以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、センサ保持器10に保持されたハイブリッドプローブユニット12を用いて、生体14の上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する血管20内の血流速度分布およびその血管20の血管径および壁厚を測定すると共に、カフ21を用いて血圧を測定する血管機能検査装置22の全体的な構成を表した図である。
ハイブリッドプローブユニット12は、血管20に関連する生体情報すなわち血管パラメータを検出するためのセンサとして機能するものであって、互いに平行な2列の第1短軸用超音波アレイ探触子Aおよび第2短軸用超音波アレイ探触子Bとそれらの長手方向中央部を連結する長軸用超音波アレイ探触子Cとを一平面上すなわち平坦な探触面27に有して成るH型の超音波プローブ24と、その超音波プローブ24を位置決めするための多軸駆動装置(位置決め装置)26とを備えている。それら第1短軸用超音波アレイ探触子A、第2短軸用超音波アレイ探触子B、および長軸用超音波アレイ探触子Cは、たとえば圧電セラミックスから構成された多数個の超音波振動子(超音波発振子)a1〜anが直線的に配列されることにより長手状にそれぞれ構成されている。
図2は、本実施例で用いられるx0y0z0軸直交座標軸を説明するためのものであり、第1短軸用超音波アレイ探触子Aの長手方向と平行でその第1短軸用超音波アレイ探触子Aの直下に位置し血管20又はその付近を通る方向をz0軸とし、長軸用超音波アレイ探触子Cの長手方向と平行でz0軸と直交する方向をx0軸とし、第1短軸用超音波アレイ探触子Aの長手方向と長軸用超音波アレイ探触子Cの長手方向との交点を通り且つ前記x0軸方向およびz0軸方向に直交する方向をy0軸とする。超音波プローブ24は、多軸駆動装置26によりz0軸方向に並進、および、y0軸およびz0軸まわりに回動させられるようになっている。
図3に示すように、たとえば上腕動脈である血管20は、内膜L1、中膜L2、外膜L3から成る3層構造を備えている。超音波の反射は音響インピーダンスの異なる部分で発生することから、実際は血管内腔の血液と内膜L1の境界面、および中膜L2と外膜L3との境界面が白く表示され、組織が白黒の班で表示される。また、画像中において、血液と内膜L1との境界面が表示され、その距離を血管径d1として計測する。
図1に戻って、血管機能検査装置22は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理するCPUを有する所謂マイクロコンピュータから構成された電子制御装置28と、モニタ画面表示装置(表示装置)30と、超音波駆動制御回路32と、3軸駆動モータ制御回路34とを備えている。上記電子制御装置28によって超音波駆動制御回路32から駆動信号が供給されてハイブリッドプローブユニット12の超音波プローブ24の第1短軸用超音波アレイ探触子A、第2短軸用超音波アレイ探触子B、および長軸用超音波アレイ探触子Cから超音波が放射され、その第1短軸用超音波アレイ探触子Aおよび第2短軸用超音波アレイ探触子Bおよび長軸用超音波アレイ探触子Cにより検知された超音波反射信号を受けて、超音波信号処理部においてその超音波反射信号の処理が行われることによって、皮膚18下の超音波画像が発生させられモニタ画面表示装置30に表示させることができる。なお、電子制御装置28では、超音波信号処理部において超音波反射信号を受けて、後述する血管径d1、血管20の壁厚t、血流速分布DS等を測定し、血管機能の状態を診断する際の後述する指標値を算出すると共に、上記指標値に基づいて血管機能の状態を診断する機能を有している。
ここで、モニタ画面表示装置30は、第1短軸用超音波アレイ探触子Aによる超音波画像と、第2短軸用超音波アレイ探触子Bによる超音波画像と、長軸用超音波アレイ探触子Cによる超音波画像とを、それぞれ所定の画像表示領域に表示することができる。さらには、それらの画像表示領域は、皮膚18からの深さ寸法を示す共通の縦軸を備えたものである。
また、モニタ画面表示装置30は、血流依存性血管拡張反応の評価に際して、血管阻血状態からの解除時後の血管径d1の経時的な変化量すなわち血管径d1の経時的な拡張量Rを時系列的に表示する。
また、上述のように血流依存性血管拡張反応の評価および血管20の超音波画像が生成されるに際して、超音波プローブ24は、血管20に対して所定の計測位置となるよう電子制御装置28によって3軸駆動モータ制御回路34から駆動信号を供給された多軸駆動装置26が駆動することにより位置決めさせられる。上記所定の計測位置とは、上記第1短軸用超音波アレイ探触子Aおよび第2短軸用超音波アレイ探触子Bが血管20に対して直交する位置、且つ、長軸用超音波アレイ探触子Cが血管20に対して平行となる位置である。
センサ保持器10は、三次元空間内の所望の位置すなわち所定の計測位置において生体14の上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する血管20を変形させない程度に軽く接触させる状態でハイブリッドプローブユニット12を所望の姿勢で保持する。上記ハイブリッドプローブユニット12の超音波プローブ24の端面と皮膚18との間には、通常、超音波の減衰、境界面における反射や散乱を抑制して超音波画像を明瞭とするためのよく知られたゼリー等のカップリング剤が介在させられる。このゼリーは、たとえば寒天等の高い割合で水を含むゲル状の吸水性高分子であって、空気よりは固有インピーダンス(=音速×密度)が十分に高く大きく超音波送受信信号の減衰を抑制するものである。また、そのゼリーに換えて、水を樹脂製袋内に閉じ込めた水袋、オリーブ油、グリセリン等が用いられ得る。
上記センサ保持器10は、たとえば磁気的吸着力により机、台座等に固定されるマグネット台36と、前記ハイブリッドプローブユニット12が固定されるユニット固定具38と、マグネット台36およびユニット固定具38に一端が固定され且つ球状に形成された先端部42を備えた連結部材44、45と、それら連結部材44、45を介して、マグネット台36とユニット固定具38とを相対移動可能に連結し支持する自在アーム40とを備えている。上記自在アーム40は、相互に回動可能に連結された2つのリンク46、47と、そのリンク46、47の一端にて前記各先端部42に所定の抵抗が付勢されつつその先端部42に対して回曲可能に嵌め入れられた嵌合穴48をそれぞれ有する回曲関節部50、51と、各リンク46、47の他端にてその他端を相互に相対回動可能に連結し且つその連結箇所を貫設するねじ穴に螺合されたおねじ付き固定ノブ52が締め付けられることで得られる締着力により相対回動不能にされる回動関節部54とを、有する。
多軸駆動装置26は、z0軸回動アクチュエータにより超音波プローブ24のz0軸まわりの回動位置を位置決めするためにユニット固定具38に固定されるz0軸回動(ヨーイング)機構と、z0軸回動アクチュエータによって超音波プローブ24のz0軸方向の並進位置を位置決めするためのz0軸並進機構と、y0軸アクチュエータにより超音波プローブ24のy0軸まわりの回動位置を位置決めするためのy0軸回動機構とから構成されている。
図1において、超音波駆動制御回路32は、電子制御装置28からの指令に従って、たとえば上記第1短軸用超音波アレイ探触子Aを構成する一列に配列された多数個の超音波振動子a1乃至anのうち、その端の超音波振動子a1ら、一定数の超音波振動子群たとえば15個のa1乃至a15毎に所定の位相差を付与しつつ10MHz程度の周波数で同時駆動するビームフォーミング駆動することにより超音波振動子の配列方向において収束性の超音波ビームを血管20に向かって順次放射させ、超音波振動子を1個ずつずらしながらその超音波ビームをスキャン(走査)させたときの放射毎の反射波を受信して電子制御装置28へ入力させる。
電子制御装置28は、上記反射波に基づいて画像を合成し、皮膚18下における血管20の横断面画像(短軸画像)、あるいは縦断面画像(長軸画像)を生成させて、モニタ画面表示装置(画像表示装置)30にそれぞれ表示させる。また、その画像から、血管20の外膜L3の直径である外膜径d2或いは内皮111の直径である血管径(内皮径)d1などが測定される。また、血管内皮機能を評価するために、カフ21によって阻血を実施し、阻血解除後の血管20の血管径d1の拡張量(変化量)R(=d1−da)(但し、daは安静時の血管径d1)が連続的に測定される。なお、阻血は被験者が安静に保たれた状態から所定時間(例えば5分程度)実施され、阻血解除後に所定時間(例えば120秒程度)の間の反応性充血時の拡張血管における血管径d1が測定される。
図4は、阻血解除後の血管径(内皮径)d1の変化を例示したタイムチャートである。図4では、t1時点が阻血解除時を表しており、t2時点から血管径d1が拡張し始め、t3時点で血管径d1がその最大値dmaxに達していることが示されている。従って、電子制御装置28が算出する血管径d1の拡張量Rは、t3時点で最大になる。
電子制御装置28は、上記反射波に基づいて画像を合成し、皮膚18下における血管20の横断面画像(短軸画像)、あるいは縦断面画像(長軸画像)を生成させて、モニタ画面表示装置(画像表示装置)30にそれぞれ表示させることができる。また、その画像から、血管20の外膜L3の直径である外膜径d2および内皮111の直径である内皮径(血管径)d1等を測定し、上記より、血管20の血管壁の厚さである壁厚t(=(d2−d1)/2)を算出させる。
図5は、血管機能検査装置22に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5に示すように、超音波駆動制御回路32は、エコー受信部としてのエコー受信部72を備えており、電子制御装置28は、血管径d1を測定するための血管径測定部80と、血管20の壁厚tを測定するための血管壁厚測定部84と、血管阻血解除後の血管径d1の変化量(拡張量)を連続的に測定する血管拡張量測定部82と、後述する血管機能を診断する指標値を算出する血管機能指標値算出部86と、血管機能指標値算出部86によって算出される指標値に基づいて血管機能の状態を診断する血管機能診断部88と、表示制御部としての表示制御部90と、血管20の阻血を制御するカフ圧制御部94(血圧測定部94)とを備えている。
エコー受信部72は、超音波プローブ24からの超音波ビームの反射波を受信して電子制御装置28に供給する。例えば、エコー受信部72は、第1短軸用超音波アレイ探触子Aからの超音波ビームの反射波を受信して血管径測定部80や血管壁厚測定部84へ入力させる。
血管径測定部80は、エコー受信部72から供給される第1短軸用超音波アレイ探触子Aからの超音波ビームの反射波に基づいて血管画像を合成し、合成された血管画像から、図3に示す皮膚18下における血管20の外膜径d2および内皮111の血管径(内皮径)d1を測定する。
血管径測定部80は、血管20をカフ21によって所定時間の間(例えば5分程度)だけ阻血させ、その阻血解除後において図4に示されるように変化する拡張血管における血管径d1を連続的に測定する。そして、血管拡張量測定部82は、上記阻血解除時からの血管径d1の測定により、その阻血解除後の血管20の血管径変化量、具体的には前記血管径d1の拡張量R(=d1−da)を測定する(但し、daは安静時の血管径d1)。なお、血管20の阻血は、カフ圧制御部94によって制御され、圧力制御弁29を用いてカフ21の圧力が制御される。具体的には、阻血時においてカフ21内の空気圧を血管20の血流を停止させる程度の圧力に制御すると共に、阻血解除時にはカフ21の空気が瞬時に排出されるように圧力制御弁29が制御される。
血管壁厚測定部84は、エコー受信部72から供給される第1短軸用超音波アレイ探触子Aからの超音波ビームの反射波に基づいて血管画像を合成し、合成された血管画像に基づいて測定される図3に示す皮膚18下における血管20の外膜径d2および内皮111の血管径(内皮径)d1に基づいて、血管20の壁厚tを測定する。ここで、血管20の壁厚tは、図3に示すように外膜径d2と内皮径d1との寸法差t(=(d2−d1)/2)で算出される。なお、血管壁厚測定部84は、血管径測定部80と同様に連続的に壁厚tを測定することもでき、所定時間における壁厚tを測定することもできる。
血管機能指標値算出部86は、例えば血管径測定部80により測定された阻血解除後における血管20の血管径d1の拡張量Rを血管壁厚測定部84によって測定された壁厚tで割った値X1(=拡張量R/壁厚t)を血管機能を診断する機能指標値X1として出力する。なお、拡張量Rは、例えば阻血解除後における拡張量Rの最大値Rmax(=dmax−da)を代表値とし、壁厚tは、例えば血管20の拡張量Rが最大値Rmaxである時点での壁厚tを代表値とし、上記各代表値に基づいて機能指標値X1が算出される。
図6は、血管20の拡張量Rを壁厚tで割った機能指標値X1と、公知であるFMD(=拡張量R/安静時の血管径da×100%)との関係を示している。図6に示されるように、機能指標値X1(=拡張量R/壁厚t)とFMDとは相関関係にあることがわかる。なお、FMDを実施すると、血管径d1が膨らむのは一酸化窒素NOの産生による平滑筋の弛緩であるが、血管20の内皮細胞で産生された一酸化酸素NOは、内膜内を拡散して平滑筋に到達することから、壁厚tが拡散時間を決める要因の1つと考えられている。また、一酸化窒素NOに応答する平滑筋の量を決定する因子でもあることから、機能指標値X1とFMDとは所定の相関関係があると考えられる。したがって、機能指標値X1は、前記公知であるFMDの代替指標値としても機能することとなる。
また、血管機能指標値算出部86は、壁厚tを血管径d1で割った値X2を血管機能を評価する器質指標値X2(壁厚t/血管径d1)として出力する。なお、血管径d1は、例えば阻血解除後において拡張量Rが最大値Rmaxであるときの血管径d1すなわち最大血管径dmaxを代表値とし、壁厚tも同様に、例えば血管20の拡張量Rが最大値Rmaxである時点での壁厚tを代表値として、上記各代表値に基づいて器質指標値X2が算出される。図7は、血管20の壁厚tと血管径d1との関係を示す図である。図7に示されるように、壁厚tと血管径d1とは略比例することが知られている。従って、血管径d1と壁厚tとの関係は、正常状態であれば図7に示すような比例関係となるが、例えば高血圧や腎障害などでは血管20の肥厚が進み、上記関係から逸脱することとなる。従って、血管機能に異常が生じると、壁厚t/血管径d1の関係が正常範囲から外れてくると予想される。なお、血管径d1は男性の方が女性よりも大きい傾向があるが、器質指標値X2(壁厚t/血管径d1)では、この性差をなくすことができる。
そこで、上述した拡張量R/壁厚tで示される機能指標値X1、および壁厚t/血管径d1で示される器質指標値X2を、それぞれ機能変化指標値、器質変化指標値とし、上記指標値を2軸でデータ整理すると、図8に示されるように、器質指標値X2(=壁厚t/血管径d1)が大きくなるに従って、機能指標値X1(=拡張量R/壁厚t)が小さくなる状態が描かれる。上記のように機能指標値X1が小さい値となるのは、血管径d1の増加量に比べて、壁厚tの増加量の方が大きいためである。なお、図8の縦軸を公知であるFMD(=拡張量R/安静時の血管径da×100%)に変更すると、図9のようになる。図9に示すように、図8のグラフに比べても不鮮明なグラフとなる。例えば、図9に示すように、(壁厚t/血管径d1)が大きいときに、(拡張量R/血管径d1)が大きい値となっている。このことからも、血管20の機能変化、器質変化の状態を表すグラフとして、図8のような機能指標値X1(拡張量R/壁厚t)と器質指標値X2(壁厚t/血管径d1)との関係図は、上述したような傾向が見られることからも血管機能の状態を診断する有効な指標値となる。
また、血管機能指標値算出部86は、上記機能変化(拡張量R/壁厚t)と器質変化(壁厚t/血管径d1)との関係から、両者をあわせた機能・器質指標値として、機能指標値X1を器質指標値X2で割った機能・器質指標値X3[=指標値X1(拡張量R/壁厚t)/指標値X2(壁厚t/血管径d1)]を算出する。上記機能・器質指標値X3は、器質変化に対する機能変化であり、(拡張量R/壁厚t)の低下は機能・器質指標値X3の低下に繋がる。さらに器質変化(壁厚t/血管径d1)が加味されることで、機能指標値X1に比べても機能・器質指標値X3はさらに低下することとなる。なお、機能・器質指標値X3において、分母を逆数の(血管径d1/壁厚t)とすると、FMD(拡張量R/血管径d1×100%)と一致する。この場合、図9に示したように、壁肥厚が起こると、FMDが改善される方向に動くため、データにバラツキの要因を含むこととなる。
図10〜図12は、上記各指標値を被験者の年齢で整理したものである。ここで、図10が、機能・器質指標値X3[=(拡張量R/壁厚t)/(壁厚t/血管径d1)]と年齢との関係を示しており、図11がFMD(拡張量R/血管径d1×100%)と年齢との関係を示しており、図12が機能指標値X1(拡張量R/壁厚t)と年齢との関係を示している。なお、上記各図の各データは、同じ測定データに基づいて各指標値を算出してグラフ化しているものである。また、図10〜図12のデータおいて、内部が塗りつぶされているものは健常者から測定されたデータであり、内部が塗りつぶされていないものは、心血管疾患、高血圧、糖尿病、高脂血症のいずれか或いは合併を持つ被験者から測定されたデータである。図10〜図12のいずれもからわかるように、年齢の増加に伴って、指標値の低下(血管機能の低下)が見られる。
図11に示すFMDと年齢との関係を見ると、上記何れかの疾病を有する被験者(内部が塗りつぶされていない三角で示す)は、比較的FMDが低い値に集中するものの、例えば被験者A、B、Cにあっては、疾病を有する他の被験者と乖離した状態となっている。すなわち健常者(内部が塗りつぶされている三角で示す)との区別が付きにくい状態となっている。これに対して、図11のグラフにおいて、縦軸を機能指標値X1(拡張量R/壁厚t)に変更した場合、図12に示すようになる。図12では、図11に比べても上記被験者A、B、Cと他の疾病を有する被験者との乖離が小さくなっている。さらに、図10で示す機能・器質指標値X3と年齢との関係で見ると、被験者A、B、Cは、図12に比べてもさらに疾病を有する他の被験者(内部が塗りつぶされていない四角で示す)との乖離がなくなっている。特に、被験者A、Bにあっては、他の疾病を有する被験者との乖離状態が大きく改善され、被験者A、Bは疾病を有する被験者群と変わらなくなる。これより、機能指標値X1および機能・器質指標値X3によってデータを整理することで、従来のFMDと比べてもデータのバラツキが小さくなるので、健常者と疾病を有する被験者との区別がし易くなるなど、血管機能の状態が従来に比べても評価し易くなる。
図5に戻り、血管機能診断部88は、例えば図8の関係や図10並びに図12の関係に基づいて血管機能の状態を診断する。例えば図8の関係によれば、(壁厚t/血管径d1)が大きくなるに従って、(拡張量R/壁厚t)は小さくなる傾向にあるので、実験的に求められる予め設定される上記傾向の範囲内にあるか否か、さらには上記範囲内から外れている場合には、その範囲からの外れ方や範囲からの乖離量等に基づいて血管機能の状態が診断される。また、図10より、例えば実験等によって予め設定されている年齢に対する基準値よりも機能・器質指標値X3が低いか否か等など、機能・器質指標値X3に基づいて血管機能の状態が診断される。
表示制御部90は、図8に示す機能指標値X1と器質指標値X2との関係を示す2次元グラフをモニタ画面表示装置30に表示させる。また、予め実験的に設定されている適正範囲も同時に表示されることで、血管機能の状態がさらに診断しやすくなる。このとき、例えば記憶部92に前回測定時のデータを予め記憶させておき、前回測定時の関係を併せて表示させることで、前回測定時からの血管機能の変化を確認することが可能となる。これより、例えば血管機能の回復度合いや現在の治療方法が正しいか否か等を視覚的に確認することができる。
図13は、血管機能検査装置22(電子制御装置28)の制御作動の要部、すなわち血管阻血解除後の拡張量Rに基づいて機能指標値X1、器質指標値X2並びに機能・器質指標値X3を算出し、上記各指標値に基づいて血管機能を診断する制御作動を説明するためのフローチャートである。
まず、血管径測定部80に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、被験者安静時での血管径daが阻血前に予め測定される。次いで、カフ圧制御部94に対応するSA2では、安静状態からカフ圧を増加させることで、血管20の阻血が所定時間だけ実施される。なお、血管20の阻血は例えば5分程度実施される。そして、血管20が阻血された状態で所定時間経過すると、カフ圧制御部94に対応するSA3において、カフ21内の空気が排出されることで、血管20の阻血が解除される。血管径測定部80および血管壁厚測定部84に対応するSA4では、阻血解除と同時に血管径d1および壁厚tの測定が連続的に実施される。なお、上記測定は、例えば予め設定されている所定時間(例えば60秒程度)だけ実施される。そして、血管機能指標値算出部86に対応するSA5において、所定時間測定された血管径d1のうちの最大値dmaxと安静時の血管径daとの差で算出される血管拡張量の最大値Rmax(=dmax−da)が算出される。血管機能指標値算出部86に対応するSA6では、SA5で算出された血管拡張量の最大値Rmaxに基づいて機能指標値X1(=最大値Rmax/壁厚t)が算出される。さらに、器質指標値X2(=壁厚t/血管径d1)が算出され、算出された機能指標値X1および器質指標値X2に基づいて、機能・器質指標値X3(=X1/X2)が算出される。なお、このときの壁厚tの代表値として、例えば血管拡張量Rの最大値Rmaxが算出されたときに測定される壁厚tが使用される。血管機能診断部88に相当するSA7では、算出された各指標値(X1〜X3)に基づいて予め設定されている適正範囲との比較等から血管機能が診断される。このとき、表示制御部90に対応するSA8において、機能指標値X1と器質指標値X2との関係が2次元グラフでモニタ画面表示装置30に表示されることで、血管機能の状態が視覚的に確認可能となる。
上述のように、本実施例によれば、血管の阻血解除後において、血管径測定部80によって連続的に測定される血管径d1の拡張量Rを血管壁厚測定部84によって測定される壁厚tで割った値を(拡張量R/壁厚t)、血管機能を診断する機能指標値X1とするため、血管機能の状態を従来にも増して精度良く診断することができる。例えば、従来では阻血解除後の血管の拡張量Rを血管径d1で割った指標値(FMD:拡張量R/血管径d1×100%)に基づいて血管機能の状態が診断されていたが、従来の指標値(FMD)に比べて本発明の機能指標値は、血管機能の変化に対する変化が大きいため、血管機能の状態を診断するのにさらに好適となる。なお、上記は血管径d1の変化量に比べて壁厚tの変化量の方がさらに大きいので、血管機能の変化が反映されやすいためである。
また、本実施例によれば、血管機能指標値算出部86は、壁厚tを血管径d1で割った器質指標値X2をさらに算出し、機能指標値X1と器質指標値X2との関係に基づいて血管機能が診断されるものである。このようにすれば、器質指標値X2が大きくなるに従って、機能指標値X1が小さくなる傾向があるため、上記傾向に基づいて血管機能の状態を精度良く診断することができる。例えば、測定結果が上記傾向から外れるなどした場合、その外れ方や外れ度合い等から血管機能の異常が診断される。
また、本実施例によれば、血管機能指標値算出部86は、機能指標値X1を器質指標値X2で割った値をさらに機能・器質指標値X3として算出し、その機能・器質指標値X3に基づいて血管機能が診断されるものである。このようにすれば、上記機能・器質指標値X3が算出されることで、データのバラツキがさらに抑えられて血管機能の状態をさらに精度良く診断することができる。
つぎに、本発明の他の実施例である血管機能検査装置95を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図1において前記電子制御装置28は、上述の機能に加えて、長軸用超音波アレイ探触子Cから経皮的に生体14内の血管20に向けて超音波を入射させて、その超音波により非侵襲的に血流速度分布DSを測定する。そして、その血流速度分布DSから血管20内の血液の粘度分布DVおよびずり速度分布DSRを算出し、更に粘度分布DVおよびずり速度分布DSRに基づいてずり応力分布DSSを算出する。
また、電子制御装置28は、上腕に巻き掛けられているカフ21を用いてオシロメトリック法により血圧値を測定する。すなわち、たとえば、圧力センサ23により検出されるカフ21の圧力を、ポンプ25および圧力制御弁29を用いて、先ず被測定者の収縮期血圧(最高血圧値) よりも高い止血圧まで昇圧させた後に所定の降圧速度で徐々に降圧させ、このカフ21による圧力降下過程において、心拍に同期して発生する圧力振動波すなわち脈波を抽出し、その脈波振幅を結ぶ包絡線の変曲点すなわち脈波振幅の差分の最大値に対応するカフ21の圧力を最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPとして決定する。また、脈波振幅の最大値を示す圧力を平均血圧値MBPとして決定する。
図14は、本発明の他の実施例である血管機能検査装置95に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。なお、機械的な構成は前述の実施例と同様であるため、その説明を省略する。また、血管径測定部80および血管壁厚測定部84においてもその機能は前述の実施例と基本的には同様であるため、その説明を省略する。
エコー受信部72は、超音波プローブ24からの超音波ビームの反射波を受信して電子制御装置28に供給する。例えば、エコー受信部72は、第1短軸用超音波アレイ探触子Aからの超音波ビームの反射波を受信して血管径測定部80や血管壁厚測定部84へ入力させる。また、エコー受信部72は、長軸用超音波アレイ探触子Cからの超音波ビームの反射波を受信して血流速度分布測定部100へ入力させる。
血流速度分布測定部100は、超音波プローブ24の長軸用超音波アレイ探触子Cで受信された超音波散乱波(反射波)を用いて断層像を作成して血管20位置を同定すると同時に、2次元断層面内の2次元速度ベクトル分布を求める。本実施例では、その求められる速度ベクトル分布は2次元でも3次元でも構わないが、簡潔な処理を行うため、2次元速度ベクトル分布を求めることとし、血流速度分布測定部100は、その2次元速度ベクトル分布を血流速度分布DSとする。ある瞬間の血流速度分布DSを例示すれば、その血流速度分布DSは、図15のイメージ図に示す実線L01のようになる。ここで、その2次元速度ベクトル分布または3次元速度ベクトル分布は、例えば、ある時間間隔をおいて時間的に連続する超音波断層像または3次元ボリューム像を2枚用いて、血球の移動量を相関法により求め、その移動量を2枚の像の時間間隔で除することにより求めることができる。また、別の例として、血流速度分布測定部100は、よく知られたカラードプラ法と同様の方法で2次元速度ベクトルの1速度成分である超音波放射方向の速度成分を求め、それに直交するもう一方の速度成分を、予め記憶している下記式(1)で表される流体力学における非圧縮条件を用いて求めて、完全な2次元速度ベクトル分布を求めることもできる。このようにして、血流速度分布測定部100は、経皮的に生体14内の血管20に向けて超音波を入射させて非侵襲的に血流速度分布DSを測定する。確認的に述べるが、血流速度分布測定部100が血流速度分布DSを測定する際には、それに先立って、超音波プローブ24は血管20に対して前記所定の計測位置となるよう位置決めさせられる。なお、図16に示すように、下記式(1)の「x」は超音波ビーム軸に直交する方向の位置を表し、「y」は超音波ビーム軸方向(超音波放射方向)の位置を表す。また、「u」はx方向の速度成分を表し、「v」は上記超音波ビーム軸方向の速度成分すなわちy方向の速度成分を表す。
血流速度分布測定手段100は、血流速度分布DSの測定を、所望のある時点で瞬間的に行うことができ、また、時間経過に従って連続的に行うこともできる。
血液粘度分布算出部102は、下記式(2)及び式(3)で表される予め記憶された2次元のナビエ-ストークス方程式から、血流速度分布測定部100により測定された血流速度分布DSに基づいて計測対象の血管20内の血液の粘度分布(血液粘度分布)DVを算出する。ある瞬間の血液粘度分布DVを例示すれば、血液の持つ非ニュートン特性のために、その血液粘度分布DVは、図17のイメージ図に示す実線L02のようになる。また、血液粘度分布算出部102は、血液の粘度μを定量的に把握できるようにするため、血液粘度分布DVから血液の粘度μの平均値を算出する。なお、前記血流速度分布DSが3次元速度ベクトル分布である場合には、ナビエ-ストークス方程式は3次元のものが粘度分布DVの算出に用いられる。
ここで、上記式(2)と式(3)のx,y,u,vは前記式(1)のものと同じであり、「t」は時間、「p」は圧力、「ρ」は血液の密度、「ν」は動粘度(「動粘性率」ともいう)を表している。また、動粘度νは、血液の粘度(「粘性率」ともいう)を「μ」とすれば、上記式(4)で算出される。また、動粘度νは、上記式(2)及び上記式(3)からそれらの式に含まれる圧力「p」の項を微分演算により消去して導出された上記式(5)によって得ることができる。その式(5)の「ξ」は渦度で、上記式(6)で算出され、その式(6)から判るように速度ベクトル成分のみから定義される。
血液粘度分布算出部102は、血流速度分布DSに基づいて血液の粘度分布DVを算出する際には、血液が非圧縮性であると仮定し、図18に示すように血管20内の空間を仮想的に細分化された複数のサブ領域130に分割し、その1つのサブ領域130内では血液の密度ρおよび粘度μが一定であるとして、そのサブ領域130毎に前記ナビエ-ストークス方程式を適用する。そして、サブ領域130毎に算出した血液粘度μを統合することにより、血液粘度分布DVを算出する。
ずり速度分布算出部104は、血流速度分布測定部100により測定された血流速度分布DSに基づいて計測対象の血管20内の血液のずり速度分布(血液ずり速度分布)DSRを算出する。具体的には、ずり速度分布算出部104は、血流速度分布DS(2次元速度ベクトル分布)に基づいて2次元のひずみ速度テンソルを求め、前記2次元速度ベクトルの方向を接線方向とする流線に垂直な方向を血管20の法線方向として近似し、このように近似した血管20の法線方向を基軸として、前記2次元のひずみ速度成分を回転座標変換すること(図16の矢印AR1参照)により得られるせん断成分e
xy0をずり速度SRとして抽出して、血液ずり速度分布DSRを算出する。ある瞬間の血液ずり速度分布DSRを例示すれば、その血液ずり速度分布DSRは、図19のイメージ図に示す実線L03のようになる。そして、ずり速度分布算出部104は、血液のずり速度(血液ずり速度)SRを定量的に把握できるようにするため、血液ずり速度分布DSRから血液ずり速度SRの平均値を算出する。なお、上記せん断成分e
xy0は下記式(7)で表され、下記式(7)はずり速度分布算出部104に予め記憶されている。また、前記血流速度分布DSが3次元速度ベクトル分布である場合には、前記ひずみ速度テンソルは3次元のものが血液ずり速度分布DSRの算出に用いられる。また、下記式(7)のx
0,y
0,u
0,v
0は前記式(1)におけるx,y,u,vを回転座標変換したものであり(図16の矢印AR1参照)、図2及び図16に示すように、y
0軸は血管壁の法線方向に一致し、x
0軸は血管20の長手(長軸)方向に一致する。そして、y軸は超音波ビーム軸方向に一致し、x軸は超音波ビーム軸の直交方向に一致する。また、u
0はx
0方向の速度成分を表し、v
0はy
0方向の速度成分を表す。
ずり速度分布算出部104は、血流速度分布DSに基づいて血液ずり速度分布DSRを算出する際には、血液粘度分布DVの算出の場合と同様に、図18に示すように血管20内の空間を仮想的に細分化された複数のサブ領域130に分割し、そのサブ領域130毎に前記式(7)を適用し、サブ領域130毎の血液ずり速度SRとしてのせん断成分exyを算出する。そして、サブ領域130毎に算出した血液ずり速度SR(exy)を統合することにより、血液ずり速度分布DSRを算出する。
ずり応力分布演算部106は、下記式(8)で表されるニュートン粘性法則式を予め記憶しており、そのニュートン粘性法則式から、前記血液粘度分布DVと血液ずり速度分布DSRとに基づいて血液のずり応力分布(血液ずり応力分布)DSSを算出する。その血液ずり応力分布DSSの算出に際し、上記血液粘度分布DVに替えて前記血液粘度μの平均値が用いられても差し支えない。ある瞬間の血液ずり応力分布DSSを例示すれば、その血液ずり応力分布DSSは、図20のイメージ図に示す実線L04のようになる。そして、ずり応力分布演算部106は、血液のずり応力分布(血液ずり応力)DSSを定量的に把握できるようにするため、血液ずり応力分布DSSから各測定時点での血液ずり応力の平均値SS(以下、ずり応力SSと記載する)を算出する。
さらに、ずり応力分布演算部106は、各測定時点でのずり応力SSに基づいて血管機能を診断する際に代表値とされるずり応力SS1を算出する。ずり応力SSの代表値SS1(ずり応力SS1)は、ずり応力SSの変化に伴って発生する後述する壁応力WSの変化に至るまでの応答遅れ時間に対応する予め設定された時間を遡った時点を基準時点として算出される。すなわち、壁応力算出時から予め設定された応答遅れ時間を遡った時点を基準時点としてずり応力SS1が算出される。上記は、FMDにおいて阻血解放直後、大きな血流増大が起こり、徐々に減少するが、その際に血管の内皮の反応は血流変化に対して瞬時に対応するが、その際に一酸化窒素NOが産生され、内膜に拡散して平滑筋に到達し、その平滑筋が弛緩されるまでには遅れが生じることが確認されているため、上記遅れを考慮した応答遅れ時間を設定したものである。すなわち、基準時点において算出されるずり応力SS1は、その基準時点より応答遅れ時間経過後に算出される壁応力WSと相関関係にあり、上記ずり応力SS1と壁応力WSとが代表値とされることで、血管機能の診断が正確となる。なお、上記応答遅れ時間は、実験的には、例えば20乃至30秒程度、或いは20心拍乃至30心拍に相当する時間程度とされる。
また、上記基準時点において算出される代表値とされるずり応力SS1は、その基準時点までの所定区間内における測定時点毎のずり応力SSの積分値、基準時点以前の所定区間内における1心拍あたりの平均ずり応力値、基準時点までの所定区間内における脈拍に同期した瞬時値の積分値または平均値のいずれかとされる。すなわち、上記基準時点よりもさらに遡った所定区間内で測定時点毎に算出されるずり応力SSに基づいて代表値とされるずり応力SS1が算出される。なお、上記所定区間は、例えば前記基準時点から遡って20心拍程度の期間すなわち基準時点を終点として20心拍程度の期間に設定される。上記のように、代表値となるずり応力SS1を、ある時点(具体的には基準時点)での瞬時値とせず、所定区間内に逐次算出されるずり応力SSに基づいて算出することとしたのは、定常的に血管壁にかかる刺激を考慮したずり応力SSが、血管機能を診断する際に好適であるためである。
ずり応力分布演算部106は、前記血液粘度分布DVと血液ずり速度分布DSRとに基づいて血液ずり応力分布DSSを算出する際には、血液粘度分布DVや血液ずり速度分布DSRの算出の場合と同様に、図18に示すように血管20内の空間を仮想的に細分化された複数のサブ領域130に分割し、前記ニュートン粘性法則式に従い、そのサブ領域130毎に得られた血液粘度μと血液ずり速度との乗算により、サブ領域130毎に血液ずり応力を算出する。そして、サブ領域130毎に算出した血液ずり応力を統合することにより、血液ずり応力分布DSSを算出する。なお、前述の図15、図17、図19、および図20は何れもイメージ図であって実際の分布図とは必ずしも一致しない。また、図19および図20は、それらの図の座標系において、血流速度分布DSの差分結果である血液ずり速度分布DSRの絶対値に基づき表されている。
血圧測定部95は、上腕に巻き掛けられているカフ21の空気圧を制御することによりオシロメトリック法によって血圧値を測定する。血圧測定部95は、カフ21の圧迫圧力の緩やかな変化過程においてカフ21の圧力振動として得られた脈波の大きさの変化に基づいてよく知られたオシロメトリック法により患者の最高血圧値SBP、最低血圧値DBPをそれぞれ測定する。上記オシロメトリック法では、たとえばカフ21の圧力降下過程において、心拍に同期して発生する圧力振動波すなわち脈波を抽出し、その脈波振幅を結ぶ包絡線の変曲点すなわち脈波振幅の差分の最大値に対応するカフ21の圧力を最高血圧値SBPおよび最低血圧値DBPとして決定する。また、その脈波振幅が最大値となったときのカフ21の圧力を平均血圧値MBPとして決定する。
壁応力演算部122は、下記式(9)で表される予め定められる壁応力の関係式を記憶しており、その壁応力の関係式から血管径測定部80で測定された血管径(内皮径)d1、血管壁厚測定部84で算出された血管20の壁厚t、および血圧測定部95で測定された血圧値に基づいて、血管20の血管壁に作用する壁応力WSを算出する。ここで、壁応力WSの算出に際して、本実施例では最低血圧値DBPを代表値とし、最低血圧値DBP時点すなわち拡張期末期時点で測定される血管径d1および壁厚tに基づいて壁応力WSが算出される。なお、上記拡張期末期時点では血管径d1が最小値となることから、所定の期間の間に前記血管径測定部80によって連続的に測定される血管径d1が最小値となった時点が拡張期末期時点となる。
血管機能診断部124は、壁応力算出部98によって算出された壁応力WSおよびずり応力算出部96によって算出されたずり応力の代表値SS1(ずり応力SS1)に基づいて、壁応力WSおよびずり応力SS1の少なくともいずれか一方が、予めそれぞれに設定されている適正範囲を外れたか否かを判定する。ずり応力および壁応力は、それぞれ血管機能を診断するうえで有効な指標値とされており、互いに密接な関係となっている。例えば、ずり応力SS1は血管20内の流量の増減やヘマトクリットや蛋白量によって変化し、ずり応力SS1が大きくなってくると、血管細胞から産生される一酸化窒素NOが増えて血管20が拡張し、ずり応力SS1が低減するように補償機能が機能する。一方、血管20が拡張すると式(9)からもわかるように、壁応力WSが増加する。そして、壁応力WSを緩和するために、血管20の壁厚tが増加し、ずり応力SSおよび壁横領WSが平衡したところで、両者の数値は適正範囲内になるが、過渡的には、壁応力が大きくなって、適正範囲を逸脱する状態となる。また、酸化ストレスなどでNOが不活性化される状態となると、血管20の拡張が抑制されるので、ずり応力SS1が高いままの状態となる。この場合、末梢血管抵抗も高く、血圧上昇が起こることで、血管20が拡張される。この状態でも、壁応力SS1は高くなるので、適応反応(補償機能)として壁厚tが厚くなる。このときの過渡的な状態では、ずり応力SS1、壁応力WS共に高い状態となる。なお、上記過渡的な変化は非常に遅いものであり、例えば数週間或いは数ヶ月程度のスパンで平衡状態となる。したがって、ずり応力SS1および壁応力WSの変化を逐次算出し、その算出結果に基づいて適正範囲からの逸脱幅などの逸脱状態や逸脱状態からの回復時間(日数)などの回復状態等を監視し、判断基準値と比較することで、血管機能の状態が評価され、例えば、動脈硬化の早期発見の手段としても利用できる。
血管機能診断部124は、算出された壁応力WSが予め設定されている壁応力の適正範囲である上限値WShi乃至最小値WSloの範囲内にあるか否かを判定する。さらに、血管機能診断部124は、算出されたずり応力SS1が予め設定されているずり応力の適正範囲である上限値SShi乃至SSloの範囲内にあるか否かを判定する。そして、壁応力WSが壁応力の適正範囲内にあると共に、ずり応力SS1がずり応力の適正範囲にある場合、血管機能診断部124は、血管機能が正常に機能するものと診断する。一方、壁応力WSおよびずり応力SS1の少なくともいずれか一方でも適正範囲を外れたとき、血管機能診断部124は、血管機能に異常が発生したものと診断する。
なお、一度の計測によってずり応力SS1および壁応力WSの少なくとも一方が適正範囲を逸脱しただけでは、血管機能に異常が発生した原因やそれに対する治療方針を確定することは困難である。しかしながら、ずり応力SS1および壁応力WSの変化を逐次算出して比較することで、異常が発生した原因や治療方針、治療の効果等を診断することができる。例えばずり応力SS1が適正範囲を逸脱した場合の適正範囲への回復状態や回復速度、さらには、それに対応する壁応力WSの変化等から総合的に異常が発生した原因や治療方針(治療時にあってはその効果)を診断する。
ここで、壁応力WSおよびずり応力SS1の適正範囲は、予め実験的に求められる。例えば、健常者複数人に対して複数回の壁応力WSおよびずり応力SS1の測定を実施し、その平均値を基準壁応力WSaveおよび基準ずり応力SSaveとする。そして、基準壁応力WSaveおよび基準ずり応力SSaveに対して、例えば+10%の値を適正範囲の上限値(WShi、SShi)、−10%の値を適正範囲の下限値(WSlo、SSlo)として設定する。
図21は、健常者を計測した場合における、ずり速度SRと粘度μとの関係を表している。また、実線は、図に示す複数個の計測点に基づいて近似した双曲線である。このずり速度SRと粘度μとの積によってずり応力が算出される。ここで、上記双曲線においては、どの点においてもずり応力が一定になっており、この双曲線で表されるずり応力が上述した基準ずり応力SSaveに相当する。
図22は、健常者を計測した場合における、血管20の血管径d1と壁厚tとの関係を表している。また、実線は、図に示す複数個の計測点に基づいて一次の関数で近似した近似線である。上記近似線やそのときの血圧(たとえば最低血圧値DBP)に基づいて、基準壁応力SSaveが設定される。
また、適正範囲を設定するその他の方法として、例えば複数の被験者を対象として、壁応力WSおよびずり応力SS1の計測を実施し、それら被験者の健康状態を考慮して総合的に設定することもできる。また、適正範囲は、例えば年齢や性別等に応じて変更されても構わない。
表示制御部126は、算出されたずり応力SS1と壁応力WSとを、2次元グラフでモニタ画面表示装置30において、数値表示またはグラフによる表示が行われる。例えば、図23に示すように横軸をずり応力SS1(代表値)とし、縦軸を壁応力WSとした2次元グラフで算出結果を表示する。また、2次元グラフには、一点鎖線で示すずり応力の適正範囲の上限値SShiおよび下限値SSloが表示され、二点鎖線で示す壁応力の適正範囲の上限値WShiおよび下限値WSloが表示されている。そして、一点鎖線および二点鎖線で囲まれる領域S、すなわち、ずり応力および壁応力の適正範囲で囲まれる領域Sが健常者の適正範囲として表示される。したがって、算出されたずり応力SS1および壁応力WSで示される関係位置が上記領域S内にある場合、血管機能は正常と診断される。一方、ずり応力SS1および壁応力WSのいずれか一方が適正範囲から外れる場合、上記関係位置が領域Sから外れるので、血管機能に異常が生じたものと診断される。上記より、算出結果と上記領域Sとの相対位置が表示されるので、血管機能診断部124の診断結果がモニタ画面表示装置30を介して容易に判断可能となる。
また、表示制御部126は、被験者毎の算出結果(ずり応力SS1および壁応力WS)を逐次記憶する記憶部としての記憶部128を備えており、前回以前の被験者毎の算出結果を記憶している。そして、表示制御部126は、前回以前の算出結果を今回の算出結果と同時に表示する。このとき、図23に示すように、前回以前の算出結果と今回の算出結果とを区別可能となるように、例えばそれぞれ異なる形状のマークで表示する。また、算出結果の経時的な変化が確認できるように、算出結果の順番に従って矢印を表示することもできる。また、測定結果が多い場合、測定日から1ヶ月前までの測定結果、1ヶ月前から2ヶ月前までの測定結果、それ以前の測定結果等に区分して、異なる形状のマークで表示することもできる。
上記のように、被験者の以前の算出結果を表示すると、ずり応力SS1および壁応力WSの変化を経時的に確認することができるので、治療方法や治療による効果等を総合的に診断することができる。例えば、ずり応力SS1および壁応力WSのいずれが適正範囲を逸脱したか、或いはその両方が逸脱したかに応じて、治療方法も異なるため、それらに基づいた治療方法が選択される。また、適正範囲を逸脱したパラメータ(ずり応力SS1、壁応力WS)が適正範囲へ復帰する方向へ変化しているか、または復帰せずに留まった状態であるか等に基づいて、治療の効果を確認することができる。また、一方のパラメータ(ずり応力SS1または壁応力WS)が適正範囲を逸脱した状態において、他方のパラメータ(壁応力WSまたはずり応力SS1)の変化等に基づいて治療方法や治療の効果が診断されることもある。これより、ずり応力SS1および壁応力WSの変化が経時的に表示されることで、血管機能の逸脱状態が逐次監視でき、治療方法の方針や治療の効果を評価することができる。
図24は、血管機能検査装置95(電子制御装置28)の制御作動の要部、すなわち、ずり応力と壁応力とに基づいて血管20の血管機能の異常を診断する制御作動を説明するためのフローチャートである。
先ず、血圧測定部95に対応するステップSB1(以下、ステップを省略する)において、カフ21の加圧による血圧測定が実施される。次いで、血管径測定部80および血流速度分布測定部100に対応するSB2では、血管20の血管径d1、外膜径d2、および血流速度分布DSが所定の期間(例えば60〜120秒程度)だけ連続的に測定されて記憶される。具体的には、超音波プローブ24の長軸用超音波アレイ探触子Cで受信された超音波散乱波(反射波)を用いて断層像を作成して血管20位置を同定して血管径d1および外膜径d2を測定すると同時に、2次元断層面内の2次元速度ベクトル分布(血流速度分布DS)が測定されて逐次記憶される。次いで、壁応力演算部122に対応するSB3において、壁応力WSが算出される時点である拡張期末期時点が決定される。上記拡張期末期時点は、測定開始から所定時間経過(例えば60秒以上)した後にSB2において測定された血管径d1が最小値となった時点とされる。なお、測定開始より所定時間経過後の拡張期末期時点に設定されるのは、その拡張期末期時点での壁応力WSに対応するずり応力SSが、拡張期末期時点より遡った血流速度分布DSに基づいて算出されるためである。そして、SB3によって拡張期末期時点が決定されると、血管径測定部80および血管壁厚測定部84に対応するSB4において、SB3によって決定された拡張期末期時点で測定された血管径d1および外膜径d2が壁応力算出持の代表値として決定されるとともに、その時点での血管径d1および外膜径d2に基づいて、血管20の壁厚t(=(d2−d1)/2)が算出される。壁応力演算部122に対応するSB5では、上述した予め記憶された関係式、SB1で測定された最低血圧値DBPおよびSB4で決定された血管径d1、壁厚tに基づいて拡張期末期時点での血管20の壁応力WSが算出される。なお、上記SB4およびSB5が壁応力算出部98の主部に相当する。
また、ずり速度分布算出部104および血液粘度分布算出部102に対応するSB6では、壁応力WSが算出された時点から20秒乃至30秒(または20乃至30心拍)遡った時点を基準時点として、予め測定されて記憶されている逐次各測定時点での血流速度分布DSに基づいて、予め記憶されている2次元のナビエストークス方程式から基準時点以前の20心拍分の区間(言い換えれば、基準時点をさらに遡って20心拍分の区間、基準時点を終点とした20心拍分の区間)での各測定時点における血管20内の粘度分布DSが算出される。さらに、壁応力WSが算出された時点から20秒から30秒(または20乃至30心拍)遡った時点を基準時点として、予め測定されて記憶されている逐次各測定時点での血流速度分布DSに基づいて、基準時点以前の20心拍分の区間(基準時点をさらに遡って20心拍分の区間、基準時点を終点とした20心拍分の区間)での各測定時点における血管20内の血液のずり速度分布(血液ずり速度分布)DSRが算出される。
そして、ずり応力分布演算部106に対応するSB7において、算出された基準時点までの20心拍分の区間での血管20内の粘度分布DSおよびずり速度分布DSRに基づいて、20心拍分の各測定時点におけるずり応力分布DSSが算出され、算出されたずり応力分布DSSから基準時点直前の20心拍分の間の各測定時点における血液ずり応力の平均値SS(ずり応力SS)が算出される。さらに、算出された各測定時点までの20心拍分のずり応力SSから、基準時点以前の所定区間(20心拍分)内における前記ずり応力の積分値、所定区間内における1心拍当たりの平均ずり応力値、所定区間内における脈拍に同期した瞬時値の積分値または平均値のいずれかが、ずり応力SSの代表値SS1として算出される。なお、上記SB2、SB6、およびSB7がずり応力算出部96の主部に相当する。
血管機能診断部124に対応するSB8では、SB4およびSB7において算出された壁応力WSおよびずり応力SS1(代表値)に基づいて、血管20の血管機能の異常が診断される。具体的には、壁応力WSが予め設定されている適正範囲(WShi〜WSlo)内にあるか否かが判定されると共に、ずり応力SS1が予め設定されている適正範囲(SShi〜SSlo)内にあるか否かが判定される。そして、壁応力WSおよびずり応力SS1のいずれもが適正範囲内にある場合、血管機能が正常と診断される。一方、壁応力WSおよびずり応力SS1の少なくともいずれか一方が適正範囲から外れた場合、血管20の血管機能に異常が生じたものと診断される。
そして、表示制御部126に対応するSB9では、SB8の診断結果がモニタ画像表示装置30において、メッセージ、数値表示または2次元グラフによる表示が行われ、壁応力WSおよびずり応力SS1の適正範囲からの逸脱状態が表示される。具体的には、壁応力とずり応力とで示される2次元グラフ上において、壁応力WSおよびずり応力SS1の予め設定されている適正範囲で囲まれる領域Sと、算出された壁応力WSおよびずり応力SS1との相対位置が表示される。したがって、表示された算出結果が上記領域S内にある場合、血管機能が正常状態にあると識別される一方、算出結果が領域Sを外れる場合、血管機能に異常が発生したもの(健常性が失われたもの)と識別される。さらに、前回以前に測定された測定結果が表示されることで、血管機能の変化が判断可能となる。
上述のように、本実施例によれば、算出されたずり応力SS1および壁応力WSの少なくともいずれか一方が、予めそれぞれに設定されているずり応力および壁応力の適正範囲を外れたか否かに基づいて、血管機能の異常を診断する血管機能診断部124を備えるので、ずり応力SS1および壁応力WSを算出することで、血管機能の異常を容易に診断することができる。血管20には、血流の変動や血圧の変動等に拘わらず、ずり応力SS1および壁応力WSが常に適正範囲に収まるように、補償機能が備えられている。例えば血圧上昇に伴って壁応力WSが増加すると、壁応力WSを一定保つために血管20の壁厚tが厚くなる。また、例えば血液粘度μが上昇してずり応力SS1が増加すると、ずり応力SS1を一定に保つために血管径d1を膨張させてずり速度を低下させる。このように、ずり応力SS1と壁応力WSは、血管20が本来有する補償機能によって正常範囲に維持されるが、上記補償機能が失われると、上記適正範囲を外れることとなる。したがって、ずり応力SS1および壁応力WSを算出し、これらが適正範囲を外れたか否かを逐次診断することで、血管20が有する上記補償機能が正常に機能しているか否かが正確に診断される。例えば、ずり応力SS1および壁応力WSの少なくともいずれか一方が適正範囲を外れると、その経時的な変化をさらに逐次監視するなどして、その原因や治療方法、さらには治療の効果等を総合的に診断することができる。また、上記補償機能が失われた場合に動脈硬化が始まるものと考えられており、動脈硬化の早期発見の手段としても利用することができる。
また、本実施例によれば、算出されたずり応力SS1および壁応力WSの関係を2次元グラフで表示するモニタ画像表示装置30を備え、モニタ画像表示装置30にはずり応力SS1および壁応力WSの前記適正範囲で囲まれる領域Sが予め表示されており、算出されたずり応力SS1および壁応力WSの関係を示す算出結果と前記領域Sとの相対位置が表示されるものである。このようにすれば、ずり応力SS1および壁応力WSの算出結果と領域Sとの相対位置が表示されるので、血管機能が正常であるか否かを容易に診断することができる。具体的には、算出結果が領域S内にあると血管機能が正常診断され、算出結果が領域Sから外れた位置にあると、血管機能に異常が生じたものと容易に診断することができる。
また、本実施例によれば、ずり応力算出部96によって算出されたずり応力SS1と壁応力算出部98によって算出された壁応力WSとを、逐次記憶する記憶部128を備えており、ずり応力SS1と壁応力WSの算出結果をモニタ画像表示装置30に表示するに際して、記憶部128に記憶されている前回以前に算出されたずり応力SS1および壁応力WSの算出情報が区別可能に表示されるものである。このようにすれば、前回以前の算出結果との対比が可能となり、血管機能の経時的な変化を確認することができる。したがって、例えば、ずり応力SS1および壁応力WSのいずれが適正範囲を逸脱した場合、その逸脱状態から適正範囲へ復帰する方向へ変化しているか否か等に基づいて、治療方法や治療の効果等も評価することができる。
また、本実施例によれば、ずり応力SS1は、ずり応力SSの変化から壁応力WSの変化に至るまでの応答遅れ時間に対応する予め設定された時間を遡った時点を基準時点とし、その基準時点以前の所定区間内(20心拍の区間)におけるずり応力SS1の積分値、所定区間内における1心拍当たりの平均ずり応力値、所定区間内における脈拍に同期した瞬時値の積分値または平均値のいずれかとされるものである。一般に、血管20の内皮の反応は血流変化に瞬時に対応するが、一酸化窒素NOが産生されて内膜に拡散して平滑筋に到達し、平滑筋が弛緩されるまでに応答遅れ時間が発生することが知られている。すなわち、ずり応力の変化から壁応力の変化に至るまでの応答遅れ時間が発生する。したがって、上記応答遅れ時間を見越して、壁応力算出時からその応答遅れ時間分だけ時間を遡った時点を基準時点とし、その基準時点以前の所定区間内における測定時点毎のずり応力に基づいて血管機能を診断する際の代表値とされるずり応力SS1を算出することで、相関関係を有するずり応力SS1および壁応力WSに基づいて血管機能を診断することができる。また、血管機能を診断する際の代表値とされるずり応力SS1を、ある時点(例えば前記基準時点)での瞬時値とせず、基準時点を終点として所定区間内(20心拍の区間)における測定時点毎のずり応力SSに基づいて算出される値とすることで、定常的に血管壁にかかる刺激を考慮したずり応力SS1に基づいて血管機能を診断することができる。
また、本実施例によれば、ずり応力SSは、予め記憶された2次元または3次元のナビエ-ストークス方程式から、血流速度分布DSに基づいて算出されるものである。このようにすれば、正確なずり応力SSが算出され、実用的な血管機能検査装置95を提供することができる。
また、本実施例によれば、壁応力WSは、最低値血圧DBP、血管径d1、および血管20の壁厚tに基づいて算出されるものである。このようにすれば、最低値血圧DBP、血管径d1、および壁厚tを測定することで、正確な壁応力WSが算出され、実用的な血管機能検査装置95を提供することができる。
また、本実施例によれば、超音波を血管20に向けて発射(放射)する超音波プローブ24は、複数個の超音波発振子が直線的に血管20の長手方向(y軸方向)に配列された長軸用超音波アレイ探触子Cと、複数個の超音波発振子が直線的に血管20の長手方向とは直交して配列された第1短軸用超音波アレイ探触子A及び第2短軸用超音波アレイ探触子Bとを備えている。そして、長軸用超音波アレイ探触子Cからの超音波により血流速度分布DSが測定され、第1短軸用超音波アレイ探触子Aからの超音波により前記血管20の径変化割合が測定される。従って、実用化されている超音波プローブ24を用いて、上記血流速度分布DSの測定と上記血管20の径変化割合の測定とを並行して行うことができる。
また、前述の実施例において、機能指標値X1や機能・器質指標値X3を前述したずり応力SSで標準化することで、さらに指標値による評価を正確なものとすることができる。図25は、所定の指標値をずり応力SSで標準化した場合のデータの変化示している。例えば実線1上にある「△」で示すデータと、破線2上にある「○」で示すデータとは、指標値の上では同じ値Aとなるが、上記は、ずり応力SSの差異に伴うものである。したがって、ずり応力SSによって指標値を標準化する、すなわち同一のずり応力SSの状態での指標値に変更することで、データの評価がさらに正確となる。例えば、図25において、破線2上の「○」で示すデータを、実線1の「△」で示すデータと等しいずり応力SSでの指標値に標準化すると、データが「□」で示す値となる。すなわち、ずり応力SSで標準化することで、指標値Aから指標値Bに変更されることとなる。このように、指標値をずり応力SSで標準化することで、標準化された指標値に基づいてさらに正確な評価が可能となる。
上述のように、本実施例によれば、各指標値がずり応力SSよって標準化されるため、各指標値がさらにずり応力SSによって補正されることで、データのバラツキが抑えられて血管機能の状態の診断精度がさらに向上する。すなわち、ずり応力SSの差異に伴う指標値の変化がなくなることで、指標値による評価がさらに正確となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、機能指標値X1、器質指標値X2、機能・器質指標値X3を算出するに際して、例えば拡張量Rを最大値Rmaxを代表値とし、その最大値Rmax測定時の血管径d1および壁厚tを代表値として上記各指標値を算出したが、必ずしも最大値Rmax測定時を基準とする必要はなく、例えば阻血解除後から所定時間内での平均値に基づいて上記各指標値を算出するものであっても構わない。
また、前述の実施例では、壁厚tは、血管20の外膜L3の外径である外膜径d2および内膜L1の内径である血管径d1の差(=(d2−d1)/2)として定義されているが、上記以外にも、壁厚tを図3に示す中膜L2の外径(外膜膜L3の内径)d3および血管径d1の差(=(d3−d1)/2)で定義して測定を実施しても構わない。言い換えれば、内膜L1の厚みと中膜L2の厚みとの足し合わせた値を壁厚tとしても構わない。
また、前述の実施例では、モニタ画像表示装置30に機能指標値X1と器質指標値X2との関係を表示するものとしたが、さらに図10や図12に示す機能・器質指標値X3と年齢との関係および指標値X1と年齢との関係を表示させることもできる。このとき、被験者の年齢に対応する適正な値を同時に表示することで、その被験者の血管機能の状態を評価することも容易となる。
また、前述の実施例では、ずり応力SSが血管機能診断の一指標値として用いられているが、例えば被験者を固定した場合、血液粘度μに変化がないため、ずり応力SSに代わって、ずり速度SR(平均値)に基づいて血管機能の異常を診断しても構わない。
また、前述の実施例では、ずり応力SSが2次元のナビエストークス方程式に基づいて算出されているが、ずり応力SSは、上述した算出方法に限定されず、良く知られた一般的な算術式を用いて算出しても構わない。
また、前述の実施例では、壁応力WSが血管機能診断の一指標として用いられているが、壁応力WSに代わって、血管20の壁張力や壁厚tと血管径d1との比などの壁応力WSに1対1に関連する壁応力関連値に基づいて血管機能の異常を診断しても構わない。なお、上記パラメータに基づいて血管機能の異常を診断する場合であっても、壁応力WSによる診断と実質的には変わらないので、壁応力WSとはそのような壁応力関連値を含む概念として解釈されるべきである。
また、前述の実施例では、壁応力WSが算出される時点として、拡張期末期時点を基準としたが、拡張期末期時点(最低血圧時点)に限定されず、収縮期血流最大時点(最高血圧時点)であっても構わない。
また、前述の実施例では、図24のフローチャーでは、壁応力WSが算出された後にずり応力SSが算出されているが、実際には略同時に算出されるものであるため、上記順番は矛盾のない範囲において適宜変更される。
また、前述の実施例では、拡張期末期時点が決定されると、速やかに壁応力算出部98が実施されるが、拡張期末期時点での血管径d1や壁厚tなど壁応力WSの算出に必要となる情報を一時的に記憶し、所定時間経過後に壁応力WSを算出するものであっても構わない。
また、前述の実施例では、拡張期末期時点を血管径d1が最小値である時点としたが、その他にも脈波を検出し、その脈波の下限のピーク時点を拡張期末期時点とすることもできる。さらにECG(心電図)においてR波を検出し、その時点を拡張期末期時点とすることもできる。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。