ところで、ロボットの減速区間において、ロボットを駆動するモータにより回生発電を行い、回生発電により生じた回生エネルギをコンデンサに蓄積するものがある(例えば、特許文献2参照)。回生発電時に、コンデンサの接続された電源ラインの電圧が上限値よりも上昇した場合には、回生抵抗に電流を流して回生エネルギを消費させる必要がある。この場合はエネルギ損失が生じることとなるため、コンデンサに蓄積する回生エネルギを増やすことが望ましい。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ロボットの動作軌道の精度を維持しつつ、回生エネルギの損失を抑制することのできるロボットシステムを提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
第1の手段は、ロボットシステムであって、電源から電源ラインへ供給される電源電圧の高さを調節する電圧調節部と、前記電源ラインを通じて前記電源電圧が供給されるモータ、及び前記モータにより駆動されるアームを有するロボットと、前記アームの位置を検出する位置検出部と、前記電源ラインに並列接続されたコンデンサと、回生抵抗及びスイッチ部が直列に接続された直列接続体であって、前記電源ラインに並列接続された前記直列接続体と、前記電源ラインの電圧を検出する電圧検出部と、前記位置検出部により検出される前記アームの位置に基づいて、前記アームを目標位置まで動作させるように前記モータの駆動を制御するとともに、前記モータの減速時に前記モータにより回生発電をさせて回生電流を前記電源ラインに供給させ、前記電圧検出部により検出される前記電源ラインの電圧が所定電圧よりも高い場合に前記スイッチ部を閉じる制御部と、を備え、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記アームの位置と前記目標位置との偏差に基づいて、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させることを特徴とする。
上記構成によれば、電圧調節部により、電源から電源ラインへ供給される電源電圧の高さが調節される。そして、ロボットにおいて、電源ラインを通じてモータへ電源電圧が供給され、モータによりアームが駆動される。制御部は、位置検出部により検出されるアームの位置に基づいて、アームを目標位置まで動作させるようにモータの駆動を制御する。また、制御部は、モータの減速時にモータにより回生発電をさせ、回生電流を電源ラインに供給させる。このため、電源ラインに並列接続されたコンデンサが回生電流によって充電され、回生エネルギがコンデンサに蓄積される。このとき、電圧検出部により検出される電源ラインの電圧が所定電圧よりも高い場合には、スイッチ部が閉じられる。このため、過剰な回生エネルギが回生抵抗で消費され、回生電流により電圧調節部が損傷することを抑制することができる。
ここで、モータに供給される電源電圧が高いほどモータの応答性が向上するため、電源電圧が高いほどアームの動作軌道の精度が高くなる。しかしながら、電源電圧を高く設定した場合には、電源電圧と上記所定電圧との差が小さくなり、電源ラインに上記回生電流が供給された時に電源ラインの電圧が所定電圧まで上昇し易くなる。このため、回生エネルギを回生抵抗で消費させる機会が増え、エネルギ損失が増大することとなる。この点、制御部は、位置検出部により検出されるアームの位置と目標位置との偏差に基づいて、電源ラインへ供給される電源電圧を電圧調節部により上昇させる。このため、上記偏差に基づいて、モータの応答性、ひいてはアームの動作軌道の精度を向上させることができる。したがって、電源電圧を低く設定しておくことができ、回生エネルギを回生抵抗で消費させる機会を減らして、コンデンサに蓄積する回生エネルギを増やすことができる。その結果、アームの動作軌道の精度を維持しつつ、回生エネルギの損失を抑制することができる。
第2の手段では、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記アームの位置と前記目標位置との偏差が第1閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させる。
上記構成によれば、上記偏差が第1閾値を超えた場合には電源電圧が上昇させられるため、この偏差が第1閾値を超えて大きくことなることを抑制することができる。一方、上記偏差が第1閾値を超えるまでは電源電圧が上昇させられないため、コンデンサに回生エネルギを蓄積することを優先させることができる。
第3の手段では、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記アームの位置と前記目標位置との偏差の変化速度が第2閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させる。
上記構成によれば、上記偏差の変化速度が第2閾値を超えた場合には電源電圧が上昇させられるため、この偏差が拡大する可能性が高い場合に偏差の拡大を抑制することができる。一方、上記偏差の変化速度が第2閾値を超えるまでは電源電圧が上昇させられないため、コンデンサに回生エネルギを蓄積することを優先させることができる。
第4の手段では、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記アームの位置と前記目標位置との偏差の変化速度が大きいほど、前記電圧調節部により前記電源電圧を大きく上昇させる。
上記構成によれば、上記偏差の変化速度が大きいほど電源電圧が大きく上昇させられるため、必要に応じて適切にモータの応答性を向上させることができる。その結果、アームの動作軌道の精度を向上させつつ、コンデンサに蓄積する回生エネルギを更に増やすことができる。
第5の手段のように、前記アームは、複数の回転部と複数の前記モータとを含み、各回転部が各モータにより駆動されるものであり、前記位置検出部は、各モータの回転位置を検出し、前記制御部は、前記位置検出部により検出される各モータの回転位置に基づいて、各モータを目標回転位置まで動作させるように各モータの駆動を制御し、前記位置検出部により検出される所定モータの回転位置と前記目標回転位置との偏差に基づいて、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させるといった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、複数の回転部と複数のモータとを含み、各回転部が各モータにより駆動されるアームを有するロボットにおいて、アームの動作軌道の精度を維持しつつ、回生エネルギの損失を抑制することができる。
第6の手段では、前記所定モータは、前記アームの先端から最も離れた前記回転部を駆動するモータであり、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記所定モータの回転位置と前記目標回転位置との偏差が第3閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させる。
複数の回転部と複数のモータとを含むアームでは、一般にアームの先端から最も離れた回転部を駆動するモータの定格出力が最も大きい。そして、定格出力の大きいモータほど、回生発電により生じる電力が大きくなるため、回生エネルギの損失を抑制する効果が高くなる。
この点、上記構成によれば、アームの先端から最も離れた回転部を駆動するモータにおいて、上記偏差が第3閾値を超えた場合に電源電圧が上昇させられ、上記偏差が第3閾値を超えるまでは電源電圧が上昇させられない。したがって、コンデンサに蓄積する回生エネルギを更に増やすことができる。さらに、アームの先端から最も離れた回転部ほど、アームの動作軌道に及ぼす影響が大きい。したがって、アームの先端から最も離れた回転部を駆動するモータにおいて、上記偏差が第3閾値を超えて大きくなることを抑制することにより、アームの動作軌道の精度を効果的に向上させることができる。
第7の手段では、前記所定モータは複数の前記モータを含み、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記所定モータの回転位置と前記目標回転位置との偏差が第3閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させ、前記第3閾値は、前記アームの先端から離れた前記回転部を駆動するモータであるほど大きく設定されている。
上述したように、定格出力の大きいモータ、すなわちアームの先端から離れた回転部を駆動するモータほど、回生発電により生じる電力が大きくなるため、回生エネルギの損失を抑制する効果が高くなる。この点、上記構成によれば、上記第3閾値は、アームの先端から離れた回転部を駆動するモータであるほど大きく設定されているため、定格出力の大きいモータほど上記偏差を大きく許容することができる。したがって、回生エネルギを回生抵抗で消費させる機会を減らした場合に、コンデンサに蓄積する回生エネルギを効果的に増やすことができる。
第8の手段では、前記所定モータは複数の前記モータを含み、前記制御部は、前記位置検出部により検出される前記所定モータの回転位置と前記目標回転位置との偏差が第3閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させ、前記第3閾値は、前記アームの先端から離れた前記回転部を駆動するモータであるほど小さく設定されている。
上述したように、アームの先端から離れた回転部ほどアームの動作軌道に及ぼす影響が大きいため、上記偏差が第3閾値を超えて大きくなることを抑制することで、アームの動作軌道の精度を向上させる効果が高くなる。この点、上記構成によれば、上記第3閾値は、アームの先端から離れた回転部を駆動するモータであるほど小さく設定されているため、アームの動作軌道に及ぼす影響が大きいモータほど上記偏差の許容が小さくなる。したがって、上記偏差が第3閾値を超えて大きくなることを抑制した場合に、アームの動作軌道の精度を効果的に向上させることができる。
第9の手段では、前記制御部は、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させた後、前記位置検出部により検出される前記所定モータの回転位置と前記目標回転位置との偏差が、前記第3閾値よりも小さく設定された第4閾値未満となったことを条件として、前記電圧調節部による前記電源電圧の上昇を解除する。
上記構成によれば、電圧調節部により電源電圧を上昇させた後、上記偏差が第3閾値よりも小さく設定された第4閾値未満となるまでは、電圧調節部による電源電圧の上昇が解除されない。そして、上記偏差が第4閾値未満となった場合に、電圧調節部による電源電圧の上昇が解除される。したがって、電圧調節部による電源電圧の上昇とその解除が繰り返されることを抑制することができるとともに、アームの動作軌道の精度をより確実に向上させることができる。
第10の手段では、前記制御部は、前記アームを前記目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定するCP制御と、前記アームを前記目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御とを切り替える切替部を備え、前記切替部により前記PTP制御に切り替えられている場合に、前記電圧調節部により前記電源電圧を前記所定電圧よりも低い初期電圧で一定にさせ、前記切替部により前記CP制御に切り替えられている場合に、前記電圧調節部により前記電源電圧を前記初期電圧にさせるとともに、前記位置検出部により検出される前記アームの位置と前記目標位置との偏差が第1閾値を超えたことを条件として、前記電圧調節部により前記電源電圧を上昇させる。
本願発明者は、ロボットの一連の動作が、動作軌道の精度を要求する組立加工・ピッキング作業(CP制御)と、単なる移動で済む搬送・移動作業(PTP制御)との結合で構成されていることに着目した。この点、上記構成によれば、切替部により、アームを目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定するCP制御と、アームを目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御とが切り替えられる。
そして、切替部によりPTP制御に切り替えられている場合に、電圧調節部により電源電圧が上記所定電圧よりも低い初期電圧で一定にさせられる。このため、アームを目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御、すなわち単なる移動で済む搬送・移動作業では、回生エネルギを回生抵抗で消費させる機会を減らして、コンデンサに蓄積する回生エネルギを増やすことができる。
一方、切替部によりCP制御に切り替えられている場合に、電圧調節部により電源電圧が上記初期電圧にされるとともに、位置検出部により検出されるアームの位置と目標位置との偏差が第1閾値を超えたことを条件として、電圧調節部により電源電圧が上昇させられる。このため、動作軌道の精度が要求されるCP制御では、アームの動作軌道の精度を向上させることができる。
したがって、動作軌道の精度が要求されないPTP制御では、コンデンサに蓄積する回生エネルギを増やすことを優先し、動作軌道の精度が要求されるCP制御では、コンデンサに蓄積する回生エネルギを増やしつつ、動作軌道の精度を維持することができる。
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、多関節ロボットの動作を制御するロボットシステムとして具体化している。
図1は、ロボットシステム10を示すブロック図である。ロボットシステム10は、ロボット11、電源ユニット20、インバータ回路30、制御部60等を備えている。ロボット11は、アーム50等を備えている。なお、電源ユニット20、インバータ回路30、及び制御部60は、ロボットコントローラを構成する。
電源ユニット20(電圧調節部)は、3相200Vの商用交流電源14(外部電源)に接続されている。電源ユニット20は、整流回路、コイル、コンデンサ21、スイッチング素子22,23等を備えている。コンデンサ21は、電源ライン15a,15bに並列に接続されている。スイッチング素子22,23は、電界効果トランジスタ(FET)等で形成されている。スイッチング素子22は電源ライン15a,15bに直列に接続されており、スイッチング素子23は電源ライン15a,15bに並列に接続されている。そして、電源ユニット20は、スイッチング素子22をONにした状態で、スイッチング素子23をPWM制御(デューティ制御)することにより、電源14から電源ライン15a,15bへ供給される電源電圧Vbの高さを調節する。
抵抗25(回生抵抗)及びスイッチング素子26(スイッチ部)を直列に接続した直列接続体が、電源ライン15a,15bに並列に接続されている。スイッチング素子26は、電界効果トランジスタ等で形成されている。また、電源ライン15a,15bには、電圧センサ27が並列に接続されている。電圧センサ27(電圧検出部)は、電源ライン15a,15bの電源電圧Vbを検出する。
電源ライン15a,15bには、複数のインバータ回路30(1つのみ図示)が並列に接続されている。複数のインバータ回路30には、ロボット11のアーム50における複数の回転部51をそれぞれ駆動する複数のモータ52がそれぞれ接続されている。各モータ52には、回転位置を検出するエンコーダ53(位置検出部)が設けられている。
各インバータ回路30は、6個のスイッチング素子31を三相ブリッジ接続するとともに、各スイッチング素子31と並列にフライホイールダイオード32を接続した周知のものである。スイッチング素子31は、バイポーラ型パワートランジスタ等で形成されている。各インバータ回路30において、スイッチング素子31がPWM制御されることにより、各インバータ回路30から各モータ52へ供給される電圧が制御される。各モータ52へ供給される電流が電流センサ35により検出される。
制御部60は、電源制御部61、軌道生成部62、位置・速度制御部63、電流制御部64、PWM回路65、及びドライブ回路66等を備えている。
各モータ52に設けられたエンコーダ53の出力は、軌道生成部62、位置・速度制御部63、及び電流制御部64へそれぞれ入力される。軌道生成部62は、アーム50が行う動作、及び各エンコーダ53により検出された各モータ52の回転位置(各回転部51の回転位置)に基づいて、アーム50の動作軌道(目標位置)及び各モータ52の目標回転位置(各回転部51の目標回転位置)を算出する。位置・速度制御部63は、軌道生成部62により算出された各モータ52の目標回転位置、及び検出された各モータ52の回転位置に基づいて、各モータ52の目標回転速度(各回転部51の目標回転速度)、及び各モータ52の目標トルクを算出する。電流制御部64は、位置・速度制御部63により算出された各モータ52の目標トルク、各電流センサ35により検出された電流、並びに検出された各モータ52の回転位置に基づいて、インバータ回路30からモータ52へ供給する目標電流を算出する。PWM回路65は、電流制御部64により算出された目標電流に基づいて、各インバータ回路30の各スイッチング素子31を制御するPWM信号を出力する。ドライブ回路66は、PWM回路から出力されたPWM信号に基づいて、各インバータ回路30の各スイッチング素子31を駆動する。これにより、各モータ52(アーム50)を目標回転位置(目標位置)まで動作させるように、各モータ52の駆動が制御される。
また、制御部60は、各モータ52の減速時に各モータ52により回生発電をさせる。回生発電により生じた回生電流は、インバータ回路30のフライホイールダイオード32を経由して、電源ライン15a,15bに供給される。そして、この回生電流により、電源ライン15a,15bに並列接続されたコンデンサ21が充電される。ただし、電源ライン15a,15bに供給された回生電流は、電源ライン15a,15bの電源電圧Vbを上昇させる。このため、電源制御部61は、電圧センサ27により検出された電源電圧Vbが所定電圧Vrよりも高い場合に、スイッチング素子26をONにする(閉じる)。これにより、回生電流が抵抗25に流れ、過剰な回生エネルギが熱として消費される。したがって、電源電圧Vbが過剰に上昇することが抑制され、電源ユニット20が損傷することを抑制することができる。
図2は、電源電圧Vbと回生エネルギ損失との関係を示すタイムチャートである。同図に一点鎖線で示すように、電源ユニット20により電源電圧Vbが初期電圧Vpに設定されている場合は、初期電圧Vpと所定電圧Vrとの差が小さくなる。このため、時刻t1から時刻t2までの期間に回生発電が行われると、電源電圧Vbが所定電圧Vrを超えることとなる。そして、電源電圧Vbが所定電圧Vrを超えた場合には、スイッチング素子26がONにされ、面積Sに相当する回生エネルギが熱として消費される。したがって、回生エネルギの損失が生じることとなる。
これに対して、同図に実線で示すように、電源ユニット20により、電源電圧Vbが上記初期電圧Vpよりも低い初期電圧Vcに設定されている場合には、初期電圧Vcと所定電圧Vrとの差が大きくなる。このため、時刻t1から時刻t2までの期間に回生発電が行われたとしても、電源電圧Vbが所定電圧Vrを超えない。したがって、スイッチング素子26がONにされず、回生エネルギの損失が生じることを避けることができる。そこで、本実施形態では、電源ユニット20により、電源電圧Vbを初期電圧Vcに設定している。
一方、各モータ52に供給される電源電圧Vbが高いほど各モータ52の応答性が向上するため、電源電圧Vbが高いほどアーム50の動作軌道の精度が高くなる。このため、アーム50の動作軌道の精度を高くする点からは、電源電圧Vbを高く設定することが望ましい。したがって、本実施形態では、制御部60の電源制御部61は、検出されるアーム50の先端位置と目標位置との偏差ΔPが第1閾値Th1を超えたことを条件として、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させる。このため、初期電圧Vcを低く設定しておいたとしても、アーム50の動作軌道の精度を維持することができる。なお、アーム50の先端位置は、各エンコーダ53により検出される各モータ52の回転位置に基づいて算出することができる。そして、算出されたアーム50の先端位置と、上記軌道生成部62により算出された目標位置との偏差ΔPを算出する。
図3は、アーム50の先端位置の偏差ΔP、及び電源電圧Vbの変化を示すタイムチャートである。なお、(a)において、実線は本実施形態における偏差ΔPの変化を示し、一点鎖線は電源電圧Vbを上昇させなかった場合における偏差ΔPの変化を示す。
(b)に示すように、電源電圧Vbが初期電圧Vcに設定されているため、(a)に示すように、ロボット11のアーム50の動作に伴って偏差ΔPが大きくなる。時刻t11において、偏差ΔPが第1閾値Th1を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。ここでは、電源制御部61によりスイッチング素子23をデューティ100%で駆動し、電源電圧Vbを最高電圧Vhまで上昇させる。これにより、各モータ52の応答性が向上し、(a)に示すように、時刻t12において偏差ΔPが第1閾値Th1未満となる。このため、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、(a)に示すように、偏差ΔPは第1閾値Th1未満で推移する。
アーム50の動作に伴って、時刻t13において偏差ΔPが第1閾値Th1を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。(a)に示すように、時刻t14において偏差ΔPが第1閾値Th1未満となると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、アーム50の負荷が小さい状態になると、偏差ΔPは第1閾値Th1未満で推移する。
図4は、モータ52の回転速度とトルクTとの関係を示すグラフである。なお、実線は本実施形態により電源電圧Vbを上昇させた場合を示し、一点鎖線は電源電圧Vbを上昇させなかった場合を示す。
一点鎖線で示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させなかった場合は、モータ52の回転速度が上昇するとトルクTが低下する傾向がある。これに対して、実線で示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから最高電圧Vhまで上昇させた場合は、モータ52の回転速度が上昇してもトルクTの低下が抑制されている。したがって、本実施形態によれば、モータ52の回転速度が高い領域においても、トルクTの大きさを維持することができる。
図5は、モータ52の目標回転速度及び実回転速度を示すタイムチャートである。なお、破線は目標回転速度を示し、実線は本実施形態により電源電圧Vbを上昇させた場合の実回転速度を示し、一点鎖線は電源電圧Vbを上昇させなかった場合の実回転速度を示す。
一点鎖線で示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させなかった場合は、回転速度が高い領域において、破線で示す目標回転速度に対してモータ52の実回転速度の遅れが大きくなっている。これに対して、実線で示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから最高電圧Vhまで上昇させた場合は、回転速度が高い領域においても、破線で示す目標回転速度に対して実回転速度の遅れは大きくなっていない。したがって、本実施形態によれば、モータ52の回転速度が高い領域においても、モータ52の応答性を維持することができる。
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
・制御部60の電源制御部61は、エンコーダ53の検出値に基づき算出されるアーム50の先端位置と目標位置との偏差ΔPに基づいて、電源ライン15a,15bへ供給される電源電圧Vbを電源ユニット20により上昇させる。このため、上記偏差ΔPに基づいて、モータ52の応答性、ひいてはアーム50の動作軌道の精度を向上させることができる。したがって、電源電圧Vbを低く設定しておくことができ、回生エネルギを抵抗25で消費させる機会を減らして、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを増やすことができる。その結果、アーム50の動作軌道の精度を維持しつつ、回生エネルギの損失を抑制することができる。
・上記偏差ΔPが第1閾値Th1を超えた場合には電源電圧Vbが上昇させられるため、この偏差ΔPが第1閾値Th1を超えて大きくことなることを抑制することができる。一方、上記偏差ΔPが第1閾値Th1を超えるまでは電源電圧Vbが上昇させられないため、コンデンサ21に回生エネルギを蓄積することを優先させることができる。
なお、上記の実施形態を、以下のように変形して実施することもできる。
・図6は、上記偏差ΔPの変化速度Rp、及び電源電圧Vbの変化を示すタイムチャートである。ここでは、制御部60の電源制御部61は、エンコーダ53の検出値に基づき算出されるアーム50の先端位置と目標位置との偏差ΔPの変化速度Rpが第2閾値Th2を超えたことを条件として、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させる。
(a)に示すように、時刻t21において、変化速度Rpが第2閾値Th2を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。ここでは、偏差ΔPの変化速度Rpが大きいほど、電源電圧Vbを大きく上昇させる。これにより、各モータ52の応答性が向上し、(a)に示すように、時刻t22において変化速度Rpが第2閾値Th2未満となる。このため、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、(a)に示すように、変化速度Rpは第2閾値Th2未満で推移する。
アーム50の動作に伴って、時刻t23において偏差ΔPが第2閾値Th2を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。ここでは、時刻t21と比較して偏差ΔPの変化速度Rpが大きいため、電源電圧Vbをより大きく上昇させる。(a)に示すように、時刻t24において変化速度Rpが第2閾値Th2未満となると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、アーム50の負荷が小さい状態になると、変化速度Rpは第2閾値Th2未満で推移する。
上記構成によれば、上記偏差ΔPの変化速度Rpが第2閾値Th2を超えた場合には電源電圧Vbが上昇させられるため、この偏差ΔPが拡大する可能性が高い場合に偏差ΔPの拡大を抑制することができる。一方、上記偏差ΔPの変化速度Rpが第2閾値Th2を超えるまでは電源電圧Vbが上昇させられないため、コンデンサ21に回生エネルギを蓄積することを優先させることができる。さらに、上記偏差ΔPの変化速度Rpが大きいほど電源電圧Vbが大きく上昇させられるため、必要に応じて適切にモータ52の応答性を向上させることができる。その結果、アーム50の動作軌道の精度を向上させつつ、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを更に増やすことができる。
・図7は、エンコーダ53により検出されるモータ52の回転位置と目標回転位置との偏差Δθ、及び電源電圧Vbの変化を示すタイムチャートである。ここでは、制御部60の電源制御部61は、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させた後、エンコーダ53により検出されるモータ52の回転位置と目標回転位置との偏差Δθが、第3閾値Th3よりも小さく設定された第4閾値Th4未満となったことを条件として、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇を解除する。なお、(a)において、実線は上記構成における偏差Δθの変化を示し、一点鎖線は電源電圧Vbを上昇させなかった場合における偏差Δθの変化を示す。
(a)に示すように、時刻t31において、偏差Δθが第3閾値Th3を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。ここでは、電源制御部61によりスイッチング素子23をデューティ100%で駆動し、電源電圧Vbを最高電圧Vhまで上昇させる。これにより、(a)に示すように、偏差Δθが第3閾値Th3未満となるが、上記偏差Δθが第4閾値Th4未満となるまでは、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇を解除しない。そして、時刻t32において、偏差Δθが第4閾値Th4未満になると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、(a)に示すように、偏差Δθは第3閾値Th3未満で推移する。
アーム50の動作に伴って、時刻t33において偏差Δθが第3閾値Th3を超えると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcから上昇させる。(a)に示すように、時刻t34において偏差Δθが第4閾値Th4未満となると、(b)に示すように、電源電圧Vbを初期電圧Vcまで下降させる。その後、アーム50の負荷が小さい状態になると、偏差Δθは第4閾値Th4未満で推移する。
上記構成によれば、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させた後、上記偏差Δθが第3閾値Th3よりも小さく設定された第4閾値Th4未満となるまでは、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇が解除されない。そして、上記偏差Δθが第4閾値Th4未満となった場合に、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇が解除される。したがって、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇とその解除が繰り返されることを抑制することができるとともに、アーム50の動作軌道の精度をより確実に向上させることができる。
・電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させた後、所定時間が経過したことを条件として、電源ユニット20による電源電圧Vbの上昇を解除することもできる。
・制御部60の電源制御部61は、エンコーダ53により検出される所定のモータ52(所定モータ)の回転位置と目標回転位置との偏差Δθが第3閾値Th3を超えたことを条件として、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させてもよい。
複数の回転部51と複数のモータ52とを含むアーム50では、一般にアーム50の先端から最も離れた回転部51を駆動するモータ52の定格出力が最も大きい。そして、定格出力の大きいモータ52ほど、回生発電により生じる電力が大きくなるため、回生エネルギの損失を抑制する効果が高くなる。
そこで、上記所定のモータ52として、アーム50の先端から最も離れた回転部51を駆動するモータ52を採用してもよい。こうした構成によれば、アーム50の先端から最も離れた回転部51を駆動するモータ52において、上記偏差Δθが第3閾値Th3を超えた場合に電源電圧Vbが上昇させられ、上記偏差Δθが第3閾値Th3を超えるまでは電源電圧Vbが上昇させられない。したがって、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを更に増やすことができる。さらに、アーム50の先端から最も離れた回転部51ほど、アーム50の動作軌道に及ぼす影響が大きい。したがって、アーム50の先端から最も離れた回転部51を駆動するモータ52において、上記偏差Δθが第3閾値Th3を超えて大きくなることを抑制することにより、アーム50の動作軌道の精度を効果的に向上させることができる。
また、上記所定のモータ52として複数のモータ52を含み、上記第3閾値Th3は、アーム50の先端から離れた回転部51を駆動するモータ52であるほど大きく設定されているといった構成を採用してもよい。上述したように、定格出力の大きいモータ52、すなわちアーム50の先端から離れた回転部51を駆動するモータ52ほど、回生発電により生じる電力が大きくなるため、回生エネルギの損失を抑制する効果が高くなる。この点、上記構成によれば、上記第3閾値Th3は、アーム50の先端から離れた回転部51を駆動するモータ52であるほど大きく設定されているため、定格出力の大きいモータ52ほど上記偏差Δθを大きく許容することができる。したがって、回生エネルギを抵抗25で消費させる機会を減らした場合に、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを効果的に増やすことができる。
また、上記所定のモータ52として複数のモータ52を含み、上記第3閾値Th3は、アーム50の先端から離れた回転部51を駆動するモータ52であるほど小さく設定されているといった構成を採用してもよい。上述したように、アーム50の先端から離れた回転部51ほどアーム50の動作軌道に及ぼす影響が大きいため、上記偏差Δθが第3閾値Th3を超えて大きくなることを抑制することで、アーム50の動作軌道の精度を向上させる効果が高くなる。この点、上記構成によれば、上記第3閾値Th3は、アーム50の先端から離れた回転部51を駆動するモータ52であるほど小さく設定されているため、アーム50の動作軌道に及ぼす影響が大きいモータ52ほど上記偏差Δθの許容が小さくなる。したがって、上記偏差Δθが第3閾値Th3を超えて大きくなることを抑制した場合に、アーム50の動作軌道の精度を効果的に向上させることができる。
・上記閾値Th1〜Th4の値を可変とすることもできる。アーム50の動作軌道の精度を重視する場合には閾値Th1〜Th4の値を減少させ、回生エネルギの損失の抑制を重視する場合には閾値Th1〜Th4の値を増大させるとよい。
具体的には、以下の構成を採用することができる。すなわち、制御部60は、アーム50の先端位置を目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定するCP制御と、アーム50を目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御とを切り替える切替部を備える。制御部60は、切替部によりPTP制御に切り替えられている場合に、電源ユニット20により電源電圧Vbを所定電圧Vrよりも低い初期電圧Vcで一定にさせ、切替部によりCP制御に切り替えられている場合に、電源ユニット20により電源電圧Vbを初期電圧Vcにさせるとともに、エンコーダ53の検出値に基づいて算出されるアーム50の先端位置と目標位置との偏差ΔPが第1閾値Th1を超えたことを条件として、電源ユニット20により電源電圧Vbを上昇させる。
本願発明者は、図8に示すように、ロボット11の1サイクルの動作が、動作軌道の精度を要求する組立・ピッキング作業(CP制御)と、単なる移動で済む運搬・移動作業(PTP制御)との結合で構成されていることに着目した。この点、上記構成によれば、切替部により、アーム50を目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定するCP制御と、アーム50を目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御とが切り替えられる。
そして、切替部によりPTP制御に切り替えられている場合に、電源ユニット20により電源電圧Vbが上記所定電圧Vrよりも低い初期電圧Vcで一定にさせられる。このため、アーム50を目標位置まで動作させる際に動作軌跡を設定しないPTP制御、すなわち単なる移動で済む搬送・移動作業では、回生エネルギを抵抗25で消費させる機会を減らして、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを増やすことができる。
一方、切替部によりCP制御に切り替えられている場合に、電源ユニット20により電源電圧Vbが上記初期電圧Vcにされるとともに、エンコーダ53により検出されるアーム50の位置と目標位置との偏差ΔPが第1閾値Th1を超えたことを条件として、電源ユニット20により電源電圧Vbが上昇させられる。このため、動作軌道の精度が要求されるCP制御では、アーム50の動作軌道の精度を向上させることができる。
したがって、動作軌道の精度が要求されないPTP制御では、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを増やすことを優先し、動作軌道の精度が要求されるCP制御では、コンデンサ21に蓄積する回生エネルギを増やしつつ、動作軌道の精度を維持することができる。