しかし、上記の製造方法では、一層目成形品の入子と反対側の面、すなわち二層目成形品と積層すべき積層面が平らであるため、一層目成形品と二層目成形品との接合強度が不十分になりやすい。この場合、厚肉成形品の引張りや強度などの機械的特性を十分に得られず、厚肉成形品の長期間の使用により、一層目成形品と二層目成形品の接合部分が破断するおそれもある。また、2回目の射出成形に先立ち、一層目成形品を可動側金型から一旦、取り外し、他の可動側金型内に取り付けなければならず、製造効率が悪いという問題もある。加えて、一層目成形品は、成形直後から他の金型内にインサートされるまでに、成形収縮が生じやすく、それに起因して、一層目成形品の外形寸法が、インサートされた金型の内周面よりも小さくなると、二層目成形品の成形時に、その合成樹脂が一層目成形品の外周側面と金型の内周面との間に流入し、厚肉成形品において不要なバリが生じることがある。この場合には、成形後に、バリを切削する後加工が必要になってしまう。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、十分な機械的特性および良好な外観を得ることができる厚肉成形品の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、溶融した所定の合成樹脂を金型内に射出する射出成形により、互いに積層された複数の層から成るとともに所定寸法以上の厚さを有する成形品を製造する厚肉成形品の製造方法であって、他の層と積層すべき積層面に沿って延びかつ積層面に突設された複数のリブを有する第1次成形層を、射出成形によって成形する第1次成形工程と、第1次成形層の積層面側に積層するよう、第2次成形層を射出成形によって成形する第2次成形工程と、を備え、第1次成形工程において、各リブの幅方向の両側の少なくとも一方に、第1次成形層と第2次成形層の積層方向に対し、所定の角度範囲で傾斜するテーパ面を有するように、第1次成形層を成形し、第1次成形工程において、第1次成形層の積層面および/または複数のリブの表面に沿って延びかつ積層面および/または各リブの表面に突設されるとともに、積層面に直交する断面形状のサイズが各リブのそれよりも小さく成形され、第2次成形工程による第2次成形層の成形時に、第2次成形層の熱によって溶融される複数の溶融凸部を成形することを特徴とする。
この構成によれば、第1次成形工程により、積層面に沿って延びかつ当該積層面に突設された複数のリブを有する第1次成形層を成形し、第2次成形工程により、第1次成形層の積層面側に第2次成形層を積層させる。第1次成形工程において成形される第1次成形層の複数のリブは、幅方向の両側の少なくとも一方に、第1次成形層と第2次成形層の積層方向に対し、所定の角度範囲で傾斜するテーパ面を有するので、積層面全体が平らに構成される場合に比べて、第1次成形層と第2次成形層の接合部分の面積が大きくなる。このため、第1次成形層と第2次成形層の接合部分における融合度合が高まり、その結果、両成形層の接合強度を高めることができる。また、第1次成形層および第2次成形層を、ボイドやヒケが生じない程度の厚さで成形することにより、厚肉成形品の強度を高めることができるとともに良好な外観を得ることができる。以上のように、本発明の製造方法により、十分な機械的特性および良好な外観を有する厚肉成形品を製造することができる。
また、上記の構成によれば、第1次成形工程において、第1次成形層の積層面および/または複数のリブの表面に沿って延びかつそれらの表面に突設される複数の溶融凸部が成形される。これらの溶融凸部は、積層面に直交する断面形状のサイズが各リブのそれよりも小さく成形されており、第2次成形工程による第2次成形層の成形時に、その第2次成形層の熱によって溶融され、それにより、第1次成形層と第2次成形層との接合部分における融合度合がより高まり、両成形層の接合強度をより一層高めることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の厚肉成形品の製造方法において、テーパ面は、積層方向に対し、10度以上傾斜していることを特徴とする。
この構成によれば、テーパ面が、積層方向に対し、10度以上傾斜しているので、第2次成形層の成形時に、射出される合成樹脂の圧力がテーパ面に十分にかかり、それにより、テーパ面における十分な接合強度を確保することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の厚肉成形品の製造方法において、複数のリブは、第1次成形層の中心部を中心として、同心円状および/または放射状に成形されることを特徴とする。
この構成によれば、複数のリブが、第1次成形層の積層面の全体に、偏りなく均一に成形されるので、複数のリブによる第1次成形層と第2次成形層との接合部分をバランス良く融合させることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の厚肉成形品の製造方法において、複数の溶融凸部は、第1次成形層の中心部を中心として、同心円状および/または放射状に成形されることを特徴とする。
この構成によれば、複数の溶融凸部が、第1次成形層の積層面(複数のリブの表面を含む)全体に、偏りなく均一に成形されるので、複数の溶融凸部による第1次成形層と第2次成形層との接合部分をバランス良く融合させることができる。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の厚肉成形品の製造方法において、所定の合成樹脂には、繊維状の補強材が含まれていることを特徴とする。
この構成によれば、繊維状の補強材が含まれる合成樹脂を構成材料として、第1次成形層および第2次成形層が成形されるので、補強材が含まれていない場合に比べて、両成形層の強度を高めることができ、その結果として、厚肉成形品自体の強度も高めることができる。また、例えば、厚肉成形品に対し、第1次成形層と第2次成形層の積層方向に引張り荷重が作用した場合、リブのテーパ面に剪断応力が作用するものの、そのテーパ面付近に存在しかつテーパ面に沿っていない繊維状の補強材により、剪断応力に対する抗力が生じ、それにより、テーパ面における安定した接合状態を確保することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の厚肉成形品の製造方法において、金型は、互いに型締めされることにより、第1次成形層および第2次成形層をそれぞれ成形するための第1キャビティおよび第2キャビティを構成する、固定側型板および可動側型板を有し、可動側型板は、型開きされた状態で、第1キャビティにおいて成形された第1成形層を、第2キャビティに対応する第2キャビティ対応位置に移動可能に構成されており、固定側型板と可動側型板を型締めした状態で、第1次成形工程として、第1キャビティに所定の合成樹脂を射出することにより、第1キャビティにおいて第1次成形層を成形し、型開きした後、成形された第1次成形層を、可動側型板に保持した状態のまま、第2キャビティ対応位置に移動させ、再度型締めした後、第2次成形工程として、第2キャビティに所定の合成樹脂を射出することにより、第2キャビティにおいて第2次成形層を第1次成形層に積層させるように成形することを特徴とする。
この構成によれば、上記の固定側型板および可動側型板を有する金型を用い、まず、両型板を型締めした状態で、第1キャビティに合成樹脂を射出することにより、その第1キャビティにおいて第1次成形層を成形する(第1次成形工程)。次いで、型開きした後、可動側型板を移動させることにより、第1次成形層を、可動側型板に保持した状態のまま、第2キャビティ対応位置に移動させる。そして、両型板を再度型締めした後、第2キャビティに合成樹脂を射出することにより、その第2キャビティにおいて、第2次成形層を第1次成形層に積層させるように成形する(第2次成形工程)。以上により、第1次成形層および第2次成形層による2層構造の厚肉成形品が成形される。
以上のように、第1次成形層の成形後、その第1次成形層を保持したまま、可動側型板を移動させて、第1次成形層に積層する第2次成形層を成形するので、第1次成形層に相当する一層目成形品を他の金型に移し替える従来の製造方法に比べて、厚肉成形品を効率良く製造することができる。また、第1次成形層の成形後直ちに、すなわち、第1次成形層の成形収縮が開始する前に、第2次成形層を成形することが可能であるので、従来と異なり、第2次成形層の合成樹脂が第1次成形層の外周側面と第2キャビティとの間に流入することがない。このため、厚肉成形品において、不要なバリが生じることがないので、バリを切削する後加工が不要であり、良好な外観の外周側面を得ることができる。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の厚肉成形品の製造方法において、金型は、互いに型締めされることにより、2つの第1次成形層を成形するための2つの第1キャビティ、および第2次成形層を成形するための第2キャビティの一方を構成する、固定側型板および可動側型板を有し、可動側型板は、型開きされた状態で、2つの第1キャビティを構成するための第1次成形位置と、2つの第1キャビティの開放側が互いに対向するように、第2キャビティを構成するための第2次成形位置との間で、移動自在に構成されており、固定側型板と第1次成形位置に位置する可動側型板とを型締めした状態で、第1次成形工程として、2つの第1キャビティに所定の合成樹脂を射出することにより、2つの第1キャビティにおいて2つの第1次成形層を成形し、型開きした後、可動側型板を第2次成形位置に移動させることにより、成形された2つの第1次成形層を、各々の積層面が向かい合うように対向させ、再度型締めした後、第2次成形工程として、第2キャビティに所定の合成樹脂を射出することにより、成形された2つの第1次成形層の間に第2次成形層を成形することを特徴とする。
この構成によれば、上記の固定側型板および可動側型板を有する金型を用い、まず、固定側型板と第1次成形位置に位置する可動側型板とを型締めした状態で、2つの第1キャビティに合成樹脂を射出することにより、両第1キャビティにおいて2つの第1次成形層を成形する(第1次成形工程)。次いで、型開きした後、可動側型板を第2次成形位置に移動させることにより、2つの第1次成形層を、各々の積層面が向かい合うように対向させる。次いで、両型板を再度型締めする。これにより、第2キャビティにおいて、2つの第1次成形層が互いに間隔を隔ててインサートされた状態になる。そして、第2キャビティに合成樹脂を射出することにより、2つの第1次成形層の間に第2次成形層を成形する(第2次成形工程)。以上により、2つの第1次成形層および単一の第2次成形層による3層構造の厚肉成形品が成形される。
以上のように、2つの第1次成形層の成形後、可動側型板を第2次成形位置に移動させて、両第1次成形層の間に積層する第2次成形層を成形するので、前記請求項6と同様、従来の製造方法に比べて、厚肉成形品を効率良く製造することができるとともに、良好な外観の外周側面を有する厚肉成形品を得ることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の第1実施形態による製造方法によって製造され、例えば自動車などに部品として用いられる厚肉成形品を示している。この厚肉成形品1は、溶融した所定の合成樹脂を金型内に射出する射出成形によって製造されたものであり、所定寸法(例えば10mm)以上の比較的厚い厚さを有する円盤状(例えば、直径:170mm、厚さ:15mm)に形成されている。より具体的には、厚肉成形品1は、先に射出成形される第1次成形層2と、この第1次成形層2の成形後に射出成形される第2次成形層3とで、互いに積層された2層構造に構成されている。なお、この厚肉成形品1の中心部に形成された、比較的小さな直径(例えば10mm)を有する貫通孔1aは、厚肉成形品1が組み付けられる際に、ロッドなどを挿通するためのものである。
図3(a)および(c)は、第1次成形層2の上面および底面をそれぞれ示し、同図(b)は、(a)のIIIb−IIIb線に沿う断面を示している。同図に示すように、第1次成形層2は、平面形状が円形に形成されており、第2次成形層2と積層する上面(以下「積層面2a」という)には、複数のリブ4、5、6が積層面2aに沿って延びかつ積層面2aに突設される一方、底面2bには、下方に開放する複数の凹部7が形成されている。
図3(a)に示すように、複数(本実施形態では8つ)のリブ4は、第1次成形層2の中心部の貫通孔1aを中心として、平面形状がリング状に形成されるとともに、径方向に互いに所定間隔を隔てて同心円状に配置されている。また、複数(本実施形態では8つずつ)のリブ5および6は、平面形状が直線状に形成されるとともに、貫通孔1aを中心として、互いに等角度ごとに放射状に配置されている。なお、放射状のリブ5および6のうち、前者5は、貫通孔1aと第1次成形層2の外周縁部との間の全体にわたって延び、後者6は、前者5のほぼ半分の長さで、外側寄りに配置されている。
各リブ4、5、6は、同一の断面形状を有している。リング状のリブ4を代表して説明すると、図3(b)および図4(b)に示すように、リブ4は、積層面2aから所定長さ(例えば3.5mm)突出し、積層面2aに直交する面で切断したときの断面が台形状に形成されている。また、リブ4は、その幅方向(図4(b)の左右方向)の両側に、第2次成形層3側(図4(b)の上側)に向かって互いの間隔が狭まるように形成されたテーパ面4a、4aを有している。具体的には、各テーパ面4aは、第1次成形層2と第2次成形層3の積層方向(図4(b)の上下方向)に対する傾斜角度θが、10度以上の角度範囲で傾斜している。なお、傾斜角度θは、60度以下であることが好ましい。
また、第1次成形層2には、第2次成形層3側に突出し、第2次成形層3の成形時に、その第2次成形層3の熱によって溶融される複数の溶融凸部8a、8b、8cが形成されている。具体的には、図4(a)に太線で示すように、溶融凸部8aは、各リブ4、5、6の上面に沿って延びるように配置され、溶融凸部8bは、積層面2aの互いに隣接する同心円状のリブ4、4間にリング状に配置され、さらに、溶融凸部8cは、同心円状の複数のリブ4を横切って延びるように、貫通孔1aを中心として放射状に配置されている。また、各溶融凸部8a、8b、8cは、三角形の断面形状を有しており、比較的小さい所定の幅および高さ(例えば0.2〜0.5mm)を有している。
また、図3(c)および図4(b)に示すように、第1次成形層2の積層面2aと反対側の底面2bには、複数の凹部7が形成されており、これらの凹部7は、積層面2a側の複数のリブ4に対応し、同心円状に配置されている。また、図3(c)に示すように、第1次成形層2の底面2bには、同心円状の複数の凹部7を横切って放射状に延びるように、複数のリブ9が設けられている。
一方、第2次成形層3は、図1および図2に示すように、平面形状が円形に形成され、第1次成形層2と反対側の面である上面3aが平らに形成されている。
以上のように構成された厚肉成形品1では、第1次成形層2および第2次成形層3が同一種類の合成樹脂で構成され、その合成樹脂として、多種のものを採用することが可能である。具体的には、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、AES(アクリロニトリルエチレンプロピレンゴムスチレン共重合体)、およびAAS(アクリロニトリルアクリルゴムスチレン共重合体)などの汎用プラスチック、変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)、PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、およびPAI(ポリアミドイミド)などのエンジニアリングプラスチック、ならびにPEI(ポリエーテルイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PSU(ポリサルフォン)、およびPES(ポリエーテルサルフォン)などのスーパーエンジニアリングプラスチックなどを採用することが可能である。
また、上記の合成樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維などの補強材を添加したり、熱伝導性や電導性を有する材料、タルク、または炭酸カルシウムなどの種々の添加材を添加したりすることも可能である。
次に、図5〜図8を参照しながら、厚肉成形品1の製造方法について説明する。図5は、厚肉成形品1を製造するための射出成形機における金型を示しており、(a)は型締め状態、(b)は型開き状態を示している。同図に示すように、この金型11は、固定側型板12および可動側型板13を備えており、これらが型締めされた状態において、前記第1次成形層2および第2次成形層3をそれぞれ成形するための第1キャビティ14および第2キャビティ15が構成される。
固定側型板12は、ランナーストリッパープレート16を間にした状態で、固定側取付板17に支持されており、第1次成形層2および第2次成形層3の成形時に付随して成形されるランナーおよびスプルー(以下、両者を合わせて「流路成形部20」という)を、金型11から自動的に取り出すために、ランナーストリッパープレート16から所定距離、離隔可能に構成されている。また、固定側型板12の第1キャビティ14に対応する部分12aは、可動側型板13側に突出する凸状に形成され、その先端面には、第1次成形層2の前述した複数のリブ4、5、6、および複数の溶融凸部8a、8b、8cを成形するために、それらと相補的な形状を有しかつ可動側型板13側に開放する凹部(図示せず)が形成されている。また、固定側型板12の第2キャビティ15に対応する部分12bは、平らに形成されている。さらに、固定側型板12、ランナーストリッパープレート16および固定側取付板17には、射出装置の2つのシリンダ18、18から第1および第2キャビティ14、15に射出される合成樹脂の流入通路としてのスプルーおよび/またはランナー(以下、両者を合わせて「樹脂流路19」という)が形成されている。
一方、可動側型板13は、可動側取付板21に回転軸22を中心として回転自在に支持されている。また、可動側型板13の第1キャビティ14および第2キャビティ15に対応する凹部13a、13aは、形状およびサイズが同一に形成され、回転軸22を中心として対称に配置されている。
図6〜図8は、厚肉成形品1の製造手順を順に示している。まず、図6(a)に示すように、金型11の固定側型板12と可動側型板13を型締めする。これにより、両型板12、13によって、第1キャビティ14および第2キャビティ15が構成される。次いで、同図(b)に示すように、第1キャビティ14に、これに対応する射出装置のシリンダ18から、溶融した合成樹脂Pを射出する。これにより、上記シリンダ18から射出された合成樹脂Pが、第1キャビティ14に対応する樹脂流路19を介して、第1キャビティ14に充填される。上記の射出完了後、同図(c)に示すように、シリンダ18側から所定の保圧をかけながら、第1キャビティ14およびこれに対応する樹脂流路19の合成樹脂Pを、所定時間冷却する。これにより、第1キャビティ14および上記樹脂流路19の合成樹脂Pが固化し、第1キャビティ14において第1次成形層2が成形されるとともに、樹脂流路19において流路成形部20が成形される。なおこの場合、第1次成形層2の温度が、その合成樹脂Pの融点よりも若干低い温度(例えば、融点よりも20〜30℃低い温度)に冷却する。
次いで、図7(a)に示すように、金型11の固定側型板12と可動側型板13を型開きするとともに、固定側型板12をランナーストリッパープレート16から離隔させる。これにより、第1次成形層2が、可動側型板13の第1キャビティ14に対応する凹部13aに保持されるとともに、固定側型板12とランナーストリッパープレート16との間から、流路成形部20が取り出される。次いで、同図(b)に示すように、可動側型板13を、回転軸22を中心として180度回転させた後、同図(c)に示すように、固定側型板12と可動側型板13を再度、型締めする。これにより、第1キャビティ14において成形された第1次成形層2が、第2キャビティ15に移動する。つまり、第1次成形層2が、第2キャビティ15にインサートされた状態になる。
次いで、図8(a)に示すように、射出装置の2つのシリンダ18、18からそれぞれ、第1キャビティ14および第2キャビティ15に、溶融した合成樹脂Pを射出する。これにより、両シリンダ18、18から射出された合成樹脂Pが、第1キャビティ14および第2キャビティ15にそれぞれ対応する樹脂流路19、19を介して、第1キャビティ14全体に充填されるとともに、第1次成形層2がインサートされている第2キャビティ15に充填される。上記の射出完了後、同図(b)に示すように、両シリンダ18、18側から所定の保圧をかけながら、第1キャビティ14および第2キャビティ15、ならびにこれらに対応する両樹脂流路19、19の合成樹脂Pを、所定時間冷却する。これにより、第1キャビティ14および第2キャビティ15、ならびに両樹脂流路19、19の合成樹脂Pが固化し、第1キャビティ14および第2キャビティ15においてそれぞれ、第1次成形層2および第2次成形層3が成形されるとともに、両樹脂流路19、19において流路成形部20、20が成形される。つまり、第2キャビティ15において、第1次成形層2と第2次成形層3が互いに積層した厚肉成形品1が成形される。
その後、図8(c)に示すように、再度、金型11の固定側型板12と可動側型板13を型開きするとともに、固定側型板12をランナーストリッパープレート16から離隔させる。この場合、図示しないエジェクタにより、第2キャビティ15に対応する可動側型板13の凹部13aから厚肉成形品1が取り出されるとともに、両樹脂流路19、19から両流路成形部20、20が取り出される。以上により、厚肉成形品1の製造が完了する。
なお、上記の図8(c)に示す型開きおよび成形品取出し後において、前述した図7(b)、(c)、図8(a)〜(c)に示す手順を繰り返すことにより、多数の厚肉成形品1を、連続して効率良く製造することができる。また、厚肉成形品1を製造する際の射出成形機の各種条件、例えば、射出装置のシリンダ18の温度、射出速度、保圧、冷却時間、および金型温度などは、合成樹脂Pの種類に応じて適宜、設定される。
以上のように、本実施形態によれば、厚肉成形品1を製造する場合、積層面2aに複数のリブ4、5、6が突設された第1次成形層2を射出成形し、その積層面2a側に積層させるように、第2次成形層3を射出成形する。各リブ4、5、6は、幅方向の両側に、傾斜するテーパ面4aを有するので、積層面2a全体が平らに構成される場合に比べて、第1次成形層2と第2次成形層3の接合部分の面積が大きくなる。このため、第1次成形層2と第2次成形層3の接合部分における融合度合が高まり、その結果、両成形層2、3の接合強度を高めることができる。また、第1次成形層2および第2次成形層3は、ボイドやヒケが生じない程度の厚さで成形される。したがって、本実施形態の製造方法により、十分な機械的特性を有するとともに、良好な外観を有する厚肉成形品1を製造することができる。また、第1次成形層2の成形後直ちに、第2次成形層3を成形するので、従来と異なり、第2次成形層3の合成樹脂Pが第1次成形層2の外周側面と第2キャビティ15との間に流入することがない。このため、厚肉成形品1において、不要なバリが生じることがないので、バリを切削する後加工が不要であり、良好な外観の外周側面を得ることができる。
また、各リブ4、5、6のテーパ面4aは、第1次成形層2と第2次成形層3の積層方向に対し、10度以上の角度範囲で傾斜しているので、第2次成形層3の成形時に、射出される合成樹脂Pの圧力がテーパ面4aに十分にかかり、それにより、テーパ面4aにおける十分な接合強度を確保することができる。加えて、同心円状の複数のリブ4、および放射状の複数のリブ5、6は、第1次成形層2の積層面2aの全体に、偏りなく均一に成形されるので、上記のリブ4、5、6による第1次成形層2と第2次成形層3との接合部分をバランス良く融合させることができる。
さらに、第1次成形層2の積層面2a側には、複数の溶融凸部8a、8b、8cが成形され、これらの溶融凸部8a、8b、8cは、第2次成形層3の成形時に、その第2次成形層3の熱によって溶融されるので、第1次成形層2と第2次成形層3との接合部分における融合度合がより高まり、両成形層2、3の接合強度をより一層高めることができる。加えて、同心円状または放射状の溶融凸部8a、8b、8cが、第1次成形層2の積層面2a側全体に、偏りなく均一に成形されるので、上記の溶融凸部8a、8b、8cによる第1次成形層2と第2次成形層3との接合部分をバランス良く融合させることができる。
また、厚肉成形品1の構成材料として、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状の補強材が添加された合成樹脂を用いる場合、補強材が含まれていない場合に比べて、第1次成形層2および第2次成形層3の強度を高めることができ、その結果として、厚肉成形品1自体の強度も高めることができる。また、例えば、厚肉成形品1に対し、第1次成形層2と第2次成形層3の積層方向に引張り荷重が作用した場合、リブ4、5、6のテーパ面4aに剪断応力が作用するものの、そのテーパ面4a付近に存在しかつテーパ面4aに沿っていない繊維状の補強材により、剪断応力に対する抗力が生じ、それにより、テーパ面4aにおける安定した接合状態を確保することができる。
次に、図9〜図14を参照しながら、本発明の第2実施形態による製造方法によって製造された厚肉成形品31、およびその製造方法について説明する。図9および図10は、厚肉成形品31を示しており、この厚肉成形品31は、前述した第1実施形態における厚肉成形品1と同様、溶融した所定の合成樹脂を金型内に射出する射出成形によって製造されたものである。両図に示すように、厚肉成形品31は、平面形状がほぼ矩形状で、所定寸法(例えば10mm)以上の比較的厚い厚さを有するブロック状に形成され、先に射出成形される上段成形層32(第1次成形層)および下段成形層33(第1次成形層)と、これらの成形後に、両成形層32、33の間に射出成形される中段成形層34(第2次成形層)とで、互いに積層された3層構造に構成されている。なお、この厚肉成形品31の中心部には、上方に開放し、平面形状が円形の凹部31aが形成されている。
図10(b)に示すように、上段成形層32の中段成形層34と積層する下面(以下「積層面32a」という)、および下段成形層33の中段成形層34と積層する上面(以下「積層面33a」という)には、前述した第1実施形態における厚肉成形品1の第1次成形層2と同様、中段成形層34側に突出する複数のリブ35および36がそれぞれ設けられている。すなわち、これらのリブ35および36は、厚肉成形品1の第1次成形層2のリブ4、5および/または6と同様、積層面32a、33aに沿って延び、同心円状や放射状に配置されている。また、各リブ35、36は、上記リブ4などと同様、幅方向(図10(b)の左右方向)の両側に、中段成形層34側に向かって互いの間隔が狭まるように形成され、各層32〜34の積層方向(図10(b)の上下方向)に対し、10度以上の角度範囲で傾斜するテーパ面を有している。
なお、この厚肉成形品31では、上段成形層32のリブ35と下段成形層33のリブ36の配置関係により、中段成形層34の高さ寸法がほぼ一定になるように設定されている。また、上段成形層32の凹部31aに対応する部分は、それ以外の部分よりも、中段成形層34側に突出するように形成される一方、下段成形層33の凹部31aに対応する部分は、それ以外の部分よりも凹んだ状態に形成されている。
また、この厚肉成形品31の製造時における上段成形層32および下段成形層33の成形時には、前記厚肉成形品1の第1次成形層2の溶融凸部8a、8bおよび/または8cと同様の溶融凸部が、リブ35、36や積層面32a、33aに形成される。
以上のように構成された厚肉成形品31では、上段成形層32、下段成形層33および中段成形層34が同一の合成樹脂で構成され、その合成樹脂として、前記厚肉成形品1と同様、前述した多種の合成樹脂を採用することが可能である。
次に、図11〜図14を参照しながら、厚肉成形品31の製造方法について説明する。図11は、厚肉成形品31を製造するための射出成形機における金型を示しており、(a)および(b)は型締め状態、(c)および(d)は型開き状態を示している。この金型41は、固定側型板42および可動側型板43を備えており、固定側型板42が固定側取付板44に不動に支持される一方、可動側型板43が、ガイドプレート45を介して、後述する第1次成形位置と、第2次成形位置との間で、上下方向に移動自在の状態で、可動側取付板46に支持されている。そして、図11(a)に示すように、可動側型板43が第1次成形位置に位置するときに、固定側型板42と型締めされた状態では、前記上段成形層32および下段成形層33をそれぞれ成形するための上キャビティ47(第1キャビティ)および下キャビティ48(第1キャビティ)が構成される。一方、図11(b)に示すように、可動側型板43が第2次成形位置に位置するときに、固定側型板42と型締めされた状態では、上段成形層32および下段成形層33の間に中段成形層34を成形するための中キャビティ49(第2キャビティ)が構成される。
図11(c)に示すように、固定側型板42の上キャビティ47に対応する凹部42aは、可動側型板43側に開放するように形成されている。また、固定側型板42の下キャビティ48に対応する部分42bは、可動側型板43側に突出する凸状に形成され、その先端面には、下段成形層33の前述した複数のリブ36および溶融凸部を成形するために、それらと相補的な形状を有しかつ可動側型板43側に開放する凹部(図示せず)が形成されている。
一方、可動側型板43は、アクチュエータ50により、ガイドプレート45で案内されながら、図11(a)および(c)に示す第1次成形位置と、同図(b)および(d)に示す第2次成形位置との間で、上下方向に駆動されるように構成されている。また、可動側型板43の上キャビティ47に対応する部分43aには、上段成形層32の前述した複数のリブ35および溶融凸部を成形するために、それらと相補的な形状を有しかつ固定側型板42側に開放する凹部(図示せず)が形成されている。さらに、可動側型板43の下キャビティ48に対応する凹部43bは、固定側型板42側に開放するように形成されている。
また、図11(a)に示すように、可動側型板43が第1次成形位置に位置した状態で、固定側型板42と可動側型板43が型締めされたときには、両型板42、43に、射出装置のシリンダ51から上キャビティ47および下キャビティ48に射出される合成樹脂Pの流入通路としてのスプルーおよびランナー(以下、両者を合わせて「第1樹脂流路52」という)が構成される。一方、図11(b)に示すように、可動側型板43が第2次成形位置に位置した状態で、固定側型板42と可動側型板43が型締めされたときには、両型板42、43に、シリンダ51から中キャビティ49に射出される合成樹脂Pの流入通路としてのスプルー(以下、「第2樹脂流路53」という)が構成される。
図12〜図14は、厚肉成形品31の製造手順を順に示している。まず、図12(a)に示すように、金型41の固定側型板42と第1次成形位置に位置する可動側型板43とを型締めする。これにより、両型板42、43によって、上キャビティ47および下キャビティ48が構成されるとともに、第1樹脂流路52が構成される。次いで、同図(b)に示すように、上キャビティ47および下キャビティ48に、射出装置のシリンダ51から、溶融した合成樹脂Pを射出する。これにより、上記シリンダ51から射出された合成樹脂Pが、第1樹脂流路52を介して、上キャビティ47および下キャビティ48に充填される。上記の射出完了後、同図(c)に示すように、シリンダ51側から所定の保圧をかけながら、上キャビティ47および下キャビティ48、ならびに第1樹脂流路52の合成樹脂Pを、所定時間冷却する。これにより、上キャビティ47および下キャビティ48、並びに第1樹脂流路52の合成樹脂Pが固化し、上キャビティ47および下キャビティ48においてそれぞれ、厚肉成形品31の上段成形層32および下段成形層33が成形されるとともに、第1樹脂流路52において第1流路成形部52aが成形される。なお、この場合、上段成形層32および下段成形層33の温度が、その合成樹脂Pの融点よりも若干低い温度(例えば、融点よりも20〜30℃低い温度)に冷却する。
次いで、図13(a)に示すように、金型41の固定側型板42と可動側型板43を型開きする。この場合、上段成形層32が、固定側型板42の上キャビティ47に対応する凹部42aに保持される一方、下段成形層33が、可動側型板43の下キャビティ48に対応する凹部43bに保持される。またこの場合、固定側型板42と可動側型板43の間から、第1流路成形部52aが取り出される。次いで、同図(b)に示すように、アクチュエータ50により、その駆動ロッド50aを介して、可動側型板43を第1次成形位置から第2次成形位置に駆動する。これにより、可動側型板43側の下段成形層33が、固定側型板42側の上段成形層32と対向するように移動し、両成形層32、33の積層面32a、33aが向かい合う。次いで、同図(c)に示すように、固定側型板42と可動側型板43を再度、型締めする。これにより、両型板42、43によって、中キャビティ49が構成されるとともに、第2樹脂流路53が構成される。この場合、中キャビティ49では、上段成形層32および下段成形層33が間隔を隔ててインサートされた状態になるとともに、両成形層32、33の間に第2樹脂流路53が連なった状態になる。
次いで、図14(a)に示すように、射出装置のシリンダ51から、中キャビティ49に、溶融した合成樹脂Pを射出する。これにより、シリンダ51から射出された合成樹脂Pが、第2樹脂流路53を介して、中キャビティ49の上段成形層32と下段成形層33の間に充填される。上記の射出完了後、同図(b)に示すように、シリンダ51から所定の保圧をかけながら、中キャビティ49および第2樹脂流路53の合成樹脂Pを、所定時間冷却する。これにより、中キャビティ49において、上段成形層32と下段成形層33の間の合成樹脂Pが固化し、上段成形層32と下段成形層33の間に中段成形層34が成形される。つまり、中キャビティ49において、上段成形層32と下段成形層33の間に中段成形層34が積層された厚肉成形品31が成形される。
その後、図14(c)に示すように、再度、金型41の固定側型板42と可動側型板43を型開きする。この場合、図示しないエジェクタにより、可動側型板43の凹部43bから厚肉成形品31が取り出されるとともに、第2樹脂流路53から流路成形部53が取り出される。以上により、厚肉成形品31の製造が完了する。
なお、上記の図14(c)に示す型開きおよび成形品取出し後において、可動側型板43を下方の第1次成形位置に戻してから、前述した図12(a)〜図14(c)に示す手順を繰り返すことにより、多数の厚肉成形品31を、連続して効率良く製造することができる。
以上のように、本実施形態によれば、厚肉成形品31を製造する場合、積層面32aに複数のリブ35が突設された上段成形層32、および積層面33aに複数のリブ36が突設された下段成形層33を射出成形し、上段成形層32と下段成形層33を、各々の積層面32a、33aが向かい合うように対向させた状態で、両成形層32、33の間に中段成形層34を射出成形する。これにより、第1実施形態と同様、上段成形層32と中段成形層34の接合部分、および下段成形層33と中段成形層34の接合部分の融合度合が高まり、3つの成形層32、33、34の接合強度を高めることができる。しがたって、本実施形態の製造方法により、第1実施形態と同様の効果を有する厚肉成形品31を製造することができる。
なお、本発明は、説明した第1および第2実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1実施形態において、各リブ4、5、6の幅方向の両側にテーパ面4a、4aを設けたが、両側の一方にのみ、テーパ面4aを設けるようにしてもよい。また、第1実施形態において、同心円状のリブ4、および放射状のリブ5、6を設けたが、これらの種類や配置形状は特に限定されるものではなく、例えばリブ4、5、6のいずれか1つまたは2つを設けたり、それらに代えて、格子状のリブを設けたりすることも可能である。さらに、第1実施形態において、第1次成形層2の積層面2a側に溶融凸部8a、8b、8cを設けたが、リブ4、5、6によって、第1次成形層2と第2次成形層3の間に十分な接合強度が得られる場合には、溶融凸部8a、8b、8cを省略することも可能である。以上のことは、第2実施形態のリブ35、36や溶融凸部も同様である。
また、第2実施形態では、厚肉成形品31の両側の成形層、すなわち上段成形層32および下段成形層33を射出成形した後、両成形層32、33間に中段成形層34を射出成形することにより、3層構造の厚肉成形品31を製造したが、各成形層ごとに順に射出成形するようにしてもよい。この場合、例えば、金型の可動側型板または固定側型板を、型締めおよび型開きする方向と直交する所定方向にスライド自在に構成するとともに、その所定方向に沿って、成形すべき層分のキャビティを並設する。このような金型を用いることにより、3層構造はもちろん、4層以上の厚肉成形品を製造することも可能である。
また、第1実施形態では、厚肉成形品1を構成する第1次成形層2および第2次成形層3を同一の合成樹脂で構成し、第2実施形態では、厚肉成形品31を構成する上段成形層32、下段成形層33および中段成形層34を同一の合成樹脂で構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各成形層を互いに異なる種類の合成樹脂で構成することも可能である。
また、実施形態で示した厚肉成形品1、31の外形や、それらを製造するための金型11、41の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。