリの蛹22に付着するために、マツノマダラカミキリの蛹室に集合した様子を示している。
ここで、マツノザイセンチュウ10は、健全木、衰弱木、枯死して間がないマツ30の樹体内で生息・繁殖できるが、マツ30の変質や腐朽が進行するのにつれて生息できなくなり、新しい健全なマツ30に移動する必要が出てくる。マツノザイセンチュウ10は、マツ30の根や幹・枝の癒合部を通してでも、新しい健全なマツ30へ移動できるが、それ自体有効な分散手段ではない。そこで、マツノザイセンチュウ10は、マツノマダラカミキリの体に付着や気門などに侵入して、羽化したマツノマダラカミキリの成虫20とともに、新しい健全なマツ30に運ばれ、マツノマダラカミキリの成虫20の後食痕から健全なマツ30の樹体内に侵入し、新たに繁殖活動を継続することになる。このように、マツノマダラカミキリは、マツノザイセンチュウ10の新しい寄主への移動を助ける媒介昆虫といえる。
図1(f)の過程を経ると、再び、図1(a)の過程に進み、再び、図1(a)〜図1(f)の過程のループを経る。
マツノザイセンチュウ10とマツノマダラカミキリは、マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウ10を新たなホスト(健全なマツ30)に運搬し、新たなホストに運搬されたマツノザイセンチュウ10は、ホストを枯らすことで、自分を新しい寄主に運んでくれるマツノマダラカミキリの繁殖場所を作り出している。1960年代後半から、この相利的な共生関係でマツ材線虫病は爆発的に広まり、現在に至っている。
本発明の第1の実施形態では、穿孔性害虫であるマツノマダラカミキリを防除することによって、マツノザイセンチュウ10の繁殖を防ぎ、健全なマツ30を守ろうとするものである。
次に、穿孔性害虫であるマツノマダラカミキリの防除方法について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る穿孔性害虫の防除方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS11は、マツのマツノザイセンチュウ10の被害木を伐倒し、適当な長さ(1m〜2m)に切断する工程である。マツノマダラカミキリの成虫20を防除する場合、当該成虫20が生息しているのは、樹幹の中程から上の部分が多いので、立木の状態で防除するのは、コストの面でも防除効果の面でも、実用的ではないため、マツの被害木を伐倒する。
続いて、ステップS12は、切断した被害木を処理する場所に運搬し、被害木を積み上げて、その上部に、網目状の粘着シートを被せる工程である。
図3は、本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS12における処理の一例を示す写真である。図3では、積み上げられた被害木群の上部に、網目状の粘着シート40が被せられている様子が示されている。
続いて、ステップS13は、粘着シート40を設置した被害木の上部に、後工程で用いる被覆シートと粘着シート40が引っ付かないようにするために、粘着シート40の上部に、ステップS11の過程などで出た枝条などをかけて空間を設ける工程である。ここで、枝条の量は、できるだけ少ない方が望ましい。
図4は、本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS13における処理の一例を示す写真である。図4では、後工程で用いる被覆シートと粘着シート40との間に空間を設けるために、粘着シート40の上部に、枝条50などが設置された様子が示されている。
続いて、ステップS14は、粘着シート40を被せられた被害木を被覆シートで覆って、マツノザイセンチュウ10(病原体)の媒介昆虫であるマツノマダラカミキリの成虫20(穿孔性害虫)を被覆シート内に閉じ込めて死滅させる工程である。
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、図2のステップS14における処理の一例を示す写真である。図5では、ステップS13の状態の被害木の上から、被覆シート60をかけて、その裾等を石や健全木などで抑え、マツノマダラカミキリの成虫20が脱出できないようにした様子が示されている。
次に、粘着シート40について説明する。
粘着シート40は、網目状からなるものであるが、その網目の大きさは、3mm以上5mm以下であることが望ましい。網目の大きさが3mm未満になると、結露した水滴が速やかに粘着シート40から流れず、粘着効果が消失してしまう懸念がある。一方、網目の大きさが5mmよりも大きくなると、マツノマダラカミキリの成虫20が網目を素通りしたり、粘着シート40に引っ付いてもすぐにとれてしまったりする可能性が高くなるという懸念がある。
また、粘着シート40のシート層の素材としては、特に限定されないが、例えば、紙、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニール、ナイロン等が挙げられる。特に、ポリプロピレンが好適である。これらシート層は、1種のみ用いても良いし、2種以上組み合わせて積層し用いても良い。また、粘着剤層の素材としては、特に限定されないが、天然ゴム系粘着剤、ポリブテン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ホットメルト系粘着剤等、害虫捕獲を目的とした通常公知の粘着剤が挙げられる。特に、ポリブテン系粘着剤が好適である。また、粘着剤層は、粘着シート40表面の片面、両面、或いは特定部位に塗布される。
次に、被覆シート60について説明する。
被覆シート60の厚みは、0.1mm以上であることが望ましい。厚みが0.1mm未満になると、マツノマダラカミキリの成虫20を強度的に閉じ込めておくことに懸念が生じるからである。
また、被覆シート60に課せられる要件としては、例えば、表面がつるつるとしていてマツノマダラカミキリの成虫20が当該表面をつかめないことや、水分が抜けること、比較的安価で且つ容易に入手できること、そして、野外での作業が比較的楽にできることなどが挙げられる。本発明者らの実験では、表面が比較的ザラザラとしたブルーシートでは、マツノマダラカミキリの成虫20により表面が破られる実験結果も得ている。
具体的に、被覆シート60の素材としては、例えば、ビニールハウスの覆いとしても使用されている、高機能農業用塗布型POフィルムが好適である。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態では、ナラ、カシ、シイ類の集団枯損(いわゆる、ブナ科樹木萎凋病)の場合について説明する。
この場合は、病原体が、ナラ、カシ、シイ類を枯死させる菌類(通称ナラ菌)であり、穿孔性害虫が、カシノナガキクイムシとなる。そして、病原体であるナラ菌と穿孔性害虫であるカシノナガキクイムシとの関係は、上述した第1の実施形態におけるマツノザイセンチュウ(病原体)とマツノマダラカミキリ(穿孔性害虫)との関係と同様である。
即ち、本発明の第2の実施形態では、穿孔性害虫であるカシノナガキクイムシを防除することによって、ナラ菌の繁殖を防ぎ、健全なナラ、カシ、シイ類を守ろうとするものである。具体的には、ナラ菌を運搬するカシノナガキクイムシを被害木から分散させず、新たな健全木に穿孔させないことで、新たな被害の発生を防ぐという考え方である。ナラ、カシ、シイ類の枯死は、カシノナガキクイムシがナラ菌を寄生植物の樹体内に穿孔する際に持ち込み、ナラ菌の侵入が樹木の水分通導阻害を引き起こすからである。
次に、穿孔性害虫であるカシノナガキクイムシの防除方法について説明する。
このカシノナガキクイムシは、樹幹の低い部分に主として穿孔する穿孔性害虫であるため、被害木を伐倒して防除する場合と、立木のまま防除する場合とが考えられる。
まず、被害木を伐倒して、穿孔性害虫であるカシノナガキクイムシの防除方法については、図2に示す第1の実施形態に係る穿孔性害虫の防除方法と同様の処理を経る。即ち、病原体に、マツノザイセンチュウに換えてナラ菌を適用し、穿孔性害虫に、マツノマダラカミキリに換えてカシノナガキクイムシを適用する。
次に、立木のまま、穿孔性害虫であるカシノナガキクイムシの防除方法について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る穿孔性害虫の防除方法の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS21は、被害木の樹幹上に、網目状の粘着シートを被せる(巻き付ける)工程である。ここで、巻き付ける範囲は、カシノナガキクイムシの穿入口がみられる(すぐに分かる)範囲とする。また、網目状の粘着シートは、第1の実施形態と同様のものを用いる。
続いて、ステップS22は、粘着シートを被せられた被害木を被覆シートで覆って、ナラ菌(病原体)の媒介昆虫であるカシノナガキクイムシの成虫(穿孔性害虫)を被覆シート内に閉じ込めて死滅させる工程である。ここで、被覆シートは、第2の実施形態と同様のものを用いる。
図7は、本発明の第2の実施形態を示し、図6のフローチャートにおける処理の一例を示す写真である。図7では、被害木の樹幹上に、網目状の粘着シート70を巻き付けて、その上から、被覆シート80をガムテープなどで固定して覆い、カシノナガキクイムシの成虫が脱出できないようにした様子が示されている。
また、上述した「立木の単木ごとに粘着シートを巻き付ける」→「その後、被覆シートで覆う」という工程時に、粘着シートの粘着面が作業者にくっつき、巻き付け作業が意外と困難になる可能性も考えられる。
そこで、被覆シートの例えば中央部等に粘着シートを貼り付けておくとともに、粘着剤の露出面には剥離シートを被せておき、立木を被覆シートで覆う際に、粘着剤の剥離シートを取って作業を行う形態も適用可能である。即ち、この形態の場合、ナラ菌(病原体)に感染した被害木を、網目状の粘着シートを貼り付けた被覆シートで覆って、病原体の媒介昆虫であるカシノナガキクイムシの成虫(穿孔性害虫)を被覆シート内に閉じ込めて死滅させることになる。
かかる構成の場合、立木を被覆シートで覆う際に、粘着シートの粘着面が作業者にくっついて巻き付け作業が困難になる懸念を回避することができる。
また、立木の状態でカシノナガキクイムシの防除を対象とする場合、被覆シートを用いずに、そのまま粘着シートを当該立木に巻き付けて使用する形態も適用可能である。
この場合の効果として、まず、予防的な効果としては、健全木へのカシノナガキクイムシの初アタック時や既に穿入したカシノナガキクイムシの成虫のフェロモンなどで集ってくる成虫の捕獲、誘引剤の併用による囮木誘殺が挙げられる。また、駆除的な効果としては、カシノナガキクイムシによる被害木から他の林内への飛翔抑制や駆除が挙げられる。
また、現在、根株から多くのカシノナガキクイムシが発生し、根株処理が問題になっている。そこで、根株を根元から切って立木の状態で、例えば、上述したマツノマダラカミキリの防除を対象とする場合と同様の方法、即ち、当該根株の部分に粘着シートを置き、枝条等で空間を設けて被覆シートで覆って、病原体の媒介昆虫であるカシノナガキクイムシの成虫(穿孔性害虫)を被覆シート内に閉じ込めて死滅させる形態も適用可能である。
なお、上述した本発明の各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
10 マツノザイセンチュウ、20 マツノマダラカミキリの成虫、21 マツノマダラカミキリの幼虫、22 マツノマダラカミキリの蛹、30 マツ、40 粘着シート、50 枝条、60 被覆シート、70 粘着シート、80 被覆シート

Claims (3)

  1. 病原体の媒介昆虫である穿孔性害虫を被覆シート内に閉じ込めて死滅させる穿孔性害虫の防除方法であって、
    病原体の被害木に網目の大きさが3mm以上5mm以下である網目状の粘着シートを被せる工程と、
    前記粘着シートを被せた前記被害木の上部に枝条をかける工程と、
    前記粘着シートを被せた前記被害木を、前記枝条を介して、厚さが0.1mm以上で網目のない農業用POフィルムの被覆シートで覆工程と
    を有し、
    前記粘着シートと前記被覆シートとの間には、前記被覆シートが前記粘着シートに引っ付かないように空間が設けられていることを特徴とする穿孔性害虫の防除方法。
  2. 前記病原体がマツノザイセンチュウであり、前記穿孔性害虫がマツノマダラカミキリであることを特徴とする請求項1に記載の穿孔性害虫の防除方法。
  3. 前記病原体がナラ菌であり、前記穿孔性害虫がカシノナガキクイムシであることを特徴とする請求項1記載の穿孔性害虫の防除方法。
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