JP5750806B2 - 土壌が有する白紋羽病抑止活性の評価方法 - Google Patents
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Description
白紋羽病菌は土壌伝染性があり、果樹の根の表面に白色の菌叢と樹皮下に菌糸束を形成する。特に、根を腐敗させる病徴を示す。そのため、白紋羽病の罹病部の観察は容易でなく、地上部に症状が確認された時には、果樹そのものが枯死する場合が多い。当該特徴により、白紋羽病は果樹生産に甚大な被害を与えている。そのため、果樹類の生産現場から確実な防除方法の開発が望まれている。
特に、土壌にもともと生存する白紋羽病に対する拮抗微生物を用いた生物防除方法は、環境負荷低減の点で特に有用な技術である。例えば、バチルス(Bacillus)属等の細菌類(特許文献1〜3等 参照)、トリコデルマ(Trichoderma)属菌などの糸状菌類(特許文献4,5等 参照)、エノキタケ(キノコ類)の菌糸(特許文献6等 参照)等に、白紋羽病に対する拮抗作用(致死作用、増殖阻害作用等)があることが報告されている。
しかし、従来行われてきた白紋羽病に対する拮抗作用の評価系は、ある特定の微生物に注目し、当該微生物が白紋羽病菌の増殖阻害、植物感染時の発病抑止の影響を与えるかを、個別に行って評価するものであった(特許文献1〜6等 参照)。即ち、土壌全体が有する白紋羽病に対する抑止活性を評価できる技術ではなかった。
しかしながら、当該方法は、対照との比較によって生育抑止率という数値の算出が必須とする技術である。そのため、評価系での原理上、白紋羽病菌の生長が停止しただけなのか、白紋羽病菌が死滅しているのかを判定することが不可能であった。
また、当該方法を白紋羽病菌に対する評価に応用した場合、算出値のばらつきが大きく、検出感度の点で大きな問題が認められた。
さらに、当該方法を実施する際には、土壌と海砂との混合率の決定等の条件検討が必要であり、加えて、培地の作成や培養等の専門的な機器等を備えた設備(実験室等)も必要となり、生産現場において実施できる技術とは認めらなかった。
また、本発明の方法では、前記(C)で計測した死滅域が、前記(A)の処理で死滅させた領域よりも拡大していた, 又は, 変わらない場合は、評価対象土壌が有する白紋羽病菌に対する抑止活性(拮抗微生物の拮抗作用)が強いと、即座に評価することができる。
従って、本発明の評価系では、原理的に比較対照の土壌を調製することなく、評価対象土壌の白紋羽病抑止活性を評価することが可能となる。
即ち、〔請求項1〕に係る本発明は、以下(A)〜(D)に記載の工程を順に行うことを特徴とする、土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価する方法に関する。
(A) 木片上の全部又は一部が、培養した白紋羽病菌の菌叢によって覆われた木片について、当該菌叢の一部を死滅させる工程。
(B) 前記死滅させた菌叢, 及び, 生存している菌叢の一部又は全部を土壌と接触させて、7〜120日間培養する工程。
(C) 前記木片上における白紋羽病菌の菌叢の死滅域の長さ又は面積を計測する工程。
(D) 前記計測した値を基にして、評価対象の土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価する工程。
また、〔請求項2〕に係る本発明は、前記(A)工程において死滅させた菌叢の死菌体が、評価対象土壌中の白紋羽病菌に対する拮抗微生物を誘引し, 且つ, 当該拮抗微生物の急速な増殖を促す性質を有するものである、請求項1に記載の評価方法に関する。
また、〔請求項3〕に係る本発明は、前記(A)工程で培養された白紋羽病菌が、非病原性の菌株及び/又は低病原性の菌株である、請求項1又は2に記載の評価方法に関する。
また、〔請求項4〕に係る本発明は、前記(A)工程における菌叢の一部分を死滅させる処理が、35℃以上の温水への接触によって行うものである、請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法に関する。
また、〔請求項5〕に係る本発明は、前記木片が、長軸状の木片である、請求項1〜4のいずれかに記載の評価方法に関する。
また、〔請求項6〕に係る本発明は、前記(A)工程における菌叢の一部を死滅させる処理が、;菌叢で覆われた長軸状の木片の先端から5mm以上の領域の菌叢、;を死滅させる処理である、請求項5に記載の評価方法に関する。
また、〔請求項7〕に係る本発明は、前記(B)工程における土壌接触処理が、;前記死滅させた菌叢, 及び, 死滅させた菌叢と生存している菌叢の境界部分から5mm以上の領域の生存している菌叢、;を埋土する処理である、請求項5又は6に記載の評価方法に関する。
また、〔請求項8〕に係る本発明は、以下(a)に記載の構成物品を1つ以上含み、且つ、以下(b)に記載の構成物品を含むことを特徴とする、土壌が有する白紋羽病抑止活性の評価キットに関する。
(a) 請求項1〜7のいずれかに記載の(A)工程及び/又は(B)工程で用いる、ガラス, ポリエチレン, ポリエチレンテレフタレート, ポリスチレン, 又はポリプロピレンで形成されてなる、上部が開口した容器。
(b) 3〜40cmの長さであり、且つ、長軸状の木片の全部, 又は, 先端から1cm以上の部分が、非病原性又は低病原性の白紋羽病菌である、NITE P-269株及び/又はFERM P-18142株の菌叢で覆われた長軸状の木片。
また、〔請求項9〕に係る本発明は、上記(a)の容器が、透明又は半透明である上部が開口した容器であり、且つ、上記(b)の木片の代わりに以下(c)に記載の構成物品を含むことを特徴とする、請求項8に記載の評価キットに関する。
(c) 上記(b)に記載の特徴を有する同じ長さの長軸状の木片を、;2〜100本下方向に固着させた板状物、;を備えてなる蓋部であり、;前記(a)に記載の容器の上部開口部と接続した際に、前記長軸状の木片の下部先端部が、前記容器(a)の底部と接触することなく、前記(a)の容器の内部を密封することが可能な蓋部。
本発明により、果樹類の栽培現場でも実施が可能な極めて簡便な手法であり, 且つ, 極めて高い感度で、土壌が有する白紋羽病抑止活性(拮抗微生物の拮抗作用)を評価することが可能となる。
これにより本発明では、果樹の栽培前に、土壌の白紋羽病の発病リスクを判定することを可能とする。
従って、本発明の方法として最も簡便な態様としては、前記所定の木片を評価対象土壌に指し、所定期間経過後に抜いて、死滅菌叢域を目視するだけで、評価対象土壌の白紋羽病抑止活性を評価することが可能となる。
「温水治療」とは、白紋羽病菌が通常の土壌微生物よりも大幅に低い致死温度であることを利用し、土壌の地表面に40℃程度の温水点滴処理を行う土壌改良技術を指す(特許文献8等 参照)。当該技術は、白紋羽病の治療・防除効果が高く且つ環境負荷の小さい技術として、注目を集める技術である。
温水治療の成否は、土壌中の拮抗微生物の作用の強さ(種類や密度等)に大きく依存すると考えられる。
従って、本発明の評価方法にて予め対象土壌中の微生物の拮抗作用(土壌が有する白紋羽病抑止活性)の強さを評価することにより、温水治療を施行する際の効果を予測することが可能となる。
従って、本発明の評価方法にて温水治療施行後の土壌の微生物の拮抗作用(土壌が有する白紋羽病抑止活性)の強さを評価することにより、温水治療の効果の持続性を評価することが可能となる。
本発明は、土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価する方法に関する。詳しくは、白紋羽病菌の菌叢で覆われた木片について、(A)当該菌叢の一部のみを死滅させる処理を行い、次いで(B)当該死滅菌叢と生存菌叢の両方を評価対象土壌に接触させて培養し、(C)木片上の死滅域を計測して、(D)評価することによって、対象土壌が有する白紋羽病に対する抑止活性、を評価する方法に関する。
本発明の評価方法では、‘白紋羽病菌菌叢で覆われた木片’を用いることを特徴とする技術である。
ここで、木片とは、長軸状、板状、球状等いかなる形状のものを用いることができるが、長軸状(棒状、柱状、串状、長板状等)の木片を用いることが好ましい。
材質としては、如何なるものでも良いが、例えばカバノキ、アスペン等を挙げることができる。また、おが屑等を固めた集合材を用いることもできる。
なお、抗菌性物質が多く含まれているものなどは適さないので、使用する前に培養可能かを確認することが望ましい。
また、木片の表面状態や材質は、同一の評価に用いる木材全部で均一なものを用いることが望ましい。表面の凹凸具合や材質が均一でない場合、菌叢死滅域の増減を正確に測定できなくなる可能性があり望ましくない。
また、長さの上限としては操作性に適した長さであれば良く、例えば40cm以下、好ましくは30cm以下、さらには25cm以下のものが望ましい。
このような木片として具体的には、爪楊枝、割り箸、串焼き用の串、竹ひご等を挙げることができる。
なお、当該培養は、一般家庭にあるビニール袋、蓋が可能なバケツ、クリアケース、プラケース等を用いて行うことも可能である。
例えば、長軸状の木片の場合、先端から少なくとも1cm以上、好ましくは2cm以上、さらには3cm以上、さらには4cm以上、さらには5cm以上、さらには6cm以上、さらには8cm以上、さらには10cm以上、さらには15cm以上、が覆われている木片を挙げることができる。
ここで、非病原性の菌株として具体的には、NITE P-269株(W450株)を挙げることができる。また、低病原性の菌株として具体的には、FERM P-18142株(W370株)を挙げることができる。
なお、野外への白紋羽病菌のリークを鑑みると、非病原性の菌株を用いることがより望ましい。
また、当該培養済みの木片を調製した後、低温(例えば0〜4℃)に保管しておくことで、約3ヶ月間(好ましくは2ヶ月間)の適時使用が可能となる。
本発明では、上記調製した白紋羽病菌菌叢で覆われた木片について、菌叢の一部を死滅させる処理を行うことを特徴とするものである。
ここで、一部死滅処理は、木片上の菌叢の一部のみを死滅させる処理を指し、全部を死滅させるものではない。
仮に本工程を行わなかった場合、次工程の土壌接触処理で拮抗微生物の誘引及び増殖促進が起こらず、感度良く評価を行なうことができない。
また、仮に菌叢全部を死滅させた場合、当然ながら本発明の評価を行なうことができない。
ここで加熱処理としては、温水との接触処理、ホットプレートやヒートブロック等の個体相との接触処理、バーナーやアルコールランプ等の炎で直接菌叢を炙る処理、などを挙げることができる。
なお、本発明においては、死菌させた死菌体に水分が含まれている方が、次工程の土壌接触処理での拮抗微生物の増殖促進の点で(測定値の検出感度の点で)好適である。
そのため、加熱処理後の死菌体が乾燥状態となる場合には、水分を含ませる処理をすることが好適である。
また、温水処理は浸漬や噴霧によって行うことが可能であるが、特に浸漬による態様を採用することで、長軸状木片の先端から所定範囲の菌叢のみを、ピンポイントで死滅させることが可能となる。
例えば、45℃の温水浸漬の場合は30分間の処理にて、70℃の温水浸漬の場合は20秒間の処理にて、浸漬した部分の白紋羽病菌の菌叢を死滅させることができる。
なお、好ましくは、先端から1〜15cm、特には2〜10cm、さらには3〜8cmを、死滅させることが、死滅領域の増減の判断する上で望ましい。
好ましくは、当該領域が1〜15cm、特には2〜10cm、さらには3〜8cmを生存させることが、死滅領域の増減を判断する上で望ましい。
本発明は、上記工程によって死滅させた菌叢と生存菌叢の両方を、評価対象である供試土壌に接触させて培養する処理を行うことを特徴とする技術である。
当該土壌接触処理では、上記処理にて死滅した死菌体によって、土壌中の拮抗微生物を特異的に誘引し、誘引された拮抗微生物が死菌体を餌にして木片上で急速に増殖させるために行う処理である。
当該処理により、本発明では、土壌に含まれる拮抗微生物の白紋羽病菌に対する作用(致死作用、増殖阻害作用)の感度を大幅に増幅して検出することが可能となる。
なお、当該土壌接触処理は、バケツ、ビニール袋、クリアケース、プラケース、水槽、植木鉢、プランター等を用いて行うことも可能である。
例えば、バチルス(Bacillus)属等の細菌類、トリコデルマ(Trichoderma)属菌などの糸状菌類、エノキタケ(キノコ類)の菌糸、等を挙げることができる。
具体的には、(i)長軸状木片に形成された菌叢死滅領域の全領域に加えて、(ii)死滅させた菌叢と生存菌叢の境界部分から所定の領域の生存菌叢を、一緒に土壌接触させる態様を挙げることができる(例えば、図2(3), 図6(C) 参照)。
また、当該土壌接触は、具体的には、埋土や土壌中への挿入によって行う。
特には、当該領域が1〜15cm、特には2〜10cm、さらには3〜8cmとすると、死滅領域の増減を判断する上で好適である。
また、当該処理の温度としては、室温(具体的には10〜30℃、好ましくは20〜28℃)で行うことが望ましい。なお、白紋羽病菌は致死温度が低く高温に弱いため、33℃以下で行うことが望ましい。
本発明の方法では、上記土壌接触処理を行った後に木片を回収し、白紋羽病菌の菌叢死滅域の計測を行うことを要する。
土壌接触処理後の木片での菌叢死滅域は、供試土壌中に含まれる拮抗微生物の作用(拮抗力)の強弱の違いによって、当該領域が増加又は減少して観察される。
供試土壌中の拮抗微生物が多い場合には、拮抗微生物の白紋羽病菌に対する致死作用・増殖阻害作用(拮抗力)が高い。そのため、白紋羽病菌の生存菌叢の減少により、菌叢死滅域が拡大して観察される。
一方、供試土壌中の拮抗微生物が少ない場合には、拮抗微生物の白紋羽病菌に対する致死作用・増殖阻害作用(拮抗力)が低い。そのため、白紋羽病菌の菌叢の増殖により菌叢死滅域が減少して観察される。
具体的には、長軸状の木片の場合、「一部死滅処理を行った側の先端」から「死滅域と生存域の境界線」までの距離を測ることが好適である(図3の符号33 参照)。
ここで、当該境界は、木片上の菌叢等を水等で洗い流し、木片上に沈着している黒線を指標としても判定可能である。
なお、当該黒線は、土壌接触処理において白紋羽病菌が拮抗微生物に対する防御のために分泌するメラニン成分であり、拮抗微生物と接する部分で形成される。また、目視にて明瞭に観察が可能な線である。
そのため、果樹栽培現場での実施を考慮すると、当該黒線を指標とする態様が簡便であり好適と認められる。
拮抗微生物が全く存在しない土壌を供試した場合は、当然であるが、拮抗微生物のコロニーや菌叢は形成されない。
本発明では、上記菌叢死滅域の計測値を基にして、供試土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価することが可能である。なお、原理的には、対照土壌の測定値との比較を行うことなく、当該評価をすることが可能である。
例えば、(i) 土壌接触処理後の菌叢死滅域が、当該処理前の領域よりも‘拡大’している場合、土壌に含まれる拮抗微生物全体の作用が高い状態にある。従って、この場合、土壌の白紋羽病抑止活性が‘高い’と評価することができる。
また、(ii) 土壌接触処理後の菌叢死滅域と当該処理前の領域が‘同じ’である場合、土壌に含まれる拮抗微生物全体の作用により、白紋羽病菌の増殖が抑えられている状態である。即ち、この場合も、土壌の白紋羽病抑止活性は‘高い’と評価することができる。
一方、(iii) 土壌接触処理後の菌叢死滅域が、当該処理前の領域よりも‘減少’している場合、土壌に含まれる拮抗微生物全体の作用が低い状態にある。従って、この場合、土壌の白紋羽病抑止活性が‘低い’と評価することができる。
この場合、前記測定により死滅域が減少している場合であっても、減少の度合いを比較することによって、当該活性の相対的な強さを評価することが可能となる。
具体的には、リンゴ、ナシ、ブドウ、ビワ、イチジク、キウイフルーツ、モモ、ウメ、オウトウ、アンズ、スモモ、カキ、カンキツ、クリ、クワ、チャ、サクラ、カシ、ナラ、ポプラ、カエデ、ツバキ、ツツジ、バラ、キク、オモト、シャクヤクなど、を栽培する際の土壌を評価できる点で有効な技術となる。
また、本発明の方法で評価が可能な土壌が有する抑止活性としては、Rosellinia necatrix又はRosellinia compactに属する菌が引き起こす植物病(白紋羽病)であれば、如何なる病気の抑制活性の評価でも可能である。
本発明における上記評価方法は、農家等に一般的に常備されている一般的器具類を用いて実施可能な技術であるが、より簡便で正確な評価を行なうためには、以下のような構成物品を含む評価キットでの態様が好適である。
本発明の上記評価を簡便に行うキットとして、最少単位の構成物品からなる態様としては、(a)上部が開口した容器と、(b)白紋羽病菌菌叢で覆われた長軸状の木片、を含むキットを挙げることができる。例えば、当該簡易版キットの一態様を図1(A)に示す。
当該容器は、容器中にお湯を入れることで上記一部死滅処理を行うことを可能とする容器である。また、お湯を棄てた後、供試土壌を入れることで、そのまま土壌接触処理を行うことも可能となる。
また、当該容器をキットに複数個梱包させることで、上記各処理で専用に用いる容器とすることもできる。
ここで、木片(図1の符号3)の長さや材質等, 菌叢の覆われ程度等, の好適な態様については、上記段落の記載した態様を採用することができる。
また、ここで白紋羽病菌(図1の符号4)としては、非病原性又は低病原性の白紋羽病菌である、NITE P-269株及び/又はFERM P-18142株を指すものである。
なお、当該(b)の木片は、評価のバラツキを減少させるため、一つ供試土壌に対して3本(好ましくはそれ以上)を用いることが望ましいので、キット中には測定回数に応じた多数の木片を梱包することが望ましい。
本発明の評価キットの別の態様としては、上記(b)の木片の代わりに、(c)白紋羽病菌菌叢で覆われた長軸状の木片を備えた蓋部、を梱包する態様を挙げることができる。例えば、当該精密測定版キットの一態様を図1(B)に示す。
当該態様では、蓋部に同じ長さ複数の木片が装着された態様となる。そのため、装着された全ての長軸状木片において、一部死滅させる領域や土壌に接触させる領域を、同じ長さに揃えることが極めて容易となる。従って、当該態様は、多検体処理に適した態様となる。
本数の上限としては、となり合う木片どうしの菌叢が接触しない間隔であれば、特に制限はないが、例えば、100本以下、特に81本以下、64本以下を挙げることができる。
なお、各木片は、等間隔に配置すること望ましい。
また、(a)容器との接続部分には、パッキンやO-リングをかませたり、パラフィルムで覆う態様とすることも可能である。
土壌が有する白紋羽病抑止活性の評価方法を確立するため、以下の各処理条件の組合せが異なる試験を行った(試験区1-1〜1-3)。
プラントボックスの底面に径2.5mmのドリル穴を1cm間隔で25個(=縦5個×横5個)空け、オートクレーブ滅菌した‘上部プラントボックス’を作成した。
また、爪楊枝(カバノキ材)を蒸留水中でオートクレーブ滅菌したものを準備した。
そして、上部と下部プラントボックスの接続部分、上部プラントボックスの蓋部分をパラフィルムでシールし、乾燥とプラントボックスの不慮の分断防止を図った。
なお、当該実施例において、蓋をした上部プラントボックスに爪楊枝を装着したものが、図1における蓋部6に相当する。また、下部プラントボックスが上部開口容器2に相当する。
新たな滅菌プラントボックスに滅菌蒸留水100ml程度を入れた後、湯煎して45℃の温水が入ったプラントボックスを準備した。
取り外した上部プラントボックスを、温水の入った一部死滅処理用プラントボックスに重ね、培養後の爪楊枝の「先端から約1cm」が温水に浸るようにした。そして、下部プラントボックスを湯煎して温水を45℃に維持し、30分間放置(白紋羽病菌の一部死滅処理)を行った。
当該処理後、上部プラントボックスを外して死滅処理プラントボックス内の温水を廃棄し、再度上部プラントボックスを重ね、そのまま10分程度放置し冷ました。当該状態を撮影した写真像を図2(2)に示した。
なお、当該処理を行わなかった試験区1-3では、菌叢で覆われたままの状態となっていた。
新たなプラントボックスに、評価対象である各供試土壌を200ml程度入れたプラントボックスを準備した。各供試土壌は、野外で採取した後、篩(4mm目)で石等を除去したものを使用した。
土壌としては、オートクレーブ滅菌後にTrichoderma harzianum(白紋羽病菌の拮抗微生物である糸状菌)を均一に混和した土壌(試験区1-1,1-3)と、オートクレーブ滅菌しただけの土壌(試験区1-2)を用意した。
そして、23℃の培養器内で1ヶ月間放置した(土壌接触処理)。当該処理の状態を撮影した写真像を図2(3)に示した。
滅菌濾紙(径5cm)2〜3枚と滅菌蒸留水4〜5mlを入れた新たな滅菌プラントボックスを準備した。なお、蒸留水は、プラントボックス内の乾燥を防ぐために入れた。
これを濾紙と蒸留水が入ったプラントボックスに重ね、23℃で2日間放置した。当該処理の状態を撮影した写真像を図2(4)に示した。
計測の結果を表1に示した。なお、中央部の9本の爪楊枝については、生育状況のバラツキが大きいため計測に用いなかった。
また、計測後さらに5日放置した爪楊枝の先端の顕微鏡像を図4(A)〜(C)に示した。
・評価系の有効性について
試験区1-1,1-2の計測値の比較から、供試土壌中の拮抗微生物の存在の有無によって、白紋羽病菌の菌叢死滅域(mm)の増減挙動が、全く異なることが示された。
具体的には、拮抗微生物が存在する土壌(試験区1-1)を供試した場合、当該菌叢死滅域(mm)が、先端から1cm(一部死滅させた領域)よりも大幅に(先端から3cmに)拡大していることが示された(図4(A) 参照)。これは、上記(3)の処理において、土壌中の拮抗微生物が有する白紋羽病菌に対する致死作用や増殖阻害作用によって、死滅域が拡大したものと推測される。
一方、拮抗微生物が存在しない土壌(試験区1-2)を供試した場合、当該菌叢死滅域(mm)が、完全に消滅していることが示された(図4(B))。これは、上記(3)の処理で土壌中に白紋羽病菌の生育を妨げる微生物が全く存在しないため、白紋羽病菌が再び生育したためと認められる。
例えば、一部死滅させた領域(本実施例では先端から1cm)よりも死滅域が拡大した場合、および、1cmから変わらない場合は、供試土壌中に存在する拮抗微生物の活性が極めて強いと評価できる。
一方、一部死滅させた領域(本実施例では先端から1cm)よりも死滅域が減少した場合でも、供試土壌間の比較によって、拮抗微生物活性の相対的な強さを評価できる。
上記一連の処理のうち、温水による白紋羽病菌の一部死滅処理(上記(2)の処理)を行わなかった場合(試験区1-3:対照)では、土壌中に拮抗微生物が存在しているにも関わらず、白紋羽病菌がほとんど減少しなかった(図4(C))。
即ち、当該一部死滅処理を行わない場合、検出感度が極めて低くなることが示された。
また、本発明の評価方法の原理は、白紋羽病の死菌体が餌として拮抗微生物を爪楊枝に特異的に集め、急速な増殖を促すことにより、土壌中の拮抗微生物活性を検出する感度が大幅に増幅されて奏されるものと推測された。
なお、土壌接触処理後の菌叢死滅域と生存域の境界線は、黒線(白紋羽病菌が拮抗微生物に対する防御のために分泌したメラニン成分)として観察されるため、当該黒線を指標にしても計測を行うことが可能であることが示された(図3の符号33 参照)。
実施例1で確立した評価方法を用いて、野外土壌における白紋羽病抑止活性の評価を実際に行った。
なお、各土壌試料のサンプリングは異なる場所にて3回ずつ行い、それぞれについて当該計測を行った。計測結果を図5に示した。
これは、罹病根周辺の土壌では、白紋羽病菌に対する拮抗微生物の生息密度が大幅に高まっているためと推測された。
このことから、白紋羽病の罹病根周辺土壌は、健全土壌と比べて、白紋羽病菌に対する拮抗微生物の活性が高いこと(即ち、白紋羽病抑止活性が高いこと)が示された。
果樹生産現場においても利用しやすい技術とするため、実施例1で確立した白紋羽病抑止活性の評価方法が、一般農家に常備されているような市販の器具等を用いても実施可能かを検討した。
2つに割った割り箸(アスペン材, 長さ20cm)30本を、沸騰した水道水が入った鍋を用いて10〜15分間煮沸滅菌した。その後、鍋に蓋をしたまま放置し、お湯の温度を40℃以下にした。
新たな割り箸を用いて、‘煮沸滅菌した割り箸’を鍋内から取り出し、速やかに市販の透明ビニール袋(40×30cm)に入れた。
ビニール袋内に多くの空気が入るようにして袋口を閉じ、23℃の培養器内で1ヶ月放置することで、菌叢が割り箸全体を覆うまで白紋羽病菌を培養した。当該状態を撮影した写真像を図6(B)に示した。
白紋羽病菌を培養した割り箸の一方の先端5cmを70℃のお湯に20秒間浸漬することによって、先端から5cm迄の菌叢を死滅させた。
市販のバケツ(5L)に、供試土壌を深さ約10cm程度まで入れた。なお、各供試土壌は、野外で採取した後、篩(4mm目)を用いて石などを除いた。
土壌としては、罹病根周辺の土壌(試験区3-1:拮抗微生物が多く存在する土壌), ナシ樹木間の健全土壌(試験区3-2), 前記健全土壌を55℃で3日間熱処理した土壌(試験区3-3:拮抗微生物を人為的に減らした土壌)、を用意した。
これらのバケツの中に、前記(2)の処理をした割り箸をバケツの底まで挿し込み、先端から10cmが土壌に挿入された状態とした。当該状態を撮影した写真像を図6(C)に示した。
そして、土が乾燥しないように蓋をして、20℃程度の暗所で1ヶ月放置した。
土壌から割り箸を抜き取り、割り箸に付いた土等を水道水中で強くこすりながら洗浄した。
そして、割り箸の先端から10cmの間に形成された黒線(菌叢死滅域と生存域の境界線)の位置を観察し(図7の符号33 参照)、先端からの距離を測定した。結果を表2及び図7に示した。
その結果、罹病周辺部土壌(試験区3-1:拮抗微生物が多く存在する土壌)を供試した場合、菌叢死滅域は、最初に一部死滅させた領域(先端から5cm)よりも約1.5〜2.5cm拡大したことが観察された(図7(A) 参照)。
また、通常の健全土壌(試験区3-2)を供試した場合は、菌叢死滅域は、最初に一部死滅させた領域(先端から5cm)よりも約0.1〜0.5cm拡大することが観察された(図7(B) 参照)。
一方、熱処理した土壌(試験区3-3:拮抗微生物を人為的に減らした土壌)を供試した場合、菌叢死滅域は、最初に一部死滅させた領域(先端から5cm)よりも約3.0〜5.0cm減少することが観察された(図7(C) 参照)。
また、黒線を指標とすることで、より容易に測定及び評価が可能であることが示された。
また、当該技術の普及にあたっては、より簡便に本発明の実施を可能とするため、簡易評価キットを開発して、製品化して利用されることが期待される。
また、温水治療施行後の効果を確認することも可能となったため、当該効果の持続性を把握し、白紋羽病の再発を予防することが可能になった。
従って、本発明により、温水治療(白紋羽病の治療・防除効果が高く且つ環境負荷の小さい技術)が、果樹生産現場へ広く普及することに貢献することが期待される。
2: 上部開口容器
3: 長軸状の木片
4: 白紋羽病菌の菌叢
5: 板状物
6: 蓋部
30: 一部死滅処理後の培養爪楊枝
31: 土壌接触処理後の培養爪楊枝
32: 白紋羽病菌の菌叢死滅域
33: 菌叢死滅域と生存域の境界線(黒線)
34: 白紋羽病菌の菌叢生存域
Claims (9)
- 以下(A)〜(D)に記載の工程を順に行うことを特徴とする、土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価する方法。
(A) 木片上の全部又は一部が、培養した白紋羽病菌の菌叢によって覆われた木片について、当該菌叢の一部を死滅させる工程。
(B) 前記死滅させた菌叢, 及び, 生存している菌叢の一部又は全部を土壌と接触させて、7〜120日間培養する工程。
(C) 前記木片上における白紋羽病菌の菌叢の死滅域の長さ又は面積を計測する工程。
(D) 前記計測した値を基にして、評価対象の土壌が有する白紋羽病抑止活性を評価する工程。 - 前記(A)工程において死滅させた菌叢の死菌体が、評価対象土壌中の白紋羽病菌に対する拮抗微生物を誘引し, 且つ, 当該拮抗微生物の急速な増殖を促す性質を有するものである、請求項1に記載の評価方法。
- 前記(A)工程で培養された白紋羽病菌が、非病原性の菌株及び/又は低病原性の菌株である、請求項1又は2に記載の評価方法。
- 前記(A)工程における菌叢の一部分を死滅させる処理が、35℃以上の温水への接触によって行うものである、請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法。
- 前記木片が、長軸状の木片である、請求項1〜4のいずれかに記載の評価方法。
- 前記(A)工程における菌叢の一部を死滅させる処理が、;菌叢で覆われた長軸状の木片の先端から5mm以上の領域の菌叢、;を死滅させる処理である、請求項5に記載の評価方法。
- 前記(B)工程における土壌接触処理が、;前記死滅させた菌叢, 及び, 死滅させた菌叢と生存している菌叢の境界部分から5mm以上の領域の生存している菌叢、;を埋土する処理である、請求項5又は6に記載の評価方法。
- 以下(a)に記載の構成物品を1つ以上含み、且つ、以下(b)に記載の構成物品を含むことを特徴とする、土壌が有する白紋羽病抑止活性の評価キット。
(a) 請求項1〜7のいずれかに記載の(A)工程及び/又は(B)工程で用いる、ガラス, ポリエチレン, ポリエチレンテレフタレート, ポリスチレン, 又はポリプロピレンで形成されてなる、上部が開口した容器。
(b) 3〜40cmの長さであり、且つ、長軸状の木片の全部, 又は, 先端から1cm以上の部分が、非病原性又は低病原性の白紋羽病菌である、NITE P-269株及び/又はFERM P-18142株の菌叢で覆われた長軸状の木片。 - 上記(a)の容器が、透明又は半透明である上部が開口した容器であり、且つ、上記(b)の木片の代わりに以下(c)に記載の構成物品を含むことを特徴とする、請求項8に記載の評価キット。
(c) 上記(b)に記載の特徴を有する同じ長さの長軸状の木片を、;2〜100本下方向に固着させた板状物、;を備えてなる蓋部であり、;前記(a)に記載の容器の上部開口部と接続した際に、前記長軸状の木片の下部先端部が、前記容器(a)の底部と接触することなく、前記(a)の容器の内部を密封することが可能な蓋部。
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