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JP5815367B2 - タンデム型複列アンギュラ玉軸受 - Google Patents
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JP5815367B2 - タンデム型複列アンギュラ玉軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、タンデム型複列アンギュラ玉軸受に関する。
軸受には、ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷することができるアンギュラ玉軸受がある。玉(ボール)と内輪・外輪とは接触角をもっており、接触角が大きくなるほどアキシアル荷重の負荷能力が大きくなり、接触角が小さいほど、高速回転に有利となる。
ところで、転がり抵抗を低減するために、円すいころ軸受に代わるものとして複列アンギュラ玉軸受(タンデム型)がある(特許文献1)。また、このタンデム型複列アンギュラ玉軸受を自動車のトランスファに使用したものがある(特許文献2)。なお、トランスファとは、4WD車で、トランスミッションから来る動力を前後輪に分けて伝える装置であり、通常はデファレンシャル装置(差動装置)も一緒に組み込まれており、これを総称してセンターデフと呼んでいる。また、複列アンギュラ玉軸受とは、単列アンギュラ玉軸受を背面組合せとし、内輪、外輪をそれぞれ一体にした構造で、両方向のアキシアル荷重を負荷することができ、しかも、モーメント荷重に対する負荷能力がある軸受である。
タンデム型複列アンギュラ玉軸受は、図5に示すように、複列の軌道面1a、1bを有する内輪2と、この内輪2の軌道面1a、1bと対応する複列の軌道面3a、3bを有する外輪4と、内輪2および外輪4の各列の軌道面1a、1b、3a、3b間に介装される複列の玉群5、6とを備える。複列の玉群5、6は、それぞれ異なるピッチ円直径をもっている。また、各玉群5、6のボール7,8は内輪2と外輪4との間に配置される保持器9,10に保持されている。
前記特許文献2に記載のデファレンシャル装置は、図6に示すように、デファレンシャルケース101と、このデファレンシャルケース101内に配置される差動減速機構(図外)と、差動減速機構のリングギヤ(図外)に噛合するピニオンギヤ104と、ピニオンギヤ104を支持するピニオン軸105とを備え、ピニオン軸105が軸受106、107を介して回転自在にデファレンシャルケース101内に支持されている。
そして、軸受106、107にそれぞれタンデム型複列アンギュラ玉軸受を使用している。ピニオンギヤ104側に配設される一方の軸受106は、内輪2の大径側端面2a(外輪4よりもピニオンギヤ104側に突出している端面)がピニオンギヤ104の端面104aに圧接するとともに、外輪4の反ピニオンギヤ側の端面4aがケース101の内面に形成された段差面108に圧接している。
他方の軸受107は、内輪2の大径側端面2a(外輪4よりも反ピニオンギヤ側に突出している端面)がピニオンフランジ100の端縁100aに圧接するとともに、外輪4のピニオンギヤ側の端面4aがケース51の内面に形成された段差面109に圧接している。また、ピニオン軸105は、そのピニオンギヤ104側は大径とされて段差部105aが形成され、この段差部105aと他方の軸受107の内輪2との間にスリーブ110が介在されている。
この場合、ピニオン軸105の端部のねじ部111にナット部材(図示省略)を螺合することによって、ピニオンフランジ100を介して軸受106、107に予圧を付与することになる。すなわち、軸受106、107に予圧を付与することによって、軸受支持構造の剛性が増し、ピニオン軸105の位置が安定してリングギヤとの噛み合いが良好となる。
また、軸受106、107の内輪2、外輪4、ボール7,8等は、SUJ2などの軸受鋼にて構成される。
また、特許文献3に示すピニオン軸支持用軸受装置では、ピニオンフロント側軸受が単列アンギュラ玉軸受で、そのアキシアルすきまが、ピニオンリア側軸受のタンデムアンギュラ玉軸受の小径列アキシアルすきまと概略同一と規定されている。これにより、単列アンギュラとタンデムアンギュラ玉軸受との荷重分配の割合の均一化を図っている。
特許第181547号公報 特表2002−52370号公報 特開2004−190728号公報
ところで、ピニオンフロント・リア両軸受がタンデムアンギュラ玉軸受であった場合、従来技術によるすきま設定ができない。このため、前記特許文献3に記載のものでは、ピニオンフロント側軸受を単列アンギュラ玉軸受とし、ピニオンリア側軸受をタンデムアンギュラ玉軸受としている。
しかしながら、ピニオンフロント側の負荷荷重はピニオンリア側と比して小さいものの、面圧過大及び肩乗上げを防止するためには、ピニオンフロント・リアの両軸受をタンデムアンギュラ玉軸受にしなければならない場合がある。このため、従来では、タンデムアンギュラ玉軸受を使用したデファレンシャルは、ピニオンフロント・リアの両軸受ともタンデムアンギュラ玉軸受が一般的である。
このように、ピニオンフロント・リアの両軸受をタンデムアンギュラ玉軸受にした場合、タンデムアンギュラ玉軸受単体での大径列・小径列の荷重分配を均等にしなければ、大径列・小径列のどちらか一方で荷重負荷割合が大きくなり、短寿命となるおそれがある。
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、荷重負荷時において大径列と小径列との荷重負荷割合が均一化され、長寿命化を図ることができるタンデム型複列アンギュラ玉軸受を提供しようとするものである。
本発明のダンデム型複列アンギュラ玉軸受は、複列の軌道面を有する内輪と、この内輪の軌道面と対応する複列の軌道面を有する外輪と、内輪および外輪の各列の軌道面間に、それぞれ異なるピッチ円直径をもって介装される複列の玉群とを備えたタンデム型複列アンギュラ玉軸受であって、荷重無負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅を、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅よりも大きくした内輪及び外輪を有し、荷重負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅と大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅とを同一にした内輪及び外輪となるものである。ここで、組幅とは、この玉軸受全体の軸方向長さである。
本発明のタンデム型複列アンギュラ玉軸受によれば、荷重負荷時において、小径列側と大径列側との荷重負荷割合の均一化を図ることができる。荷重負荷時に組幅が同一となるような荷重とは、予圧荷重であり、例えば、デファレンシャル装置のピニオン軸支持軸受に対し負荷されている初期荷重である。
また、他のダンデム型複列アンギュラ玉軸受は、複列の軌道面を有する内輪と、この内輪の軌道面と対応する複列の軌道面を有する外輪と、内輪および外輪の各列の軌道面間に、それぞれ異なるピッチ円直径をもって介装される複列の玉群とを備えたタンデム型複列アンギュラ玉軸受であって、荷重無負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅を、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅よりも大きくした内輪及び外輪を有し、荷重負荷時においては、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量とを同一にした内輪及び外輪となるものである。このように設定することによって、小径列側にのみボールを収容したときの組幅と大径列側にのみボールを収容したときの組幅とを、安定して同一とすることができる。この際、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量とを、少なくとも、ボール径、初期接触角、内輪の軌道面の曲率、および外輪の軌道面の曲率を含むパラメータに基づいて、同一にすることができる。
保持器材料が、例えば、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、およびポリエーテルエーテルケトンから選ばれた少なくとも一種類からなるものであってもよい。すなわち、保持器をこのようなエンジニアリングプラスチック等の樹脂保持器とすることができる。
保持器には強化材が充填され、その充填率を30%以上とするのが好ましい。強化材が炭素繊維やガラス繊維等の繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)であってもよい。
前記ボールをセラミックス製としてもよい。このように、ボールをセラミックス製とすることによって、従来一般的に使用されていた鋼製のボールを使用した玉軸受に比べて、ボールと、外輪の軌道面及び内輪の軌道面との接触部に作用する転がり摩擦の低減を図れる。すなわち、セラミックス製のボールと、鋼等の硬質金属製の外輪及び内輪とを当接させる為、異種材料同士の接触状態となり、同種金属同士の接触状態に比べて、当接部での摩擦抵抗が低減される。同時に、セラミックス製のボールは、鋼製のボールに比べて弾性変形量が少ないので、当接部に存在するヘルツの接触楕円が小さくなる。さらには、金属に比べて比重が小さく、慣性質量が小さいため、セラミックス製のボール自体の転がり抵抗も小さい。
内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材に窒化処理を施したものであってもよい。ここで、窒化処理とは、アルミニウム、クロム、モリブデンなどの窒化物形成元素を含む鋼を、アンモニアまたは窒素を含んだ雰囲気中に暴露し、オーステナイト化温度以下の温度域で加熱することにより、鋼の表面近傍(1mm以内)に窒素を浸透させて硬化させる処理である。耐磨耗性、耐疲労性、耐腐食性、耐熱性の向上を図ることができる。
内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材に結晶粒微細化強化を施したものであってもよい。結晶粒微細化強化処理は、例えば、浸炭窒化された組織を低温で2次焼き入れする処理である。この結晶粒微細化強化を施すことによって、鋼材の結晶粒が小さくなって疲労強度が向上する。
内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材が浸炭鋼であってもよい。ここで、浸炭鋼とは、浸炭後,肌焼(はだやき)を行って表面を硬化させた鋼である。また、浸炭とは、鋼の表面部の炭素含有量を増加させるため,炭素を含む媒剤中で加熱する処理である。コークス,木炭などによる固体浸炭,シアン化物による液体浸炭,一酸化炭素,メタンなどによるガス浸炭がある。浸炭鋼は、耐摩耗性が大きく内部は粘り強い。
浸炭鋼としては、クロムモリブデン鋼であっても、クロム鋼であってもよい。クロムモリブデン鋼には、SMn420やSCM435等がある。クロム鋼にはSCr415やSCr420等がある。
このタンデム型複列アンギュラ玉軸受は、デファレンシャルケースと、このデファレンシャルケース内に配置される差動減速機構と、差動減速機構のリングギヤに噛合するピニオンギヤと、ピニオンギヤを支持するピニオン軸とを備えたデファレンシャル装置に用いることができる。
本発明のタンデム型複列アンギュラ玉軸受では、荷重負荷時において、小径列側と大径列側との荷重負荷割合の均一化を図ることができ、長寿命化を図ることができる。
特に、小径列側にのみボールを収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみボールを収容したときの軸方向弾性変位量とを同一となるように設定することによって、荷重負荷割合の均一化をより安定して図ることができる。
ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチック等の樹脂保持器を用いれば、重量が軽く摩擦係数が小さいため、軸受起動時のトルク損失や保持器摩耗の低減に好適となる。特に、樹脂保持器では、射出成形で形成することができるので、特異形状の保持器でも製作し易い利点がある。
充填率を30%以上とされた強化材が充填されたものでは、保持器の強度向上を図ることができ、タンデム型複列アンギュラ玉軸受として安定する。
セラミックス製のボールを用いれば、軽量化を図ることができ、しかも、接触面積を小さくでき、軸受の低トルク化を実現できる。
内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材に、窒化処理を施したもの、結晶粒微細化強化を施したもの、又は浸炭鋼を用いたものでは、それぞれの鋼材の特質を生かせることができ、一層の長寿命化等を図ることができる。
前記したようなタンデム型複列アンギュラ玉軸受を、デファレンシャル装置に用いることによって、高品質のデファレンシャル装置を提供することができる。
本発明の実施形態を示すタンデム型複列アンギュラ玉軸受の要部拡大断面図である。 前記図1に示すタンデム型複列アンギュラ玉軸受において、小径側にのみボールを収容した状態の組幅を示し、(a)は荷重無負荷時の要部拡大断面図であり、(b)は荷重負荷時の要部拡大断面図である。 前記図1に示すタンデム型複列アンギュラ玉軸受において、大径側にのみボールを収容した状態の組幅を示し、(a)は荷重無負荷時の要部拡大断面図であり、(b)は荷重負荷時の要部拡大断面図である。 前記図1に示すタンデム型複列アンギュラ玉軸受を用いたデファレンシャル装置の断面図である。 従来のタンデム型複列アンギュラ玉軸受の断面図である。 従来のタンデム型複列アンギュラ玉軸受を用いたデファレンシャル装置の断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明に係るタンデム型複列アンギュラ玉軸受を示し、このタンデム型複列アンギュラ玉軸受は、複列の軌道面11a、11bを有する内輪12と、この内輪12の軌道面11a、11bと対応する複列の軌道面13a、13bを有する外輪14と、内輪12および外輪14の各列の軌道面11a、11b、13a、13b間に介装される複列の玉群15、16とを備える。玉群15、16はそれぞれ異なるピッチ円直径D1、D2をもっている。この場合、D1<D2とされる。内輪12の外径面には、軌道面11a、11b間に周方向溝23が形成されている。
玉群15、16はそれぞれ保持器19、20にて保持される。一方の保持器19は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケット30が形成されたリング状の本体部19aと、この本体部19aの軸方向内方端部に外径方向に突出する外鍔部19bと、本体部19aの軸方向内方端部に内径方向に突出する内鍔部19cとを備える。また、他方の保持器20は、周方向に沿って所定ピッチで複数のポケット31が形成されたリング体からなる。
そして、各保持器19、20のポケット30、31には、転動体としてのボール27,28が保持される。
また、小径側のボール27の接触角α1を大径側のボール28の接触角α2よりも大きくしている。ボール27(28)の内輪12の軌道面11a(11b)との接触点Pa(Pb)と、ボール27(28)の外輪14の軌道面13a(13b)との接触点Qa(Qb)とを結ぶ直線ma(mb)を形成するとともに、この軸受の中心軸線Lと直交する直線nを形成する。この直線ma(mb)と直線nとが成す角度α1(α2)が接触角である。そして、本発明では、α1>α2としている。接触角が大きいとアキシアル荷重の負荷能力が大きくなり、逆に、接触角が小さいと高速回転に有利となる。このため、本発明では、接触角が大きい利点と、接触角が小さい利点の両者を生かすため、小径側のボールの接触角を大径側のボールの接触角よりも大きくした。
保持器19、20は樹脂保持器である。この樹脂としてはエンジニアリングプラスチックが好ましい。ここで、エンジニアリングプラスチックとは、合成樹脂のなかで主に耐熱性が優れ、強度が必要とされる分野に使うことができるものであって、エンプラと略される。また、エンジニアリングプラスチックは、汎用エンジニアリングプラスチックとスーパーエンジニアリングプラスチックとがあり、この保持器19,20に用いるエンジニアリングプラスチックには両者を含む。以下に代表的なものを掲げる。なお、これらはエンジニアリングプラスチックの例示であって、エンジニアリングプラスチックが以下のものに限定されるものではない。また、この樹脂保持器19,20では、例えば射出成形にて形成することができる。
汎用エンジニアリングプラスチックには、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアセタール(POM)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)等がある。また、スーパーエンジニアリングプラスチックには、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリメチルベンテン(TPX)、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド11,12(PA11,12)、フッ素樹脂、ポリフタルアミド(PPA)等がある。
保持器19、20をこのような樹脂保持器とする場合、強化材(樹脂強化材)を充填するのが好ましい。その充填率を30%以上とするのが好ましい。強化材が炭素繊維やガラス繊維等の繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)であってもよい。ここで、炭素繊維とは、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維である。前者の原料を使った炭素繊維はPAN(Polyacrylonitrile)、後者を使った炭素繊維はPITCHと区分される。広義の意味で炭素の集合体である。グラファイトの結合により高い強度を得ている。グラファイトとは、炭素から成る元素鉱物である。炭素繊維は、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性、耐引張力などに優れ、アルミニウムなどの金属に比べても軽量である利点がある。また、ガラス繊維とは、溶融したガラスを細く引き伸ばし急冷固化して作られた繊維状材料である。繊維形式によって長繊維、短繊維に分類され、また組成によってアルカリガラス繊維と含アルカリガラス繊維に大別される。ガラス繊維は、耐食性,耐熱性,耐湿性,電気絶縁性に優れる。このため、樹脂に炭素繊維やガラス繊維を混ぜることで、軽量かつ強度のある素材となる。
ところで、この軸受では、内輪12、外輪14、ボール27,28のいずれかの部材を、SCM420(クロムモリブデン鋼)、SCM435(クロムモリブデン鋼)、SCr415(クロム鋼)等の浸炭鋼にて構成したものである。ここで、浸炭鋼とは、浸炭後,肌焼(はだやき)を行って表面を硬化させた鋼である。また、浸炭とは、鋼の表面部の炭素含有量を増加させるため,炭素を含む媒剤中で加熱する処理である。
浸炭は、例えば次のような熱処理工程を行う。まず、所定温度(例えば、840℃)の予熱を所定時間(例えば、30分)だけ行い、その後、所定高温(例えば、930℃)に加熱して浸炭工程(例えば、90分〜150分程度)を行う。次に、例えば30分程度拡散を行って、例えば、850℃程度の焼き入れを30分程度行う。
また、内輪12、外輪14、ボール27,28のいずれかの部材に窒化処理を施したものであってもよい。ここで、窒化処理とは、アルミニウム、クロム、モリブデンなどの窒化物形成元素を含む鋼を、アンモニアまたは窒素を含んだ雰囲気中に暴露し、オーステナイト化温度以下の温度域で加熱することにより、鋼の表面近傍(1mm以内)に窒素を浸透させて硬化させる処理である。耐磨耗性、耐疲労性、耐腐食性、耐熱性の向上を図ることができる。
また、内輪12、外輪14、およびボール27,28のうち少なくともいずれか1つの部材に結晶粒微細化強化を施したものであってもよい。結晶粒微細化強化処理(FA処理)は、例えば、浸炭窒化された組織を低温で2次焼入れする処理である。この結晶粒微細化強化を施すことによって、鋼材の結晶粒が小さくなって疲労強度が向上する。
FA処理は、1次焼入時においてマルテンサイト中に十分な炭素を固溶させつつ、鋼のAc1変態点を下げる目的で窒化処理を施し、その後、2次焼入工程保持温度を低温化させて、微細な結晶粒を得る方法である。
なお、内輪12や外輪14には、SUJ2等の軸受鋼を用いることができる。また、ボール27,28は、鋼球(SUJ2)、ステンレス鋼球(SUS440C)、炭素鋼球(SWCH10)、さらにはセラミックス球等にて構成できる。
ボール27,28にセラミックス製のものを用いると、軸受鋼製の内輪12、及び外輪14に対して異種材料の組合せとなり、また鋼製転動体に比べて比重も小さいことから、軸受内部の摩擦及び磨耗が軽減される。ボール27、28を構成するセラミックの種類は特に限定しないが、例えば、窒化珪素(Si34)、ジルコニア(ZrO2)、炭化珪素(SiC)、アルミナ(Al23)等が、好適に使用できる。摩擦特性、加工性、比重等を考慮すると特に窒化珪素が望ましい。又、セラミックス製転動体の成形法に関しても、特に限定せず、常圧、加圧、HIP等、何れの成形法によるものでも利用可能である。これらセラミックス製転動体は、金型成形若しくは造粒成形によって一次成形され、常圧焼結、加圧焼結、HIP焼結等で二次成形して得られた素球を、ラッピング等で仕上げて完成球とされる。この中で最も安価な素球を得られるのは造粒成形−常圧焼結であるが、更に高性能を要求するならHIP焼結若しくは加圧焼結を施したものが望ましい。
図4は本発明にかかるタンデム型複列アンギュラ玉軸受を使用したデファレンシャル装置を示し、このデファレンシャル装置は、デファレンシャルケース51と、このデファレンシャルケース51内に配置される差動減速機構52と、差動減速機構52のリングギヤ53に噛合するピニオンギヤ54と、ピニオンギヤ54を支持するピニオン軸55とを備え、ピニオン軸55が軸受56、57を介して回転自在にデファレンシャルケース51内に支持されている。
そして、軸受56、57にそれぞれ前記図1や図2に示すタンデム型複列アンギュラ玉軸受を使用している。ピニオンギヤ54側に配設される一方の軸受56は、ピニオン軸55のピニオンギヤ54の端面54aに軸受56の内輪12の端部33、つまり端面12aが圧接するとともに、外輪14の反ピニオンギヤ側の端面14aがケース51の内面に形成された段差面58に圧接している。
他方の軸受57は、内輪12の端部33、つまり端面12a(反フランジ側の端面)がピニオンフランジ50の端縁50aに圧接するとともに、外輪14のピニオンギヤ側の端面14aがケース51の内面に形成された段差面59に圧接している。また、一方の軸受56と他方の軸受57の内輪12との間にスリーブ60が介在されている。
この場合、ピニオン軸55の端部のねじ部61にナット部材62を螺合することによって、ピニオンフランジ50を介して軸受56、57に予圧を付与することになる。
ところで、本発明のタンデム型複列アンギュラ玉軸受では、荷重無負荷時において、小径列側にのみボール27を収容したときの組幅A0(図2(a)参照)を、大径列側にのみボール28を収容したときの組幅B0(図3(a)参照)よりも大きく設定する。すなわち、A0>B0とする。ここで、組幅とは、この玉軸受全体の軸方向長さである。
そして、荷重負荷時において、小径列側にのみボール27を収容したときの組幅A1(図2(b)参照)と、大径列側にのみボール28を収容したときの組幅B1(図3(b)参照)とを同一に設定する。荷重負荷時に組幅は同一となるような荷重とは、予圧荷重であり、例えば、デファレンシャル装置のピニオン軸支持軸受に対し負荷されている初期荷重である。
また、予圧荷重負荷時において、小径側(小径列)にボール27を収容したとき(図2(b)に示す状態)の軸方向弾性変形量δa1と、大径側(大径列)にボール28を収容したとき(図3(b)に示す状態)軸方向弾性変形量δa2とを同一となるように設定する。この場合、ボール27(28)の球径、初期接触角、内輪12の軌道面11a(11b)の曲率、外輪14の軌道面13a(13b)の曲率等のパラメータに基づいて設定する。
ここで、軸方向弾性変形量δa1(δa2)は次の数1(数2)で表される。この数1及び数2において、Da1(Da2)はボール径(鋼球径)であり、α1(α2)は初期接触角(荷重無負荷時の接触角)であり、C1は内輪12の軌道面11a及び外輪14の軌道面13aの曲率によって決まる弾性定数である。C2は内輪12の軌道面11b及び外輪14の軌道面13bの曲率によって決まる弾性定数である。
Figure 0005815367
Figure 0005815367
また、数1(数2)におけるP0はボール1個にかかる荷重であって、次の数3(数4)で表される。ここで、Zはボール個数であり、Faは予圧(アキシアル荷重)である。
Figure 0005815367
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本発明のタンデム型複列アンギュラ玉軸受では、荷重負荷時において、小径列側と大径列側との荷重負荷割合の均一化を図ることができ、長寿命化を図ることができる。
特に、小径列側にのみボール27を収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみボール28を収容したときの軸方向弾性変位量とを同一となるように設定することによって、荷重負荷割合の均一化をより安定して図ることができる。
ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチック等の樹脂保持器を用いれば、重量が軽く摩擦係数が小さいため、軸受起動時のトルク損失や保持器摩耗の低減に好適となる。特に、樹脂保持器では、射出成形で形成することができるので、特異形状の保持器でも製作し易い利点がある。
充填率を30%以上とされた強化材が充填されたものでは、保持器の強度向上を図ることができ、タンデム型複列アンギュラ玉軸受として安定する。
セラミックス製のボール27、28を用いれば、軽量化を図ることができ、しかも、接触面積を小さくでき、軸受の低トルク化を実現できる。
内輪12、外輪14、およびボール27、28のうち少なくともいずれか1つの部材に、窒化処理を施したもの、結晶粒微細化強化を施したもの、又は浸炭鋼を用いたものでは、それぞれの鋼材の特質を生かせることができ、一層の長寿命化等を図ることができる。
前記したようなタンデム型複列アンギュラ玉軸受を、デファレンシャル装置に用いることによって、高品質のデファレンシャル装置を提供することができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、このタンデム型複列アンギュラ玉軸受は、デファレンシャル装置以外の種々の機械、装置、工具等に使用することができる。また、玉群15,16のボール27、28の数、球径等は任意に変更できる。さらに、前記実施形態では、玉群15,16は2列であったが、3列以上であってもよい。玉群15、16の各ピッチ円直径D1、D2の差も、使用する機械、装置、工具等に応じて種々変更できる。使用する浸炭鋼としては、SCM420(クロムモリブデン鋼)、SCM435(クロムモリブデン鋼)、SCr415(クロム鋼)に限るものではなく、他の浸炭鋼であってもよい。
また、保持器19,20を、鉄板保持器(金属板を打ち抜いて形成されたもの)としてもよい。金属板としては、冷間圧延鋼板(SPC)や熱間圧延軟鋼板(SPH)等の圧延鋼板、及びばね鋼等を使用することができる。また、冷間圧延鋼板(SPC)や熱間圧延軟鋼板(SPH)であれば、その表面に浸炭窒化処理やガス軟窒化処理等の表面硬化処理を施すのが好ましい。保持器19、20を鉄板製とすることによって、保持器の剛性を高めることができ、長期に亘って安定してボール27,28を保持することができる。しかも、耐油性に優れ、油への浸漬による材質劣化を防止できる。
11a、13a 軌道面
12 内輪
14 外輪
15,16 玉群
19,20 保持器
27,28 ボール
51 デファレンシャルケース
52 差動減速機構
54 ピニオンギヤ
55 ピニオン軸

Claims (10)

  1. 複列の軌道面を有する内輪と、この内輪の軌道面と対応する複列の軌道面を有する外輪と、内輪および外輪の各列の軌道面間に、それぞれ異なるピッチ円直径をもって介装される複列の玉群とを備えたタンデム型複列アンギュラ玉軸受であって、
    荷重無負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅を、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅よりも大きくした内輪及び外輪を有し、荷重負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅と大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅とを同一にした内輪及び外輪となることを特徴とするタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  2. 複列の軌道面を有する内輪と、この内輪の軌道面と対応する複列の軌道面を有する外輪と、内輪および外輪の各列の軌道面間に、それぞれ異なるピッチ円直径をもって介装される複列の玉群とを備えたタンデム型複列アンギュラ玉軸受であって、
    荷重無負荷時において、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅を、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの組幅よりも大きくした内輪及び外輪を有し、荷重負荷時においては、小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量とを同一にした内輪及び外輪となることを特徴とするタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  3. 小径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量と、大径列側にのみ玉群のボールを収容したときの軸方向弾性変位量とを、少なくとも、ボール径、初期接触角、内輪の軌道面の曲率、および外輪の軌道面の曲率を含むパラメータに基づいて、同一にしたことを特徴とする請求項2に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  4. 保持器材料が、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイト、およびポリエーテルエーテルケトンから選ばれた少なくとも一種類からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  5. 保持器には強化材が充填され、その充填率を30%以上としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  6. 前記ボールをセラミックス製としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  7. 内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材に窒化処理を施したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  8. 内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材に結晶粒微細化強化を施したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  9. 内輪、外輪、およびボールのうち少なくともいずれか1つの部材が浸炭鋼であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
  10. 前記請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のタンデム型複列アンギュラ玉軸受であって、デファレンシャルケースと、このデファレンシャルケース内に配置される差動減速機構と、差動減速機構のリングギヤに噛合するピニオンギヤと、ピニオンギヤを支持するピニオン軸とを備えたデファレンシャル装置に用いられることを特徴とするタンデム型複列アンギュラ玉軸受。
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