特許文献1,2及び非特許文献1,2の問題点は以下の通りである。
非特許文献1のように、有機溶媒を含む非水電解質のみを非水電解質として用いた空気電池は、使用状態、すなわち正極へ酸素を取り入れる空気孔を開放した状態では環境温度・湿度の影響を大きく受ける。高温条件においては、空気孔から有機溶媒が揮発するために電解質量が減少し、結果として電池寿命が短くなってしまう。また、高湿度条件においては、空気孔から水分が浸入し、負極が劣化し、結果として電池寿命が短くなってしまう。
特許文献1のように、非水電解質にイオン液体のみを用いた場合、イオン液体は負極と接触するため耐還元性に優れていることが求められる。耐還元性に優れたイオン液体としてはアンモニウムカチオンを有するイオン液体が知られているが、耐還元性に劣るイミダゾリウムカチオンを有するイオン液体と比較して粘度が高い。このため、非水電解質にアンモニウムカチオンを有するイオン液体のみを用いた場合、リチウムイオン伝導性に劣るため、大電放電特性が低下してしまう。
特許文献2に記載の固体電解質のみを非水電解質に用いた場合、電流値が小さくなる。非水電解質空気電池において、放電時の正極近傍では、酸素の電解質への溶解と、電極表面でのリチウムイオンとの反応が連続して起こる必要がある。非水電解質として固体電解質のみを用いた場合、電解質への酸素の溶解が遅いため、十分な電流値を得ることができない。
非特許文献2の空気電池の放電時の反応式を化1に示す。
正極側に水系電解質を用いることにより、化1に示す通りに正極での放電時反応生成物はOH−イオンとなる。放電反応は負極容量および水体積により規制されることになり、正極に依存しなくなる。しかしながら、放電反応の際に正極において電解質中の水が消費され、放電反応の進行に伴い電解質が減少するために、電解質が枯渇しやすく、長寿命を得られない。寿命を向上させるため、電解質量を多くすると、体積エネルギー密度が低下する。また、非特許文献2のように正極側に水系電解質を用いると、電池の充電ができない。これは、放電時に正極側へ移動してきたリチウムが水酸化リチウムとして水系電解質中に非可逆的に析出してしまうためである。
実施形態の空気電池では、正極にイオン液体を含む第1の非水電解質を保持させると共に、負極に有機溶媒を含む第2の非水電解質を保持させる。正極と負極の間に、リチウムイオン伝導性を有する材料を含み、かつ第1の非水電解質および第2の非水電解質に溶解あるいは膨潤しない固体電解質層を配置する。固体電解質層がイオン及び有機溶媒に溶解しないことにより、固体電解質層に第1の非水電解質中のイオン液体や第2の非水電解質中の有機溶媒が通過可能な貫通孔が生成するのを回避することができる。そのため、負極側の第2の非水電解質が正極側に移動して孔から揮発することがなく、また、正極側の第1の非水電解質が負極側に移動して還元分解することがない。また、固体電解質層が第1の非水電解質および第2の非水電解質に膨潤しないことにより、固体電解質層中にイオン液体及び有機溶媒が侵入して固体電解質層中のリチウムイオン伝導性を有する材料の濃度が低下、さらにそれに伴いリチウムイオン伝導性が低下して、結果として放電特性が低下するのを回避することができる。
ここで、リチウムイオン伝導性を有する材料とは、電圧差あるいは濃度勾配によってリチウムイオンが移動することができる材料である。固体電解質層が第1の非水電解質および第2の非水電解質に溶解しないとは、固体電解質層を第1の非水電解質あるいは第2の非水電解質に浸漬した際に、固体電解質層の重量が減少しないことを意味する。具体的には、固体電解質層を低湿度不活性ガス雰囲気下で第1の非水電解質あるいは第2の非水電解質に浸漬し、45℃24時間加熱後に、エチルメチルカーボネートで洗浄、室温で乾燥後、前記固体電解質層の重量減少が3%以下であることにより確認される。
また、固体電解質層が第1の非水電解質および第2の非水電解質に膨潤しないとは、固体電解質層を第1の非水電解質あるいは第2の非水電解質に浸漬した際に、第1の非水電解質および第2の非水電解質を構成する分子が固体電解質層に取り込まれないことを意味する。具体的には、固体電解質層を低湿度不活性ガス雰囲気下で第1の非水電解質あるいは第2の非水電解質に浸漬し、45℃で24時間放置後に、エチルメチルカーボネートで洗浄、室温で乾燥後、前記固体電解質層の重量増加が3%以内であることにより確認される。
第1の非水電解質に用いられるイオン液体は、不揮発性であるため、正極に酸素を供給するための孔から揮発するのを防ぐことができる。また、第1の非水電解質は固体電解質層に遮られて負極に到達することがないので、負極によりイオン液体が還元分解されることがない。
第2の非水電解質に用いられる有機溶媒は、耐還元性に優れた溶媒を選択することにより、負極上での還元分解を抑制することができる。また、第2の非水電解質は固体電解質層に遮られて正極に到達することがないので、孔から有機溶媒が揮発することがない。
また、固体電解質層は、前述のように無孔性であるため第1の非水電解質と第2の非水電解質の混合を防ぎ、さらに水を透過しないので水分による負極の劣化を抑制することができる。
従って、第1の非水電解質は負極との接触がないためリチウムイオン電導性に優れているが耐還元性に劣るイオン液体を用いることが可能となり、イオン液体のみを非水電解質に用いた場合と比較して大電流充放電特性が向上する。また第2の非水電解質は孔に到達することがないため第2の非水電解質に含まれる有機溶媒が孔から揮発することがなく、有機溶媒のみを非水電解質に用いた場合と比較して耐久性が向上する。その結果、正負極両電極の性能が向上されるため、正極に生成するLi2Oの可逆性が改善され、耐久性と大電流充放電特性を向上することができる。よって、耐久性に優れ、充電が可能であり、かつ大電流充放電特性が向上された空気電池を提供することができる。
以下、第1の非水電解質、第2の非水電解質、固体電解質層、正極、負極及び容器について説明する。
第1の非水電解質は、イオン液体を含むもので、イオン液体に溶解される支持電解質を必要に応じて含むことができる。イオン液体は、正の電荷を有するカチオンと、負の電荷を有するアニオンとを有し、不揮発性である。そのため、イオン液体を第1の非水電解質に用いることにより、孔からの非水電解質の揮発量を低減することができる。
また、疎水性のイオン液体を選択することで、孔からの水分の侵入を抑制することができる。そのため、疎水性のイオン液体を用いることにより、空気電池の寿命をさらに向上することができる。
卑な電位の負極に適応可能な耐還元性に優れたイオン液体は、高粘度である場合が多い。一方、粘度の低いイオン液体は耐還元性に劣る傾向があるため、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの10年以上の寿命が求められる車載用電源に用いた場合に負極に混入すると、徐々に還元分解される恐れがある。実施形態の空気電池によると、イオン液体が負極に混入する恐れが少ないため、粘度の低いイオン液体の使用が可能になる。粘度の低いイオン液体は、空気電池の大電流放電特性をさらに改善することができる。
カチオンは、例えば、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオン、および、前記の各イオン(アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオン)に置換基を導入したカチオンよりなる群から選ばれる1種以上を挙げることができる。
アンモニウムイオンは、例えば、化2に表される構造式を有することができる。
R1,R2,R3,R4は、炭化水素基、エステル基、エーテル基及びニトリル基よりなる群から選択される置換基で、互いに同じ置換基でも異なる置換基でもあって良い。置換基に含まれる炭素数は8以下であることが好ましい。これにより、イオン液体の分子量の増加による粘度上昇が抑えられ、第1の非水電解質のリチウムイオン伝導性を向上することができる。置換基の中では、炭化水素基、およびエーテル基が好ましい。炭化水素基は他の置換基と比較して分子間相互作用が弱いために、イオン液体の粘度を低下させることができる。炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。中でもアルキル基は、分子構造が柔軟であり、より低粘度のイオン液体が実現するために好ましい。アルキル基、エーテル基の場合、炭素数のより好ましい範囲は1〜4である。また、R1,R2,R3,R4のうち少なくとも一つの置換基は、炭素数1、すなわちメチル基であることが好ましい。少なくとも一つの置換基をメチル基とすることで、より粘度の低いイオン液体が実現できる。また、置換基R1,R2,R3,R4は、置換基同士が結合していても良い。
化2に示すアンモニウムイオンは、例えば、N−ブチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−ブチル−N−エチル−N,N−ジメチルアンモニウムイオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
イミダゾリウムイオンは、例えば、化3に示す構造式で表されるものにすることができる。
R5,R6,R7は、炭化水素基、エステル基、エーテル基及びニトリル基よりなる群から選択される置換基で、互いに同じ置換基でも異なる置換基でもあって良い。置換基に含まれる炭素数は8以下であることが好ましい。これにより、イオン液体の分子量の増加による粘度上昇が抑えられ、第1の非水電解質のリチウムイオン伝導性を向上することができる。置換基の中では、炭化水素基が好ましい。炭化水素基は他の置換基と比較して分子間相互作用が弱いために、イオン液体の粘度を低下させることができる。炭化水素基は、例えば、アルキル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができる。中でもアルキル基は、分子構造が柔軟であり、より低粘度のイオン液体が実現するために好ましい。アルキル基の場合、炭素数のより好ましい範囲はR5,R7においては1〜5であり、R6においては0〜2である。なお、R6において炭素数0の場合とは、水素を表すものである。また、R5,R7においては、互いに異なる置換基であることが好ましい。R5,R7の構造が異なると、分子の対称性が低くなり、より低粘度のイオン液体が実現できる。R5,R7においては、少なくとも一方が炭素数1、すなわちメチル基であることがより好ましい。
化3に示すイミダゾリウムイオンは、具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオン、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ホスホニウムイオンは、例えば、化4に表される構造式を有することができる。
R8,R9,R10,R11は、炭化水素基、エステル基及びエーテル基よりなる群から選択される置換基で、互いに同じ置換基でも異なる置換基でもあって良い。いずれの場合も、置換基に含まれる炭素数は8以下であることが好ましい。置換基の中では、炭化水素基、エーテル基が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基、ベンジル基などを挙げることができるが、中でもアルキル基は、分子構造が柔軟であり、より低粘度のイオン液体が実現するために好ましい。アルキル基の場合、炭素数のより好ましい範囲は1〜4である。また、置換基R8,R9,R10,R11は、置換基同士が結合していても良い。
化4に示すホスホニウムイオンは、具体的には、トリブチル(2−メトキシエチル)ホスホニウムイオン、トリブチルメチルホスホニウムイオンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アニオンは、例えば、PF6 −、BF4 −、CF3SO3 −、C4F9SO3 −、[B(OOC−COO)2]−、[(CN)2N]−、[(CF3SO2)2N]−、[(C2F5SO2)2N]−、BF3(CF3)−および前記の各イオン(PF6 −、BF4 −、CF3SO3 −、C4F9SO3 −、[B(OOC−COO)2]−、[(CN)2N]−、[(CF3SO2)2N]−、[(C2F5SO2)2N]−、BF3(CF3)−)に置換基を導入したアニオンよりなる群から選ばれる1種以上を挙げる事ができる。アニオンとして、BF3(CF3)−、スルホニルイミド構造を有する[(CF3SO2)2N]−あるいは[(C2F5SO2)2N]−を用いた場合、イオン液体が疎水性となるために、より好ましい。特に好ましいのは[(CF3SO2)2N]−であり、より低粘度のイオン液体を実現することができる。
支持電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO3)、Li(C4F9SO3)、Li[B(OOC−COO)2]、Li[(CN)2N]、Li[(CF3SO2)2N]、Li[(C2F5SO2)2N]、および、前記の各化合物(LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO3)、Li(C4F9SO3)、Li[B(OOC−COO)2]、Li[(CN)2N]、Li[(CF3SO2)2N]、Li[(C2F5SO2)2N])に置換基を導入した化合物などを挙げることができる。使用する支持電解質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
イオン液体を構成するアニオンと、支持電解質を構成するアニオンは、同一であっても異なっていてもよい。中でも、イオン液体のアニオン、支持電解質のアニオンが、共に、フッ素原子の一部をフルオロアルキル基で置換したPF6 −、BF4 −、あるいはスルホニルイミド基を有するアニオンであることが好ましい。特に好ましいのは、イオン液体と支持電解質がともにアニオンとしてBF3(CF3)−あるいは[(CF3SO2)2N]−を有するものである。
支持電解質の濃度は、0.1〜4モル/Lとすることが望ましい。支持電解質の濃度を0.1モル/L以上にすることによって、第1の非水電解質のイオン伝導度を向上することができるため、高い放電特性が得られる。また、4モル/L以下にすることによって、第1の非水電解質の粘度上昇を抑えることができるため、第1の非水電解質のイオン伝導度を向上することができる。さらに好ましい濃度は、0.3〜2モル/Lである。
第2の非水電解質は、有機溶媒と、有機溶媒に溶解される支持電解質とを含むことができる。第2の非水電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば、特に限定されるものではない。
有機溶媒は、エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、および前記の各化合物(エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、ニトリル類)に置換基を導入した化合物よりなる群から選ばれる1種以上を含有することが望ましい。好ましいのは、エステル類、炭酸エステル類より選ばれるものである。エステル類の中では、環状構造のエステル類が好ましく、特に5員環のγブチロラクトン(γBL)が好ましい。
炭酸エステル類は環状、鎖状構造いずれも用いることができる。環状炭酸エステル類は、5員環構造の炭酸エステル類が好ましく、特にエチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)が好ましい。鎖状炭酸エステル類は、炭素数7以下の炭酸エステル類が好ましく、特にジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)が好ましい。
エーテル類は環状、鎖状構造いずれも用いることができる。環状エーテル類としては、5員環、および6員環構造のエーテル類が好ましく、中でも二重結合を含まないものが好ましい。鎖状エーテル類としては、炭素原子を5つ以上含むものが好ましい。例えば、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ブチルエーテル、イソペンチルエーテル等を挙げることができる。
ニトリル類は、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等を挙げることができる。
有機溶媒は単独で用いてもよいが、複数種を混合して用いた方が好ましい。特に炭酸エステル類を含むことが好ましく、中でも5員環構造の炭酸エステル類を含むことが好ましく、特にECあるいはPCを含むことが好ましい。
有機溶媒の好ましい組成は、EC/PC、EC/γBL、EC/EMC、EC/PC/EMC、EC/EMC/DEC、EC/PC/γBLである。
支持電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば、特に限定されない。例えば、第1の非水電解質で説明したのと同様な種類のものを使用することができる。特に好ましいのは、LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO3)、Li[(CF3SO2)2N]である。
固体電解質層は、第1の非水電解質および第2の非水電解質に溶解及び膨潤しないリチウムイオン伝導性を有する材料を含む。固体電解質層は、無孔性で、リチウムイオンを選択的に透過するものであることが望ましい。
リチウムイオン伝導性を有する材料は、有機高分子、酸化物及び硫化物よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。いずれの材料も固体状態でリチウムイオン伝導性を示すため、無孔性でリチウムイオンを選択的に透過する固体電解質層を実現することができる。
有機高分子は、支持電解質と共に使用する。有機高分子は、具体的には、ポリエチレンオキサイド含有高分子や、ポリビニル含有高分子を挙げることができる。ポリエチレンオキサイド含有高分子は、ポリエチレンオキサイドを主鎖として含み、一部が分岐していてもよい。ポリエチレンオキサイドの末端は、水酸基がエーテルやエステル結合で保護されていることが好ましい。ポリビニル含有高分子は、ポリビニル鎖を主鎖として含み、主鎖から分岐した側鎖にはエステル結合や炭酸エステル結合を含む官能基を含有することが好ましい。特に、ポリエチレンオキサイド含有高分子が、リチウムイオンのホッピング伝導性に優れるため、望ましい。有機高分子には、ジブチルフタレートなど少量の柔軟剤を含んでいてもよい。
有機高分子と共に使用する支持電解質は、リチウムイオン二次電池に用いることが可能であれば、特に限定されない。例えば、第1の非水電解質で説明したのと同様な種類のものを使用することができる。特に好ましいのは、LiPF6、LiBF4、Li(CF3SO3)、Li[(CF3SO2)2N]、及び前記の各化合物に置換基を導入したリチウム塩である。
酸化物は、例えば、酸化物ガラス、酸化物結晶をあげることができる。いずれも構成元素にリチウムを含むものであり、有機高分子を含む固体電解質層と異なり支持電解質を必要としない。酸化物ガラスは、B,Si及びPよりなる群から選択される1種以上の元素とLiとを含む酸化物を挙げることができ、具体的にはLi4SiO4−Li3BO3系酸化物を挙げる事ができる。また、酸化物結晶は、Al,Ti,P,La,N,Si,In及びNbよりなる群から選択される1種以上の元素とLiとを含む酸化物をあげる事ができる。具体的には、Na3Zr2Si2PO12や、LiTi(PO4)3、LiAlTi(PO4)3、Li7La3Zr2O12、La0.5Li0.5TiO3などを挙げる事ができる。
硫化物は、例えば、硫化物ガラス、硫化物結晶をあげることができる。いずれも構成元素にリチウムを含むものであり、有機高分子を含む固体電解質層と異なり支持電解質を必要としない。具体的にはLi3PS4,Li4SiS4,LiGeS4−Li3PS4、LiS−SiS2系、SiS−P2S5系、LiS−B2S3系、Li2S−SiS2−Li4SiO4系などを挙げる事ができる。なかでも、Li2S−P2S5,Li3.25Ge0.25P0.75S4などが、導電率が高く、好ましい。
固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が耐還元性に劣る場合、固体電解質層と負極との間に多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を配置することが好ましい。固体電解質層と負極との間に多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を配置することにより、固体電解質層が負極と接触しなくなるため、固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が負極との接触により還元分解されて固体電解質層が劣化するのを回避することができる。多孔質膜あるいは不織布としては、ポリエチレン製多孔質膜、ポリプロピレン(PP)製多孔質膜、セルロース製不織布など、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが可能なものを使用することができる。前記金属酸化物層としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛など負極側の非水電解質に不溶の金属酸化物であれば特に限定されるものではない。また、固体電解質層に含まれる酸化物及び/または硫化物が耐還元性に優れている場合は、体積エネルギー密度を向上することができるので多孔質膜、不織布あるいは金属酸化物層を省略することが好ましい。
第1の非水電解質、第2の非水電解質、固体電解質層の好ましい組み合わせは、以下のものである。
固体電解質層が有機高分子を含む場合、第1の非水電解質、第2の非水電解質および固体電解質層に含まれる支持電解質は、同一であることが好ましい。中でも、フッ素原子の一部をフルオロアルキル基で置換したLiPF6、LiBF4、あるいはスルホニルイミド基を有するアニオンを有するリチウム塩が好ましく、特にLi[(CF3SO2)2N]が好ましい。有機高分子を含む固体電解質層中に含まれる支持電解質の一部が、第1の非水電解質あるいは第2の非水電解質中の支持電解質と交換する可能性がある。そのため、第1の非水電解質、第2の非水電解質、および固体電解質層に含まれる支持電解質を同一とすることで、電池特性の変化を抑制することができる。第1の非水電解質は疎水性であることが好ましいため、フッ素元素の一部をフルオロアルキル基で置換したPF6 −、BF4 −、あるいはスルホニルイミド基を有するアニオンで統一するのが好ましく、特に耐水性に優れた[(CF3SO2)2N]−が好ましい。
第1の非水電解質のイオン液体に用いるアニオンは、前述したように[(CF3SO2)2N]−が好ましい。カチオンは、N−ブチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−ブチル−N−エチル−N,N−ジメチルアンモニウムイオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオンが好ましい。特に、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンが好ましい。最も好ましいのは、低粘度のイオン液体を実現できる1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンである。
第2の非水電解質に用いる支持電解質は、前述したようにLi[(CF3SO2)2N]が好ましい。有機溶媒は、例えば、沸点の高い有機溶媒により構成された、EC/PC、EC/γBL、EC/PC/γBL、PC/γBLが好ましい。有機高分子を含む固体電解質層は柔軟であるため、高温条件下で有機溶媒の蒸気圧が上昇すると、変形する可能性がある。そのため、有機溶媒としては沸点の高いものが好ましい。中でも、ECとPCを含む混合溶媒系が、安定性に優れているため好ましい。
有機高分子を含む固体電解質層に用いる支持電解質は、前述したようにLi[(CF3SO2)2N]が好ましい。有機高分子としては、ポリエチレンオキサイド含有高分子が好ましい。ポリエチレンオキサイドは、主鎖のエチレンオキサイド構造がリチウムイオン伝導性を発現するためである。
有機高分子を含む固体電解質層を用いた場合の最も好ましい組み合わせは、第1の非水電解質が[(CF3SO2)2N]−1−エチル−3−メチルイミダゾリウム[(CF3SO2)2N]を含み、固体電解質層がLi[(CF3SO2)2N]−ポリエチレンオキサイドを含み、第2の非水電解質がLi[(CF3SO2)2N]−EC/PCを含むものである。この組合わせによると、疎水性で低粘度のイオン液体が使用され、かつ空気や水分と接触した際の電解質の分解反応を抑えることができるため、空気電池の耐久性と大電流放電特性をさらに改善することができる。
酸化物及び/または硫化物を含む固体電解質層を用いた場合、第1の非水電解質および第2の非水電解質に含まれる支持電解質は、同一にする必要がない。酸化物及び/または硫化物を含む固体電解質層は支持電解質を含まないため、第1,第2の非水電解質に含まれる支持電解質との交換が起きないためである。
第1の非水電解質に用いるイオン液体は、リチウムイオン伝導性が高く、疎水性のものが好ましい。アニオンは、フッ素元素の一部をフルオロアルキル基で置換したPF6 −、BF4 −、あるいはスルホニルイミド基を有するアニオンが好ましい。中でも、BF3(CF3)−あるいは[(CF3SO2)2N]−、特に[(CF3SO2)2N]−が好ましい。
カチオンは、例えば、N−ブチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−ブチル−N−エチル−N,N−ジメチルアンモニウムイオン、N−ブチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムイオン、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムイオンが好ましい。特に、N−プロピル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンが好ましい。最も好ましいのは、低粘度のイオン液体を実現できる1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンである。
第2の非水電解質に用いる有機溶媒は、二酸化炭素の溶解性に優れた有機溶媒により構成された、EC/PC、EC/γBL、EC/PC/γBL、PC/γBLが好ましい。酸化物及び/または硫化物を含む固体電解質層は、無機電解質層であるために剛直であり、負極で非水電解質の分解などにより二酸化炭素などのガスが発生して体積膨張すると、電解質層が破断する可能性がある。そのため、有機溶媒は二酸化炭素に対する溶解性が高いものが好ましい。中でもEC/γBL、EC/PC/γBLは二酸化炭素溶解性と耐還元性に優れているために好ましい。支持電解質は、リチウムイオン伝導性に優れたものが好ましく、具体的にはLiPF6、LiBF4が好ましい。特にLiBF4は安定性に優れているために好ましい。
酸化物および硫化物のうち、より好ましいのはリチウムイオン伝導性に優れた硫化物を含む固体電解質層である。より好ましいのは硫化物ガラスである。硫化物ガラスは、具体的にはLi3PS4,Li4SiS4,LiGeS4−Li3PS4、LiS−SiS2系、SiS−P2S5系、LiS−B2S3系などを挙げる事ができる。なかでも、Li2S−SiS2−LiSiO4系や、Li2S−SiS2−Li3PO4系が、導電率が高くかつ耐還元性に優れているため好ましい。
よって、酸化物及び/または硫化物を含む固体電解質層を用いた場合の最も好ましい組み合わせは、第1の非水電解質がLi[(CF3SO2)2N]−1−エチル−3−メチルイミダゾリウム[(CF3SO2)2N]を含有し、固体電解質層がLi2S−SiS2−Li3PO4系を含み、かつ第2の非水電解質がLiBF4−EC/PC/γBLを含むものである。この組合わせによると、疎水性で低粘度のイオン液体が使用され、かつ空気や水分と接触した際の第1の非水電解質の分解反応を抑えることができるため、空気電池の耐久性と大電流放電特性をさらに改善することができる。
次に、正極、負極、容器について説明する。
正極は、正極集電体と、この正極集電体に担持された正極層とを含む。
正極集電体は、酸素の拡散を速やかに行わせるため、例えばメッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等の貫通孔を有する導電性基板を用いることが好ましい。導電性基板の材質は、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタンなどを挙げることができる。なお、集電体の表面は、酸化を抑制するために耐酸化性の金属または合金で被覆しても良い。
正極層は、例えば、炭素質物と結着剤とを混合し、この混合物をフィルム状に圧延して製膜し、乾燥することで形成することができる。あるいは、例えば炭素質物と結着剤とを溶媒中で混合し、これを集電体に塗布し、乾燥・圧延して形成することができる。
炭素質物は、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ファーネスブラック、活性炭、活性炭素繊維、木炭類等を挙げることができる。この炭素質物の表面にコバルトフタロシアニンなどの酸素発生過電圧を低下させる機能を有する微粒子を担持させ、酸素の還元反応の効率を高めることも可能である。また、炭素質物にアセチレンブラックなどの高導電性炭素質物を添加し、正極層の導電性を高めることも可能である。
結着剤は、炭素質物を含む層の層形状を維持するとともに、炭素質物を集電体に付着させる目的で正極層に添加されても良い。結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などを用いることができる。
正極層における炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素質物70〜98重量%、結着剤2〜30重量%の範囲であることが好ましい。
負極は、負極集電体と、負極集電体に担持される負極活物質含有層とを含む。
負極活物質は、例えば、リチウムイオンを吸蔵放出する材料を用いることができる。
リチウムイオンを吸蔵放出する材料は、特に限定されるものではなく、リチウムイオン電池またはリチウム電池に使用可能な材料を使用することができる。中でも、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、リチウム金属、リチウム合金、リチウム複合酸化物、またはリチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物よりなる群から選択される少なくとも1種類の材料を、負極活物質として使用することが好ましい。
リチウムイオンを吸蔵放出する炭素質物は、例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素などの黒鉛質材料もしくは炭素質材料、熱硬化性樹脂、等方性ピッチ、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソフェーズ小球体などに500〜3000℃で熱処理を施すことにより得られる黒鉛質材料または炭素質材料を挙げることができる。
金属酸化物は、例えば、スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物などを挙げることができる。
金属硫化物は、例えば、スズ硫化物、チタン硫化物などを挙げることができる。
金属窒化物は、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物などを挙げることができる。
リチウム合金は、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金などを挙げることができる。
負極集電体は、例えば、貫通孔を有する導電性基板、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレス、またはニッケルから形成することができる。多孔質構造の導電性基板には、メッシュ、パンチドメタル、エクスパンディドメタル等を用いたり、あるいは金属箔に負極活物質含有層を担持させた後、前記金属箔に孔を開けたものを多孔質構造の導電性基板として用いることができる。
炭素質物のような負極活物質を含む負極は、例えば、負極活物質と結着剤とを溶媒の存在下で混練し、得られた懸濁物を集電体に塗布し、乾燥した後、所望の圧力で1回プレスもしくは2〜5回多段階プレスすることにより作製することができる。
結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを用いることができる。
炭素質物および結着剤の配合割合は、炭素質物80〜98重量%、結着剤2〜20重量%の範囲であることが好ましい。
また、負極活物質として、リチウム金属やリチウム合金などの金属材料を使用すれば、これらの金属材料は単独でもシート形状に加工することが可能なため、結着剤を使用せずに負極活物質含有層を形成することができる。また、これらの金属材料で形成された負極活物質含有層は直接負極端子に接続することもできる。
容器は、例えば、金属板、樹脂層を有するシート等から形成することができる。
金属板は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムから形成することができる。
シートは、金属層と、金属層を被覆する樹脂層とを含むことが好ましい。金属層は、アルミニウム箔から形成することが好ましい。一方、樹脂層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂から形成することができる。樹脂層は、単層もしくは多層構造にすることができる。
実施形態に係る空気電池の一例を図1に示す。図1に示すのは、非水電解質空気電池である。非水電解質空気電池は、内面が熱可塑性樹脂層から形成されたラミネートフィルム製の容器1を備える。容器1は、例えば、内面同士が重ね合わされた三辺をヒートシールにより封止したラミネートフィルムからなる。固体電解質層2は、容器1内に配置され、三辺がラミネートフィルムの間に挟まれている。容器1内の空間は、固体電解質層2を境にして二つの空間に分けられている。一方の空間(図1の上側)は、正極3が収納され、第1の空間4と称される。他方の空間は、負極5が収納され、第2の空間6と称される。孔(例えば空気孔)7は、容器1の壁面に第1の空間4と連通するように開口されている。空気孔7は、正極3に酸素を供給するためのものである。
正極3は、固体電解質層2の一方の面と接する正極層8と、正極層8が担持され、例えば多孔性導電性基板からなる正極集電体9とを含む。正極端子10は、一端が正極集電体9と電気的に接続され、かつ他端が容器1のヒートシール部(ラミネートフィルム間が熱融着された部分)を通して外部に延出されている。空気拡散層11は、正極集電体9上に配置されている。空気拡散層11は、空気孔7から取り入れられた空気を正極3に供給できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはPTFEなどのフッ素樹脂を含む多孔質フィルムや、ポリプロピレンやPTFEなどの合成樹脂製不織布、ガラス繊維不織布等を挙げることができる。第1の非水電解質(図示しない)は、正極3に保持され、必要に応じて第1の空間4内にも収容される。
負極5は、固体電解質層2の反対側の面と接する負極活物質含有層12と、負極活物質含有層12が担持され、例えば多孔性導電性基板からなる負極集電体13とを含む。負極端子14は、一端が負極集電体13と電気的に接続され、かつ他端が容器1のヒートシール部(ラミネートフィルム間が熱融着された部分)を通して外部に延出されている。負極端子14の延出方向は、正極端子10の延出方向と反対向きになっている。第2の非水電解質(図示しない)は、負極5に保持され、必要に応じて第2の空間6内にも収容されている。
容器1の外表面には、空気孔7を閉塞するシールテープ15が着脱可能に配置されている。電池使用時に、このシールテープ15を外すことで正極層8に空気を供給することができる。
図1に例示されるように、容器1内の第1の空間4と第2の空間6とを固体電解質層2で隔離することにより、第1の非水電解質の負極への拡散並びに第2の非水電解質の正極への拡散を阻止する効果が高められるため、空気電池の耐久性と大電流充放電特性の更なる改善を期待できる。
以下、実施例を図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
ケッチェンブラック90重量%と、ポリテトラフルオロエチレン10重量%を乾式混合し、圧延することにより縦横20mm、厚さ200μmのフィルム状の正極層を得た。この正極層を正極集電体であるステンレス製メッシュに圧着し、正極を作製した。さらに得られた正極の正極集電体が露出した部分に正極端子の一端を接続した。
金属リチウム箔をニッケル製メッシュに圧着し、負極を得た。なお、ニッケル製メッシュには、負極端子の一端が接続されている。また、ポリプロピレン製不織布およびPTFE製多孔質膜を積層したものからなる空気拡散層と、ポリプロピレン製多孔質膜とを準備した。
Li2S−SiS2−Li3PO4からなる硫化物ガラスを100μm厚に成型することにより、固体電解質層を調整した。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドからなる疎水性のイオン液体に0.8モル/Lの割合でビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(Li[(CF3SO2)2N])からなる支持電解質を溶解させることにより、液体状の第1の非水電解質を調製した。
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)およびγ−ブチロラクトン(γBL)を体積割合で1:1:4に混合した溶媒に、1.5モル/Lの割合でLiBF4からなる支持電解質を溶解させることにより、液体状の第2の非水電解質を調製した。
負極、ポリプロピレン製多孔質膜、固体電解質層、正極および空気拡散層を順次積層した。空気拡散層は、ポリプロピレン製不織布側を正極側、PTFE製多孔質膜側を外側とした。アルミニウム層の一方の面にアルミニウム−PE/PP層を有し、もう一方の面にアルミニウム−PE/PP−PET層を有するラミネートフィルムを用意した。PET層はPE/PP層よりも軟化点が低く、PET層同士を加熱圧着することにより接着性を発現するものであり、PET層を有する面が外装材の内面である。この積層物をラミネートフィルムのPET層(熱可塑性樹脂層)面が内側に位置するようにラミネートフィルムで被覆した。ラミネートフィルムの内面同士を重ね合わせる際、その間に固体電解質層の三辺を挟んだ。また、ラミネートフィルムに設けられた空気孔を空気拡散層上に配置した。さらに、この空気孔にシールテープを貼付して閉塞した。また、正極端子および負極端子の他端は、内面同士が重ね合わされたラミネートフィルム間から延出させた。
内面同士が重ね合わされたラミネートフィルム間を、注液口を除き、ヒートシールで熱融着した。この際、固体電解質層の端部が覆われる範囲をヒートシールし、第1の空間と第2の空間を固体電解質層で隔離した。ついで、注液口から第1の空間に第1の非水電解質を注液すると共に、第2の空間に第2の非水電解質を注液した。最後に注液口をヒートシールで封口することにより、図1に示す構造の非水電解質空気電池を作製した。この際、固体電解質層の端部が覆われる範囲をヒートシールし、第1の空間と第2の空間を各々密閉した。
(実施例2)
平均分子量10,000のポリエチレンオキサイドを100℃で加熱後、5重量%のLi[(CF3SO2)2N]からなる支持電解質を溶解させてからテフロン(登録商標)板上にキャスト、冷却し、有機高分子を含む固体電解質層を作製した。
また、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートを体積割合で1:1に混合した溶媒に、1.0モル/Lの割合で支持電解質としてLi[(CF3SO2)2N]を溶解させることにより、液体状の第2の非水電解質を調製した。
固体電解質層及び第2の非水電解質を上記方法で作製すること以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(実施例3)
固体電解質層としてLi2O−Al2O3−TiO2−P2O5ガラスを用い、かつ固体電解質層の負極側に厚さ25μmの多孔質PPフィルムを配置したこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(実施例4)
固体電解質としてLa0.5Li0.5TiO3結晶を用い、かつ固体電解質層の負極側に厚さ25μmの多孔質PPフィルムを配置したこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(実施例5)
固体電解質としてLi3PS4結晶を用い、かつ固体電解質層の負極側に厚さ25μmの多孔質PPフィルムを配置したこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(実施例6)
第1の非水電解質として、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドからなる疎水性のイオン液体に0.5モル/Lの割合でビステトラフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(Li[(CF3SO2)2N])からなる支持電解質を溶解させた非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例7)
第1の非水電解質として、トリエチル(メトキシエチル)ホスホニウムビストリフルオロメタンスルホニルアミドからなる疎水性のイオン液体に1モル/Lの割合でビステトラフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(Li[(CF3SO2)2N])からなる支持電解質を溶解させた非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(実施例8)
第2の非水電解質として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、プロピオニトリル、ブチルエーテルを1:1:1:1に混合した溶媒に、1モル/Lの割合でLiBF4からなる支持電解質を溶解させた非水電解質を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により非水電解質空気電池を作製した。
(比較例1)
第1,第2の非水電解質それぞれに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホニルアミドに0.8モル/Lの割合でビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(Li[(CF3SO2)2N])からなる支持電解質を溶解させたものを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(比較例2)
第1,第2の非水電解質それぞれに、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびγ−ブチロラクトンを体積割合で1:1:4に混合した溶媒に、1.5モル/Lの割合でLiBF4からなる支持電解質を溶解させたものを用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
(比較例3)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホニルアミドに0.8モル/Lの割合でビストリフルオロメタンスルホニルアミドリチウム(Li[(CF3SO2)2N])からなる電解質を溶解させた第1の溶液を調製した。エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびγブチロラクトンを体積割合で1:1:4に混合した溶媒に、1.5モル/Lの割合でLiBF4からなる電解質を溶解させた第2の溶液を調製した。第1の溶液と、第2の溶液とを体積割合として1:1で混合したものを、第1,第2の非水電解質それぞれに用いたこと以外は、実施例1と同様の手法により、非水電解質空気電池を作製した。
作製した空気電池の放電特性を、温度45℃、湿度65%の恒温恒湿槽内で、以下の条件で測定した。試験1では、放電電流0.04mAで2.0Vまで放電した際の正極炭素重量当たりの放電容量(mAh/g)を測定した。試験2では、放電電流0.4mAで2.0Vまで放電した際の正極炭素重量当たりの放電容量(mAh/g)を測定した。試験3では、放電電流0.4mAで2.0Vまで放電後、充電電流0.4mAで4.0まで充電する充放電サイクルした際の、放電容量が初期容量の80%まで低下するサイクル数を測定した。試験1〜3の結果を下記表1に示す。
表1から実施例1〜8の空気電池は、比較例1〜3の電池と比較して0.04mA、0.4mAでの放電容量がいずれも大きく大電流放電特性に優れており、また耐久性の指標となるサイクル特性も優れていた。
比較例1の電池は、0.04mA、0.4mAでの放電容量がいずれも実施例1〜8に比して小さかった。試験1〜3の後に電池を分解すると、第2の非水電解質が黄色に着色しており、また負極表面が黄褐色に変色していた。イオン液体が負極電位で還元分解したことにより電池特性が低下したものと考えられる。
比較例2,3の電池は、0.4mAでの放電容量が実施例と同等であるものの、0.04mAでの放電容量とサイクル特性が実施例に比して著しく劣っているため、大電流放電特性と耐久性を兼ね備えているとは言えない。また、比較例2,3の電池は、試験1、試験3後の電池を解体すると、いずれも第1の非水電解質量が減っており、特に比較例2では固体が析出していた。低電流で放電、あるいは充放電を繰り返すなど、長期間に渡り電池を使用すると、第1に非水電解質に含まれる有機溶媒が空気孔から揮発し、電池特性が低下したものと考えられる。
以下に、原出願の分割直前の特許請求の範囲の記載を付記する。
[1]容器と、前記容器内に収納される正極と、前記容器内に収納される負極と、前記正極に保持され、イオン液体を含む第1の非水電解質と、前記負極に保持され、有機溶媒を含む第2の非水電解質と、前記正極と前記負極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質層と、前記容器に設けられ、前記正極に酸素を供給するための孔と
を含むことを特徴とする空気電池。
[2]前記リチウムイオン伝導性を有する固体電解質層は、前記第1の非水電解質および前記第2の非水電解質に溶解及び膨潤しない酸化物、硫化物または有機高分子を含むことを特徴とする[1]記載の空気電池。
[3]前記リチウムイオン伝導性を有する固体電解質層は、酸化物ガラス、酸化物結晶、硫化物ガラス、硫化物結晶及びポリエチレンオキサイド含有高分子よりなる群から選択される1以上を含むことを特徴とする請求項1記載の空気電池。
[4]前記イオン液体が、アンモニウムイオン、イミダゾリイウムイオン、および、ホスホニウムイオンよりなる群から選ばれる1種以上のカチオンと、PF6 −、BF4 −、CF3SO3 −、C4F9SO3 −、[B(OOC−COO)2]−、[(CN)2N]−、[(CF3SO2)2N]−、[(C2F5SO2)2N]−、および、BF3(CF3)−よりなる群から選ばれる1種以上のアニオンとを含有することを特徴とする[3]に記載の空気電池。
[5]前記イオン液体が、疎水性を有することを特徴とする[4]に記載の空気電池。
[6]前記有機溶媒が、エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、および、ニトリル類よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[5]に記載の空気電池。