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JP5802275B2 - 固体微粒子付着ワイヤー及びその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法 - Google Patents
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JP5802275B2 - 固体微粒子付着ワイヤー及びその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法 - Google Patents

固体微粒子付着ワイヤー及びその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法 Download PDF

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Description

本件発明は、ワイヤーの外周面にダイヤモンド等の固体微粒子を固着した固体微粒子付着ワイヤー及びその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法に関する。
ダイヤモンドなどの固体微粒子をワイヤーの外周面に固着してなる固体微粒子付着ワイヤーは、太陽電池用のシリコンウェハー、半導体用のシリコンウェハー、LED用途におけるサファイア、セラミックや石材のように硬質で脆性特性の高い難加工材料の切断に好適なものであり、その需要が高まっている。近年、このような固体微粒子付着ワイヤーを備えた高脆性材料切断用の工具(ワイヤーソー)の更なる性能の向上と製品の長寿命化が求められている。
係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法として、固体微粒子の表面にニッケル又はチタンのコート層を形成し、当該ニッケル又はチタンのコート層を有する固体微粒子をニッケルめっき液に添加したものをめっき液として用いて、ワイヤーの表面にニッケルと共に固体微粒子を析出させる複合めっき法が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ニッケルコート層を有する固体微粒子をニッケルめっき液に添加したものを用いて複合めっきを行い、ワイヤー表面にニッケルと固体微粒子とを共析させる方法が開示されている。また、このような複合めっきの前に、予めワイヤーの表面に下地となるニッケルめっきを施して、固体微粒子のワイヤー表面への付着量を向上させる試みもなされている。
特開2006−55952号公報 特開2011−140095号公報
しかしながら、ニッケルコート層を有する固体微粒子をニッケルめっき液に添加したものを用いた複合めっきでは、ワイヤー表面に固体微粒子が分散して析出し難い、即ち、複数の固体微粒子が凝集し易いといった、共析制御が困難であるという問題が生じていた。また、チタンコート層を有する固体微粒子を用いた場合には、ワイヤー表面に形成されためっき層が剥がれやすく、更に、めっき液の寿命も短く、操業安定性に欠けるという問題があった。
従って、本件発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、ダイヤモンド等の固体微粒子を安定的にワイヤーに定着させることができ、高性能であって、且つ、長期使用可能な固体微粒子付着ワイヤーとその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法の提供を目的とする。
そこで、本件発明者等は鋭意研究を行った結果、以下に述べる固体微粒子付着ワイヤーと、その固体微粒子付着ワイヤーの製造方法を採用することで上記課題を達成するに到った。
固体微粒子付着ワイヤー: 本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの外周面に固体微粒子を固着してなる固体微粒子付着ワイヤーにおいて、当該ワイヤーの表面に、金属成分で構成した無機コート層を備え当該表面が帯電表面である無機コート層付き固体微粒子を分散含有した固体微粒子含有電解ニッケルめっき層と、該固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっき層を備えことを特徴とする。
本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、前記ワイヤーの表面に無機保護層を備えものを用いることが好ましい。
本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの500μmの長さの範囲に、粒径が0.01〜100μmの無機コート層付き固体微粒子が10個〜60個付着したものであることが好ましい。
本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、前記無機コート層付き固体微粒子として、パラジウムコートダイヤモンド粒子、ニッケルコートダイヤモンド粒子、チタンコートダイヤモンド粒子から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
固体微粒子付着ワイヤーの製造方法: 本件発明に係るワイヤーの外周面に固体微粒子を固着してなる固体微粒子付着ワイヤーの製造は、以下の工程a〜工程dを含むことを特徴とする製造方法を採用することが好ましい。
工程a.固体微粒子の表面に金属成分で構成した無機コート層を備える無機コート層付き固体微粒子を準備する工程。
工程b.無機コート層付き固体微粒子の表面を、所定の極性を付与するため、表面改質剤を用いて、無機コート層付き固体微粒子の表面改質処理を施す工程。
工程c.当該表面改質処理を施した無機コート層付き固体微粒子を、ニッケルめっき液中に入れ懸濁状態とし、電解めっき法により、ワイヤー表面にニッケルを析出させると同時に、無機コート層付き固体微粒子を付着させる複合めっきを施し、ワイヤーの表面に固体微粒子含有ニッケルめっき層を形成する工程。
工程d.ワイヤー表面の固体微粒子含有ニッケルめっき層の上に、前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっきを施す工程。
本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記ワイヤーは、その表面に無機保護層を備えるものを用いることが好ましい。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記工程bの表面改質剤は、アミン系、ノニオン系、カチオン系のいずれかの界面活性剤の1種以上を含むことが好ましい。
また、本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記工程bの表面改質剤として、アルコールアミン類及びノニオン系界面活性剤を含むことも好ましい。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記固体微粒子は、粒径が0.01〜100μmのものを用いることが好ましい。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記工程dで形成されるオーバーコートニッケルめっき層は、厚さが0.1〜40μmの範囲であることが好ましい。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法において、前記ワイヤーは、直径が0.02mm〜3.0mmのものを用いることが好ましい。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの表面に、無機コート層付き固体微粒子を分散含有した固体微粒子含有電解ニッケルめっき層と、該固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっき層とを備えている。そして、この固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの500μmの長さの範囲に、粒径が0.01〜100μmの無機コート層付き固体微粒子が20個以上を安定的に備えものである。その結果、ワイヤーソーとして、良好な切断性能を発揮し、被切断対象物の切断作業時に、ワイヤーの外周面にある無機コート層付き固体微粒子の脱落が起こり難く、長期の安定使用が可能となる。
また、本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーは、その製造過程において、無機コート層付き固体微粒子として、予め、その粒子表面を、所定の表面改質剤を用いて表面改質処理を施したものを用いることで、ワイヤーの外周面に対して無機コート層付き固体微粒子を適度に分散した状態で、且つ、均一に付着させたものである。
そして、本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法として、めっき法を用いる中で、予め、所定の表面改質処理を施した無機コート層付き固体微粒子を用いる事で、めっき液中に添加した無機コート層付き固体微粒子の量に比例して、ワイヤーへの無機コート層付き固体微粒子の付着量を増加させることが可能となり、ワイヤーの表面に付着させる無機コート層付き固体微粒子量の制御が可能になった。
本件出願に係る固体微粒子付着ワイヤーの断面の模式図である。 実施例1のダイヤモンド含有量5g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。 実施例2のダイヤモンド含有量10g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。 実施例3のダイヤモンド含有量15g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。 実施例4のダイヤモンド含有量10g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。 実施例5のダイヤモンド含有量10g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。 比較例1のダイヤモンド含有量5g/Lの電解めっき液を用いて電解ニッケルめっきを施したワイヤー表面の状態を示す写真である。
以下、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーとその固体微粒子付着ワイヤーの製造方法に関して、好ましい実施の形態について説明する。
[固体微粒子付着ワイヤーの形態]
先ず、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの形態に関して説明する。本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの外周面に固体微粒子を固着してなる固体微粒子付ワイヤーである。即ち、本発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーの表面に、「無機コート層付き固体微粒子」を分散含有する固体微粒子含有電解ニッケルめっき層と、この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっき層を備えるものである。以下、必要な要素及び用語毎に分説する。
<固体微粒子含有電解ニッケルめっき層>
この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層は、当該ワイヤーの表面に直接接触し被覆するものであり、電解ニッケルめっき層内に無機コート層付き固体微粒子が分散して含有されている。即ち、ニッケル成分は、無機コート層付き固体微粒子を、ワイヤー表面に定着させるバインダーとしての役割を果たしている。この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層に含まれるニッケル成分は、単なる表面被覆に留まらず、後述するワイヤーと、良好な濡れ性を備え、且つ、化学的親和性を発揮する。そのため、ワイヤー表面に電解法で設けた電解ニッケル層は、良好な密着性を備えている。そして、この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の構成に用いるニッケルめっき液としては、純ニッケルめっき液、ニッケル合金(ニッケル−リン、ニッケル−コバルト、ニッケル−亜鉛等のニッケル基合金)めっき液を用いることが可能である。
ワイヤー: 本件出願において使用するワイヤーは、その表面に電気めっきが可能で、一定の強度を有するものであれば、特に制限はなく、使用用途に応じて適宜選択することができる。このようなワイヤーとしては、例えば、ピアノ線などの鋼線、タングステン線、モリブデン線、ステンレス線などが挙げられる。
この固体微粒子付着ワイヤーの芯材であるワイヤーの直径は、本来であれば、限定されるべきものではなく、用途に応じて、適宜選択すれば足りるものである。しかし、固体微粒子付着ワイヤーの用途の大部分が「ワイヤーソー」であることを考えると、当該ワイヤーの直径は、0.02mm〜3.0mmであることが好ましい。ワイヤーソーとして機能する固体微粒子付着ワイヤーの場合、ワイヤーの直径が0.02mm未満になると、後述する所定の粒径の無機コート層付き固体微粒子を用いる製造方法において、ワイヤー表面に対する無機コート層付き固体微粒子の効率の良い付着が困難となる傾向があるため好ましくない。一方、このワイヤーの直径の上限は、用途によって異なるため、一応の目安として定めている。例えば、シリコンウェハの切断に用いる固体微粒子付着ワイヤーの場合には、0.8mmが上限である。当該ワイヤーの直径が0.8mmを超えると、被切断物の切断精度の観点からみて、必ずしもワイヤーソーを用いる必要が無くなるため、ワイヤーソーの必要性が没却するため好ましくない。なお、固体微粒子付着ワイヤーを太陽電池のシリコンウェハーの切断に使用する場合には、直径0.06mm〜0.23mmのワイヤーを用いることが、最も良く市場要求に合致している。そして、鉄筋コンクリート、構造用鋼等の構造物を切断しようとする固体微粒子付着ワイヤーの場合には、3.0mmが上限である。当該ワイヤーの直径が3.0mmを超えると、ワイヤーとしての柔軟性が無くなり、取り扱いが困難となるからである。
そして、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーは、前記ワイヤーの表面に無機保護層を備えるものを用いることが好ましい。ワイヤーの表面に無機保護層が存在することにより、加工の途中におけるワイヤー表面におけるマイクロクラックの発生防止、断線の発生を防止し、且つ、ワイヤーの腐食防止を行うことが出来る。また、無機保護層の種類によっては、後述する固体微粒子の付着状態を安定化することも可能となる。この無機保護層としては、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Co,Ni−Sn,Ni−Zn)、Cu、銅合金(Cu−Zn,Cu−Sn)等の使用が可能である。
固体微粒子: 本件出願において用いる無機コート層付き固体微粒子の芯材として用いる固体微粒子に関して説明する。ここで言う固体微粒子は、固体微粒子付着ワイヤーの用途に応じて適宜選択可能であり、例えば、酸化セリウム、酸化ケイ素(石英、溶融シリカなど)、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、ダイヤモンドなどの微粒子等が挙げられる。特に、固体微粒子付着ワイヤーを、ワイヤーソーとしてシリコンウェハー等の切断に用いる場合には、ダイヤモンド粒子を採用することが好ましい。
この固体微粒子は、粒径が0.01〜100μmのものを用いることが好ましい。固体微粒子の粒径が0.01μm未満の場合には、固体微粒子付着ワイヤーの表面が滑らかになり過ぎて、ワイヤーソー用途に限らず、その他の用途においても、ワイヤーに固体微粒子を付着させる意義が没却するため好ましくない。一方、固体微粒子の粒径が100μmを超える場合には、本件出願に係る発明が用いるワイヤーの最大直径である0.8mmのワイヤーを用いても、そのワイヤー表面に均一な分散性を維持して固体微粒子を付着させることが困難となる傾向があり、且つ、そのような市場要求も存在しない。特に、固体微粒子付着ワイヤーを、太陽電池用のシリコンウェハーを切断する目的で使用する場合の直径が0.08〜0.2mmのワイヤーに対しては、粒径が4〜40μmの固体微粒子を用いることが、ワイヤーソー用途に適した良好な切断性能を示し、且つ、ワイヤー表面に付着した固体微粒子の切断時の脱落が少なく、ワイヤーソーとしての長寿命化が可能となるため、より好ましい。
無機コート層付き固体微粒子: ここで言う無機コート層付き固体微粒子は、固体微粒子の表面に、金属成分で構成した無機コート層を備えたものである。そして、この無機コート層の構成成分は、固体微粒子付着ワイヤーの用途に応じて、適宜選択使用することが可能である。ここで言う無機コート層付き固体微粒子を、より具体的に例示すれば、パラジウムコート層付き固体微粒子、ニッケルコート層付き固体微粒子、チタンコート層付き固体微粒子等を想定している。これらの無機コート層を備える無機コート層付き固体微粒子は、めっき法で形成するニッケル又はニッケル合金の析出成分との濡れ性が良く、良好な密着性が得られる。
これらの無機コート層付き固体微粒子は、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の中に均一に分散して存在することになる。この無機コート層付き固体微粒子は、予め表面改質剤による表面改質処理を施し、無機コート層付き固体微粒子の表面を帯電表面とし、粒子表面に所定の極性を付与することが好ましい。この場合のパラジウムコート層付き固体微粒子は、ワイヤーの分極状態に応じて、ノニオン粒子、カチオン粒子のいずれの帯電状態も選択的に使用することができる。即ち、具体的な一例を示せば、電解ニッケルめっきの際に、ワイヤーを陰極に分極する場合には、当該めっき液に対し、無機コート層付き固体微粒子の粒子表面を逆の正極に帯電させることになる。このような無機コート層付き固体微粒子の表面改質処理により、以下の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法における電解めっきの際に、ワイヤー表面へ固体微粒子が均一に分散して付着し、当該めっき液中の無機コート層付き固体微粒子量に比例した、固体微粒子付着ワイヤーへの無機コート層付き固体微粒子の付着量が得られる。この表面改質処理に関しては、後の製造方法で、更に説明する。
<オーバーコートニッケルめっき層>
そして、前記オーバーコートニッケルめっき層は、上述の固体微粒子を含む固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に設けられ、固体微粒子付着ワイヤーの最外層を構成するものである。このため、オーバーコートニッケルめっき層は、前記固体微粒子含有電解ニッケルめっき層が含有する固体微粒子の脱落を防止するように機能している。
ここで言う「オーバーコートニッケルめっき層」は、純ニッケルめっき液、ニッケル合金(ニッケル−リン、ニッケル−コバルト、ニッケル−亜鉛等のニッケル基合金)めっき液を用いて構成することが好ましい。この「オーバーコートニッケルめっき層」に含まれるニッケル成分も、単なる表面被覆に留まらず、前述の「固体微粒子含有電解ニッケルめっき層」と、良好な濡れ性を発揮し、且つ、下地に固体微粒子による凹凸があっても、薄く均一な付回り性の良い被膜となる。
以上に説明したワイヤー表面に、パラジウムコート層付き固体微粒子を分散含有する固体微粒子含有電解ニッケルめっき層と、その表面にオーバーコートニッケルめっき層を備えた固体微粒子付着ワイヤーを採用することにより、ワイヤーに付着した固体微粒子の脱落を効果的に防止することが可能となる。これにより、信頼性が高く、且つ、長期使用可能な固体微粒子付着ワイヤーを実現することができる。
[固体微粒子付着ワイヤーの製造形態]
次に、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法に関して説明する。
ワイヤーの清浄化処理: 本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造に用いるワイヤーは、最初に、表面を脱脂し、清浄にすることが好ましい。このときの脱脂方法について、特に限定はなく、例えば、酸浸漬、溶剤脱脂、乳化剤脱脂、アルカリ脱脂等の適用が可能である。更に、必要に応じて、電解脱脂を適用することも可能である。
そして、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの製造方法は、以下の工程a〜工程dを含むことを特徴とする。
工程a.: この工程では、固体微粒子の表面に無機コート層を備える無機コート層付き固体微粒子を準備する。従って、無機コート層付き固体微粒子の芯材(上述の酸化セリウム、酸化ケイ素(石英、溶融シリカなど)、アルミナ、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、ダイヤモンド、テフロン(登録商標)などの微粒子等である。)として、この粒子表面に金属成分で構成した無機コート層を備えたものとして、パラジウムコート層付き固体微粒子、ニッケルコート層付き固体微粒子、チタンコート層付き固体微粒子等を準備する。これらの無機コート層付き固体微粒子に相当する市販品を使用しても構わない。
しかしながら、無機コート層付き固体微粒子の内、パラジウムコート層付き固体微粒子については、以下のような方法で固体微粒子の表面をパラジウムでコーティングすることが好ましい。
第1のパラジウムコート方法は、「固体微粒子の粒子表面に、パラジウムと錫とを共析させた後、固体微粒子の表面の錫のみを分解除去することで、パラジウムのみが固体微粒子の表面に存在した状態とする方法。」である。この方法について、具体的に一例を挙げて説明する。錫とパラジウムとを含有する溶液として、パラジウム・錫コロイド触媒を主成分とした溶液を用いることができる。このような溶液中に固体微粒子を浸漬すると、固体微粒子の表面にパラジウム・錫コロイドが吸着する。このときのパラジウムの吸着量は、固体微粒子1gあたり0.1〜20mgであることが好ましい。このパラジウム吸着量が、固体微粒子1gあたり0.1mg未満の場合、固体微粒子の粒子表面へのパラジウム吸着量が少なく、十分にめっき法で形成するニッケル又はニッケル合金の析出成分との濡れ性を改善し得ず、良好な密着性が得られないため好ましくない。一方、このパラジウム吸着量が、固体微粒子1gあたり20mgを超えるものとしても、ニッケルと固体微粒子との共析効果が飽和して、向上しなくなるため好ましくない。このパラジウム吸着量が、固体微粒子1gあたり10mgを超えたあたりから、ニッケルと固体微粒子との共析効果が、緩やかにしか向上しないため、より好ましいパラジウムの吸着量は、固体微粒子1gあたり0.1〜10mgである。
次に、粒子表面にパラジウム・錫コロイドを吸着させた固体微粒子を、塩素、硫酸、ホウフッ化水素酸等の酸に接触させて、錫成分を溶解除去しつつ、固体微粒子の表面にパラジウム微粒子を析出させる。この段階で、固体微粒子の粒子表面にパラジウムコート層が形成された状態になる。
第2のパラジウムコート方法は、「固体微粒子を錫溶液に所定時間浸漬して、固体微粒子の表面に錫を析出させ、次いで、パラジウム溶液に所定時間浸漬して、錫とパラジウムとの置換反応を利用して、粒子表面にパラジウムを析出させる方法。」である。
上述の第1のパラジウムコート方法及び第2のパラジウムコート方法ともに、当該パラジウムコート層に含まれる錫を確実に除去するためには、事後的に、塩素、硫酸、ホウフッ化水素酸、カルボン酸、オキシカルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸性溶液を使用して除去することも可能である。
なお、第1のパラジウムコート方法及び第2のパラジウムコート方法は、単なる例示であり、本件出願に係る発明においては、固体微粒子の表面をパラジウムコート層で被覆することができれば足りるのであり、これらの方法に限定解釈されるものでないことを明記しておく。
工程b.: この工程は、上記工程aにて無機コート層付き固体微粒子の表面を表面改質剤と接触させて所定の極性に帯電させる表面改質処理工程である。この工程は、従来の固体微粒子付着ワイヤーの製造には無い工程である。従来の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法では、ワイヤーに固体微粒子を効果的に付着させることが困難であった。そこで、本件発明者等が、鋭意研究を行った結果、固体微粒子の表面に無機コート層を設けた後に、予め表面改質剤による表面改質処理を施して、当該表面の極性を安定化させることに想到した。その結果、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層形成工程において、ワイヤー表面へ付着させる固体微粒子の付着量を任意に制御し、付着量を著しく増加させ、且つ、均一に分散可能であることを見出したのである。
具体的には、後述する工程c(固体微粒子含有電解ニッケルめっき層形成工程)におけるめっき液中で、ワイヤーを陰極に分極する場合には、無機コート層付き固体微粒子の表面を、予め正極に帯電させる処理を施す。このようにすることで、後のワイヤーの表面に固体微粒子が付着し易くなることに想到した。これは、電解めっきの際に、陰極に分極されるワイヤーに対し、固体微粒子の表面を正極に帯電させて、固体微粒子自体を正の電荷を帯びた状態で安定化させておくことで、電解めっきの際に、固体微粒子がワイヤーに引き寄せられ易くなるためである。
このときの表面改質処理は、固体微粒子を、表面処理剤に浸漬する方法、該表面処理剤を固体微粒子の表面に噴霧する方法等から、最適な方法を選択して実施できる。浸漬法を採用するのであれば、表面改質剤の入った処理槽に、固体微粒子を投入し、攪拌しつつ、所定時間浸漬処理する。そして、所定時間の処理が終了したら、固体微粒子を処理槽から分離採取し、水洗し、乾燥する。
この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層を形成する際には、ワイヤー表面へ無機コート層付き固体微粒子を付着させ、同時に正の電荷を持つニッケルイオンからニッケル成分を析出させる。よって、この表面改質処理において、使用する表面改質剤は、無機コート層付き固体微粒子の表面に正の極性を付与して安定化できるものを用いる必要がある。このような界面改質剤として、アミン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤のいずれかの界面活性剤を含むものを用いることが好ましく、中でもアルコールアミン類を含んだノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。このような表面改質剤は、当該表面改質剤と固体微粒子とを所定時間接触させることで、無機コート層付き固体微粒子の表面を、効率よく正極に帯電させ、正極に帯電した状態での安定化が図れるからである。
工程c.: この工程は、電解めっき法により、ワイヤーの表面に無機コート固体微粒子を含有した電解ニッケルめっき層を形成するための複合めっきを施す固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の形成工程である。ここで施す固体微粒子含有電解ニッケルめっき方法を以下に述べる。
最初に、ワイヤーについて述べる。ここで使用するワイヤーは、その表面に無機保護層を備えるものを用いることが好ましい。上述のように無機保護層を構成する金属成分として、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Co,Ni−Sn,Ni−Zn)、Cu、銅合金(Cu−Zn,Cu−Sn)等の使用が可能であるが、耐腐食性能及び固体微粒子の付着安定性を考慮すると、ニッケル又はニッケル合金の使用が最適である。そして、このニッケル又はニッケル合金からなる無機保護層は、所謂「ストライクめっき法」を用いて形成することが好ましい。このストライクめっきは、低イオン濃度の電解液を用いて、高い電流密度で短時間のめっき処理を行い、厚さ0.1μm以下の薄いめっき層を形成するものである。このときの電流供給方法としては、単純な直流電流でめっきを行うことも当然可能であるが、高電流密度を使用することによる品質低下を防止するため、通電状態と電流停止状態を繰り返す「パルスめっき法」を採用することも好ましい。パルスめっきを採用する場合、パルス波形に関しては、特段の限定は無く、矩形波・三角波等の使用が可能である。そして、整流方式に関しても、限定は無く、半波整流・全波整流の使用が可能である。そして、周波数200Hz〜2000Hz、Duty Ratio(on:20、off:80)、電流密度3A/dm〜10A/dmの条件等を採用することが可能である。
以下、ストライクめっきに使用する代表的な浴組成を、念のために挙げておく。一例として、ニッケルストライクめっきの場合には、後述するスルファミン酸系ニッケルめっき浴、ワット浴の使用が可能である。シアン化銅ストライクめっきの場合には、シアン化銅を20〜35g/L、シアン化ナトリウムを37〜60g/L、水酸化カリウムを3〜5g/L、ロッシェル塩10〜20g/L含有する電解液を用いることが出来る。ピロりん酸銅ストライクめっきの場合、ピロリン酸銅を16g/L、ピロリン酸カリウムを 120g/L、シュウ酸カリウム10g/L含有する電解液を用いることが出来る。
次に、この固体微粒子含有電解ニッケルめっき層を形成するためのめっき液として、前記工程bで表面改質処理を施した無機コート層付き固体微粒子を、ニッケル成分を含むめっき液中に懸濁させたものを用いる。当該めっき液は、市販の電解ニッケルめっき液に、工程bで表面改質処理した無機コート層付き固体微粒子を懸濁させたものを用いることも、ニッケルめっきに適用されるワット浴、スルファミン酸浴等を建浴して、工程bで表面改質処理した無機コート層付き固体微粒子を懸濁させたものを用いても構わない。例えば、このときのニッケルめっき液には、特段の限定は無く、平滑ニッケルめっきの可能な浴組成、電解条件を採用することが可能である。一例として、以下にいくつかのニッケルめっき浴及びめっき条件を列挙しておく。
スルファミン酸系ニッケルめっき浴を用いるのであれば、スルファミン酸ニッケル・4水和物を200〜800g/L、塩化ニッケル・6水和物を1〜10g/L、ホウ酸を20〜50g/L、pH3〜5のニッケルめっき組成を採用する等である。
ワット浴系のニッケルめっき浴を用いるのであれば、硫酸ニッケル・7水和物が200〜500g/L、塩化ニッケル・7水和物が10〜100g/L、ホウ酸が20〜50g/L、pH3〜5のニッケルめっき組成を採用する等である。
固体微粒子含有電解ニッケルめっき層を形成するためのめっき液に対する無機コート層付き固体微粒子の含有量は、ワイヤーの表面に、ニッケルと同時に共析させる固体微粒子量との関係を考慮して、任意に添加量を採用することが可能である。例えば、ワイヤーソー用途の固体微粒子付着ワイヤーを得ようとすると、被切断体の種類に応じて、固体微粒子含有量を4g/l〜40g/l程度とすることが好ましい。固体微粒子含有量が4g/l未満であると、良好な切断性能を備えていないワイヤーソーとなるからである。一方、固体微粒子含有量が40g/lを超えると、ワイヤー表面に付着する固体微粒子量が過剰となり、ワイヤー表面への均一な固体微粒子の付着が困難となるため好ましくない。
そして、上述した固体微粒子を懸濁しためっき液を用い、一般的なめっき条件を適用することで、ワイヤーの表面にニッケルと固体微粒子とを共析させることができる。このときワイヤーの500μmの長さに対し、固体微粒子を10個〜60個、より好ましくは20個〜50個が付着するように共析させることが好ましい。当該固体微粒子が10個未満の場合には、ワイヤーソーとしての切断性能が低下するため好ましくない。一方、固体微粒子が60個を超えると、ワイヤーソーのハンドリング時に固体微粒子の脱落が起こりやすくなり、被切断物の切断面が粗くなる傾向になるため好ましくない。これにより、ワイヤーの表面にパラジウムコート層付き固体微粒子を分散する形で含有する固体微粒子含有電解ニッケルめっき層を形成することができる。
工程d. この工程は、前記工程cで得られた固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に、更にニッケルめっきを施して前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっき層を形成する工程である。ここで施すニッケルめっきの手法は、電解めっき法を採用することが、生産速度の観点から見て好ましい。この工程dで使用するめっき液は、市販のニッケルめっき浴を用いても良いし、上記工程cで詳述したように、ワット浴やスルファミン酸浴等を自身で調製したものを用いても構わない。
そして、液温30〜60℃のニッケルめっき液に、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層が形成された上記ワイヤーを浸漬して、当該ワイヤーを陰極に分極して、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の上に所望の厚さのオーバーコートニッケルめっき層を形成する。ここで、ニッケルめっき液の液温が30℃未満の場合には、めっき液中に含有させることの出来る飽和ニッケル量が低下し、めっき速度が低下し工業的生産性の低下を招くと共に、形成したオーバーコートニッケルめっき層の表面の平滑性が低下する傾向があり好ましくない。一方、ニッケルめっき液の液温が60℃を超えると、塩化ビニル配管の使用が困難となるため製造設備の構成材料の制約が大きくなり、且つ、めっき液の水分の蒸発速度が速くなりめっき液の組成変動が大きくなるため、安定しためっき操業が困難となるため好ましくない。その他のめっき条件に関しては、ニッケルの平滑めっきが可能である限り、特段の限定は無い。
この工程dで形成するオーバーコートニッケルめっき層は、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の外表面に設けられるものであり、固体微粒子付着ワイヤーの最外層に位置するものである。従って、オーバーコートニッケルめっき層は、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層に含まれる固体微粒子の脱落を、効果的に防止することが可能となる。このオーバーコートニッケルめっき層は、0.1〜40μmの厚さとすることが好ましい。オーバーコートニッケルめっき層の厚さが0.1μm未満の場合には、固体微粒子付着ワイヤーのハンドリング時又は切断操業時に起こる、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層に含まれる固体微粒子の脱落を、効果的に防止することができなくなる。一方、オーバーコートニッケルめっき層の厚さを、電解めっき法を採用して40μmを超えるものとすると、ダイヤモンド粒子の頭頂部における電流集中を起こし、その電流集中箇所でニッケルの異常析出が起き、ダイヤモンド粒子の頭頂部のめっき層が厚くなる。このときワイヤーソーとして使用する固体微粒子付着ワイヤーを想定すると、ダイヤモンド粒子の頭頂部のめっき層が厚くなった状態では、ワイヤーソーとしての使用開始直後に、ダイヤモンドの頭頂部が露出した状態となりにくいため、初期の切断性能が低下するため好ましくない。
また、このオーバーコートニッケルめっき層の厚さを、2〜4μmとすることが、より好ましい。オーバーコートニッケルめっき層は、0.1〜40μmの厚さとすることが好ましい。オーバーコートニッケルめっき層の厚さが2μmになると、固体微粒子付着ワイヤーのハンドリング時又は切断操業時に起こる、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層に含まれる固体微粒子の脱落を、ほぼ完全に防止できる。そして、オーバーコートニッケルめっき層の厚さが4μmを超えるものとしても、固体微粒子含有電解ニッケルめっき層に含まれる固体微粒子の脱落防止効果は既に飽和しており、むしろダイヤモンド粒子の頭頂部における電流集中を起こし易くなり、工程管理が煩雑化する傾向にあるからである。
ここで、このオーバーコートニッケルめっき層の厚さの測定方法に関して述べておく。固体微粒子付着ワイヤー1の断面を、金属顕微鏡で直接観察すると、図1に模式的に示したように、ワイヤー2、無機保護層(ストライクめっき層)3、固体微粒子4、オーバーコートニッケルめっき層5が、明瞭に観察できる。このとき、オーバーコートニッケルめっき層5の固体微粒子4の存在しない箇所で、オーバーコートニッケルめっき層5の厚さを測定する。
以下、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
ワイヤー: 実施例では、直径0.12mmの鋼線ワイヤーを用いた。後述する工程cの固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の形成に先だって、ワイヤーを脱脂処理した後、10%硫酸に浸漬する前処理を施した。その後、ワイヤーの表面に、ニッケルストライクめっきを施し、厚さ約0.08μmの無機保護層を設けた。このときのニッケルストライクめっきは、塩化ニッケルを240g/L、塩酸を125g/L含有する電解液を用い、パルス波形が矩形波、周波数1000Hz、Duty Ratio(on:20、off:80)、電流密度6A/dm〜10A/dmのパルス電解条件を採用した。なお、他の実施例及び比較例においても同様のワイヤーを用いている。
固体微粒子: 実施例では、固体微粒子として、平均粒径が15μmのダイヤモンド粒子を用いた。そして、このダイヤモンド粒子を用いて、以下の方法で固体微粒子付着ワイヤーを製造した。後述する実施例2、実施例3及び比較例においても同様のダイヤモンド粒子を用いている。
工程a: 実施例1では、ダイヤモンド粒子をパラジウム・錫コロイド触媒を主成分とする溶液を用いて、ダイヤモンド粒子の表面にパラジウムと錫とを析出させる方法を採用した。この実施例では溶液として、パラジウム濃度0.1g/l、錫濃度2g/l、40℃の溶液を用いた。この溶液にダイヤモンド粒子を10分浸漬した後、ダイヤモンド粒子を溶液から取り出して、水洗いした。その後、濃度50g/lの硫酸にダイヤモンド粒子を10分浸漬した。これにより、ダイヤモンド粒子の表面にパラジウムコート層を形成し、「パラジウムコートダイヤモンド粒子」を得た。
工程b: この工程では、表面改質剤としてアルコールアミン類を含んだノニオン系界面活性剤を含む溶液を用い、当該「パラジウムコートダイヤモンド粒子」の粒子表面の表面改質処理を行った。このときの表面改質剤には、2−アミノエタノール(一級アミン)1.0〜30質量%、ノニオン系界面活性剤0.1〜5.0質量%、pH9.0〜12.5の溶液を用いた。そして、表面改質処理は、液温約30℃に維持した当該表面改質剤の中に、「パラジウムコートダイヤモンド粒子」を入れ、10分間浸漬した後、水洗を施した。
工程c: この工程では、工程bが終了した表面改質処理されたパラジウムコートダイヤモンド粒子を電解ニッケルめっき液に入れ、パラジウムコートダイヤモンド粒子濃度が5g/Lの懸濁状態の「ダイヤモンド粒子含有電解ニッケルめっき液」を得た。当該ダイヤモンド粒子含有電解ニッケルめっき液は、スルファミン酸ニッケル・4水和物400g/L、塩化ニッケル・6水和物2g/L、ホウ酸35g/L、pH4.0のスルファミン酸ニッケルめっき浴を用いた。
そして、当該ダイヤモンド粒子含有電解ニッケルめっき液の液温を50℃とし、電流密度15A/dmで電解して、上述の脱脂処理したワイヤーの表面に複合めっきを施して、パラジウムコートダイヤモンド粒子を分散含有する「ダイヤモンド粒子含有電解ニッケルめっき層」を形成した。
工程d: この工程では、めっき液として、スルファミン酸ニッケル・4水和物を450g/L、塩化ニッケル・6水和物を3g/L、ホウ酸を40g/L、pH4.0のスルファミン酸ニッケルめっき浴を採用した。そして、当該ニッケルめっき液の液温を50℃、電流密度15A/dmの条件で、工程cでワイヤー表面に設けたダイヤモンド粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に、厚さ約4μmの「オーバーコートニッケルめっき層」を形成し、「ダイヤモンド微粒子付着ワイヤー」を製造した。
この実施例1で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図2に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約24個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.1μmであった。
実施例2では、工程cのパラジウムコートダイヤモンド粒子の含有量のみが実施例1と相違するだけで、その他は全て実施例1の同じ条件を採用し、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーを製造した。以下に、実施例1と相違する工程cの条件についてのみ、説明する。
実施例2では、工程cにおける、前記スルファミン酸浴に懸濁させるパラジウムコートダイヤモンド粒子の濃度を10g/Lとして、電解めっき液を調製した。なお、その他の、めっき液の温度、電流密度等の条件は、実施例1と同一の条件を採用した。
この実施例2で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図3に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約31個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.2μmであった。
実施例3では、工程cのダイヤモンド粒子の含有量のみが実施例1と相違するだけで、その他は全て実施例1の同じ条件を採用し、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーを製造した。以下に、実施例1と相違する工程cの条件についてのみ、説明する。
実施例3では、工程cにおける、前記スルファミン酸浴に懸濁させるパラジウムコートダイヤモンド粒子の濃度を15g/Lとして、電解めっき液を調製した。なお、その他の、めっき液の温度、電流密度等の条件は、実施例1と同一の条件を採用した。
この実施例3で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図4に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約46個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.3μmであった。
この実施例4では、実施例1の工程aで調製したパラジウムコートダイヤモンド粒子の代わりに、同一粒径の市販のニッケルコートダイヤモンド粒子を用いた。
そして、実施例2の工程cのダイヤモンド粒子の含有量と同様の含有量を採用している。即ち、実施例4の工程cでは、「工程bが終了し、表面改質処理されたニッケルコートダイヤモンド粒子を電解ニッケルめっき液に入れ、ダイヤモンド粒子濃度が10g/Lの懸濁状態の固体微粒子含有電解ニッケルめっき液を得た。」点が、実施例1と相違するだけで、その他は全て実施例1の同じ条件を採用し、ニッケルコートダイヤモンド粒子付着ワイヤーを製造した。
この実施例4で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図5に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、ニッケルコートダイヤモンド粒子が約30個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.1μmであった。
この実施例5では、実施例1の工程aで調製したパラジウムコートダイヤモンド粒子の代わりに、同一粒径の市販のチタンコートダイヤモンド粒子を用いた。
そして、実施例2の工程cのダイヤモンド粒子の含有量と同様の含有量を採用している。即ち、実施例5の工程cでは、「工程bが終了し、表面改質処理されたチタンコートダイヤモンド粒子を電解ニッケルめっき液に入れ、ダイヤモンド粒子濃度が10g/Lの懸濁状態の固体微粒子含有電解ニッケルめっき液を得た。」点が、実施例1と相違するだけで、その他は全て実施例1の同じ条件を採用し、チタンコートダイヤモンド粒子付着ワイヤーを製造した。
この実施例5で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図6に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、チタンコートダイヤモンド粒子が約32個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.2μmであった。
比較例
[比較例1]
この比較例1は、実施例1の工程aで得られたパラジウムコートダイヤモンド粒子に、工程bの表面改質処理を行わずに、工程cのめっきを施して固体微粒子付着ワイヤーを製造した。これにより、工程bの表面改質処理を行わない場合のワイヤーへのダイヤモンド粒子の付着量を検証した。
比較例1では、実施例1の工程bの表面改質剤の表面改質処理工程を行わず、実施例1の工程aで得られたパラジウムでコーティングしたダイヤモンド粒子を、実施例1の工程cに記載のスルファミン酸浴に5g/Lの濃度で懸濁させてめっき液を調製した。なお、比較例1では、工程bを行わない点のみが実施例1と相違するだけで、その他の工程、使用するダイヤモンド粒子、ワイヤー、めっき条件等は全て上述した実施例と同一の条件を採用した。
この比較例1で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図7に示すようにワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約8個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.1μmであった。
[比較例2]
この比較例2は、実施例1の工程aで得られたパラジウムコートダイヤモンド粒子に、工程bの表面改質処理を行わずに、工程cのめっきを施して固体微粒子付着ワイヤーを製造した。これにより、工程bの表面改質処理を行わない場合のワイヤーへのダイヤモンド粒子の付着量を検証した。
比較例2では、実施例1の工程bの表面改質剤の表面改質処理工程を行わず、実施例1の工程aで得られたパラジウムでコーティングしたダイヤモンド粒子を、実施例1の工程cに記載のスルファミン酸浴に10g/Lの濃度で懸濁させてめっき液を調製した。なお、比較例2では、工程bを行わない点のみが実施例1と相違するだけで、その他の工程、使用するダイヤモンド粒子、ワイヤー、めっき条件等は全て上述した実施例と同一の条件を採用した。
この比較例2で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図7と同様の形態で、ワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約8個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.0μmであった。
[比較例3]
この比較例3は、実施例1の工程aで得られたパラジウムコートダイヤモンド粒子に、工程bの表面改質処理を行わずに、工程cのめっきを施して固体微粒子付着ワイヤーを製造した。これにより、工程bの表面改質処理を行わない場合のワイヤーへのダイヤモンド粒子の付着量を検証した。
比較例3では、実施例1の工程bの表面改質剤の表面改質処理工程を行わず、実施例1の工程aで得られたパラジウムでコーティングしたダイヤモンド粒子を、実施例1の工程cに記載のスルファミン酸浴に15g/Lの濃度で懸濁させてめっき液を調製した。なお、比較例3では、工程bを行わない点のみが実施例1と相違するだけで、その他の工程、使用するダイヤモンド粒子、ワイヤー、めっき条件等は全て上述した実施例と同一の条件を採用した。
この比較例3で製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーは、図7と同様の形態で、ワイヤーの500μmの長さに対し、パラジウムコートダイヤモンド粒子が約9個付着していた。また、「オーバーコートニッケルめっき層」の換算厚さは、4.1μmであった。
[実施例と比較例との対比からの考察]
実施例と比較例との対比が容易なように、以下の表1に、製造したダイヤモンド微粒子付着ワイヤーの観察結果を示す。
Figure 0005802275
表面改質処理の有無による影響について、表1を参照しつつ説明する。最初に、実施例から分かる事に関して述べる。実施例1〜実施例3は、工程cの電解ニッケルめっき液に含有させたダイヤモンド粒子の含有量を変化させたものである。この実施例1〜実施例3から分かることは、電解ニッケルめっき液に含有させるダイヤモンド粒子の含有量を、5g/l→10g/l→15g/lと変化させると、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーに付着するダイヤモンド粒子の個数が、24個→31個→46個と、電解ニッケルめっき液に含有させたダイヤモンド粒子の含有量の増加に伴い、ダイヤモンド粒子のダイヤモンド微粒子付着ワイヤーへの付着個数も比例して増加することが分かる。
ここで、比較例1〜比較例3を見てみると、これらの比較例も、電解ニッケルめっき液に含有させるダイヤモンド粒子の含有量を、5g/l→10g/l→15g/lと変化させているが、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーに付着するダイヤモンド粒子の個数が、8個〜9個であり、ダイヤモンド粒子の付着量の変化が少ないことが理解できる。即ち、比較例の場合、電解ニッケルめっき液に含有させるダイヤモンド粒子の含有量を増やしても、ダイヤモンド粒子のダイヤモンド微粒子付着ワイヤーへの付着個数は、比例して増加していないことが分かる。しかも、電解ニッケルめっき液に含有させるダイヤモンド粒子の含有量が同じ場合で、実施例と比較例とを対比すると明らかなように、実施例の方が付着個数が多くなっていることが、容易に理解できる。
以上のことから、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーの製造において、表面改質剤としてアルコールアミン類を含んだノニオン系界面活性剤を含む溶液を用い、当該パラジウムコートダイヤモンド粒子の粒子表面の表面改質処理を行うことで、ダイヤモンド微粒子付着ワイヤーの表面に、ダイヤモンド粒子を均一且つ確実に付着させることが可能で、付着させるダイヤモンド粒子量の制御も可能となる事が理解できる。
以上に述べてきた実施例に係る固体微粒子付着ワイヤーと比較例に係る固体微粒子付着ワイヤーとを、ワイヤーソーとして用いてみると、比較例に係る固体微粒子付着ワイヤーに比べ、実施例に係る固体微粒子付着ワイヤーの切断性能は飛躍的に高く、且つ、長時間の使用が可能であることが分かる。
以上のように、本件発明に係る製造方法を採用して得られる固体微粒子付着ワイヤーは、ワイヤーに付着する固体微粒子の付着量が著しく向上し、且つ、付着した固体微粒子の脱落も効果的に抑制したものである。これにより、ワイヤーソーとしての切断性能に優れ、長期使用可能な固体微粒子付着ワイヤーを低コストで提供することが可能となる。係る固体微粒子付着ワイヤーは、単結晶シリコンのインゴット等の高脆性材料の切断作業を、高精度で行うことが出来るため、太陽電池や半導体用シリコンウェハ等のの製造工程において好適に用いることが可能である。また、本件発明に係る固体微粒子付着ワイヤーの優れた研磨性能により、ヤスリや包丁研ぎ等の種々の用途にも適しており、切断又は研削を必要とする様々な用途での適用が可能である。
1 固体微粒子付着ワイヤー
2 ワイヤー
3 無機保護層(ストライクめっき層)
4 固体微粒子
5 オーバーコートニッケルめっき層

Claims (11)

  1. ワイヤーの外周面に固体微粒子を固着してなる固体微粒子付着ワイヤーにおいて、
    当該ワイヤーの表面に、金属成分で構成した無機コート層を備え当該表面が帯電表面である無機コート層付き固体微粒子を分散含有した固体微粒子含有電解ニッケルめっき層と、
    該固体微粒子含有電解ニッケルめっき層の表面に前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっき層を備えことを特徴とする固体微粒子付着ワイヤー。
  2. 前記ワイヤーは、その表面に無機保護層を備えものである請求項1に記載の固体微粒子付着ワイヤー。
  3. 前記ワイヤーの500μmの長さの範囲に、粒径が0.01〜100μmの無機コート層付き固体微粒子が10個〜60個付着した請求項1又は請求項2に記載の固体微粒子付着ワイヤー。
  4. 前記無機コート層付き固体微粒子は、パラジウムコートダイヤモンド粒子、ニッケルコートダイヤモンド粒子、チタンコートダイヤモンド粒子から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固体微粒子付着ワイヤー。
  5. ワイヤーの外周面に固体微粒子を固着してなる固体微粒子付着ワイヤーの製造方法であって、
    以下の工程a〜工程dを含むことを特徴とする固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
    工程a.固体微粒子の表面に金属成分で構成した無機コート層を備える無機コート層付き固体微粒子を準備する工程。
    工程b.無機コート層付き固体微粒子の表面を、所定の極性を付与するため、表面改質剤を用いて、無機コート層付き固体微粒子の表面改質処理を施す工程。
    工程c.当該表面改質処理を施した無機コート層付き固体微粒子を、ニッケルめっき液中に入れ懸濁状態とし、電解めっき法により、ワイヤー表面にニッケルを析出させると同時に、無機コート層付き固体微粒子を付着させる複合めっきを施し、ワイヤーの表面に固体微粒子含有ニッケルめっき層を形成する工程。
    工程d.ワイヤー表面の固体微粒子含有ニッケルめっき層の上に、前記固体微粒子による凹凸を備えたオーバーコートニッケルめっきを施す工程。
  6. 前記ワイヤーは、その表面に無機保護層を備えるものを用いる請求項5に記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
  7. 前記工程bの表面改質剤は、アミン系、ノニオン系、カチオン系のいずれかの界面活性剤の1種以上を含む請求項5又は請求項6に記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
  8. 前記工程bの表面改質剤は、アルコールアミン類及びノニオン系界面活性剤を含む請求項5〜請求項7のいずれかに記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
  9. 前記固体微粒子は、粒径が0.01〜100μmのものを用いる請求項5〜請求項8のいずれかに記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
  10. 前記工程dで形成されるオーバーコートニッケルめっき層は、厚さが0.1〜40μmとする請求項5〜請求項9のいずれかに記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
  11. 前記ワイヤーは、直径が0.02mm〜3.0mmのものを用いる請求項5〜請求項10のいずれかに記載の固体微粒子付着ワイヤーの製造方法。
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