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JP5810271B2 - 電気化学キャパシタの製造方法およびそれを用いて製造された電気化学キャパシタ - Google Patents
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電気化学キャパシタの製造方法およびそれを用いて製造された電気化学キャパシタ Download PDF

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Description

本発明は、ハイブリッドカーや燃料電池車の回生用あるいは蓄電用、電子機器のバッテリー用として用いられる電気化学キャパシタの製造方法およびそれを用いて製造された電気化学キャパシタに関するものである。
従来からキャパシタは、その充放電の応答性の高さから多くの電子機器のバッテリー用として用いられてきた。
その開発の中で、高いエネルギー密度を有したキャパシタも登場し、ハイブリッドカーなどに動力源として搭載されている蓄電池の補助電源の役割を担う電気二重層キャパシタや、この電気二重層キャパシタの改良版であり、電気二重層キャパシタより優れたエネルギー密度を有する電気化学キャパシタが注目されている。
図4(a)は、従来のキャパシタの一例として示した、電気化学キャパシタに用いられる素子の上面図であり、図4(b)は同電気化学キャパシタにおける素子(電極巻回ユニット100)の部分切り欠き正面図である。
図4(a)において、この従来の電気化学キャパシタは、正極101、負極102をその間にセパレータ103を介して交互に積層して同心的に巻回して電極巻回ユニット100を形成し、この電極巻回ユニット100の外周部及び中心部に、リチウムイオン供給源として、厚みが50〜300μmの箔状のリチウム金属(リチウム極)104、105がそれぞれ配置され、これらをアルミニウムや鉄から成る外装容器106内に収容すると共に内部に電解液が充填されたものであった。
また、正極101及び負極102は、表裏面を貫通する孔が設けられた多孔材からなる後述の集電体に形成されており、このように集電体に多孔材を用いることによって、リチウム金属104、105が電極巻回ユニット100の外周部と中心部に配置されていても、リチウムイオンはリチウム金属104、105から電極巻回ユニット100の集電体の貫通孔を通って自由に各電極間を移動し、電極巻回ユニット100のすべての負極102にリチウムイオンを予めドープ(プレドープ)できる。
そして、図4(b)において、正極101、負極102の電極取出し方法として、正極101と負極102の夫々の集電体へ電極端子107、108を接続し、この電極端子107、108は円筒状の電極巻回ユニット100の巻回軸方向に対してそれぞれ逆方向に引き出されている。特に巻回中心部に形成されたリチウム金属105は管棒109により支持されており、この管棒109は同時に電極巻回ユニット100の支持用の軸棒の役割も担っている。
また電極巻回ユニット100の最外周は巻回形状を保持するためにテープ110により固定されている。
このように従来の電気化学キャパシタは、リチウムイオン供給源であるリチウム金属104、105を電極巻回ユニット100の外周部と中心部の2箇所に設けることにより、1箇所のリチウムイオン供給源からリチウムイオンをプレドープさせる方法よりも早くリチウムイオンを負極102へプレドープさせることを実現した。
なお、この出願に関する先行技術文献情報として、例えば特許文献1が知られている。
しかし、上記リチウム金属104、105のようなリチウムイオン供給源を用いてプレドープを行ったとしても、上記特許文献1に記載のようにリチウム金属104、105のリチウムの厚みが50〜300μmと非常に厚く、この厚いリチウムイオン供給源をプレドープしようとした場合、多くのリチウムイオンを負極102へプレドープさせるために未だ長い時間を要していた。
そこで、このプレドープの工程に要する時間を短縮するために、負極の低い電位を維持した上で負極へプレドープされるリチウムイオンの量を減らすことが検討された。
検討の末、ポリプロピレンなどの箔状の基材上に蒸着により形成されたリチウム膜を負極の電極層の表面へ転写し、このリチウム膜が転写された負極へ電解液を含浸してリチウム膜を構成する金属リチウムをイオン化させて負極へリチウムイオンをプレドープする方法が開示されている。
リチウム膜を用いてリチウムイオンをプレドープすることにより、負極集電体の単位面積当たりの金属リチウムの量が減るため、その金属リチウムを吸蔵する炭素電極層の体積(厚み)も低減させることが可能となる。従って、プレドープのために炭素電極層内部を移動するリチウムイオンの経路短縮につながり、リチウムイオンのプレドープを早める効果を奏するものであった。
なお、この出願に関する先行技術文献情報として、例えば特許文献2が知られている。
特開2007−067105号公報 特開2008−21901号公報
しかしながら、上記のいずれのプレドープにも用いられている金属リチウムは物性上、化学的に活性であり、負極に配設された直後から、この金属リチウムが保管されている雰囲気中に含まれる物質と金属リチウムの一部が反応し、リチウムイオンがプレドープに寄与しない失活したリチウム化合物となっていた。
この失活したリチウム化合物が生成されることによって、リチウムイオンのプレドープに寄与する金属リチウムの量が減ってしまうため、リチウムイオンが負極へ吸蔵されることによる負極の電位降下が阻害されてしまい、電気化学キャパシタとしてエネルギー密度の低下を招く要因となっていた。
そこで、本発明では、エネルギー密度や信頼性の向上を実現することができる電気化学キャパシタの製造方法およびそれを用いて製造された電気化学キャパシタを提供することを目的とする。
この課題を解決するために本発明における電気化学キャパシタの製造方法は、アニオンを吸脱着する正極電極層を金属から成る集電体の表面に形成して正極を作製する正極作製工程と、リチウムイオンを吸蔵する負極電極層を金属から成る集電体の表面に形成して負
極を作製する負極作製工程と、前記正極および前記負極を対向させ、この正極と負極の間にセパレータが介在するように素子を作製する素子作製工程と、リチウムイオン供給源を準備するリチウム準備工程と、前記素子とリチウムイオンを含む電解液と前記リチウムイオン供給源を外装体に収容する収容工程と、リチウムイオンを前記負極電極層の内部へ吸蔵するプレドープ工程とから成り、このリチウム準備工程において準備するリチウムイオン供給源が、蒸着により負極表面へ形成された金属リチウムとこの金属リチウムの表面に形成された保護層とから成り、この保護層は、飽和炭化水素を主成分とするオイルまたは側鎖がアルキル基であるシリコーンを主成分とするオイルから成り、飽和炭化水素を主成分とするオイルは、40℃の雰囲気中において蒸気圧が0.01Pa以下であることを特徴としている。
上記製造方法により作製される本発明における電気化学キャパシタは、リチウムイオン供給源として設けられた金属リチウムの表面に上記保護層を設けることにより、この保護層が雰囲気とリチウムとの間に介在することになり、化学的に活性である金属リチウムがプレドープを行う前に雰囲気などに含まれる水分や窒素など反応して失活することを抑え、プレドープによって負極電極層の内部へ吸蔵されるリチウムイオンの量が減少することを抑える。
これにより、プレドープ工程において所定の量のリチウムイオンを負極へ吸蔵する上で、電気化学キャパシタとしての容量劣化などを抑え、電気化学キャパシタの信頼性の向上を図るとともに、プレドープを行う前に失活していない金属リチウムの量が安定するため、本発明にかかる電気化学キャパシタは、プレドープ時の負極電極層におけるリチウムイオンの吸蔵量をより安定させることができる。これにより電気化学キャパシタのエネルギー密度を高めることができる。
本実施の形態における電気化学キャパシタの部分切り欠き斜視図 本実施の形態における電気化学キャパシタの負極に用いられる蒸着設備を示した概略図 本実施の形態におけるプレドープ工程直前の負極の正面断面を示した部分拡大図 (a)従来の電気化学キャパシタに用いられる素子を示した上面図、(b)同素子を示した部分切り欠き正面図
以下に、図面を用いながら本実施の形態および全請求項に記載の発明について説明を行う。
(実施の形態)
図1は本発明の実施形態による電気化学キャパシタの一部の切り欠き斜視図である。
図1において、素子1は金属から成る集電体2aの表面にイオンを吸脱着する正極電極層として活性炭などを主とした分極性電極層2bを形成した正極2と、金属から成る集電体3aの表面にリチウムイオンを吸蔵した負極電極層として層間を有した多層状の結晶構造を含む炭素材料3cを主とした炭素電極層3bを形成した負極3とを一対の電極とし、対向した正極2および負極3の間にセパレータ4を介在させた状態で、巻回、又は積層されたものであり、正極2および負極3の表面には電極引出端子としてリード線5a、5bがそれぞれ接続された状態で、この素子1と電解液(図示なし)とが外装体である有底筒状の外装ケース6に収容されており、外装ケース6の開口端部がリード線5a、5bが表出するように封口部材7によって封止されている。
以下に本実施の形態における電気化学キャパシタの製造方法について説明する。
まず、正極2を作製する正極作製工程を説明する。
集電体2aとして例えば厚み約30μmの高純度アルミニウム箔(Alを99.99%以上含有)を用い、このアルミニウム箔を塩素系のエッチング液中で電解エッチングをして表面を粗面化する。
そして、分極性電極層2bを粗面化した集電体2aの表裏面へ形成する。この分極性電極層2bを構成する材料として、活性炭、結着剤や導電助剤などがある。
活性炭は例えば平均粒径5μmのフェノール樹脂系活性炭を、結着剤には例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液を、導電助剤として例えばアセチレンブラックを、それぞれ10:2:1の重量比で混合したものを用いる。この混合物を混練機で練合して所定の粘度に調整する。
このペーストを集電体2aの表裏面に塗布し、100℃の大気雰囲気中において1時間乾燥することにより厚み40μmの分極性電極層2bを形成する。その後、集電体2aに分極性電極層2bを設けたものを所定の幅になるようスリット加工を施す。
さらに、集電体2a表裏面上へ形成した分極性電極層2bを一部取り除き、この分極性電極層2b未形成部へリード線5aを針かしめなどの方法で接続する。
以上より、正極2が完成する。
次に、負極3を作製する負極作製工程を説明する。
集電体3aとして、例えば厚さ約15μmの銅箔を用い、この集電体3a表裏面へ炭素電極層3bを形成する。この炭素電極層3bを構成する材料として、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出できる炭素材料3cとして例えば黒鉛質炭素を用いる。導電助剤には正極2と同様に例えばアセチレンブラックを用いる。結着剤として例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とCMCとを重量比4:1で混合したものを用いる。これらの材料を混合する場合、黒鉛質炭素と導電助剤と結着剤とを重量比8:1:1の割合に混合する。
ペーストを調整する際、水にCMC、アセチレンブラック、黒鉛質炭素、PTFEの順に投入し、攪拌して混練してペーストを作製する。
このペーストを、コンマコータやダイコータなどを用いて集電体3aの表裏面へ片面の厚みが約50μmになるように形成し、80℃の大気中で乾燥する。乾燥後に、炭素電極層3bを表裏面上へ形成した集電体3aを、75〜100kgf/cmの線圧でプレス加工して、炭素電極層3bの片面の厚みが40μm、密度0.4〜1.0g/cmに調整する。そして、プレス後に炭素電極層3bを表裏面上へ形成した集電体3aを所定の幅へスリット加工する。
さらに、正極2同様に、集電体3aの表面へ形成した炭素電極層3bを一部取り除き、この炭素電極層3b未形成部分へ銅などから成るリード線5bを抵抗溶接などにより接続する。
以上より、負極3が完成する。
なお、炭素材料3cの材料については、本実施の形態においては高耐圧であり、且つ充放電サイクルにおけるエネルギー損失が小さいという特性を有した黒鉛質炭素を使用したが、他にも、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、難黒鉛化炭素などが材料の候補として考えられる。それぞれの材料を物性において比較すると特化している性能が異なるため、使用目的に応じて適宜選択を行うものである。例えば、易黒鉛化炭素なら、低抵抗や充放電サイクル寿命の面で優れており、低温焼成炭素なら、高容量や低抵抗の面で優れており、難黒鉛化炭素なら、高容量やサイクル損失が小さい面で優れている。
次に、負極3には正極2と異なり、プレドープ工程時にリチウムイオンを炭素材料3c内へ吸蔵するため、リチウムイオン供給源となるリチウム膜8(図示なし)を物理的気相法を用いて炭素電極層3bの外表面へ形成する。本実施の形態では、負極3表裏面へリチウム膜8を形成する方法として、例えば真空蒸着装置を用いることが考えられる。
そして、本実施の形態では、負極3へ形成されたリチウム膜8の表面へリチウム膜8を構成する金属リチウムより大気との反応性が低い化合物から成る保護層9(図示なし)を蒸着により形成する。形成される保護層9の厚みは、10nm〜100nmが好ましい。
このリチウム配設工程については後ほど、詳しく説明を行う。
次に、素子1を作製する素子作製工程を説明する。
上記の正極2および負極3を対向させ、例えば厚み約35μm、密度0.45g/cmであるセルロース系の紙を材料としたセパレータ4を用い、対向する正極2及び負極3の間にこのセパレータ4が介在する様に巻回し素子1を完成させる。
以上より、素子1が完成する。
次に、素子1と電解液を外装ケース6内に収容する収容工程を説明する。
電解液は、例えば電解質カチオンとしてリチウムイオン、電解質アニオンとしてBF あるいはPF を、溶媒として高誘電率のエチレンカーボネート(EC)と低粘度のジエチルカーボネート(DEC)を重量比1:1に混合した混合溶媒を用いる。
本発明における電解液は上記構成に限定されず、リチウムイオンを含んでいれば同様の効果を奏する。
外装ケース6には放熱性の観点から例えばアルミニウムや銅やニッケルなどの金属を用いるが、電解液と反応を生じる恐れの低い材料であれば特に限定されず、角柱ケースやラミネートタイプでもよい。
ここで素子1を構成する負極3に施すプレドープ工程について説明する。
この工程で負極3へリチウムイオンを予め吸蔵させることを目的としたプレドープと呼ばれる作業を行うが、ここで言う吸蔵とはこの場合、負極3近傍のリチウムイオンが炭素材料3cが有する層間を有した多層状の結晶構造の層間へリチウムイオンとして入り込み、リチウムおよび炭素の層間化合物をつくる現象を指す。
そして、このリチウムイオンが負極3へ吸蔵される際にリチウムイオンの電気化学反応により負極3の電極電位が下がり、電気化学キャパシタは正極2と負極3の電位差が広がることにより電気化学キャパシタのエネルギー密度を向上させることができる。
因みに、負極3へ行うプレドープについてはリチウムイオン二次電池の分野においても行われているが、リチウムイオン二次電池でのプレドープの目的は充放電サイクルにおける負極の不可逆容量を低減して、充放電容量を向上させることにある。
それに対して、本発明における電気化学キャパシタのプレドープの目的は負極3の電位降下による耐電圧の向上にある。この目的によりそれぞれのプレドープの際のリチウムイオンの吸蔵量も異なり、リチウムイオン二次電池のリチウムイオンの吸蔵量は負極3の不可逆容量分のみで良いため、電気化学キャパシタのリチウムイオン吸蔵量より明らかに少ない。
本実施の形態ではリチウム膜8を表面に形成した負極3に、リチウムイオンをカチオンとした電解液を含浸することにより、リチウム膜を構成する金属リチウムが電解液と接触し、それにより金属リチウムはイオン化する。そして、このリチウムイオンは炭素材料3cが持つ多層状結晶構造の層間へ挿入されて負極3の炭素材料3cへ吸蔵され、負極3の電位降下を図る。
そして一定時間、負極3へ電解液を含浸することにより、負極3に形成したリチウム膜の金属リチウムが一定量炭素材料3cへ吸蔵され、プレドープ工程が完了する。
次に、封止工程を説明する。
素子1から突出したリード線5a、5bを封口部材7に設けた貫通孔の中を通した状態で、封口部材7を有底筒状である外装ケース6の開口部へ配設し、封口部材7が位置する外装ケース6の開口部外周面から外装ケース6内部へ向かって絞り加工を施し、外装ケース6の開口端部にカーリング加工を施すことにより、封口部材7を圧着および握着し固定する。これにより、外装ケース6開口部の封止が完成する。そして、封止工程が完了する。
最後に品質保持の工程として、組み立てた電気化学キャパシタにエージングを行った後、初期動作の確認を行う。
以上より、電気化学キャパシタが完成する。
図2は本実施の形態におけるリチウム配設工程の際に用いる蒸着設備の構成を示した概略図である。
図2において、巻き出し部10から巻き出される負極3は、まずリチウム膜形成部11で炭素電極層3bの表面に蒸着により約7〜10μmのリチウム膜8(図示なし)が形成され、続いて保護層形成部12でリチウム膜8の上に蒸着により保護層9(図示なし)が形成され、最後に巻き取り部13で巻き取られて次の工程へ搬送される。
リチウム膜形成部11では真空度が高い雰囲気中で箔状である負極3の一方の面がキャン11aに当接しながら、蒸着源11bから気化したリチウムが上記負極3の他方の面における炭素電極層3bの表面へ噴きつけられる。そして炭素電極層3bへ気化したリチウムが付着した後、このリチウムを冷却するために負極3と当接しているキャン11aを冷却し、熱伝導を利用してキャン11aからリチウムの冷却を行う。
保護層形成部12ではリチウム膜形成部11と同様に、真空度の高い雰囲気の中でキャン12aに箔状である負極3の一方の面が当接しながら、蒸着源12bから気化した上記オイルが上記負極3の他方の面におけるリチウム膜8の表面へ噴きつけられる。そしてリチウム膜8へ付着したオイルを冷却するために冷却されたキャン12aを用いる。
本実施の形態では、このようにしてリチウム膜8および保護層9が形成される。
なお、本実施の形態では、リチウム膜8を形成するために蒸着のような物理的気相法だけでなく、化学的気相法や液相法、直接負極3へ形成するのではなく転写などの間接的にリチウム膜8を形成してもよく、これとは別に素子1と共に保護層9を有した金属リチウムの塊を電解液に含浸し、電解液を介して炭素電極層3bへリチウムイオンをプレドープしてもよい。また、保護層9を形成する手段も蒸着だけに限定されず、ダイコータ、コンマコータ、グラビアコータなどの塗工設備を用いてもよく、保護層9が形成できる手段であれば特に限定されない。
また、本実施の形態の電気化学キャパシタの製造方法において、保護層9を形成する工程を設けずに、既に保護層9を有する金属リチウムを用いてもよい。
図3は本実施の形態における電気化学キャパシタに用いられる負極3の保護層9形成直後の様子を示した正面断面を部分拡大した図である。
図3のように、リチウム配設工程の直後は本実施の形態では負極3のリチウム膜8の上に上記保護層9が形成された構成となる。
この保護層9が形成された負極3に電解液を含浸することにより、プレドープ工程を行うまでの間、負極3が晒されている雰囲気の中に含まれている物質とリチウム膜8の一部の金属リチウム8aが反応し、リチウムイオンのプレドープに寄与しない窒化リチウムなどの失活したリチウム化合物が生成されることを抑えることが可能になる。これにより、負極3へ配設される金属リチウム8aからプレドープされるリチウムイオンの量が減少することを抑えることができるため、プレドープ工程において、負極3の電位が上昇することを抑え、本発明にかかる電気化学キャパシタのエネルギー密度を高めることができる。
さらに、素子1へ電解液を含浸する際に、従来のように失活したリチウム化合物が炭素電極層3bなどに残留し、これがリチウムイオンをプレドープする際や作製された電気化学キャパシタが充放電を行う際に、炭素電極層3bに含まれる炭素材料3cへ吸蔵されるために移動するリチウムイオンの通行の障害となり、これが従来の電気化学キャパシタの抵抗増大の要因の一つとなっていたが、本発明により、失活する金属リチウムの量を減少させることが可能となるため、本実施の形態における電気化学キャパシタは低抵抗化を図ることが可能である。
従って、本発明の効果を奏するために、本発明において保護層9を構成する材料はプレドープ工程に入るまでの間に負極3が晒される雰囲気中に含まれる化合物や電気化学キャパシタを構成する材料と反応性が低いことが求められる。
そして、その保護層9の材料としてオイルなどが挙げられ、特に反応性が低いパラフィン系化合物やナフテン系化合物を多く含む炭化水素系オイルや側鎖がアルキル基から成るシリコーン化合物が多く含まれたシリコーンオイルが好ましい。
言い換えると、不飽和結合を有する化合物が多く含まれた炭化水素系オイル、芳香族系の炭化水素系オイル、もしくは、カルボキシル系、エポキシ系、アミノ系のシリコーンオイル、その他、フェノール基やカルボキシル基、エステル基、スルホ基、硝酸エステル基などの反応性の高い官能基を有する化合物が多いオイルは本発明の主旨とは外れる。
しかし、オイルは複数種の高分子化合物から構成されており、使用するオイルから上記のような反応性が高い官能基を有した高分子化合物を完全に取り除くことは困難であり、一定量オイル内に含まれてしまう。
上記内容を考慮すると、本発明の効果を奏するため用いられるオイルは、オイル全体の物性として反応性が低くなるために、上記パラフィン系化合物やナフテン系化合物を主とする炭化水素系オイルや側鎖がアルキル基から成るシリコーン化合物を主成分とするシリコーンオイルが好ましい。
ここで「主成分とする」という表現は、そのオイルを構成する複数の化合物の中で化合物が一番多く含まれていることを意味している。
このようなオイルを保護層9として用いることにより、特にリチウム膜8表面部分に位置する金属リチウム8aの失活を抑えることが可能となる。
また、これらのオイルは、本実施の形態における電気化学キャパシタに用いられる電解液に対して、非常に溶けにくいものが多い。
この性質により、プレドープ工程後に本実施の形態における電気化学キャパシタの外装ケース6内に残留する保護層9を構成する化合物の一部は電解液中を浮上し、外装ケース6内に存在する雰囲気と電解液との界面に薄い膜を形成し、上記雰囲気から電解液中へ水分などの反応性が高い物質が混入することを抑えるという効果があると考えられる。
このような条件を満たすオイルの具体的な一例として、アルバックテクノ株式会社のULVOIL(登録商標)の中で製品番号D−11(炭化水素系オイル)や製品番号D−31(シリコーンオイル)などが挙げられる。しかし本発明に用いるオイルはこれらのオイルに限定されない。なお、上記製品は本発明の効果を奏する不活性の高分子化合物が上記製品を構成する全ての高分子化合物に対して90%程度の含有率で含まれている。
上記保護層9はプレドープ工程後、負極3や正極2の表面または内部、電解液中などに残留することとなる。
因みにこのリチウム配設工程で形成される保護層9の厚みは10〜100nmであることが好ましい。
これは、10nmより薄い保護層9はオイルを構成する分子単体の大きさより小さくなるため、これ以上薄くすることは困難である。また、100nmより厚い保護層9は電気化学キャパシタとして内部にオイルが残留した際に抵抗が増大するため適さない。
上記オイルの中でも特に、一般的に炭素電極層に対して金属リチウムを配設する際にはリチウムの反応性を考慮して真空度の高い雰囲気中(0.01〜0.001Pa程度)で行われる場合が多い。
そのため、生産性を考慮して、リチウム膜8を配設した空間で連続して保護層9を形成する場合、その保護層9のオイルは揮発を抑えるために蒸気圧が低いものを用いることが好ましい。例えば40℃において蒸気圧0.01Pa以下のオイルを用いることが好ましい。
この蒸気圧の大小はそのオイルの平均分子量に起因する部分があると考えられる、例えば上記蒸気圧を満たすには飽和炭化水素系のオイルで平均分子量は360程度のものがあり、上記蒸気圧を有するオイルの範囲として平均分子量が約200〜1000のものが好ましい。
これは、この平均分子量が200より小さい場合、蒸気圧が上がってしまい揮発し易くなり、1000より大きい場合はオイルの状態がより固体に近付くため、保護層9形成が困難になるためである。
因みに、本実施の形態における保護層に用いるオイルの検出方法としては、電気化学キャパシタから電解液を取り出し、n-ヘキサンを用いた分液ロートにより抽出を行う。抽出液をエバポレーションで濃縮し、n-ヘキサンを除去できる程度に真空乾燥を行う。残存物をGC−MS、NMR、IRを用いて構造解析を行うことにより特定する。
最後に確認のため、特定した構造のオイルを既知試料として液体クロマトグラフィーで測定し、残存物と同じ保持時間であることを確認すると分析の精度が向上し、より好ましい。
また、上記保護層9はリチウム膜8を構成する金属リチウムの失活を抑制するために金属リチウムより大気との反応性が低い化合物で構成されていることが求められる。そのため、保護層9およびリチウム膜8の反応性の大小の判断は、例えば試料として金属リチウムと保護層9を構成する化合物を用意し、それらを大気中に放置して使用された大気の量を測定するなどの公知の測定方法を用いればよく特に限定されない。
本実施の形態において、負極3表裏面へプレドープ用のリチウム膜8を設けるために、蒸着を行った。
これにより、多孔質であるリチウム膜8を形成することができる。これにより、素子1へ電解液を含浸した際に電解液と金属リチウム8aとの接触面積が増え、金属リチウム8aのイオン化を早めるという効果を奏する。
また、保護層9として形成するオイルも液状であるため、蒸着により形成されたリチウム膜8などの表面が複雑な形状であるリチウム供給源であっても、柔軟に形状をリチウム膜8に沿わせることによって保護層9とリチウム膜8とを密に接着させ、リチウムの失活の効果をより高めることができる。
さらに、蒸着により活性化した金属リチウム8aは蒸着源12bの輻射熱をさらに受けることにより、一部の金属リチウム8aが熱拡散を行い、炭素電極層3b表面から内部へ浸透し、内部の炭素材料3cと合金化することがある。これにより、熱拡散を行った金属リチウム8aはリチウムイオンをプレドープする際に、イオン化して炭素電極層3b内部を移動する距離が低減するため、プレドープに要する時間を短縮することが可能である。
また、特に蒸着によりリチウム膜8を形成した場合、リチウム膜8は形成過程において一度気化しているため、常温時よりさらに化学的に活性化しており、雰囲気中でより失活し易くなる。蒸着で得られるリチウム膜は約20μm以下の薄膜であるため集電体3aの単位面積当たりに配設されている金属リチウム8aの量が少ない。そのため、従来のように圧延などによって得られた20μmより大きなシート状の金属リチウムと比べてプレドープに寄与する金属リチウム8aが減少してしまい、負極3の電位上昇が著しくなる。
従って、プレドープに蒸着により形成されたリチウム膜8などをリチウム供給源として用いる場合は、本発明の保護層9が負極3の電位上昇抑制のために特に必要となる。
(性能評価試験)
本実施の形態における電気化学キャパシタに用いられる負極3を実施例とし、保護層9を形成していないことを除いて実施例と構成が同じである負極を比較例として、実施例と比較例においてプレドープ工程後の負極の電位をリチウム電極を用いて測定した。その結果を(表1)に示す。
Figure 0005810271
上記(表1)からもわかるように、実施例ではリチウム膜8上に形成した保護層9により金属リチウム8aの失活を抑え、リチウムイオンのプレドープによる負極3の電位降下の効果が十分に得られている。
なお、負極3へプレドープを行うタイミングは負極3作製直後でも良いし、素子1作製後であってもよく、本実施の形態におけるタイミングに限定されない。
また、本実施の形態においては引き出し端子としてリード線5a、5bを用いたが、これに限定されず、正負の電極が素子1の同じ方向から引き出されるのではなく逆方向から引き出されていてもよい。
以上より、本発明にかかる電気化学キャパシタの製造方法では、リチウム配設工程において形成したリチウム膜の上に飽和炭化水素を主成分とするオイルまたは側鎖がアルキル基であるシリコーンを主成分とするオイルである保護層を形成し、プレドープ工程において、保護層を形成した状態の負極に電解液を含浸して負極の炭素材料へリチウムイオンのプレドープを行った。
化学的に不活性であるこの保護層により、本発明にかかる電気化学キャパシタはプレドープ工程に至るまでに負極の炭素電極層の上へ形成したリチウム膜の特に表面が雰囲気中の化合物と反応してプレドープに寄与しないリチウム化合物となって失活してしまうことを抑えることが可能となる。
本発明にかかる電気化学キャパシタはプレドープ工程において、金属リチウムの表面に上記金属リチウムが化合物を形成することを抑制する保護層を形成したものを用いて負極へリチウムイオンのプレドープを行った。この保護層により、金属リチウムの表面が失活することを抑制するため、負極の電位がより安定して降下し、電気化学キャパシタの信頼性やエネルギー密度の向上を図ることができる。そのため、回生やバックアップに用いられるハイブリッド車用電源などとしての用途が有用である。
1 素子
2 正極
2a、3a 集電体
2b 分極性電極層
3 負極
3b 炭素電極層
3c 炭素材料
4 セパレータ
5a、5b リード線
6 外装ケース
7 封口部材
8 リチウム膜
8a 金属リチウム
9 保護層
10 巻き出し部
11 リチウム膜形成部
11a、12a キャン
11b、12b 蒸着源
12 保護層形成部
13 巻き取り部

Claims (2)

  1. アニオンを吸脱着する正極電極層を金属から成る集電体の表面に形成して正極を作製する正極作製工程と、
    リチウムイオンを吸蔵する負極電極層を金属から成る集電体の表面に形成して負極を作製する負極作製工程と、
    前記正極および前記負極を対向させ、この正極と負極の間にセパレータが介在するように素子を作製する素子作製工程と、
    リチウムイオン供給源を準備するリチウム準備工程と、
    前記素子とリチウムイオンを含む電解液と前記リチウムイオン供給源を外装体に収容する収容工程と、
    リチウムイオンを前記負極電極層の内部へ吸蔵するプレドープ工程とから成り、
    前記リチウム準備工程において準備するリチウムイオン供給源が、蒸着により負極表面へ形成された金属リチウムとこの金属リチウムの表面に形成された保護層とから成り、この保護層は、飽和炭化水素を主成分とするオイルまたは側鎖がアルキル基であるシリコーンを主成分とするオイルから成り、飽和炭化水素を主成分とするオイルは、40℃の雰囲気中において蒸気圧が0.01Pa以下である電気化学キャパシタの製造方法
  2. 前記リチウム準備工程において準備されるリチウムイオン供給源が、箔状の金属リチウムと、この金属リチウムの表面に形成された前記保護層とから成り、このリチウムイオン供給源を前記負極表面へ貼り付ける請求項1に記載の電気化学キャパシタの製造方法。
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