JP5832032B2 - 血球成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
生体を構成する細胞の多くでは、成熟後にも、核をはじめとする細胞内小器官(オルガネラ)は維持されている。これに対して一部の血球は、例えば赤血球や血小板のように、核等のオルガネラを欠く。
したがって、成人型(非胎児型)赤血球造血における分化成熟は、核やミトコンドリアなどのオルガネラの大半を捨てるという、一般の細胞の分化成熟とはまったく異なる作業である。血小板生成においても、その成熟過程は、巨核球のオルガネラを含む細胞質全体が数千個の細胞膜につつまれた小胞となって遊離するとともに、核は脱核するという、劇的なものである。このような脱核やオルガネラの廃棄あるいは細胞の小体への再構成においてはアポトーシス機構が活用されているという仮説が1990年代の終わりに提唱され、その検証が重要な研究テーマとなっている。また、骨髄における赤血球分化成熟において造血島と呼ばれる構造体が形成される。これは、マクロファージを中心にして赤芽球が集合したものであるため、骨髄マクロファージの赤血球分化成熟への関与が予想されていた。2000年代早々に調製されたDNA分解酵素II遺伝子破壊マウスが、予想外にも貧血による胎性致死となり、骨髄マクロファージの細胞質内に未処理の貪食核が多数残っていたことから、マクロファージの関与は、赤芽球由来の脱核物等の貪食処理にあることが明らかとなった。
巨核球系の最終分化すなわち血小板生成に関しては、従来、その制御因子は明らかになっていなかった[非特許文献10, 11]。
本発明は、血球(特に赤血球や血小板)の成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。また本発明は、RP S19多量体及び/又は血球への成熟促進活性を有する物質を有効成分として含む、血球の成熟促進剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、RP S19多量体及び/又は血球への成熟促進活性を有する物質を用いる血球の製造方法の提供を目的とする。
さらに本発明者らは、血球への成熟過程においてRGS3だけでなく、他のR4 RGSファミリーの発現も誘導されることを見出した。
RP S19遺伝子異常を有する先天性貧血症(Diamond-Blackfan anemia)では、リボソームの生成不全による血球の成熟阻害が発症のメカニズムとして推定されていた。しかし本発明者らは、RP S19が、翻訳装置であるリボソームと全く関係のない形式、すなわちリボゾーム外機能として造血にかかわっていることを見出した。すなわち、本来細胞内のタンパク質であるRP S19が細胞外に遊離して赤芽球の成熟を促進する機能を有しており、その機能異常により貧血発症の機序を説明できることを見出した。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の発明に関する。
〔1〕以下の工程を含む、血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法;
(a)被検物質を血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。
〔2〕血球前駆細胞がC5a受容体を発現し、該C5a受容体を介してR4 RGSファミリーの増加を促進することを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔3〕RP S19の存在下で行うことを特徴とする、〔2〕に記載の方法。
〔4〕工程(a)の前に、被検物質をRP S19単量体と混合する工程を含み、
当該工程で得られた被検物質とRP S19単量体の混合物を工程(a)の被検物質として用いる、〔2〕又は〔3〕に記載の方法。
〔5〕血球前駆細胞が赤芽球である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕工程(b)において、さらに赤血球を検出する工程を含む、〔5〕に記載の方法。
〔7〕工程(b)において、さらに赤芽球の脱核を検出する工程を含む、〔5〕に記載の方法。
〔8〕工程(b)がR4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加を検出する工程である、〔5〕に記載の方法。
〔9〕工程(b)がR4 RGSファミリータンパク質の増加を検出する工程である、〔5〕に記載の方法。
〔10〕R4 RGSファミリーがRGS1、RGS3、RGS16、RGS18からなる群より選択される、〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕血球前駆細胞が巨核球である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕工程(b)において、さらに血小板を検出する工程を含む、〔11〕に記載の方法。
〔13〕〔1〕から〔12〕に記載の方法から取得された血球成熟促進活性を有する物質。
〔14〕RP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質を有効成分として含む、血球への成熟促進剤。
〔15〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔14〕に記載の促進剤。
〔16〕RP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質と血球前駆細胞を接触させる工程を含む、赤血球及び/又は血小板の製造方法。
〔17〕血球前駆細胞が赤芽球及び/又は巨核球である、〔16〕に記載の方法。
〔18〕RP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質を対象に投与する工程を含む、血球への成熟を促進する方法。
〔19〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔18〕に記載の方法。
〔20〕血球への成熟促進剤の製造におけるRP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質の使用。
〔21〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔20〕に記載の使用。
〔22〕血球への成熟を促進させるためのRP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質。
〔23〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔22〕に記載のRP S19多量体及び/又は物質。
〔24〕血球への成熟を促進させるためのRP S19多量体及び/又は〔13〕に記載の物質の使用。
〔25〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔24〕に記載の使用。
〔101〕以下の工程を含む、血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法;
(a)被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)C5a受容体を介する血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞の成熟を促進した被検物質を選択する工程。
〔102〕RP S19の存在下で行うことを特徴とする、〔101〕に記載の方法。
〔103〕工程(a)の前に、被検物質をRP S19単量体と混合する工程を含み、
当該工程で得られた被検物質とRP S19単量体の混合物を工程(a)の被検物質として用いる、〔101〕又は〔102〕に記載の方法。
〔104〕血球前駆細胞が赤芽球である、〔101〕から〔103〕のいずれかに記載の方法。
〔105〕工程(b)の血球前駆細胞の成熟を検出する工程が赤血球を検出する工程である、〔104〕に記載の方法。
〔106〕工程(b)の血球前駆細胞の成熟を検出する工程が赤芽球の脱核を検出する工程である、〔104〕に記載の方法。
〔107〕工程(b)の血球前駆細胞の成熟を検出する工程がRGS1、RGS3、RGS16、RGS18のうち少なくとも1つの遺伝子の発現の増加を検出する工程である、〔104〕に記載の方法。
〔108〕工程(b)の血球前駆細胞の成熟を検出する工程がRGS1、RGS3、RGS16、RGS18のうち少なくとも1つのタンパク質の増加を検出する工程である、〔104〕に記載の方法。
〔109〕血球前駆細胞が巨核球である、〔101〕から〔103〕のいずれかに記載の方法。
〔110〕工程(b)の血球前駆細胞の成熟を検出する工程が血小板を検出する工程である、〔109〕に記載の方法。
〔111〕〔101〕から〔110〕に記載の方法から取得された血球成熟促進活性を有する物質。
〔112〕RP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質を有効成分として含む、血球への成熟促進剤。
〔113〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔112〕に記載の促進剤。
〔114〕RP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質と血球前駆細胞を接触させる工程を含む、赤血球及び/又は血小板の製造方法。
〔115〕血球前駆細胞が赤芽球及び/又は巨核球である〔114〕に記載の方法。
〔116〕RP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質を対象に投与する工程を含む、血球への成熟を促進する方法。
〔117〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔116〕に記載の方法。
〔118〕血球への成熟促進剤の製造におけるRP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質の使用。
〔119〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔118〕に記載の使用。
〔120〕血球への成熟を促進させるためのRP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質。
〔121〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔120〕に記載のRP S19多量体及び/又は物質。
〔122〕血球への成熟を促進させるためのRP S19多量体及び/又は〔111〕に記載の物質の使用。
〔123〕赤血球及び/又は血小板を誘導するための、〔122〕に記載の使用。
特に本発明により、RP S19多量体のC5a受容体への結合が造血にかかわっていることがわかった。したがって、RP S19多量体もまた、血球の成熟促進剤の候補物質として有用である。
さらに本発明者らは、血球への成熟過程においてRGS3だけでなく、他のR4 RGSファミリーの発現も誘導され、赤血球の分化のマーカーと成り得ることを明らかにした。
本発明者らはこれらの知見に基づいて、C5a受容体を介する血球の成熟を促進することが、エリスロポエチンやトロンボポエチンなどの増殖因子に反応しない治療抵抗性の造血不全症などの治療戦略として有効であることを明らかにした。すなわち本発明は、以下の工程を含む血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。
(a)被検物質を血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。
上記方法において血球前駆細胞は、C5a受容体を発現する血球前駆細胞であることが好ましい。またR4 RGSファミリーの増加は、C5a受容体を介するR4 RGSファミリーの増加であることが好ましい。本発明においてR4 RGSファミリーは、「R4 RGSファミリー遺伝子」あるいは「R4 RGSファミリータンパク質」と表現することも出来る。
また本発明は、以下の工程を含む血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。
(a)被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)C5a受容体を介する血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞の成熟を促進した被検物質を選択する工程。
また本発明は、以下の工程を含む、被検物質の血球前駆細胞の成熟促進作用を検出する方法に関する。
(a)被検物質を血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。
あるいは本発明は、以下の工程を含む被検物質の血球前駆細胞の成熟促進作用を検出する方法に関する。
(a)被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)C5a受容体を介する血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞の成熟を促進した被検物質を選択する工程。
なお本発明において血球とは、骨髄系幹細胞が分化した結果得られる血液中の成分の総称を意味する。本発明の血球としては、赤血球および血小板が挙げられるがこれらに限定されない。
また後述のように、これらの被検物質とRP S19の混合物を被検物質として用いることも出来る。
赤血球系の最も幼若な細胞は前赤芽球である。成人期では骨髄内で赤血球系前駆細胞にエリスロポエチンが働いて前赤芽球に分化する。前赤芽球は塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球の段階を経て成熟し、網状赤血球となり、1〜2日の間骨髄内に留まった後血流中に出る。さらに1〜2日経ると成熟した赤血球となる。本発明の赤芽球には、これら前赤芽球、塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、網状赤血球などが含まれる。
また、赤血球の分化度を示す細胞表面マーカーとして、グリコホリンA(CD235)とトランスフェリン受容体(CD71)が知られている。あるいは次の細胞表面マーカーの組み合わせも赤血球の分化度を示す細胞表面マーカーとして用いることができる。
・ラクトフェリン(Lf)とC5a受容体(CD88)
・FAS ligand(CD178)とC5a受容体(CD88)
すなわち、赤芽球ではこれらのマーカーの発現が認められる。従って本発明の赤芽球には、これらのマーカーの発現が認められる細胞が含まれる。
また、巨核球から血小板への成熟過程において、その形態の変化が観察される。
巨核球の細胞質部分が変形して巨核球胞体突起と呼ばれる円形あるいは数珠状の突起を形成し、やがて突起の根元にくびれが生じ、最終的にはそれらが断片として分離し小円形の血小板が形成される。
本発明において血球への成熟とは、血球前駆細胞の血球への分化を意味する。例えば赤芽球の赤血球への分化においては、
・赤芽球の脱核
・R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加
・細胞内のR4 RGSファミリータンパク質の量の増加
・トランスフェリン受容体の発現の減少
などの現象が観察される。したがってこれらの現象の少なくとも1つ、好ましくは複数、より好ましくは全てが観察された場合、赤芽球が赤血球へ成熟したと判定することが出来る。本発明においては、R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加、あるいは細胞内のR4 RGSファミリータンパク質の量の増加が好ましい赤血球への分化指標として挙げられる。
RGS(Regular of G protein signaling)タンパク質は3量体Gタンパク質αサブユニットの内因性GTP加水分解活性を促進し、Gタンパク質シグナル伝達を抑制する因子である。本発明者らは、RGSタンパク質のうちR4 RGSファミリーが赤芽球から赤血球への分化の指標となることを明らかにした。従って本発明によれば、R4 RGSファミリーの発現を指標に赤血球への分化を判定することが出来る。すなわち本発明は、R4 RGSファミリーの発現を指標とする赤血球の選択方法に関する。R4 RGSファミリーの発現は当業者に周知の方法によって確認することが出来る。R4 RGSファミリーとしてはRGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS8、RGS13、RGS16、RGS18、RGS21などが挙げられる(Pharmacol. Ther. (2007) 116, 473-495)。以下にこれらの遺伝子の塩基配列及び当該塩基配列によってコードされるアミノ酸配列のGenbankアクセッション番号を示す。
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ヒトRGS18の塩基配列:NM_130782(Update Date 10-APR-2011)
ヒトRGS18のアミノ酸配列:NP_570138(Update Date 10-APR-2011)
マウスRGS18の塩基配列:NM_022881(Update Date 13-MAR-2011)
マウスRGS18のアミノ酸配列:NP_075019(Update Date 13-MAR-2011)
ラットRGS18の塩基配列:NM_001047084(Update Date 26-DEC-2010)
ラットRGS18のアミノ酸配列:NP_001040549(Update Date 26-DEC-2010)
ヒトRGS21の塩基配列:NM_001039152(Update Date 10-APR-2011)
ヒトRGS21のアミノ酸配列:NP_001034241(Update Date 10-APR-2011)
マウスRGS21の塩基配列:XM_889451(Update Date 19-OCT-2010)
マウスRGS21のアミノ酸配列:XP_894544(Update Date 19-OCT-2010)
また例えば巨核球の血小板への分化においては、形態変化として、巨核球における胞体突起の形成やそこから分裂してできた小型の血小板などが観察される。したがってこのような形態の変化が観察された場合、巨核球が血小板への成熟(または分化)が進んだと判定することが出来る。
また本発明において「成熟の促進」とは、血球前駆細胞から血球への分化の程度が進行することを意味する。本発明においては、わずかでも分化の程度が進行する限り、「成熟の促進」を意味する。
本発明においては、薬剤処理によりC5a受容体の発現が誘導されている血球前駆細胞を用いることが可能である。アポトーシス刺激を受けた細胞においてC5a受容体が誘導されることは公知であるので(Nishiura H et al. J Cell Biochem. 2005 94, 540-553.)、アポトーシスを惹起する薬剤(例えば、manganese IIなど)であればいかなるものであってもC5a受容体の発現を誘導することが出来る。
天然の血球前駆細胞としては、例えば、ヒトやラット、マウスなどから単離された赤芽球、巨核球、骨髄細胞から分化誘導された赤芽球(Wada H et al. Blood (1990) 75: 505-511.)、骨髄細胞から分化誘導された巨核球(特開平9−313173)などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの細胞は、当業者に公知の方法によって取得することが出来る。例えば、骨髄から単離したCD34(+)細胞を、IL-3, GM-CSF, SCF, EPOを含有する培地中で一定期間培養することによって取得することが可能である。その他、特開平9−313173に記載の方法などにより取得することも可能である。
血球前駆細胞由来の細胞株としては、K562細胞(ATCC Number CCL-243), TF-1細胞(ATCC Number CRL-2003), UT-7細胞(Miura Y et al. Prog. Clin. Biol. Res. 1990 356: 259-270.)などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの細胞は例えば、ATCCや市販の細胞メーカーなどを通して、あるいは上記文献に記載の方法などにより取得することが可能である。
さらに本発明においては、C5a受容体を強制発現する血球前駆細胞を用いることも可能である。C5a受容体を強制発現する血球前駆細胞は、C5a受容体をコードするDNAを外来遺伝子発現用のベクターに挿入し、血液細胞で当該遺伝子を発現させることによって得ることが出来る。
血球前駆細胞にC5a受容体が発現していることは、抗C5a抗体を用いたFACS解析やウェスタンブロッティングなどの方法により確認することができる。FACS解析では、蛍光標識された抗C5a抗体を血球前駆細胞と反応させた後、血球前駆細胞からの蛍光を測定することにより該血球前駆細胞にC5a受容体が発現していることを確認することができる。また、ウェスタンブロッティングでは、血球前駆細胞から抽出されたタンパク質をニトロセルロース膜などにブロッティングし、抗C5a抗体を反応させた後、酵素標識された二次抗体などを用いて発色反応などを行い、該抗C5a抗体を検出することにより、該血球前駆細胞にC5a受容体が発現していることを確認することができる。本発明のC5a受容体を発現する血球前駆細胞は、このような方法によって確認される細胞が含まれる。
C5a受容体遺伝子、及び該遺伝子によってコードされるタンパク質は、ヒト、マウス、ラット等において知られている。各々の動物におけるC5a受容体の塩基配列及びアミノ酸配列のGenbankアクセッション番号を以下に示す。また、ヒトのC5a受容体遺伝子の塩基配列を配列番号:1に、当該遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。当業者であれば、公知のC5a受容体の配列情報をもとに、ヒトやマウス、その他の動物のC5a受容体を取得することが可能である。
ヒトC5a受容体の塩基配列:NM_001736(Update Date 21-MAR-2010)
ヒトC5a受容体のアミノ酸配列:NP_001727(Update Date 21-MAR-2010)
マウスC5a受容体の塩基配列:NM_001173550(Update Date 05-APR-2010)
マウスC5a受容体のアミノ酸配列:NP_001167021(Update Date 05-APR-2010)
ラットC5a受容体の塩基配列:NM_001173550(Update Date 30-APR-2010)
ラットC5a受容体のアミノ酸配列:NP_001167021(Update Date 30-APR-2010)
よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M 尿素、0.4% SDS、0.1×SSCの条件下では、より相同性の高いDNAを単離できると期待される。高い相同性とは、塩基配列全体で少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。また、変異体における、変異するアミノ酸数は、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、より好ましくは5アミノ酸以内、さらに好ましくは3アミノ酸以内であり、よりさらに好ましくは2アミノ酸以内である。
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて判定することができる。
また、被検物質がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、C5a受容体が発現している細胞へ導入することによって両者を接触させることが出来る。
血球前駆細胞の成熟は、例えば次のようにして行うことが出来る。
例えば、血球前駆細胞が赤芽球の場合、
1)赤血球を検出する
2)赤芽球の脱核を検出する
3)R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加を検出する
4)R4 RGSファミリータンパク質の増加を検出する
などの方法によって、赤芽球が赤血球に成熟したことを検出することが出来る。これら成熟の指標は、任意の1つを選んで評価の対象とすることが出来る。あるいは複数を評価の対象とすることが出来る。本発明においては、R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加、あるいは細胞内のR4 RGSファミリータンパク質の量の増加を指標とすることが好ましい。あるいはさらに付加的に、赤血球を検出する、および/または赤芽球の脱核を検出する、などの工程を含むことが出来る。R4 RGSファミリーの具体例については上述した通りである。
赤血球の検出:蛍光標識された抗トランスフェリン受容体および抗グリコホリンA抗体を用いてFACS解析を行うことにより、細胞表面マーカーがトランスフェリン受容体(+)/グリコホリンA(+)の細胞群を赤芽球、トランスフェリン受容体(-)/グリコホリンA(+)の細胞群を赤血球として検出する。
あるいは、抗トランスフェリン受容体抗体および抗グリコホリンA抗体に代えて、次の抗体を用いてもよい。
・抗ラクトフェリン(Lf)抗体および抗C5a受容体(CD88)抗体
・抗FAS ligand(CD178)抗体および抗C5a受容体(CD88)抗体
FACS解析は、当業者に公知の方法によって実施することができる。
赤芽球の脱核の検出:血球前駆細胞(例えば、K562細胞など)に、核移行シグナルをつないだ蛍光タンパク質(例えば、RFP(赤色蛍光タンパク質)など)をコードする遺伝子を含む発現ベクターを導入し、核が赤色の蛍光を発する血球前駆細胞をあらかじめ樹立する。本血球前駆細胞をスクリーニングに用い、赤色の蛍光を観察することにより脱核を検出する。
R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加の検出:血球前駆細胞からRNAを調製し、R4 RGSファミリーに特異的なプライマーを用いてRT-PCRを行い、対照(未処理の血球前駆細胞)と比較することで、R4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加を検出する(Nishiura H et al. Lab Invest. 2009 Jun;89(6):676-94.)。
R4 RGSファミリータンパク質の増加の検出:抗R4 RGSファミリー抗体を用いたウェスタンブロッティング、あるいはFACS解析などを行い、対照(未処理の血球前駆細胞)と比較することで、R4 RGSファミリータンパク質の増加を検出する(Nishiura H et al. Lab Invest. 2009 Jun;89(6):676-94.)。
RP S19 多量体とC5a受容体によるアポトーシスの促進機構には、RGSファミリーの発現の亢進が含まれることが知られている。本発明者らは、血球の成熟過程において、R4 RGSファミリーの発現が亢進することを見出した。従って、R4 RGSファミリー遺伝子の発現の亢進やタンパク質の増加は、赤芽球の赤血球への成熟を検出するための指標となり得る。
本発明においては、被検物質を接触させない場合と比較して、R4 RGSファミリー遺伝子の発現量やタンパク質の量が増加した場合に、血球前駆細胞(例えば赤芽球)の血球(例えば赤血球)への成熟が促進されたと判定される。あるいは、血球前駆細胞のR4 RGSファミリー遺伝子の発現量やタンパク質の量を時系列で測定した結果、時間の進行とともにそれらの増加が認められた場合、血球前駆細胞(例えば赤芽球)の血球(例えば赤血球)への成熟の進行が促進されたと判定される。
また本発明においては、R4 RGSファミリーを発現している場合、血球前駆細胞(例えば赤芽球)の血球(例えば赤血球)への成熟が促進されたと判定される。
本発明のR4 RGSファミリーとしては、好ましくはRGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS8、RGS13、RGS16、RGS18、RGS21など、特に好ましくはRGS1、RGS3、RGS16、RGS18などを例示することが出来るが、これらに限定されない。
血球前駆細胞の成熟がC5a受容体の介在によって引き起こされたことは、例えば次のような対照実験によって確認することが出来る。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、更に付加的に、
・被検物質を、C5a受容体を発現していない血球前駆細胞に接触させる工程、
・血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
・血球前駆細胞の成熟を促進しない被検物質を選択する工程、
を含むことが出来る。
上の「血球前駆細胞の成熟を検出する工程」は「血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程」とすることも出来る。
これらの付加的な工程は、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させた場合に血球前駆細胞の成熟を促進する物質を選択した後に行うことが出来る。あるいは、本発明のスクリーニング方法と並行して行うことができる。
C5a受容体を発現していない血球前駆細胞は、当業者に公知の方法によって調製することが出来る。例えば、アンチセンス核酸、siRNAなどの方法によってC5a受容体をコードする遺伝子の発現を抑制することにより、C5a受容体の発現が抑制された血球前駆細胞を取得することが出来る。あるいは、C5a受容体に対する抗体により、C5a受容体の機能を阻害することが出来る。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、更に付加的に、
・C5a受容体と被検物質を接触させる工程、
・C5a受容体と被検物質との結合を検出する工程、及び
・C5a受容体と結合する被検物質を選択する工程、
を含むことが出来る。
これらの付加的な工程は、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させた場合に血球前駆細胞の成熟を促進する物質を選択した後に行うことが出来る。あるいは、これらの付加的な工程により、C5a受容体と結合する物質をあらかじめ選択することが出来る。このように選択された物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させた結果、血球前駆細胞の成熟が促進された場合、当該物質は、C5a受容体を介して血球前駆細胞の成熟を促進させた物質と判断することが出来る。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、更に付加的に、
・C5a受容体アンタゴニストの存在下で、被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
・血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
・血球前駆細胞の成熟を促進しない被検物質を選択する工程、
を含むことが出来る。
上の「血球前駆細胞の成熟を検出する工程」は「血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程」とすることも出来る。
これらの付加的な工程は、C5a受容体アンタゴニストの非存在下で、血球前駆細胞の成熟を促進する物質を選択した後に行うことが出来る。あるいは、本発明のスクリーニング方法と並行し行うことができる。
C5a受容体アンタゴニストとしては、例えば以下が挙げられる。
・ペプチド性アンタゴニスト(例えば、Ac-Phe-[Orn-Pro-dCha-Trp-Arg](Finch A M et al. J Med Chem. 1999 Jun 3;42(11):1965-74.)やNMePhe-Lys-Pro-dCha-dCha-dArg(Konteatis Z D et al. J Immunol. 1994 Nov 1;153(9):4200-5.)など)
・非ペプチド性アンタゴニスト(例えばW-54011(Sumichika H et al. J Biol Chem. 2002 Dec 20;277(51):49403-7.など))
・抗C5a受容体中和抗体
・補体C5a
具体的には、C5a受容体をコードするDNAを、pSV2neo, pcDNA I, pCD8 などの外来遺伝子発現用のベクターに挿入し、動物細胞などで当該遺伝子を発現させる。発現に用いるプロモーターとしては SV40 early promoter (Rigby In Williamson (ed.), Genetic Engineering, Vol.3. Academic Press, London, p.83-141(1982)), EF-1 α promoter (Kimら Gene 91, p.217-223 (1990)), CAG promoter (Niwa et al. Gene 108, p.193-200 (1991)), RSV LTR promoter (Cullen Methods in Enzymology 152, p.684-704 (1987), SR α promoter (Takebe et al. Mol. Cell. Biol. 8, p.466 (1988)), CMV immediate early promoter (Seed and Aruffo Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, p.3365-3369 (1987)), SV40 late promoter (Gheysen and Fiers J. Mol. Appl. Genet. 1, p.385-394 (1982)), Adenovirus late promoter (Kaufman et al. Mol. Cell. Biol. 9, p. 946 (1989)), HSV TK promoter 等の一般的に使用できるプロモーターであれば何を用いてもよい。
動物細胞に遺伝子を導入することで外来遺伝子を発現させるためには、エレクトロポレーション法 (Chu, G. et al. Nucl. Acid Res. 15, 1311-1326 (1987))、リン酸カルシウム法 (Chen, C and Okayama, H. Mol. Cell. Biol. 7, 2745-2752 (1987))、DEAEデキストラン法 (Lopata, M. A. et al. Nucl. Acids Res. 12, 5707-5717 (1984); Sussman, D. J. and Milman, G. Mol. Cell. Biol. 4, 1642-1643 (1985))、リポフェクチン法 (Derijard, B. Cell 7, 1025-1037 (1994); Lamb, B. T. et al. Nature Genetics 5, 22-30 (1993); Rabindran, S. K. et al. Science 259, 230-234 (1993))等の方法があるが、いずれの方法によってもよい。
あるいは、C5a受容体が細胞抽出液内に発現した状態であれば、該細胞抽出液に被検物質を添加することにより両者を接触させることが出来る。
また、C5a受容体が精製された状態であれば、精製標品に被検物質を添加することにより両者を接触させることが出来る。
例えばバイオセンサーによって結合を検出する場合、上述の方法によって調製したC5a受容体を測定装置に導入すればよい。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは、C5a受容体と被検物質との間の相互作用を微量のポリペプチドを用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である(例えばBIAcore、Pharmacia製)。
(a)RP S19単量体の存在下で、被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して血球前駆細胞のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。
また本発明は、以下の工程を含む、血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。あるいは本発明は、以下の工程を含む、被検物質の血球前駆細胞の成熟促進作用を検出する方法に関する。
(a)RP S19単量体の存在下で、被検物質を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(b)C5a受容体を介する血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
(c)被検物質が存在しない場合と比較して、血球前駆細胞を成熟させた被検物質を選択する工程。
このようなスクリーニング方法においても、血球前駆細胞の成熟は、C5a受容体の介在によって引き起こされたものであることが好ましい。血球前駆細胞の成熟がC5a受容体の介在によって引き起こされたものであるか否かは、上述のような対照実験により確認することが出来る。
このような方法によって選択された物質は、RP S19の多量体化を促進することにより、血球前駆細胞の成熟を促進する物質と考えられる。上記スクリーニング方法、血球前駆細胞の成熟促進作用の検出方法によって選択された物質が、RP S19非存在下では血球の成熟を促進せず、かつRP S19を多量体化することが確認された場合、当該選択された物質は、「RP S19の多量体化を促進することにより血球前駆細胞の成熟を促進する物質」と判定することが出来る。血球の成熟の促進の確認、RP S19との結合の確認は上述の方法によって確認することが出来る。このような物質もまた、造血不全症の治療または予防のための薬剤の候補物質になりうる。また、後述の更なるスクリーニング方法の被検物質とすることもできる。
あるいは本発明は、以下の工程を含む、血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。あるいは本発明は、以下の工程を含む、被検物質の血球前駆細胞の成熟促進作用を検出する方法に関する。
(a)RP S19単量体と被検物質を接触させる工程、
(b)RP S19の多量体化を検出する工程、および
(c)被検物質が存在しない場合と比較して、RP S19の多量体化を促進させた被検物質を選択する工程。
RP S19の多量体化は、ゲル濾過などのクロマトグラフィーにかけることによって確認することが出来る。あるいはウェスタンブロッティング法によって確認することも出来る。
本発明においてRP S19単量体を使用した場合、RP S19の多量体化を介する血球への成熟促進作用を検出することが出来る。本発明のスクリーニング方法においては、血球の成熟に代えてRP S19の多量体化を検出してもよい。
ヒトRP S19遺伝子の塩基配列:NM_001022(Update Date 07-MAY-2010)
ヒトRP S19タンパク質のアミノ酸配列:NP_001013(Update Date 07-MAY-2010)
マウスRP S19遺伝子の塩基配列:NM_023133(Update Date 01-MAY-2010)
マウスRP S19タンパク質のアミノ酸配列:NP_075622(Update Date 01-MAY-2010)
ラットRP S19遺伝子の塩基配列:NM_001037346(Update Date 01-FEB-2010)
ラットRP S19タンパク質のアミノ酸配列:NP_001032423(Update Date 01-FEB-2010)
(a)被検物質をRP S19と混合する工程、
(b)工程(a)で得られた混合物を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(c)血球前駆細胞におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(d)対照と比較して血球前駆細胞のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。
また本発明は、以下の工程を含む血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法に関する。あるいは本発明は、以下の工程を含む被検物質の血球前駆細胞の成熟促進作用を検出する方法に関する。
(a)被検物質をRP S19と混合する工程、
(b)工程(a)で得られた混合物を、C5a受容体を発現する血球前駆細胞に接触させる工程、
(c)血球前駆細胞の成熟を検出する工程、および
(d)対照と比較して血球前駆細胞の成熟を促進した被検物質を選択する工程。
(a)C5a受容体に被検物質を接触させる工程、
(b)該C5a受容体と被検物質との結合を検出する工程、及び
(c)該C5a受容体と結合する被検物質を選択する工程。
このようなスクリーニング方法において、接触工程、検出工程、選択工程は、上述の方法によって行うことが出来る。
(i)RP S19多量体
(ii)本発明のスクリーニング方法によって得られる血球への成熟促進活性を有する物質
加えて本発明は、上の(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方の成分の、血球への成熟促進剤の製造における使用に関する。あるいは本発明は上の(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方の成分の、血球への成熟促進における使用に関する。加えて本発明は、上の(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方の成分と薬学的に許容される担体を配合する工程を含む、血球への成熟促進剤の製造方法に関する。
更に本発明は、上の(i)及び(ii)のいずれか一方又は両方の成分の、血球への成熟促進用組成物の製造における使用に関する。
また、RP S19をグルタチオン S-トランスフェラーゼ蛋白質との融合ポリペプチドとして、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えポリペプチドとして宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えポリペプチドはグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。
また、ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。ポリペプチド分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)を使用すればよい。宿主細胞へのベクターの導入は、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法を用いて行うことができる。
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulliganら, Nature (1979) 277, 108)、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushimaら, Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)、CMVプロモーター等を持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば、薬剤(ネオマイシン、G418等)により判別できるような薬剤耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えば、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13等が挙げられる。
また、in vivoでポリペプチドを産生させる系としては、例えば、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。この動物または植物にRP S19をコードするDNAを導入し、動物または植物体内でRP S19を産生させ、回収する。
例えば、RP S19をコードするDNAを、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生されるポリペプチドをコードする遺伝子との融合遺伝子として調製する。次いで、この融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ移植する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から、RP S19を得ることができる。トランスジェニックヤギから産生されるポリペプチドを含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702)。
また、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。カイコを用いる場合、RP S19をコードするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより、このカイコの体液からRP S19を得ることができる(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。
さらに、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、RP S19をコードするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えば、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)に感染させ、本タバコの葉よりRP S19を得ることができる(Julian K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
なお、本発明のRP S19を精製前又は精製後に適当な蛋白質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり部分的にペプチドを除去することもできる。蛋白質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リジルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グルコシダーゼ等が用いられる。
また多量体化したRP S19の取得方法も公知である。例えば、関節リウマチ患者の滑膜病変部の抽出液から逆相クロマトグラフィー等の方法により精製することによりRP S19多量体を取得することができる(Nishiura H et al. J. Biol. Chem. 1996 271, 878-882.)がこの方法に限定されない。
RP S19多量体としては、二量体、三量体、四量体、六量体などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明において「RP S19多量体」は、「RP S19 oligomer」と表現することも出来る。
また、患者の年齢、症状により適宜投与量を選択することができる。例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の薬剤はこれらの投与量に制限されるものではない。
(i)RP S19多量体
(ii)本発明のスクリーニング方法によって得られる血球への成熟促進活性を有する物質
RP S19多量体は、上述の方法で取得することが出来る。また本発明のRP S19多量体は、RP S19をコードするDNAより当該DNAの翻訳産物を調製し、当該翻訳産物に対し、翻訳産物の多量体化を促進する物質を接触させることによって取得することも出来る。本発明のRP S19多量体には、このような方法によって得られるRP S19多量体も含まれる。
あるいは、赤血球や血小板の減少に伴う疾患を有する患者由来の血球前駆細胞の代わりに、健常者由来の血球前駆細胞を用いることも出来る。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
〔実施例1〕RP S19多量体・C5a受容体機構のヘミン誘導性K562細胞赤芽球分化への影響
アポトーシス機構の赤血球分化への関与を確認するために、緑色蛍光蛋白質(GFP)発現K562 細胞(GFP-K562 細胞) からアポトーシス抵抗性亜株を分離した。すなわち、親細胞に0.5 mM manganese (II)を用いてアポトーシスを誘導し、9 日後に生き残っていた細胞をアポトーシス耐性細胞 (MnApoRGFP-K562 細胞)として回収した。続いて、5 ml の control GFP-K562 細胞またはMnApoRGFP-K562 細胞 (5 x 105 cells/ml) を、30 nM ヘミン(鉄剤) と1 nM サイクロスポリン(免疫抑制剤)含有DMEM glucose-rich 培養液下に培養し、赤芽球への分化過程を比較した。すなわち、3日間隔で5 ml の 同じ培養液を添加しながら、8日間の形態学的変化を 蛍光顕微鏡FV300 (x 3000)で観察した。図1aのごとく、アポトーシス抵抗性亜株(MnApoRGFP-K562 細胞)では赤血球分化過程の明らかな遅延が観察された。次に、赤血球分化にリボソーム蛋白質S19多量体(RP S19 oligomer )とC5a 受容体 (C5aR)によるアポトーシス増幅機構が関与している可能性を探るために、 この培養系において細胞の一部を経日的にサンプルとして分離し、両GFP-K562細胞内でのRP S19 多量体 の生成とC5aR および二型トランスグルタミナーゼ (TGII) の発現変化をウエスタン・ブロット法で観察し、比較した。すなわち、 細胞内蛋白質を2% sodium dodecyl sulfate・2% 2-Mercaptoethanol含有9 M Urea 組成のローディング溶液 (107 cells/1 ml loading buffer) で抽出し、 10 μl ずつを12% polyacrylamide gel 内で電気泳動し、 Immobilon-PSQ membraneに転写した。 1% Block AceTM で1時間 22℃で前処理し、1次抗体(anti-C5aR IgG, anti-RP S19 IgG, あるいはanti-TGII rabbit IgG) を1時間 22℃で反応させた。 2次抗体(horseradish peroxidase (HRP)-conjugated anti-rabbit IgG goat IgG)を30分間22℃で反応させた後、 結合 HRP を ECL Plus Western blot detection systemTMで観察した。図1bのごとく、アポトーシス抵抗性亜株( MnApoRGFP-K562 細胞)では、C5aRの遺伝子発現が遅延し、RP S19 多量体 の生成は8日目でも認めることができず、TGII遺伝子の発現も明らかに低いレベルにとどまっていた。(なお、ここではRP S19多量体 (oligomers) をdimer で代表させて観察した。)
本発明者らは、 機能的な架橋化多量体を形成できないGln137Asn (Q137N)-RP S19変異体を過剰発現させた細胞ではRP S19 dimerとC5aRによるアポトーシスの促進が阻害されること (Nishiura et al., (2005) S19 ribosomal protein dimer augments metal-induced apoptosis in a mouse fibroblastic cell line by ligation of the C5a receptor. J Cell Biochem 94, 540-553. )をすでに公表している。また、RP S19 dimerとC5aRによるアポトーシス促進機構にはregulator of G protein signaling 3 (RGS3)の遺伝子発現の亢進が含まれていること( Nishiura et al., (2009) Pro- and anti-apoptotic dual functions of the C5a receptor: involvement of regulator of G protein signaling 3 and extracellular signal-regulated kinase.Lab Invest 89(6):676-94)をすでに公表している。そこで、赤血球分化へRP S19 多量体とC5aRが関与していることを明らかにするために、GFP-K562 細胞に、野生型RP S19、Q137N-RP S19あるいは RGS3をそれぞれ過剰発現させたRPS19/GFP-K562細胞、Q137N/GFP-K562細胞、RGS3/GFP-K562細胞をそれぞれ調製し、ヘミンを用いた赤血球分化誘導系において、コントロールのGFP-K562 細胞 (Mock/GFP-K562細胞) と比較した。図2aは、24日後の形態学的変化を蛍光顕微鏡 FV300 (x 3000)で観察したものである。RPS19/GFP-K562細胞とRGS3/GFP-K562細胞では赤血球分化が促進し、Q137N/GFP-K562細胞では明らかに分化が遅延していた。
図2bは、図2aの結果を定量的に見るために、赤血球分化度を示す細胞表面マーカーであるglycophorin Aとtransferrin receptorの発現と消退とを、5% fetal bovine serum含有PBS下に、それぞれに対する抗体と30分間4℃で反応させ、FACS Caliber flow cytometerで観察したものである。赤芽球と赤血球をそれぞれtransferrin receptor(+)/glycophorin A(+)とtransferrin receptor(-)/glycophorin A(+)で表現した。Q137N/GFP-K562細胞では、RPS19/GFP-K562細胞に比して、有意差を持って赤血球への分化が遅延していた。逆に、RGS3/GFP-K562細胞では非常に高い率で赤血球へ分化した。
なお、Mock/GFP-K562細胞の場合には、24日目までにアポトーシスに陥る細胞が多数認められたため、見掛け上赤血球分化が抑制されているように見えているものである。この点に関して、Q137N/GFP-K562細胞ではアポトーシスに陥る細胞が明らかに少なく、図2aに見られるように幼若で活きのよい形態を示した。
実際に赤血球分化へRP S19 多量体が関与しているならば、骨髄の造血環境内に当該分子が存在しているはずであり、また、それは造血が亢進している骨髄では濃度が増加することが期待される。これらを生体で確認するために、正常モルモットと、3日間200 g生体あたり1 mlの血液を心臓より吸引して瀉血誘導性骨髄過形成に導いたモルモットを用意した。正常モルモットからcontrol 大腿骨を、また、瀉血3日後の動物から hyper-hematopoietic大腿骨を回収し、直ちに両端を切断して、片端から500 μl PBSを3回注入し他端から骨髄洗浄液を得た。タンパク質濃度を4 mg protein/1 ml PBSに調整したのち、それぞれ20 μl サンプルを12% polyacrylamide gel 中で電気泳動し、Immobilon-PSQ membrane に転写した。1% Block AceTM・anti-RP S19 rabbit IgG・HRP-conjugated anti-rabbit IgG goat IgGを反応させた後、HRPをECL kitで観察した(ヒトとモルモットの RP S19 はアミノ酸配列が完全に一致しているので、抗 RP S19 抗体はどちらにも同じ反応性を示す)。それぞれの骨髄洗浄液中にRP S19 monomerとRP S19 dimerとが認められ、過形成骨髄洗い液ではdimerの濃度が明らかに増加しているのが分かる(図3)。なお、RP S19 monomerは、正常の血液血漿中にも存在していることを本発明者らはすでに公表している ( Semba et al., (2010) A plasma protein indistinguishable from ribosomal protein S19: Conversion to a monocyte chemotactic factor by a factor XIIIa-catalyzed reaction on activated platelet membrane phosphatidylserine in association with blood coagulation. Am J Pathol 176(3):1542-51)。過形成骨髄洗い液中でmonomerが減少しているのは、造血組織の増大のために血液洞のスペースが減少していることを反映した結果と考えられる。
骨髄洗い液中のRP S19 dimer (oligomer) の濃度を、サンドイッチエライザ法で定量し、正常骨髄と過造血中の骨髄の間で比較した。すなわち、骨髄洗浄液(4 mg protein/1 ml PBS)を50% Block AceTM/PBS で希釈した50 μlサンプルを、anti-RP S19 rabbit IgGでコーティングした96-well immune plateに加えて反応させたのち、抗体と結合したRP S19 dimer を更にビオチン化 anti-RP S19 rabbit IgGとアビジン化HRP複合体と反応させ、HRPの量をDABの発色量としてELISA leaderの490nmでの吸光度で測定した。図4aのグラフは精製 RP S19 組換え体を用いた定量線であり、これにより骨髄洗浄液タンパク質 1 mg あたりの RP S19 oligomer 量を、図4bおよびcのグラフ下記の計算式のごとく定量した。過造血中の骨髄中には正常状態に比し 2.5 倍高い濃度の RP S19 oligomer が存在する計算になっている。ただし、この方法では、RP S19 の monomer と oligomer とを区別できない。図3のウエスタン・ブロット法でのそれぞれの骨髄洗い液中の monomer と dimer の比を考慮すると、過造血中の骨髄中には正常に比し更に数倍高い濃度の RP S19 oligomer が存在すると考えられる。
なお、精製 RP S19 組換え体は次のように作製した。
肝臓HepG2細胞のTotal RNAを鋳型にRT-PCR法にてRP S19cDNAを作製し、pET11a蛋白発現用ベクターに組み込んだ(pET-RP S19)。pET-RP S19を導入したBL21(DE3)Lys-S株を用いた大腸菌蛋白質発現系を利用して、リコンビナントRP S19(rRP S19)を準備した。500 ml LB buffer中のBL21(DE3)Lys-S株濃度がA600で0.5に達すると500mM IPTGを添加し、BL21(DE3)Lys-S株濃度がA600で2になるまで培養した。
BL21(DE3)Lys-S株を遠心法で回収し、50 mlの20mMTris-HCl pH8.0 200mM NaClで再懸濁した。ソニケイションで細胞内蛋白質を抽出し、イオン交換(DEAE-sephadex/SP-5PW)・逆相(C4)カラムを通してrRP S19を単離精製した。純度は、SDS-PAGE法にて確認し、A280を指標に1mg/ml濃度のものを使用時まで-70℃で貯蔵した。
RP S19 多量体 と C5a は同じ C5a 受容体に結合することから、免疫学的にも交叉反応性が期待できる。図5aはそれをウエスタン・ブロット法で調べたものである。すなわち、野生型 RP S19 遺伝子を導入した HL-60 細胞 (wild-type RP S19-HL-60) および Gln137Asn 変異 RP S19 遺伝子を導入した HL-60 細胞 (Q137N-RP S19-HL-60) を、0.5nM manganese (II) によりアポトーシスに誘導した24時間後に、細胞抽出液を作成し、それぞれ20 μl サンプルを12% polyacrylamide gel で電気泳動してImmobilon-PSQ membrane に転写した。1% Block AceTMで前処理後、anti-RP S19 rabbit IgG または抗ヒト C5a 抗体 (anti-C5a rabbit IgG) で反応させ、次にHRP 標識 anti-rabbit IgG goat IgGを反応させた後、HRPをECL kitで可視化した。抗 ヒト C5a 抗体は RP S19 多量体 とより強く交叉反応することが分かる(Q137N-RP S19-HL-60 内でも微量の RP S19 多量体 が生成されているのは HL-60 細胞の元々の遺伝子産物として正常な RP S19 がある量存在しているためと考えられる)。なお、抗ヒト C5a 抗体はモルモット血漿中の C5 とは反応しなかった(データは示していない)。そこで、図5bに示す実験では、モルモット100 g生体あたり50 μg の anti-C5a rabbit IgG もしくは control rabbit IgG を腹腔に投与する直前 (day 0)、1日後 (day 1)および2日後 (day 2) に心臓採血して血中ヘモグロビン濃度を比較することで、抗ヒト C5a 抗体による骨髄 RP S19 多量体 中和の赤血球造血に及ぼす影響を観察した(グラフでは day 0 のヘモグロビン濃度を 100% とした割合で表示している)。anti-C5a rabbit IgG 投与の方が明らかに強い貧血状態を示しているのが分かる。なお、control rabbit IgG 投与でも軽度の貧血がみられるのは、血中ヘモクロビン量などを測定するのに毎回 1 ml の心臓採血が必要なために失血性貧血を起こすことによる。
K562 細胞は、ヘミンの代わりにフォルボールエステルの存在下で培養すると、低率ながら、血小板産生細胞に分化することが知られている。そこで、図2に示したものと類似の培養実験をフォルボールエステル存在下で行った。すなわち、5 ml の Mock/GFP-K562細胞, RPS19/GFP-K562細胞, Q137N/GFP-K562細胞, RGS3/GFP-K562細胞 (5 x 105 cells/ml) を、16 nM phorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) 含有DMEM glucose-rich 培養液下に培養しつつ、3日間隔で5 ml の 同じ培養液を添加し、6日後の形態学的変化を FV300 (x 3000)で観察した。赤血球分化の場合と同様に、野生型 RP S19 過剰産生細胞の場合には高率に、また、RGS3 過剰産生細胞の場合には更に高率に、血小板産生細胞に分化した。一方、Gln137Asn-RP S19 過剰産生細胞の場合には、逆に、この分化は抑制された(図6)。
実際の血小板造血における骨髄 RP S19 多量体 の役割を調べるために、図5に示したものと全く同じ実験を行い、経日的に採血した心臓血内の血小板数を測定した。結果は、IgG 投与直前 (day 0) の血小板密度を 100% とした割合で示してある。anti-C5a rabbit IgG 投与の方が明らかに強い血小板減少症を示しているのが分かる(図7)。なお、control rabbit IgG 投与でも軽度の血小板減少症がみられるのは、やはり、血小板密度などを測定するのに毎回 1 ml の心臓採血が必要なための失血によるものである。
K562細胞を通常は、DMEM培養液・10%FBS・4.5gグルコース・100Uペニシリン/ストレプトマイシン・30μMヘミンの条件で分化誘導するが、分化誘導補助目的で、さらに0.125mM塩化マンガンを加えた(通常のアポトーシス誘導能(0.5mM)の4分の1濃度)。Day0/Day3/Day6/Day12/Day15に細胞を回収し、細胞表面マーカーであるグリコホリンA(CD235a)とトランスフェリン受容体(CD71)を指標に赤血球への分化誘導補助能を検討した。
CD235(+/-)/CD71(++)はK562前赤芽球様細胞を、CD235(+)/CD71(++)はK562好塩基性赤芽球様細胞を、CD235(+)/CD71(+)はK562多染色性赤芽球様細胞を、CD235(+)/CD71(+/-)はK562正染色性赤芽球様細胞または網状赤血球をそれぞれ表わす。K562細胞は前赤芽球(pro-erythroblast)よりも上流に位置するCD71非陽性の細胞で、マンガン無添加培養ではCD71陽性になるために7日程度必要であったが、マンガン添加培養では3日目にCD71陽性が確認できたことから、マンガン添加による強いアポトーシス作用によりK562細胞の分化誘導が補助され、赤芽球形成までの成熟日数が短縮された。一方、それ以降の分化誘導は逆に阻害された(図8−1)。
同じK562細胞を用いた分化誘導の評価系を用いて、既成の赤血球への分化誘導指標であるCD235/CD71と新しい指標であるラクトフェリン(Lf)/C5a受容体(CD88)とを比較検討した。Day0/Day3/Day6/Day12/Day15に細胞を回収し、Lf/CD88を指標に赤血球への分化誘導能を検討した。
Lf(+)/CD88(-)はK562前赤芽球様細胞を、Lf(+)/CD88(+)はK562塩基性赤芽球様細胞を、Lf(+/-)/CD88(+)はK562多染色性赤芽球様細胞を、Lf(+/-)/ CD88(+/-)はK562正染色性赤芽球様細胞または網状赤血球をそれぞれ表わす。Lf/CD88はCD235/CD71と同等のK562細胞分化誘導指標になることが示された。また、マンガン添加によりK562細胞の分化誘導が補助され、赤芽球形成までの成熟日数が短縮された。一方、それ以降の分化誘導は逆に阻害された(図8−2)。
同じK562細胞を用いた分化誘導の評価系を用いて、既成の赤血球への分化誘導指標であるCD235/CD71と新しい指標であるFAS ligand(CD178)/C5a受容体(CD88)とを比較検討した。Day0/Day3/Day6/Day12/Day15に細胞を回収し、CD178/CD88を指標に赤血球への分化誘導能を検討した。
CD178(+)/CD88(-)はK562前赤芽球様細胞を、CD178(+)/CD88(+)はK562塩基性赤芽球様細胞を、CD178(+/-)/CD88(+)はK562多染色性赤芽球様細胞を、CD178(+/-)/CD88(+/-)はK562正染色性赤芽球様細胞または網状赤血球をそれぞれ表わす。CD178/CD88はCD235/CD71と同等のK562細胞分化誘導指標になることが示された。また、マンガン添加によりK562細胞の分化誘導が補助され、赤芽球形成までの成熟日数が短縮された。一方、それ以降の分化誘導は逆に阻害された(図8−3)。
HL-60細胞にデルタラクトフェリン・デルタアネキシンA3またはデルタラクトフェリン・野生型アネキシンA3 cDNAを強制発現した。16 nMフォルボールミリステイトを加えたDMEM溶媒・10% FBSで3日間培養し、マクロファージ様に分化させた。マクロファージ様HL-60細胞にRP S19 dimerの代用としてC5a/RP S19(10-7 M)を添加し、0/18/24時間ごとに細胞を回収し、定法に従いウェスタンブロッティング実験のサンプルにした。 その結果、RGS3のタンパク質発現が、時間経過に伴いデルタラクトフェリン・デルタアネキシンA3強制発現HL-60細胞でのみ上昇した。マクロファージでは、通常デルタラクトフェリン・デルタアネキシンA3が発現していないので、 RGS3遺伝子発現が観察されない。しかし、強制発現させると、好中球様に性状が変化することでRGS3遺伝子発現を上昇させた(図9)。アポトーシスおよび血球成熟の過程にデルタラクトフェリン(δLf)とデルタアネキシンA3(δANXA3)が以下のように関与していると考えられる。RP S19多量体がアポトーシス細胞から放出されると、アポトーシス細胞C5a受容体に結合する。RP S19 C末端12アミノ酸残基部分がデルタラクトフェリンに追加結合する。デルタラクトフェリンは転写因子であり、核に移行してRGS3遺伝子などの発現を誘導する(図10)。
K562細胞(5x106 cells/10 ml)をDMEM溶媒に4.5gグルコース・30 μMヘミンを加えて培養し、3日間隔で2.5 mlの同じ溶媒を加えた。3/6/9/12日毎に細胞を回収し、100 μLのSDS Loading Buffer(6MUrea)で溶解した。 10 μLを12% SDS-GELに流し、ブロティング膜に転写した後、R4 RGSファミリー(ここではRGS1/RGS3/RGS16/RGS18)および他のRGSファミリー(ここではRGS14)の各抗体で反応させた。 その結果、R4 RGSファミリーでは発現が上昇したが、他のファミリーであるRGS14では発現の変化がなかった(図11)。
特に本発明により、RP S19多量体のC5a受容体への結合が造血にかかわっていることがわかった。すなわち、RP S19が赤芽球並びに巨核球のC5a受容体に作用することで赤芽球の脱核や巨核球の前血小板生成を含む最終成熟を促すことがわかった。また本発明により、赤血球への成熟に伴いR4 RGSファミリーの発現が増加することがわかった。本発明で得られたこれらの知見は、造血不全症など、赤血球や血小板の減少に伴う疾患の新たな治療法の確立に有用である。
Claims (11)
- 以下の工程を含む、赤血球への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法であって、R4 RGSファミリーがRGS1、RGS3、RGS16、RGS18からなる群より選択される、方法;
(a)被検物質とRP S19単量体の混合物を赤芽球に接触させる工程、
(b)赤芽球におけるR4 RGSファミリーの増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して赤芽球のR4 RGSファミリーの増加を促進した被検物質を選択する工程。 - 工程(b)において、さらに赤血球を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 工程(b)において、さらに赤芽球の脱核を検出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
- 工程(b)がR4 RGSファミリー遺伝子の発現の増加を検出する工程である、請求項1に記載の方法。
- 工程(b)がR4 RGSファミリータンパク質の増加を検出する工程である、請求項1に記載の方法。
- 以下の工程を含む、血小板への成熟促進活性を有する物質のスクリーニング方法;
(a)被検物質とRP S19単量体の混合物を巨核球に接触させる工程、
(b)巨核球におけるRGS3の増加を検出する工程、および
(c)対照と比較して巨核球のRGS3の増加を促進した被検物質を選択する工程。 - 工程(b)において、さらに血小板を検出する工程を含む、請求項6に記載の方法。
- 工程(b)がRGS3遺伝子の発現の増加を検出する工程である、請求項6に記載の方法。
- 工程(b)がRGS3タンパク質の増加を検出する工程である、請求項6に記載の方法。
- RP S19多量体を有効成分として含む、血小板への成熟促進剤。
- RP S19多量体と巨核球を接触させる工程を含む、血小板の製造方法。
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