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JP5742764B2 - 電子制御ブレーキシステム - Google Patents
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JP5742764B2 - 電子制御ブレーキシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両用の電子制御ブレーキシステムに関するものであり、特に車両衝突時におけるブレーキペダルの運転者側への移動量の低減に関するものである。
下記の特許文献1に記載の電子制御ブレーキシステムは、(a)車両運転者の足により踏込操作されるブレーキペダルと、(b)そのブレーキペダルの踏込操作に応じてマスタシリンダ液圧を発生させるマスタシリンダと、(c)動力により動力液圧源液圧を発生させる動力液圧源と、(d)液圧の供給に応じて作動するホイールシリンダを駆動源として作動し、車輪の回転を抑制するブレーキと、(e)前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に設けられ、常には開状態にあるが、ブレーキペダルの踏込開始に応じて閉状態に切り換えられるマスタカット弁と、(f)増圧弁および減圧弁を備え、動力液圧源液圧に基づいてホイールシリンダの液圧を制御する液圧制御装置とを備えている。そして、車両衝突時には、マスタカット弁が開状態とされるとともに、液圧制御装置の減圧弁が、マスタシリンダ圧が設定値に保たれるように制御される。それによって、マスタシリンダ自体やそれを保持しているダッシュパネルがエンジン等により運転者側に移動させられることがあっても、ブレーキペダルに適切な反力が付与されつつ、マスタシリンダからマスタカット弁および減圧弁を経てリザーバへブレーキ液が排出されることとなり、ブレーキペダルが運転者側へ過度に移動させられることが回避される。
特開2005−289353号公報
しかしながら、従来の電子制御ブレーキシステムには未だ改善の余地がある。例えば、ブレーキ液をリザーバに排出させるためには、衝突検知に基づいてマスタカット弁への電流を絶つ一方、減圧弁に電流を供給して両弁を開状態とすることが必要であり、ブレーキペダルの運転者側への移動の抑制に遅れが生じる恐れがあるというように改善の余地があるのである。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、車両衝突時におけるブレーキペダルの運転者側への移動量の低減が行われる電子制御ブレーキシステムの改善を課題とする。
上記の課題は、(a)車両運転者の足により踏込操作されるブレーキペダルと、(b)そのブレーキペダルの踏込操作に応じてマスタシリンダ液圧を発生させるマスタシリンダと、(c)動力により動力液圧源液圧を発生させる動力液圧源と、(d)液圧の供給に応じて作動するホイールシリンダを駆動源として作動し、車輪の回転を抑制するブレーキと、(e)前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に設けられ、常には開状態にあるが、前記ブレーキペダルの踏込開始に応じて閉状態に切り換えられるマスタカット弁と、(f)前記動力液圧源液圧に基づいて前記ホイールシリンダの液圧を制御する液圧制御装置と、(g)前記マスタカット弁と前記マスタシリンダとをつなぐ液通路に接続され、マスタカット弁の閉状態においてマスタシリンダから排出されるブレーキ液を収容するとともに、その収容したブレーキ液を前記ブレーキペダルの戻し操作に応じてマスタシリンダへ戻すストロークシミュレータと、(h)前記液圧制御装置および前記マスタカット弁に接続され、それらを電子制御する電子制御装置とを含む電子制御ブレーキシステムを、(i)前記ストロークシミュレータと前記マスタシリンダとの間のブレーキ液の流通に対して抵抗を付与する流通抵抗付与手段と、(j)前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとの間に、前記流通抵抗付与手段と並列に設けられ、前後の液圧差が設定液圧差を超えれば開き、ブレーキ液が流通抵抗付与手段をバイパスしてマスタシリンダ側からストロークシミュレータ側へ流れることを許容する減圧弁であって、設定液圧差が、当該電子制御ブレーキシステムが正常な状態において運転者の意思により行われる前記ブレーキペダルの踏込操作に基づいて当該減圧弁の前後に発生することが予定されている液圧差の最大値より高く設定された減圧弁とを含むものとすることにより解決される。
本発明に係る電子制御ブレーキシステムにおいて通常制動時には、運転者によるブレーキペダルの踏込みによりマスタシリンダから流出したブレーキ液は流通抵抗付与手段により抵抗を付与されつつストロークシミュレータに流入する。そのため、運転者がブレーキペダルを速く踏み込んだ際の踏込感覚が重めになり、運転者の制動力の急増意図に見合った操作感が得られる。また、減圧弁の前後の設定液圧差が、当該電子制御ブレーキシステムが正常な状態において運転者の意思により行われる前記ブレーキペダルの踏込操作に基づいて当該減圧弁の前後に発生することが予定されている液圧差の最大値より高く設定されているため、通常制動時に減圧弁が開くことはなく、減圧弁が設けられていないのと同じである。
そして、車両衝突時にマスタシリンダ自体やそれを保持しているダッシュパネルがエンジン等により運転者側へ移動させられ、それに伴ってブレーキペダルが運転者側へ移動させられようとしても、そのブレーキペダルに運転者の足によって加えられる力が、設定液圧差に対応する大きさを超えれば、減圧弁が開き、マスタシリンダのブレーキ液が流通抵抗付与手段をバイパスして充分な流量でストロークシミュレータへ排出され、マスタシリンダとブレーキペダルとの接近が許容される。ブレーキペダルに設定液圧差に対応する大きさの反力が付与されつつ、ブレーキペダルが運転者側へ過度に移動させられることが回避されるのである。しかも、減圧弁は電気的な制御によることなく機械的に開かれるため、前記特許文献1に記載の発明におけるように、衝突検知に基づいてマスタカット弁や減圧弁の電気的な制御を行う場合のように、ブレーキペダルの運転者側への移動の抑制に遅れが生じる恐れもない。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、特許請求の範囲に記載された発明である本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むことがある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術,技術常識等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
(1)車両運転者の足により踏込操作されるブレーキペダルと、
そのブレーキペダルの踏込操作に応じてマスタシリンダ液圧を発生させるマスタシリンダと、
動力により動力液圧源液圧を発生させる動力液圧源と、
液圧の供給に応じて作動するホイールシリンダを駆動源として作動し、車輪の回転を抑制するブレーキと、
前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に設けられ、常には開状態にあるが、前記ブレーキペダルの踏込開始に応じて閉状態に切り換えられるマスタカット弁と、
前記動力液圧源液圧に基づいて前記ホイールシリンダの液圧を制御する液圧制御装置と、
前記マスタカット弁と前記マスタシリンダとをつなぐ液通路に接続され、マスタカット弁の閉状態においてマスタシリンダから排出されるブレーキ液を収容するとともに、その収容したブレーキ液を前記ブレーキペダルの戻し操作に応じてマスタシリンダへ戻すストロークシミュレータと、
前記液圧制御装置および前記マスタカット弁に接続され、それらを電子制御する電子制御装置と
を含む電子制御ブレーキシステムであって、
前記ストロークシミュレータと前記マスタシリンダとの間のブレーキ液の流通に対して抵抗を付与する流通抵抗付与手段(オリフィス,ノズル,細通路等)と、
前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとの間に、前記流通抵抗付与手段と並列に設けられ、前後の液圧差が設定液圧差を超えれば開き、ブレーキ液が流通抵抗付与手段をバイパスしてマスタシリンダ側からストロークシミュレータ側へ流れることを許容する減圧弁であって、設定液圧差が、当該電子制御ブレーキシステムが正常な状態において運転者の意思により行われる前記ブレーキペダルの踏込操作に基づいて当該減圧弁の前後に発生することが予定されている液圧差の最大値より高く設定された減圧弁と
を含むことを特徴とする電子制御ブレーキシステム。
(2)前記減圧弁が、付勢手段により弁座に向かって付勢された弁子を含み、前記流通抵抗付与手段が、その弁子を貫通して形成された貫通孔により形成された(1)項に記載の電子制御ブレーキシステム。
貫通孔全体が流通抵抗付与手段として機能する状態にされてもよく、貫通孔の一部にオリフィスまたはノズルが形成され、それらが流通抵抗付与手段として機能するようにされてもよい。
流通抵抗付与手段が減圧弁と一体的に設けられ、電子制御ブレーキシステムの大形化が抑制される。(3)項および(4)項に記載の電子制御ブレーキシステムについても同様である。その上、本態様においては特に、流通抵抗付与手段を小形部材である弁子に形成すればよいため、流通抵抗付与手段の形成が容易である利点がある。
(3)前記減圧弁が、付勢手段により弁座に向かって付勢された弁子を含み、前記流通抵抗付与手段が、それら弁座と弁子との互いに接触する面の少なくとも一方に形成され、弁子が弁座に着座した状態において、当該減圧弁の前後の流通を許容する連通路を形成する連通路形成凹部により形成された(1)項に記載の電子制御ブレーキシステム。
本態様には、万一流通抵抗付与手段に詰まりが発生しても、ブレーキペダルを意図的に素早く、強く踏込操作して減圧弁を開かせれば、その詰まりを解消することができる利点がある。
(4)前記減圧弁が、弁座を形成する弁ハウジングと、前記弁座に向かって付勢手段により付勢された弁子とを含み、前記流通抵抗付与手段が、前記弁ハウジングに前記弁座をバイパスする状態で形成されたバイパス通路により形成された(1)項に記載の電子制御ブレーキシステム。
バイパス通路全体が流通抵抗付与手段として機能する状態にされてもよく、バイパス通路の一部にオリフィスまたはノズルが形成され、それらが流通抵抗付与手段として機能するようにされてもよい。なお、弁ハウジングの外部に流通抵抗付与手段を設けることも可能であるが、本項の構成とすれば管継手の数を減少させることができる。
(5)前記マスタシリンダの車体に対する後退時に、前記ブレーキペダルあるいはそれに対して相対移動可能に連結された部材の、剛体と見なし得る前記車体の構成部材との当接によって、ブレーキペダルの後退が阻止されるように構成された(1)項ないし(4)項のいずれかに記載の電子制御ブレーキシステム。
請求可能発明の一実施形態である電子制御ブレーキシステムを示す回路図である。 上記電子制御ブレーキシステムのマスタシリンダを示す正面断面図である。 上記電子制御ブレーキシステムのブレーキペダルとその周辺とを示す正面図である。 上記電子制御ブレーキシステムにおける流通抵抗付与手段としての貫通孔と、減圧弁とを示す正面断面図である。 別の実施形態である電子制御ブレーキシステムにおける流通抵抗付与手段としての溝と、減圧弁とを示す正面断面図である。 図5に示す減圧弁のプランジャおよび溝を示す側面図である。 さらに別の実施形態である電子制御ブレーキシステムにおける流通抵抗付与手段としてのバイパス通路と、減圧弁とを示す正面断面図である。
以下、請求可能発明のいくつかの実施形態を、上記各図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施形態の他、前記〔発明の態様〕の項に記載した態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に請求可能発明の一実施形態である電子制御ブレーキシステムを示す。本システムは、ブレーキペダル10,マスタシリンダ12,動力液圧源14,左右前後に位置する車輪に対応してそれぞれに設けられたブレーキ16〜19等を含む。ブレーキ16,17が左右前輪のブレーキであり、ブレーキ18,19が左右後輪のブレーキである。ブレーキ16〜19は、液圧の供給に応じて作動するホイールシリンダ20〜23を駆動源として作動し、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキである。
マスタシリンダ12は、図2に示すように、本体としてのハウジング24と、そのハウジング24に液密かつ摺動可能に嵌合された2つの加圧ピストン26,28とを含む。加圧ピストン26,28のそれぞれの前方の加圧室30,32には運転者によるブレーキペダル10の操作によって、その操作力に応じた液圧が発生させられる。加圧室30,32にはそれぞれ、図1に示すように、マスタ通路34,36を介して左右前輪のホイールシリンダ20,21が接続される。マスタ通路34,36の途中には、それぞれ、マスタカット弁38,40が設けられる。マスタカット弁38,40は常開の電磁開閉弁である。
本実施形態において、マスタシリンダ12のハウジング24は、車両のダッシュパネル42に車両の前後方向とほぼ平行な方向に延びた姿勢で固定され、保持されている。ハウジング24は有底の筒状を成し、軸線方向に隔たった2箇所にそれぞれ、ピン46,48が、マスタシリンダ12を直径方向に貫通した状態で、液密に設けられている。加圧ピストン26,28は、ピン46,48に対して軸方向に相対移動可能に配設されている。加圧ピストン28には、入力ロッド50により、ブレーキペダル10に加えられた操作力が伝達される。
加圧ピストン26,28の前部には、それぞれ、制御バルブ52a,52bが設けられる。制御バルブ52a,52bにおいて、圧縮コイルスプリング54a,54bが、弁子56a,56bを後方へ付勢する状態で設けられる。加圧ピストン26,28の後退端において、弁子56a,56bがピン46,48に当接することによって、弁子56a,56bが弁座58a,58bから離間させられ、制御バルブ52a,52bは開状態とされる。それによって加圧室30,32が図示しない通路を介して、ブレーキ液を貯蔵するリザーバタンク59に連通させられる。圧縮コイルスプリング54a,54bは、付勢手段の一種である弾性部材たるスプリングである。以下に説明する別の圧縮コイルスプリングおよび引張コイルスプリングについても同様である。
加圧ピストン26,28の前進によって、弁子56a,56bがピン46,48から離間する。弁子56a,56bはスプリング54a,54bの付勢力によって弁座58a,58bに着座させられ、制御バルブ52a,52bが閉状態とされる。それによって、加圧室30,32は、加圧ピストン26,28に加えられる力に応じた液圧を発生させる状態となる。
ブレーキペダル10は、図3に示すように長手方向の一端部にペダルパッド60を備え、他端部において、軸62により、ダッシュパネル42に固定のペダルブラケット64に回動可能に取り付けられている。ペダルブラケット64にはレバー66が軸68により回動可能に取り付けられ、リンク70によってブレーキペダル10に連結されている。リンク70は、軸72,74によってブレーキペダル10とレバー66とにそれぞれ回動可能に取り付けられ、レバー66の自由端部に入力ロッド50が軸76によって相対回動可能に取り付けられている。これらレバー66,軸68,リンク70,軸72,74等によって、ブレーキペダル10の回動角度と入力ロッド50の進退量との関係を所望の関係に規定するリンク機構77が構成されている。
レバー66は、軸76と車体78との間に張り渡された引張コイルスプリング80により、図3において時計方向に付勢され、リンク70を介してブレーキペダル10が図3において反時計方向に付勢されている。このスプリング80の付勢によるブレーキペダル10の移動限度は図示を省略するストッパにより規定され、ブレーキペダル10が原位置に位置させられる。図3において符号82はインパネリインフォースメント(Instrument Panel Reinforcement)を示し、壁体84が一体的に設けられている。これらは車体の構成部材であり、剛体とみなし得る。壁体84は、レバー66より運転席側に位置し、ブレーキペダル10が原位置に位置する状態においてレバー66の自由端部に隙間を隔てて対向する。
ブレーキペダル10が原位置に位置する状態から運転者によって踏み込まれれば、リンク70を介してレバー66が回動させられ、入力ロッド50が前進させられるとともに加圧ピストン26,28が前進させられる。そして、リザーバタンク59から供給されるブレーキ液が、ブレーキペダル10の踏込状態を表す操作力に機械的に応じて加圧され、加圧室30,32に液圧が発生させられる。
前記動力液圧源14には、図1に示すように、4つのホイールシリンダ20〜23がポンプ通路86を介して接続される。ホイールシリンダ20〜23には、マスタシリンダ12から遮断された状態で動力液圧源14において発生させられた液圧である動力液圧源液圧が供給されて、ブレーキ16〜19が作動させられる。ホイールシリンダ20〜23の液圧は液圧制御装置88により制御される。
動力液圧源14は、ポンプ90,ポンプ90を駆動する電動モータ92,アキュムレータ94およびリリーフ弁96を含む。ポンプ90の吸入側は吸入通路98を介してリザーバタンク59に接続され、吐出側にはアキュムレータ94が接続される。ポンプ90によってリザーバタンク59のブレーキ液が汲み上げられ、アキュムレータ94に供給されて加圧された状態で蓄えられる。また、ポンプ90の吐出側のアキュムレータ94より下流側(ホイールシリンダ側)の部分とポンプ90の吸入側の部分とがリリーフ通路100によって接続される。リリーフ通路100にはリリーフ弁96が設けられる。リリーフ弁96は、高圧側であるアキュムレータ94側の液圧が設定圧を越えると閉状態から開状態に切り換えられる。
液圧制御装置88は、増圧通路としてのポンプ通路86に設けられた増圧リニアバルブ110〜116と、ホイールシリンダ20〜23とリザーバタンク59とを接続する減圧通路118に設けられた減圧リニアバルブ120〜126とを含む。これら増圧リニアバルブ110〜116は増圧手段を構成し、動力液圧源14の液圧に基づいてホイールシリンダ20〜23の液圧を上昇させ、減圧リニアバルブ120〜126が減圧手段を構成し、ホイールシリンダ20〜23からリザーバタンク59へのブレーキ液の流出を許容することによって、ホイールシリンダ20〜23の液圧を低減させる。増圧リニアバルブ110〜116と減圧リニアバルブ120〜126との制御によりホイールシリンダ20〜23の液圧がそれぞれ別個独立に制御され得る。
増圧リニアバルブ110〜116および前輪側の減圧リニアバルブ120,122は常閉の電磁制御弁であり、後輪側の減圧リニアバルブ124,126は常開の電磁制御弁である。これら増圧リニアバルブ110〜116および減圧リニアバルブ120〜126はそれぞれ、ソレノイドと、シーティング弁とを含むものであり、ソレノイドへの供給電流の制御により、前後の差圧を制御することができ、ホイールシリンダ20〜23の液圧が制御される。
マスタ通路34には、図1に示すように、そのマスタシリンダ12とマスタカット弁38との間の部分から分岐させられた液通路128によりストロークシミュレータ130が接続されている。ストロークシミュレータ130は、本体たるハウジング131内にピストン132が液密かつ摺動可能に嵌合され、ピストン132の一方の側に設けられたブレーキ液収容室134が液通路128に接続されるとともに、ピストン132は圧縮コイルスプリング136によりブレーキ液収容室134の容積が減少する方向に付勢されている。液通路128にはシミュレータカット弁138が設けられている。シミュレータカット弁138は常閉の電磁開閉弁であり、ストロークシミュレータ130とマスタシリンダ12との間に設けられ、その開閉により、ストロークシミュレータ130がマスタシリンダ12に連通させられる連通状態と遮断される遮断状態とに切り換えられる。
液通路128のシミュレータカット弁138とストロークシミュレータ130との間の部分には、貫通孔140および減圧弁142が設けられている。図4に示すように、減圧弁142の弁ハウジング144内には弁室146が設けられ、ポート148によってシミュレータカット弁138に接続され、ポート150によってストロークシミュレータ130に接続されている。
弁室146には弁子152が軸方向に移動可能に収容され、圧縮コイルスプリング154によってポート148の開口端に形成された弁座156に向かって付勢されている。弁子152の中心部には軸方向に貫通して貫通孔140が形成されている。貫通孔140は細く、その直径は、弁子152が弁座156に着座した状態においてシミュレータカット弁138とストロークシミュレータ130との間のブレーキ液の流通に対して抵抗を付与する大きさとされ、貫通孔140全体が細通路状の流通抵抗付与手段を構成している。
弁子152は、その前後の液圧差が設定液圧差を超えれば、図4(b)に示すように、弁座156から離間し、ブレーキ液が弁子152と弁座156との間を通り、貫通孔140をバイパスして流れることを許容する。設定液圧差は、本電子制御ブレーキシステムが正常な状態において、運転者の意思により行われるブレーキペダル10の踏込操作に基づいて減圧弁142の前後に発生することが予定されている液圧差の最大値より高く設定され、スプリング154のセット荷重は、弁子152の弁座156に着座した状態における有効受圧面積(弁子152の弁座156に密着してシール機能を果たす円周状のシール線により規定される円の面積であり、貫通孔140の断面積も含む)と、弁子152の前後の設定液圧差との積に等しい大きさに設定されている。
本電子制御ブレーキシステムは、ブレーキECU160の指令に基づいて制御される。ブレーキECU160は、コンピュータを主体とするものであり、図1に示すように、実行部162,記憶部164,入出力部166等を含み、電子制御装置を構成している。入出力部166には、踏込検出器168,ストロークセンサ170,マスタシリンダ液圧センサ172,ブレーキ液圧センサ174,液圧源液圧センサ176,車輪速センサ178等が接続されている。入出力部176にはまた、増圧リニアバルブ110〜116,減圧リニアバルブ120〜126,マスタカット弁38,40,シミュレータカット弁138等が図示しない駆動回路を介して接続されるとともに、電動モータ92が図示しない駆動回路を介して接続されている。踏込検出器168は、ブレーキペダル10の原位置からの踏込開始を検出するものであり、踏込検出手段を構成し、例えば、スイッチにより構成される。ストロークセンサ170は、ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するものであり、踏込量検出手段を構成し、踏込検出器168と共に、ブレーキペダル10の踏込状態を検出する踏込状態検出手段を構成している。踏込状態検出手段は、踏込量検出手段に代えて、あるいはそれと共に、踏力センサやマスタシリンダ液圧センサ等の踏力検出手段を含むものとされてもよい。
非制動時には、ブレーキペダル10は原位置に位置し、マスタカット弁38,40は開状態にあって増圧リニアバルブ110,112とマスタシリンダ12とを連通させ、シミュレータカット弁138は閉状態にある。車両制動時には、運転者が足によりブレーキペダル10を踏み込み、マスタシリンダ12の加圧室30,32に液圧が発生させられる。ブレーキペダル10の踏込開始は踏込検出器168により検出され、マスタカット弁38,40が閉状態に切り換えられる。それによりホイールシリンダ20,21がマスタシリンダ12から遮断され、液圧制御装置88が動力液圧源液圧に基づいてホイールシリンダ液圧を制御し、ブレーキ16〜19が作動させられる。マスタシリンダ液圧センサ182によって検出されたマスタシリンダ液圧,ストロークセンサ180によって検出された操作ストローク等に基づいて運転者の要求制動力が求められ、要求制動力が得られるようにホイールシリンダ液圧の目標液圧が求められる。そして、実際のホイールシリンダ液圧が目標液圧と同じになるように、各増圧リニアバルブ110〜116あるいは減圧リニアバルブ120〜126のソレノイドへの供給電流が制御される。また、アキュムレータ94の液圧が所定範囲に保たれるように電動モータ92への電流供給が制御される。
また、車輪速センサ178によって検出された車輪速度等に基づいて各車輪の制動スリップ状態が求められ、制動スリップが過大であることが検出された場合にはアンチロック制御が行われる。アンチロック制御においては、各車輪の制動スリップが路面の摩擦係数に対して適正な大きさになるようにホイールシリンダ20〜23の各液圧が液圧制御装置88により制御される。なお、動力液圧源14の故障等により動力液圧源液圧が得られなくなった場合、シミュレータカット弁138が閉状態とされる一方、マスタカット弁38,40が開状態とされ、マスタシリンダ液圧がホイールシリンダ20,21に供給される。
通常の車両制動時にはまた、シミュレータカット弁138が開状態とされ、加圧室30から排出されるブレーキ液がストロークシミュレータ130のブレーキ液収容室134に収容され、運転者にブレーキペダル10の踏込操作感が得られる。ブレーキ液は、図4(a)に示すように貫通孔140を通り、流通抵抗を付与されつつストロークシミュレータ130に流入する。そのため、運転者がブレーキペダル10を速く踏み込んだとき、その制動意図に見合った操作感が得られる。この通常制動時に加圧室30,32に発生させられる液圧により、減圧弁142の前後に生じさせられる液圧差は設定液圧差より小さく、減圧弁142は閉状態に保たれる。ブレーキペダル10の踏込みが緩められれば、ブレーキ液収容室134に収容されたブレーキ液は、スプリング136によるピストン132の付勢により貫通孔140を通って加圧室30へ戻される。
車両が衝突した場合に、マスタシリンダ12が後ろ向きの外力により後退させられることがある。マスタシリンダ12自体が外力を受けて後退させられ、あるいはダッシュパネル42が外力を受けて後退させられるのに伴ってマスタシリンダ12も後退させられるのであるが、いずれの場合も、結局、ペダルブラケット64,レバー66および入力ロッド50が、運転者により踏み込まれた状態にあるブレーキペダル10と共に後退させられる。その結果、レバー66の自由端部が壁体84に当接して入力ロッド50の後退が止められる。この後退阻止とマスタシリンダ12の後退とによって入力ロッド50がマスタシリンダ12に対して相対的に前進させられることとなり、運転者による通常の踏込操作により得られることが予定されている最大液圧より大きいマスタシリンダ液圧が加圧室30,32に発生させられる。それにより、減圧弁142における弁子152の前後の液圧差が設定液圧差を超え、図4(b)に示すように、弁子152がスプリング154の付勢力に抗して後退させられて弁座156から離れ、ブレーキ液は貫通孔140をバイパスして弁座156と弁子152との間を通り、加圧室30からストロークシミュレータ130へ大流量で排出され、マスタシリンダ12と入力ロッド50との更なる相対移動が迅速に許容される。マスタシリンダ12およびペダルブラケット64の後退に対して入力ロッド50,レバー66およびブレーキペダル10の後退が抑制され、ブレーキペダル10の運転者側への更なる移動が良好に抑制されるのである。
減圧弁142の開弁圧は、減圧弁142が開く瞬間におけるシミュレータカット弁138側(マスタシリンダ12側)の液圧であり、この開弁圧は、弁子152の弁座156に着座した状態における有効受圧面積と、弁子152の前後の設定液圧差との積が、スプリング154のセット荷重に等しくなる瞬間のシミュレータカット弁138側の液圧である。したがって、減圧弁142の開弁圧は、ストロークシミュレータ130のブレーキ液収容室134の液圧(以後、シミュレータ液圧と称する)が高くなるほど高くなるのであり、シミュレータ液圧はストロークシミュレータ130の内部に流入したブレーキ液の量の増大に伴って上昇するため、減圧弁142の開弁圧は、減圧弁142が開く瞬間までにブレーキ液収容室134に流入しているブレーキ液の量が多いほど高くなるのであって、一定ではない。
しかし、液圧制御装置88は、ホイールシリンダ20〜23の液圧をシミュレータ液圧より充分高く制御するものであるため、電子制御ブレーキシステムが正常である状態においては、運転者がブレーキペダル10に加えると考えられる踏込操作のうちで、減圧弁142のシミュレータカット弁138側の液圧を最も高くするものでも、減圧弁142を開弁させるには到らない。それに対し、衝突時には、前述のように、レバー66の自由端部が壁体84に当接して入力ロッド50の後退が止められることにより、ブレーキペダル10がマスタシリンダ12に接近させられるのであるが、レバー66の自由端部が壁体84に当接する前であっても、運転者の足によりブレーキペダル10に加えられる踏込力が、減圧弁142のシミュレータカット弁138側の液圧を開弁圧より高くするに十分な大きさになれば、減圧弁142が開かれて、マスタシリンダ12からシミュレータカット弁138および減圧弁142を経て、ブレーキ液が貫通孔140の制約を受けない十分な流量でストロークシミュレータ130へ流入する。いずれの場合でも、マスタシリンダ12のブレーキペダル10に対する後退が許容されるのであり、それによって、ブレーキペダル10が過度に運転者側へ後退することが防止される。
上記のように、本実施形態においては、衝突発生時にマスタシリンダ12が後退する際、レバー66の自由端部と壁体84との当接により、ブレーキペダル10の更なる後退が阻止され、ブレーキペダル10の運転者側への後退が積極的に防止されるようになっている。このレバー66の自由端部と壁体84との当接は好ましいことではあるが、必ずしも不可欠ではない。例えば、マスタシリンダ12の後退に伴うブレーキペダル10の後退が、インパネリインフォースメント82自体あるいはそれに固定の部材によって阻止されるようにすることも可能である。
さらに、ブレーキペダルあるいはそれにリンク機構により連結された部材の、インパネリインフォースメント82等剛体との当接によってブレーキペダル10の後退が阻止されるようにすること自体も不可欠ではない。上記のように、マスタシリンダ12の後退に伴ってブレーキペダル10が後退し、その結果、運転者の足によるブレーキペダル10の踏込力が増大すれば、マスタシリンダ液圧が上昇し、減圧弁142における弁子152の前後の液圧差が設定液圧差を超え、減圧弁142が開いてマスタシリンダ液圧の更なる上昇が抑制されるからである。
また、ストロークシミュレータはマスタシリンダの2つのマスタ通路の各々に接続され、2つの加圧室の各々について設けられてもよく、1つのストロークシミュレータが2つのマスタ通路に接続され、2つの加圧室について共用とされてもよい。
さらに、前記実施形態においては、マスタシリンダ12が液圧制御装置88を経ることなくホイールシリンダ20,21に接続されており、液圧制御装置88はマスタシリンダ液圧に基づいてホイールシリンダ20,21の液圧を制御することはないが、液圧制御装置88が動力液圧源液圧に基づくのみならず、マスタシリンダ液圧にも基づいてホイールシリンダ20,21の液圧を制御するようにしてもよい。例えば、マスタ通路34,36を直接ホイールシリンダ20,21に接続するのではなく、増圧リニアバルブ110,112を介してホイールシリンダ20,21に接続し、動力液圧源14の故障等により、動力液圧源液圧が得られなくなり、マスタカット弁38,40が開状態とされた状態で、アンチロック制御等の目的でマスタシリンダ液圧に基づいてホイールシリンダ20,21の液圧が制御されるようにしてもよいのである。
流通抵抗付与手段の別の実施形態を図5および図6に基づいて説明する。
本実施形態の減圧弁190は、図5に示すように、前記減圧弁142と同様に、弁ハウジング192,弁室194,ポート196,198,弁子200,弁座202およびスプリング204を含む。弁子200の弁座202に接触する面には、図6に示すように、複数、本実施形態においては3つの連通路形成凹部たる溝206が軸対称に形成され、連通路208を形成している。
通常制動時には、図5(a)に示すように弁子200が弁座202に着座し、3つの溝206により減圧弁190の前後におけるブレーキ液の流通が許容され、マスタシリンダの加圧室から流出したブレーキ液は溝206によって流通抵抗を付与されつつストロークシミュレータへ流入する。衝突発生時には、図5(b)に示すように弁子200が弁座202から離間し、それらの間を通ってブレーキ液がストロークシミュレータへ排出される。
流通抵抗付与手段のさらに別の実施形態を図7に基づいて説明する。
本実施形態の減圧弁220は、前記減圧弁142と同様に、弁ハウジング222,弁室224,ポート226,228,弁子230,弁座232およびスプリング234を含む。弁ハウジング222内には、弁座232をバイパスし、ポート226,228を直接連通させるバイパス通路236が形成されている。バイパス通路236は、ポート226,228間を流れるブレーキ液に流通抵抗を付与することができる直径の細通路とされ、全体が流通抵抗付与手段を構成する。
通常制動時には、図7(a)に示すように弁子230が弁座232に着座し、マスタシリンダの加圧室から流出したブレーキ液はバイパス通路236を通り、流通抵抗を付与されつつストロークシミュレータへ流入する。衝突発生時には、図7(b)に示すように弁子230が弁座232から離間し、それらの間を通ってブレーキ液がストロークシミュレータへ排出される。
10:ブレーキペダル 12:マスタシリンダ 14:動力液圧源 16,17,18,19:ブレーキ 20,21,22,23:ホイールシリンダ 38,40:マスタカット弁 88:液圧制御弁装置 130:ストロークシミュレータ 138:シミュレータカット弁 140:貫通孔 142:減圧弁 160:ブレーキECU 190:減圧弁 206:溝 208:連通路 220:減圧弁 236:バイパス通路

Claims (4)

  1. 車両運転者の足により踏込操作されるブレーキペダルと、
    そのブレーキペダルの踏込操作に応じてマスタシリンダ液圧を発生させるマスタシリンダと、
    動力により動力液圧源液圧を発生させる動力液圧源と、
    液圧の供給に応じて作動するホイールシリンダを駆動源として作動し、車輪の回転を抑制するブレーキと、
    前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとの間に設けられ、常には開状態にあるが、前記ブレーキペダルの踏込開始に応じて閉状態に切り換えられるマスタカット弁と、
    前記動力液圧源液圧に基づいて前記ホイールシリンダの液圧を制御する液圧制御装置と、
    前記マスタカット弁と前記マスタシリンダとをつなぐ液通路に接続され、マスタカット弁の閉状態においてマスタシリンダから排出されるブレーキ液を収容するとともに、その収容したブレーキ液を前記ブレーキペダルの戻し操作に応じてマスタシリンダへ戻すストロークシミュレータと、
    前記液圧制御装置および前記マスタカット弁に接続され、それらを電子制御する電子制御装置と
    を含む電子制御ブレーキシステムであって、
    前記ストロークシミュレータと前記マスタシリンダとの間のブレーキ液の流通に対して抵抗を付与する流通抵抗付与手段と、
    前記マスタシリンダと前記ストロークシミュレータとの間に、前記流通抵抗付与手段と並列に設けられ、前後の液圧差が設定液圧差を超えれば開き、ブレーキ液が流通抵抗付与手段をバイパスしてマスタシリンダ側からストロークシミュレータ側へ流れることを許容する減圧弁であって、設定液圧差が、当該電子制御ブレーキシステムが正常な状態において運転者の意思により行われる前記ブレーキペダルの踏込操作に基づいて当該減圧弁の前後に発生することが予定されている液圧差の最大値より高く設定された減圧弁と
    を含むことを特徴とする電子制御ブレーキシステム。
  2. 前記減圧弁が、付勢手段により弁座に向かって付勢された弁子を含み、前記流通抵抗付与手段が、その弁子を貫通して形成された貫通孔により形成された請求項1に記載の電子制御ブレーキシステム。
  3. 前記減圧弁が、付勢手段により弁座に向かって付勢された弁子を含み、前記流通抵抗付与手段が、それら弁座と弁子との互いに接触する面の少なくとも一方に形成され、弁子が弁座に着座した状態において、当該減圧弁の前後の流通を許容する連通路を形成する連通路形成凹部により形成された請求項1に記載の電子制御ブレーキシステム。
  4. 前記減圧弁が、弁座を形成する弁ハウジングと、前記弁座に向かって付勢手段により付勢された弁子とを含み、前記流通抵抗付与手段が、前記弁ハウジングに前記弁座をバイパスする状態で形成されたバイパス通路により形成された請求項1に記載の電子制御ブレーキシステム。
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