JP5779115B2 - シアン化合物の浄化方法 - Google Patents
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Description
(2)金属シアノ錯体とシアン分解菌を含む浄化処理の系に、解離剤、もしくは解離剤を溶解させた水を供給することとすれば、浄化処理の系に供給された解離剤により浄化処理の系中の金属シアノ錯体からシアンが遊離するので、浄化処理の系中に生息するシアン分解菌が遊離シアンを資化して無毒化(分解)するとともに、遊離シアンの資化により浄化処理の系中のシアン分解菌が増加し、遊離シアンの分解を促進させることができる。この結果、浄化処理の系のシアンの浄化効率が高まる。
(3)シアン分解菌を導入して土壌の浄化を促進させることとすれば、既存のシアン分解菌が少ない場合や遊離シアンの資化能力が低い菌種の割合が多い場合等であっても、シアン分解菌による遊離シアンの分解能力を補って浄化を促進させることができる。
(4)そもそも解離剤は、金属シアノ錯体からシアンを遊離させる程の酸化力を有しておりシアン分解菌に対して毒性を示すものであることから、供給する解離剤の終濃度を前記シアン分解菌が死滅しない濃度とすれば、シアン分解菌が供給された解離剤により死滅することを抑制ないし防止することができる。また、解離剤の終濃度を、5mM以上、好ましくは10mM以上とすることで、全シアン濃度の減少傾向を大きくすることができる。
(5)前記解離剤として過硫酸塩を含むものとすれば、ヒドロキシラジカルに近い酸化力を有する硫酸ラジカルを発生させて金属シアノ錯体を分解できるとともに、シアン分解菌内で起こるロダニーズ酵素による下記化学反応における左辺の「S2O3 2-」の絶対量を増加させて下記反応を促進させることができる。この結果、遊離シアンの無毒化(分解)を早めることができる。
S2O3 2-+CN-→SCN++SO3 2-(式1)
(6)前記シアン分解菌の増殖を促進する化合物を導入して、前記シアン分解菌の生育を制御しつつ浄化を行うことで、栄養素不足によりシアン分解菌が増殖できずに浄化能力が低下することがなく、シアン浄化能を維持しながら浄化を行うことができる。
(7)浄化処理の系のpHをリン酸緩衝液等のpH緩衝剤により中性領域に保って浄化を行うこととすれば、シアン分解菌の生育環境に適したpH環境でシアンの分解処理が行われるので、pHによりシアン分解効率が低下することを防止できる。さらに、シアン化合物のガス化を抑制できるため、作業安全性が高まる。
Fe4[Fe(CN)6]3+12OH-→3[Fe(CN)6]4-+4Fe(OH)3(式2)
<解離剤>
本発明に使用可能な解離剤は、金属シアノ錯体からシアンを遊離させることができる化合物や組成物等であり、バイオレメディエーションにおいて難分解性の鉄シアノ錯体の浄化速度を高めるものである。
(解離剤の濃度)
解離剤は、金属シアノ錯体からシアンを遊離させる程の強い酸化力を有しており、シアン分解菌に対して毒性を示すことから、浄化処理の系の解離剤の濃度、つまり解離剤の終濃度をシアン分解菌が死滅しない範囲の濃度とすることが望ましい。具体的に、解離剤として過硫酸塩を用いる場合には、終濃度20mM以下とすることが好ましい。
<キレート剤>
シアノ分解菌の生存や増殖に影響を与えない範囲で浄化処理の系にキレート剤を添加して遊離シアンが金属イオンと再結合して金属シアノ錯体を再生成するのを抑制することとしてもよい。
<金属シアノ錯体>
金属シアノ錯体は、シアン化水素の金属塩と金属とが過剰のシアン化物イオン(CN―)と結合したもので、一般式An[M(CN)x]yで表される。ここで、Mには銀(Ag)、金(Au)、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)などの金属が該当し、溶液中に溶解、あるいは懸濁状で存在する。
<シアン分解菌>
シアン分解菌とは、その資化作用(化学反応を含む)によりシアン化合物を無毒化(化学変化:分解、化学修飾等)する菌種を意味する。無毒化には、遊離シアンをヒトに対して無毒なチオシアン酸イオン(SCN-)等の別の化合物に変えることが含まれる。
(遊離シアンの分解経路)
生じた遊離シアンは、汚染サイトの浄化処理の系に生息する又は導入した各種のシアン分解菌により分解される。遊離シアンを分解する経路は、いずれの分解経路でも多くの場合には、上述したような好気性細菌が浄化に関与する。これは、下記式中に示すロダナーゼ酵素を産出する微生物の多くは好気性細菌であることによる。
1)酸化的完全分解
2HCN+2H2O+O2→2NH3+2CO2+2H2O(式3)
2)アルデヒドを利用した無害化
6CN-+6CH2O+13.5O2→6CO2+3N2+3H2O+6HCO3 -(式4)
3)ロダナーゼ酵素によるチオ硫酸との無毒化
S2О3 2-+CN-→SCN-+SO3 2-(式5)
フェリシアンの分解により生じる遊離シアンの分解に好気性のシアン分解菌を使用する場合には、微生物を活性化するためにスパージング等で浄化処理の系に酸素供給をすることで反応系中のシアン分解菌を活性化させることが望ましい。
<帯水層への導入>
以下、金属シアノ錯体を含む処理対象の土壌に、後述する水や解離剤等を供給し、前記土壌中に生息する又は導入したシアン分解菌を活性化させて前記土壌を浄化する浄化処理システムを説明する。
<浄化処理システム>
浄化処理システム1は、解離剤、pH調節剤、シアノ分解菌の栄養素、シアン分解菌をそれぞれ単独もしくは複数同時に液体と混合して帯水層Tに供給する液体供給手段10と、シアン分解菌の生育に必要な空気を帯水層Tに供給する気体供給手段20と、帯水層Tの底の不透水層まで貫通するように縦方向に地中に埋設され、不透水層とともに汚染源Gを囲う止水壁50と、地下水を汲み上げて水処理を行う水処理手段40と、帯水層Tに供給した空気を集めて回収する気体回収浄化手段30と、等を有している。
<液体供給手段>
液体供給手段10は、解離剤、シアノ分解菌の栄養素、pH緩衝剤、及びシアノ分解菌等を帯水層Tに供給するためのもので、図6に示すように、地盤GL中に所定間隔で3箇所配設されたスパージング井戸1A〜1Cと、スパージング井戸1A〜1Cと送水管31を介して接続された液体貯留槽33と、液体貯留槽33と管K〜Nを介して接続された貯留槽A,I,U,Eと、送水管31や管K〜Nに設けられた送水ポンプ32、バルブ34及び水量計35と、pHメータ(図示省略)等とを有している。
<スパージング井戸>
スパージング井戸1A〜1Cには、その下端付近に開口部を有した管が使用されており、当該開口部には土砂により塞がれることがないように、通気・通水が可能なスクリーン11が配設されている。
<液体貯留槽>
液体貯留槽33は、帯水層Tに注入する液Wを調製するための槽であり、各貯留槽A,I,U,Eからそれぞれ独立して解離剤等の貯留液を液体貯留槽33に送出されてきた解離剤、シアノ分解菌の栄養素、pH緩衝剤、及びシアノ分解菌等を一時的に貯留する。
<気体供給手段>
気体供給手段20は、酸素を含み、且つ、シアノ分解菌に悪影響を与えない気体ARを帯水層Tのシアノ分解菌に供給するものであり、この気体ARを圧縮するコンプレッサ22と、上記スパージング井戸1A〜1Cと、コンプレッサ22とスパージング井戸1A〜1Cを接続する送気管21と、送気管21に設けられたバルブ23、流量計24及び圧力計25等を有している。
<止水壁>
汚染源Gの領域を囲うように不透水層の上面RLに至るまで止水壁50が地盤に埋設されており、これにより、領域の地下水位WLが地下水位WL’まで上昇し、汚染源Gを地下水位WL’よりも低い位置に配置させることが可能となる。
<水処理手段>
水処理手段40は、汚染地下水を揚水して水処理(シアン化合物の浄化を含む汚染物質の浄化処理による水質改善)を行うものであり、地下水を揚水するために帯水層Tの任意の地点に吸引口が位置するように配置された揚水井戸40と、揚水井戸40の下流端に接続された吸引用のポンプ43及び送水管41と、送水管41の下流端に接続された水処理装置42と、を有している。
<気体回収浄化手段>
気体回収浄化手段30は、上記コンプレッサ22の気体ARの圧縮と同時に既に地中に供給した気体ARを吸引回収するための減圧をする真空装置62と、地盤GLの表層に形成した掘削穴12と、この掘削穴12に砕石を敷き詰めて形成した砕石層13と、砕石層13に設けられた排気管61、不図示のシアンガス等の気体浄化装置63等を有している。
<シアン浄化処理>
浄化処理システム1の設置から撤去までは、汚染源Gの位置・領域を特定、汚染源Gのシアン化合物の濃度の計測、浄化区画の設定、スパージング井戸1A〜1Cの設置を含む上記各手段の設置、気体ARと液体Wの連続又は間欠投入によるシアン化合物の期間継続的な浄化処理とシアン化合物等の各種モニタリング、そして、シアン浄化処理の終了および上記各手段の撤去により行われる。
<過硫酸塩の濃度による地下水中の微生物の増殖試験(図2参照)>
シアノ分解菌の増殖が過硫酸塩なしの対照区に対して、どの程度影響が出るかを確認することを目的として試験を行なった。
[実施例1]
石炭ガス製造工場跡地から採取したシアン汚染地下水(鉄シアノ錯体の比率が95%以上)に、ペプトン、Nutrient Broth、酵母エキスをそれぞれ1g/Lの濃度で添加した。更に、過硫酸カリウムを添加(終濃度1mM)した後に、30℃で振盪培養を行い、経時的に濁度(つまり菌濃度)の計測を行なった。
[実施例2〜6]
実施例2〜6では、添加する過硫酸カリウムの終濃度を3mM(実施例2)、5mM(実施例3)、10mM(実施例4)、20mM(実施例5)及び40mM(実施例6)とした以外は、実施例1と同様に培養や濁度の計測等を行なった。
[比較例1]
比較例1では、添加する過硫酸カリウムを無添加(0mM)とした以外は、実施例1と同様に培養や濁度の計測等を行なった。
(結果と考察)
この結果、図2に示すように、10mM以下の過硫酸カリウム(実施例1〜4)では、シアノ分解菌の増殖が観測されたが、20mMの過硫酸カリウム(実施例5)では、ほとんど増殖ができなくなった。さらに、40mMの過硫酸カリウム(実施例6)では、殆ど増殖を示さなくなった。
<実施汚染地下水を用いたシアン化合物の分解試験(図3参照)>
次に、実施汚染地下水に過硫酸カリウムを加えてシアン化合物の分解試験を行なった。過硫酸カリウムの濃度別に金属シアノ錯体からのシアンの遊離の程度を調べるとともに、過硫酸カリウムの濃度により変わるリン酸緩衝剤のpH緩衝作用の上記分解への影響を調べた。下記表2に各実施例および比較例のリン酸緩衝液と過硫酸カリウムの濃度を示す。
過硫酸カリウムとpH緩衝剤(リン酸緩衝液、pH6.5、NaH2PO4:Na2HPO4・12H2O=68.5:31.5)を地下水に加えた場合のシアン化合物の分解傾向について検討した。
[比較例2、実施例8,9]
さらに、過硫酸カリウムの濃度を、5mM(実施例8)、3mM(実施例9)、0mM(比較例2)とした以外は、それぞれ実施例7と同様に試験を行なった。これらの結果を図3〜図5(実施例9、比較例2は図5で不図示)に示す。
[比較例3、実施例10〜12]
リン酸緩衝液の濃度を1.0mMに変更し、さらに過硫酸カリウムの濃度をそれぞれ10mM(実施例10)、5mM(実施例11)、3mM(実施例12)および0mM(比較例3)とした以外は実施例7と同様に試験を行なった。この結果のうち、培養開始から27日後の実施例10,実施例11のみを図示する(図5参照)。
[比較例4、実施例13〜15]
リン酸緩衝液の濃度を0.5mMに変更し、さらに過硫酸カリウムの濃度をそれぞれ10mM(実施例13)、5mM(実施例14)、3mM(実施例15)および0mM(比較例4)とした以外は実施例7と同様に試験を行なった。この結果のうち、培養開始から27日後の実施例13,実施例14のみを図示する(図5参照)。
[比較例5、実施例16〜18]
リン酸緩衝液の濃度を0.3mMに変更し、さらに過硫酸カリウムの濃度をそれぞれ10mM(実施例16)、5mM(実施例17)、3mM(実施例18)および0mM(比較例5)とした以外は実施例7と同様に試験を行なった。この結果のうち、培養開始から27日後の実施例16,実施例17のみを図示する(図5参照)。
[比較例6、実施例19〜21]
リン酸緩衝液の濃度を0mMに変更し、さらに過硫酸カリウムの濃度をそれぞれ10mM(実施例19)、5mM(実施例20)、3mM(実施例21)および0mM(比較例6)とした以外は実施例7と同様に試験を行なった。この結果のうち、培養開始から27日後の実施例19,実施例20のみを図示する(図5参照)。
(全シアン濃度の推移(図3参照))
この結果、全シアン濃度の推移は、過硫酸カリウムを3mM添加した条件(実施例9)では、過硫酸カリウムを添加しない条件(比較例2)とほぼ同様であった。
(全遊離シアン濃度の推移(図4参照))
図4に示すように、5mM、10mMの過硫酸カリウムを添加した条件(実施例8,実施例7)では、培養開始後の数日間に遊離シアンの濃度が急に上昇し、その後、培養が進むと共に低下していく傾向が見られた。
(pHの推移(図5参照))
図5に、5mMの過硫酸カリウムを添加した条件(実施例8、11、14、17及び20)と、10mMの過硫酸カリウムを添加した条件(実施例7、10、13、16、19及び21)について、リン酸緩衝液濃度別の培養終了後(27日)の培養液のpHを示す。
1A-1C スパージング井戸
10 液体供給手段
11 スクリーン
12 掘削穴
13 砕石層
20 気体供給手段
21 送気管
22 コンプレッサ
23 バルブ
24 流量計
25 圧力計
30 気体回収浄化手段
31 送水管
32 送水ポンプ
33 液体貯留槽
34 バルブ
35 水量計
40 水処理手段
41 送水管
42 水処理装置
43 ポンプ
44 揚水井戸
50 止水壁
61 排気管
62 真空装置
63 浄化装置
AR 気体
貯留槽A〜E
W 液体
RL 不透水層の上面
T 帯水層
WL 水面
Claims (7)
- 解離剤として終濃度を20mM以下とした過硫酸塩により金属シアノ錯体からシアンを遊離させた後に、該遊離シアンをシアン分解菌により浄化することを特徴とするシアン化合物の浄化方法。
- 金属シアノ錯体とシアン分解菌を含む浄化処理の系に、解離剤もしくは解離剤を含む水を供給して前記シアン分解菌を活性化させることを特徴とする請求項1に記載のシアン化合物の浄化方法。
- シアン分解菌を導入して浄化を促進させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシアン化合物の浄化方法。
- 前記解離剤の終濃度を5mM以上、好ましくは10mM以上とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシアン化合物の浄化方法。
- 前記シアン分解菌の増殖を促進させる化合物を導入して前記シアン分解菌の生育を制御しつつ浄化を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシアン化合物の浄化方法。
- 前記浄化処理の系のpHを中性領域に保って浄化を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のシアン化合物の浄化方法。
- 前記浄化処理の系のpHを中性に保つための緩衝剤としてリン酸緩衝液を用いて浄化することを特徴とする請求項6に記載のシアン化合物の浄化方法。
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