本発明の負極は、集電体と、該集電体上に配置された負極活物質層と、を含む負極において、該負極活物質層が、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ、並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む。更に前記CMC誘導体は、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の全部または一部が還元(脱炭酸)反応により安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっているものであることを特徴とする(下記反応式2参照)。
ここで、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基としては、1種だけでもよいし、2種以上であってもよい。1種の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、Na、Li、K、NH4などのカチオン種のいずれかが挙げられる。また2種以上の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、少なくともNa、Li、K、NH4などのカチオン種が含まれていればよく、その他に、H(水素原子)を有するものであってもよい。上記構成とすることで、上記した発明の効果を奏することができるものである。詳しくは、SBR(スチレンブタジエンゴム)等の水系バインダを水などの水系溶媒中に粒子状に分散させた水系の負極スラリーを用いた負極では、初回充電時のガス発生が多くなるという問題があった。かかる問題につき鋭意検討した結果、水系の負極スラリーのCMCないしCMC塩の増粘剤は初回充電時に電位を持たず反応(還元分解)してしまうことが、ガス発生が多くなること原因であることを見出した。この反応(還元分解)では、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基が初回充電時に、反応により一度、水などになって水素(ガス)、酸素(ガス)等が発生してしまっていた。そこで、本発明では、水系スラリーを用いて負極を作製する際に、水系スラリーの調製時にアルカリ又はアルカリ水を添加し、或いは集電体上に水系スラリーを塗工後にアルカリ水を添加し、再度乾燥させて負極を形成するものである。水系スラリーにアルカリまたはアルカリ水を添加することで、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基がの全部または一部が、還元(脱炭酸)反応により、安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになる。本明細書および特許請求の範囲において、特に断らない限り、これらを総称してCMC誘導体と称する。別言すれば、水系スラリー中で増粘剤CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基は、電離してCH2COO−(イオン基)の状態で存在している。ここにアルカリまたはアルカリ水を添加することで、CH2COO−の一部または全部が、還元(脱炭酸)反応により、充放電状態下で安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基になっているともいえる。このようにCMCないしCMC塩の増粘剤を含む水系スラリーにアルカリを加えて、安定なCMC誘導体を含む負極を形成すると共に、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の還元(脱炭酸)により発生した水もその後、乾燥して飛ばすものである。こうすることで、初回充電前の負極には、ガス発生の原因となるCMCないしCMC塩の分子中の−CH2COOR基のOR(特にOH)を無くすことができる。本発明者らは、こうした技術的な知見を見出し、かかる知見に基づき本発明を完成したものである。
また、本発明に係る電気デバイスは、上記した本発明の負極を用いてなることを特徴とするものである。かかる構成とすることで、上記した発明の効果を奏する電気デバイスを提供することができる。
まず、本発明の電気デバイスの好ましい実施形態として、非水電解質リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
リチウムイオン二次電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
同様に、電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。本実施形態では、高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しても、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させたものを使用することができる。
以下の説明では、双極型でない(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池につき図面を用いて説明するが、決してこれらに制限されるべきものではなく、双極型(内部直列接続タイプ)リチウムイオン二次電池にも適用し得るものである。
図1は、双極型でない扁平型(積層型)の非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の一実施形態の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された構造を有する。負極は、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
<第1実施形態の負極>
図2は、第1実施形態の負極を拡大して表した断面概略図である。
図2に示すように、本実施形態の負極31は、集電体32と、該集電体32上に配置された負極活物質層33を含む。更に本実施形態では、負極活物質層33には、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むものである。また、負極活物質層33中の負極活物質(粒子)表面には、安定なCMC誘導体が、粒状ないし島状に点在しているか、或いは被膜を形成している。そして、これら個々の負極活物質(粒子)同士が水系バインダにより結着され、負極活物質層33中に3次元の導電性ネットワークを構築している。また、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、負極活物質(粒子)表面、或いは粒状(縞状)ないし被膜状のCMC誘導体の表面に付着している。更に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属がリチウムの場合には、負極活物質(粒子)表面、或いは粒状(縞状)ないし被膜状のCMC誘導体の表面に、炭酸リチウムとして、粒状に点在しているか、或いは被膜を形成している。
本発明の負極31は、集電体31と、集電体32上に配置された負極活物質層33とを含み、負極活物質層33が、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ、並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む。そして、初回充電前の負極31には、負極活物質(粒子)表面にCMC誘導体が粒状に点在しているか、或いは被膜を形成している。このCMC誘導体は、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の全部または一部が、初回充電時に還元分解されない安定な基になっている。具体的には、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっている。更に、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属がリチウムの場合、製造過程で用いた水酸化リチウムがCO2と反応し、負極活物質表面或いは粒状化又は被膜化したCMC誘導体表面に、炭酸リチウムとして粒状に点在しているか、或いは被膜を形成している。なお、本明細書中、「集電体」と記載する場合、正極集電体、負極集電体の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もあるし、双極型電池の双極型電極用集電体を指す場合もある。同様に、「活物質層」と記載する場合、正極活物質層、負極活物質層の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。同様に、「活物質」と記載する場合、正極活物質、負極活物質の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もある。同様に、「電極」と記載する場合、正極、負極の両方を指す場合もあるし、片方のみを指す場合もあるし、双極型電池の双極型電極を指す場合もある。
従来、負極活物質材料自体の製造方法として、負極活物質の初回充放電効率を上げるために、CMCないしCMC塩の溶液とアルカリ水の中に負極活物質を入れ、乾燥処理をすることで、負極活物質の表面に安定な被覆ができるとしている。しかしながら、アルカリ被覆した負極活物質を用いた負極スラリーには、高価な有機溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用した有機溶剤系負極スラリーが開示されているだけである。この方法では、負極活物質を得るまでに多くの工程と原料を費やす必要があり、更に高価な有機溶媒のNMPを使用した有機溶剤系負極スラリーを用いる必要がある。そのため、むしろコストアップとなり、そもそものそもそも従来から切望されている水系負極スラリーによるコストダウンを図ることは全くできていなかった(後述する図3C参照のこと)。また、従来の負極活物質材料自体の製造方法で得られた負極活物質と水系溶媒を用いて水系負極スラリーを調製し負極を作製した場合、依然として初回充電時のガス発生量が多いという問題があった。
これに対し、本実施形態の負極では、負極活物質層に含まれる負極活物質は、該負極活物質表面に、初回充電時に還元分解されない安定な基を有するCMC誘導体を含む被膜が形成された構成となっている(図2B参照)。具体的には、安定な基として−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基を有するものである。これは、水系溶媒を用いて水系負極スラリーを調製し負極を作製する際に必要であった増粘剤のCMCないしCMC塩をアルカリ水による還元(脱炭酸)反応を利用して、CMCないしCMC塩の−CH2COOR基を−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基とする。こうすることで、水系負極スラリーを調製して作製した負極であっても、初回充電での増粘剤のCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生量を抑制し得る負極を提供できるものである。
以下、本実施形態の負極について、上記した構成要件ごとに詳細に説明する。
[集電体]
集電体は、金属箔の他に、双極型でない電池10で用いられる集電体では、パンチングメタルシートやエキスパンドメタルシートを用いることもできる。パンチングメタルシートやエキスパンドメタルシートの両面に水系の負極スラリーを塗工し乾燥開始するまでにアルカリ又はアルカリ水を添加し、乾燥することで、当該集電体の両面に負極活物質層を配置することができる。金属箔を用いる場合にも、金属箔上に負極の水系スラリーを塗工し乾燥開始するまでにアルカリ又はアルカリ水を添加し、乾燥することで、当該集電体上に負極活物質層を配置することができる。
集電体の材料は、導電性材料から構成され、その一方の面または両面に活物質層が配置される。集電体を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された導電性を有する樹脂が採用されうる。好適には金属が用いられる。
金属としては、アルミニウム、銅、白金、ニッケル、タンタル、チタン、鉄、ステンレス鋼、その他合金などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも導電性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、および銅が好ましい。
導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限されないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限されないが、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はないが、通常は1〜100μm程度である。
集電体の厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜80μm、さらに好ましくは5〜40μmである。
集電体として複数の貫通孔を有するパンチングメタルシートやエキスパンドメタルシート等を用いる場合、当該貫通孔の形状としては、四角形、菱形、亀甲形状、六角形、丸形、角型、星形、十文字形などが挙げられる。かような所定形状の多数の孔をプレス加工により、例えば、千鳥配置や、並列配置となるように形成したものが、いわゆるパンチングメタルシートなどである。また、千鳥状の切れ目を入れたシートを引き伸ばして略ひし形の貫通孔を多数形成したものが、いわゆるエキスパンドメタルシートなどである。
集電体に、上記した複数の貫通孔を有する集電体を用いる場合、集電体の貫通孔の開口率は、特に限定されない。ただし、集電体の開口率の下限の目安は、好ましくは10面積%以上、より好ましくは30面積%以上、さらに好ましくは50面積%以上、さらに好ましくは70面積%以上、さらに好ましくは90面積%以上である。このように、本実施形態の電極においては、90面積%以上の開口率を有する集電体も使用することができる。また、上限としては、例えば、99面積%以下、あるいは、97面積%以下などである。このように、有意に大きな開口率を有する集電体を有して形成される電極を備える電池10は、その重量を有意に減少させることができ、ひいては、容量を増加させることができ、高密度化をすることができる。
集電体に、上記した複数の貫通孔を有する集電体を用いる場合、集電体の貫通孔の孔径(開口径)も同様に、特に制限されない。ただし、集電体の開口径の下限の目安は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは150μm以上である。上限としては、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下程度である。なお、ここでいう開口径とは、貫通孔=開口部の外接円の直径である。外接円の直径は、レーザー顕微鏡や工具顕微鏡などにより集電体の表面観察を行い、開口部に外接円をフィッティングさせ、それを平均化したものである。
[負極活物質層]
負極活物質層は、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ、並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含むものである。好ましくは、更に炭酸アルカリを含むものである。必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
(1)負極活物質
負極活物質としては、従来公知のものを使用することができる。
負極活物質としては、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:Li4Ti5O12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物、金属材料、リチウムと合金化するリチウム合金およびその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、SiまたはSnの元素を含むことが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
負極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜25μmである。
負極活物質の含有量は、特に制限されないが、好ましくは負極活物質層の総量に対して、50〜99質量%、より好ましくは70〜97質量%、さらに好ましくは80〜96質量%の範囲である。負極活物質の含有量が、50質量%以上であれば、所望の充放電容量を付与することができる。99質量%以下であれば、単位体積当たり充放電容量を高めることができ、負極、ひいてはリチウムイオン二次電池等の電気デバイスの小型軽量化に大いに寄与し得るものである。
(2)CMC誘導体
本実施形態のCMC誘導体は、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の全部または一部が、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっているものであることを特徴とするものである。ここで、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基としては、1種だけでもよいし、2種以上であってもよい。1種の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、Na、Li、K、NH4などのカチオン種のいずれかが挙げられる。また2種以上の場合には、分子中に存在する−CH2COOR基のRには、少なくともNa、Li、K、NH4などのカチオン種が含まれていればよく、その他に、H(水素原子)を有するものであってもよい。初回充電前の負極活物質層の構成材料としてCMCないしCMC塩ではなく、CMC誘導体を含有することで、CMC誘導体では子中に存在する−CH2COOR基が、初回充電で還元分解されにくい安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっている。そのため、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極提供できる。
CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基(水系スラリー中では電離してCH2COO−(イオン基)の状態で存在)の全部または一部が還元反応により、安定な−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっている。かかるCMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基(水系スラリー中で電離した状態のCH2COO−)の還元割合は、10〜100%、好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、特に好ましくは100%である。還元割合が10%未満であれば、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を十分に抑えるのが困難となる場合がある。10%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上とすることで、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を十分に抑えることができる。よって、−CH2COOR基(CH2COO−基)の還元割合は必ずしも全部(=100%)でなくともよいといえるが、還元割合100%とすることで、得られるCMC誘導体を初回充電した際のガス発生を格段に抑制することができる。また、容量向上にも大いに寄与し得る点でも好ましいといえるものである。還元割合は、CMC誘導体につき表面ESCA(X線光電子分光法(装置))などを用いて測定することができる。この他にも、1H NMR(核磁気共鳴分光法)、14C NMR、二次元NMRを用いたCOSY(COrrelation SpectroscopY, COrrelated SpectroscopY)測定法等を用いて測定(補足)することもできる。なお、上記還元割合に代えて、後述するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を満足するものであれば、本発明の所期の目的及び効果を達成できているものである。そのため、上記した高価な装置を購入して上記還元割合を求めなくても、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を測定することで、本発明の所期の目的及び効果の達成が確認可能であることから、上記還元割合は、いわば任意要件といえるものである。
負極活物質層に含まれるCMC誘導体の含有量は、負極活物質層の総量に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲である。CMC誘導体の含有量が0.1質量%以上であれば、負極製造過程での増粘効果を十分に発現し、平坦で滑らかな表面の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。また10質量%以下であれば、優れた増粘効果により水系の負極スラリーの粘度を適当に調整することができ、所望の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。
CMC誘導体の重量平均分子量は、5000〜1200000、好ましくは6000〜1100000、より好ましくは7000〜1000000の範囲である。CMC誘導体の重量平均分子量が5000以上であれば、負極水系スラリーの粘度を適度に保つことができるなど、CMC誘導体が還元される前の増粘剤のCMCないしCMC塩を水に溶解した際に、負極の水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMC誘導体の重量平均分子量が1200000以下であれば、CMC誘導体が還元される前の増粘剤のCMCないしCMC塩を水等の水系溶媒に溶解した際にゲル状態となることなく、負極の水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMC誘導体の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、金属−アミン錯体および/または金属−アルカリ錯体を含有する溶媒を移動相溶媒としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いてCMC誘導体の分子量分布の測定を行なうことができる。かかる分子量分布から、CMC誘導体の重量平均分子量の分子量を算出することができる。なお、CMC誘導体の重量平均分子量の測定方法としては、上記方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法により測定、算出することができる。
(3)水系バインダ
水系バインダとは、水系溶媒に均一に分散可能なバインダのことを意味する。なお正極の作製に用いるバインダを有機溶剤系(非水系)バインダと称し、区別する。有機溶剤系(非水系)バインダとは、有機溶媒に均一に混合(溶解)あるいは分散可能なバインダのことを意味する。
負極活物質層に含まれる水系バインダとしては、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム(またはニトリルブタジエンゴム;NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリレート系ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などゴム系バインダを用いることもできる。更に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニールアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコールを水系バインダ等を挙げることができる。中でも、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適な水系バインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり負極活物質層に使用が可能となる。これらの水系バインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。但し、本実施形態では上記に例示したものに何ら制限されるものではなく、従来公知の各種の水系バインダを用いることができる。これらは、電極製造時には、上記水系バインダを安価な水等の水系溶媒中に粒子状に分散させた状態で用いられる。これらの水系バインダを用いることで、従来のポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機溶剤系バインダのように、高価なNMP等の有機溶媒に溶解(混合或いは分散)させて用いる場合に比べて、低コスト化を図ることができる。さらに、充電時の加熱分解発熱量が低く、高容量が得やすく、サイクル特性に優れるなどの点から望ましい。なお、これら水系バインダは強い結着性(結着効果)はあるものの、増粘性が十分でない。そのため、電極作成時に水系スラリーに水系バインダを加えただけでは十分な増粘効果が得られない。そこで、増粘性に優れるCMCないしCMC塩を増粘剤として用いることで、水系バインダに増粘性を付与するものである。
水系バインダの含有量は、負極活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。水系バインダの含有量が0.5質量%以上であれば、水系スラリーを用いて塗工、乾燥することで十分な結着効果を発現し、得られる負極活物質層において負極活物質同士または負極活物質と集電体とを結着し、導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。また、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。また、水系バインダの含有量が15質量%以下であれば、負極活物質層に占める水系バインダ量を十分に抑えることができ、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による高容量の負極を提供できる。また、水系スラリーを用いて塗工、乾燥することで十分な結着(バインダ)効果を発現し、得られる負極活物質層において、負極活物質同士を結着し、高い導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。
(4)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属
負極活物質層に含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、充放電容量を改善することができる。該アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属としては、特に制限されるものではなく、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは1種単独でも、2種以上を含有していてもよい。
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量は、負極活物質層の総量に対して、50〜30000ppm、好ましくは100ppm〜20000ppmの範囲である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が50ppm以上であれば、充放電容量の改善に有効な含有効果が認められる。また30000ppm以下であれば、充放電容量の改善に寄与することができる点で有利である。
負極活物質層中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属は、負極製造過程でアルカリ又はアルカリ水を添加することにより、負極活物質層に持ち込まれる成分である。具体的には、負極製造段階でアルカリ水を用いることで、CMCないしCMC塩を還元することで、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの元素を含有した負極活物質層が得られる。これらは、後述するように酸化物(酸化リチウム、酸化カリウム)や炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム)等の形態で存在していてもよい。
(5)炭酸アルカリ
負極活物質層には、炭酸アルカリ(Li2CO3)を含むのが好ましい。具体的には、負極活物質層に炭酸アルカリを含むことで、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を大幅に抑制することができ、ガス発生の抑制のみならず、充放電効率が大幅に改善された優れた負極を提供できる。更に初回充放電の効率がよくなる点でも優れている(実施例参照)。該炭酸アルカリも、負極製造過程でアルカリ又はアルカリ水を添加することにより、大気中(ないし水系スラリー)の二酸化炭素との反応により、負極活物質層に持ち込まれる成分である。
炭酸アルカリとしては、特に制限されるものではなく、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに何ら制限され理ものではない。これらは1種単独でも、2種以上が併用して含まれていてもよい。なかでも炭酸リチウムが好ましい。この場合には、CMC誘導体の被膜の表面に炭酸リチウムを点在させる、若しくは炭酸リチウムの被膜を形成することができる。この炭酸リチウムは負極活物質のSEI(表面皮膜)の成分でもあるため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることもできる点で優れている。CMC誘導体の被膜の表面への炭酸リチウムの点在化若しくは炭酸リチウムの被膜化は負極製造時になされる以外にも、更に初回充放電によりなされることもある。
炭酸アルカリの含有量としては、負極活物質層の総量に対して、0.01〜5質量%の範囲とするのが好ましい。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。炭酸アルカリの含有量が0.01質量%以上であれば、CMC誘導体の負膜36の表面に炭酸リチウムの被膜37を形成可能である。そのため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることができる点で優れている。一方、炭酸アルカリの含有量が5質量%以下であれば、負極活物質の含有量を低減させることなく、高容量を保持しつつ、CMC誘導体の負膜36の表面に炭酸リチウムの被膜37を形成可能である。そのため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることができる。
(6)その他の添加剤
負極活物質層には、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ、、並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の他に、その他の添加剤(例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等)が保持されることが好ましい。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などの炭素材料が挙げられる。しかし、導電助剤がこれらに限定されないことはいうまでもない。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。但し、活物質に導電性材料である炭素材料を用いる場合において、活物質だけでも電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与する場合には、導電助剤を添加しなくともよい。
導電助剤の含有量は、負極活物質層の総量に対して、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上の範囲である。また、導電助剤の含有量は、負極活物質層の総量に対して、15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲である。負極活物質自体が炭素材料のように高い導電性を有する場合には、上記範囲若しくは上記範囲を外れるより少ない範囲であっても、負極電極層の電子導電性の3次元ネットワークを構築することができる。なお、負極(および正極)活物質自体がのリチウム−遷移金属複合酸化物のように電子導電性が低い場合には、導電助剤の量によって電極抵抗を低減できる正極活物質層での導電助剤の含有量を上記範囲内に規定することでその効果が発現される。即ち、通常使用での電極反応を阻害することなく、電子導電性を十分に担保することができる。また、電極密度の低下によるエネルギー密度の低下を抑制でき、ひいては電極密度の向上によるエネルギー密度の向上を図ることができる。
電解質塩(リチウム塩ないし支持塩)としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、ビスペンタフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiBETI)等が挙げられが、これらに制限されることはない。
イオン伝導性ポリマー(電解質)としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系ポリマー、ポリプロピレンオキシド(PPO)系ポリマー、それらの共重合体などのリチウム塩を含み得るイオン伝導性ポリマー(固体高分子電解質材料)などが挙げられるが、これらに制限されることはない。
負極活物質層の厚さについても特に制限はないが、電子抵抗を抑えるという観点から、負極活物質層の厚さは、1〜120μm程度であることが好ましい。
以上説明した第1実施形態の負極31は、以下の効果を有する。
第1実施形態の負極31は、集電体と、該集電体上に配置された負極活物質層と、を含み、負極活物質層が、負極活物質、CMC誘導体、水系バインダ並びにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む。そして、このCMC誘導体では、増粘剤のCMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基の全部または一部が、還元(脱炭酸)反応により初回充電により還元分解されない安定な基になっていることを特徴とするものである。具体的には、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基のいずれかになっていることを特徴とするものである。その結果、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。
[負極の製造方法]
本実施形態の負極の製造方法は、水系溶媒に負極活物質と増粘剤のCMCないしCMC塩と水系バインダとを含む負極活物質層用原料を添加、混合して水系負極スラリーを形成する工程と、集電体上に水系負極スラリーを塗工し、乾燥して負極活物質層を形成する工程と、を含む。
本実施形態の負極の製造方法では、アルカリ又はアルカリ水を添加する工程を、さらに含むことを特徴とするものである。これにより、水系スラリーを用いた負極の作製に必要であったCMCないしCMC塩の増粘剤をアルカリ水による還元(脱炭酸)反応を利用して、CMCないしCMC塩の−CH2COOR基を初回放電時に還元分解されない安定な基にすることができる。具体的には、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基にすることができる。その結果、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を製造する方法を提供できる。
図3Aは、負極の製造方法好適な一実施形態(第2実施形態)を表す工程概略図である。図3Bは、負極の製造方法の好適な他の実施形態(第3実施形態)を表す工程概略図である。図3Cは、従来の負極の製造方法(特許文献1に記載の製造方法)の工程概略図である。
<第2実施形態の負極の製造方法>
負極を製造する好ましい第2実施形態としては、図3Aに示すように、適用な撹拌、混練装置(図示せず)が備えられたスラリー調製容器40を準備する。該スラリー調製容器40内に、負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての水系溶媒44とを添加、混合(混練)して負極水系スラリー45を調製する(第1工程)。
次に、集電体32をガイドロール46、47により搬送し、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45を塗工する。集電体32上に塗工された水系スラリー45上に、アルカリ水添加装置49よりアルカリ水50を添加する。その後、アルカリ水50が添加された水系スラリー45を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。続いて、かかる負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45を塗工する。集電体32上に塗工された水系スラリー45上に、アルカリ水添加装置49よりアルカリ水50を添加する。その後、アルカリ水50が添加された水系スラリー45を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する(第2工程)。これにより、集電体32の両面に負極活物質層33を形成(配置)することによって、本実施形態の負極31を製造することができる。なお、負極活物質層33を集電体32の両面に配置後、圧着(プレス)等をすることによって負極31の厚さを調整することも好ましい。
本実施形態では、第2工程内において、集電体32上に水系負極スラリー45を塗工した後に、アルカリ水50を添加する工程がなされることを特徴とするものである。これにより、均一に塗工した後に、アルカリ水を添加することで、塗工の均一性が保たれる。即ち、集電体に塗工するまでにアルカリ添加しないので、増粘剤のCMCないしCMC塩が還元され粘性を失い増粘効果が失われ、そのままでは均一に塗工することが困難という事象を解消することができ、水系スラリーの安定性に優れ、均一な塗工を容易に行うことができる。更に、得られた負極の最表面のCMCないしCMC塩が安定なCMC誘導体となっており、還元分解反応しないため、ガス発生抑制、被膜成分も最初からあるため、初回充放電効率が良好である。加えて、第2実施形態の負極の製造方法でも、負極を作製するために必要であった増粘剤のCMCないしCMC塩をアルカリ水による還元反応を利用して、CMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基を安定な基にすることで、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制できる。その結果、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極が提供できる。
なお、双極型電極を作製する場合には、上記手順により集電体32の片面に負極活物質層33を形成した後、図3Cの負極有機溶剤系スラリーに代えて正極有機溶剤系スラリーを用いて、その後の図3Cに示す方法により、正極活物質層を形成すればよい。具体的には、正極活物質、導電助剤、有機溶剤系バインダ及び粘度調整用溶媒である有機溶媒(NMP)を添加、混合(混練)して正極有機溶剤系スラリーを調製する。負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、有機溶剤系スラリー塗工機57を通過させる際に、該集電体32上に正極有機溶剤系スラリーを塗工する。次に、集電体32上に正極有機溶剤系スラリーを塗工した後、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、正極活物質層を形成する。これにより、集電体32の片面に負極活物質層33を形成(配置)し、該集電体32のもう一方の片面に正極活物質層を形成(配置)することによって、双極型電極を製造することができる。以下、第2実施形態の負極の製造方法につき、工程ごとに説明する。
(第1工程)
第1工程は、負極活物質と、増粘剤のCMCないしCMC塩と、水系バインダとを含む負極活物質層用原料と、水系溶媒とを混合して水系負極スラリーを調製する工程である。詳しくは、図3Aに示すように、適用な撹拌、混合(混練)装置(図示せず)が備えられたスラリー調製容器40を準備する。該スラリー調製容器40内に、負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての水系溶媒44とを添加、混合(混練)して負極水系スラリー45を調製する工程である。以下、本工程の構成要件につき説明する。
(1)スラリー調製容器40
スラリー調製容器40としては、特に制限されるものではなく、適用な撹拌、混合(混練)装置が備えられた既存のスラリー調製容器をそのまま利用することができる。
(2)負極活物質41
負極活物質41に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(負極活物質)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、負極活物質41の配合量は、特に制限されないが、好ましくは負極活物質層用原料の総量に対して、50〜99質量%、より好ましくは70〜97質量%、さらに好ましくは80〜96質量%の範囲である。負極活物質の配合量が、50質量%以上であれば、所望の充放電容量を付与することができる。99質量%以下であれば、単位体積当たり充放電容量を高めることができ、負極、ひいてはリチウムイオン二次電池等の電気デバイスの小型軽量化に大いに寄与し得るものである。
(3)増粘剤のCMCないしCMC塩42
増粘剤のCMCないしCMC塩42に関しては、上記に定義したとおりである。即ち、水系の負極スラリーの増粘剤であるCMCないしCMC塩には、その分子中に存在するカルボキシルメチル基(−CH2COOH)の他にその塩として−CH2COONa、−CH2COOLi、−CH2COOK、−CH2COONH4等が含まれている。よって、本明細書および特許請求の範囲において、特に断りがない限り、増粘剤として用いるカルボキシメチルセルロースないしその塩を、CMCないしCMC塩と表記しているものである。同様に、本明細書および特許請求の範囲において、特に断りがない限り、CMCないしCMC塩の分子中に存在するカルボキシルメチル基ないしその塩を、−CH2COOR基と表記しているものである。
負極水系スラリーを用いて負極を作製する際には、該負極水系スラリー45に水系バインダ43を加えただけでは十分な増粘効果が得られない。そこで、増粘性に優れるCMCないしCMC塩42を増粘剤として用いることで、水系スラリー45に適度な粘性を付与し得るものである。本実施形態では、当該CMCないしCMC塩42を負極作製段階の乾燥前にアルカリ又はアルカリ水50を加えて還元することでCMC誘導体とし、該還元反応で発生した水もその後の乾燥で飛ばす(除去する)ものである。その結果、得られた負極31を初回充電する際に当該CMCないしCMC塩42の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極31を提供できるものともいえる。
増粘剤のCMCないしCMC塩42は、上記したように、その分子中に、カルボキシルメチル基(−CH2COOH)の他に、その塩として、−CH2COONa、−CH2COOLi、−CH2COOK、−CH2COONH4等が存在する。こうした多数の種類(化合物)を包含するCMCないしCMC塩42としては、既に多くの種類(化合物)が市販されており、これらの中から適宜選択して使用することができる。これら市販品の多くは、分子中の−CH2COOH基の水素原子の一部または全部がカチオン種であるNa、Li、K、NH4などであるものが用いられており、カチオン種であるNa、Li、K、NH4量は任意に調整可能である。本実施形態では、−CH2COONaなどカチオン種であるNa等の部分でミセルを形成する為、CMCないしCMC塩の分子鎖の末端はNa等のカチオン種のものを用いるのが望ましいといえる。
増粘剤のCMCないしCMC塩42の配合量は、負極活物質層用原料の総量に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲である。CMCないしCMC塩42の配合量が0.1質量%以上であれば、負極製造過程での増粘効果を十分に発現し、平坦で滑らかな表面の負極活物質層33とすることができる。また、得られた負極31の初回充電でのCMCないしCMC塩42の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極31を提供できる。またCMCないしCMC塩42の配合量が10質量%以下であれば、優れた増粘効果により負極水系スラリー45の粘度を適当に調整することができ、所望の負極活物質層33とすることができる。また、得られた負極31の初回充電でのCMCないしCMC塩42の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極31を提供できる。
増粘剤のCMCないしCMC塩42の重量平均分子量は、5000〜1200000、好ましくは6000〜1100000、より好ましくは7000〜1000000の範囲である。増粘剤のCMCないしCMC塩42の重量平均分子量が5000以上であれば、負極水系スラリー45の粘度を適度に保つことができるなど、増粘剤であるCMCないしCMC塩42を水に溶解した際に、負極水系スラリー45の粘度を適度に保つことができる。その結果、負極31の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMCないしCMC塩42の重量平均分子量が1200000以下であれば、増粘剤であるCMCないしCMC塩42を水に溶解した際にゲル状態となることなく、負極水系スラリー45の粘度を適度に保つことができる。その結果、負極31の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。CMCないしCMC塩の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、金属−アミン錯体および/または金属−アルカリ錯体を含有する溶媒を移動相溶媒としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いてCMCないしCMC塩42の分子量分布の測定を行なうことができる。かかる分子量分布から、CMCないしCMC塩42の重量平均分子量の分子量を算出することができる。なお、CMCないしCMC塩42の重量平均分子量の測定方法としては、上記方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法により測定、算出することができる。
(4)水系バインダ43
水系バインダ43に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(水系バインダ)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、水系バインダ43の配合量は、負極活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層用原料の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。水系バインダ43の配合量が0.5質量%以上であれば、水系スラリー43を用いて塗工、乾燥することで十分な結着効果を発現し得る。その結果、得られる負極活物質層33において負極活物質41同士または負極活物質41と集電体32とを結着し、導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。また、初回充電でのCMCないしCMC塩42の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極31を提供できる。また、水系バインダ43の配合量が15質量%以下であれば、負極活物質層用原料に占める水系バインダ量を十分に抑えることができ、初回充電でのCMCないしCMC塩42の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による高容量の負極31を提供できる。また、負極水系スラリー45を用いて塗工、乾燥することで十分な結着(バインダ)効果を発現し、得られる負極活物質層33において、負極活物質41同士を結着し、高い導電性の3次元ネットワークを形成し得るものである。
(5)水系溶媒44
粘度調整溶媒としての水系溶媒44としては、特に制限されるものではなく、従来公知の水系溶媒を用いることができるものである。例えば、水(具体的には、純水、超純水、蒸留水、イオン交換水、地下水、井戸水、上水(水道水)等)、水とアルコール(例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)との混合液等を用いることができる。但し、本実施形態では、これらに何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、従来公知の水系溶媒を適宜選択して利用することができる。
水系溶媒44の配合量については、後述する負極水系スラリー45が所望の粘度の範囲内となるように、適量を配合すればよい。
(6)負極水系スラリー45の調製
負極水系スラリー45の調製は、適当なスラリー調製容器40内に、負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての水系溶媒44とを添加、混合(混練)して調製することができる。特に増粘剤のCMCないしCMC塩42を含有することにより、安定性に優れた負極水系スラリー45を得ることができる。
本実施形態の負極31を製造する際には、負極水系スラリー45の粘度を特に気にする必要なく、広い粘度範囲において適用可能である。ここで、本実施形態における負極水系スラリー45の粘度としては、好ましくは500〜10000mPa・s、より好ましくは800〜9000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。負極水系スラリー45の粘度が500mPa・s以上であれば、塗工機48を用いて、集電体32上に負極水系スラリー45を所定の厚さに均一に塗工することができる。その結果得られる負極31では、均一で平坦な表面を有する負極活物質層33を形成することができる。負極水系スラリー45の粘度が100000mPa・s以下であれば、塗工機48を用いて、集電体32上に負極水系スラリー45を所定の厚さに均一に塗工することができ、その後の乾燥を短時間で行うことができる。その結果得られる負極31では、均一で平坦な表面を有する負極活物質層33を形成することができる。
(第2工程)
第2工程は、集電体上に水系負極スラリーを塗工し、乾燥して負極活物質層を形成する工程である。詳しくは、図3Aに示すように、集電体32をガイドロール46、47により搬送し、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45を塗工する。集電体32上に塗工された水系スラリー45上に、アルカリ水添加装置49よりアルカリ水50を添加する。その後、アルカリ水50が添加された水系スラリー45を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。続いて、かかる負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45を塗工する。集電体32上に塗工された水系スラリー45上に、アルカリ添加装置49よりアルカリ水50を添加する。その後、アルカリ水50が添加された水系スラリー45を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する工程である。以下、本工程の構成要件につき説明する。
(1)集電体32
集電体32に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(集電体)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)搬送手段
本工程での集電体32や水系スラリー45が塗工された集電体32の搬送手段としては、従来公知の搬送手段を用いることができるものである。例えば、図3Aに示すような、ガイドロール46、47等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。ガイドロール46、47に関しては、集電体32、更には該集電体上に水系スラリー45を塗工した状態で、水系スラリー塗工機48、アルカリ添加装置49下、乾燥機51内、更には圧延装置(図示せず)内を通過させ、搬送するために設けられている。そのため、図3Aでは、ガイドロール46、47のみを図示しているが実際には、上記した各種装置周辺又は内部を通過、搬送させるために必要な個所に適当数を適宜配置されてなるものである。即ち、ガイドロール以外にも、図示していないだけで、従来公知の各種搬送手段が適宜利用されてなるものである。こうした搬送手段を用いることで、設備コストを抑えつつ製造速度を高速にすることができ、コスト低減を図りながら負極活物質層33を製造できる。
(3)水系スラリー45の塗工
水系スラリー45の塗工は、適当な水系スラリー塗工機48を用いて、搬送される集電体32上に塗工されるものである。好ましくは均一かつ平坦に塗工されるのが望ましい。
水系スラリーの塗工に用いられる水系スラリー塗工機48としては、特に制限されるものではなく、従来公知の装置を用いることができる。例えば、搬送される集電体32上に均一かつ平滑に塗工し得るように、負極水系スラリー45を連続的に供給することができる装置が望ましいが、これらに何ら制限されるものではない。
なお、図3Aでは、垂直且つ上方向に搬送される集電体32に、集電体32側方に設置した水系スラリー塗工機48から負極水系スラリー45を水平方向に供給して塗工する形態を示している。但し、かかる形態に制限されるものではない。例えば、ガイドロール46を通過して水平方向に搬送される集電体32上に、集電体32上方に設置した水系スラリー塗工機48から負極水系スラリー45を下方に供給して塗工する形態としてもよいなど、従来公知の供給方式を適宜利用することができるものである。
また、負極水系スラリー45を連続的に供給する形態としては、水系スラリー塗工機48を用いたダイコート、スプレーコート以外にも、デップコートなどを用いることができるなど、特に制限されるものではない。デップコートとしては、例えば、負極水系スラリー45貯留槽を設け、この中を集電体32を通過させながら、負極水系スラリー45を塗工するデップコートなどを用いることができるなど、特に制限されるものではない。
なお、ここでいう均一に塗工するとは、概ね目付けないし塗布質量の精度が部分ごとで(どの部分をとっても)±5質量%程度の範囲内になるように塗工されていればよいものとする(第3実施形態においても同様とする)。同様に、平滑に塗工するとは、概ね単位面積当たりの質量が狙い目の±5質量%以内になるよう塗工されていればよいものとする(第3実施形態においても同様とする)。
(4)アルカリ水の添加
本実施形態では、図3Aに示すように、負極活物質層を形成する第2工程内において、集電体32上に負極水系スラリー45を塗工した後に、アルカリ水50を添加する工程がなされることを特徴とする。これにより、水系スラリー45の塗工前にアルカリ水50を添加する必要がないため、水系スラリー45の安定性を損なうこともなく良好な塗工(均一で平滑な塗工)が可能となる。加えて、負極水系スラリー45にアルカリ水50を添加することで、得られる負極活物質(粒子)の最表面のCMCないしCMC塩が初回充電時に還元分解反応しないため、ガス発生が抑制される。更に、負極製造過程で負極活物質(粒子)の最表面に皮膜成分(SEI膜)が形成されている(即ち、初回充電前に形成されている)ため、初回充放電効率も良好である。
アルカリ水50の添加に用いられるアルカリ水添加装置49としては、特に制限されるものではなく、従来公知の装置を用いることができる。例えば、搬送される集電体32上の水系スラリー45上に均一に添加(散布)し得るように、アルカリ水50を連続的に供給することができる装置が望ましいが、これらに制限されるものではない。なお、図3Aでは、ガイドロール46を通過して水平方向に搬送される集電体32上の水系スラリー45上に、水系スラリー45表面よりも上方に設置したアルカリ水添加装置49からアルカリ水50を下方に供給する形態を示している。但し、かかる形態に制限されるものではない。例えば、垂直且つ上方向に搬送される集電体32上の水系スラリー45に、集電体32側方に設置したアルカリ水添加装置49からアルカリ水50を水平方向に供給(スプレー)して塗工する形態としてもよいなど、従来公知の供給方式を適宜利用することができるものである。
また、アルカリ水50を連続的に供給する形態としては、アルカリ水添加装置49を用いたスプレーコート(散布ないし吹付塗工)、ダイコート以外にも、デップコートなどを用いることができるなど、特に制限されるものではない。デップコートとしては、例えば、アルカリ水50の貯留槽を設け、この中を集電体32上に塗工された水系スラリー45を通過させながら、アルカリ水50を含浸するデップコートなどを用いることができるなど、特に制限されるものではない。
(5)アルカリ水50
アルカリ水50としては、特に制限されるものではなく、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ルビジウム水溶液、水酸化セシウム水溶液、水酸化ベリリウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化ストロンチウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液などが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独でも、2種以上が併用して含まれていてもよい。
アルカリ水50としては、水酸化リチウム水溶液が好ましい。この場合には、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。加えてアルカリ水50として水酸化リチウム水溶液を選択することで負極活物質(粒子)表面或いは負極活物質(粒子)表面に点在或いは被膜化されたCMC誘導体表面に炭酸リチウムを形成することができる。詳しくは、炭酸リチウム(Li2CO3)を粒状に点在させる、若しくは炭酸リチウムの被膜を形成することができる(下記化学式(1)(2)参照のこと)。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガスの発生をより一層抑制するができる。また、この炭酸リチウムは負極活物質のSEI(表面皮膜)の成分でもあるため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることもできる点で優れている。CMC誘導体の被膜の表面への炭酸リチウムの点在化若しくは炭酸リチウムの被膜化は負極製造時になされる以外にも、更に初回充放電によりなされることもある。詳しくは、初回充放電で負極活物質(粒子)の表面に副反応によりSEI(表面皮膜)ができるため、当該表面皮膜に活物質(電池容量の一部)が使われるため、その分量だけ電池の容量が減少してしまっていた。しかしながら、水酸化リチウム(LiOH)水溶液を選択することで予め電極製造段階でこうしたSEI(表面皮膜)を形成することができるため、初回充放電効率がアップさせることができる。言い換えれば、初回充放電でのロスを抑えることができる。
水系スラリー45に添加されるアルカリ濃度としては、アルカリ成分のアルカリ金属/アルカリ土類金属の含有量が、負極活物質層(に相当する負極活物質層用原料)の総量に対して50〜30000ppm、好ましくは100〜20000ppmの範囲である。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果を有効に発現し得る範囲であれば、十分に適用可能である。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が50ppm以上であれば、充放電容量の改善に有効な含有効果が認められる。また30000ppm以下であれば、充放電容量の改善に寄与することができる点で有利である。
アルカリ水50中のアルカリ濃度は、特に制限されるものではないが、pH9〜14、好ましくはpH12〜14の範囲であればよい。アルカリ濃度が上記範囲内であれば、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガス発生をより一層抑制するができる。なお、上記pHは、水系スラリー45の配合にもよるが、これらの配合の等電点を狙うのがよい。即ち、水系スラリー45中のCMCないしCMC塩42を完全に還元できる量のアルカリ又はアルカリ水50を添加すればよいといえる。
アルカリ水50の添加量は、特に制限されるものではないが、水系スラルー45に対して0.1〜10質量%の範囲であればよい。上記範囲内であれば、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。
なお、本実施形態では、アルカリ水50の添加を、集電体32上の水系スラリー45に一度に添加する形態を示したが、これらに何ら制限されるものではない。例えば、集電体32上の水系スラリー45に複数回(2回以上)に分けて添加してもよい。更には、例えば、厚膜の負極活物質層33を形成する場合に、集電体32上に水系スラリー45を塗工した後(ウエット状に半分の厚さに形成した後)に、1回目のアルカリ水50を添加する。その後、再度、水系スラリー45を塗工した後(ウエット状に残り半分の厚さを形成した後)に、2回目のアルカリ水50を添加するようにしてもよい。さらに、アルカリ水50の添加を、集電体32上の水系スラリー45を塗工した後であれば、乾燥した後に(ドライな状態で)アルカリ水50を添加し、その後に再度乾燥してもよい。よって、集電体32上の水系スラリー45を塗工した後に1回目のアルカリ水50を添加し、乾燥した後に2回目のアルカリ水50を添加し、その後に再度乾燥してもよいなど、本発明の作用効果を損なわない範囲内であれば、何ら制限されるものではない。好ましくは、塗工した後、乾燥前の水系スラリー45のようなウエットの状態でアルカリ水50を添加するのが、アルカリ水50が全体かつ均一に行き渡りやすい点で望ましい。
(6)乾燥
本工程での乾燥は、適当な乾燥機51を用いて、アルカリ水50を添加された水系スラリー45の乾燥を行うものである。かかる乾燥により、集電体32上に乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45(負極活物質層33)が形成される。
本工程で用いることのできる乾燥機51としては、特に制限されるものではなく、従来公知の装置を用いることができる。例えば、連続的に乾燥を行うことができ機内を減圧にすることができる装置が望ましいが、連続的ではなくバッチ方式で乾燥可能な真空乾燥装置や減圧乾燥装置などを用いてもよいなど、何ら制限されるものではない。連続的に乾燥を行うことができ機内を減圧にすることができる装置を用いることで、後述するように炉内を高濃度のCO2雰囲気とした場合に、機内を減圧にすることで、機外に当該CO2雰囲気が漏れないようにすることができる点で優れている。
乾燥温度としては、好ましくは30〜150℃、より好ましくは60〜150℃の範囲とするのが望ましい。30℃以上であれば、乾燥時間に長期間を要することなく、生産効率を落とすことなく十分に乾燥することができる点で優れている。150℃以下であれば、集電体(例えばCu箔)が酸化されることなく、短時間で乾燥することができる点で優れている。
乾燥時間は、乾燥温度などにより異なるが、十分な乾燥が行えればよく、何ら制限されるものではない。
乾燥圧力としては、十分な乾燥が行えればよく、特に制限されるものではない。よって、減圧乾燥、真空乾燥、大気圧(常圧)下での乾燥、加圧乾燥のいずれでもよい。
乾燥雰囲気としては、特に制限されるものではなく、不活性ガス雰囲気、大気(空気)中などが挙げられるが、好ましくはアルカリ水50に水酸化リチウム水溶液を用いた場合には、大気(空気)中よりも高濃度にCO2を含む雰囲気下で行われることが望ましい。言い換えれば、大気(空気)中に積極的にCO2を吹き込むなどしてCO2濃度を高めた状態で乾燥するものである。これにより、負極作成段階で、負極活物質(粒子)表面をLi2CO3にすることができるためである。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガスの発生をより一層抑制するができる。また、この炭酸リチウムは負極活物質のSEI(表面皮膜)の成分でもあるため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることもできる点で優れている。
大気(空気)中よりも多くのCO2を含む雰囲気とするには、大気(空気)中にCO2ガスを吹き込んでCO2濃度を上げてもよいし、大気(空気)をCO2ガスで置換してもよいなど、特に制限されるものではない。大気(空気)中のCO2濃度は産業活動により増加傾向にあるが、大気中にはおよそ0.04%(気象庁の2011年4月の観測値で396.4ppm(0.396%)(南鳥島)、398.4ppm(0.398%)(与那国島))ほどの濃度でCO2が含まれる。よって、大気中よりも高濃度でCO2を含む雰囲気ガス中のCO2ガスの濃度としては、0.05〜100体積%である。好ましくは1〜100体積%、より好ましくは5〜100体積%、さらに好ましくは10〜100体積%である。
(7)乾燥後
上記乾燥により、集電体32上に乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45が形成される。その後、乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45が形成された集電体32を搬送し、適当な圧延機(図示せず)を用い、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。
(8)集電体32の負極活物質層が形成されていない裏面への負極活物質層の形成
集電体32の負極活物質層が形成されていない裏面への負極活物質層の形成は、上記した集電体32の片面に負極活物質層を形成したのと同様の手法及び条件にて行えばよい。
例えば、負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48横を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45を塗工する。集電体32上に塗工された水系スラリー45上に、アルカリ添加装置49よりアルカリ水50を添加する。その後、アルカリ水50を添加された水系スラリー45を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)すればよい。
その後、適当な裁断機等を用いて、個々の負極サイズに切断することにより、図3Aに示す負極31を形成することができる。なお、裁断後、圧着等をすることによって負極31の厚さを調整することも好ましい。
(9)集電体の両面に同時に負極活物質を形成する手法
なお、本実施形態では、集電体32を垂直方向の上方に走行させながら、集電体32の両面に同時に水系スラリー45を塗工し、アルカリ水を供給し、乾燥することにより、集電体の両面に同時に負極活物質層33を形成することもできる。かかる手法でも、上記した上記した集電体32の片面に負極活物質層33を形成したのと同様の手法及び条件にて行えばよい。かかる形態を用いることで、設備コストを抑えつつ製造効率を略半分に短縮することができ、コストの大幅な低減を図りながら負極31を製造できる。即ち、両面水系スラリー45塗工、両面アルカリ水供給、両面乾燥、両面圧延が可能となり、水系スラリー45の塗工時間、アルカリ水の供給時間、乾燥時間、圧延時間がいずれも短縮される点で優れている。この場合には、垂直搬送に伴う水系スラリー45等のタレが生じないように粘度調整を十分に管理することが望ましい。
具体的には、集電体32に水系スラリー45を塗工させるには、例えば、両面ダイコーター等を用いて、集電体32の両面から水系スラリー45を塗工することが可能である。これにより、精度の高い(均一で平滑な)負極活物質層33を作製でき、電池性能を向上させることができる。同様に、集電体32上の水系スラリー45にアルカリ水50を供給させるには、例えば、両面ダイコーター等を用いて、集電体32上の水系スラリー45の両面からアルカリ水50を塗工(供給)することが可能である。これにより、精度の高い(均一で平滑な)負極活物質層33を作製でき、電池性能を向上させることができる。また、機内を水系スラリー45を塗工した集電体32が垂直方向に搬送(走行)することのできる乾燥機を用いることで、両面を均等にムラなく乾燥させることができる。これにより、乾燥途中で塗工した水系スラリー45の偏在(タレなど)が抑制され、電池の性能低下を引き起こさずに乾燥時間を短縮でき、精度の高い(均一で平滑な)負極活物質層33を作製でき、電池性能を向上させることができる。
以上説明した第2実施形態の負極の製造方法は、以下の効果を有する。
第2実施形態の負極の製造方法は、負極活物質層を形成する第2工程内において、集電体上に負極水系スラリーを塗工した後に、アルカリ水を添加する工程がなされることを特徴とするものである。これにより、水系スラリーの塗工前にアルカリ水を添加する必要がないため、水系スラリーの安定性を損なうこともなく良好な塗工(均一で平滑な塗工)が可能となる。加えて、負極水系スラリーにアルカリ水を添加することで、得られる負極活物質(粒子)の最表面のCMCないしCMC塩が初回充電時に還元分解反応しないため、ガス発生が抑制される。更に、負極製造過程で負極活物質(粒子)の最表面に皮膜成分(SEI膜)が形成されている(即ち、初回充電前に形成されている)ため、初回充放電効率も良好である。
<第3実施形態の負極の製造方法>
負極を製造する好ましい第3実施形態としては、図3Bに示すように、適用な撹拌、混練装置(図示せず)が備えられたスラリー調製容器40を準備する。該スラリー調製容器40内に、負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43を含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての水系溶媒44と、アルカリ又はアルカリ水50とを添加、混合(混練)して負極水系スラリー45’を調製する(第1工程)。即ち、本実施形態では、第1工程内において、負極活物質層形成用原料を添加、混合する過程で、アルカリ又はアルカリ水50を添加する工程がなされることを特徴とするものである。
次に、集電体32をガイドロール46、47により搬送し、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45’を塗工する。その後、集電体32上に塗工された水系スラリー45’を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。続いて、かかる負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45’を塗工する。その後、集電体32上に塗工された水系スラリー45’を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する(第2工程)。これにより、集電体32の両面に負極活物質層33を形成(配置)することによって、本実施形態の負極31を製造することができる。なお、負極活物質層33を集電体32の両面に配置後、圧着(プレス)等をすることによって負極31の厚さを調整することも好ましい。
なお、双極型電極を作製する場合には、上記手順により集電体32の片面に負極活物質層33を形成した後、図3Cの負極有機溶剤系スラリーに代えて正極有機溶剤系スラリーを用いて、その後の図3Cに示す方法により、正極活物質層を形成すればよい。具体的には、正極活物質、導電助剤、有機溶剤系バインダ及び粘度調整用溶媒である有機溶媒(NMP)を添加、混合(混練)して正極有機溶剤系スラリーを調製する。負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、有機溶剤系スラリー塗工機57を通過させる際に、該集電体32上に正極有機溶剤系スラリーを塗工する。次に、集電体32上に正極有機溶剤系スラリーを塗工した後、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、正極活物質層を形成する。これにより、集電体32の片面に負極活物質層33を形成(配置)し、該集電体32のもう一方の片面に正極活物質層を形成(配置)することによって、双極型電極を製造することができる。以下、第3実施形態の負極の製造方法につき、工程ごとに説明する。
(第1工程)
第1工程は、負極活物質と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダとを含む負極活物質層用原料と、水系溶媒と、更に、アルカリ又はアルカリ水とを混合して水系負極スラリーを調製する工程である。詳しくは、図3Bに示すように、適用な撹拌、混合(混練)装置(図示せず)が備えられたスラリー調製容器40を準備する。スラリー調製容器40内に、負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒の水系溶媒44と、アルカリ又はアルカリ水50とを添加、混合(混練)して負極水系スラリー45’を調製する工程である。以下、本工程の構成要件につき説明する。
(1)スラリー調製容器40
スラリー調製容器40としては、特に制限されるものではなく、、適用な撹拌、混合(混練)装置が備えられた既存のスラリー調製容器をそのまま利用することができる。本実施形態では、当該水系スラリー45’の調製時にアルカリ又はアルカリ水50が加えられるため、容器40の内面を耐アルカリ性の材料(例えば、グラスライニング材料やホウロウ材料)でライニング加工したものを用いるのが望ましいといえる。
(2)負極活物質41
負極活物質41に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(負極活物質)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、負極活物質41の配合量は、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)増粘剤のCMCないしCMC塩42
増粘剤のCMCないしCMC塩42に関しては、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(4)水系バインダ43
水系バインダ43に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(水系バインダ)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、水系バインダ43の配合量は、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(5)水系溶媒44
粘度調整溶媒としての水系溶媒44としては、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(6)アルカリ又はアルカリ水50
アルカリとしては、特に制限されるものではなく、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アンモニウムなどが挙げられるが、これらに何ら制限され理ものではない。これらは1種単独でも、2種以上が併用して含まれていてもよい。
アルカリ水50としては、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。但し、本実施形態では、水系溶媒に直接アルカリを添加する場合には、激しい反応や発熱を伴い場合があるので、予め十分な注意しながら調製したアルカリ水50を用いるのが望ましい。
アルカリ又はアルカリ水50としては、水酸化リチウム(LiOH)又はその水溶液が好ましい。この点についても第2実施形態で説明した通りである。なお、「水酸化リチウム(LiOH)水溶液」は「水酸化リチウム(LiOH)又はその水溶液」と読み替えるものとする。
アルカリ水中のアルカリ濃度は、pH9〜14、好ましくはpH12〜14の範囲であればよい。アルカリ濃度が上記範囲内であれば、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガスの発生をより一層抑制するができる。なお、上記pHは、水系スラリー45’の配合にもよるが、これらの配合の等電点を狙うのがよい。即ち、水系スラリー45’中のCMCないしCMC42を完全に還元できる量のアルカリ又はアルカリ水50を添加すればよいといえる。
アルカリ又はアルカリ水の添加量は、水系スラリー45’に対して0.1〜10質量%の範囲であればよい。上記範囲内であれば、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。
水系スラリー45’のpHが9〜14、好ましくは12〜14の範囲となるようにアルカリ又はアルカリ水50を添加すればよい。水系スラリー45’のpHが9以上であれば、水系スラリーの安定性に優れるほか、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガスの発生をより一層抑制するができる。水系スラリー45’のpHが14以下であれば、水系スラリーの安定性に優れるほか、増粘剤として含有されているCMCないしCMC塩42を還元(脱炭酸)反応してCMC誘導体にすることができる。これにより、初回充放電効率を上げることができる。さらにガスの発生をより一層抑制するができる。なお、上記pHは、水系スラリー45’の配合にもよるが、これらの配合の等電点を狙うのがよい。即ち、水系スラリー45’中のCMCないしCMC塩42を完全に還元できる量のアルカリ又はアルカリ水50を添加すればよいといえる。
(7)負極水系スラリー45の調製
負極水系スラリー45’の調製は、スラリー調製容器40内に負極活物質41と、増粘剤のCMCないしCMC塩42と、水系バインダ43とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒の水系溶媒44と、アルカリ又はアルカリ水50とを添加、混合して調製することができる。即ち、本実施形態では、第1工程内において、負極活物質層形成用原料を添加、混合する過程で、アルカリ又はアルカリ水50を添加する工程がなされることを特徴とするものである。
本実施形態の製造方法では、水系スラリー45’を調製する際にアルカリ又はアルカリ水50を添加し、該アルカリによる還元反応を利用して、増粘剤のCMCないしCMC塩42の分子中に存在する−CH2COOR基を安定な基にするものである。その結果、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極31’が提供できるものである。なお、本実施形態では、第2実施形態に比して、水系スラリー45’を調製する際にアルカリ又はアルカリ水50を添加している。そのため、スラリーの安定性に関しては、第2実施形態のように調整した水系スラリー45をそのまま用いるだけで(特に撹拌など行う必要もなく)非常に優れた安定性を得ることはできない。そのため、塗工直前まで十分に水系スラリー45’を撹拌させながら、塗工することで、第2実施形態と遜色のない均一な塗工を行うことができる。その結果、得られた負極の最表面のCMCないしCMC塩が安定な誘導体となっており、還元分解反応しないため、ガス発生抑制、被膜成分も最初からあるため、初回充放電効率が良好である。
本実施形態の負極31を製造する際には、負極水系スラリー45’の粘度を特に気にする必要なく、広い粘度範囲において適用可能である。ここで、本実施形態における負極水系スラリー45’の粘度としては、好ましくは500〜10000mPa・s、より好ましくは800〜9000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。負極水系スラリー45’の粘度が500mPa・s以上であれば、塗工機48を用いて、集電体32上に負極水系スラリー45を所定の厚さに均一に塗工することができる。その結果得られる負極31では、均一で平坦な表面を有する負極活物質層33を形成することができる。負極水系スラリー45の粘度が100000mPa・s以下であれば、塗工機48を用いて、集電体32上に負極水系スラリー45’を所定の厚さに均一に塗工することができ、その後の乾燥を短時間で行うことができる。その結果得られる負極31では、均一で平坦な表面を有する負極活物質層33を形成することができる。
(第2工程)
第2工程は、集電体上に水系負極スラリーを塗工し、乾燥して負極活物質層を形成する工程である。詳しくは、図3Bに示すように、集電体32をガイドロール46、47により搬送し、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45’を塗工する。その後、集電体32上に塗工された水系スラリー45’を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。続いて、かかる負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45’を塗工する。その後、集電体32上に塗工された水系スラリー45’を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する工程である。以下、本工程の構成要件につき説明する。
(1)集電体32
集電体32に関しては、第1実施形態の負極の構成要件の1つ(集電体)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)搬送手段
本工程での集電体32や水系スラリー45’が塗工された集電体32の搬送手段としては、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(3)水系スラリー45’の塗工
水系スラリー45’の塗工は、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
但し、水系スラリーの塗工に用いられる水系スラリー塗工機48としては、特に制限されるものではなく、従来公知の装置を用いることができる。例えば、搬送される集電体32上に均一かつ平滑に塗工し得るように、負極水系スラリー45’を連続的に供給することができる装置が望ましいが、これらに何ら制限されるものではない。
なお、図3Bでは、垂直且つ上方向に搬送される集電体32に、集電体32側方に設置した水系スラリー塗工機48から負極水系スラリー45’を水平方向に供給して塗工する形態を示している。但し、かかる形態に制限されるものではない。例えば、ガイドロール46を通過して水平方向に搬送される集電体32上に、集電体32上方に設置した水系スラリー塗工機48から負極水系スラリー45’を下方に供給して塗工する形態としてもよいなど、従来公知の供給方式を適宜利用することができる。なお、本実施形態では、第2実施形態に比して、水系スラリー45’を調製する際にアルカリ又はアルカリ水50を添加している。そのため、スラリーの安定性に関しては、第2実施形態のように調整した水系スラリー45をそのまま用いるだけで(特に撹拌など行う必要もなく)非常に優れた安定性を得ることはできない。そこで塗工直前まで十分に水系スラリー45’を撹拌させながら、塗工することのできる塗工機48を用いることで、第2実施形態と遜色のない均一な塗工を行うことができる。即ち、該塗工機48では、塗工直前まで十分に水系スラリー45’を撹拌させることのできる撹拌手段を備えてなるものが望ましいといえる。
また、負極水系スラリー45’を連続的に供給する形態としては、第2実施形態で説明した通りである。
(4)乾燥
本工程での乾燥は、適当な乾燥機51を用いて、集電体32上に塗工された水系スラリー45’の乾燥を行うものである。かかる乾燥により、集電体32上に乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45’(負極活物質層33)が形成される。
本工程で用いることのできる乾燥機51としては、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
乾燥温度、乾燥時間、乾燥圧力、乾燥雰囲気に関しても、第2実施形態で説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(5)乾燥後
上記乾燥により、集電体32上に乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45’が形成される。その後、乾燥(ドライ)状態の水系スラリー45’が形成された集電体32を搬送し、適当な圧延機(図示せず)を用い、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)する。
(6)集電体32の負極活物質層が形成されていない裏面への負極活物質層の形成
集電体32の負極活物質層が形成されていない裏面への負極活物質層の形成は、上記した集電体32の片面に負極活物質層を形成したのと同様の手法及び条件にて行えばよい。
例えば、負極活物質層33が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、水系スラリー塗工機48横を通過させる際に、該集電体32上に水系スラリー45’を塗工する。その後、集電体32上に塗工された水系スラリー45’を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33を形成(配置)すればよい。
その後、適当な裁断機等を用いて、個々の負極サイズに切断することにより、図3Bに示す負極31を形成することができる。なお、裁断後、圧着等をすることによって負極31の厚さを調整することも好ましい。
(7)集電体の両面に同時に負極活物質を形成する手法
なお、本実施形態でも、集電体32を垂直方向の上方に走行させながら、集電体32の両面に同時に水系スラリー45’を塗工し、乾燥することにより、集電体の両面に同時に負極活物質層33を形成することもできる。かかる手法でも、上記した上記した集電体32の片面に負極活物質層33を形成したのと同様の手法及び条件にて行えばよい。かかる形態を用いることで、設備コストを抑えつつ製造効率を略半分に短縮することができ、コストの大幅な低減を図りながら負極31を製造できる。即ち、両面水系スラリー45’塗工、両面乾燥、両面圧延が可能となり、水系スラリー45’の塗工時間、アルカリ水の供給時間、乾燥時間、圧延時間がいずれも短縮される点で優れている。この場合には、垂直搬送に伴う水系スラリー45’等のタレが生じないように粘度調整を十分に管理することが望ましい。
具体的には、集電体32に水系スラリー45’を塗工させるには、例えば、両面ダイコーター等を用いて、集電体32の両面から水系スラリー45’を塗工することが可能である。これにより、精度の高い(均一で平滑な)負極活物質層33を作製でき、電池性能を向上させることができる。また、機内を水系スラリー45’を塗工した集電体32が垂直方向に搬送(走行)することのできる乾燥機を用いることで、両面を均等にムラなく乾燥させることができる。これにより、乾燥途中で塗工した水系スラリー45’の偏在(タレなど)が抑制され、電池の性能低下を引き起こさずに乾燥時間を短縮でき、精度の高い(均一で平滑な)負極活物質層33を作製でき、電池性能を向上させることができる。
以上説明した第3実施形態の負極の製造方法は、以下の効果を有する。
第3実施形態の負極の製造方法は、極活物質と、増粘剤のCMCないしCMC塩と、水系バインダを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての水系溶媒と、アルカリ又はアルカリ水とを添加、混合して負極水系スラリーを調製する第1工程に特徴を有するものである。即ち第1工程内において、アルカリ又はアルカリ水50を添加する工程がなされることを特徴とするものである。本実施形態では、水系スラリーを用いて負極を作製するのに必要な増粘剤のCMCないしCMC塩を、水系スラリーを調製する際にアルカリ又はアルカリ水を添加し、該アルカリによる還元反応を利用してCMCないしCMC塩の分子中に存在する−CH2COOR基を安定な基にするものである。その結果、初回充電でのCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極が提供できるものである。
なお、上記した本発明の第2及び第3実施形態の負極の製造方法と、特許文献1の製造方法との違いを説明するために、特許文献1の製造方法の概略を図3Cに示したものである。
図3Cに示すように、従来の製造方法では、まず、所望の負極活物質(粒子)を製造するために、水44とCMCないしCMC塩42が入れられた容器に、黒鉛材料41’とアルカリ金属化合物50’とを添加し、撹拌、分散処理を行って処理液を作製する。この処理液を濾過して、CMCないしCMC塩をウエット状態で含有(吸着または被覆)する黒鉛材料52を得、乾燥することで、負極活物質(CMCないしCMC塩をドライ状態で吸着または被覆する黒鉛材料)53を得る。次に適用な撹拌、混練装置(図示せず)が備えられたスラリー調製容器を準備する。該スラリー調製容器内に、負極活物質53と、有機溶剤水系バインダ54とを含む負極活物質層用原料と、粘度調整溶媒としての有機溶媒(NMP)55とを添加、混合して負極有機溶剤系スラリー56を調製する(第1工程)。
次に、集電体32をガイドロール46、47により搬送し、有機溶剤系スラリー塗工機57を通過させる際に、該集電体32上に有機溶剤系スラリー56を塗工する。その後、集電体32上に塗工された有機溶剤系スラリー56を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33’を形成(配置)する。続いて、かかる負極活物質層33’が形成されていない集電体32の片面をガイドロール46、47により搬送し、その後、同様の操作を繰り返す。即ち、有機溶剤系スラリー塗工機57を通過させる際に、該集電体32上に有機溶剤系スラリー56を塗工する。その後、集電体32上に塗工された有機溶剤系スラリー56を、乾燥機51内を通過させて乾燥させ、圧延によって密度を調整し、負極活物質層33’を形成(配置)する(第2工程)。これにより、集電体32の両面に負極活物質層33’を形成(配置)することによって、従来の有機溶剤系スラリーを用いた負極31’を製造することができる。上記したように、従来の製造方法では、上記した本発明の第2及び第3実施形態の負極の製造方法に比べて、負極活物質を得るまでに多くの工程と原料を費やす必要がある(図3Cと、図3A、Bとを対比参照のこと)。更に高価な有機溶媒のNMPを使用した有機溶剤系負極スラリーを用いる必要がある。そのため、むしろコストアップとなり、そもそも従来から切望されている負極水系スラリーによるコストダウンを図ることは全くできていない。また、従来の負極活物質材料自体の製造方法で得られた負極活物質と水系溶媒を用いて水系負極スラリーを調製し負極を作製した場合、依然として初回ガス発生量が多く、電気自動車等の車両用二次電池としての性能を満足するのは非常に難しいという問題もある。
これに対し、本発明の第2、第3実施形態の負極の製造方法では、安価な水系溶媒、特に安価で乾燥により残留物を残すことなく容易に除去可能な水を用いた水系スラリーを用いて負極を形成し得るため、負極水系スラリーによるコストダウンを図ることができる。また、水系溶媒を用いて水系負極スラリーを調製し負極を作製する際に必要であった増粘剤のCMCないしCMC塩をアルカリ水による還元(脱炭酸)反応を利用して、CMCないしCMC塩の−CH2COOR基を初回充電時に還元分解されない安定な基とすることができる。具体的には、−CH2CHO基、−CH2CH2OH基、−CH3基とすることができる。こうすることで、水系負極スラリーを調製して作製した負極であっても、初回充電での増粘剤のCMCないしCMC塩の還元分解を抑制でき、ガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できることができる点でも有利である。
上記で説明したリチウムイオン二次電池(などの電気デバイス)は、負極及びその製造方法に特徴を有する。以下、その他の主要な構成部材について説明する。
[正極]
本実施形態の正極は、集電体と、該集電体上に配置された正極活物質層と、を含む。
[集電体]
集電体に関しては、負極の構成要素の1つ(集電体)として説明したのと同様であるので、ここでの説明は省略する。
但し、集電体は、金属箔の他に、双極型でない電池10で用いられる集電体では、パンチングメタルシートやエキスパンドメタルシートを用いることもできる。パンチングメタルシートやエキスパンドメタルシートの両面に正極(有機溶剤系)スラリーを塗工、乾燥乾燥することで、当該集電体の両面に正極活物質層を形成することができる。金属箔を用いる場合にも、金属箔上に正極(有機溶剤系)スラリーを塗工、乾燥することで、当該集電体上に正極活物質層を配置することができる。
[正極活物質層]
正極活物質層は、正極活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
(正極活物質)
正極活物質としては、従来公知のものを使用することができる。
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni−Co−Mn)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜25μmである。
正極活物質の量は、特に制限されないが、好ましくは正極活物質層形成用原料の総量に対して、50〜99質量%、より好ましくは70〜97%、さらに好ましくは80〜96%の範囲である。
(その他の添加剤)
本実施形態の正極に使用される正極活物質層には、正極活物質の他に、その他の添加剤(例えば、有機溶媒系バインダ(結着剤)、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等)が保持されることも好ましい。
有機溶媒系バインダとしては、特に限定されるものではなく、従来公知の有機溶媒系バインダを使用することができる。例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適な有機溶媒系バインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらの有機溶媒系バインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒系バインダの量は、正極活物質等を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは正極活物質層形成用原料の総量に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
その他、上記のように、添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。これらの添加剤(導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー)については、負極活物質層で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
正極活物質層の厚さについても特に制限はないが、電子抵抗を抑えるという観点から、正極活物質層の厚さは、1〜120μm程度であることが好ましい。
[電解質層]
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等のポリマー電解質を適宜用いることができる。
但し、液体電解質及び各種ポリマー電解質のいずれの電解質を用いた電解質層であって、多孔質骨格体の軟化点温度が、対向するセパレータの軟化点温度よりも低いとする関係を満足するセパレータが用いられている。
上記セパレータとしては、多孔質骨格体の軟化点温度が、対向するセパレータの軟化点温度よりも低いとする関係を満足すればよく、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
前記ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)、その空孔率は20〜80%であることが望ましい。
前記不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。
前記不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。厚さが5μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
液体電解質は、溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解したものである。溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、プロピオン酸メチル(MP)、酢酸メチル(MA)、ギ酸メチル(MF)、4−メチルジオキソラン(4MeDOL)、ジオキソラン(DOL)、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合物として使用してもよい。また、支持塩(リチウム塩)としては、特に制限はないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiSbF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C2F5SO2)2Nとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。これらの電解質塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。ゲル電解質は、Li+伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。Li+伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PEO)、ポリプロピレンオキシドを主鎖または側鎖に持つポリマー(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVdF−HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などが挙げられる。また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。これらのうち、PEO、PPOおよびそれらの共重合体、PVdF、PVdF−HFPを用いることが望ましい。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質とセパレータから構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。なお、上記電解質は、電極の活物質層中に含まれているのが望ましい。
[タブおよびリード]
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
[電池外装材]
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
[リチウムイオン二次電池の外観構成]
図4は、二次電池の代表的な実施形態である扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
図4に示すように、扁平なリチウムイオン二次電池60では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ68、負極タブ69が引き出されている。発電要素67は、リチウムイオン二次電池60の電池外装材62によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ69を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素67は、先に説明した図1に示すリチウムイオン二次電池10の発電要素21に相当するものである。発電要素67は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
また、図4に示すタブ68、69の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ68と負極タブ69とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ68と負極タブ69をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図4に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
上記リチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
なお、上記実施形態は、電気デバイスとして、リチウムイオン電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには、一次電池にも適用できる。また、電池だけではなく、上記した負極を有するキャパシタなどにも適用できる。
1.電解液の作製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(30:30:40(体積比))を溶媒とした。また1.0MのLiPF6を支持塩とした。さらに、上記溶媒と上記支持塩との合計100質量%となるように添加して、電解液を作製した。なお、「1.0MのLiPF6」とは、当該混合溶媒および支持塩の混合物における支持塩(LiPF6)濃度が1.0Mであるという意味である。
2.正極の作製
正極活物質としてLiMn2O4(平均粒子径:15μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量%、および有機溶剤系バインダとしてPVdF 10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒(有機溶媒)であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極有機溶剤系スラリー(以下、単に正極スラリーという)を作製した。次に、正極スラリーを、集電体であるアルミニウム箔(厚さ20μm)の両面に塗工(塗布)し乾燥・プレスを行い、片面塗工量18mg/cm2、厚さ158μm(箔込み)の正極を作製した。
3.負極の作製
負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:20μm)95質量%、導電助剤としてアセチレンブラック2質量%、水系バインダとしてSBR 2質量%、増粘剤としてCMCのNa塩(化学式1の−CH2COOR基のRがNaのもの)1質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒(水系溶媒)であるイオン交換水を適量添加して、負極水系スラリー(以下、単に負極スラリーという)を作製した。
(比較例1)
上記負極スラリーを、集電体である銅箔(厚さ15μm)の両面に塗工(塗布)し乾燥・プレスを行い片面塗工量5.4mg/cm2、厚さ87μm(箔込み)の負極を作製した。
(実施例1)
上記負極スラリーにアルカリ水(NaOH水溶液 pH:13)を5質量%追加し、混ぜた後、集電体である銅箔(厚さ15μm)の両面に塗工(塗布)し乾燥・プレスを行い、狙い片面塗工量5.4mg/cm2、厚さ87μm(箔込み)の負極を作製した。
(実施例2)
上記負極スラリーを集電体である銅箔(厚さ15μm)に塗工の直後、アルカリ水(NaOH水溶液 pH:13)を5質量%になるようにスプレーコートし、乾燥・プレスを行い、狙い片面塗工量5.4mg/cm2、厚さ87μm(箔込み)の負極を作製した。
(実施例3)
負極スラリーを集電体である銅箔(厚さ15μm)に塗工の直後、アルカリ水(LiOH水溶液 pH:13)を5質量%になるようにスプレーコートし、普通の風で(空気を送風して)乾燥した。その後、プレスを行い、狙い片面塗工量5.4mg/cm2、厚さ87μm(箔込み)の負極を作製した。
(実施例4)
負極スラリーを集電体である銅箔(厚さ15μm)に塗工の直後、アルカリ水(LiOH水溶液 pH:13)を5質量%になるようにスプレーコートし、CO2の風(CO2濃度50体積%)で乾燥した。その後、プレスを行い、狙い片面塗工量5.4mg/cm2、厚さ87μm(箔込み)の負極を作製した。
4.負極塗工量のばらつき評価
上記のようにして作製した負極(活物質層)の塗工量のばらつきを把握するため、連続して塗工した100シートのセンターをφ15(直径15mm)の打ち抜きポンチで打ち抜き、質量を評価した。
5.単電池の完成工程
上記2.で作製した正極を187×97mmの長方形状に切断し、上記3.の各実施例及び比較例で作製した負極をそれぞれ191×101mmの長方形状に切断した(正極2枚、負極3枚)。この正極2枚と負極3枚とをそれぞれ195×103mmのセパレータ(ポリオレフィン微多孔膜、厚さ25μm;4枚)を介して交互に積層した。
これらの正極と負極それぞれにタブを溶接し、アルミラミネートフィルムからなる外装材中に上記1.で作製した電解液とともに密封して実施例1〜4及び比較例1の非水電解質二次電池の単電池を完成させた。なお、各実施例及び比較例の単電池のサンプル数は10個とし、以下の電池特性評価では、これら10個の平均値を採用した。
6.電池特性評価
上記のようにして作製した非水電解質二次電池(単電池)を充放電性能試験により評価した。この充放電性能試験は、55℃に保持した恒温槽において、電池温度を55℃とした後、性能試験を行った。充電は1Cの電流レートで4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧(CV)で、あわせて3時間充電した。その後、10分間休止時間を設けた後、1Cの電流レートで2.5Vまで放電を行い、その後に10分間の休止時間を設けた。これらを1サイクルとし、充放電試験を実施した。初回充電時に発生したガス量(初回充電前と初回充電後とのガス量の差)をアルキメデス法で計測して、「ガス発生量(cc)」とした。また初回の充電容量に対する初回の放電容量の割合(百分率)を「初回充放電効率(%)」とし、初回の放電容量を「初回放電容量(mAh)」とし、初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を「300サイクル後の容量維持率(%)」とした。これらの結果を下記表1に示す。
上記表1の結果から、従来の有機溶剤系スラリーを用いた作製した負極を用いた比較例1の電池に比して、水系スラリーにアルカリ水を添加して作製した負極を用いた実施例1〜4では、いずれもガス発生量が少なく、初回充放電効率が向上している。更に初回放電容量も高い(=容量ロスが低減されている)ことが確認できた。
次に、実施例1〜4の中では、水系スラリーにアルカリ水を添加後に集電体に塗布した実施例1よりも、水系スラリーを集電体に塗布後にアルカリ水をスプレーコートした実施例2〜4では水系スラリーの安定性がよく、均一な塗工ができている。即ち、塗工量のばらつきが少ないことが確認できた。加えて、初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率も大幅に向上していることが確認できた。但し、実施例1でも、上述したように、水系スラリーにアルカリ水を添加後に集電体に塗布するまで、水系スラリーを十分に撹拌させておくことにより、他の実施例と同様に均一な塗工を行うことは可能である。
次に、水系スラリーを集電体に塗布後にアルカリ水をスプレーコートした実施例2〜4の中では、アルカリ水にNaOH水溶液を用いた実施例2よりも、LiOH水溶液を用いた実施例3〜4の方がガス発生量がより少なく、初回充放電効率がより向上している。更に初回放電容量がより高い(=容量ロスがより低減されている)ことが確認できた。加えて、初回の放電容量に対して300サイクル後に放電した割合を容量維持率もより大幅に向上していることが確認できた。これは、上記したように、水酸化リチウム(LiOH)水溶液を選択することで負極活物質(粒子)表面或いは負極活物質(粒子)表面に点在或いは被膜化されたCMC誘導体表面に炭酸リチウム(Li2CO3)を形成することができる。詳しくは、炭酸リチウム(Li2CO3)を粒状に点在させる、若しくは炭酸リチウムの被膜を形成することができるためと考えられる。即ち、この炭酸リチウムは負極活物質のSEI(表面皮膜)の成分でもあるため、ガス発生抑制効果・容量アップの効果に加え、寿命性能の向上を図ることができたものといえる。
最後に、水系スラリーを集電体に塗布後にLiOH水溶液をスプレーコートした実施例3〜4の中では、乾燥時に普通の風を用いた実施例3よりも、より高濃度のCO2を含む風を用いた実施例4の方が電池性能全般により優れた結果が得られることが確認できた。