JP5772965B2 - 非水二次電池の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Description
本発明は、非水二次電池の劣化状態を評価して、非水二次電池の放電を制御する制御装置および制御方法に関する。
特許文献1に記載の技術では、電池を充放電したときの電流値の履歴に基づいて、ハイレート放電による劣化を評価するための評価値を算出している。評価値が目標値を超えていないときには、電池の放電を許容する上限値を最大値に設定している。一方、評価値が目標値を超えたときには、上限値を最大値よりも小さい値に設定している。
特許文献1によれば、評価値が目標値を超えていないときには、上限値を最大値に設定しておくことにより、運転者の要求に応じた車両の動力性能を発揮させるようにしている。また、評価値が目標値を超えたときには、上限値を最大値よりも小さい値に設定することにより、ハイレート放電による劣化が発生するのを抑制するようにしている。
特許文献1に記載の技術において、評価値および目標値の大小関係だけで、電池の放電を許容する上限値を変更すると、電池の放電が過度に制限されてしまうことがある。電池の放電が過度に制限されると、電池の十分な出力性能を確保しにくくなってしまう。
本願第1の発明は、非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように非水二次電池の放電を制御する制御装置であり、電流センサおよびコントローラを有する。電流センサは、非水二次電池の充放電時における電流値を検出する。コントローラは、第1劣化成分を評価するための評価値を、電流センサを用いて検出された放電状態から算出する。第1劣化成分は、非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って非水二次電池の出力性能を低下させる成分である。
コントローラは、目標値を超える過去の評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、目標値を超える現在の評価値を加算して、第2積算値を算出する。コントローラは、第2積算値が閾値を超えているか否かを判別し、第2積算値が閾値を超えたときには、上限値を低下させる。上限値を低下させることにより、非水二次電池の放電を制限することができる。
本願第1の発明によれば、閾値と比較される第2積算値を算出するときに、補正係数を用いて、第1積算値を減らしている。第1劣化成分は、非水二次電池の充放電の休止などによって、緩和されるため、過去の評価値から得られる第1積算値を減らすことができる。これにより、第1劣化成分の緩和を考慮して、第2積算値を算出でき、第2積算値が不要に閾値を超えてしまうのを抑制することができる。すなわち、非水二次電池の放電が過度に制限されてしまうのを抑制することができ、非水二次電池に要求される出力を確保することができる。
補正係数は、0よりも大きく、1よりも小さい値とすることができる。ここで、第1積算値に補正係数を乗算した値に、目標値を超える現在の評価値を加算することにより、第2積算値を算出することができる。
直近の所定期間内で得られた評価値だけを用いて、第2積算値を算出することができる。非水二次電池の充放電の休止などによって、第1劣化成分が緩和されるため、過去の評価値は、第1劣化成分を評価する上で影響を与えにくい。そこで、直近の所定期間内で得られた評価値だけを用いることにより、第1劣化成分の緩和を考慮して、第2積算値を算出できる。
一方、直近の所定期間内で算出された第2積算値を、所定期間で除算して時間平均値を算出することができる。そして、時間平均値が閾値を超えているか否かを判別し、時間平均値が閾値を超えているときには、上限値を低下させることができる。時間平均値を算出することにより、第2積算値が一次的に増加して、閾値を超えてしまうのを抑制することができる。時間平均値を用いることにより、第2積算値が閾値を一次的に超える場合を排除することができ、非水二次電池の放電が過度に制限されてしまうのを抑制することができる。
第1積算値および第2積算値を算出するとき、評価値が正の目標値よりも大きいときには、正の目標値および評価値の差分を加算することができる。評価値が負の目標値よりも小さいときには、負の目標値および評価値の差分を減算することができる。
第2劣化成分が大きくなるほど、閾値に到達するまでの第2積算値の増加量が小さくなるように、閾値を変更することができる。第2劣化成分は、非水二次電池の充放電に寄与する構成材料の劣化を示す。一方、第2劣化成分が小さくなるほど、閾値に到達するまでの第2積算値の増加量が大きくなるように、閾値を変更することができる。
第2劣化成分が大きくなるほど、第1劣化成分が小さくなる。このため、第2劣化成分を推定すれば、この第2劣化成分に対応する第1劣化成分の劣化が、どれだけ許容できるかを特定することができる。第1劣化成分の劣化を許容できるほど、閾値に到達するまでの第2積算値の増加量を大きくできる。
閾値を変更するとき、閾値を特定するためのマップを、第2劣化成分に応じて用意しておくことができる。マップおよび第2劣化成分の対応関係を示す情報は、メモリに記憶させておくことができる。第2劣化成分は、非水二次電池の温度および通電量を用いて推定することができる。複数のマップのうち、推定した第2劣化成分に対応するマップを用いて、閾値を特定することができる。
閾値を特定するマップとしては、閾値と、充放電を行っているときの非水二次電池の温度と、非水二次電池の使用状態との関係を示すマップを用いることができる。非水二次電池の出力を用いて車両を走行させるときには、非水二次電池の使用状態として、車両の走行距離に対する非水二次電池の充放電量(Ah/km)を用いることができる。
第2劣化成分を推定するときの温度には、充放電を行っているときの非水二次電池の温度と、充放電を行っていないときの非水二次電池の温度とが含まれる。充放電を行っていないときの二次電池の温度を用いることにより、第2劣化成分の一部を推定することができる。また、充放電を行っているときの二次電池の温度と、通電量を用いることにより、第2劣化成分における残りの部分を推定することができる。
本願第2の発明は、非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように非水二次電池の放電を制御する制御方法であって、電流センサを用いて、非水二次電池の充放電時における電流値を検出し、第1劣化成分を評価するための評価値を、電流センサを用いて検出された放電状態から算出する。第1劣化成分は、非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って非水二次電池の出力性能を低下させる。
また、目標値を超える過去の評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、目標値を超える現在の評価値を加算して、第2積算値を算出し、第2積算値が閾値を超えているか否かを判別する。第2積算値が閾値を超えたとき、非水二次電池の放電を許容する上限値を低下させる。本願第2の発明においても、本願第1の発明と同様の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1である電池システムについて、図1を用いて説明する。図1は、電池システムの構成を示す図である。
図1に示す電池システムは、車両に搭載される。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させるための動力源として、組電池の他に、燃料電池や内燃機関等を備えた車両である。電気自動車は、車両の動力源として組電池だけを備えた車両である。
組電池10は、電気的に直列に接続された複数の単電池11を有する。組電池10を構成する単電池11の数は、組電池10の要求出力等に基づいて、適宜設定することができる。組電池10は、電気的に並列に接続された複数の単電池11を含んでいてもよい。単電池11としては、リチウムイオン二次電池などの非水二次電池を用いることができる。
単電池11の正極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。正極の材料としては、例えば、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムを用いることができる。単電池11の負極は、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵および放出できる材料で形成される。負極の材料としては、例えば、カーボンを用いることができる。単電池11を充電するとき、正極は、イオンを電解液中に放出し、負極は、電解液中のイオンを吸蔵する。また、単電池11を放電するとき、正極は、電解液中のイオンを吸蔵し、負極は、イオンを電解液中に放出する。
組電池10は、システムメインリレー21a,21bを介して昇圧回路22に接続されており、昇圧回路22は、組電池10の出力電圧を昇圧する。昇圧回路22は、インバータ23と接続されており、インバータ23は、昇圧回路22からの直流電力を交流電力に変換する。モータ・ジェネレータ(三相交流モータ)24は、インバータ23からの交流電力を受けることにより、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ24によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
昇圧回路22は、省略することができる。また、モータ・ジェネレータ24として直流モータを用いるときには、インバータ23を省略することができる。
車両を減速させるときや、車両を停止させるとき、モータ・ジェネレータ24は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換する。モータ・ジェネレータ24で生成された交流電力は、インバータ23によって直流電力に変換される。昇圧回路22は、インバータ23の出力電圧を降圧してから組電池10に供給する。これにより、回生電力を組電池10に蓄えることができる。
電流センサ25は、組電池10に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。電流センサ25によって検出された電流値に関して、放電電流を正の値とし、充電電流を負の値とすることができる。温度センサ26は、組電池10の温度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。温度センサ26の数は、適宜設定することができる。複数の温度センサ26を用いるときには、複数の温度センサ26によって検出された温度の平均値を組電池10の温度として用いたり、特定の温度センサ26によって検出された温度を組電池10の温度として用いたりすることができる。
電圧センサ27は、組電池10の電圧を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。本実施例では、組電池10の電圧を検出しているが、これに限るものではない。例えば、組電池10を構成する単電池11の電圧を検出することができる。また、組電池10を構成する複数の単電池11を複数のブロックに分け、各ブロックの電圧を検出することができる。各ブロックは、少なくとも2つの単電池11を含んでいる。
コントローラ30は、システムメインリレー21a,21b、昇圧回路22およびインバータ23の動作を制御する。コントローラ30は、各種の情報を記憶するメモリ31を有する。メモリ31には、コントローラ30を動作させるためのプログラムも記憶されている。本実施例では、コントローラ30がメモリ31を内蔵しているが、コントローラ30の外部にメモリ31を設けることができる。
コントローラ30は、車両のイグニッションスイッチがオフからオンに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオフからオンに切り替えたり、昇圧回路22およびインバータ23を動作させたりする。また、コントローラ30は、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わると、システムメインリレー21a,21bをオンからオフに切り替えたり、昇圧回路22やインバータ23の動作を停止させたりする。
充電器28は、外部電源からの電力を組電池10に供給する。これにより、組電池10を充電することができる。充電器28は、充電リレー29a,29bを介して、組電池10に接続されている。充電リレー29a,29bがオンであるとき、外部電源からの電力を組電池10に供給することができる。
外部電源とは、車両の外部に設けられた電源であり、外部電源としては、例えば、商用電源がある。外部電源が交流電力を供給するとき、充電器28は、交流電力を直流電力に変換して、直流電力を組電池10に供給する。一方、外部電源が直流電力を供給するときには、外部電源からの直流電力を組電池10に供給するだけでよい。本実施例では、外部電源の電力を組電池10に供給できるようにしているが、外部電源の電力を組電池10に供給できなくてもよい。
次に、組電池10の充放電を制御する処理について、図2および図3に示すフローチャートを用いて説明する。図2および図3に示す処理は、予め設定された時間間隔(サイクルタイム)で繰り返して行われる。図2および図3に示す処理は、コントローラ30に含まれるCPUが、メモリ31に記憶されたプログラムを実行することにより行われる。
ステップS101において、コントローラ30は、電流センサ25の出力信号に基づいて、放電電流値を取得する。組電池10を放電しているときには、放電電流値が正の値になり、組電池10を充電しているときには、放電電流値が負の値になる。
ステップS102において、コントローラ30は、ステップS101で得られた放電電流値に基づいて、組電池10のSOC(State Of Charge)を算出(推定)する。SOCは、組電池10の満充電容量に対する、現在の充電容量の割合である。コントローラ30は、組電池10を充放電したときの電流値を積算することにより、組電池10のSOCを算出することができる。組電池10を充放電したときの電流値は、電流センサ25の出力から取得することができる。
一方、電圧センサ27の検出電圧から、組電池10のSOCを推定することもできる。組電池10のSOCは、組電池10のOCV(Open Circuit Voltage)と対応関係があるため、SOCおよびOCVの対応関係を予め求めておけば、OCVからSOCを特定することができる。OCVは、電圧センサ27の検出電圧(CCV:Closed Circuit Voltage)と、組電池10の内部抵抗による電圧降下量とから求めることができる。なお、SOCの算出方法は、本実施例で説明する方法に限るものではなく、公知の方法を適宜選択することができる。
ステップS103において、コントローラ30は、温度センサ26の出力信号に基づいて、組電池10の温度を取得する。ステップS104において、コントローラ30は、ステップS102で算出したSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、忘却係数を算出する。忘却係数は、単電池11の電解液中のイオンの拡散速度に対応する係数である。忘却係数は、下記式(1)の条件を満たす範囲で設定される。
0<A×Δt<1 ・・・(1)
ここで、Aは、忘却係数を示し、Δtは、図2および図3に示す処理を繰り返して行うときのサイクルタイムを示す。
ここで、Aは、忘却係数を示し、Δtは、図2および図3に示す処理を繰り返して行うときのサイクルタイムを示す。
例えば、コントローラ30は、図4に示すマップを用いて、忘却係数Aを特定することができる。図4において、縦軸は、忘却係数Aであり、横軸は、組電池10の温度である。図4に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。
図4に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、忘却係数Aを特定することができる。イオンの拡散速度が速いほど、忘却係数Aが大きくなる。図4に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、忘却係数Aが大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高くなるほど、忘却係数Aが大きくなる。
ステップS105において、コントローラ30は、評価値の減少量D(−)を算出する。評価値D(N)は、組電池10(単電池11)の劣化状態(後述するハイレート劣化)を評価する値である。
単電池11のハイレート放電が継続的に行われると、単電池11の内部抵抗が増加し、単電池11の出力電圧が急激に低下し始める現象が発生することがある。この現象が継続して発生すると、単電池11が劣化してしまうことがある。ハイレート放電による劣化を、ハイレート劣化(第1劣化成分に相当する)とよぶ。ハイレート劣化の要因の1つとしては、ハイレート放電が継続的に行われることにより、単電池11の電解液中のイオン濃度が偏ってしまうことが考えられる。
ハイレート劣化が発生する前に、ハイレート放電を抑制する必要がある。本実施例では、ハイレート劣化を評価するための値として、評価値D(N)を設定している。評価値D(N)の算出方法については、後述する。
評価値の減少量D(−)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、イオンの拡散に伴うイオン濃度の偏りの減少に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(2)に基づいて、評価値の減少量D(−)を算出することができる。
D(−)=A×Δt×D(N−1) ・・・(2)
ここで、AおよびΔtは、式(1)と同様である。D(N−1)は、前回(直前)に算出された評価値を示す。初期値としてのD(0)は、例えば、0とすることができる。
ここで、AおよびΔtは、式(1)と同様である。D(N−1)は、前回(直前)に算出された評価値を示す。初期値としてのD(0)は、例えば、0とすることができる。
式(1)に示すように、「A×Δt」の値は、0から1までの値である。したがって、「A×Δt」の値が1に近づくほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。言い換えれば、忘却係数Aが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の減少量D(−)が大きくなる。なお、減少量D(−)の算出方法は、本実施例で説明した方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの減少を特定することができる方法であればよい。
ステップS106において、コントローラ30は、メモリ31に予め記憶された電流係数を読み出す。ステップS107において、コントローラ30は、ステップS102で算出された組電池10のSOCと、ステップS103で取得した組電池10の温度とに基づいて、限界値を算出する。
例えば、コントローラ30は、図5に示すマップを用いて、限界値を算出することができる。図5に示すマップは、実験等によって予め取得することができ、メモリ31に記憶しておくことができる。図5において、縦軸は、限界値であり、横軸は、組電池10の温度である。図5に示すマップにおいて、ステップS102で取得したSOCと、ステップS103で取得した温度とを特定することにより、限界値を特定することができる。
図5に示すマップでは、組電池10の温度が同じであれば、組電池10のSOCが高いほど、限界値が大きくなる。また、組電池10のSOCが同じであれば、組電池10の温度が高いほど、限界値が大きくなる。
ステップS108において、コントローラ30は、評価値の増加量D(+)を算出する。評価値の増加量D(+)は、前回(直前)の評価値D(N−1)を算出したときから、1回のサイクルタイムΔtが経過するまでの間において、放電に伴うイオン濃度の偏りの増加に応じて算出される。例えば、コントローラ30は、下記式(3)に基づいて、評価値の増加量D(+)を算出することができる。
D(+)=B/C×I×Δt ・・・(3)
ここで、Bは、電流係数を示し、ステップS106の処理で取得した値が用いられる。Cは、限界値を示し、ステップS107の処理で取得した値が用いられる。Iは、放電電流値を示し、ステップS101の処理で検出した値が用いられる。Δtは、サイクルタイムである。
ここで、Bは、電流係数を示し、ステップS106の処理で取得した値が用いられる。Cは、限界値を示し、ステップS107の処理で取得した値が用いられる。Iは、放電電流値を示し、ステップS101の処理で検出した値が用いられる。Δtは、サイクルタイムである。
式(3)から分かるように、放電電流値Iが大きいほど、又は、サイクルタイムΔtが長いほど、評価値の増加量D(+)は大きくなる。なお、増加量D(+)の算出方法は、本実施例で説明した算出方法に限定されるものではなく、イオン濃度の偏りの増加を特定することができる方法であればよい。
ステップS109において、コントローラ30は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出する。評価値D(N)は、下記式(4)に基づいて算出することができる。
D(N)=D(N−1)−D(−)+D(+) ・・・(4)
ここで、D(N)は、今回のサイクルタイムΔtにおける評価値であり、D(N−1)は、前回(直前)のサイクルタイムΔtにおける評価値である。初期値としてのD(0)は、例えば、0に設定することができる。D(−)およびD(+)は、評価値Dの減少量および増加量をそれぞれ示し、ステップS105,S108で算出された値が用いられる。
本実施例では、式(4)に表すように、イオン濃度の偏りの増加と、イオン濃度の偏りの減少とを考慮して、評価値D(N)を算出することができる。これにより、ハイレート劣化の要因と考えられるイオン濃度の偏りの変化(増減)を、評価値D(N)に適切に反映させることができる。したがって、組電池10の状態がハイレート劣化の生じる状態にどの程度近づいているのかを、評価値D(N)に基づいて把握することができる。
ステップS110において、コントローラ30は、ステップS109で算出した評価値D(N)が予め定められた目標値を越えたか否かを判別する。目標値は、ハイレート劣化が発生し始める評価値D(N)よりも小さい値に設定され、予め設定しておくことができる。評価値D(N)が目標値を超えていれば、ステップS111に進み、そうでなければ、ステップS117に進む。
本実施例では、図6に示すように、評価値D(N)のプラス側およびマイナス側において、目標値Dtar+,Dtar-が設定されている。図6は、評価値D(N)の変化(一例)を示す図である。目標値Dtar+は、正の値であり、目標値Dtar-は、負の値である。目標値Dtar+,Dtar-の絶対値は、同じ値になる。ステップS110において、評価値D(N)が目標値Dtar+よりも大きいときと、評価値D(N)が目標値Dtar-よりも小さいときには、ステップS111に進む。すなわち、評価値D(N)の絶対値が、各目標値Dtar+,Dtar-の絶対値よりも大きいときには、ステップS111に進む。
ステップS111において、コントローラ30は、評価値D(N)の積算を行う。具体的には、図6に示すように、評価値D(N)が目標値Dtar+,Dtar-を超えたとき、評価値D(N)のうち、目標値Dtar+,Dtar-を超えている部分について、積算を行う。評価値D(N)が目標値Dtar+,Dtar-を超えるたびに、積算処理が行われる。
評価値D(N)が目標値Dtar+よりも大きいときには、評価値D(N)および目標値Dtar+の差分が加算される。一方、評価値D(N)が目標値Dtar-よりも小さいときには、評価値D(N)および目標値Dtar-の差分が減算される。
本実施例では、下記式(5)に基づいて、積算値ΣDex(N)(第2積算値に相当する)が算出される。
式(5)において、aは補正係数であり、0よりも大きく、1よりも小さい値である。ΣDex(N−1)は、前回までのサイクルタイムにおいて、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分を累積した値(第1積算値に相当する)である。Dex(N)は、今回のサイクルタイムで得られた、評価値D(N)および各目標値Dtar+,Dtar-の差分である。
補正係数aに関する情報は、メモリ31に記憶させておくことができる。補正係数aは、0よりも大きく、1よりも小さい値であるため、今回のサイクルタイムにおいて積算値ΣDex(N)を算出するときには、前回までのサイクルタイムで得られた積算値ΣDex(N−1)が減少する。評価値D(N)は、ハイレート劣化を評価する値であるが、ハイレート劣化は、特定の条件において、緩和されることがある。ハイレート劣化は、イオン濃度が極端に偏ることによって発生すると考えられるため、イオン濃度の偏りが緩和すれば、ハイレート劣化も緩和する。
組電池10の充放電を休止したときには、イオンの拡散によって、イオン濃度の偏りが緩和され、ハイレート劣化に伴う抵抗上昇量が減少する。組電池10の充放電を休止する時間が長くなるほど、イオン濃度の偏りが緩和されやすくなる。また、車両の走行パターンによっては、イオン濃度の偏りが緩和されることがある。さらに、ハイレート放電が行われた後に、外部電源を用いて、組電池10を充電すれば、イオン濃度の偏りが緩和される方向にイオンを移動させることができる。
図7は、組電池10の充放電を休止したときの抵抗増加率の変化(実験結果)と、組電池10の充放電を休止しないときの抵抗増加率の変化(実験結果)とを示している。図7において、横軸はサイクル数であり、縦軸は抵抗増加率である。抵抗増加率は、初期状態にある組電池10の抵抗(Rini)に対して、劣化状態にある組電池10の抵抗(Rr)が、どの程度増加したかを表す値である。抵抗増加率は、例えば、2つの抵抗の比(Rr/Rini)で表すことができる。ハイレート劣化が進行すれば、抵抗増加率が上昇する。
1回のサイクルでは、組電池10の放電によって、組電池10のSOCを上限値SOC_maxから下限値SOC_minに変化させた後、組電池10の充電によって、組電池10のSOCを下限値SOC_minから上限値SOC_maxに変化させている。組電池10を放電するときのレート[C]と、組電池10を充電するときのレート[C]とは、互いに等しくしている。放電レート[C]としては、ハイレート劣化が発生しやすいレート[C]に設定している。
組電池10の充放電を休止しないときには、図8に示すように、組電池10のSOCを上限値SOC_maxから下限値SOC_minに変化させた直後に、組電池10のSOCを下限値SOC_minから上限値SOC_maxに変化させている。この処理を1回のサイクルとして、繰り返して行う。所定のサイクル数に到達したとき、組電池10の抵抗(Rr)を測定して抵抗増加率を求める。このときの抵抗増加率の変化は、図7において、休止時間t_restが0[hour]であるときの実験結果として示している。
組電池10の充放電を休止するときには、図9に示すように、組電池10のSOCを上限値SOC_maxから下限値SOC_minに変化させた後に、組電池10の充放電を所定時間t_restだけ休止している。組電池10の充放電を休止した後、組電池10のSOCを下限値SOC_minから上限値SOC_maxに変化させている。この処理を1回のサイクルとして、繰り返して行う。所定のサイクル数に到達したとき、組電池10の抵抗(Rr)を測定して抵抗増加率を求める。このときの抵抗増加率の変化は、図7において、休止時間t_restが4[hour]、12[hour]であるときの実験結果として示している。
図7に示すように、組電池10の充放電を休止しないときには、組電池10の抵抗増加率が上昇しやすくなっている。一方、組電池10の充放電を休止したときには、組電池10の抵抗増加率が上昇しにくくなっている。また、休止時間t_restが長いほど、組電池10の抵抗増加率が上昇しにくくなっている。このように、組電池10の充放電を休止することにより、ハイレート劣化(抵抗増加率の上昇)を抑制できることが分かる。
上述したように、様々な条件において、ハイレート劣化を緩和することができる。このため、本実施例では、積算値ΣDex(N−1)に補正係数a(0<a<1)を乗算することにより、ハイレート劣化の緩和を考慮して、積算値ΣDex(N−1)を補正している。補正係数aは、ハイレート劣化による抵抗増加率の上昇を考慮して、予め設定しておくことができる。補正係数aを0に近づければ、積算値ΣDex(N)のうち、積算値ΣDex(N−1)が占める割合が減少する。また、補正係数aを1に近づければ、積算値ΣDex(N)のうち、積算値ΣDex(N−1)が占める割合が増加する。
後述するように、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きいときには、組電池10の出力(放電)が制限される。ここで、補正係数aを用いて、積算値ΣDex(N−1)を減少させることにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなりやすくなるのを抑制することができる。
補正係数aを用いて積算値ΣDex(N−1)を補正しないときには、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達しやすくなる。上述したように、組電池10の充放電の休止などによって、ハイレート劣化は緩和され、実際の車両においても、組電池10の充放電を休止させる時間が存在する。積算値ΣDex(N−1)を補正しないときには、組電池10の充放電の休止などを考慮しないことになるため、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達しやすくなり、組電池10の出力を必要以上に制限してしまうおそれがある。組電池10の出力を必要以上に制限してしまうと、組電池10の出力性能を最大限に引き出すことができなくなってしまう。
本実施例によれば、ハイレート劣化の緩和を考慮して、積算値ΣDex(N−1)を補正することにより、実際の組電池10の劣化状態を反映した積算値ΣDex(N)を得ることができる。この積算値ΣDex(N)に基づいて、組電池10の充放電を制御することにより、組電池10の出力が必要以上に制限されてしまうのを抑制することができる。また、組電池10の出力を適正に確保することができ、組電池10の出力によって車両を走行させるときに、車両の走行距離を延ばすことができる。
本実施例において、積算値ΣDex(N)を算出するときに、評価値D(N)が目標値Dtar-よりも小さいときには、評価値D(N)および目標値Dtar-の差分を減算しているが、これに限るものではない。具体的には、評価値D(N)が目標値Dtar+よりも大きくなったときだけ、積算値ΣDex(N)の算出を行うことができる。この場合には、評価値D(N)が目標値Dtar+よりも大きくなるたびに、評価値D(N)および目標値Dtar+の差分が加算されていく。ここで、積算値ΣDex(N−1)は、上述したように、補正係数aによって補正することができる。
本実施例において、積算値ΣDex(N)を算出するときに、評価値D(N)および各目標値Dtar+,Dtar-の差分を積算しているが、これに限るものではない。具体的には、評価値D(N)が目標値Dtar+よりも大きいときには、この評価値D(N)を加算し、評価値D(N)が目標値Dtar-よりも小さいときには、この評価値D(N)を減算することができる。この場合には、目標値Dtar+,Dtar-を考慮して、後述する閾値Kを変更すればよい。ここで、積算値ΣDex(N−1)は、上述したように、補正係数aによって補正することができる。
ステップS112において、コントローラ30は、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きいか否かを判別する。閾値Kは、ハイレート劣化を許容するための値である。ステップS112において、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きいときには、ステップS114に進み、そうでなければ、ステップS113に進む。
閾値Kは、固定値ではなく、組電池10(単電池11)の劣化状態、言い換えれば、組電池10の使われ方に応じて、変更される。閾値Kを決定するための方法について、図10を用いて説明する。
ステップS201において、コントローラ30は、充放電を行っていないときの組電池10の温度と、充放電を行っているときの組電池10の温度と、充放電を行っているときの組電池10の通電量とを取得する。組電池10の充放電を行っていない場合としては、例えば、組電池10が搭載された車両を放置している場合がある。組電池10の温度は、温度センサ26の出力に基づいて取得することができる。また、通電量は、電流センサ25の出力に基づいて取得することができる。
ここで、充放電を行っていないときの組電池10の温度を取得するために、例えば、外気温を検出するために車両に予め設けられた温度センサ(温度センサ26とは異なる)を用いることができる。また、充放電を行っていないときの組電池10の温度としては、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わった直後の温度センサ26の検出結果を用いることもできる。一方、車両の停止によって組電池10の充放電を行っていないとき、コントローラ30は、所定の周期で起動し、温度センサ26の出力に基づいて、組電池10の温度を取得することができる。
ステップS202において、コントローラ30は、ステップS201で取得した情報に基づいて、組電池10(単電池11)の材料劣化を特定(推定)する。組電池10(単電池11)の劣化は、ハイレート劣化および材料劣化に分けられる。材料劣化(第2劣化成分に相当する)とは、単電池11を構成する部材の材料に依存した劣化である。また、材料劣化は、組電池10の充放電を行っていないときの劣化成分(保存劣化という)と、組電池10の充放電を行っているときの劣化成分(通電劣化という)とに分けられる。
保存劣化は、充放電を行っていないときの組電池10の温度、言い換えれば、車両を放置しているときの組電池10の温度に基づいて、特定することができる。充放電を行っていないときの組電池10の温度と、保存劣化との対応関係を示すマップを予め用意しておけば、保存劣化を特定することができる。保存劣化を特定するためのマップは、メモリ31に予め記憶しておくことができる。保存劣化が発生すれば、組電池10の抵抗が上昇するため、保存劣化は、例えば、抵抗増加率で規定することができる。
通電劣化は、充放電を行っているときの組電池10の温度および通電量に基づいて、特定することができる。充放電を行っているときの組電池10の温度および通電量と、通電劣化との対応関係を示すマップを予め用意しておけば、通電劣化を特定することができる。通電劣化を特定するためのマップは、メモリ31に予め記憶しておくことができる。通電劣化が発生すれば、組電池10の抵抗が上昇するため、通電劣化は、例えば、抵抗増加率で規定することができる。保存劣化および通電劣化を特定できれば、材料劣化を特定することができる。
ステップS203において、コントローラ30は、ステップS202で特定した材料劣化に基づいて、閾値Kを決定するためのハイレート劣化のマップを特定する。ハイレート劣化のマップは、図11および図12に示すように、閾値Kと、充放電を行っているときの組電池10の温度(ここでは、平均温度)と、組電池10の使用状態(Ah/km)との関係を示すものである。組電池10の使用状態(Ah/km)は、車両の走行距離に対する組電池10の充放電量であり、走行距離センサの出力と電流センサ25の出力とに基づいて、算出することができる。
図11および図12に示すマップは、材料劣化が互いに異なるときのマップである。図11に示すマップに対応した材料劣化は、図12に示すマップに対応した材料劣化よりも大きくなっている。組電池10(単電池11)の劣化は、材料劣化およびハイレート劣化に分けられるため、材料劣化が大きくなれば、ハイレート劣化を許容する割合が小さくなり、閾値Kも小さくなる。図11に示す閾値Kは、図12に示す閾値Kよりも小さくなっている。
例えば、低温環境では、材料劣化が発生しにくいため、ハイレート劣化を許容する割合を大きくすることができる。図11および図12に示すマップを、材料劣化の程度に応じて複数用意しておけば、ステップS202で特定された材料劣化に対応するマップを特定することができる。図11および図12に示すマップは、メモリ31に予め記憶させておくことができる。
ステップS204において、コントローラ30は、ステップS203で特定したハイレート劣化のマップを用いて、閾値Kを特定する。具体的には、コントローラ30は、組電池10の温度および組電池10の使用状態(Ah/km)を取得し、組電池10の温度および使用状態(Ah/km)に対応した閾値Kを特定する。この閾値Kは、図3のステップS112の処理で用いられる。
図3のステップS113において、コントローラ30は、組電池10の充放電制御に用いられる出力制限値を最大値に設定する。出力制限値は、組電池10の放電を許容する上限値(電力[kW])である。コントローラ30は、組電池10の出力電力が出力制限値を超えないように、組電池10の放電を制御する。
最大値としての出力制限値は、予め決めておくことができる。組電池10の出力を制限するときには、出力制限値が最大値よりも小さい値に変更される。出力制限値は、最大値および最小値の間で変化させることができる。最小値としての出力制限値は、例えば、0[kW]とすることができる。この場合には、組電池10の放電が禁止されることになる。
ステップS114において、コントローラ30は、出力制限値を最大値よりも小さい値に設定する。出力制限値を低下させるほど、組電池10の出力が制限されることになる。コントローラ30は、積算値ΣDex(N)および閾値Kの差分に応じて、最大値に対して出力制限値を減少させる量を設定することができる。例えば、コントローラ30は、下記式(6)に基づいて、出力制限値を算出することができる。
Wout=Wout(MAX)−L×(ΣDex(N)−K) ・・・(6)
ここで、Woutは、放電制御に用いられる出力制限値を示し、Wout(MAX)は、出力制限値の最大値を示す。Lは、係数を示す。Kは、ステップS112で説明した閾値Kを示す。
ここで、Woutは、放電制御に用いられる出力制限値を示し、Wout(MAX)は、出力制限値の最大値を示す。Lは、係数を示す。Kは、ステップS112で説明した閾値Kを示す。
「L×(ΣDex(N)−K)」の値は、出力制限値を減少させる量を示しており、係数Lを変化させることにより、減少量を調整することができる。具体的には、車両のドライバビリティを考慮して、減少量を調整することができる。
ステップS115において、コントローラ30は、組電池10の放電制御に関する指令を、インバータ23に送信する。この指令には、ステップS113又はステップS114で設定された出力制限値に関する情報が含まれる。これにより、組電池10の放電電力が、出力制限値を超えないように、組電池10の放電が制御される。
ステップS116において、コントローラ30は、今回の評価値D(N)および積算値ΣDex(N)をメモリ31に記憶する。評価値D(N)をメモリ31に記憶することにより、評価値D(N)の変化を監視することができる。また、積算値ΣDex(N)をメモリ31に記憶することにより、次回の評価値D(N+1)が目標値Dtar+,Dtar-を超えたときに、積算値ΣDex(N)を更新することができる。
ステップS110の処理からステップS117の処理に進んだとき、ステップS117において、コントローラ30は、評価値D(N)をメモリ31に記憶する。これにより、評価値D(N)の変化を監視することができる。
本実施例によれば、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きいときには、組電池10の放電を制限することにより、ハイレート放電による組電池10(単電池11)の劣化を抑制することができる。また、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達するまでは、出力制限値が最大値に設定されたままであるため、組電池10の出力を用いて、運転者が要求する車両の動力性能を発揮させることができる。
図13は、評価値D(N)の変化に伴う、積算値ΣDex(N)および出力制限値の変化を示す図(一例)である。
評価値D(N)が目標値Dtar+,Dtar-を超えるたびに、積算値ΣDex(N)が更新される。時刻t11において、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達すると、出力制限値が変更される。これにより、組電池10の放電が更に制限される。また、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなるにつれて、出力制限値が小さくなっていく。一方、積算値ΣDex(N)が閾値Kに到達するまでは、出力制限値が最大値に維持される。
時刻t12では、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも小さくなる。これにより、出力制限値は、最大値に設定される。時刻t12よりも前の時間帯では、時刻t12に近づくにつれて、出力制限値は、最大値に近づいている。時刻t12から時刻t13の間では、出力制限値が最大値に設定される。時刻t13では、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなるため、出力制限値が変更される。そして、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなるにつれて、出力制限値が小さくなる。
本実施例では、評価値D(N)が各目標値Dtar+,Dtar-を超えても、このタイミングにおいて出力制限値は変更されず、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなったときに、出力制限値が変更される。このような制御を行うことにより、評価値D(N)が各目標値Dtar+,Dtar-を超えた後でも、出力制限値が最大値に設定された状態において、組電池10の放電を行うことができ、運転者の要求に応じた車両の動力性能を確保することができる。
また、本実施例によれば、単電池11の材料劣化を推定することにより、ハイレート劣化を許容できる範囲を特定することができる。そして、ハイレート劣化を許容できる範囲に対応した閾値Kを設定することにより、ハイレート劣化を許容できる範囲内において、組電池10を放電させることができる。組電池10の放電を確保すれば、運転者の要求に応じた車両の動力性能を確保することができる。
本実施例では、サイクルタイムΔtごとに評価値D(N)をメモリ31に記憶し、メモリ31に記憶された前回(直前)の評価値D(N−1)を用いて、今回の評価値D(N)を算出しているが、これに限るものではない。具体的には、放電電流値の履歴に基づいて、評価値D(N)を算出することができる。放電電流値が変化することに応じて、評価値D(N)が変化するため、放電電流値の履歴を取得しておけば、評価値D(N)を算出することができる。例えば、放電電流値の履歴だけをメモリ31に記憶しておき、放電電流値の履歴を用いて、特定のサイクルタイムΔtにおける評価値D(N)を算出することができる。
本実施例では、図3のステップS110で用いられる目標値Dtar+,Dtar-を、予め設定された固定値としているが、これに限るものではない。すなわち、目標値Dtar+,Dtar-を変化させることもできる。
具体的には、本実施例と同様に、材料劣化を推定して、ハイレート劣化を許容できる範囲を特定する。そして、ハイレート劣化を許容できる範囲が、予め定めた基準範囲よりも小さいときには、基準範囲に対応した目標値Dtar+,Dtar-よりも小さい値に、目標値Dtar+,Dtar-を設定することができる。一方、ハイレート劣化を許容できる範囲が基準範囲よりも大きいときには、基準範囲に対応した目標値Dtar+,Dtar-よりも大きい値に、目標値Dtar+,Dtar-を設定することができる。
基準範囲に対応した目標値Dtar+,Dtar-としては、例えば、本実施例で説明した目標値Dtar+,Dtar-とすることができる。目標値Dtar+,Dtar-を変更するときには、閾値Kを固定値とすることができる。
目標値Dtar+,Dtar-を小さくするときには、目標値Dtar+,Dtar-を0に近づける。このように目標値Dtar+,Dtar-を変更することにより、評価値D(N)および各目標値Dtar+,Dtar-の差分を増やすことができる。これにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなりやすく、組電池10の放電を制限しやすくなる。
一方、目標値Dtar+,Dtar-を大きくするときには、目標値Dtar+,Dtar-を0から遠ざかる方向に変更する。このように目標値Dtar+,Dtar-を変更することにより、評価値D(N)および各目標値Dtar+,Dtar-の差分を減らすことができる。これにより、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなりにくくなり、組電池10の放電を制限しなくてもよい。
本発明の実施例2である電池システムについて説明する。本実施例の電池システムでも、図2および図3に示す処理が行われる。ここで、積算値ΣDex(N)の算出方法(図3のステップS111の処理)について、本実施例は実施例1と異なる。他の処理については、実施例1で説明した処理と同じであるため、詳細な説明は省略する。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
本実施例では、下記式(7)に基づいて、積算値ΣDex(N)を算出している。
式(7)において、Tは予め定められた期間であり、適宜設定することができる。aは、補正係数であり、0よりも大きく、1よりも小さい値である。ΣDex(N−1)は、前回までのサイクルタイム(T−Δt)において、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分を累積した値である。Dex(N)は、今回のサイクルタイム(Δt)で得られた、評価値D(N)および目標値Dtar+,Dtar-の差分である。
実施例1で説明した積算値ΣDex(N−1)は、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分を累積し続けた値である。本実施例で用いられる積算値ΣDex(N−1)は、期間Tの間において、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分を累積した値である。本実施例では、今回のサイクルタイムに対して、期間Tよりも前に取得された、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分は、積算値ΣDex(N)の算出には用いられない。
本実施例における積算値ΣDex(N)の算出方法について、図14を用いて具体的に説明する。図14は、評価値D(N)の変化(一例)と、積算値ΣDex(N)を算出する期間Tとの関係を示している。
図14において、まず、時刻t20から時刻t22までの間において、積算値ΣDex(N)が算出される。時刻t20から時刻t22までの期間は、期間Tとなる。時刻t21から時刻t22までの間は、今回のサイクルタイムとなる。時刻t20から時刻t21までは、積算値ΣDex(N−1)が算出される。積算値ΣDex(N−1)の算出方法は、実施例1で説明した方法と同じである。式(7)に示すように、積算値ΣDex(N−1)には、補正係数aが乗算される。
時刻t21から時刻t22までは、差分Dex(N)が算出される。すなわち、まず、評価値D(N)が目標値Dtar+,Dtar-を超えているか否かが判別される。評価値D(N)が目標値Dtar+,Dtar-を超えているときには、評価値D(N)および目標値Dtar+,Dtar-の差分Dex(N)が算出される。積算値ΣDex(N−1)および差分Dex(N)が得られれば、式(7)に基づいて、積算値ΣDex(N)が算出される。
式(7)に示すように、本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)としている。そして、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きいときには、実施例1と同様に、組電池10の放電を制限することができる。本実施例で用いられる閾値Kは、実施例1で説明した閾値Kとは異なり、期間Tに対応した値となる。
時刻t22において、今回のサイクルタイムが終了すると、時刻t23から時刻t25の間において、積算値ΣDex(N)の算出が行われる。時刻t23は、時刻t20から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t24は、時刻t22と同じ時刻である。時刻t25は、時刻t24から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t24から時刻t25までの間が、今回のサイクルタイムとなる。
時刻t23から時刻t25の間で算出される積算値ΣDex(N)は、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値となる。そして、積算値ΣDex(N)が閾値よりも大きいときには、実施例1と同様に、組電池10の放電が制限される。
時刻t25において、今回のサイクルタイムが終了すると、時刻t26から時刻t28の間において、積算値ΣDex(N)の算出が行われる。時刻t26は、時刻t23から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t27は、時刻t25と同じ時刻である。時刻t28は、時刻t27から、1回のサイクルタイムΔtが経過した時刻である。時刻t27から時刻t28までの間が、今回のサイクルタイムとなる。
時刻t26から時刻t28の間で算出される積算値ΣDex(N)は、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値となる。そして、積算値ΣDex(N)が閾値よりも大きいときには、実施例1と同様に、組電池10の放電が制限される。
実施例1で説明したように、組電池10の充放電の休止などによって、ハイレート劣化が緩和される。このため、現在のサイクルタイムよりも期間T以上だけ前の時刻においては、評価値Dが目標値Dtar+,Dtar-を超えたとしても、この評価値Dは、ハイレート劣化を評価する上で影響を与えにくい。そこで、本実施例では、直近の期間Tの間に取得された評価値Dだけを用いて、積算値ΣDex(N)を算出している。
これにより、ハイレート劣化の緩和を考慮した積算値ΣDex(N)を得ることができ、緩和されていないハイレート劣化に応じて、組電池10の放電を制限することができる。ハイレート劣化を評価する上で影響を与えにくい過去の評価値Dも用いて積算値ΣDex(N)を算出すると、積算値ΣDex(N)が閾値Kよりも大きくなりやすく、組電池10の放電を過度に制限してしまうおそれがある。本実施例において、過去の評価値Dは、積算値ΣDex(N)の算出に用いていないため、積算値ΣDex(N)に応じて、組電池10の放電を過度に制限してしまうのを抑制することができる。
図14に示すように、評価値Dは、時間とともに変動するため、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分も、時間とともに変動する。評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分が変動すれば、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値も変動する。このため、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値は、一次的に上昇したり、一次的に低下したりすることがある。「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値と閾値Kとを比較するときには、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に増加して、閾値Kよりも大きくなってしまうことがある。この場合には、組電池10の放電が制限されてしまう。
本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)としている。時間平均値としての積算値ΣDex(N)を用いることにより、期間Tの間において、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を分散させることができる。これにより、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に増加して閾値Kよりも大きくなってしまうのを抑制することができ、組電池10の放電が過度に制限されてしまうのを抑制することができる。
図15には、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を積算値ΣDex(N)とし、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値の変化(一例)を示している。「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値と閾値Kとを比較するときには、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が閾値Kよりも大きくなった時点で、組電池10の放電が制限されてしまう。
一方、本実施例では、「a×ΣDex(N−1)(T−Δt)+Dex(N)Δt」の値を期間Tで除算した時間平均値を積算値ΣDex(N)としており、この時間平均値および閾値Kを比較している。時間平均値を用いることにより、「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値が一次的に閾値Kよりも大きくなっても、時間平均値が閾値Kよりも大きくならないことがある。これにより、時間平均値が閾値Kよりも大きくなってしまうのを抑制でき、組電池10の放電が過度に制限されてしまうのを抑制することができる。
本実施例では、式(7)に示すように、積算値ΣDex(N−1)に補正係数a(0<a<1)を乗算しているが、補正係数aを乗算しなくてもよい。すなわち、直近の期間Tにおいて、評価値Dおよび各目標値Dtar+,Dtar-の差分を累積し、累積値を期間Tで除算した時間平均値を、積算値ΣDex(N)として用いることができる。
実施例1では、式(5)に基づいて、積算値ΣDex(N)を算出しており、過去のすべての評価値Dを考慮している。ここで、本実施例のように、直近の期間Tにおいて得られた評価値Dだけを考慮して、積算値ΣDex(N)を算出することができる。すなわち、本実施例で説明した「a×ΣDex(N−1)+Dex(N)」の値を、積算値ΣDex(N)とすることができる。
Claims (12)
- 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御装置であって、
前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出する電流センサと、
前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサを用いて検出された放電状態から算出するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
目標値を超える過去の前記評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算した第2積算値が閾値を超えているか否かを判別し、
前記第2積算値が前記閾値を超えたとき、前記上限値を低下させる、
ことを特徴とする制御装置。 - 前記コントローラは、直近の所定期間内において、前記第2積算値を算出することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
- 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御装置であって、
前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出する電流センサと、
前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサを用いて検出された放電状態から算出するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
直近の所定期間内において、目標値を超える過去の前記評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算した第2積算値を算出し、
前記第2積算値を、前記所定期間で除算して時間平均値を算出し、前記時間平均値が閾値を超えているか否かを判別し、
前記時間平均値が前記閾値を超えたとき、前記上限値を低下させる、
ことを特徴とする制御装置。 - 前記補正係数は、0よりも大きく、1よりも小さい値であり、
前記コントローラは、前記第1積算値に前記補正係数を乗算した値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算して、前記第2積算値を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の制御装置。 - 前記コントローラは、前記評価値が正の前記目標値よりも大きいときには、前記正の目標値および前記評価値の差分を加算し、前記評価値が負の前記目標値よりも小さいときには、前記負の目標値および前記評価値の差分を減算することにより、前記第1積算値および前記第2積算値を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の制御装置。
- 前記コントローラは、前記非水二次電池の充放電に寄与する構成材料の劣化を示す第2劣化成分が大きくなるほど、前記閾値に到達するまでの前記第2積算値の増加量が小さくなるとともに、前記第2劣化成分が小さくなるほど、前記閾値に到達するまでの前記第2積算値の増加量が大きくなるように、前記閾値を変更することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の制御装置。
- 前記閾値を特定するためのマップを、前記第2劣化成分に応じて記憶するメモリを有しており、
前記コントローラは、
前記非水二次電池の温度および通電量を用いて、前記第2劣化成分を推定し、
前記メモリに記憶された複数の前記マップのうち、推定した前記第2劣化成分に対応する前記マップを用いて、前記閾値を特定することを特徴とする請求項6に記載の制御装置。 - 前記非水二次電池は、車両の走行に用いられるエネルギを出力することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の制御装置。
- 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御方法であって、
電流センサを用いて、前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出し、
前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサを用いて検出された放電状態から算出し、
目標値を超える過去の前記評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算した第2積算値が閾値を超えているか否かを判別し、
前記第2積算値が前記閾値を超えたとき、前記上限値を低下させる、
ことを特徴とする制御方法。 - 直近の所定期間内において、前記第2積算値を算出することを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
- 非水二次電池の放電電力が上限値を超えないように前記非水二次電池の放電を制御する制御方法であって、
電流センサを用いて、前記非水二次電池の充放電時における電流値を検出し、
前記非水二次電池の放電による電解質中におけるイオン濃度の偏りに伴って前記非水二次電池の出力性能を低下させる第1劣化成分を評価するための評価値を、前記電流センサを用いて検出された放電状態から算出し、
直近の所定期間内において、目標値を超える過去の前記評価値を積算した第1積算値を補正係数によって減らした値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算した第2積算値を算出し、
前記第2積算値を、前記所定期間で除算して時間平均値を算出し、
前記時間平均値が閾値を超えているか否かを判別し、
前記時間平均値が前記閾値を超えたとき、前記上限値を低下させる、
ことを特徴とする制御方法。 - 前記補正係数は、0よりも大きく、1よりも小さい値であり、
前記第1積算値に前記補正係数を乗算した値に、前記目標値を超える現在の前記評価値を加算して、前記第2積算値を算出することを特徴とする請求項9から11のいずれか1つに記載の制御方法。
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