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JP5837779B2 - 工具用接合体、これを用いた切削工具および工具用接合体の製造方法 - Google Patents
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JP5837779B2 - 工具用接合体、これを用いた切削工具および工具用接合体の製造方法 - Google Patents

工具用接合体、これを用いた切削工具および工具用接合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、工具用接合体やこれを用いた切削工具、この工具用接合体の製造方法に関するものである。
従来、切削工具などに使用する目的で、アルミナ質焼結体が用いられている。これは、アルミナ質焼結体が、化学的安定性に優れ、高温でも高硬度を維持していることから、高速加工用の切削工具向けの材質として適しているからである。アルミナ質焼結体の中でも、酸化ジルコニウム(以下、単にZrO2)および炭化チタン(以下、単にTiC)を含有するアルミナセラミックは、鉄に対する耐反応性に優れることから、主に鋳鉄の切削用工具に用いられている。
こうした切削工具では、更なる高強度化と焼結体の低廉化を実現するために種々の工夫がなされている。例えば、アルミナ質焼結体の強度を更に高くするために、アルミナ質焼結体に炭化シリコン(SiC)ウィスカーを含有させ、ダクタイル鋳鉄などの難削材の切削加工工具とすることが提案されている。他方、SiCウィスカーは高価なことから、切れ刃のみにSiCウィスカーを含有させ、切れ刃以外の基材部は、SiCウィスカーを含まないアルミナ質焼結体とする切削工具も提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開平11−10409号公報
しかしながら、SiCウィスカーの使用量を減らそうとして切れ刃の厚さを薄くすると、刃先強度が不十分になってしまう。このため、低廉化を図りつつ、十分な強度を持った工具用のアルミナ質焼結体が求められていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、必ずしもSiCウィスカーを用いることなく、高強度の工具用材料を実現することを目的とする。このため、本発明は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
アルミナ質焼結体で形成された第1の層と、超硬合金またはサーメットで形成された第2の層とを一体に接合してなり、
前記第2の層の厚みに対する前記第1の層の厚みの比が、0.03から0.50である工具用接合体。
この工具用接合体では、単身のSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体を用いたものより強度を高くすることができる。
[適用例2]
前記第1の層と前記第2の層との熱膨張係数の差が1.0ppm/K以内である適用例1記載の工具用接合体。
この工具用接合体では、第1の層と第2の層との熱膨張係数の差を1.0ppm/K以下としているので、使用時の温度上昇に対するクラックの発生などを抑制することができる。
[適用例3]
前記第2の層を形成する超硬合金における金属結合相の含有量が、25から40体積%である適用例2記載の工具用接合体。
このように、超硬合金の結合相における金属結合相の含有量を、調整することで、第1,第2の層の熱膨張係数の差を1.0ppm/K以下とすることができる。金属結合相は、例えば、WC−Co系超硬合金の場合はコバルト(Co)の含有量を、WC−Co−Ni−Cr系超硬合金の場合はCo−Ni−Crの含有量を,WC−Ni−Cr系超硬合金の場合はNi−Crの含有量を、それぞれ25から40体積%までにすれば、アルミナ質焼結体である第1の層との熱膨張係数との差を1.0ppm/K以下とすることができる。
[適用例4]
前記アルミナ質焼結体は、ZrO2含有アルミナセラミック,SiCウィスカー含有アルミナセラミック,SiC粒子含有アルミナセラミック,TiC含有アルミナセラミック及び99.5質量%以上の高純度アルミナセラミックのいずれかである適用例1から適用例3のいずれか記載の工具用接合体。
かかる工具用接合体では、更に強度を高くすることができる。
[適用例5]
前記第1,第2の層が、ロウ付けまたはホットプレスにより一体に接合された適用例1から適用例4のいずれか記載の工具用接合体。
第1,第2の層をロウ付けあるいはホットプレスにより一体に接合することにより、工具用に使用できる十分な強度を備えた工具用接合体を容易に形成することができる。また、ロウ付けまたはホットプレスにより一体形成することにより、コーティング超硬より、アルミナ層(アルミナ質焼結体で形成された第1の層)を厚くすることができる。
[適用例6]
前記第1,第2の層が、Ag系ロウ材を用いたロウ付けにより一体に接合された適用例1から適用例5のいずれか記載の工具用接合体。
かかる工具用接合体は、耐欠損性を向上させることができる。
[適用例7]
前記第1の層と前記第2の層との熱膨張係数の比が1.11以内である適用例1から適用例6のいずれか記載の工具用接合体。
この工具用接合体では、第1の層と第2の層との熱膨張係数の比を1.11以内としているので、使用時の温度上昇に対するクラックの発生などを抑制することができる。ここで言う「熱膨張係数の比」は、(大きい方の熱膨張係数)÷(小さい方の熱膨張係数)である。
[適用例8]
適用例1から適用例7のいずれか記載の工具用接合体を備えた切削工具。
かかる構成により、実用的な高強度を有する切削工具を安価に提供することが可能となる。
[適用例9]
アルミナ質焼結体で形成された第1の厚みを有する表層材を用意し、
超硬合金またはサーメットで形成された第2の厚みを有する基材を用意し、
前記基材の前記第2の厚みに対する前記表層材の前記第1の厚みの比を、0.03から0.50までに調整し、
前記基材に前記表層材を、ロウ付けまたはホットプレスにより一体に接合する
工具用接合体の製造方法。
かかる工具用接合体の製造方法によれば、簡単な製造工程により、十分な強度を備えた工具用接合体を容易に製造することができる。
実施例としての工具用接合体10の構造を示す説明図である。 工具用接合体に用いた素材を示す説明図である。 実施例と比較例を示す説明図である。 実施例1と比較例1の破壊挙動を示すグラフである。 切削工具100の外観を示す説明図である。 耐欠損性試験と耐摩耗試験の結果を示す説明図である。 工具用接合体の他の構成例を例示する説明図である。
[接合体の構成]
実施例を挙げて、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明を実施するための工具用接合体の構造図である。この工具用接合体10は、切削バイトの先端に取り付けられる切削チップであり、アルミナ質焼結体からなる第1の層である表面層20と、第2の層である基材層30とから構成されている。表面層20は基材層30に接合層40により接合されている。表面層20としては、後述するように、ZrO2含有アルミナセラミック,SiCウィスカー含有アルミナセラミック,SiC粒子含有アルミナセラミック,TiC含有アルミナセラミックなどを用いることができる。なお、上記アルミナ質焼結体のほかに、TiNやTiCNといったTi系炭窒化物を含有したアルミナ質焼結体でも同じ効果を得ることができる。また、基材層30としては、超硬合金やサーメットなどを用いることができる。接合層40としては、ロウ材などを用いることができる。
図1に示した工具用接合体10では、表面層20であるアルミナ質焼結体の厚みT1は、0.10から0.50mmとした。また接合層40の厚みは、10から30μmとした。その上で、基材層30の厚みT2に対する表面層20の厚みT1の比T1/T2を調整した。
[製造方法]
次に、工具用接合体10の実施例および比較例の製造方法について説明する。
〈1〉表面層20の素材の製作:
工具用接合体10に用いた表面層20の素材を、図2に、素材A,B1,B2,C,G,Hとして示した。
A :ZrO2含有アルミナセラミック(製品名HC1)
B1:SiCウィスカー含有アルミナセラミック(製品名WA1)
B2:SiC粒子含有アルミナセラミック(製品名SE1)
C :TiC粒子含有アルミナセラミック(製品名HC2)
G :99.5質量%高純度アルミナセラミック
H :30体積%部分安定化ジルコニア含有アルミナセラミック
なお、製品名は、いずれも日本特殊陶業の製品名である。
これらの素材AからCを、一辺15mmの正方形形状とし、その厚さを、研磨加工により、所定寸法T1+0.50mmとした。各素材の厚さT1については、後で実施例および比較例として説明する。
〈2〉基材層30の製作:
工具用接合体10の基材層30は、主に超硬合金とした(比較例として、他の素材を用いたものがある)。実施例および比較例で用いた基材層30の素材を、図2に、素材DからFとして示した。
D:超硬合金1(Co含有量40体積%)
E:超硬合金2(Co含有量32体積%)
F:超硬合金3(Co含有量24体積%)
超硬合金1から3は通常の製造方法で製造したが、超硬合金の粉末を用意する段階で、Coの配合量を調整した。具体的には、粉末は、最終的に得られる超硬合金におけるCoの体積比が、所望の体積比となるように、タングステンカーバイト(WC)とCoとを配合した。その上で、アセトンを溶媒とし、ステンレス製のポットおよび超硬合金製の玉石を使用したボールミルにより90時間粉砕を行った。その後、アセトンを除去することで、超硬合金の粉末を得て、超硬合金1から3の素材を製作した。
こうして得られた各素材DからFは、素材AからCと同じであり、一辺15mmの正方形形状とし、その厚さは、研磨加工により、T2+0.50mmに調整した。各素材の厚さT2については、後で実施例および比較例として説明する。
〈3〉各素材の熱膨張係数:
こうして得られた超硬合金1から3およびアルミナセラミックの熱膨張係数を、図2に示した。図示するように、各素材の熱膨張係数は、素材Aが7.6ppm/K、素材B1が7.4ppm/K、素材B2が6.8ppm/K、素材Cが7.8ppm/K、素材Dが7.5ppm/K、素材Eが7.1ppm/K、素材Fが6.5ppm/K、素材Gが7.5ppm/K、素材Hが8.4ppm/Kである。超硬合金1から3の熱膨張係数が異なるのは、Coの体積%が異なるためである。
〈4〉接合:
上記の手法により得られた各素材AからFを組み合わせ、ロウ付けまたはホットプレスにより接合した。ロウ付けは、各素材の間にロウ材(WESGO社製Copper-ABA(L))の箔片を設置し、1080℃に加熱することにより行った。尚、ロウ材には、Cu系のWESGO社製Copper-ABA(L)のほかに、Ag系のロウ材(田中貴金属製TKC911等)を使用しても良い。このロウ材を用いると、ロウ付け温度を890℃程度まで低温化でき、表面層20の素材、基材層30の素材に対するダメージを小さくすることができる。ホットプレスの場合は、各素材を黒鉛炉に設置し、温度1300℃、圧力30MPa、保持時間1時間により、各素材を接合した。また、表面層20と基材層30を構成する原材料を混合した素材を中間層として接合しても良い。これにより、接合の信頼性をより高くすることができる。中間層は、両原材料の混合比率を段階的に変化させた、いわゆる傾斜機能材料としても良い。
各素材を接合した後、接合体の厚さが全体で3mmとなるよう、表面層20を所定寸法T1に、基材層30をT2に、研磨加工して、実施例および比較例(番号1から15)の接合体とした。実施例と比較例との構成および諸特性を、図3に示した。図中、番号1から4、6から13は実施例を、番号5、14、15は比較例を示している。
[強度試験とその結果]
上記の手法により製造した工具用接合体10から試験片を製作し、曲げ強度の試験を行った。試験片は、上記の各接合体を所定幅に切り出し、幅4mmに研磨加工し、面取りを行うことで製作した。試験片の長さは、15mmである。この試験片を、アルミナ質焼結体側が引っ張り面となるように、曲げ試験装置に設置する。スパンは10mm、3点曲げとした。この状態で曲げ強度を測定した数値が、図3の「強度」欄の値である。
図3の強度を比較すると、実施例は比較例に対して、以下の点で優れている。
(A)工具用接合体10の表面層20(ZrO2含有セラミック)の厚さT1の基材層30(超硬合金1)の厚さT2に対する比T1/T2を、0.03から0.50とすると、実施例1から4、および11から分かるように、比較例5などと比べて、高い強度を実現することができる。また、単身のSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体(比較例15)以上の強度を実現することができる。従って、低価格で高強度の工具用接合体10を得ることができる。なお、この点は、表面層20と基材層30との接合がロウ付けによる場合(実施例1から4)であっても、ホットプレスによる場合(実施例11)であっても、変わるところはない。
(B)基材層30については、超硬合金とした方が(実施例6)、基材層30をアルミナ質焼結体とした場合(比較例14、15)より強度を高くすることができ、結果的に単身のSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体とした場合より、高い強度を実現することができる。
(C)表面層20と基材層30との熱膨張係数の差を1.0ppm/K以下、あるいは熱膨張係数の比を1.11以下とすると(実施例7、8、9)、熱応力によるクラックの発生は見られないが、熱膨張係数の差が1.1ppm/K、あるいは熱膨張係数の比が1.17だと、熱応力によるクラックの発生が見られる(実施例10)。実施例10は、強度を測定した結果が1240MPaであり、SiCウィスカー含有アルミナ単体の強度よりも高強度である。しかし、実施例10は、表面層20にクラックが発生した(外観検査が×判定)。
(D)実施例3、12、13に見られるように、表面層20の材質を変えても、超硬合金による基材層30の熱膨張係数との差を1.0ppm/K以内、あるいは熱膨張係数の比を1.11以内とすれば、単身のSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体の強度より、高い強度を実現することができる。表面層20と基材層30との熱膨張係数の差を1.0ppm/K以内、あるいは熱膨張係数の比を1.11以内にするために、表面層20の熱膨張係数に合わせて、基材層30の熱膨張係数を調整したが、熱膨張係数の調整は超硬合金に含有される金属結合相の含有量を25から40体積%の範囲で調整することにより行うことができる。具体的には、WC−Co系超硬合金の場合はCoの含有量を、WC−Co−Ni−Cr系超硬合金の場合はCo−Ni−Crの含有量を,WC−Ni−Cr系超硬合金の場合はNi−Crの含有量を、それぞれ25から40体積%にすれば良い。
(E)上記の実施例、比較例の分析から、実施例の工具用接合体10は、表面層20にSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体を含まない場合でも、単身のSiCウィスカー含有アルミナ質焼結体以上の強度を実現することができる。このため、耐熱合金やダクタイル鋳鉄などの難削材を切削加工するのに適した工具用接合体10を得ることができる。
本実施例の工具用接合体10は、表面層20の厚みT1と基材層30の厚みT2との比T1/T2を0.03から0.50までとし、更に表面層20と基材層30との熱膨張係数の差を1.0ppm/K以内、あるいは熱膨張係数の比を1.1以下としている。この場合、従来の接合体と比べて曲げ試験における破壊挙動が明らかに相違することが分かった。この点を、図4を用いて説明する。
図4は、図3に示した実施例3の接合体と、基材層30にサーメットを用い表面層20をZrO2含有アルミナセラミックとした比較例(図示なし)における曲げ試験の結果を示すグラフである。実施例3では、熱膨張係数の違いは0.1ppm/K程度、あるいは熱膨張係数の比は1.01である。上記比較例では、基材層30のサーメットの熱膨張係数が8.1ppm/Kなので、熱膨張係数の違いは−0.5ppm/K程度、あるいは熱膨張係数の比は1.07であった。
図4から分かるように、実施例3の強度試験のグラフJ1では、曲げ試験により1620MPaの強度を示したが、比較例の強度試験のグラフR1は、800から1000MPaの間で一気に破断した。図4で円内に示したのは、800MPa付近の拡大図である。図示するように、実施例3(J1)では、応力−変位曲線に変化が見られる。これは、肉眼による観察などを加味すると、表面層20にクラックが発生したために生じる変化であると推認できる。しかしながら、実施例3では、表面層20と基材層30との熱膨張係数の差が小さく、ロウ付けにより両層がしっかりと接合されているため、表面層20に発生したクラックが、接合面で止まり、工具用接合体10全体の破壊に至っていない。これが、実施例の工具用接合体10が、SiCウィスカー含有アルミナ質焼結体の単身より高い強度を示した理由の一つだと考えられる。
こうした工具用接合体10を用いて構成した切削工具を図5に示す。図5は、本発明の実施品である工具用接合体10を用いた切削工具の外観図である。図示するように、この切削工具100は、上述した実施例の接合体を切削インサート120として工具先端に備える。この切削インサート120は、耐熱合金の切削加工に用いられる切削工具100に取り付けられる略直方体形状の使い捨ての刃先である。切削インサート120は、通常、切削工具100のホルダーと呼ばれる本体部110の先端において、取付部112に着脱可能に取り付けられる。
この切削工具100は、切削インサートとして、高強度を実現した実施例の接合体(図3参照)を備えるので、耐熱金属やダクタイル鋳鉄などの切削加工に用いることができる。
[耐欠損性試験および耐摩耗試験、並びにそれらの結果]
上記の切削工具を対象にして、切削加工における耐欠損性試験と耐摩耗試験とを行った。これら試験の対象とした切削チップの特性と試験結果とを図6に示す。番号(No.)17から21、23から25は実施例であり、番号16、22、26から29は比較例である。
表面層20は、実施例17から21、25及び比較例16、22がZrO2含有アルミナセラミック(HC1)、実施例23が99.5%高純度アルミナセラミック、実施例25が30体積%部分安定化ジルコニア含有アルミナセラミックを採用した。基材層30は、材料が単身でない例のすべて(実施例17から21、23から25及び比較例16、22)について、超硬合金1(WC−40体積%Co)を用いた。比較例26から29はすべて単身の材料を採用している。
比較例26はZrO2含有アルミナセラミックを、比較例27はSiCウィスカー含有アルミナセラミックを、比較例28は99.5質量%高純度アルミナセラミックを、比較例29は30体積%部分安定化ジルコニア含有アルミナセラミックを採用した。
接合はロウ付けによって行った。ロウ材は、実施例17から21、23、24及び比較例16、22には田中貴金属性のAg系ロウ材TKC911を、実施例25にはWESGO社製Cu系ロウ材Cu−ABA(L)を用いた。切削チップにおける表面層20と基材層30との寸法比は、図6に示すパターンを用意した。
耐欠損性試験は、上記の切削チップを対象にして、以下の条件による乾式旋削試験によって行った。
チップ形状:SNGN432−TN
切削速度:200m/min.
送り量:0.4から0.6mm/rev.(0.05mm/rev.刻み、5パターン)
図6に示したように、実施例17から21の切削チップは、送り量0.5mm/rev.によって欠損しなかった。これに対して比較例26(単身のZrO2含有アルミナセラミック(HC1))の切削チップは、送り量0.45mm/rev.によって欠損した。よって、実施例17から21の切削チップは、比較例26の切削チップよりも耐欠損性が向上していると言える。実施例17から21の切削チップと、比較例26の切削チップとの違いは、実施例17から21は超硬合金1を基材層30として採用しているのに対して、比較例26は基材層30を採用せず単身である点である。よって、超硬合金1を基材層30として採用することは、耐欠損性の向上に寄与する。
一方、図6に示したように、比較例16の切削チップは、送り量0.5mm/rev.によって欠損した。送り量0.5mm/rev.によって欠損しなかった実施例17から21の切削チップとの違いは、比較例16はT1/T2が0.021であるのに対して、実施例17から21はT1/T2が0.033以上である点である。よって、T1/T2を0.033以上にすることは耐欠損性の向上に寄与する。従って、T1/T2を0.033から0.46に設定するのが望ましい。
一方、図6に示したように、実施例17、21の切削チップは、送り量0.55mm/rev.によって欠損した。また、実施例18の切削チップは、送り量0.6mm/rev.によって欠損した。これに対して、実施例19、20の切削チップは、送り量0.6mm/rev.によって欠損しなかった。実施例19、20と、実施例17、18、21との違いは、実施例19,20はT1/T2が0.12から0.27であるのに対して、実施例17、18、21はT1/T2が0.055以下または0.46である点である。よって、T1/T2が0.12から0.27であることは、耐欠損性の向上に寄与する。従って、T1/T2を0.12から0.27に設定するのが望ましい。
加えて、図6に示したように、上記のT1/T2が0.27であることによって得られる耐欠損性の向上は、表面層20に99.5%高純度アルミナセラミックを用いた実施例23と、表面層20に30体積%部分安定化ジルコニア含有アルミナセラミックを用いた実施例24とにおいても同じである。
一方、図6に示したように、実施例19の切削チップは0.6mm/rev.によって欠損しなかった。これに対して、実施例25の切削チップは0.6mm/rev.によって欠損した。実施例19と実施例25との違いは、実施例19はロウ材がAg系であるのに対して、実施例25はロウ材がCu系であることである。よって、Ag系ロウ材を採用した切削チップは、Cu系を採用した切削チップよりも耐欠損性が向上する。
このように耐欠損性が向上する理由は、表面層およびロウ材の接合界面、並びに基材層30およびロウ材の接合界面にTiリッチ層が形成されたからと推測される。このTiリッチ層が形成された様子は、実験によって確認した。一方、Cu系ロウ材を用いた場合は、いずれの接合面にもTiリッチ層が形成されなかったり、いずれか一方のみの接合面にTiリッチ層が形成されたりすることを実験によって確認した。
このように、Ag系ロウ材を用いた場合に、両接合面にTiリッチ層が形成される理由は、Ag系ロウ材の接合温度(920℃)においては、ロウ材中のTi成分が超硬合金中に拡散し難くなり、Ti−Coの金属間化合物等が偏析するからと推測される。これに対して、Cu系ロウ材を用いた場合に、両接合面にはTiリッチ層が形成されない理由は、Cu系ロウ材の接合温度(1080から1140℃)においては、ロウ材中のTi成分が超硬合金中に拡散し易く、Ti−Coの金属間化合物等が偏析しないからと推測される。
次に、耐摩耗試験について説明する。耐摩耗試験は、以下の条件による乾式旋削試験によって行った。
チップ形状:SNGN432−TN
切削速度:500m/min.
送り量:0.3mm/rev.
図6に示すように、実施例17から21、23、24の切削チップの摩耗量は、比較例26、28、29と同等であり、比較例27よりも良好である。つまり、表面層がアルミナセラミックであれば、基材層30に依存せず良好な耐摩耗性を得ることができる。
よって、アルミナセラミックを表面層に用いれば、基材層30をいずれかの実施例のものを採用することによって、耐摩耗性を維持したまま耐欠損性を向上させることができる。摩耗量が0.08mm以下かつ耐欠損性試験で送り量0.6mm/rev.によって欠損しなかった実施例19、20、23および24のT1/T2は、0.12〜0.27である。よって、T1/T2を0.12から0.27に設定するのが、耐摩耗性を維持したまま耐欠損性を向上させることができる点で望ましい。
以上本発明について実施例を挙げて説明したが、本発明の工具用接合体は、種々なる態様で実現できることはもちろんである。図7は、こうした接合体の他の構成例を示す説明図である。図7(A)は、表面層をアルミナセラミックのみならず、サーメットの薄い層とから構成した例を示す。この例では、アルミナセラミックとサーメットはホットプレスにより一体化し、更にこれをロウ付けにより基材層30である超硬合金に接合している。また、図7(B)は、逃げ面カバー150にアルミナセラミックを用いる例である。この場合も、アルミナセラミックの厚さT1と基材層30の厚さT2との比T1/T2を0.03から0.50の範囲とし、更に両者の熱膨張係数の差を1.0ppm/K以内、あるいは熱膨張係数の比を1.11以内とすればよい。また図7(C)は、工具用接合体の4つの角部にアルミナセラミックの表面層200をロウ付けした構成例を示している。厚さの比や熱膨張係数の差は、上述した実施例と同じである。この場合には、アルミナセラミックの使用量を低減することができる。もとより、4つに分割せず2つに分割しても良い。更に多数に分割することも可能である。なお、分割したすべての角部にアルミナセラミックの表面層200を設けなくとも差し支えない。
10…工具用接合体
20…表面層
30…基材層
40…接合層
100…切削工具
110…本体部
112…取付部
120…切削インサート
150…逃げ面カバー
200…表面層

Claims (10)

  1. アルミナ質焼結体で形成された表面層である第1の層と、超硬合金で形成された基材層である第2の層とを一体に接合してなり、
    前記第2の層の厚みに対する前記第1の層の厚みの比が、0.03から0.50である工具用接合体。
  2. 前記第1の層と前記第2の層との熱膨張係数の差が1.0ppm/K以内である請求項1記載の工具用接合体。
  3. 前記第2の層を形成する超硬合金における金属結合相の含有量が、25から40体積%である請求項2記載の工具用接合体。
  4. 前記アルミナ質焼結体は、ZrO含有アルミナセラミック,SiCウィスカー含有アルミナセラミック,SiC粒子含有アルミナセラミック,TiC含有アルミナセラミック及び99.5質量%以上の高純度アルミナセラミックのいずれかである請求項1から請求項3のいずれか記載の工具用接合体。
  5. 前記第1の層は前記第2の層ロウ材により一体に接合されている請求項1から請求項4のいずれか記載の工具用接合体。
  6. 前記ロウ材は、Ag系ロウ材である請求項5載の工具用接合体。
  7. 前記第1の層と前記第2の層との熱膨張係数の比が1.11以内である請求項1から請求項6のいずれか記載の工具用接合体。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか記載の工具用接合体を備えた切削工具。
  9. アルミナ質焼結体で形成された第1の厚みを有する表層材を用意し、
    超硬合金で形成された第2の厚みを有する基材を用意し、
    前記基材の前記第2の厚みに対する前記表層材の前記第1の厚みの比を、0.03から0.50までに調整し、
    前記基材に前記表層材を、ロウ付けまたはホットプレスにより一体に接合する
    工具用接合体の製造方法。
  10. 前記基材に前記表層材を、Ag系ロウ材を用いたロウ付けにより一体に接合する請求項9記載の製造方法。
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