JP5760506B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
約3%のSiとインヒビター成分(AlNやMnSeなど)を含むスラブを熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行う。得られた冷延板に対して脱炭焼鈍を施し、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、コイルフォームで仕上げ焼鈍を行い、フォルステライト(Mg2SiO4)質被膜を形成する。このフォルステライト質被膜は、脱炭焼鈍で鋼板表面に形成されたSiO2と焼鈍分離剤中のMgOが仕上げ焼鈍中に反応して形成されるものである。フォルステライトは、鋼よりも熱膨張係数が小さいため、高温で形成された後、室温に冷却される際に、地鉄に引張応力を与える(以下、被膜が地鉄に与える引張応力を被膜張力という)。被膜張力は、方向性電磁鋼板の鉄損を低下させ、磁歪を小さくするという重要な役割がある。
また、鋼板の塑性伸び量を低下させるために炉内張力を低くすると、鋼板が蛇行しやすくなり、安定した通板が難しいといった問題があった。さらに、塑性伸び量を低下させるために焼鈍温度を低くした場合には、ガラス質コーティングの特性が劣化するという問題があり、実際には、平坦化焼鈍条件を調整して、鋼板の塑性伸び量を調整することは困難であった。
すなわち、平坦化焼鈍に関する従来技術は、得られた材料の磁気特性が重視されており、その他の特性の劣化、特に、トランスを作製した際の鉄損特性には、特に考慮が払われていなかった。また、磁区細分化処理との組み合わせについても検討されてはいなかった。
発明者らは、工場の製造ラインにおいて、様々な製造条件で方向性電磁鋼板を作製し、得られた鋼板に対し、電子ビーム照射による磁区細分化処理を施した。磁区細分化処理済みの鋼板を用いてトランスを作製し、トランスの鉄損や騒音を調査し、素材鋼板の鉄損特性との相関を調べた。その結果、鉄損や騒音特性の悪いトランスの鉄心材料は、フォルステライト質被膜の被膜張力が低い傾向があるということが明らかとなった。
なお、Eは圧延方向のヤング率、dは板厚、aは片面被膜による反り量、νは圧延方向に応力を加えた場合のポアソン比、lは固定端と反り量を測定する位置の長さを意味する。本発明では、Eとして純鉄の弾性定数:132GPa、νとして0.37の値を用いた。
ここに、被膜に生じたクラックによってトランスの特性が劣化する理由は明らかでないが、トランス作製の際に加わる様々な応力によって、フォルステライト質被膜の破壊が進み、実際のトランスでは、被膜張力の効果がほとんど失われてしまうのではないかと推測される。また、電子ビーム照射による磁区細分化処理を行った場合は、フォルステライト質被膜に与えるダメージが特に大きく、このような破壊を促進する要因になっていると考えられる。
その結果、地鉄の塑性伸びが小さいほど、被膜張力の低下が抑えられることが分かった(図2参照)。これは、フォルステライト質被膜がセラミック質であるため、鋼板の塑性変形に追従できずにクラックが導入されるからと考えられる。また、塑性伸びが同一の場合は、平坦化焼鈍の温度が高いほど、被膜張力の低下が押さえられることが分かった(図3参照)。これは、高温ほどフォルステライト被膜が塑性変形しやすくなるために、クラックが導入され難くなるからと考えられる。さらに、平坦化焼鈍の冷却速度を下げることで、被膜張力の低下が押さえられることが分かった(図4参照)。これは、冷却の際に生じる熱衝撃が緩和されるためだと考えられる。
上記技術の優れた点は、平坦化焼鈍温度を高めても、または炉内張力を高くしたとしても、鋼板の塑性変形を抑止し、フォルステライト被膜の破壊を抑制できることにある。
すなわち、フォルステライトの損傷を抑えるためには、平坦化焼鈍における、鋼板の塑性伸びを抑え、均熱温度を高め、冷却速度を低くすることが重要であるとの知見である。
また、鋼中にSn, Sb, MoおよびWの少なくもいずれかを添加することでもフォルステライトの損傷が抑えられ、平坦化焼鈍の張力を過度に低下させる必要がなくなる。なお、Sn, Sb, MoおよびWは仕上げ焼鈍の副剤から供給されることが好ましいのは上述したとおりである。
本発明は上記知見に立脚するものである。
1.Si:2.0〜4.5質量%を含む方向性電磁鋼板用スラブを素材として、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間冷延を行い、ついで一次再結晶焼鈍後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施してフォルステライト質被膜を形成し、その後平坦化焼鈍を施し、さらに電子ビーム照射による磁区細分化処理を行う一連の方向性電磁鋼板の製造方法であって、
上記平坦化焼鈍を施すに際し、
(a) 焼鈍時の均熱温度を820〜950℃の範囲とし、
(b) 均熱温度からの冷却過程における冷却速度を少なくとも800〜600℃の間、100℃/s以下とし、
(c) 地鉄の塑性伸び量を0.03〜0.15%の範囲と
し、上記平坦化焼鈍処理の前後におけるフォルステライト質被膜の、下記式(1)で求めた被膜張力:σ F の減少量を60%以下に抑制することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
記
なお、Eは圧延方向のヤング率(純鉄の弾性定数:132GPa)、dは板厚、aは片面被膜による反り量、νは圧延方向に応力を加えた場合のポアソン比(0.37)、lは固定端と反り量を測定する位置の長さを意味する。
まず、本発明に用いる方向性電磁鋼板用スラブの成分組成は、二次再結晶が生じる成分組成であればよい。
また、インヒビターを利用する場合、例えばAlN系インヒビターを利用する場合であればAlおよびNを、またMnS・MnSe系インヒビターを利用する場合であればMnとSeおよび/またはSを適量含有させればよい。勿論、両インヒビターを併用してもよい。この場合におけるAl、N、SおよびSeの好適含有量はそれぞれ、質量%で、Al:0.01〜0.065%、N:0.005〜0.012%、S:0.005〜0.03%、Se:0.005〜0.03%である。
この場合には、Al、N、SおよびSe量はそれぞれ、質量ppmで、Al:100ppm以下、N:50ppm以下、S:50ppm以下、Se:50ppm以下に抑制することが好ましい。
C:0.08%以下
Cは、α−γ変態で熱延板組織の改善のために添加をするが、0.08%を超えると製造工程中に磁気時効の起こらない50ppm以下までCを低減することが困難になるため、0.08%以下とすることが好ましい。なお、下限に関しては、Cを含まない素材でも二次再結晶が可能であるので特に設ける必要はない。
Siは、鋼の比抵抗を高め、渦電流損を低減させる上で重要な成分である。含有量が2.0 %に満たないと最終仕上げ焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位が損なわれ、4.5%を超えると冷間圧延が困難になるため、2.0 〜4.5 wt%とする。より好ましくは2.5〜3.5%である。
Mnは、熱間加工性を良好にする上で必要な元素であるが、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、Mn量は0.005〜1.0%の範囲とすることが好ましい。
ここに、0.02%に満たないと、高温強度を増加させる効果が得られず、一方、0.5%を超えると、コストが増加する上に鋼板が脆化し割れやすくなるからである。従って、本発明では、上記元素の含有量を、1種または2種以上の合計で0.02〜0.5%の範囲とする。より好ましくは0.04〜0.3%の範囲である。さらに好ましくは0.06〜0.2%の範囲である。
Ni:0.03〜1.50%、Cu:0.03〜3.0%、P:0.03〜0.50%およびCr:0.03〜1.50%のうちから選んだ少なくとも1種
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために有用な元素である。しかしながら、含有量が0.03%未満では磁気特性の向上効果が小さく、一方1.5%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化する。そのため、Ni量は0.03〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
なお、上記成分以外の残部は、製造工程において混入する不可避的不純物およびFeである。
すなわち、
(a) 焼鈍時の均熱温度、
(b) 均熱温度からの冷却過程における冷却速度および
(c) 地鉄の塑性伸び量
の各条件をそれぞれ調整し、上記平坦化焼鈍処理の前後におけるフォルステライト質被膜の被膜張力の減少量を60%以下に抑制することである。
均熱温度:820〜950℃
平坦化焼鈍の均熱温度を高めることにより、被膜の損傷を防ぐことができる。820℃に満たないと被膜損傷を防ぐことができず、一方950℃を超えると鋼板の塑性変形を制御することが難しくなるため、820〜950℃が好ましい。より好ましくは840〜930℃である。さらに好ましくは860〜910℃である。
本発明では、均熱温度からの冷却過程における冷却速度を制御することが重要である。すなわち、均熱温度からの冷却過程でも、特に800〜600℃間の冷却速度を遅くすることにより、被膜の損傷を防ぐことができる。ここに、100℃/sを超えると被膜損傷を防ぐことが難しくなるため、100℃/s以下が好ましい。より好ましくは80℃/s以下である。さらに好ましくは60℃/s以下である。
地鉄の塑性伸び量を低くすることにより、被膜の損傷を防ぐことができる。0.03%に満たないと形状矯正することができず、0.15%を超えると被膜損傷が著しくなるため、0.03〜0.15%が好ましい。より好ましくは0.03〜0.12%である。さらに好ましくは0.03〜0.08%である。
本発明において、被膜張力の減少量は、フォルステライト質被膜の損傷の度合いを表す指標であり、前述した、平坦化焼鈍の(a)〜(c)の3条件を組み合わせて、上記指標を60%以下とすることが、本発明でもっとも重要な点である。
というのは、被膜張力の減少量が60%を超えると、トランスの特性が大幅に劣化するためである。好ましくは40%以下である。より好ましくは20%以下である。なお、前述したような従来技術においては、鋼に導入される転位を少なくするために、塑性伸びを少なくすることが試みられていた。しかしながら、単純に塑性伸びを少なくするだけでは、本発明のように、フォルステライト質被膜の破壊を効果的に防ぐことができない。従って、単純に塑性伸びを少なくするだけでは、電子ビーム照射材により作製されたトランスの鉄損特性等を改善することはできない。
C:0.05〜0.07%、Si:3.1〜3.3%、Mn:0.06〜0.09%、Se:0.012〜0.016%、sol. Al:0.025〜0.027%、N:0.0075〜0.0090%を含有し、かつ表1に示す成分組成、および残部はFeおよび不可避不純物からなるスラブを素材として、該スラブを、1380℃で1時間加熱後、熱間圧延して板厚:2.4mmの熱延板とした。この熱延板に1000℃、1minの熱延板焼鈍を施して、酸洗し、1回目の冷間圧延後、1050℃の温度で中間焼鈍を施した。ついで、2回目の冷間圧延を220℃の温度の温間圧延とし、板厚:0.26mmに仕上げた。この冷延板に、湿水素雰囲気中、830℃の脱炭焼鈍を施したのち、質量比でMgO:TiO2=95:5となるように混合した焼鈍分離剤を塗布してから、1180℃、5時間の仕上げ焼鈍を施した。
ついで、表1に示す条件で平坦化焼鈍を行い、その後、試料を圧延方向(走行方向)に移動させながら、圧延方向に7mm間隔で、圧延方向と直交する方向で線状に電子ビームの走査を行い、磁区細分化処理を施した。電子銃の加速電圧は38kV、電流密度は3.5mAで、偏光コイルから試料までの距離は300mmとした。かくして得られた製品板で1200kVAの3相3脚トランスを作製した。
各平坦化焼鈍の条件に対し、フォルステライト被膜張力とその減少率、および素材とトランスの鉄損W17/50についてそれぞれ測定した。その結果を表1に併記する。なお、被膜張力は、前掲式(1)を用いて求めた。
C:0.053%、Si:3.16%、Mn:0.06%、Se:0.015%、sol. Al:0.025%、N:0.0078%、および表2に示す微量成分を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなるスラブを素材として、該スラブを、1380℃で1時間加熱後、熱間圧延して板厚:2.4mmの熱延板とした。この熱延板に1000℃、1minの熱延板焼鈍を施し、酸洗して、1回目の冷間圧延後、1050℃の温度で中間焼鈍を施し、ついで2回目の冷間圧延を、220℃の温度の温間圧延として板厚:0.26mmに仕上げた。この冷延板に、湿水素雰囲気中、830℃の脱炭焼鈍を施した。さらに、表2に示す成分の焼鈍分離剤を塗布してから、1180℃、5時間の仕上げ焼鈍を施した。
仕上げ焼鈍後、200mm×30mmの大きさのサンプルを1000m2当たり1個採取し、湿式分析により微量成分の分析を行った。
続いて、850℃、1minの平坦化焼鈍を行った。その際、炉内張力(ライン張力)を12MPaとして焼鈍を実施し、800〜600℃の冷却速度を80℃/sとして冷却した。なお、その際の地鉄の塑性伸び量は、No.1が0.21%、その他が0.10%以下であった。
その後、試料を圧延方向(走行方向)に移動させながら、圧延方向に5mm間隔で、圧延方向と直交する方向で線状に電子ビームの走査を行い、磁区細分化処理を施した。電子銃の加速電圧は40kV、電流密度は3mAで、偏光コイルから試料までの距離は400mmとした。かくして得られた製品板で1200kVAの3相3脚トランスを作製した。
各平坦化焼鈍の条件に対し、フォルステライト被膜張力とその減少率、および素材とトランスの鉄損W17/50並びに騒音特性についてそれぞれ測定した。その結果を表2に併記する。なお、被膜張力の測定要領は実施例1と同じにした。
Claims (3)
- Si:2.0〜4.5質量%を含む方向性電磁鋼板用スラブを素材として、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を行ったのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間冷延を行い、ついで一次再結晶焼鈍後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を施してフォルステライト質被膜を形成し、その後平坦化焼鈍を施し、さらに電子ビーム照射による磁区細分化処理を行う一連の方向性電磁鋼板の製造方法であって、
上記平坦化焼鈍を施すに際し、
(a) 焼鈍時の均熱温度を820〜950℃の範囲とし、
(b) 均熱温度からの冷却過程における冷却速度を少なくとも800〜600℃の間、100℃/s以下とし、
(c) 地鉄の塑性伸び量を0.03〜0.15%の範囲と
し、上記平坦化焼鈍処理の前後におけるフォルステライト質被膜の、下記式(1)で求めた被膜張力:σ F の減少量を60%以下に抑制することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
記
なお、Eは圧延方向のヤング率(純鉄の弾性定数:132GPa)、dは板厚、aは片面被膜による反り量、νは圧延方向に応力を加えた場合のポアソン比(0.37)、lは固定端と反り量を測定する位置の長さを意味する。 - 前記平坦化焼鈍処理前の地鉄中に、Sn, Sb, MoおよびWから選んだ1種または2種以上が合計で0.02〜0.5質量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 焼鈍分離剤中にSn化合物、Sb化合物、Mo化合物およびW化合物から選んだ1種もしくは2種以上を添加して、前記地鉄に含有させることを特徴とする請求項2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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