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JP5787828B2 - 土壌改良方法 - Google Patents
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Description

本発明は、放射性セシウムで汚染された表土を除かれた農地の土壌改良方法に関する。
2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故では、大量の放射性同位元素が海域、陸域に放出された。放射性セシウムについては134Csと137Csがあり、これらが大量に放出された。放射性セシウムの総排出量は137Csのみについてでさえ、1.5×1016ベクレルに及ぶと報告されている(非特許文献1)。
海洋ばかりでなく、広大な土壌が放射性セシウムで汚染され、農地も汚染された。
1986年に発生した、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所の事故では、8.5×1013ベクレルの放射性セシウムが放出されたと報告されている。チェルノブイリ原子力発電所の事故後、放射性セシウムによる土壌汚染の詳細な解析がなされ、多くの土壌では放射性セシウムが地表から10cm程度の表土にとどまって蓄積していることが報告されている(非特許文献2)。
福島第一原子力発電所の事故においても、チェルノブイリ原子力発電所の事故の場合と同様に、地表から10cm程度の表土に放射性セシウムがとどまっていることが報告されており、放射性セシウムで汚染された表土を地表から4cm程度除くことで、放射性セシウムを効率的に除くことが可能であるため、放射性セシウムに汚染された土壌の除染に推奨されており、実際に実施されている(非特許文献3)。
Nature Vol.478 P.435−P.436(2011) Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation: Twenty Years of Experience,p.33,INTERNATIONAL ATOMIC ENERGY AGENCY (2006) 農林水産省 農林水産技術会議ホームページ、農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について、[別添2]実証した除染技術の成果の概要(http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110914.htm)
しかしながら、放射性セシウムに汚染された農地については、以下に示す課題があるものと考えられる。
放射性セシウムに汚染された表土は、地表から深さ10cmまでの土壌である。この表土には、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分等のミネラル成分が含まれている。また、腐葉土等に由来する有機物が含まれており、多くの微生物が棲息している。また、表土は団粒構造をとっており、微生物や栽培される農作物の根に酸素や水を適度に供給できる構造になっている。
放射性セシウムを除去するために、地表から深さ10cm程度まで表土を除去してしまうことにより、表土に含まれるケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分等のミネラル成分が失われることになる。また、団粒構造や微生物、有機物も失われることになる。
結果として、放射性セシウムを除去するために表土を除いた農地では、農作物が生育しにくくなることが懸念される。
そこで、本発明では、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地に対して、経済的かつ効率的に、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与することが可能な土壌改良方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下のように、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地に対して、経済的かつ効率的に、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与する土壌改良方法を確立することに成功し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)放射性セシウムを含む表土を除いた農地に対し、放射性セシウムを加熱により除いた表土と、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物と、を施用することにより、当該農地にケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与することを特徴とする、土壌改良方法。
(2)前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の前記家畜排せつ物に対する製鋼スラグの質量割合が、10%以上30%以下であることを特徴とする、(1)に記載の土壌改良方法。
(3)前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率が、30%以上50%以下であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の土壌改良方法。
(4)前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物が、前記家畜排せつ物に対し前記製鋼スラグを混合して作製した堆肥であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(5)前記製鋼スラグの組成が、質量%にて、
CaO:20%以上50%以下、
SiO:10%以上30%以下、
MgO:1%以上20%以下、
MnO:2%以上10%以下、
全鉄:10%以上30%以下
であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(6)前記製鋼スラグの粒径が、3mm以下であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(7)前記家畜排せつ物が、放射性セシウムに汚染されていない牛ふん、鶏ふん、豚ぷんのうちの、少なくとも一つであることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(8)前記施用する方法が、放射性セシウムを加熱により除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物と、を、前記表土を除いた農地の表面に厚さ5cm以上20cm以下重ねる方法であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(9)前記放射性セシウムを加熱により除いた表土は、前記農地より除かれた放射性セシウムを含む表土を加熱することで得られる表土である、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
(10)前記放射性セシウムを加熱により除いた表土は、前記農地より除かれた放射性セシウムを含む表土をセシウムの沸点以上の温度まで加熱することで得られる表土である、(9)に記載の土壌改良方法。

本発明により、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地に、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用して、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与することにより、早期に農地として農作物の栽培が可能になる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明が対象とする、放射性セシウムに汚染された表土を除いた農地とは、次のような農地である。放射性セシウムとは、134Cs、137Csのことであり、これらは多くの場合、農地土壌の表層、地表から深さ10cm程度の範囲にとどまっているため、本発明では、この範囲の土壌を放射性セシウムに汚染された表土と呼ぶ。
放射性セシウムに汚染された表土の除去方法については、さまざまな方法がある。例えば、シャベル等を用いて人力で取り除く方法、ドーザーショベル、バックホー、ユンボ、パワーショベル等の機械を用いて取り除く方法、表土が柔らかくて取りにくい場合には、固化剤を用いて表土を固めてから取り除くような方法もある。本発明が対象とする、放射性セシウムに汚染された表土を除いた農地は、どのような方法で表土を除いた方法であってもかまわない。
次に、本発明が対象とする家畜排せつ物について説明する。
本発明では、家畜排せつ物を、表土を除いた農地への有機物(生物に由来する炭素を含む物質)の供給源として使用する。
本発明が対象とする家畜排せつ物は、畜産業、酪農業等の家畜飼育で発生する牛ふん、豚ぷん、鶏ふんの内、放射性セシウムで汚染されていない牛ふん、豚ぷん、鶏ふんを意味する。特に、牛ふんに関しては、東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した放射性セシウムで汚染された稲わらを飼料とした牛の牛ふんで、放射性セシウムに汚染されたものが検出されている。したがって、本発明が対象とする家畜排せつ物は、放射性セシウムに汚染されていないことを事前に確認することが好ましい。
次に、本発明が対象とする製鋼スラグについてであるが、本発明が対象とする製鋼スラグは、製鉄業の製鋼工程から、転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、脱リンスラグ等として得られるものである。これらを単独、あるいは適宜組み合わせて混合したものを、本発明では製鋼スラグとして使用することが可能である。
次に、本発明の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物について説明する。
まず、家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合についてであるが、家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合が、質量割合で10%以上、30%以下であることが好ましい。家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合が質量割合で10%未満の場合には、製鋼スラグに由来するCa、Si、Mg等の成分が少なくなるため、農作物の栽培を促進する効果がみられなくなる可能性がある。一方、家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合が質量割合で30%を超える場合には、製鋼スラグの量が多いために製鋼スラグ由来のCaOやMgOにより家畜排せつ物と製鋼スラグの混合物のpHがpH9を超えてアルカリ化する可能性があり、農作物の栽培に適さなくなる可能性がある。したがって、家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合は、質量割合で10%以上、30%以下であることが好ましい。
なお、製鋼スラグによるミネラル供給効果と、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物のpHが農作物の栽培に適する6〜7程度になることから、家畜排せつ物に対する製鋼スラグの混合割合は、質量割合で15%程度であることがより好ましい。
また、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率についてであるが、30%以上50%以下であることが好ましい。家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率が50%を超える場合には、水分が多すぎるため、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物が良好な団粒構造を形成できない可能性や、家畜排せつ物に含有される成分が微生物分解を受けて発生する反応生成物等が、農作物の栽培に阻害的に作用する可能性が考えられる。一方、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率が30%未満の場合には、逆に水分量が少なすぎて家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物が良好な団粒構造を形成できない可能性がある。したがって、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率は、30%以上50%以下であることが好ましい。
本発明の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物は、家畜排せつ物と製鋼スラグとを混合し、切り返し等の処理を施して作製した堆肥であることが好ましい。堆肥作成方法としては、例えば、堆積方式、開放型攪拌方式、密閉型攪拌方式等があるが、いずれの方式でも構わない。堆肥の作製において重要なことは、酸素の供給である。堆積方式では、少なくとも1週間に1回以上、家畜排せつ物と製鋼スラグとの混合物に対して、切り返しを行うことによって、堆肥化に必要な酸素を堆積物の内部に供給することが可能となる。開放型攪拌方式では、ロータリー・スクープ等を用いて家畜排せつ物と製鋼スラグとの混合物を攪拌することによって、酸素を供給することが可能である。また、密閉型攪拌方式においては、攪拌プロペラ等による攪拌によって、酸素を供給することが可能である。堆肥化することによって、家畜排せつ物に含まれる有機物が微生物によって分解されることで生じる農作物の栽培に有害な成分を分解除去することが期待できる他、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率を堆肥化の際に生ずる熱を用いて自発的に本発明が所望する30%以上50%以下とすることが可能となるからである。また、堆肥になった家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物は、農作物への肥料効果も期待できる。したがって、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物は、家畜排せつ物に製鋼スラグを混合して作製した堆肥であることが好ましい。
次に、本発明で使用する製鋼スラグの組成についてであるが、本発明で使用する製鋼スラグの組成は、質量%で、CaO:20%以上50%以下、SiO:10%以上30%以下、MgO:1%以上20%以下、MnO:2%以上10%以下、全鉄:10%以上30%以下からなる組成を有する製鋼スラグであることが好ましい。
まず、製鋼スラグに含まれるCaについて説明する。
製鋼スラグに含まれるCaは、生石灰CaO、ダイカルシウムシリケート(2CaOSiO)、トリカルシウムシリケート(3CaOSiO)等の化学形態で存在する。通常、製鋼スラグの組成を表す場合には、全CaをCaO含有量として表示する。
CaO含有量が20質量%未満の製鋼スラグでは、家畜排せつ物に含まれる有機物が微生物分解を受けて有機酸になったり、アンモニア態窒素がアンモニア酸化細菌や硝化細菌の作用により亜硝酸態窒素や硝酸態窒素を生成したりすることにより、酸性化する可能性がある。製鋼スラグに含まれるCaOはアルカリ性のため、このような家畜排せつ物の微生物分解に起因する酸性化を抑えて、農作物の生育に有利な中性環境に家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を保つことが期待できる。
CaO含有量が20質量%未満の製鋼スラグでは、このCaOによるアルカリ性の効果が小さくなるため、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物のpHが酸性化してしまい、農作物の栽培を阻害してしまう可能性がある。また、CaO含有量が50質量%を超える製鋼スラグでは、CaOのアルカリ性の効果により、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物のpHが農作物の栽培に適さないpH9以上のアルカリ性になる可能性がある。したがって、本発明で使用する製鋼スラグのCaO含有量は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
なお、製鋼スラグのCaO含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
次に、製鋼スラグに含まれるSiについて説明する。
Siは、本発明の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物に含まれる、製鋼スラグ由来の農作物への肥料効果成分のうち、Caと共に代表的なものである。製鋼スラグ中でSiは、ダイカルシウムシリケート(2CaOSiO)、トリカルシウムシリケート(3CaOSiO)等の化学形態で存在すると考えられる。通常、製鋼スラグの組成を表す場合には、全SiをSiO含有量として表示する。
SiO含有量が10質量%未満の製鋼スラグは、本発明で使用する家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物に含まれるSi含有量が低くなるため、農作物への肥料効果が期待できない可能性がある。また、製鉄工程で殆ど発生しないため、入手することが容易でない。一方、SiO含有量が30質量%を超えるような製鋼スラグも、製鉄工程で殆ど発生しないため、入手することが容易でない。したがって、本発明で使用する製鋼スラグのSiO含有量は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
なお、製鋼スラグに含まれるSiOの含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
次に、製鋼スラグに含まれるMgについて説明する。
製鋼スラグは、Mgを酸化マグネシウムMgOとして含む。MgOは、CaOと同様にアルカリ性の原因物質である。Mgはまた、家畜排せつ物には低含有量でしか含まれない農作物の肥料効果元素である。製鋼スラグのMgO含有量が1質量%未満の場合には、農作物へのMg供給効果が、不十分となる可能性がある。また、MgO含有量が20質量%を超える製鋼スラグは、製鉄工程で殆ど発生しないため、入手が困難である。したがって、MgO含有量は1質量%以上20質量%以下となることが好ましい。
なお、製鋼スラグのMgO含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
次に、製鋼スラグに含まれるMnについて説明する。
Mnは、製鋼スラグ中で主にMnOとして存在する。MnO含有量が2質量%未満、あるいは、10質量%を超える製鋼スラグは、製鉄工程で殆ど発生しないため、入手が困難である。したがって、MnO含有量は2質量%以上10質量%以下が好ましい。
なお、製鋼スラグのMnO含有量は、例えば、蛍光X線分析法により測定可能である。
次に、製鋼スラグに含まれる鉄について説明する。
製鋼スラグは、鉄を、Fe、FeO、金属鉄として含む。製鋼スラグの全鉄の含有量が10質量%未満、あるいは、30質量%を超えるような製鋼スラグは製鉄工程で殆ど発生せず、入手が困難である。したがって、全鉄含有量が10質量%以上30質量%以下の製鋼スラグを用いることが好ましい。
なお、製鋼スラグの全鉄含有量は、例えば、塩化チタン(III)還元二クロム酸カリウム滴定法により測定可能である。
ここで、本発明で使用する製鋼スラグの粒径についてであるが、本発明で使用する製鋼スラグの粒径は、3mm以下であることが好ましい。製鋼スラグの粒径が3mmを超える場合は、粒径が3mm以下の場合と比較して、製鋼スラグの比表面積が小さくなるため、製鋼スラグに含まれるCaO、SiO、MgO等の肥料効果成分の溶出効率が低くなる。また、肥料効果成分の溶出効率のみでなく、家畜排せつ物との混合で操作性が良いことからも小さな粒径ほど好ましいため、製鋼スラグ粒の粒径は3mm以下であることが望ましい。
なお、製鋼スラグの粒径は、例えば、網目間隔の異なるふるいを用いて、どの粒径の範囲にある製鋼スラグであるか測定することで、特定することが可能である。
また、本発明で使用する製鋼スラグの形態についてであるが、製鋼スラグのままでもよいが、製鋼スラグを破砕して得られる粉体の方が、比表面積が大きくなり、溶出効率が高くなるので、より好ましい。また、本発明で使用する製鋼スラグは、粉状品を造粒したものであってもよい。
次に、家畜排せつ物に製鋼スラグを混合する方法について説明する。
家畜排せつ物と製鋼スラグとを混合する方法は、家畜排せつ物と製鋼スラグとを混合することができる方法であれば、如何なる方法を利用しても構わない。例えば、マニュアスプレッダを用いて家畜排せつ物と製鋼スラグを混合する方法や、バックホーやホイルローダ等を用いて家畜排せつ物と製鋼スラグを混合する方法等も可能である。
次に、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地に施用する方法について説明する。
最も単純な方法としては、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地の表面の上に、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を重ねて置く方法がある。放射性セシウムで汚染された表土は、地表から10cm程度の深さまでの範囲が大部分であるため、この表土が除かれた農地で相当分の厚さの家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することを考えて、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地の表面に、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を厚さ5cm以上20cm以下重ねることが好ましい。そして、その農地に元々いる土壌微生物の増殖を促進するために、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物をその下の農地土壌と混合することが好ましい。
家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の厚さが5cm未満の場合には、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の施用による、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物の付与効果が少なくなるため、農作物の栽培促進に十分な効果がみられなくなる可能性がある。
一方、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の厚さが20cmを超える場合には、農作物の栽培促進のための土壌改良に必要以上の量の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することになり、経済的にも効率的にも不利となる可能性がある。放射性セシウムにより汚染された農地を、より短期間で広い面積除染して、放射性セシウムによる汚染の心配のない農作物の栽培を可能にするためにも、必要以上の量の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することは避けるべきと考えられる。
したがって、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地の表面に、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を厚さ5cm以上20cm以下重ねることが好ましい。
放射性セシウムで汚染された表土は、例えば、セシウムの沸点は641℃であるため、熱せられることによりセシウムが気化して、放射性セシウムを除いた表土を回収することが可能である。また、例えば、土壌洗浄やセシウムと親和性が高いゼオライトを用いることにより、放射性セシウムを除いた表土を回収することも可能である。このような場合、放射性セシウムを除いた後の表土は、元の農地に戻すことが好ましい。このようにすることにより、放射性廃棄物の貯蔵施設に貯蔵する農地土壌の体積を減らせる可能性がある。例えば、放射性セシウムを取り除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物とを混合した後、当該農地の表面に厚さ5cm以上20cm以下重ねることにより、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することも好ましい。放射性セシウムを除去するための加熱や洗浄等の処理により、表土が農作物の栽培の肥料効果に有効な成分や有機物、微生物を失っている可能性がある。家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物と放射性セシウムを除いた表土を混合することにより、農作物の栽培に必要な肥料効果成分や有機物、微生物の供給が可能となる。
放射性セシウムを取り除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を混合したものの厚さが5cm未満の場合には、放射性セシウムを取り除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を混合したものの施用による、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物の付与効果が少なくなるため、農作物の栽培促進に十分な効果がみられなくなる可能性がある。
一方、放射性セシウムを取り除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を混合したものの厚さが20cmを超える場合には、農作物の栽培促進のための土壌改良に必要以上の量の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することになり、経済的にも効率的にも不利となる可能性がある。放射性セシウムにより汚染された農地を、より短期間で広い面積除染して、放射性セシウムによる汚染の心配のない農作物の栽培を可能にするためにも、必要以上の量の家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することは避けるべきと考えられる。
したがって、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地の表面に、放射性セシウムを取り除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を混合したものの厚さを厚さ5cm以上20cm以下重ねることが好ましい。
上記のようにして、放射性セシウムで汚染された表土を除いた農地に対し、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物を施用することにより、ケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与することができる。さらに、団粒構造と微生物を含む有機物を付与することができる。
以上のようにして、放射性セシウムで汚染された農地を早期に農作物の栽培が可能な状況にすることが期待できる。
以下、実施例を示しながら、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、以下に示す実施例に、その技術的範囲が限定されるものではない。
{実施例1}堆肥
放射性セシウムで汚染された、長方形の三つの農地、農地Aと農地Bと農地C(全て、縦5m×横2mの長方形)について、地表から深さ10cmまでの表土の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは32500ベクレル/kg土壌、農地Bでは34700ベクレル/kg土壌、農地Cでは33600ベクレル/kg土壌であった。農地Aと農地Bについては、表土を地表から深さ約10cmまでシャベルを用いて除去した。表土を除いた後の農地Aと農地Bの土壌の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは76ベクレル/kg土壌、農地Bでは85ベクレル/kg土壌であった。
農地Aには、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用するため、以下のように、この牛ふん及び製鋼スラグの混合物を用意した。
含水率80%の牛ふん10tに、表1に組成を示した粒径3mm以下の製鋼スラグを1.5t加えて、マニュアスプレッダを用いて混合した。その後、10日間毎に、切り返し混合させて、60日間腐熟させて、堆肥化させた。
この堆肥化させた牛ふん及び製鋼スラグの混合物の組成を、以下の表2に示した。なお、下記の表2では、有機物の含有量として、有機炭素の含有量を乾式燃焼法により測定した。
Figure 0005787828
Figure 0005787828
この牛ふん及び製鋼スラグの混合物を、表土を除いた後の農地Aの表面に厚さ10cm程度重ねるように施用した後、深さ20cmくらいについて耕して、下部の元々の農地Aの土壌と混合した。
一方、表土を除いた農地B、及び、表土を除かなかった農地Cについては、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用せず、地表から深さ20cmくらいについて、農地Aと同様に耕した。
次いで、窒素N、リンP、カリウムKを供給するために、化成肥料(8−8−8)を100g/mずつ、農地A、農地B、農地Cに施用した。農地A、農地B、農地Cのそれぞれでコマツナの種子を播き、同じ条件で栽培し、収量を比較した。得られた結果を、以下の表3に示した。
Figure 0005787828
上記表3から明らかなように、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用した農地Aでは、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用しなかった農地Bと比較して、コマツナの収量が約2倍となった。また、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用した農地Aでは、放射性セシウムに汚染されたまま表土を除かなかった農地Cよりも、20%程度収量が増加した。
また、収穫されたコマツナに含まれる放射性セシウム(134Csと137Csの合計値)の放射能を測定した結果を、以下の表4に示した。
Figure 0005787828
上記表4から明らかなように、放射性セシウムに汚染された表土を除いた農地A、農地Bでは、放射性セシウムに汚染された表土を除かなかった農地Cと比較して、コマツナによる放射性セシウムの取り込みを抑制できた。
したがって、表土を除去した農地に対し、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用することにより、コマツナの生育が促進され、農地が農作物の栽培に適したことが確認できた。
{実施例2}
放射性セシウムで汚染された、長方形の三つの農地、農地Aと農地Bと農地C(全て、縦5m×横2mの長方形)について、地表から深さ10cmまでの表土の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは21300ベクレル/kg土壌、農地Bでは18600ベクレル/kg土壌、農地Cでは20700ベクレル/kg土壌であった。農地Aと農地Bについては、表土を地表から深さ約10cmまでシャベルを用いて除去した。表土を除いた後の農地Aと農地Bの土壌の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは56ベクレル/kg土壌、農地Bでは48ベクレル/kg土壌であった。
農地Aには、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用するため、以下のように、この牛ふん及び製鋼スラグの混合物を用意した。
含水率60%の牛ふん10tに、表5に組成を示した粒径3mm以下の製鋼スラグを1.5t加えて、マニュアスプレッダを用いて混合した。この牛ふん及び製鋼スラグの混合物の組成を、以下の表6に示した。なお、下記の表6では、有機物の含有量として、有機炭素の含有量を乾式燃焼法により測定した。
Figure 0005787828
Figure 0005787828
この牛ふん及び製鋼スラグの混合物を、表土を除いた後の農地Aの表面に厚さ10cm程度重ねるように施用した後、深さ20cmくらいについて耕して、下部の元々の農地Aの土壌と混合した。
一方、表土を除いた農地B、及び、表土を除かなかった農地Cについては、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用せず、地表から深さ20cmくらいについて、農地Aと同様に耕した。
2週間後、窒素N、リンP、カリウムKを供給するために、化成肥料(8−8−8)を100g/mずつ、農地A、農地B、農地Cに施用し、それぞれの農地に対してコマツナの種子を播き、同じ条件で栽培し、収量を比較した。得られた結果を、以下の表7に示した。
Figure 0005787828
上記表7から明らかなように、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用した農地Aでは、牛ふんと製鋼スラグの混合物を施用しなかった農地Bと比較して、コマツナの収量が約2倍となった。また、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用した農地Aでは、放射性セシウムに汚染されたまま表土を除かなかった農地Cよりも10%程度収量が増加した。
また、収穫されたコマツナに含まれる放射性セシウム(134Csと137Csの合計値)の放射能を測定した結果を、以下の表8に示した。
Figure 0005787828
上記表8から明らかなように、放射性セシウムに汚染された表土を除いた農地A、農地Bでは、放射性セシウムに汚染された表土を除かなかった農地Cと比較して、コマツナによる放射性セシウムの取り込みを抑制できた。
したがって、実施例1に示したような牛ふんに製鋼スラグを混合して作成した堆肥でなくとも、牛ふん及び製鋼スラグの混合物をそのまま、表土を除去した農地に施用することによっても、コマツナの生育が促進され、農作物の栽培に適したことが確認できた。
{実施例3}放射性セシウムを除いた表土との混合
放射性セシウムで汚染された、長方形の三つの農地、農地Aと農地Bと農地C(全て縦5m×横2mの長方形)について、地表から深さ10cmまでの表土の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは12600ベクレル/kg土壌、農地Bでは11800ベクレル/kg土壌、農地Cでは12000ベクレル/kg土壌であった。農地Aと農地Bについては、表土を地表から深さ約10cmまでシャベルを用いて除去した。表土を除いた後の農地の土壌の放射性セシウムに起因する放射能は、134Csと137Csを合計して、農地Aでは26ベクレル/kg土壌、農地Bでは22ベクレル/kg土壌であった。
農地Aには、牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用するため、以下のように、この牛ふん及び製鋼スラグの混合物を用意した。
含水率80%の牛ふん10tに対し、表9に組成を示した粒径3mm以下の製鋼スラグを1.5t加えて、マニュアスプレッダを用いて混合した。
10日間毎に、切り返し混合させて、60日間腐熟させて、堆肥化させた。
この堆肥化させた牛ふん及び製鋼スラグの混合物の組成を、以下の表10に示した。なお、下記の表10では、有機物の含有量として、有機炭素の含有量を乾式燃焼法により測定した。
Figure 0005787828
Figure 0005787828
一方、農地Aから取り除いた放射性セシウムに汚染された表土を1100℃でキルンでかき混ぜながら30分間加熱することにより、放射性セシウムを気化させて除いた後、常温に戻した。表土に含まれる放射性セシウムを測定したところ、55ベクレル/kg土壌まで減少していた。また、有機炭素は0%であり、有機物を含まなくなっていた。
表土を除いた農地Aを二等分に分割し、農地AI、農地AII(共に、縦2.5m×横2mの長方形)とした。
農地AIには、この放射性セシウムを加熱により除いた表土1tと前記堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物0.5tとを混合した混合物を、農地AIの表面に厚さ15cm程度重ねるように施用した。
農地AIIには、この放射性セシウムを加熱により除いた表土のみを、農地AIIの表面に厚さ15cm程度重ねるように施用した。
一方、表土を除いた農地B、及び、表土を除かなかった農地Cについては、この放射性セシウムを加熱により除いた表土と堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物、あるいは、この放射性セシウムを加熱により除いた表土を施用せず、地表から深さ15cmくらいについて耕した。
次いで、窒素N、リンP、カリウムKを供給するために、化成肥料(8−8−8)を100g/mずつ、農地AI、農地AII、農地B、農地Cに施用した。
農地AI、農地AII、農地B、農地Cのそれぞれでコマツナの種子を播き、同じ条件で栽培し、収量を比較した。結果を表11に示した。
Figure 0005787828
上記表11から明らかなように、放射性セシウムを加熱により除いた表土と堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物とを施用した農地AIでは、この放射性セシウムを加熱により除いた表土と堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用しなかった農地Bと比較して、コマツナの収量が約2倍となった。さらに、放射性セシウムを加熱により除いた表土と堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物とを施用した農地AIでは、放射性セシウムに汚染されたまま表土を除かなかった農地Cよりも15%程度収量が増加することが確認できた。
一方、放射性セシウムを加熱により除いた表土のみを施用した農地AIIでは、加熱により有機物が除かれた影響や微生物が死滅した影響のためか、農地Bや農地Cよりもコマツナの収量は大幅に減少した。
また、収穫されたコマツナに含まれる放射性セシウム(134Csと137Csの合計値)の放射能を測定した結果を、以下の表12に示した。
Figure 0005787828
上記表12から明らかなように、放射性セシウムに汚染された表土を除いた農地AI、農地AII、農地Bでは、放射性セシウムに汚染された表土を除かなかった農地Cと比較して、コマツナによる放射性セシウムの取り込みを抑制できた。
したがって、表土を除去した農地に放射性セシウムを加熱により除いた表土と堆肥化した牛ふん及び製鋼スラグの混合物を施用することにより、コマツナの生育が促進され、農作物の栽培に適したことが確認できた。また、植物へのセシウム吸収も抑制されることが確認できた。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (10)

  1. 放射性セシウムを含む表土を除いた農地に対し、放射性セシウムを加熱により除いた表土と、家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物と、を施用することにより、当該農地にケイ酸、石灰、マグネシウム、マンガン、鉄分、有機物を付与する
    ことを特徴とする、土壌改良方法。
  2. 前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の前記家畜排せつ物に対する製鋼スラグの質量割合が、10%以上30%以下である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の土壌改良方法。
  3. 前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物の含水率が、30%以上50%以下である
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の土壌改良方法。
  4. 前記家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物が、前記家畜排せつ物に対し前記製鋼スラグを混合して作製した堆肥である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  5. 前記製鋼スラグの組成が、質量%にて、
    CaO:20%以上50%以下、
    SiO:10%以上30%以下、
    MgO:1%以上20%以下、
    MnO:2%以上10%以下、
    全鉄:10%以上30%以下
    である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  6. 前記製鋼スラグの粒径が、3mm以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  7. 前記家畜排せつ物が、放射性セシウムに汚染されていない牛ふん、鶏ふん、豚ぷんのうちの少なくとも一つである
    ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  8. 記施用する方法が、
    射性セシウムを加熱により除いた表土と家畜排せつ物及び製鋼スラグの混合物と、を、前記表土を除いた農地の表面に厚さ5cm以上20cm以下重ねる方法である
    ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  9. 前記放射性セシウムを加熱により除いた表土は、前記農地より除かれた放射性セシウムを含む表土を加熱することで得られる表土である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の土壌改良方法。
  10. 前記放射性セシウムを加熱により除いた表土は、前記農地より除かれた放射性セシウムを含む表土をセシウムの沸点以上の温度まで加熱することで得られる表土である、請求項9に記載の土壌改良方法。
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