以下に、本発明にかかる中継装置、中継衛星および衛星通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる中継衛星の実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の中継衛星200は、受信アンテナ21−1〜21−N(Nは2以上の整数)、受信部201、接続部31、送信部202および送信アンテナ40−1〜40−Nを備える。図1では、中継衛星の全体構成のうち、中継衛星に搭載される中継装置の構成を示している。また、本実施の形態では、受信アンテナの数と送信アンテナの数を同じとしているが、受信アンテナの数と送信アンテナの数は異なっていてもよい。
本実施の形態の中継衛星は、受信アンテナ21−1〜21−Nで受信した信号に対して、後述する信号処理を実施し、送信アンテナ40−1〜40−Nから送信することにより信号を中継する。
本実施の形態では、広帯域信号を、低いサンプリング速度、処理速度のデバイスを用いて中継することが可能な中継衛星および衛星通信システムについて説明する。
図2は、図1に示した中継衛星200における受信部の構成例を示す図である。説明の都合上、図2では、接続部31と、中継対象とする信号の送信元装置である送信局101,103,104,105と、中継衛星にコマンド信号を送信する地上局である制御局110と、についても記載している。受信アンテナ21−1〜21−Nは、各受信ビームのビームエリアからの信号を受信する。図2では、広帯域ビームエリア100と、狭帯域ビームエリア102の2つのビームエリアが存在する例を示している。広帯域ビームエリア100には、広帯域信号を送信する送信局101が存在し、狭帯域ビームエリア102には、狭帯域信号を送信する送信局103,104,105が存在する。なお、本実施の形態では、広帯域信号とは、後述するようにAD変換器、分波部、合波部およびDA変換器で処理可能な帯域幅を超える帯域幅を有する信号を示す。
図2に示したように、中継衛星200の受信部201は、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10と、受信アナログスイッチマトリックス(第1のスイッチ部)22と、バンドパスフィルタ(BPF)23−1〜23−Nと、ミキサ24−1〜24−Nと、ローカル生成部25と、原振26と、バンドパスフィルタ27−1〜27−Nと、AD変換器(A/D)28−1〜28−Nと、受信位相補正部(RPC)29−1〜29−Nと、分波部30−1〜30−Nと、接続部(デジタルスイッチマトリックス)31と、を備える。
また、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10は、入力側のバンドパスフィルタ(BPF)12−1〜12−Nと、ミキサ13−1〜13−Nと、ローカル発振器11と、出力側のバンドパスフィルタ(BPF)14−1〜14−Nと、を備える。
図3は、図1に示した中継衛星における送信部の構成例を示す図である。説明の都合上、図3では、ビームエリア400,402と、中継対象とする信号の受信装置である受信局401,403、についても記載している。図3では、ビームエリア400に受信局401が存在し、ビームエリア402に受信局403が存在する例を示している。
図3に示したように、中継衛星200の送信部202は、合波部32−1〜32−Nと、送信位相補正部33−1〜33−Nと、DA変換器(D/A)34−1〜34−Nと、ローパスフィルタ35−1〜35−Nと、ミキサ36−1〜36−Nと、送信アナログスイッチマトリックス(第2のスイッチ部)37と、バンドパスフィルタ38−1〜38−Nと、を備える。
なお、図2、3では、中継衛星が、2つのビームエリア(広帯域ビームエリア100,狭帯域ビームエリア102)内の各送信局から送信された4つの上り信号を2つのビームエリア(ビームエリア400,402)に中継する例を示しているが、ビーム数および中継する上り信号の数は、図2、3の例に限定されない。
接続部31は、例えばデジタルスイッチマトリックスであり、各分波部30−1〜30−Nから出力された信号を入力とし、入力された各信号を後段の合波部32−1〜32−Nへ振り分ける。
図4は、本実施の形態の中継衛星200の受信部201が備えるローカル生成部25の構成例を示す図である。図4に示したように、本実施の形態のローカル生成部25は、周波数シンセサイザ501,502を備える。
図5は、ローカル位相差算出部41の構成例を示す図である。図5に示したように、本実施の形態のローカル位相差算出部41は、ミキサ507と、バンドパスフィルタ508と、AD変換器(A/D)509と、直交検波部510と、(デジタル)ローカル生成部511と、(デジタル)ローパスフィルタ512と、リミタ513と、セレクタ514,515,516と、クロック生成器517とを備える。
次に、本実施の形態の中継衛星による信号中継処理について具体的に説明する。図6は、本実施の形態の中継衛星による信号中継動作の概要を示す図である。
本実施の形態では、中継衛星200が、送信局101,103,104,105からそれぞれ受信した信号A,B,C,Dを、それぞれ以下に示す中継先へ図6に示す周波数配置にて同時中継する場合について説明を行う。
<1>広帯域ビームエリア100内の送信局101からの広帯域信号である信号Aを、ビームエリア400内の受信局401へ送信する。
<2>狭帯域ビームエリア102内の送信局103からの狭帯域信号である信号Bを、ビームエリア402内の受信局403へ送信する。
<3>狭帯域ビームエリア102内の送信局104からの狭帯域信号である信号Cを、ビームエリア400内の受信局401へ送信する。
<4>狭帯域ビームエリア102内の送信局105からの狭帯域信号である信号Dを、ビームエリア400内の受信局401へ送信する。
図6に示すとおり、信号B,C,Dのアップリンク周波数は、信号Aの左半分と同じ周波数である。
ここで、中継衛星200内の一式のAD変換器、分波部、合波部およびDA変換器で処理可能な信号帯域幅の上限を1とする。これに対して、図6に示すように、信号Aの帯域幅は1.5、信号B,C,Dの各帯域幅は0.25である場合を想定すると、信号Aの帯域幅は1より大きいため、従来技術では、信号Aをデジタル分波、合波、スイッチングすることができない。これに対して、本実施の形態では、詳細については後述するが、このような帯域幅は1より大きい広帯域信号も含めて、通信の品質劣化を防止しつつ各信号(A,B,C,D)を中継することができる。
以降、図2、図7を用いて中継衛星200の受信処理を説明する。図7は、本実施の形態の中継衛星による信号中継動作手順の一例を示す図である。なお以降、文中で表記する具体的な周波数帯域幅の数値は、一式のAD変換器、分波部、合波部およびDA変換器で処理可能な信号帯域幅の上限を1として正規化した値とする。
広帯域信号である信号Aは、図2に示すように、受信アンテナ21−1で受信され、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10の入力バンドパスフィルタ12−1に入力される。
また狭帯域信号である信号B,C,Dは、受信アンテナ21−2で受信され、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10の入力バンドパスフィルタ12−2に入力される。
一般に、衛星通信システムでは、上りの無線周波数と下りの無線周波数が異なるが、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10は、上りの無線周波数から下りの無線周波数への周波数変換を実施する。
具体的には、アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10では、はじめに、入力バンドパスフィルタ12−1が信号Aを、その信号帯域が欠けることなくかつ隣接する他通信システムの信号を除去するよう信号を抽出する。
次に、上り信号の無線周波数をfr、下り信号の無線周波数をftとすると、ミキサ13−1が、入力バンドパスフィルタ12−1を通過した信号Aに、ローカル発振器11から出力される周波数(fr−ft)を有するローカル信号を乗算する。バンドパスフィルタ14−1は、ミキサ13−1での乗算により生成される2つの周波数成分ft,2fr−ftのうち、不要波2fr−ftの成分を除去する。以上の一連の処理により、広帯域信号Aの無線周波数が上り周波数から下り周波数に変換される。
同様にアップリンク/ダウンリンク周波数変換部10では、狭帯域信号{B,C,D}の周波数を、入力バンドパスフィルタ12−2、ミキサ13−2および出力バンドパスフィルタ14−2により、上り信号の無線周波数frから下り信号の無線周波数ftに変換する。
次に、信号Aと信号B,C,Dは受信アナログスイッチマトリックス22に入力される。受信アナログスイッチマトリックス22は、地上の制御局110からのコマンド信号によって制御される。コマンド信号は、別回線で、制御局110から中継衛星200に送信される。
受信アナログスイッチマトリックス22は、制御局110からのコマンド信号に従い、バンドパスフィルタ14−1からの信号Aを、受信ポート15−1(BPF23−1)と、受信ポート15−2(BPF23−2)とに同時に入力する。
受信ポート15−1に入力される信号Aは、BPF23−1、ミキサ24−1およびBPF27−1を通過することにより、無線周波数帯から中間周波数帯、またはベースバンド帯に周波数変換される。この際、BPF23−1、BPF27−1におけるアナログフィルタ(通過帯域幅1.0)により、信号Aは、図7(a)に示すように、中心周波数から高い方の帯域半分近くが削られ、帯域幅は1.5から0.75+αまで削減される。ミキサ24−1には、別途ローカル生成部25からのローカル信号LO1(周波数:f1)が供給される。
同様に、受信ポート15−2に入力される信号Aは、後段のBPF23−2、ミキサ24−2およびBPF27−2を通過することにより、無線周波数帯から中間周波数帯、またはベースバンド帯に周波数変換される。ローカル生成部25からミキサ24−2には、ローカル信号LO2(周波数:f2)が供給される。この際、BPF27−2におけるアナログフィルタ(通過帯域幅1.0)により、信号Aは、図7(d)に示すように、中心周波数から低い方の帯域半分近くが削られ、帯域幅は1.5から0.75+αまで削減される。
なお、受信ポート15−1に入力される無線周波数を中間周波数ではなく、ベースバンド周波数に変換する場合は、上記アナログのBPF27−1〜27−NはI,Qの2系統のアナログのローパスフィルタに変更される。
以上のアナログフィルタ処理により、後段のAD変換器28−1,28−2にそれぞれ入力される信号帯域幅は1以下(=0.75+α)となるので、デジタルデバイス(AD変換器,DA変換器,デジタル回路)の処理速度の上限以下での動作が実現できる。なお、ここでは、信号Aを帯域幅の半分ずつ処理する場合の例としたが、半分でなくてもよい。後段のAD変換器28−1,28−2に入力される信号帯域幅が1以下(処理速度の上限以下)であれば、どのような比(例えば、0.9+α:0.6+α)でも構わない。また、ここでは、信号Aを2つの受信ポートに出力したが、信号帯域幅は2以上の場合等には、3つ以上の受信ポートに出力するようにしてもよい。
また、ミキサ24−1に入力されるローカル信号LO1(周波数f1)と、ミキサ24−2に入力されるローカル信号LO2(周波数f2)の周波数間隔(f1−f2)は1とする。即ち、ローカル信号LO1,LO2の周波数間隔を、一式のAD変換器、分波部、合波部およびDA変換器で処理可能な信号帯域幅の上限値1と同じ値とすることで、中継衛星200は、図2に示す受信ポート15−1,15−2の両方に受信信号を入力することで、最大帯域幅2の広帯域信号の中継処理を実現することができる。
最大帯域幅2の広帯域信号の中継処理を実現する場合、ローカル生成部25は2種類のローカル信号(f1,f2)のいずれかを各ミキサ24−1〜24−Nに供給する機能を備える。同様に最大帯域幅3の広帯域信号の中継処理を実現する場合、ローカル生成部25は周波数間隔が1である3種類のローカル信号(f1,f2,f3)のいずれかを、各ミキサ24−1〜24−Nに供給する機能を備える。ここでローカル生成部25から生成される各ローカル信号は、原振26を基準に生成されるため、各ローカル信号の周波数関係は安定しており、周波数偏移は生じない。
このように、本実施の形態では、受信ポート15−i(i=1,2,…,N)にそれぞれ接続する受信処理部(BPF23−i、ミキサ24−i、BPF27−i、AD変換器28−i、分波部30−i)を備え、また、送信ポート39−i(i=1,2,…,N)にそれぞれ接続する送信処理部(合波部32−i、DA変換器34−i、LPF35−i、ミキサ36−i、BPF38−i)を備える。そして、同一の受信信号を複数の受信処理部に入力し、同一受信信号が入力された受信処理部は、入力された受信信号をそれぞれ異なる帯域で抽出することにより、帯域の異なる分割信号を生成し、分割信号に対して、AD変換および分波処理を実施する。デジタルスイッチマトリックス31は、分波信号をスイッチングして送信処理部へ入力する。送信アナログスイッチマトリックス37は、同一の受信信号に対応する分波信号が入力された2つ以上の送信処理部から出力される信号が同一の送信ビームを構成する送信アンテナ40−1〜40−Nに入力するようにしている。このため、最大帯域幅が1を超える広帯域信号の中継処理を実現することができる。
また図2では割愛しているが、本中継衛星のデジタル部(デジタル信号処理を行う各構成要素)に入力する各クロックも、原振26から生成される。したがって、例えばローカル周波数間隔(ローカル生成部25が生成する複数のローカル信号の周波数の差)周波数をfc=f1−f2とすると、ローカル周波数間隔fcとデジタル内部で生成するfcは周波数同期する。なお、ローカル生成部25の構成等については後述する。
AD変換器28−1に入力される信号が中間周波数(IF)信号の場合、AD変換器28−1はIF信号をサンプリングする。AD変換器28−1に入力される信号がベースバンド信号の場合、AD変換器28−1は同相(I),直交(Q)の2式でベースバンド信号をサンプリングする。
次に、AD変換器28−1でサンプリングされた図7(a)の信号は、受信位相補正部(RPC)29−1で位相補正される。位相補正に関する補正信号は、後述するローカル位相差算出部41から入力される。位相補正の内容に関しても後述する。
受信位相補正部29−1は、入力される信号が中間周波数(IF)信号の場合、RPC29−1はデジタル直交検波により、中間周波数をベースバンド周波数に変換しながら、位相補正を行う。本変換処理に関しては式を用いて後述する。
図7(a)に示したBPF27−1の出力信号は、AD変換器28−1でサンプリングされ、受信位相補正部29−1により位相補正が与えられた後、帯域外の信号も含め、分波部30−1で4つの信号に分解される。
なお、本実施の形態においては、説明の都合上、分波の数を4つとしているが、分波の数はこれに限らず、2以上の整数であれば、どのような値でも構わない。
分波部30−1で使用される4つのフィルタのそれぞれの特性を図7(b)の点線で示す。分波部30−1の4つのフィルタによるフィルタリングにより、分波部30−1は、図7(a)の帯域幅0.75+αの信号中、αを削除し、図7(b)に示す帯域幅0.75の信号(X)を、図7(c)に示すように3つの帯域幅0.25の信号(1),(2),(3)に分解する。なお、分波部30−1は、図7(c)に示すように、帯域外の信号も含めて分波する。
同様に、AD変換器28−2でサンプリングされた図7(d)の信号(帯域幅0.75+α)は、受信位相補正部29−2で位相補正が与えられる。その後、図7(d)の信号は、分波部30−2にて、図7(e)の点線で示す4つのフィルタ特性により、帯域外の信号も含め、図7(f)に示すように4つの信号に分解される。すなわち、分波部30−2は、図7(d)の帯域幅0.75+αの信号中、αを削除し、図7(e)に示す帯域幅0.75分の信号(Y)を、図7(f)に示すように、3つの帯域幅0.25の信号(4),(5),(6)に分解する。
図8は、分波部が処理する信号のスペクトラムの関係の一例を示す図である。図8を用いて、異なる受信ポートに対応する分波部の各周波数対振幅特性の関係を示す。図8は、1つの信号(図6の例では信号A)が出力される2つの受信ポートを受信ポート15−i,15−(i+1)としている。図8(a)において、実線で示した4つの周波数対振幅特性は、受信ポート15−iに対応する分波部30−iが備えている4つのフィルタの特性を示し、点線で示した4つの周波数対振幅特性は、受信ポート15−(i+1)に対応する分波部30−(i+1)が備えている4つのフィルタの特性である。
図8(a)で示すように、各分波部で使用されるフィルタの特性は、受信ポート15−iと受信ポート15−(i+1)の間も含めて、隣接するフィルタ間で特性がオーバーラップする設計とし、かつ各フィルタの特性が交差する振幅は0.5、また各フィルタの周波数対振幅特性の総和が1となるものとする。
更に、図8(a)記載の各フィルタの周波数対位相特性も不連続なく、直線となる設計とすれば、例えば信号Aが一旦、信号(1),(2),(3),(4),(5),(6)の6つに分解されても(図7(c),(f)参照)、後段の合波部32−1〜32−Nによる合波処理により、信号(X),信号(Y)が復元され(図8(b))、更に送信アナログスイッチマトリックス37における信号合成処理により、元の信号Aが復元される(図8(c))。
ここで、図8(a)記載の各フィルタの周波数対位相特性を、受信ポート内(受信ポート15−i,受信ポート15−(i+1))で直線とすることは、分波部30−1〜30−Nがデジタル回路で構成されるため可能である。一方、各フィルタの周波数対位相特性を、受信ポート15−iと受信ポート15−(i+1)の間も含めて直線とすることは、一般には、各受信ローカル信号が位相まで同期しておらず、位相雑音等の影響を受けて、ローカル信号の位相が動的に変動するため難しい。本実施の形態では、このローカル位相変動を中継衛星内のデジタル処理で抑制する。ローカル位相変動の抑制の詳細は後述する。
次に、狭帯域ビームエリア102からの上り信号である狭帯域信号(信号B,C,D)に関する中継衛星200の処理について説明する。アップリンク/ダウンリンク周波数変換部10は、受信アンテナ21−2から入力される信号B,C,Dの周波数をダウンリンク周波数に変換する。
続いて、受信アナログスイッチマトリックス22は、制御局110からのコマンド信号に従い、受信ポート15−3に対応するBPF23−3に、周波数変換後の信号B,C,Dを入力する。図9は、受信ポート15−3で受信する信号の一例を示す図である。
BPF23−3に入力された信号B,C,Dは、ミキサ24−3、BPF27−3を経由して、無線周波数帯から中間周波数帯、またはベースバンド帯に周波数変換される。この際、BPF23−3、27−3におけるアナログフィルタは、信号B,C,Dを抽出し、隣接周波数帯に不要波が存在する場合は、不要波を除去する(図9(a),図9(b)参照)。ミキサ24−3には、別途ローカル生成部25からのローカル信号LO3(周波数:f1)が供給される。
AD変換器28−3でサンプリングされた図9(b)の信号B,C,Dは、他の受信ポートとの間でこれらの信号成分の一部を共有しておらず、独立している。このため、受信位相補正部29−3で位相補正は与える必要がなく、そのまま分波部30−3は、図9(c)の点線で示す4つのフィルタ特性により、帯域外の信号も含め、図9(d)に示すように4つの信号に分解する。このようにして分波部30−3は、図9(c)に示す信号B,C,Dを3つ信号B,C,Dに分解(分波)する。
次に図3および図10を用いて、中継衛星200が信号を送信する際の動作例について説明する。図10は、信号中継動作(送信側)の一例を示す図である。
デジタルスイッチマトリックス31は、前段の各分波部から出力された信号を入力とし、入力された各信号を後段の合波部32−1〜32−Nへ振り分ける。本実施の形態では、分波部30−1から出力された信号(1),(2),(3)、分波部30−2から出力された信号(4),(5),(6)、分波部30−3から出力された信号B,C,Dを入力とし、図10(a)に示すスイッチ処理を行う。
図10に図示した例では、具体的には、信号(1)は端子#1−1、すなわち送信ポート39−1に対応する第1〜第m(mは1以上の整数)のm個の端子のうちの第1端子に出力される。信号(2)は端子#1−2(送信ポート39−1に対応する第2端子)に、信号(3)は端子#1−3(送信ポート39−1に対応する第3端子)に、信号(4)は端子#1−4(送信ポート39−1に対応する第4端子)に、それぞれ出力される。信号(5)は端子#2−1(送信ポート39−2に対応する第1端子)に、信号(6)は端子#2−2(送信ポート39−2に対応する第2端子)に、信号Bは端子#3−1(送信ポート39−3に対応する第1端子)に、信号Cは端子#2−3(送信ポート39−2に対応する第3端子)に、信号Dは端子#2−4(送信ポート39−2に対応する第4端子)に、それぞれ出力される。これらのスイッチ接続は、地上の制御局110からのコマンド信号によって制御される。なお、図10の例では、上記のmが4の場合、すなわち、1つの送信ポートに4つの端子(第1端子〜第4端子)が対応付けられているものとしているが、mは4でなくてもよい。
各合波部(合波部32−1〜32−N)は、それぞれ4つの入力信号を、0.25の周波数間隔に並べて合成する。また各合波部は、合波後の信号の周波数対位相特性が、分波部30−1〜30−Nと同様、直線となる回路設計とする。
図10に図示した例では、合波部32−1は、デジタルスイッチマトリックス31から入力された信号(1),(2),(3),(4)を合波して、図10(b)に示す信号(Z)を生成する。合波部32−2は、信号(5),(6),C,Dを合波して、図10(c)に示す周波数配置の信号(V),C,Dを生成する。合波部32−3は、信号Bと空きチャネル3つ分を合波する処理により、図10(d)に示す周波数配置の信号Bを生成する。
次に合波後の信号(Z)は、送信位相補正部(TPC)33−1、DA変換器34−1、LPF35−1、ミキサ36−1、BPF38−1により、無線周波数帯に変換される。同様に、合波後の信号(V),C,Dは、送信位相補正部33−2、DA変換器34−2、LPF35−2、ミキサ36−2およびBPF38−2により、無線周波数帯に変換される。合波後の信号Bは、送信位相補正部33−3、DA変換器34−3、LPF35−3、ミキサ36−3およびBPF38−3により、無線周波数帯に変換される。
なお、本実施の形態では説明の都合上、合波の数が4つの場合の例について示しているが、合波の数はこれに限らず、2以上の整数であれば、どのような値でも構わない。
また、各DA変換器34−1〜34−Nの出力は中間周波数帯、またはベースバンド帯のいずれかの信号であればよい。ベースバンド帯とした場合、各DA変換器34−1〜34−N、各LPF35−1〜35−Nは(I,Q)の2組で構成される。
ここで、送信位相補正部33−1に入力される補正信号は、前述した受信位相補正部29−1に入力される補正信号と同じであり、後述するローカル位相差算出部41から入力される。
同様に、送信位相補正部33−2に入力される補正信号は、前述した受信位相補正部29−2に入力される補正信号と同じ、送信位相補正部33−Nに入力される補正信号は、前記した受信位相補正部29−Nに入力される補正信号と同じであり、いずれも後述するローカル位相差算出部41から入力される。なお各補正信号は複素数であり、各送信位相補正部は本補正信号を複素共役として扱う。詳細は式を用いて後述する。
ここで各送信信号の無線周波数帯への変換は、ローカル生成部25が生成する各送信ローカル信号を、各ミキサ36−1〜36−Nに供給することで実現される。
本実施の形態では、ミキサ36−1には、受信側のミキサ24−1と同じローカル信号LO1(周波数f1)が、ミキサ36−2には、受信側のミキサ24−2と同じローカル信号LO2(周波数f2)が、ミキサ36−3には、受信側のミキサ24−3と同じローカル信号LO3(周波数f1)が供給される。
<ローカル共通化の効果>
このように、予め上りの無線周波数frを下りの無線周波数ftに変換後、無線周波数ftから中間周波数fIF(またはベースバンド周波数)に変換するためのローカル信号と、中間周波数fIF(またはベースバンド周波数)から無線周波数ftに変換するためのローカル信号を共通化する(同じものとする)ことで、1つのローカル生成部25、ローカル位相差算出部41で、受信側のポート間位相同期だけでなく、送信側のポート間位相同期も実現することが出来る。
もちろん構造上の問題等でローカルを共通化できない場合は、回路規模は若干増えるが、受信側に用いるローカル生成部25、ローカル位相差算出部41と、送信側に用いるローカル生成部25、ローカル位相差算出部41を個別に設ける構成とすることで、同様の効果が得られる。
なお本実施の形態では、上りの無線周波数frを下りの無線周波数ftに変換するアップリンク/ダウンリンク周波数変換部10を、受信アンテナ21−1〜21−Nと、受信アナログスイッチマトリックス22の間に位置させたが、必ずしもこの位置である必要はなく、送信部、すなわち図3の送信アナログスイッチマトリックス37と、送信アンテナ40−1〜40−Nの間に移動させてもよい。この場合、上りの無線周波数frから中間周波数fIF(またはベースバンド周波数)に変換するためのローカル信号と、中間周波数fIF(またはベースバンド周波数)から無線周波数frに変換するためのローカル信号を共通化して一連の処理を行った後、上りの無線周波数frが下りの無線周波数ftに変換されることとなる。
一般に、送信信号はアンプなどを介して大電力となるため、その成分が受信側に回り込み、受信信号に干渉を与えるケースがあるが、このようにアップリンク/ダウンリンク周波数変換部10を、図3の送信アナログスイッチマトリックス37と、送信アンテナ40−1〜40−Nの間に移動させることで、受信側に回り込む大電力信号の周波数ftと、受信アナログスイッチマトリックス22に入力される周波数(=fr)をずらすことができるため、回り込みによる干渉の影響を抑えることが出来る。
送信アナログスイッチマトリックス37は、地上の制御局110からのコマンド信号によって接続を制御される。図10に示す例では、送信ポート39−1(BPF38−1)からの信号(Z)と、送信ポート39−2(BPF38−2)からの信号(V),C,Dを、同時にアンテナ40−1に出力する。アンテナ40−1から出力される信号スペクトラムは、図10(e)に示すように信号(Z)と信号(V)が一部オーバーラップする形となる。ここで、各送信ローカル信号の周波数間隔が1であることと、図7に示す各分波フィルタの特性とにより、信号(Z)と信号(V)を合わせた合成信号A’は、図10(g)に示すように、元の送信局101からの信号Aと同様の信号スペクトラム形状となって、ビームエリア400内の受信局401へ送信される。
また、送信アナログスイッチマトリックス37は、送信ポート39−3(BPF38−3)から出力される無線周波数帯に変換された信号B(図10(f))を、送信アンテナ40−2に出力し、信号Bをビームエリア402内の受信局403に送信する。
地上の受信局401は信号A’,C,Dを受信後、それぞれを復調する。また、地上の受信局403は信号Bを受信後、復調する。
なお、受信局401は、総帯域幅2の信号A’,C,Dで構成される広帯域信号を受信することになるが、一般に、地上で使用される民生品のデジタルデバイスの動作速度は、宇宙用デジタルデバイスの動作速度より数倍高いため、受信局401はデジタルデバイスの性能上限の問題はなく、信号A’,C,Dを復調することができる。
<アナログスイッチマトリックスの効果>
本実施の形態では、1を超える広い帯域幅が必要なビームエリアは、アップリンクはビームエリア100、ダウンリンクはビームエリア400として説明したが、例えば、アップリンクで1を超える広い帯域幅が必要なビームエリアが、ビームエリア100から、ビームエリア102に変化した場合でも、本発明の中継衛星では、受信アナログスイッチマトリックスの接続を変更するだけで、容易に対応できる。即ち、BPF14−1の出力を受信ポート15−1のみ接続し、BPF14−2の出力を受信ポート15−2と受信ポート15−3の両方に接続する制御により、帯域幅1以内のビームエリア100からの各信号と、帯域幅1を超えるビームエリア102からの各信号を処理することができる。
また、同様にダウンリンクで1を超える広い帯域幅が必要なビームエリアが、ビームエリア400から、ビームエリア402に変化した場合は、送信アナログスイッチマトリックスの接続を変更するだけで、容易に対応できる。即ち、BPF38−1(送信ポート39−1)の出力を送信アンテナ40−1のみ接続し、BPF38−2(送信ポート39−2)の出力と、BPF38−3(送信ポート39−3)の出力の両方を送信アンテナ40−2に接続する制御により、帯域幅1以内でビームエリア400への各信号送信と、帯域幅1を超えてビームエリア402への各信号送信を実現することができる。
このような構成とすることで、例えば、各ビームエリア全てに対して広帯域な信号中継サービスが必要ではないが、トラフィック変動によって、広帯域な信号中継サービスが必要となるビームエリアが時刻で変化する場合、回路規模を低減できる効果が得られる。例えば、2つのビームエリアのいずれかで広帯域信号中継が発生し得る場合、アナログスイッチマトリックスを用いない構成では、各ビームで広帯域信号中継発生に備えて1ビームエリアで最大2ポートを準備するため、計4ポート必要となる。一方、アナログスイッチマトリックスを用いる構成では、本実施の形態に記載の通りポート♯1が2つのビームで兼用して使われるため、3ポートで実現できる。なお、どのビームでも常時2ポートを用いて広帯域な信号中継サービスを実現する場合は、このような送信アナログスイッチマトリックスや受信アナログスイッチマトリックスを用いる構成は不要であり、各ビームあたり2ポートを固定的に割り当てた構成にすれば良い。
以降、本実施の形態の特長であるローカル位相差算出部41と、受信位相補正部(RPC)29−1〜29−N、送信位相補正部33−1〜33−Nの動作を説明する。
はじめに、上記受信位相補正部29−1〜29−N、送信位相補正部33−1〜33−Nで補正を行わない場合の問題点について述べる。図11は、中継衛星から受信局へ送信する広帯域信号の一例を示す図である。受信位相補正部29−1〜29−N、送信位相補正部33−1〜33−Nで補正を行わない場合、送信アンテナ40−1から出力される合成信号A’の周波数対位相特性は、図11に示す下向き矢印2箇所{(R),(T)}において不連続が発生する。図11に示す下向き矢印(R)は、受信ポート15−i、ポート15−(i+1)(図10の例では受信ポート15−1と受信ポート15−2)間で生じる不連続位置を示す。図11に示す下向き矢印(T)は、同様に送信側ポート15−i、ポート15−(i+1)(図10の例では送信ポート39−1と送信ポート39−2)間で生じる不連続位置を示している。
このように、合成信号A’の帯域内で位相不連続が発生する場合でも、本実施の形態では、ローカル位相差算出部41と、受信位相補正部29−1〜29−N、送信位相補正部33−1〜33−Nによる制御により、通信品質の劣化無く、元の信号Aを受信する場合と同等な受信感度特性を実現する。
図11に示す位相不連続は、主に異なるローカル信号(周波数f1,f2)で周波数をダウンコンバート、またはアップコンバートすることで発生するローカル位相差によって発生する。そこで、本実施の形態では、位相不連続の支配要因である、時々刻々と変化するローカル位相差を検出し、デジタル処理で補正することで、各ポート間のローカル位相差をデジタル処理によってキャンセルし、全て1つのローカル信号に同期させる。
はじめに、ローカル生成部25において、原振26から出力される原振信号を元に、周波数シンセサイザ501は、周波数f1のローカル信号Lf1を生成する。同様に、周波数シンセサイザ502は、周波数f2のローカル信号Lf2を生成する。両者の周波数差(f2−f1)は前述したとおり“1”である。
ローカル信号Lf1は、LO1と称して受信側のミキサ24−1と送信側のミキサ36−1に供給される。またローカル信号Lf1は、LO3と称して受信側のミキサ24−3と送信側のミキサ36−3に供給される。即ち、LO1とLO3は、周波数f1のローカル信号Lf1と同じである。ローカル信号Lf2は、LO2と称して受信側のミキサ24−2と送信側のミキサ36−2に供給される。
同様に、ローカル生成部25は、受信側のミキサ24−Nと送信側のミキサ36−Nにローカル信号Lf1、またはローカル信号Lf2のいずれかを供給する。
即ちローカル生成部25は、受信ポート15−Nと送信ポート39−Nが、高い方の周波数帯を扱う場合は、周波数f2のローカル信号Lf2を、低い方の周波数帯を扱う場合は、周波数f1のローカル信号Lf1を、受信側のミキサ24−Nと送信側のミキサ36−Nに供給する。
なお図4は各ポートで扱う周波数を固定とする場合の接続を示しているが、固定ではなく任意な周波数を出力する構成にしても良い。例えば、図4においてLO1,LO2,LO3,…のそれぞれについて、セレクタを追加で設けて、セレクタが周波数シンセサイザ501の出力(Lf1)、または周波数シンセサイザ502の出力(Lf2)のいずれかを選択できる構成とすることで、ポートごとに周波数f1、または周波数f2のいずれかを選択することができる。この周波数f1,f2を切り替える指令信号は、別回線で制御局110から中継衛星200に送信されるコマンド信号によって行われる。
また周波数シンセサイザの性質を利用して、ローカル生成部25を図12に示す構成としても良い。図12は、ローカル生成部25の別の構成例を示す図である。図12に示す構成例では、ローカル生成部25は、周波数シンセサイザ504−1,504−2,…,504−Nと、セレクタ505,506とを備える。各周波数シンセサイザ504−1,504−2,…,504−Nは、複数のローカル周波数のうち1つを選択し出力することが可能である。本実施の形態では、各周波数シンセサイザ504−1,504−2,…,504−Nは周波数f1,f2のいずれかのローカル信号が選択可能である。したがって、この構成でもLO1,LO2,LO3,…は、それぞれ周波数f1,f2のいずれかを選択可能である。セレクタ505、506はLO1,LO2,LO3,…の周波数が異なる場合、それぞれ異なる周波数のローカル信号を選択し、出力する。例えば、セレクタ505は周波数f1のローカル信号を、セレクタ506は周波数f2のローカル信号を選択して、それぞれLf1、Lf2として出力する。この周波数f1,f2を切り替える指令信号やセレクタを制御する信号は、別回線で制御局110から中継衛星200に送信されるコマンド信号によって行われる。
このように、LO1,LO2,LO3,…として任意のローカル周波数を選んで出力するようにすることで、本中継衛星の各ポートは任意の周波数帯の信号を処理することができる。このため、地上の各ビームエリアのトラフィック変化に伴う、利用周波数帯域の変動等に柔軟に対応することができる。
ローカル位相差算出部41は、ローカル生成部25からのローカル信号Lf1とローカル信号Lf2を入力とし、ローカル信号Lf1でローカル信号Lf2の位相を検波することで、両者の位相差信号Δθ21を抽出し、抽出した位相差信号を基に、各受信信号を補正、各送信信号を逆補正する。以降、式を用いて処理内容を説明する。なお、式を展開していく過程において、三角関数の加法定理、和積公式、積和公式などを用いている。
[受信側の処理]
図13は、受信側の周波数変換処理の流れを示す図である。ローカル信号Lf1を以下の式(1)に示し、ローカル信号Lf2を以下の式(2)で示す。ここでθ(t)はローカル信号Lf1を基準とした場合のローカル信号Lf2で観測される、位相雑音等に起因する位相変動成分とする。
Lf1=cos(2πf1t) …(1)
Lf2=cos(2πf2t+θ(t)) …(2)
はじめに、ローカル位相差算出部41で抽出する動的な位相差信号Δθ21を抽出するまでの処理過程を式で示す。ミキサ507は、ローカル信号Lf1とローカル信号Lf2を乗算し、以下の式(3)に示す乗算結果M21を得る。以下の式(3)で示されるようにf1+f2の周波数成分と、f1−f2の周波数成分が生じる。
M21=cos(2πf1t)*cos(2πf2t+θ(t))
=(1/2){cos[2π(f1+f2)t+
+cos[2π(f1−f2)t−θ(t)]} …(3)
BPF508は、ミキサ507の出力からf1−f2の周波数成分を抽出する。BPF508による抽出結果をB21として以下の式(4)に示す。上記式(3)の前半の項(f1+f2の周波数成分)をBPF508で除去した結果が式(4)である。式(4)では、fC=f2−f1とし、f2−f1をfCに変換して示している。
B21=(1/2){cos[2π(f1−f2)t−θ(t)]}
=(1/2){cos[2π(−fC)t−θ(t)]}
=(1/2){cos[2πfCt+θ(t)]} …(4)
次にデジタルローカル生成部511で生成される直交検波用複素ローカル信号Cを以下の式(5)に示す。ここでθCは、上記BPF508で抽出した周波数成分fCを基準とした固定的な位相差であり、ローカル信号Cの動作開始タイミングに応じて決定される。なおデジタル部に与えているクロックは、原振26から生成されているため、複素ローカル信号Cで生成される周波数fCと式(4)の周波数fCは周波数同期している。
C=exp[−j(2πfCt+θC)] …(5)
直交検波部510は、BPF508の出力B21と直交検波用複素ローカル信号Cとを乗算する。ここで、cosα*exp[−j(β)]は以下の式(6)のように展開できる。
cosα*exp[−j(β)]=cosα*(cosβ−jsinβ)
=cosα*cosβ−jcosαsinβ
=(1/2){cos(α+β)+cos(α−β)}
−j((1/2){sin(α+β)+sin(−α+β)})
=(1/2){cos(α+β)+cos(α−β)}
−j((1/2){sin(α+β)−sin(α−β)}
…(6)
ここでα+βの高域周波数成分Hfは、
Hf=(1/2){cos(α+β)}−j((1/2){sin(α+β)})
=(1/2)exp[−j(α+β)] …(7)
α−βの低域周波数成分Lfは、
Lf=(1/2){cos(α−β)}}−j((1/2){−sin(α−β)})
=(1/2)exp[j(α−β)] …(8)
上記式(8)を用いると、直交検波部510の出力(D21=B21*c)を、LPF512で抽出した成分F21は式(9)で示される。
F21=(1/4){exp[j(2πfCt+θ(t)−(2πfCt+θC))]}
=(1/4){exp[j(2πfCt+θ(t)−2πfCt−θC)]}
=(1/4){exp[j(θ(t)−θC)]} …(9)
最後にリミタ513通過後の位相差信号Δθ21は、以下の式(10)で示す通り、振幅が一定化される。図14は、上記リミタ513通過後の信号の位相変化例の一例を示す図である。
Δθ21=exp[j(θ(t)−θC)] …(10)
次に、受信信号を式で示していく。BPF14−1通過後の受信信号は図13で示すように、2つのポート間の境界周波数f1+fIF+0.5fCに配置した無変調キャリア(CW)とする。このCW信号は、各ポートでベースバンド帯にダウンコンバートした際に、両者の周波数関係が+0.5fC,−0.5fCであり、かつ初期位相が揃っている必要がある。仮に初期位相が揃っていないと、再度アップコンバートして、両者の信号を合成して送信する際に、エネルギー損失が生じて劣化してしまう。初期位相が揃っていれば、再度アップコンバート時に両信号の位相が揃うので、両信号の合成時に元信号をエネルギー損失なく送信することができる。
ここで、上記受信信号Rを式(11)に示す。但しθrは、ローカル信号Lf1(=cos(2πf1t))を基準とした場合の位相オフセット値である。
R=cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr) …(11)
はじめに、受信ポート15−1の処理を示す。受信ポート15−1において式(11)で示す受信信号Rは、ミキサ24−1でローカル信号Lf1(=cos(2πf1t))と乗算される。乗算後の信号をMn1として、以下の式(12)に示す。
Mn1=cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr)*cos2π(f1t)
=(1/2){cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr)
+cos(2π(fIF+0.5fC)t+θr)} …(12)
BPF27−1は、上記式(12)に示したMn1の高調波成分を除去する。したがって、BPF27−1通過後の信号Bn1は式(13)で示される。また、BPF27−1から出力される信号のスペクトラムを図13(b)に示す。
Bn1=(1/2){cos(2π(fIF+0.5fC)t+θr)} …(13)
BPF27−1から出力される信号は、A/D変換器28−1によりサンプリングされて、受信位相補正部29−1に入力される。受信位相補正部29−1は、内部ローカル信号exp[−j(2πfIFt)]を用いて、入力信号を中間周波数fIFからベースバンドに変換する。
はじめに受信位相補正部29−1は、入力される信号Bn1を、受信位相補正部29−1内部でデジタル的に生成した中間周波数成分fIF(=exp[−j(2πfIFt)])との乗算により、ベースバンド周波数に変換する。この変換は、乗算した信号成分の低域周波数を抽出する前記式(8)に則り行われる。即ち、ベースバンド周波数に変換された後の信号QLn1は次式(14)で表現される。
QLn1=(1/4){exp[j(2π(fIF+0.5fC)t
+θr−(2πfIFt))]}
=(1/4){exp[j(2π(0.5fC)t+θr)]}…(14)
なお、本実施の形態では、ローカル信号Lf1を基準とし、Lf1に各ポートの信号をデジタル補正により同期させるが、信号QLn1はローカル信号Lf1によって中間周波数の信号からベースバンド信号に変換された信号であるため、受信位相補正部29−1は位相補正を与える必要が無い。したがって、受信位相補正部29−1には、初期位相値Ln1=exp[j(0)]が与えられ、受信位相補正部29−1では位相補正は行われない。即ち位相補正後の信号Sn1は、上記式(14)と同様である(Sn1=QLn1)。受信位相補正部29−1から出力される信号のスペクトラムを図13(d)に示す。
次に、受信ポート15−2の処理を示す。受信ポート15−2に入力された式(11)で示す受信信号Rは、ミキサ24−2でローカル信号Lf2(=cos(2πf2t+θ(t)))と乗算される。乗算後の信号をMn2として、式(15)に示す。なお、f2=f1+fCの関係を用いて式の変形を行っている。
Mn2=cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr)
*cos2π(2πf2t+θ(t))
=(1/2){cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr
+2π(f1+fC)t+θ(t))
+cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θr
−2π(f1+fC)t−θ(t))}
=(1/2){cos(2π(2f1+fIF+1.5fC)t+θr+θ(t))
+cos(2π(fIF−0.5fC)t+θr−θ(t))}…(15)
BPF27−2は、上記式(15)で示される信号Mn2の高調波成分を除去する。したがって、BPF27−2通過後の信号Bn2は以下の式(16)で示される。また、BPF27−2から出力される信号のスペクトラムを図13(c)に示す。
Bn2=(1/2){cos(2π(fIF−0.5fC)t+θr−θ(t))}
…(16)
次に、ローカル位相差算出部41は、受信ポート15−2用に上記式(10)で求めたベースバンド位相差信号Δθ21を、受信位相補正部29−2に与える。受信位相補正部29−2は、内部ローカル信号exp[−j(2πfIFt)]を用いて入力信号を中間周波数fIFからベースバンドに変換するが、この際に受信ポート15−1との位相差を補正する。
はじめに、受信位相補正部29−2は、受信位相補正部29−1と同様に入力される信号Bn2を、受信位相補正部29−2内部でデジタル的に生成した中間周波数成分fIF(=exp[−j(2πfIFt)])と乗算することによって、ベースバンド周波数に変換する。ベースバンド周波数に変換された後の信号QLn2は次式(17)表現される。なお、この中間周波数成分fIFは、前述した受信ポート15−1に入力された信号に関する処理で用いた中間周波数成分fIFと同一のものを使っても良い。
QLn2=(1/4){exp[j(2π(fIF−0.5fC)t
+θr−θ(t)−(2πfIFt))]}
=(1/4){exp[j(2π(−0.5fC)t+θr−θ(t))]}
…(17)
受信位相補正部29−2は、中間周波数の信号からベースバンド信号に変換された信号QLn2に対してベースバンド位相差信号Δθ21を乗算し、位相補正を行う。位相補正後の信号をSn2として以下の式(18)に示す。
Sn2=(1/4){exp[j(2π(−0.5fC)t+θr−θ(t))]}
*exp[j(θ(t)−θC)]
=(1/4){exp[j(2π(−0.5fC)t+θr−θC)]}
…(18)
上記式(18)で示されるように、動的な位相変動成分であるθ(t)が打ち消され、受信信号Rは、受信ポート15−2において、位相オフセットθr−θCを残しながら、負の周波数成分−0.5fCに変換される。受信位相補正部29−2から出力される信号のスペクトラムを図13(e)に示す。
上記式(14)に示されるように、受信信号Rは、受信ポート15−1において、位相オフセットθrを残しながら、正の周波数成分+0.5fCに変換される。したがって、図13(d),(e)に示すように、受信ポート15−1の位相補正後の信号と受信ポート15−2の位相補正後の信号の両者の周波数関係は、+0.5fC,−0.5fCとなる。一方、初期位相に関しては、式(14)ではθr、式(18)ではθr−θCであり、受信ポート15−1の位相補正後の信号と受信ポート15−2の位相補正後の信号との間には−θCのずれが残っている。
−θCのずれは残るが、以上示した一連の処理によって、動的な位相変動成分であるθ(t)は打ち消される。なお、両者の間に−θCの位相ずれが残ると、再度、送信過程で両者の周波数を次式(19)で示すようにアップコンバートして合成する際に、位相ずれ(−θC)に伴い振幅低下を招く。このため、−θCは別途補正することが望ましい。固定値である−θCの補正方法は、どのような方法を用いてもよい。また、例えば、実施の形態4で後述する方法等により自動的に−θCを打ち消すようにしてもよい。
QLn1*exp[j(2πf1t)]+Sn2*exp[j(2π(f1+fC)t)]
=(1/4){exp[j(2π(0.5fC)t+θr)]}
*exp[j(2πf1t)]
+(1/4){exp[j(2π(−0.5fC)t+θr−θC)]}
*exp[j(2π(f1+fC)t)]
=(1/4){exp[j(2π(f1+0.5fC)t+θr)]}
+(1/4){exp[j(2π(f1+0.5fC)t+θr−θC)]}
=(1/2)*cos(−θC/2)*exp[j(2π(f1+0.5fC)t+θr)]
…(19)
[送信側の処理]
次に送信側の処理を式で表現する。送信側では、受信側と逆の処理が行われる。式(20)に送信ポート39−1に対応する合波部32−1から出力される送信信号を示し、式(21)に送信ポート39−2に対応する合波部32−2から出力される送信信号を示す。
S' n1={exp[j(2π(+0.5fC)t)]} …(20)
S' n2={exp[j(2π(−0.5fC)t)]} …(21)
図15は、送信側の周波数変換の流れの一例を示す図である。式(20)に示したS'n1のスペクトラムを図で表現すると、図15(f)となり、式(21)に示したS'n2のスペクトラムを図で表現すると、図15(g)となる。
S'n1とS'n2は、両者の周波数関係が+0.5fC,−0.5fCで、かつ初期位相が揃っている。このため、各送信ポートでローカル位相差変動が無い理想的な無線周波数への周波数変換が行われ、送信アナログスイッチマトリックス37で合成される場合は、図13(a)に示す中心周波数f1+fIF+0.5fCに振幅1の無変調波が出力されることになる。ところが実際は、送信ポート間でローカル位相差変動が生じるため、以下に示す処理を施さない限り、合成後の送信信号の位相や振幅は変動してしまう。
はじめに、送信位相補正部33−1は、内部ローカル信号exp[−j(2πfIFt+θU)]を用いて、入力信号S' n1をベースバンドから中間周波数fIFに変換する。ここでθUは初期位相オフセットである。送信位相補正部33−1は、ローカル信号Lf1を用いる系であるため、位相補正は与える必要はなく、この場合exp[j(0)]を与える。
送信位相補正部33−1により、中間周波数fIFに変換された入力信号U1は以下の式(22)で示される。なおRe[x]は、複素数xの実数部を示す。このU1のスペクトラムを図15(h)に示す。
U1=Re[S' n1*exp[j(0)]*exp[j(2πfIFt+θU)]]
=Re[exp[j(2π(+0.5fC)t)]
*exp[j(0)]*exp[j(2πfIFt+θU)]]
=Re[exp[j(2π(fIF+0.5fC)t+θU)]]
=cos(2π(fIF+0.5fC)t+θU) …(22)
同様に、送信位相補正部33−2は、同じ内部ローカル信号exp[−j(2πfIFt+θU)]を用いて、入力信号S' n2をベースバンドから中間周波数fIFに変換する。この際に、送信位相補正部33−2は、上記式(10)で得られた値Δθ21(=exp[j(θ(t)−θC)])を用いて入力信号S'n2に対して逆補正値(=exp[j(−θ(t)+θC)])を与えることで逆補正を行う。この逆補正は、単に補正値の複素共役を次式(23)に示すように入力信号S' n2に乗算することで実現される。中間周波数fIFに変換された入力信号であるU2は以下の式(23)で示される。この時のU2のスペクトラムを図15(i)に示す。
U2=Re[S' n2*exp[j((−θ(t)+θC))]
*exp[j(2πfIFt+θU)]]
=Re[exp[j(2π(−0.5fC)t)]
*exp exp[j((−θ(t)+θC))]
*exp[j(2πfIFt+θU)]]
=Re[exp[j(2π(fIF−0.5fC)t−θ(t)+θC+θU)]]
=cos(2π(fIF−0.5fC)t−θ(t)+θC+θU) …(23)
次に、中間周波数fIFに変換された信号U1はミキサ36−1で、式(1)で示されるローカル信号cos(2πf1t)と乗算される。乗算後の信号をW1として以下の式(24)に示す。
W1=cos(2π(fIF+0.5fC)t+θU)*cos(2πf1t)
=(1/2){cos(2π(f1+fIF+0.5fC)t+θU)
+cos(2π(fIF−f1+0.5fC)t+θU)} …(24)
式(24)に示すように、W1として2つの周波数成分が生成される。BPF38−1はこの内高域成分のみ通過させる。したがって、BPF38−1通過後の信号成分Y1は、次式(25)で示される。
Y1=(1/2){cos(2π(fIF−f1+0.5fC)t+θU)}…(25)
同様に、中間周波数fIFに変換された信号U2はミキサ36−2で、式(2)で示されるローカル信号cos(2πf2t+θ(t))と乗算される。乗算後の信号をW2として式(26)に示す。W2として2つの周波数成分が生成される。
W2=cos(2π(fIF−0.5fC)t−θ(t)+θC+θU)
*cos(2πf2t+θ(t))
=(1/2){cos(2π(fIF−0.5fC)t−θ(t)+θC+θU
+2πf2t+θ(t))
+cos(2π(2π(fIF−0.5fC)t−θ(t)+θC+θU
−2πf2t−θ(t))}
=(1/2){cos(2π(fIF+f1+0.5fC)t+θC+θU)
+cos(2π(fIF−f1−1.5fC)t+θC+θU−2θ(t))}
…(26)
式(26)により、W2の高周波成分では、位相変動信号θ(t)が打ち消されることが明らかである。BPF38−2は、W2のうち高周波成分のみ通過させる。したがって、BPF38−2通過後の信号成分Y2は、次式(27)で示される。
Y2=(1/2){cos(2π(fIF+f1+0.5fC)t+θC+θU)}
…(27)
式(25)で表されるY1と式(27)で表されるY2とを比較すると、+θCの固定的なずれのみが残留し、動的な位相変動成分θ(t)は残らないことが判る。したがって、このθCを別途補正して両信号の位相を揃えれば、これらを送信アナログスイッチマトリックス37で加算した後の信号Tは次式(28)で示す通り、振幅が2倍となる。また、信号Tは式(11)に示される受信信号Rに対して単に位相がθUオフセットした関係となる。この時の信号Tのスペクトラムを図15(i)に示す。
T=cos(2π(fIF+f1+0.5fC)t+θr+θU) …(28)
なお、このθCに関しては例えば後述する実施の形態4の方法を用いて自動的に打ち消してしまっても良い。
また、図5に示すバンドパスフィルタ508は、ローパスフィルタに変更しても同様にf2+f1の周波数成分を除去できるため、バンドパスフィルタ508をローパスフィルタに変更しても良い。
以上のように、本実施の形態では、2つのポートの境界に無変調波を入力した場合に、図13に示すように受信側の処理で2つに分波後、図15に示す送信側の流れにより再び1つに合波する過程を一例で示した。この過程において、ポート間の位相変動であるローカル位相変動θ(t)が生じても、受信側は受信位相補正部29−1〜29−Nによりθ(t)を打ち消し、送信側はミキサ36−1〜36−Nでθ(t)を打ち消す。これにより、中継衛星から出力される無変調波は2つのポートの境界の周波数であっても振幅低下が発生することなく、復元される。なお、説明の簡素化のため、無変調波の中継例を示したが、同様の補正処理で変調波も同様に復元できる。
実際には、デジタル処理で実現するため、AD変換器509は、バンドパスフィルタ508の出力信号(周波数:Δf=f2−f1)を例えば4Δfのサンプリング速度で、アナログデジタル変換する。AD変換器509と、以降の直交検波部510、LPF512、リミタ513を駆動するクロックは、クロック生成器517から供給されるが、このクロックはクロック生成部517内で、原振26からの原振信号を元に生成される。
また実際の回路構成では、式(10)で求まるベースバンド位相差信号Δθ21は、図5に示すセレクタ514、515、516に入力される。各セレクタは、外部からの選択信号(S1,S2,…SN)によって、ベースバンド位相差信号Δθ21、または固定位相値Δθ11=exp[j(0)]のいずれかを選択して出力する。
本実施の形態では、セレクタ516の出力は、受信位相補正部29−1と送信位相補正部33−1に接続される。同様に、セレクタ515の出力は受信位相補正部29−2と送信位相補正部33−2に接続される。同様に、N番目のセレクタ514の出力は、受信位相補正部29−Nと送信位相補正部33−Nに接続される。
各セレクタは、接続先の受信位相補正部、送信位相補正部のポートが、ローカル信号Lf1が供給されるポートであれば、固定位相値Δθ11=exp[j(0)]を選択する。一方、接続先の受信位相補正部、送信位相補正部のポートが、ローカル信号Lf2が供給されるポートであれば、各セレクタはベースバンド位相差信号Δθ21を選択する。
なお、本実施の形態において、3番目のポート(受信ポート15−3、送信ポート39−3)は、受信側も送信側も帯域幅1以内の信号を中継するため、他のポートとのローカル位相同期は不要であり、3番目のポートの受信位相補正部29−3と送信位相補正部33−3に動的な制御を与える必要は無い。このようにあるポートが帯域幅1以内を処理する場合、上記セレクタは、該当ポートの受信位相補正部、送信位相補正部に固定位相値Δθ11=exp[j(0)]を与える。
一方、前述の通り、アップリンクで1を超える広い帯域幅が必要なビームエリアが、ビームエリア100から、ビームエリア102に変化した場合、受信側は受信ポート15−1と受信ポート15−2の組合せから、受信ポート15−2と受信ポート15−3の組合せに切り替えて広帯域信号を中継することになる。この場合、周波数f2のローカル信号が供給されるポートの受信位相補正部にベースバンド位相差信号Δθ21を与え、それ以外は固定位相値Δθ11=exp[j(0)]を与える。
また、同様にダウンリンクで1を超える広い帯域幅が必要なビームエリアが、ビームエリア400からビームエリア402に変化した場合も、送信側は送信ポート39−1と送信ポート39−2の組合せから、送信ポート39−2と送信ポート39−3の組合せに切り替えて広帯域信号を中継することになる。この場合も、周波数f2のローカル信号が供給されるポートの送信位相補正部にベースバンド位相差信号Δθ21を与え、それ以外は固定位相値Δθ11=exp[j(0)]を与える。
なお、ローカル信号Lf1のみ位相雑音の少ない信号とすれば、ローカル信号Lf2の位相雑音特性が悪くても、上述のデジタル補正によりローカル信号Lf1に位相同期するため、ローカル信号Lf2で中継される信号も、ローカル信号Lf1並の低位相雑音特性を実現できる。すなわち、ローカル信号Lf1以外のローカル信号Lf2,Lf3,…,LfNを周波数安定度が悪いものを用いても、安定度の良いローカル信号Lf1並みの低位相雑音特性を実現できる。このため、ローカル信号Lf2,Lf3,…,LfNに用いる周波数シンセサイザのコストを下げることができる。この場合、中継装置のデジタル部に供給するクロックは、ローカル信号Lf1が用いる原振、あるいはローカル信号Lf1そのものから生成する構成とする。
更には、ローカル信号Lf2,Lf3,…,LfNに用いる周波数シンセサイザが用いる原振は、ローカル信号Lf1の原振と共通化されていなくてもよい。この場合、各ローカル信号の原振が非共通化されるため、各ローカル信号の周波数間隔がfCとならず周波数オフセットΔfが加わることになるが、周波数オフセット量がそれ程大きくなければ、この場合も安定度の良いローカル信号Lf1に各ポートの信号を同期させることができる。この場合は、原振を非共通化できるため、中継装置構成が簡単になり、更にローカル信号Lf2,Lf3,…,LfNに用いる周波数シンセサイザのコストを下げることができる。なお、この場合も、本実施の形態の中継装置のデジタル部に供給するクロックは、ローカル信号Lf1が用いる原振、またはローカル信号Lf1そのものから生成する構成とする。
また、本実施の形態では、1番目のポート(受信ポート15−1,送信ポート39−1)と3番目のポート(受信ポート15−3,送信ポート39−3)が低域側(f1)を処理し、1番目のポート(受信ポート15−2,送信ポート39−2)が高域側(f2)を処理する系として説明したが、ポートごとに低域側(f1)、または高域側(f2)のいずれかを選択可能なように設計しても良い。
これを実現するためには、ローカル生成部25から各ミキサ24−1〜24−N,36−1〜36−Nに供給するローカル周波数を、f1またはf2を選択可能な構成とすればよい。このような回路変更を行えば、各ポートを低域側(f1)、高域側(f2)のいずれかに自由に割り当てられるため、トラフィック変動へ柔軟性が更に高まり、更に回路リソースを減らすことが可能となる。
なお、本実施の形態では、2つのポートの合成を例に説明したが、合成するポートは2つ以上であれば幾つでも良い。この場合、各ローカル信号は、f1とf2だけでなく、合成可能な最大数mまでの周波数f1,f2,…,fmが選択可能な構成とすれば良い。
以上のように、本実施の形態では、広帯域信号を2つ以上のポートで帯域を分割して処理する場合に、ローカル位相差算出部41がポート間の位相差を求め、この位相差に基づいてポート間の位相差を補正するようにした。このため、デバイスの性能に制約がある場合でも広帯域な信号を中継することが可能で、かつ故障や干渉による通信品質の劣化を低減することができる。
なお、本実施の形態では、図1に示すように、受信部201→接続部31→送信部202の流れに基づく信号中継について説明したが、必ずしも中継器に特化したものである必要はなく、例えば受信部201→接続部31→合波部32の流れで止め、合波した信号を本装置内で復調・復号しても良い。この場合、合波部32のみ処理速度を2倍に上げる設計とする必要があるが、A/D等の宇宙用デバイスのサンプリング速度上限を超えた広帯域信号の復調・復号を実現する受信機を得ることができる。
同様に、受信部201を除き、本装置内で得られた観測データ等を符号化・変調後、分波部30→接続部31→送信部202と流しても良い。この場合、分波部30のみ処理速度を2倍に上げる設計とする必要があるが、D/A等の宇宙用デバイスのサンプリング速度上限を超えた広帯域信号の符号化・変調を実現する変調機を得ることができる。
実施の形態2.
図16は、本発明にかかる実施の形態2のローカル位相差算出部41aの構成例を示す図である。本実施の形態の中継衛星の構成は、実施の形態1のローカル位相差算出部41をローカル位相差算出部41aに替える以外は、実施の形態1の中継衛星と同様である。以下、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、ミキサ(乗算器)507,530,536と、バンドパスフィルタ(BPF)508,531,537と、AD変換器(A/D)509,532,538と、直交検波部510,533,539と、ローパスフィルタ(LPF)512,534,540と、リミタ513,535,541と、加算器542,543とを備える。
実施の形態1では、2つのポートを用いて最大帯域幅2の広帯域信号中継を実現する例を示したが、同様にK(Kは3以上N以下の整数)個のポートを用いて最大Kの帯域幅の広帯域信号を中継することもできる。
この場合、ローカル生成部25は、周波数間隔をfCとする周波数f1,f2,…,fKに対応するローカル信号Lf1,Lf2,…,Lfkを生成し、各ポートに対応するBPF23−1〜23−N、BPF38−1〜38−Nは、周波数f1,f2,…,fKに対応した周波数特性で設計すれば良い。例えば、K=4とし、1〜4番目のポートを用いて最大4の帯域幅を実現する場合、BPF23−1〜23−4は、それぞれ周波数f1,f2,…,fKのいずれかに対応した異なる帯域を抽出する。
実施の形態では、上述のようにローカル生成部25は、ローカル信号Lf1,Lf2,…,Lfkを生成する。ローカル位相差算出部41aは、Lf1,Lf2,…,Lfkに基づいて、各ローカル信号間の位相差信号Δθi・i-1(i=1,2,…,k)を、実施の形態1と同様に抽出する。
以降、一例としてN=K=4の場合を例に説明する。図16の構成例もK=4の例を示している。この場合、本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、f1,f2,f3,f4にそれぞれ対応する4つのローカル信号間の位相差信号を抽出する。ここでローカル信号Lf1を用いて直接Lf3を位相検波すると、f3−f1=2fCの周波数が発生するため、AD変換の所要サンプリングクロック速度が実施の形態1の2倍に増加する。同様に、ローカル信号Lf1を用いて直接Lf4を位相検波すると、f4−f1=3fCの周波数が発生するため、AD変換の所要サンプリングクロック速度が実施の形態1の3倍に増加する。このようなADサンプルクロック周波数の増加を防ぐため、本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、次式(30)〜(32)で記載される、隣り合う周波数のローカル信号の位相差を検出する。
Δθ21=exp[j(θ21(t))] …(30)
Δθ32=exp[j(θ32(t))] …(31)
Δθ43=exp[j(θ43(t))] …(32)
式(30)は式(10)と同様であるが、他の位相差信号と区別できるよう表現を変更している。式(31)はLf2でLf3を位相検波した場合の位相差信号、式(32)はLf3でLf4を位相検波した場合の位相差信号であり、いずれもLf1でLf2を位相検波した場合の位相差信号の抽出処理と同じ過程で得られる。f4−f3=fC、f3−f2=fCであるため、いずれの場合も、AD変換の所要サンプリングクロック速度は実施の形態1と変わらない。
本実施の形態におけるローカル生成部25は、上記式(30)〜(32)に示した各位相差信号を抽出後、以下の加算処理を行う。式(33)はローカル信号Lf1でLf3を位相検波した場合の位相差信号と同等、式(34)はローカル信号Lf1でLf4を位相検波した場合の位相差信号と同等となる。
Δθ31=Δθ21+Δθ32
=exp[j(θ32(t)+θ21(t))] …(33)
Δθ41=Δθ21+Δθ32+Δθ43
=exp[j(θ32(t)+θ21(t)+θ43(t))] …(34)
図16の構成例では、位相差信号Δθ21は、実施の形態1と同様の処理によってリミタ513から抽出される。同様に、位相差信号Δθ32は、ミキサ530、BPF531、AD変換器532、直交検波部533、ローパスフィルタ534、リミタ535により抽出され、位相差信号Δθ43は、ミキサ536、BPF537、AD変換器538、直交検波部539、ローパスフィルタ540、リミタ541により抽出される。
加算器542は、リミタ513出力とリミタ535出力を加算し、式(33)で示す位相差信号Δθ31を生成する。更に加算器543は、リミタ541出力と加算器542出力を加算し、式(34)で示す位相差信号Δθ41を生成する。
本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、式(34)で得られた位相差信号Δθ41を、ローカル信号Lf4を用いてダウンコンバート/アップコンバートを実施するポートの受信位相補正部/送信位相補正部に供給する。ローカル信号Lf4が入力される受信位相補正部/送信位相補正部は、入力されたローカル信号Lf4に基づいて位相補正/逆補正を行う。
同様に本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、式(33)で得られた位相差信号Δθ31を、ローカル信号Lf3を用いてダウンコンバート/アップコンバートを実施するポートの受信位相補正部/送信位相補正部に供給する。ローカル信号Lf3が入力される受信位相補正部/送信位相補正部は、入力されたローカル信号Lf3に基づいて位相補正/逆補正を行う。
同様に本実施の形態のローカル位相差算出部41aは、式(30)で得られた位相差信号Δθ21を、ローカル信号Lf2を用いてダウンコンバート/アップコンバートを実施するポートの受信位相補正部/送信位相補正部に供給する。ローカル信号Lf2が入力される受信位相補正部/送信位相補正部は、入力されたローカル信号Lf2に基づいて位相補正/逆補正を行う。
各位相差信号を用いた位相補正/逆補正の方法は、実施の形態1と同様である。以上示した各処理により、各ポートはローカル信号Lf1に全て位相を同期することができる。なお本実施の形態では、K=4の場合を例に説明したが、Kは2以上であれば幾つでもよく、K=4以外の場合も同様にしてK−1個の位相差信号Δθ21〜ΔθK・K-1を生成し、対応する受信位相補正部/送信位相補正部に供給すればよい。
以上のように、本実施の形態では、3つ以上のポートで広帯域信号を、帯域を分割して処理する。このため、実施の形態1よりさらに広帯域の信号を通信性能の劣化無く中継することができる。
実施の形態3.
図17は、本発明にかかる実施の形態3のローカル位相差算出部41bの構成例を示す図である。本実施の形態の中継衛星の構成は、実施の形態1のローカル位相差算出部41をローカル位相差算出部41bに替える以外は、実施の形態1の中継衛星と同様である。以下、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
実施の形態2のローカル位相差算出部41aでは、3式のミキサ、バンドパスフィルタ、AD変換器が必要となり、アナログ回路規模がKの増加に伴い増える。このため、本実施の形態では、Lf1以外の各ローカル信号を加算した信号を、まとめてLf1で検波する構成に変更し、これらミキサ、バンドパスフィルタ、AD変換器を減らしている。
図17に示すように、本実施の形態のローカル位相差算出部41bは、ミキサ507と、BPF508と、AD変換器(A/D)509と、加算器544,545と、直交検波部546,547,548と、ローパスフィルタ(LPF)549,550,551と、リミタ552,553,554と、を備える。
本実施の形態のローカル位相差算出部41bは、はじめに加算器544、545によりローカル信号Lf2と、ローカル信号Lf3と、ローカル信号Lf4とを加算する。この加算結果は、ミキサ507に入力される。ミキサ507は、入力された加算結果とローカル信号Lf1とを乗算する。BPF508は、乗算した信号の高域周波数成分を除去して低域周波数成分を抽出する。なおBPF508はローパスフィルタでも良い。本処理は、3つのローカル信号を加算した信号に含まれる周波数成分f2,f3,f4を、f1分DC(Direct Current)側に周波数シフトしたことになる。
図18は、本実施の形態におけるサンプリング処理例を示す図である。図18(a)は、BPF508通過後の信号スペクトラムの一例を示している。図18(a)に示す通り、Lf2の周波数はfC、Lf3の周波数は2fC、Lf4の周波数は3fCに変換され、BPF508通過後の信号の片側帯域幅が3fCとなる。AD変換器509は、図18(a)の信号を片側帯域3fCの2倍以上のサンプリング速度でサンプリングする。図18(b)は、サンプリング速度7fCでサンプリングした場合のスペクトラムの一例を示す。点線の各矢印は、各信号の折り返し成分である。
直交検波部546は、中心周波数fCのLf2に、内部で生成した複素ローカル信号exp[−j(2πfCt)]を乗算し、低域周波数成分を抽出することで、中心周波数fCのLf2をベースバンド周波数の信号に変換する。
同様に、直交検波部547は、中心周波数2fCのLf3に、内部で生成した複素ローカル信号exp[−j(2π2fCt)]を乗算し、低域周波数成分を抽出することで、中心周波数2fCのLf3をベースバンド周波数の信号に変換する。
また同様に、直交検波部548は、中心周波数3fCのLf4に、内部で生成した複素ローカル信号exp[−j(2π3fCt)]を乗算し、低域周波数成分を抽出することで、中心周波数3fCのLf4をベースバンド周波数の信号に変換する。
ローカル信号Lf1でベースバンドに変換された各ローカル信号は、リミタ552,553,554で定振幅化された後、位相差信号Δθ21,Δθ31,Δθ41として出力される。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態2と同様である。
このように、本実施の形態のローカル位相差算出部41bは、AD変換器のサンプリング速度は実施の形態1より高くする必要があるが、ミキサ、バンドパスフィルタ(BPF)、AD変換器を1つで構成できるため、アナログ回路規模を低減することができる。なお、アンダーサンプリングにも対応可能なAD変換器を用いれば、AD変換器のサンプリング速度を7fCから、図18(c)に示すように3.5fCまで下げることも可能である。図18(c)に示すように、点線の各矢印で示される各信号の折り返し成分が、主信号成分Lf2、Lf3、Lf4と重ならないような周波数でアンダーサンプリングすれば良い。
実施の形態4.
図19,20は、本発明にかかる中継衛星の実施の形態4の構成例を示す図である。図19では、受信側の補正に関連する部分を抜き出して示している。図20では、送信側の補正に関連する部分を抜き出して示している。本実施の形態の中継衛星は、遅延器60−1,60−2,65−1,65−2、受信側位相時間差検出部(受信側位相差検出部)61、無変調信号生成部(CW生成部)62−1,62−2、加算器63(送信アナログスイッチマトリックス37内)、送信側位相時間差検出部(送信側位相差検出部)64を追加している。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
実施の形態1〜実施の形態3では、位相雑音等に動的なキャリア位相変動θ(t)を補償する構成について説明した。本実施の形態では、位相雑音等に動的なキャリア位相変動だけでなく、実施の形態1で示した位相オフセットθCや、各ポート間の経路長差、遅延特性等によって生じる固定的な時間差まで自動的に補正する。
この固定的な時間差は、もちろん手動で補正してもよいが、補正に時間がかかること、一旦補正後も経年変化や温度変動により時間、月、年の単位で緩やかに位相・時間ずれが再度生じる場合(半固定である場合)も考えられる。そこで本実施の形態では、実施の形態1で示した動的な位相変動成分θ(t)を補正後、この位相・時間ずれを自動補正する。
またこの自動補正では、中継装置内部で補正用の無変調(CW)波を生成して用いるため、この自動補正は、該当のポートへの中継信号入出力を停止し、スタンバイ状態にした上で実施する。一般に中継衛星は実際の運用に必要なポート数だけを確保することはなく、故障に備えて予備のポートも複数備えている。したがって、各ポートを順次スタンバイ状態にして補正する際は、以下の手順で実施することで、本補正によって一旦信号中継が中断されてしまう事態を回避する。
(1)後述する本実施の形態の補正処理によって既に補正済みの予備系のポートを立ち上げ、受信アナログスイッチマトリックス22のスイッチ制御により、予備系のポートにも補正対象のポートと同じ中継信号を入力する。送信アナログスイッチマトリックス37は、補正対象のポートの信号と予備系のポートの信号とを合成してアンテナに出力する接続とする。ただし、デジタル部の内のどこか(例えば送信位相補正部33−1〜33−N)で予備系のデータの出力を停止することで、2つの信号が合成されないように制御する。
(2)予備系のポートと補正対象のポートの両方に同じ信号が流れ始めたら、デジタル部の内のどこか(例えば送信位相補正部33−1〜33−N)で、所定のタイミングで予備系のポートのデータを出力するようにし、補正対象のポートのデータの出力を停止する。このデジタル的な切り替えにより、信号断線が発生することなく、信号が補正対象のポートから、予備系のポートに移って中継される。
(3)その後、受信アナログスイッチマトリックス22は、予備系のポートだけを選択し、補正対象のポートには信号を入力しない接続に切り替える。同様に、送信アナログスイッチマトリックス37は、予備系のポートのみ選択する接続に切り替える。
(4)信号が入力されなくなった補正対象のポートに対して、実施の形態1で示した動的な位相変動θ(t)の補正を実施する。
(5)後述する方法で、補正対象のポートの位相ずれや時間ずれの自動補正を受信側と送信側それぞれで実施する。
(6)上記の自動補正後、受信アナログスイッチマトリックス22のスイッチ制御により、予備系のポートだけでなく、補正対象のポートにも同じ中継信号を流す。送信アナログスイッチマトリックス37は、補正対象のポートの信号と予備系のポートの信号とを合成してアンテナに出力する接続とするが、デジタル部の内のどこか(例えば送信位相補正部33−1〜33−N)で補正済みポートのデータの出力を停止することで、2つの信号が合成されないように制御する。
(7)補正対象のポートと予備系のポートの両方に同じ信号が流れ始めたら、デジタル内部(例えば送信位相補正部33−1〜33−N)で、あるタイミングで補正済みポートのデータを出力し、予備系のポートのデータを停止する。このデジタル的な切り替えにより、信号断線が発生することなく、信号が予備系のポートから、補正済みのポートに移って中継される。
(8)前述の(7)の後、受信アナログスイッチマトリックス22は、補正済みのポートだけを選択し、予備系のポートには信号を入力しない接続に切り替える。同様に、送信アナログスイッチマトリックス37は、補正済みのポートのみ選択する接続に切り替える。
上記手順に則って各ポート間の位相・時間差を順次自動補正していくことで、中継する信号が途切れることを回避することができる。また上記の例では、一旦補正対象のポートから予備系ポートに中継信号を移し、補正後戻す場合の手順としたが、予備系ポートは既に信号が中継されていないため、予備系ポートの補正は上記の手順とは関係なく、いつでも実施できる。
なお、運用システム側で、中継する信号を別の周波数帯に割り当てる、または停止させ、補正対象のポートが扱う信号帯域に信号を無くしてから、予備系のポートに切り替え、再度信号を中継させていく方法もある。この場合、中継する信号を一旦止めるため運用制約は生じるが、中継器の切り替え手順は簡単化できる。更に主系のポートが故障し、常に予備系のポートも動作させる必要が生じた場合も、一旦中継する信号を止めて本自動補正を行う。
以降、本実施の形態の自動補正の詳細について説明する。
ポート間の位相差・時間差は以下の2箇所で発生する。
(P1)受信アナログスイッチマトリックス22入力端からAD変換器28−1〜28−Nまでの区間
(P2)DA変換器34−1〜34−Nから送信アナログスイッチマトリックス37出力端までの区間
例えば図2、図3に示した受信ポート15−1,15−2(または送信ポート39−1,39−2)の間で、以下の(A),(B)に示すように、位相差θC,時間遅延差Δτ21,Δτ43が生じるが、この位相差、時間遅延差が大きい場合、信号の位相差として、両者の信号合成時にS/N(Signal to Noise ratio)の低下を引き起こす。
(A)動的な位相変動θ(t)を補正した後の、受信側の分波部30−1、30−2の間で発生する位相ずれ(−θC)、及び受信アナログスイッチマトリックス22入力端(=BPF14−1)からAD変換器28−1の伝播時間τ1と、受信アナログスイッチマトリックス22入力端(=BPF14−1)からAD変換器28−2までの伝播時間τ2との差である時間遅延差Δτ21(=τ1−τ2)。
(B)動的な位相変動θ(t)を補正した後の、送信側のBPF38−1、38−2の間で発生する位相ずれ(+θC)、及びDA変換器34−1から送信アナログスイッチマトリックス37出力端(=送信アンテナ40−1入力端)までの伝播時間τ3と、DA変換器34−2から送信アナログスイッチマトリックス37出力端(=送信アンテナ40−1入力端)までの伝播時間τ4との差である時間遅延差Δτ43(=τ3−τ4)。
以降、1番目のポートと2番目のポートの間の補正を例に、はじめに上記(A)の補正方法について説明後、上記(B)の補正方法について説明する。
[受信ポート間の時間遅延差補正(上記(A)の補正方法)]
上述した(1)〜(3)の手順で、受信ポート15−1,15−2をスタンバイ状態に切り替えた後、無変調信号生成部62−2は、−0.5fCの複素無変調信号exp[j(2π(−0.5fC)t)]を生成する。この−0.5fCの複素無変調信号は、後述する時間差を検出するため、周期的に信号出力を停止させるバースト的な信号とする。
図21は、この複素無変調信号波形の一例を示す図である。実線が実数成分(コサイン成分)、点線が虚数成分(サイン成分)である。図21に示すように、信号停止、信号発生時に、ある程度緩やかに信号振幅の立上げ/立ち下げを行うことで、信号の高調波発生を抑制しても良い。複素無変調信号波形は、図21の例に限定されない。図22は、受信側補正用の複素無変調信号に対する処理の流れを示す図である。
無変調信号生成部62−2により生成された複素無変調信号は、ミキサ36−2においてローカル信号Lf2を用いてアップコンバートされ、加算器63の出力端で、図22(a)に示すスペクトラムのように、中心周波数f2−0.5fC(=f1+0.5fC)に周波数変換される。
この送信アナログスイッチマトリックス37の内部の加算器63から出力される信号は、受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(=BPF14−1出力端)に入力される。
受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(=BPF14−1出力端)に入力された中心周波数f2−0.5fCの無変調信号は、受信アナログスイッチマトリックス22内で2分岐され、一方はBPF23−1→ミキサ24−1→BPF27−1→AD変換器28−1のパスを通過する。この時のAD変換器28−1の入力点での信号スペクトラムを図22(b)に示す。もう一方は、BPF23−2→ミキサ24−2→BPF27−2→AD変換器28−2のパスを通過する。この時のAD入力点での信号スペクトラムを図22(c)に示す。
上記の2つパスを経由した2つの無変調信号は、それぞれ受信位相補正部29−1,29−2で位相変動補正が行われた後、受信側位相時間差検出部61に入力される。受信側位相時間差検出部61は、2つの無変調信号の位相差θCと、受信ポート15−1と受信ポート15−2間の時間差Δτ21(=τ1−τ2)を求める。
遅延器60−1,60−2は、受信側位相時間差検出部61で得られた時間差Δτ21情報を基に各ポートの時間差を打ち消す信号の時間遅延調整を行う。受信側位相時間差検出部61で得られた位相差θCは、受信位相補正部29−1,29−2にこれを打ち消す補正値として与えられる。なお、時間遅延処理は、デジタル信号処理で行うことができるため、容易でかつ正確に実現することができる。時間遅延の補正は、例えばサンプリングしたデータをM倍に補間する補間フィルタや、更に補間したデータを、もとのサンプリング速度で間引く多相フィルタなどのディジタルフィルタで実現することができる。
図23は、本実施の形態の受信側位相時間差検出部61の構成例を示す図である。図23に示すように、受信側位相時間差検出部61は、複素乗算部601、ローパスフィルタ602、極座標変換部(I,Q→位相θ)603、電力変換部604、立ち上り差検出部605を備える。
ここで受信位相補正部29−1(受信ポート15−1)から受信側位相時間差検出部61に入力される複素無変調信号をCW(+0.5fC)とし、RPC29−2(受信ポート15−2)から受信側位相時間差検出部61に入力される複素無変調信号をCW(−0.5fC)とする。
ポート間で位相差が無い場合、CW(+0.5fC)の位相θ1(t)と、CW(−0.5fC)の位相θ2(t)との関係はθ1(t)=−θ2(t)となる。この場合、両者を複素乗算部601で乗算し、ローパスフィルタ602で平均化した後の信号ベクトル角は0(ゼロ)を示す。
一方、ポート間で位相差が発生し、CW(+0.5fC)の位相θ1と、CW(−0.5fC)の位相θ2との関係が、図24に示すようにθ1(t)=−θ2(t)+Δθ’21となる場合、受信側位相時間差検出部61で得られる信号のベクトル角はΔθ’21を示す。図24は、本実施の形態における各無変調信号の波形例を示す図である。実施の形態1で示した受信側の位相オフセットθCは、このΔθ’21に相当する。
このように受信側位相時間差検出部61は、ローパスフィルタ602で平均化した後の信号ベクトル角Δθ’21を求め、受信位相補正部29−1に出力する。なお各無変調信号はバースト的に到来するため、各無変調信号の振幅が十分大きい時間で上記演算を行い、信号が存在しない時間では誤差が生じるため上記演算は行わない制御としても良い。
また受信側位相時間差検出部61は、各複素無変調信号CW(+0.5fC)とCW(−0.5fC)がバースト的に到来するため、これらの電力を求め、各電力データがあるしきい値を越える時刻(t1,t2)を、立ち上りエッジ時間として求めることで、両者の時間差情報Δτ21(=t2−t1)を検出する。
なお立ち上りエッジの検出において、クロックのサンプリング周期で得られる電力データを、例えばクロック速度の数十倍にデジタル補間してサンプリング速度を上げた上で、電力データのエッジ検出を行うことで、エッジ検出時刻の精度を上げてもよい。
このように本実施の形態の中継装置では、実施の形態1〜3で述べたローカル位相変動の補償を行い、かつ受信側の2つのポートを同時に通過する境界の周波数位置に、共通の無変調波を入力し、デジタル部で受信側のポート間における位相差と時間遅延差を検出・補正する構成としている。このため、アナログ素子の追加を最低限に抑えながら、デジタル処理による正確できめ細かい位相・時間分解能で、受信側のポート間における時間遅延差の自動補正を実現することができる。
また上記の例では、遅延器60−1,60−2入力前の信号を受信側位相時間差検出部61に接続してΔτ21を求める構成としたが、遅延器60−1,60−2出力の信号を受信側位相時間差検出部61に接続し、受信側位相時間差検出部61が検出した時間差を、フィードバック(ループ)制御によって徐々に補正しても良い。この場合も、最終的にはΔτ21を打ち消す時間補正が実現される。
[送信ポート間の時間遅延差補正(上記(B)の補正方法)]
図25は、本実施の形態における送信側補正用CW信号に対する処理の流れを示す図である。上記(1)〜(3)の手順で、送信ポート39−1と送信ポート39−2をスタンバイ状態に切り替えた後、無変調信号生成部62−1は、+0.5fCの複素無変調信号exp[j(2π(+0.5fC)t)]を生成する。図25(a)は、この複素無変調信号のスペクトラムを示している。この際、もう一方の無変調信号生成部62−2からは信号を出力しない。
この+0.5fCの複素無変調信号も、後述する時間差を検出するため、周期的に信号出力を停止させるバースト的な信号とする。この複素無変調信号は、ミキサ36−1においてローカル信号Lf1を用いてアップコンバートされて加算器63に入力される。加算器63の出力端におけるアップコンバート後の複素無変調信号のスペクトラムを図25(c)に示す。図25(c)に示すように、この複素無変調信号は中心周波数f1+0.5fC(=f2−0.5fC)に周波数変換される。
本実施の形態における中継装置では、送信側の補正の際、この送信アナログスイッチマトリックス37の内部の加算器63から出力される信号を、受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(BPF14−1出力端)に入力する。
受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(BPF14−1出力端)に入力された中心周波数f1+0.5fCの無変調信号は、受信アナログスイッチマトリックス22によってBPF23−1に接続される。したがって、本無変調信号は、BPF23−1→ミキサ24−1→BPF27−1→AD変換器28−1のパスを通過し、受信位相補正部29−1に入力される。AD変換器28−1への入力前の信号スペクトラムを図25(d)に示す。図25(d)に示す通り、この信号は中心周波数+0.5fCの信号となる。更に本無変調信号は、受信位相補正部29−1で位相変動補正が行われた後、送信側時間差検出部64に入力される。送信側時間差検出部64は、入力された信号を、送信側時間差検出部64内で生成した周波数−0.5fCの複素無変調信号(自走複素無変調信号)exp[j(2π(−0.5fC)t)]と複素乗算する。
図26は、本実施の形態の送信側位相時間差検出部64の構成例を示す図である。本実施の形態の送信側位相時間差検出部64は、複素乗算部611、ローパスフィルタ612、極座標変換部(I,Q→位相θ)613、電力変換部614、立ち上り差検出部615、自走複素無変調信号生成部616を備える。
複素乗算部611は、受信位相補正部29−1から入力される信号と自走複素無変調信号生成部616により生成された自走複素無変調信号とを乗算する。ローパスフィルタ612は、複素乗算部611による乗算後の信号を平均化する。この平均化された信号のベクトル角は、自走複素無変調信号の位相と、送信ポート39−1→受信ポート15−1を経て送信側位相時間差検出部64に入力される無変調信号位相との差に相当する。送信側位相時間差検出部64は、極座標変換部613がこのベクトル角を求め位相差情報Δθ1として保持する。なお各複素無変調信号はバースト的に到来するため、各複素無変調信号の振幅が十分大きい時間で上記演算を行い、信号が存在しない時間では誤差が生じるため上記演算は行わない制御としても良い。
また、送信側位相時間差検出部64では、電力変換部614は、複素乗算部611の出力信号を電力変換し、立ち上り差検出部615は電力データがあるしきい値を越える時刻を立ち上りエッジ時刻t1として記録する。この時、立ち上り差検出部615は、無変調信号生成部62−1から複素無変調信号を受信開始した時刻t0も記録し、各時刻の差(t1−t0)を求めて、その結果をΔτ1として記録する。
次に、無変調信号生成部62−1は複素無変調信号の送信を停止し、もう一方の無変調信号生成部62−2が、−0.5fCの複素無変調信号exp[j(2π(−0.5fC)t)]を生成する。図25(b)にこの信号のスペクトラムを示す。この複素無変調信号は、ミキサ36−2によりローカル信号LF2を用いてアップコンバートされ、加算器63の出力端で、図25(c)に示すように、中心周波数f2−0.5fCに周波数変換される。
送信アナログスイッチマトリックス37の内部の加算器63から出力される信号は、受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(=BPF14−1の出力端)に入力される。
本実施の形態の中継装置は、送信側の補正の際、受信アナログスイッチマトリックス22の入力端(=BPF14−1の出力端)に入力された中心周波数f2−0.5fC(=f1+0.5fC)の無変調信号を、受信アナログスイッチマトリックス22によってBPF23−1に接続する。したがって、この無変調信号も、BPF23−1→ミキサ24−1→BPF27−1→AD変換器28−1のパスを通過し、RPC29−1に入力される。AD変換器28−1への入力前の信号スペクトラムは図25(d)に示す通り、中心周波数+0.5fCとなる。また、この無変調信号は、RPC29−1で位相変動補正が行われた後、送信側位相時間差検出部64に入力される。送信側位相時間差検出部64は、入力された信号を、内部で発生した周波数−0.5fCの複素無変調信号(自走複素無変調信号)exp[j(2π(−0.5fC)t)]と複素乗算する。この乗算結果をローパスフィルタ612で平均化して得られた信号のベクトル角は、自走複素無変調信号の位相と、送信ポート39−2→受信ポート15−1を経て送信側位相時間差検出部64に入力される無変調信号位相との差に相当する。送信側位相時間差検出部64は、この位相差情報をΔθ2として保持する。なお各複素無変調信号はバースト的に到来するため、各複素無変調信号の振幅が十分大きい時間で上記演算を行い、信号が存在しない時間では誤差が生じるため上記演算は行わない制御としても良い。
また、送信側位相時間差検出部64では、電力変換部614は、複素乗算部611の出力信号を電力変換し、立ち上り差検出部615は電力データがあるしきい値を越える時刻を立ち上りエッジ時刻t3として記録する。この時、立ち上り差検出部615は、無変調信号生成部62−2から複素無変調信号を受信開始した時刻t2も記録し、各時刻の差(t3−t2)を求めて、その結果をΔτ2として記録する。
以上のようにして送信ポート39−1→受信ポート15−1を経て得られたΔθ1と、送信ポート39−2→受信ポート15−1を経て得られたΔθ2との差から、送信ポート39−1と送信ポート39−2の間の位相差を得ることが出来る。即ち、送信側位相時間差検出部64はΔθ2とΔθ1を減算した結果を位相差情報Δθ21として得ることができる。
実施の形態1で示した送信側の位相オフセットθCは、このΔθ21に相当する。送信側位相時間差検出部64は、この位相差情報Δθ21を打ち消す値を送信位相補正部33−2に与える。
また送信側位相時間差検出部64は、送信側のポート39−1とポート39−2間の時間差Δτ21(=Δτ2−Δτ1)を求める。遅延器65−1,65−2は、送信側位相時間差検出部64で得られた時間差情報Δτ21を基に各ポートの時間差を打ち消す信号の時間遅延調整を行う。時間遅延は、デジタル信号処理で行うことが出来るため、容易でかつ正確に実現することができる。なお、遅延器65−1,65−2は、前述した遅延器60−1,60−2と同様、補間フィルタや多相フィルタで構成される。
このように本実施の形態の中継装置では、実施の形態1〜3で前述したローカル位相変動の補償を行い、かつ送信側の2つのポートのいずれも通過可能な、境界に位置する周波数に、無変調波を交互に入力し、デジタル部で送信側のポート間における位相差と時間遅延差を検出・補正する構成とした。このため、アナログ素子の追加を最低限に抑えながら、デジタル処理による正確できめ細かい時間分解能で、送信側のポート間における時間遅延差の自動補正を実現することができる。
なお、位相オフセットθCは、受信側と送信側で符号は異なるが(−θC,+θC)、その絶対値は同じであるため、受信側位相時間差検出部61、または送信側位相時間差検出部64のいずれかでこの位相オフセットを求め、符号だけ反転させながら送信側と受信側で共有して用いても良い。この場合、位相オフセットを求める回路規模を削減することができる。
また、無変調信号生成部62−1と無変調信号生成部62−2とは同時に信号を生成することはないため、無変調信号生成部を1つにまとめてもよい。この場合、無変調信号生成部は、送信ポート39−1に複素無変調信号を流す際は、周波数を+0.5fC、送信ポート39−2に複素無変調信号を流す際は、周波数を−0.5fCに切り替えられる機能に拡張すれば良い。なお、複素無変調信号の直交成分の符号を反転するだけで、周波数は正から負に反転するため、本機能の拡張は容易である。
なお本例では受信側の時間差補正も、送信側の時間差補正も、1番目のポートと2番目のポートの間の時間遅延差を補正する場合について説明したが、同様に2番目のポート(受信ポート15−2,送信ポート39−2)と3番目のポート(受信ポート15−3,送信ポート39−3)、3番目のポートと4番目のポート等、各ポート間の時間遅延差を補正することができる。この場合、遅延器はポート毎に必要となるが、無変調信号生成部62−1,62−2や受信側位相時間差検出部61は共用して使用することができる。
また各時間差情報Δτ21,Δτ32,Δτ43,…を基に、あるポート(例えば受信ポート15−1)を基準にした各ポートとの時間差を求めることもできるため、全てのポートの時間差をゼロに制御することも出来る。
なお、実施の形態では、デジタル部で受信側、あるいは送信側のポート間における位相差と時間遅延差を検出・補正する例を説明したが、必ずしも位相差と時間遅延差の両方を検出・補正する必要はなく、時間遅延差が十分小さい場合は、位相の補正だけで良い。この場合、時間遅延差を求める回路と各遅延器が削減できるため、回路規模を更に減らすことができる。
また実施の形態1〜実施の形態4では、中継衛星への適用例で説明したが、本実施の形態の中継装置は、地上の無線中継機、あるいは無線基地局、無線端末にも同様に適用することで、無線機の広帯域化を実現することができる。
実施の形態5.
次に、実施の形態5の中継装置について説明する。以上の実施の形態では、接続部31がデジタルスイッチマトリックスであるとして説明したが、接続部31の前後に受信デジタルビームフォーミング(DBF:Digital Beam Forming)機能と送信DBF機能を有する構成としても良い。本構成とすることで、広帯域な信号を中継する効果に加え、各ビームエリアを近づけても同一周波数の信号が干渉しない、高いアンテナ指向性も実現することができる。
図27は、実施の形態2で示した2つのビームエリア100,102(広帯域ビームエリア100、狭帯域ビームエリア102)を近づけた場合の同一周波数干渉の様子を示す図である。図27中、(a)で示すビームエリア100からの広帯域信号Aと、(b)で示すビームエリア102からの狭帯域信号{B,C,D}とは同一周波数帯を使用している。よって、ビームエリア100とビームエリア102の距離を近づけると、中継衛星200のアンテナ21−1では、図27中の(c)に示すように、広帯域信号Aだけでなく、ビームエリア102からの狭帯域信号{B,C,D}も小さなレベルで受信される。
図27中の(c)に示す信号702,703,704は、アンテナ21−1においてそれぞれ小さなレベルで受信されるビームエリア102からの狭帯域信号{B,C,D}の成分であり、広帯域信号Aに対して干渉成分となり、通信品質の劣化をもたらす。
同様に、ビームエリア100とビームエリア102の距離を近づけると、中継衛星200のアンテナ21−2には、図27中の(d)に示すように、ビームエリア102からの狭帯域信号{B,C,D}だけでなく、ビームエリア100からの広帯域信号Aも小さなレベルで受信される。
図27中の(d)に示す信号701は、アンテナ21−2において小さなレベルで受信されるビームエリア100からの広帯域信号Aの成分であり、狭帯域信号{B,C,D}に対して干渉成分となり通信品質の劣化をもたらす。
上記の課題は、前述した受信DBF機能を備えることにより解決される。受信DBF機能による受信DBF処理は、分波部30−1〜30−Nで分解された各信号に対して行われる。図28は、本実施の形態の受信DBF処理の一例を示す図である。
図28中、入力信号(1)'(=図28中の信号710)は、分波部30−1から受信DBF機能に入力される信号であり、実施の形態1の図7で示した信号(1)(=広帯域信号Aの一部)に小さなレベルの信号B(信号702)が加わった信号である。
また、入力信号B'(=図28中の信号711)は分波部30−3から受信DBF機能に入力される信号であり、狭帯域信号Bに小さなレベルの信号(1)(=広帯域信号Aの一部)(信号701a)が加わった信号である。
ここで受信DBF機能に入力されるビーム番号をk(∈{0,1,2,…,K−1})、各分波部で分波された各サブチャネル信号の番号をj(∈{0,1,2,…,J−1})、出力先のビーム番号をi(∈{0,1,2,…,I−1})とし、ベースバンド入力信号をD(j,k)、受信複素DBF係数をr(i,j,k)とすると、受信DBF処理後のベースバンド信号R(i,j)は以下の式(35)で示される。
図28の例では、ビームエリア100からのサブチャネル番号j=1に相当する信号(1)’と、ビームエリア102からのサブチャネル番号j=1に相当する信号B’との受信DBF処理(2入力、2出力)を示している。
ビームエリア100の番号をk=0、ビームエリア102の番号をk=1とすると、受信DBF処理後の信号は、以下の式(36)、(37)で示される。
R(0,1)=D(1,0)×r(0,1,0)+D(1,1)×r(0,1,1) …(36)
R(1,1)=D(1,0)×r(1,1,0)+D(1,1)×r(1,1,1) …(37)
ここでD(1,0)が信号(1)’に相当し、D(1,1)が信号B’に相当し、R(0,1)が図28の705aに示されるDBF処理後の信号(1)に相当し、R(1,1)が図28の103aに示されるDBF処理後の信号Bに相当する。
図28の例を用いて本実施の形態の受信DBF処理の動作原理を説明する。図28では、信号(1)’に混在する信号Bの小さな成分である信号702を、信号B’に含まれる信号Bを用いて打ち消す例を示している。具体的には、信号(1)’、信号B’に、それぞれ受信DBF係数を複素乗算器720、722により乗算し、乗算後の信号を加算器724によりベクトル合成する。これによって、図28の信号705aに示すように、信号Bの小さな成分である信号702が信号(1)’から除去される。なお、この干渉除去の過程において、705aの信号(1)が信号710に含まれる信号705と同振幅、同位相となるように、受信DBF係数が設定される。
同様に、図28では、信号B’に混在する信号(1)の小さな成分である信号701aを、信号(1)’に含まれる信号(1)を用いて打ち消す例を示している。具体的には、信号(1)’、信号B’に、それぞれ受信DBF係数を複素乗算器721、723により乗算した上で、加算器725によりベクトル合成する。これによって、図28の信号103aに示すように、信号(1)の小さな成分である信号701aが信号Bから除去される。なお、なお、この干渉除去の過程において、信号103aの信号Bが信号711に含まれる信号103と同振幅、同位相となるように、受信DBF係数が設定される。
これら受信DBF係数r(i,j,k)は、各地上局の位置や、中継衛星の位置を把握している地上の制御局110によって計算されて、別回線で中継衛星200に与えられるシステムとしても良い。その際、制御局110は、DBF処理前の入力データを部分的に別回線で中継衛星200から収集し、受信DBFの係数算出に役立てても良い。
あるいは、受信DBFの係数算出を、制御局110ではなく中継衛星200が自ら実施してもよい。この場合、中継衛星200の演算量は増加するが、地上の制御局110で制御される場合と比較して、リアルタイム(迅速)な干渉除去を実現することができる。
図29は、受信DBF機能および送信DBF機能を有する中継装置の構成例を示す図である。図29では、4ビーム入力、4ビーム出力時の例を示し、受信DBF機能、接続部31、送信DBF機能以外の図示は省略している。受信DBF機能、接続部31、送信DBF機能以外の構成は実施の形態1と同様である。
受信DBF部801は、前記の式(35)の処理を行う。なお図29では、接続する信号線の数を減らすため、0番からJ−1番までの分波後のサブチャネルデータを時分割多重している。これにより、各入力信号D(j,k)の数は、ビーム毎に1本の構成となる。同様に出力信号R(j,k)の数も、ビーム毎に1本の構成となる。なお、分波後のサブチャネルデータを時分割多重しなくてもよいし、また、時分割多重する場合にも時分割多重の際に多重するサブチャネルの組は図29の例に限定されない。
各受信DBF用係数乗算部802,803,804,805は、ビーム信号D(j,k)に対して入力ビーム番号k∈{0,1,2,3}単位で、受信DBF係数r(i,j,k)を複素乗算する。また各受信DBF用加算部806,807,808,809は、出力ビーム番号i∈{0,1,2,3}単位で、受信DBF係数が乗算された各サブチャネル信号を全てベクトル加算する。
この一連の受信DBF処理によって、干渉成分が除去された各ビームのサブチャネル信号は、実施の形態1と同じ動作を行う接続部31によって、送信側の合波部に振分けられる。
送信側も受信側と同様に、送信DBF処理によって下りのビームエリア(例えばビームエリア400、402)を近づける際に生じる、地上受信局における同一周波数干渉を緩和することができる。即ち、送信DBF処理では、隣接ビームからの同一周波数干渉信号を打ち消すように、予め中継衛星側で、主信号に隣接ビームからの信号を混ぜて送信する。
図30は、送信DBF処理例と効果を示す図である。図30(a)に示すように、送信DBF部811は、図3の送信アンテナ40−1の送信スペクトラムに対して、信号Bを用いた干渉除去用の信号901を、信号Aのスペクトラムの周波数干渉部分に加える。なお広帯域信号Aの干渉除去を行う場合は、更に、信号Bを打ち消した後の広帯域信号Aの周波数対振幅特性や周波数対位相特性が崩れないように計算された受信DBF係数が設定される。
また送信DBF部811は、図30(b)に示すように、図3の送信アンテナ40−2の送信スペクトラムに対して、信号Aの部分帯域を用いた干渉除去用の信号902を、信号Bのスペクトラムに加える。
これにより、図30(c)に示すように、受信局401ではアンテナ40−2からの信号Bがアンテナ40−1からの信号901によって打ち消され、ほぼ元の信号と変わらない広帯域信号Aを受信することができる。同様に、図30(d)に示すように、受信局403ではアンテナ40−1からの信号Aがアンテナ40−2からの信号902によって打ち消され、ほぼ元の信号と変わらない狭帯域信号Bを受信することができる。
ここで送信DBF部811に入力されるビーム番号をk(∈{0,1,2,…,K−1})、各サブチャネル信号の番号をj(∈{0,1,2,…,J−1})、出力先のビーム番号をi(∈{0,1,2,…,I−1})とし、ベースバンド入力信号をM(j,k)、受信複素DBF係数をw(i,j,k)とすると、送信DBF処理後のベースバンド信号T(i,j)は次の式(38)で示される。
図29に、4入力4出力における送信DBF部811の構成例についても示している。送信DBF部811は、前記の式(38)の処理を行う。なお接続する信号線の数を減らすため、0番からJ−1番までのサブチャネルデータを時分割多重して、前段の接続部31から各データを入力している。これにより、各入力信号(ベースバンド入力信号)M(j,k)の数は、ビームごとに1本の構成となる。同様に出力信号T(j,k)の数も、ビームごとに1本の構成となる。
各送信DBF用係数乗算部812,813,814,815は、入力信号M(j,k)に対して入力ビーム番号k∈{0,1,2,3}単位で、送信DBF係数w(i,j,k)を複素乗算する。また各送信DBF用加算部816,817,818,819は、出力ビーム番号i∈{0,1,2,3}単位で、送信DBF係数が乗算された各サブチャネル信号を全てベクトル加算する。
これら送信DBFの係数w(i,j,k)は、受信DBFの係数r(i,j,k)と同様、各地上局の位置や、中継衛星の位置を把握している地上の制御局110によって計算されて、別回線で中継衛星200に与えられるシステムとしても良い。または、各地上局で送信DBFの係数w(i,j,k)を計算して、計算結果を別回線で、中継衛星200に与えられるシステムとしても良い。
なお、以上の例では、受信DBFと送信DBFの両方を行う例を示したが、いずれか一方のみを行うようにしてもよい。また、本実施の形態では、隣接する1つのビームエリアからの干渉成分を除去する例を説明したが、同様に2つ以上のビームエリアからの干渉成分を除去するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態では、受信DBF処理、送信DBF処理により、近接するビームエリアからの干渉を除去するようにした。このため広帯域な信号を中継する効果に加え、各ビームエリアを近づけても同一周波数の信号が干渉しない、高いアンテナ指向性も実現することができる。これにより、同一周波数の繰返し利用率が向上し、広帯域な信号を中継する効果と合わさって、衛星システムの更なる大容量化を実現することができる。
なお、本実施の形態では中継衛星への適用例で説明したが、本実施の形態の中継装置は、地上の指向性アンテナを複数有する無線中継機、または無線基地局、無線端末にも同様に適用することで、無線機の広帯域化とともに高いアンテナ指向性を実現することができる。
実施の形態6.
次に、実施の形態6の中継装置について説明する。実施の形態4では、位相オフセットθCや、各ポート間の経路長差、遅延特性等によって生じる固定的な時間差を補正するために、一旦該当のポートへの中継信号入出力を停止し、スタンバイ状態にした上で実施する例を示した。
本実施の形態では、受信側のポート間調整に限定されるが、スタンバイ状態とせずに、中継信号を入出力したまま、CWを用いて位相オフセットθCや、固定的な時間差を補正する。これにより、スタンバイ状態に切り替える手間が省けるため、システム運営が容易となる。
なお、本実施の形態は、受信側のポート間調整の際に有効であるため、例えば、中継衛星上で広帯域信号を復調する場合や、地上局で広帯域信号を復調する場合に適用することができる。
図31は、本実施の形態の中継装置の構成例を示す図である。本実施の形態の中継装置の基本的な構成は、図19と同様であり、図19の構成例に対して、CWレプリカ生成部71とCW除去部70−1,70−2を追加する。なお、図31では、追加する部分にかかる構成要素を示しており、これら以外の構成要素は図示を省略している。
無変調信号生成部62−2は実施の形態4と同様に、無変調信号を生成する。受信ポート15−1,15−2をスタンバイ状態に切り替えずに中継信号が入出力する状態のままとする。無変調信号生成部62−2により生成された無変調信号は、36−2によりアップコンバートされ、加算器63を経由して受信ポート15−1,15−2へ入力される。受信側位相時間差検出部61は、実施の形態4と同様に、2つの受信ポートに入力される無変調信号(CW波)の位相差や時間差を検出する。具体的には、受信ポート15−1に入力されRPC29−1から受信側位相時間差検出部61に入力される無変調信号を第1の無変調信号とし、受信ポート15−2に入力されRPC29−2から受信側位相時間差検出部61に入力される第2の無変調信号とすると、受信側位相時間差検出部61は、第1の無変調信号と第2の無変調信号に基づいて、受信ポート15−1,15−2間の位相差(θC)、時間差を検出する。さらに、受信側位相時間差検出部61は、検出した時間差に基づいて遅延補正値Δτ21を算出する。なお、実際には、受信側位相時間差検出部61に入力される各信号に受信信号も含まれているが、実施の形態4と同様に、第1の無変調信号と第2の無変調信号の成分の特性(立ち上がり等)を用いて位相差や時間差を検出する。また各検出過程で2つのCWの電力(電力情報)も検出する。CWレプリカ生成部(レプリカ生成部)71は、受信側位相時間差検出部61で検出した位相差、電力情報および遅延補正値Δτ21に基づいて、受信信号に混在するCW波と位相が180度異なり、かつ等電力のCWレプリカを生成する。
生成された各CWレプリカは、CW除去部(無変調信号除去部)70−1,70−2に入力され、遅延器60−1,60−2から出力されるCW波が混在した受信ベースバンド信号とベクトル加算される。この際に、CWレプリカ生成部71は、信号に混在する補正用CWと、CWレプリカのタイミングが揃うように、遅延補正値Δτ21を用いて、遅延器で遅延補正された時間だけ、各CWレプリカのタイミング調整も行う。
なお、ここでは、入力される信号が2分岐される受信ポート15−1,15−2間の位相差等を求める例を説明したが、入力される信号が分岐されない受信ポート間の位相差等を求める場合には、実施の形態4の送信側と同様に2つの無変調信号生成部62−1,62−2を用いることができる。
この一連の処理によって、補正用のCW波は、CWレプリカによって打ち消され、本来の信号中継に必要な受信信号だけが分波部に入力される。したがって、中継信号を入出力したまま、CWを用いて位相差(位相オフセットθC)や、固定的な時間差を補正することができる。
なお、受信側位相時間差検出部61は、本来の中継信号が混在した状態で、各CWを検出する必要があるため、中継信号が干渉成分として、検出誤差の増加を招く可能性がある。したがって、誤差の増加が懸念される場合は、CW成分だけを抽出する狭帯域ディジタルフィルタを前段に設けて、中継信号成分を除去してから、実施の形態4で示した時間差、位相差を求める信号処理を実施してもよい。