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JP5871574B2 - 塩基性悪臭物質吸収性不織布、及び塩基性悪臭物質の低減方法 - Google Patents
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塩基性悪臭物質吸収性不織布、及び塩基性悪臭物質の低減方法 Download PDF

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Description

本発明は、塩基性悪臭物質吸収性不織布、及び塩基性悪臭物質の低減方法に関する。
においは、味覚、嗅覚、神経等に大きな影響を及ぼす因子である。良いにおいであれば、リラックスしたり、食欲が増大したりする。逆に、悪いにおい(以下「悪臭」ということがある。)であると、危険を感じたり、記憶力を衰退させたり、集中力を損なったり、不快感をもたらしたりする。一般に、においを発する物質は、低濃度であっても、ヒトが感知できるレベルのにおいを発現するため、悪臭対策が大きな問題となっている。
悪臭の原因となる物質(以下「悪臭物質」ということがある。)としては、塩基性悪臭物質、中性悪臭物質及び酸性悪臭物質が挙げられる。なかでも、屎尿、ペット、汗、靴下等から発生するアンモニア、生ゴミ、下水、釣りえさ等から発生するトリメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン等の低級アミンや、ワキガ、足のにおいとして知られるイソ吉草酸、加齢臭として知られるノネナールなどの塩基性悪臭物質は、昨今のペットブームや高齢化社会の進展の中で、その低減に対する要望が強くなっている。
悪臭物質を低減する方法としては、様々な方法が提案されている。特許文献1には、酸性剤と水溶性ポリマーとを含むヒト及び動物の排泄物の脱臭組成物が記載され、スプレーまたは液体混合による方法が記載されている。特許文献2には、水に対する溶解度が小さいマレイン酸、コハク酸等のカルボン酸を吸水性樹脂に添加した、特にアンモニア、アミンの臭気に対する消臭性のある吸水性樹脂が記載されている。
これらは、消臭成分として低分子化合物を使用するので、消臭成分の保存や使用が簡便とはいえず、また、気体状の悪臭物質のように広範囲に漂う悪臭物質を長期間持続して効率的に低減することは難しかった。
特許文献3には、ポリグリコール酸と、水と、塩基性悪臭物質とを接触させる塩基性悪臭物質の低減方法が記載され、ポリグリコール酸を消臭成分として含有する消臭剤の形態として、フィルム、ペレット、包装体、粉末、繊維または布地が記載されている。また、ポリグリコール酸の重量平均分子量(Mw)として、通常3〜80万、好ましくは5〜50万、数平均分子量(Mn)として、通常1〜80万、好ましくは1.6〜50万、融点(Tm)より20℃高い温度(Tm+20℃)及びせん断速度122sec−1で測定した溶融粘度として、通常100〜10,000Pa・sという広範な物性が記載されている。しかし、特許文献3では、実施例として、重量平均分子量(Mw)104,000、数平均分子量(Mn)55,000、前記の溶融粘度1,600Pa・sのポリグリコール酸から作製した単層延伸フィルム、及び、重量平均分子量(Mw)240,000、数平均分子量(Mn)110,000、前記の溶融粘度1,150Pa・sのポリグリコール酸の層を備える「多層フィルムA」を用いて、塩基性悪臭物質の低減効果を確認している。さらに、特許文献3には、ポリグリコール酸の一部から生成した加水分解物が、塩基性悪臭物質と化学的中和反応を起こし、結果として塩基性悪臭物質が低減するのではないかというメカニズムの推定が記載されている。
特許文献3にも示唆されるように、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステルは、土壌や水中などの自然界に存在する微生物または酵素によって生分解され、また、酸やアルカリ等により加水分解されるため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。
生分解性脂肪族ポリエステルとしては、グリコール酸繰り返し単位からなるポリグリコール酸(以下、「PGA」ということがある。)や乳酸繰り返し単位からなるポリ乳酸(以下、「PLA」ということがある。)等のヒドロキシカルボン酸系ポリエステル、ポリε−カプロラクトン等のラクトン系ポリエステル、ポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート等のジオール・ジカルボン酸系ポリエステル、及び、これらの共重合体、例えば、グリコール酸繰り返し単位と乳酸繰り返し単位からなる共重合体などが知られている。
生分解性脂肪族ポリエステルの中でも、PLAは、原料となるL−乳酸が、トウモロコシ、芋等から、発酵法により安価で得られること、自然農作物由来なので総二酸化炭素排出量が少ないこと、また得られたポリL−乳酸の性能として剛性が強く透明性がよいなどの特徴がある。また、PGAは、加水分解性及び生分解性が大きいことに加えて、耐熱性、引張強度等の機械的強度や、フィルムまたはシートとしたときのガスバリア性も優れる。そのため、PGAは、農業資材、各種包装(容器)材料等としての利用が期待され、単独で、または他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。
特許文献3に示される塩基性悪臭物質の低減という新たな用途展開においては、より優れた塩基性悪臭物質の低減効果及び該効果の持続性と、より優れた生分解性による環境負荷の低減効果とのバランスの向上、及び、具体的な用途等に応じた前記のバランスの調整が容易に行える材料や形態が望まれている。
特表2001−507970号公報 特開平9−108317号公報 特開2010−167071号公報
本発明の課題は、例えば、ペット、生ゴミ、汗、靴下等から発生する塩基性悪臭物質を簡易かつ効率的に低減でき、かつ、その効果が長期間持続するとともに、優れた生分解性により環境負荷を低減できる不織布、及び、塩基性悪臭物質の低減方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、生分解性脂肪族ポリエステル、及び/または、生分解性脂肪族ポリエステルから得られる生分解性脂肪族ポリエステル繊維の最適化により、不織布の塩基性悪臭物質吸収性に基づいて、優れた塩基性悪臭物質の低減効果及び該効果の持続性と、生分解性による環境負荷の低減効果とをバランスよく両立させ、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから得られる繊維により形成されることを特徴とする塩基性悪臭物質吸収性不織布が提供される。
また、本発明によれば、実施の態様として、以下(1)〜(5)の塩基性悪臭物質吸収性不織布が提供される。
(1)目付1〜500g/m、繊維径300nm〜100μm、及び空孔率50〜95%である前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
(2)不織布を形成する繊維が、生分解性脂肪族ポリエステルのガラス転移温度+10℃以上である昇温結晶化温度と、5J/g以上である昇温結晶化熱量を有するものである前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
(3)生分解性脂肪族ポリエステルが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、またはそれらの混合物である前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
(4)生分解性脂肪族ポリエステルが、ポリグリコール酸である前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
(5)生分解性脂肪族ポリエステルが、末端封止剤を含有する前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
さらに、本発明によれば、前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させることを特徴とする塩基性悪臭物質の低減方法が提供される。
本発明は、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから得られる繊維により形成されることを特徴とする塩基性悪臭物質吸収性不織布であることによって、該不織布の塩基性悪臭物質吸収性に基づいて、塩基性悪臭物質を簡易かつ効率的に吸収して低減でき、かつ、その効果が長期間持続するとともに、優れた生分解性により環境負荷を低減できるという効果を奏する。
また、本発明は、前記の塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる塩基性悪臭物質の低減方法であることによって、該不織布の塩基性悪臭物質吸収性に基づいて、優れた塩基性悪臭物質の低減効果及びその持続性と、生分解性による環境負荷の低減効果に優れる塩基性悪臭物質の低減方法が提供されるという効果を奏する。
1.生分解性脂肪族ポリエステル
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成する生分解性脂肪族ポリエステルは、グリコール酸及びグリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)を含むグリコール酸類;乳酸及び乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドを含む乳酸類;のほかに、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、カーボネート類(例えばトリメチレンカーボネート等)、エーテル類(例えば1,3−ジオキサン等)、エーテルエステル類(例えばジオキサノン等)などの環状モノマー;3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール(ブチレングリコール)等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;等の脂肪族エステルモノマー類の単独重合体、または共重合体が含まれる。具体的には、例えば、式:(−O−CHR−CO−)[Rは、水素原子またはメチル基である。]で表されるグリコール酸または乳酸繰り返し単位を50質量%以上有する生分解性脂肪族ポリエステルや、ポリラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。なかでも、グリコール酸または乳酸繰り返し単位を50質量%以上有する生分解性脂肪族ポリエステルが好ましい。具体的には、PGA、すなわちグリコール酸の単独重合体、若しくは、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上有する共重合体;ポリL−乳酸若しくはポリD−乳酸の単独重合体、L−乳酸若しくはD−乳酸の繰り返し単位を50質量%以上有する共重合体、または、これらの混合物等のPLA;さらには、PGAとPLAとの混合物;が好ましい。特に好ましいのは、塩基性悪臭物質吸収性に基づく優れた塩基性悪臭物質の低減性(以下、「悪臭低減性」ということがある。)と該悪臭低減性効果の持続性、生分解性、耐熱性及び機械的強度の観点から、PGAまたはPLAである。
これらの生分解性脂肪族ポリエステルは、例えば、それ自体公知のグリコール酸や乳酸などのα−ヒドロキシカルボン酸の脱水重縮合により合成することができる。また、高分子量の生分解性脂肪族ポリエステルを効率よく合成するには、一般に、α−ヒドロキシカルボン酸の二分子間環状エステルを合成し、該環状エステルを開環重合する方法が採用されている。例えば、乳酸の二分子間環状エステルであるラクチドを開環重合すると、PLAが得られる。グリコール酸の二分子間環状エステルであるグリコリドを開環重合すると、PGAが得られる。
PLAは、上記方法により合成することができるものであり、市販の製品としては、例えば、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等の「レイシア」(登録商標)シリーズ(三井化学株式会社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D等の「Ingeo」(登録商標)(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU’z S−09、S−12、S−17等の「エコプラスチックU’zシリーズ」(トヨタ自動車株式会社製)、「バイロエコール」(登録商標)(東洋紡績株式会社製)などが、強度、可撓性及び耐熱性等の観点から、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布の材料として好ましく選択される。
以下、生分解性脂肪族ポリエステルとして、主にPGAを例にとって、更に説明するが、PLAその他の生分解性脂肪族ポリエステルについても、PGAに準じて発明を実施するための形態をとることができる。
〔ポリグリコール酸(PGA)〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPGAとして、特に好ましく用いられるPGAは、式:(−O−CH−CO−)で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸のホモポリマー(グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリド(GL)の開環重合物を含む)に加えて、上記グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上含むPGA共重合体を含むものである。
上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるコモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類、アミド類などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;またはこれらの2種以上を挙げることができる。これらコモノマーは、その重合体を、上記グリコリド等のグリコール酸モノマーとともに、PGA共重合体を与えるための出発原料として用いることもできる。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPGA中の上記グリコール酸繰り返し単位は50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。グリコール酸繰り返し単位の割合が小さすぎると、PGAに期待される強度や生分解性が乏しくなる。グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位は、50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられ、グリコール酸繰り返し単位以外の繰り返し単位を含まないものでもよい。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布の材料となるPGAとしては、所望の高分子量ポリマーを効率的に製造するために、グリコリド50〜100質量%及び上記した他のコモノマー50〜0質量%を重合して得られるPGAが好ましい。他のコモノマーとしては、2分子間の環状モノマーであってもよいし、環状モノマーでなく両者の混合物であってもよいが、本発明が目的とする塩基性悪臭物質吸収性不織布とするためには、環状モノマーが好ましい。以下、グリコリド50〜100質量%及び他の環状モノマー50〜0質量%を開環重合して得られるPGAについて詳述する。
〔グリコリド〕
開環重合によってPGAを形成するグリコリドは、ヒドロキシカルボン酸の1種であるグリコール酸の2分子間環状エステルである。グリコリドの製造方法は、特に限定されないが、一般的には、グリコール酸オリゴマーを熱解重合することにより得ることができる。グリコール酸オリゴマーの熱解重合法として、例えば、溶融解重合法、固相解重合法、溶液解重合法などを採用することができ、また、クロロ酢酸塩の環状縮合物として得られるグリコリドも用いることができる。なお、所望により、グリコリドとしては、グリコリド量の20質量%を限度として、グリコール酸を含有するものを使用することができる。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布の材料となるPGAは、グリコリドのみを開環重合させて形成してもよいが、他の環状モノマーを共重合成分として同時に開環重合させて共重合体を形成してもよい。共重合体を形成する場合には、グリコリドの割合は、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは99質量%以上である実質的にPGAホモポリマーである。
〔他の環状モノマー〕
グリコリドとの共重合成分として使用することができる他の環状モノマーとしては、ラクチドなど他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルの外、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサンなどの環状モノマーを使用することができる。好ましい他の環状モノマーは、他のヒドロキシカルボン酸の2分子間環状エステルであり、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、L−乳酸、D−乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシヘプタン酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、α−ヒドロキシステアリン酸、及びこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。特に好ましい他の環状モノマーは、乳酸の2分子間環状エステルであるラクチドであり、L体、D体、ラセミ体、これらの混合物のいずれであってもよい。
他の環状モノマーは、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは1質量%以下の割合で用いられる。PGAが、グリコリド100質量%から形成される場合は、他の環状モノマーは0質量%であり、このPGAも本発明の範囲に含まれる。グリコリドと他の環状モノマーとを開環共重合することにより、PGA(共重合体)の融点を低下させて加工温度を下げたり、結晶化速度を制御して押出加工性や延伸加工性を改善したりすることができ、また、不織布の悪臭低減性及びその持続性と生分解性とのバランスを取ることができる。
〔開環重合反応〕
グリコリドの開環重合または開環共重合(以下、総称して、「開環(共)重合」ということがある。)は、好ましくは、少量の触媒の存在下に行われる。触媒は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化錫(例えば、二塩化錫、四塩化錫など)や有機カルボン酸錫(例えば、2−エチルヘキサン酸錫などのオクタン酸錫)などの錫系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物;などがある。触媒の使用量は、環状エステルに対して、質量比で、好ましくは1〜1,000ppm、より好ましくは3〜300ppm程度である。
グリコリドの開環(共)重合は、生成するPGAの分子量や溶融粘度等の物性を制御するために、ラウリルアルコール等の高級アルコールや、その他のアルコール類や水などのプロトン性化合物を分子量調節剤として使用することができる。グリコリドには通常、微量の水分と、グリコール酸及び直鎖状のグリコール酸オリゴマーからなるヒドロキシカルボン酸化合物類が不純物として含まれていることがあり、これらの化合物も重合反応に作用する。そのため、これらの不純物の濃度を、例えばこれらの化合物中のカルボン酸量を中和滴定などによりモル濃度として定量し、この定量値に基づいて、目的の分子量等に応じプロトン性化合物としてアルコール類や水を添加し、全プロトン性化合物のモル濃度をグリコリドに対して制御することにより生成PGAの分子量等を調整することができる。また、物性改良のために、グリセリンなどの多価アルコールを添加してもよい。
グリコリドの開環(共)重合は、塊状重合でも、溶液重合でもよいが、多くの場合、塊状重合が採用される。塊状重合の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、板状型、管状型など様々な装置の中から、適宜選択することができる。また、溶液重合には、各種反応槽を用いることができる。
重合温度は、実質的な重合開始温度である120℃から300℃までの範囲内で目的に応じて適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜270℃、より好ましくは140〜260℃、特に好ましくは150〜250℃である。重合温度が低すぎると、生成したPGAの分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したPGAが熱分解を受けやすくなる。重合時間は、3分間〜50時間、好ましくは5分間〜30時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が十分に進行し難く、所定の分子量を実現することができない。重合時間が長すぎると生成したPGAが着色しやすくなる。
生成したPGAを固体状態とした後、所望により、更に固相重合を行ってもよい。固相重合とは、後述するPGAの融点(Tm)未満の温度で加熱することにより、固体状態を維持したままで熱処理する操作を意味する。この固相重合により、未反応モノマー、オリゴマーなどの低分子量成分が揮発・除去される。固相重合は、好ましくは1〜100時間、より好ましくは2〜50時間、特に好ましくは3〜30時間で行われる。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成する原料として、PGAに加えて、本発明の目的に反しない限度において、他の脂肪族ポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリグリコール類;変性ポリビニルアルコール;ポリウレタン;ポリL−リジン等のポリアミド類;などの他の樹脂や、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、末端封止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、ワックス類、着色剤、結晶化促進剤、水素イオン濃度調節剤、補強繊維等の充填材などの通常配合される添加剤を必要に応じて配合することができる。また、必要に応じて、抗菌剤、殺菌剤、防かび剤等の添加剤を配合することができる。これら添加剤等の配合量は、PGA100質量部に対して、通常30質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下であり、5質量部以下または1質量部以下の配合量でよい場合もある。
特に、PGAに、カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤を配合すると、悪臭低減性及びその効果の持続性が向上するとともに、得られる不織布の長期保存性が向上するので好ましい。すなわち、カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤を配合することにより、塩基性悪臭物質吸収性不織布の保存中の耐加水分解性が改善され、保存中の分子量低下を抑制することができるとともに、廃棄時の生分解性を調整することができる。末端封止剤としては、カルボキシル基末端封止作用または水酸基末端封止作用を有し、脂肪族ポリエステルの耐水性向上剤として知られている化合物を用いることができる。悪臭低減性とその効果の持続性及び生分解性の両立の観点から、カルボキシル基末端封止剤が特に好ましい。カルボキシル基末端封止剤としては、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物;2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物;N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等のエポキシ化合物;などが挙げられる。これらのカルボキシル基末端封止剤の中でも、カルボジイミド化合物が好ましく、芳香族、脂環族、及び脂肪族のいずれのカルボジイミド化合物も用いられるが、とりわけ芳香族カルボジイミド化合物が好ましく、特に純度の高いものが保存中の耐水性改善効果を与える。また、水酸基末端封止剤としては、ジケテン化合物、イソシアネート類などが用いられる。カルボキシル基末端封止剤または水酸基末端封止剤は、PGA100質量部に対して、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部、より好ましくは0.1〜1質量部の割合で用いられる。
また、PGAに熱安定剤を配合すると、塩基性悪臭物質吸収性不織布の長期保存性が更に向上するので、より好ましい。熱安定剤としては、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト等のペンタエリスリトール骨格構造を有するリン酸エステル;モノ−またはジ−ステアリルアシッドホスフェートあるいはこれらの混合物等の、炭素数が好ましくは8〜24のアルキル基を有するリン酸アルキルエステルまたは亜リン酸アルキルエステル;炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸金属塩;一般に重合触媒不活性剤として知られる、ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジン]ドデカン酸、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどの−CONHNH−CO−単位を有するヒドラジン系化合物;3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール系化合物;トリアジン系化合物;などが挙げられる。熱安定剤は、PGA100質量部に対して、通常3質量部以下、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、特に好ましくは0.01〜0.1質量部(100〜1,000ppm)の割合で用いられる。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、消臭剤を配合することなく、悪臭低減性を示すことに特徴を有する。したがって、実質的に消臭剤を含有しないPGAから得られたPGA繊維により、実質的に消臭剤を含有しない悪臭低減性不織布を形成することができる。しかし、特に必要がある場合は、生分解性を損なわない限り、PGA繊維を形成するPGAに、消臭剤、防臭剤、脱臭剤等を配合することができる。
〔重量平均分子量(Mw)〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPGAの重量平均分子量(Mw)は、2万以上であり、通常2〜100万の範囲内にあるものが好ましく、より好ましくは5〜80万、更に好ましくは7〜60万、特に好ましくは10〜40万の範囲内にあるものを選択する。PGAの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置を使用して求めたものである。具体的には、PGA試料を、トリフルオロ酢酸ナトリウムを所定の濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解させた後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液をGPC分析装置に注入して分子量を測定した結果から、重量平均分子量(Mw)を算出する。
〔数平均分子量(Mn)〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPGAの数平均分子量(Mn)は、通常1〜30万の範囲内にあるものが好ましく、より好ましくは2〜25万、更に好ましくは3〜20万、特に好ましくは4〜15万の範囲内にあるものを選択する。PGAの数平均分子量(Mn)は、重量平均分子量(Mw)と同じくGPC分析装置を使用して求めたものである。
また、PGAの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布(Mw/Mn)を通常1.5〜4.0の範囲内にすることによって、塩基性悪臭物質吸収性不織布として使用している際、早期に分解を受けやすい低分子量領域の重合体成分(低分子量物)の量を低減させて、不織布の使用期間と生分解速度のバランスを制御することができるので好ましい。分子量分布が大きすぎたり、小さすぎたりすると、塩基性悪臭物質吸収性不織布としての性能を持続することが困難となる。分子量分布は、好ましくは1.6〜3.5、より好ましくは1.7〜3.0である。
PGAの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を所定の範囲内になるように調整するには、例えば、PGAを重合するときに、(i)重合触媒の種類と量、(ii)分子量調節剤の種類と量、(iii)重合装置や重合温度、重合時間などの重合条件、(iv)重合後の後処理、及びこれらの組み合わせなどを工夫すればよい。
また、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPLAの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5〜100万、より好ましくは6〜80万、更に好ましくは7〜60万の範囲であり、数平均分子量(Mn)は、通常1.5〜30万の範囲内にあるものが好ましく、より好ましくは2〜27万、更に好ましくは3〜25万、特に好ましくは4〜21万である。分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは1.7〜3.5である。
〔溶融粘度〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成する生分解性脂肪族ポリエステルの溶融粘度は、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sの範囲であり、好ましくは320〜870Pa・s、より好ましくは350〜850Pa・s、更に好ましくは400〜820Pa・s、特に好ましくは450〜800Pa・sの範囲である。生分解性脂肪族ポリエステルがPGAである場合、最も好ましくは500〜750Pa・sの範囲である。生分解性脂肪族ポリエステルの溶融粘度が小さすぎると、PGA繊維等の生分解性脂肪族ポリエステル繊維の強度や、PGAから形成する不織布(以下、「PGA不織布」ということがある。同様に、PLAから形成する不織布を「PLA不織布」ということがある。)等の不織布の強度が不足し、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる塩基性悪臭物質の低減方法において利用可能な期間が短くなり、頻繁に不織布を交換したり廃棄したりすることが必要となることがある。また、生分解性脂肪族ポリエステルの溶融粘度が大きすぎると、生分解性脂肪族ポリエステルの繊維を得ることが困難となって、該繊維により形成される不織布が、塩基性悪臭物質吸収性に基づく所期の悪臭低減性及びその持続性と生分解性とを有することが困難となることがある。生分解性脂肪族ポリエステルの溶融粘度の測定温度は、該生分解性脂肪族ポリエステルの融点(Tm)+50℃の温度であるので、溶融粘度の測定温度は、例えば、PGAでは、概ね245〜295℃程度、PLAでは、概ね195〜240℃程度である。
〔融点(Tm)〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成する生分解性脂肪族ポリエステルの融点(Tm)は、特に限定がないが、例えば、PGAの融点(Tm)は、通常197〜245℃であり、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、共重合成分の種類及び含有割合等によって調整することができる。PGAの融点(Tm)は、好ましくは200〜240℃、より好ましくは205〜235℃、特に好ましくは210〜230℃である。PGAの単独重合体の融点(Tm)は、通常220℃程度である。生分解性脂肪族ポリエステルの融点(Tm)が低すぎると、不織布の耐熱性や強度が不十分となることがある。融点(Tm)が高すぎると、加工性が不足したり、不織布の形成を十分制御できなかったりして、得られるPGA不織布の悪臭低減性及びその持続性と生分解性が所望の範囲のものとならないことがある。PGAの融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。具体的には、試料PGAを、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、室温から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱する昇温過程で検出される、結晶溶融に伴う吸熱ピークの温度を意味する。該吸収ピークが複数みられる場合には、吸熱ピーク面積が最も大きいピークを融点(Tm)とする。なお、試料PGAとしては、PGAペレット、粒体、粉状体等を用いるのが通常であるが、PGA不織布を形成するPGA繊維を試料としてもよい。
また、本発明のPLA不織布に含まれるPLAの融点(Tm)は、好ましくは145〜185℃、より好ましくは150〜182℃、更に好ましくは155〜180℃の範囲である。PLAの融点(Tm)を測定するための試料は、PGAと同様である。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を構成するPGAのガラス転移温度(Tg)は、通常25〜60℃であり、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜45℃である。PGAのガラス転移温度(Tg)は、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、共重合成分の種類及び含有割合等によって調整することができる。PGAのガラス転移温度(Tg)は、融点(Tm)の測定と同様に、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。具体的には、試料PGAを、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、室温から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱する昇温過程で検出される、ガラス状態からゴム状態への転移領域に相当する二次転移領域における熱量の二次転移の開始温度をガラス転移点(Tg)とする。ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、得られるPGA不織布表面が過度に軟化し、不織布の空孔率を所定の範囲内に制御することが困難となることがある。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、成形性が悪くなることがある。ガラス転移温度(Tg)を測定するための試料は、融点(Tm)と同様である。
また、本発明のPLA不織布に含まれるPLAのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは45〜75℃、より好ましくは50〜70℃、更に好ましくは55〜65℃の範囲内である。ガラス転移温度(Tg)を測定するための試料は、PGAと同様である。
2.生分解性脂肪族ポリエステルから形成される不織布
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、生分解性脂肪族ポリエステルから得られる繊維により形成される不織布であり、具体的には、生分解性脂肪族ポリエステルから得られる生分解性脂肪族ポリエステル繊維を主成分として含有し、該繊維により形成される不織布であって、生分解性脂肪族ポリエステル繊維を、50質量%以上含有する不織布である。生分解性脂肪族ポリエステル繊維を、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上含有する不織布であり、生分解性脂肪族ポリエステル繊維のみから形成された不織布でもよい。本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、生分解性脂肪族ポリエステル繊維以外の繊維等を、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有することができるが、生分解性脂肪族ポリエステル繊維以外の繊維等を含有しなくてもよい。生分解性脂肪族ポリエステル繊維以外の繊維等としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維等の周知の繊維でもよいし、低温融着性の繊維等が挙げられる。しかし、生分解性脂肪族ポリエステル繊維の含有量が少なすぎると、生分解性や加水分解性が小さくなる結果、環境負荷が大きくなり、また、悪臭低減性が十分でないことがある。本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、好ましくはPGA不織布、PLA不織布またはPGAとPLAとの混合不織布である。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、悪臭低減性及びその持続性と生分解性とをバランスよく有するものである限り、種々の不織布であってよいが、好ましくは、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、水流または気流による3次元交絡不織布などが挙げられ、さらには抄紙法によって製造した不織布でもよい。所期の繊維径や空孔率を得やすく、また、好適な非晶構造を得やすいことから、メルトブロー不織布が好ましい。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、(a)目付が、1〜500g/m、(b)繊維径が、300nm〜100μm、及び(c)空孔率が、50〜95%であることが好ましい。
1)目付
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、(a)目付が、好ましくは1〜500g/m、より好ましくは2〜400g/m、更に好ましくは3〜300g/m、特に好ましくは4〜200g/mの範囲である。不織布の目付は、JIS−L−1096に準じて測定する。不織布の目付が、1g/mより小さいと、不織布の強度が不足したり、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる塩基性悪臭物質の低減方法において利用可能な期間が短くなり、頻繁に不織布を交換したり廃棄したりすることが必要となることがある。また、不織布が薄すぎる結果、悪臭低減性能が不十分となることがある。不織布の目付が、500g/mより大きいと、重すぎて取り扱い性が不十分となったり、使用後の不織布の生分解または加水分解に長時間を要したりすることがある。
2)厚み
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布の厚みは、特に限定されないが、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは70〜700μm、更に好ましくは100〜500μmの範囲である。不織布の厚みが小さすぎると、不織布の強度が不足し、また使用期間が短すぎることがある。不織布の厚みが大きすぎると、不織布全体に亘る繊維間隙への塩基性悪臭物質の浸入が不十分となる可能性がある。不織布の厚みは、JIS L1096に準じて、荷重0.7kPaで測定したものである。
3)繊維径
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、(b)繊維径が、好ましくは300nm〜100μm、より好ましくは500nm〜70μm、更に好ましくは800nm〜50μm、特に好ましくは1〜30μmの範囲である。不織布の繊維径が、300nm未満であると、不織布が高密度化して、不織布全体に亘る繊維間隙に塩基性悪臭物質が進入できない結果、不織布全体としての塩基性悪臭物質吸収性に基づく悪臭低減性が不十分となったりすることがある。繊維径が、100μm超であると、不織布が過度に粗く、繊維と塩基性悪臭物質との接触頻度が減少するため、場合によっては、塩基性悪臭物質が不織布の繊維間隙を通過してしまう結果、不織布全体としての塩基性悪臭物質吸収性に基づく悪臭低減性が不十分となることがある。
繊維径の測定は、不織布の幅方向、長手方向に重ならないように、10箇所の繊維をサンプリングし、1000倍に拡大した電子顕微鏡写真により繊維径をサンプル1箇所について10点測定して、合計100点の平均値を平均繊維径とし、不織布の繊維径とする。
4)空孔率
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、(c)空孔率が、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜94%、更に好ましくは70〜93%、特に好ましくは80〜92%の範囲である。不織布等の空孔率が50%未満であると、表面積が減少し、塩基性悪臭物質と生分解性脂肪族ポリエステル繊維の接触面積が減少するため、塩基性悪臭物質吸収性に基づく所期の悪臭低減性を有しなかったり、場合によっては、不織布全体としての悪臭低減性が不十分となったりすることがある。不織布の空孔率が95%超であると、不織布の強度が低下したり、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる塩基性悪臭物質の低減方法において利用可能な期間が短くなり、頻繁な交換や廃棄が必要となったりすることがある。不織布の空孔率は、縦10cm×横10cmの大きさに切り出した試料不織布の質量を測定し(W1)、これをパーフルオロポリエステル試液(Porous Materials 社製の商品名「Galwick」)に5分間浸漬し、次いで試液から試料不織布を取り出して1分間液切りした後の質量を測定(W2)し、以下の式より算出して求めたものである。
空孔率(%)=(((W2−W1)/ρ)/((W2−W1)/ρ+W1/ρ))×100
ただし、ρ:生分解性脂肪族ポリエステルの密度(PGAの場合は、1.53g/cm)、ρ:パーフルオロポリエステル試液の密度(=1.8g/cm)。
5)昇温結晶化温度(TC1
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布においては、該不織布を形成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維の昇温結晶化温度(TC1)が、生分解性脂肪族ポリエステルのガラス転移温度+10℃以上、より好ましくは該ガラス転移温度+15℃以上、多くの場合、該ガラス転移温度+65℃以下の範囲にみられるものとすると、悪臭低減性及びその効果の持続性と生分解性とをバランスよく有することができる。具体的な昇温結晶化温度(TC1)の範囲としては、PGA不織布の場合、PGA繊維の昇温結晶化温度(TC1)は、概ね45〜120℃の範囲の温度であることが好ましく、より好ましくは50〜110℃、更に好ましくは55〜100℃の範囲である。昇温結晶化温度(TC1)は、融点(Tm)等の測定と同様に、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中で求めたものである。具体的には、試料PGAを、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、室温から融点(Tm)+60℃付近まで加熱する昇温過程において、結晶化に伴う発熱ピークが検出される場合の該発熱ピークの温度を意味する。昇温結晶化温度(TC1)の調整は、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重合成分の種類や量、さらには、不織布を製造するときの温度条件や加熱冷却条件などを適宜選択することなどにより行うことができる。
生分解性脂肪族ポリエステル繊維に、示差走査熱量計による昇温過程で結晶化に伴う発熱ピークが検出されない不織布である場合は、生分解性脂肪族ポリエステルの昇温結晶化温度(TC1)は存在しない。熱処理した不織布や、スパンボンド不織布においては、昇温結晶化温度(TC1)が存在しないことがある。また、本発明のPLA不織布を形成するPLA繊維の具体的な昇温結晶化温度(TC1)は、好ましくは60〜135℃、より好ましくは62〜130℃、更に好ましくは65〜125℃の範囲の温度であるが、昇温結晶化温度(TC1)が存在しないこともある。
6)昇温結晶化熱量(ΔHTC1
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布においては、該不織布を形成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維が、前記の昇温結晶化温度(TC1)の好ましい範囲に加えて、示差走査熱量計による昇温過程で検出される結晶化に伴う発熱量として算出される昇温結晶化熱量(ΔHTC1)が5J/g以上のものであると、悪臭低減性及びその持続性と生分解性とをバランスよいものとすることができる。昇温結晶化熱量(ΔHTC1)は、前記した昇温結晶化温度(TC1)近傍の発熱ピーク面積〔通常は、昇温結晶化温度(TC1)±20℃の範囲内の面積〕を積算して算出されるものである。昇温結晶化熱量(ΔHTC1)が5J/g以上である生分解性脂肪族ポリエステルから得られる不織布は、非晶部が所定量以上存在し、非晶部の度合いが大きい不織布であって、通常、悪臭低減性能が向上する。したがって、塩基性悪臭物質吸収性不織布の悪臭低減性能をより発揮させるためには、生分解性脂肪族ポリエステル繊維の結晶性を低くすることが好ましい。一方、塩基性悪臭物質吸収性不織布の形状や強度その他の物性を維持するためには結晶性を高くすることが好ましい場合がある。なお、熱処理した不織布や、スパンボンド不織布など、昇温結晶化温度(TC1)が存在しない不織布の場合は、昇温結晶化熱量(ΔHTC1)は存在せず、0J/gである。
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を形成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維の昇温結晶化熱量(ΔHTC1)は、より好ましくは10J/g以上、更に好ましくは15J/g以上、特に好ましくは20J/g以上である。生分解性脂肪族ポリエステル繊維の昇温結晶化熱量(ΔHTC1)は、特に上限がないが、PGA繊維では、通常50J/g以下、多くの場合45J/g以下であり、40J/g以下であってもよい。また、PLA繊維では、通常45J/g、多くの場合40J/gを上限としてもよい。
3.塩基性悪臭物質吸収性不織布
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、実質的に消臭剤を含有しなくても、悪臭低減性及びその持続性と、生分解性とに優れた不織布である。
(1)悪臭低減性
悪臭低減性は、以下の方法によって測定する。
〔試験片の調製〕
悪臭低減性の測定に使用する試験片は、塩基性悪臭物質吸収性不織布等のサンプルから縦10cm×横10cmの大きさに切り出した後、99%エタノールで清浄化することによって調製する。
〔悪臭低減性−気体状の塩基性悪臭物質の除去〕
容積50cmのバイアル瓶中に、縦10cm×横10cmの試験片を、ガラス棒等の支柱に吊した状態で静置し、塩基性悪臭物質の水溶液30μLを、前記試験片に触れないようにして投入した後、密封し、温度100℃で1分間保持して、塩基性悪臭物質を気化させる。次いで、バイアル瓶を、温度23℃、相対湿度50%で保存し、所定の時間経過ごとに、バイアル瓶中のヘッドスペースガスをサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを使用して、塩基性悪臭物質の濃度(μg/cm)を測定する。なお、試験中は、試験片が、塩基性悪臭物質の水溶液に触れないように留意する。塩基性悪臭物質としては、トリメチルアミンの30%水溶液、または、25%アンモニア水を使用することにより、水の存在下で、試験片を気化した塩基性悪臭物質と接触させるようにする。ガスクロマトグラフィーによる塩基性悪臭物質の濃度の測定条件は下記のとおりとする。
<測定条件>
ガスクロマトグラフィー:株式会社島津製作所製GC−2014 検出器TCD
使用カラム:Chromosorb 103 60/80 3φ×3m ガラスカラム
流量:30ミリリットル/分
電流:120A
カラム温度:80℃
インジェクション温度:180℃
注入量:ヘッドスペースガス1ml
〔悪臭低減性−液体状の塩基性悪臭物質の除去〕
容積20cmのバイアル瓶の底に、縦10cm×横10cmの試験片を静置し、塩基性悪臭物質の水溶液10mLを投入して、前記の試験片を該水溶液に浸漬させた後、密封する。次いで、バイアル瓶を、温度23℃、相対湿度50%で保存し、所定の時間経過ごとに、バイアル瓶中の液体をサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを使用して、塩基性悪臭物質の濃度(μg/cm)を測定する。塩基性物質としては、10倍に希釈した25%アンモニア水を使用することにより、水の存在下で、試験片を塩基性悪臭物質と接触させるようにする。
(2)塩基性悪臭物質の低減方法
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、種々の方法により、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる塩基性悪臭物質の低減方法に適用することができる。
〔塩基性悪臭物質〕
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布が、吸収し低減させることができる塩基性悪臭物質としては、屎尿、ペット、汗、靴下等から発生するアンモニア、生ゴミ、下水、釣りえさ等から発生するトリメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン等の低級アミンや、ワキガ、足のにおいとして知られるイソ吉草酸、加齢臭として知られるノネナールなどが挙げられる。本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布の塩基性悪臭物質の吸収低減効果は、該塩基性悪臭物質のうち、アンモニア及びトリメチルアミンについて、いずれに対しても低減効果があることを確認することによって行う。したがって、アンモニアまたはトリメチルアミンの一方または両方に対して、低減効果がみられない不織布等は、塩基性悪臭物質吸収性があるとはいえない。
〔水の存在下〕
本発明の塩基性悪臭物質の低減方法は、塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させることによって行う塩基性悪臭物質の低減方法である。本発明の塩基性悪臭物質の低減方法において、存在させる水の形態としては、液体状であってもよく、気体状(水蒸気)であってもよい。また、塩基性悪臭物質を含む内容物に含まれる水分であってもよく、塩基性悪臭物質の水溶液または水性分散液に含まれる水であってもよい。
本発明において、塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させる方法の具体的な態様は、塩基性悪臭物質を吸収して低減できる態様であれば特に限定されない。例えば、(i)塩基性悪臭物質を含む水溶液を、塩基性悪臭物質吸収性不織布に接触させる態様、(ii)気体状または液体状の塩基性悪臭物質を、水蒸気を含む雰囲気下で、塩基性悪臭物質吸収性不織布に接触させる態様、(iii)塩基性悪臭物質吸収性不織布と液体状の水とを接触させたものに、気体状または液体状の塩基性悪臭物質を接触させる態様、(iv)塩基性悪臭物質を発生する雰囲気下において、塩基性悪臭物質吸収性不織布と液体状の水または水蒸気とを接触させる態様などが挙げられる。
上記(iv)の方法の具体例としては、下着類、オムツ、携帯用トイレ、犬猫等ペットのトイレ用品などに、塩基性悪臭物質吸収性不織布を配置し、屎尿や汗等の水分を含む代謝物から発生する塩基性悪臭物質を吸収して低減する方法が挙げられる。また、釣魚用クーラーボックスなどの鮮魚を保管する容器に、塩基性悪臭物質吸収性不織布を配置することにより、トリメチルアミンなど鮮魚の初期腐敗によって生じる塩基性悪臭物質を低減する方法が挙げられる。
その他の具体例としては、室内空間に存在する塩基性悪臭物質を吸収して低減するために、通気性の高い容器に、塩基性悪臭物質吸収性不織布に液体状の水を加えたものを室内等に配置してもよい。
塩基性悪臭物質吸収性不織布における生分解性脂肪族ポリエステルとこれと接触させる塩基性悪臭物質との量比は、塩基性悪臭物質を吸収して低減できる量比であれば特に限定されないが、生分解性脂肪族ポリエステルにおけるエステル基の繰り返し単位が、塩基性悪臭物質1molに対し、好ましくは10〜10000molであり、より好ましくは10〜1000molであり、更に好ましくは10〜100molであるようにすれば、塩基性悪臭物質を効率的に低減することができる。水の存在量は、塩基性悪臭物質を低減できる量であれば特に限定されない。
例えば、塩基性悪臭物質を発生する食品としては、家禽肉、畜肉、魚介類などが挙げられる。これらの食品中には、通常水分が含まれているので、積極的に水を添加する必要はない。また、空気中の水分を利用して、調湿することが可能なこともある。しかし、塩基性悪臭物質を発生する食品が、水分を全く含まないような場合は、塩基性悪臭物質吸収性不織布に水を供給するなどして、水の存在量は、塩基性悪臭物質を低減できる量に調整する必要がある。
塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させるときの接触温度は、水が凍らない温度であれば特に制限されず、0〜140℃であることが好ましく、0〜100℃であることがより好ましく、0〜60℃であることが特に好ましい。該接触温度が前記範囲内であると、塩基性悪臭物質を効率的に低減することができる。
(3)不織布の形態
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、ボトルやカップなどのような容器形状に立体加工して使用することもできる。また、生分解性を損なわない限り、他の樹脂層またはその他の層と積層したり、一体化させたりして使用することができる。例えば、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布であるPGA不織布とPLA不織布とを積層して使用することもできる。
(4)生分解性
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、優れた生分解性を有するものである。具体的には、該不織布を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布等の試料の状態を目視で観察するとき、約50%以上が分解しており、該不織布の端をピンセットでつかんで取り出すことができない程度の生分解性を有するものである。塩基性悪臭物質吸収性不織布の生分解性の程度は、生分解性脂肪族ポリエステルの組成や溶融粘度、不織布を形成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維の昇温結晶化温度または昇温結晶化熱量、不織布の目付、繊維径または空孔率などを選択することによって調整することができる。
4.塩基性悪臭物質吸収性不織布の製造方法
本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから不織布を形成することができる限り、その製造方法は特に限定されない。通常知られている不織布の製造方法を採用することができ、メルトブロー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、水流または気流による3次元交絡法など、それ自体公知の不織布の製造方法を採用することができる。更には抄紙法による不織布の製造方法も採用することができる。なお、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度を、調湿処理や熱処理により、調節してもよい。
また、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布が、生分解性脂肪族ポリエステル繊維以外の繊維等を含有する場合は、芯鞘構造等の複合繊維を使用したり、紡出された生分解性脂肪族ポリエステル繊維と生分解性脂肪族ポリエステル繊維以外の繊維とから、それ自体公知の方法により不織布を製造したり、不織布を積層したりするなどの方法によって、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布を製造することができる。
所期の繊維径や空孔率を得やすく、また、好適な非晶構造を得やすいことから、メルトブロー不織布が好ましい。なお、PGA不織布を製造する場合、ドライエアーや窒素ガスパージ等の方法により水分含有量が増加しないよう配慮して製造することが好ましい。
さらに、製造された生分解性脂肪族ポリエステル繊維により形成される不織布に対して、熱処理機を使用して所要温度で所定時間の熱処理を行って、熱処理不織布とすることもできる。熱処理の方法は、熱盤への接触、熱源からの輻射加熱、温風加熱などを採用することができる。熱処理温度や熱処理時間は、不織布に含まれる生分解性脂肪族ポリエステルの融点や含有量等に応じて所望の熱処理条件を採用すればよいが、不織布の空孔率を減少させたり、非晶構造を損なったりすることがないようにするため、通常、熱処理温度を融点未満とすることが必要である。熱処理は、例えば、70〜200℃の温度で1秒間〜60分間の熱処理を行うことが好ましく、より好ましくは80〜180℃の温度で3秒間〜45分間、更に好ましくは90〜150℃の温度で5秒間〜35分間の熱処理をすればよい。
以下に実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における塩基性悪臭物質吸収性不織布、生分解性脂肪族ポリエステル繊維、または生分解性脂肪族ポリエステルの物性または特性の測定方法は、以下のとおりである。
〔重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)〕
PGA等の生分解性脂肪族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、GPC分析装置を用いて、以下の条件で行った。トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、PGA等の生分解性脂肪族ポリエステル試料10mgを溶解させて10mLとした後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液10μLをGPC分析装置に注入して、下記の測定条件で分子量を測定することによって求めた。
<GPC測定条件>
装置:昭和電工株式会社製GPC104
カラム:昭和電工株式会社製HFIP−806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP−LG 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(Polymer laboratories Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用
〔溶融粘度〕
生分解性脂肪族ポリエステルの溶融粘度は、キャピラリー(1mmφ×10mmL)を装着した株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフ1−C」を用いて測定した。生分解性脂肪族ポリエステルの融点(Tm)+50℃である設定温度に加熱した装置に、生分解性脂肪族ポリエステル試料20gを導入し、5分間保持した後、せん断速度122sec−1での溶融粘度を測定した。
〔融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)〕
生分解性脂肪族ポリエステルの試料10mgを、示差走査熱量計(DSC;株式会社島津製作所製DSC−60)を使用して、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、室温から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱昇温するときの、昇温過程で検出される吸熱ピークから、融点(Tm)を検出し、昇温過程で検出されるガラス状態からゴム状態への転移領域に相当する二次転移領域における熱量の二次転移の開始温度から、ガラス転移温度(Tg)を検出した。融点(Tm)が複数みられる場合には、吸熱ピーク面積が最も大きいピークの温度を融点(Tm)とした。
〔昇温結晶化温度(Tc1)及び昇温結晶化熱量(ΔHTC1)〕
不織布を形成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維試料10mgを、前記示差走査熱量計を使用して、窒素雰囲気中、20℃/分の昇温速度で、室温から融点(Tm)+60℃付近の温度まで加熱昇温するときの、昇温過程において、結晶化に伴う発熱ピークが検出される場合の該発熱ピークの温度を昇温結晶化温度(Tc1)とした。また、該昇温結晶化温度(TC1)±20℃の範囲内の発熱ピーク面積を積算して、昇温結晶化熱量(ΔHTC1)を算出した。
〔不織布の目付〕
不織布の目付は、JIS−L−1096に準じて測定した。
〔不織布の厚み〕
不織布の厚みは、JIS L1096に準じて、荷重0.7kPaで測定した。
〔不織布の繊維径〕
不織布の繊維径は、不織布の幅方向、長手方向に重ならないように、10箇所の繊維をサンプリングし、1000倍に拡大した電子顕微鏡写真から繊維径をサンプル1箇所について10点測定して、合計100点の平均値を平均繊維径とし、不織布の繊維径とした。
〔不織布の空孔率〕
不織布の空孔率は、縦10cm×横10cmの大きさに切り出した不織布試料の質量を測定し(W1)、これをパーフルオロポリエステル試液(Porous Materials 社製の商品名「Galwick」)に5分間浸漬し、次いで試液から不織布試料を取り出して1分間液切りした後の質量を測定(W2)し、以下の式より算出して求めた。
空孔率(%)=(((W2−W1)/ρ)/((W2−W1)/ρ+W1/ρ))×100
ただし、ρ:生分解性脂肪族ポリエステルの密度(PGAの場合は、1.53g/cm)、ρ:パーフルオロポリエステル試液の密度(=1.8g/cm)。
〔悪臭低減性〕
塩基性悪臭物質吸収性不織布等の悪臭低減性は、以下の方法によって測定した。
(1)試験片の調製
悪臭低減性の測定に使用する試験片は、塩基性悪臭物質吸収性不織布等のサンプルから縦10cm×横10cmの大きさに切り出した後、99%エタノールで清浄化することによって調製した。
(2)悪臭低減性−気体状の塩基性悪臭物質の除去
容積50cmのバイアル瓶中に、縦10cm×横10cmの前記試験片を、ガラス棒等の支柱に吊した状態で静置し、塩基性悪臭物質の水溶液30μLを、前記試験片に触れないようにして投入した後、密封し、温度100℃で1分間保持して、塩基性悪臭物質を気化させた。次いで、バイアル瓶を、温度23℃、相対湿度50%で保存し、所定の時間経過ごとに、バイアル瓶中のヘッドスペースガスをサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを使用して、塩基性悪臭物質の濃度(μg/cm)を測定した。なお、試験中は、試験片が、塩基性悪臭物質の水溶液に触れないように留意した。塩基性悪臭物質としては、トリメチルアミンの30%水溶液、または、25%アンモニア水を使用することにより、水の存在下で、試験片を、気化した塩基性悪臭物質と接触させるようにした。ガスクロマトグラフィーによる塩基性悪臭物質の濃度の測定条件は下記のとおりとした。
<測定条件>
ガスクロマトグラフィー:株式会社島津製作所製GC−2014 検出器TCD
使用カラム:Chromosorb 103 60/80 3φ×3m ガラスカラム
流量:30ミリリットル/分
電流:120A
カラム温度:80℃
インジェクション温度:180℃
注入量:ヘッドスペースガス1ml
(3)悪臭低減性−液体状の塩基性悪臭物質の除去
容積20cmのバイアル瓶の底に、前記の試験片を静置し、塩基性悪臭物質の水溶液10mLを投入した後、密封した。次いで、バイアル瓶を、温度23℃、相対湿度50%で保存し、所定の時間経過ごとに、バイアル瓶中の液体をサンプリングして、ガスクロマトグラフィーを使用して、塩基性悪臭物質の濃度(μg/cm)を測定した。塩基性物質としては、10倍に希釈した25%アンモニア水を使用することにより、水の存在下で、試験片を塩基性悪臭物質と接触させるようにした。
〔生分解性〕
塩基性悪臭物質吸収性不織布等の生分解性は、縦10cm×横10cmの大きさに切り出した不織布等の試料を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布等の試料の状態を目視で観察した。
[実施例1]
〔PGA不織布の製造〕
ペレット状のPGA(株式会社クレハ製、Mw:16万、Mn:8万、溶融粘度(温度270℃、せん断速度122sec−1で測定):607Pa・s、融点:220℃、ガラス転移温度:43℃)100質量部に、カルボキシル基末端封止剤としてN,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(川口化学工業株式会社製)0.3質量部、及び、熱安定剤としてリン酸のモノステアリルエステル及びジステアリルエステルのほぼ等モル混合物〔株式会社ADEKA製のアデカスタブ(登録商標)AX−71〕0.02質量部を添加したPGA組成物を、押出機で溶融混合し、紡糸口金を持つダイから吐出し、延伸した繊維をベルトコンベア上で集積することによってメルトブローPGA不織布を製造した。その際、吐出量とベルトコンベアの速度を調整することにより積層量を制御し、目付15g/m、厚み130μmのPGA不織布を調製した。不織布の繊維径は4.4μm、空孔率は91%であった。この不織布を構成するPGA繊維のTc1は、86℃、ΔHTC1は、33J/gであった。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から縦10cm×横10cmの大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を、バイアル瓶の底に静置して、気体状の塩基性悪臭物質及び液体状の塩基性悪臭物質について、悪臭低減性の測定を行った。
気体状のトリメチルアミンについて所定の時間経過ごとに塩基性悪臭物質の濃度を測定した結果を、対照例の測定結果とともに、表1に示す。なお、対照例は、前記の試験片を使用することなく、気体状のトリメチルアミンについて悪臭低減性の試験を行ったものである。
気体状のアンモニアについて所定の時間経過ごとに塩基性悪臭物質の濃度を測定した結果を、対照例の測定結果とともに、表2に示す。対照例は、前記の試験片を使用することなく、気体状のアンモニアについて悪臭低減性の試験を行ったものである。
液体状のアンモニアについて所定の時間経過ごとに塩基性悪臭物質の濃度を測定した結果を、対照例の測定結果とともに、表3に示す。対照例は、前記の試験片を使用することなく、液体状のアンモニアについて悪臭低減性の試験を行ったものである。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布試験片の状態を目視で観察したところ、80%分解しており、該PGA不織布試験片の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例2]
〔PGA不織布の製造〕
実施例1において調製したメルトブロー不織布に代えて、実施例1で使用したPGA組成物を用いて、ダイの構成を変更し、吐出量とベルトコンベア速度の調整により積層量を制御することによって、目付24g/m、厚み75μm、繊維径5.4μm、空孔率82%であるPGAのメルトブロー不織布を調製した。この不織布を構成するPGA繊維のTc1は、82℃、ΔHTC1は、21J/gであった。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、75%分解しており、該PGA不織布の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例3]
〔PGA不織布の製造〕
実施例1において調製したメルトブロー不織布に代えて、実施例1で使用したPGA組成物を用いて、ダイの構成を変更し、吐出量とベルトコンベア速度の調整により積層量を制御することによって、目付106g/m、厚み450μm、繊維径7.8μm、空孔率92%であるPGAのメルトブロー不織布を調製した。この不織布を構成するPGA繊維のTc1は、77℃、ΔHTC1は、33J/gであった。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、65%分解しており、該PGA不織布の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例4]
〔PGA不織布の製造−熱処理〕
実施例1において調製したメルトブロー不織布を固定した状態で、100℃に設定したギアオーブンに30分間入れることで熱処理を行った。この不織布は、目付15g/m、厚み120μmであり、繊維径4.5μm、空孔率90%であった。この不織布を形成するPGA繊維は、Tc1が検出されなかった(ND。したがって、ΔHTC1は、0J/gであった。)。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、70%分解しており、該PGA不織布の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例5]
〔PGA不織布の製造〕
実施例1において調製したメルトブロー不織布に代えて、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が352Pa・sであるPGA(融点:220℃)を含有するPGA組成物を用いて、目付88g/m、厚み390μm、繊維径16.4μm、空孔率87%であるPGAのスパンボンド不織布を調製した。この不織布を形成するPGA繊維は、Tc1が検出されなかった(ND。したがって、ΔHTC1は、0J/gであった。)。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布の状態を目視で観察したところ、70%分解しており、該PGA不織布の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[比較例1]
〔PGAフィルムの製造〕
実施例1で使用したペレット状のPGA(カルボキシル基末端封止剤及び熱安定剤を添加)を押出機で溶融押出した後、二軸延伸(MD方向3倍、TD方向2.5倍)して、厚み20μmのPGAフィルムを製造した。このPGAフィルムは、昇温結晶化温度(Tc1)が検出されなかった(ND。したがって、ΔHTC1は、0J/gであった。)。
〔悪臭低減性〕
製造した二軸延伸PGAフィルムから所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した二軸延伸PGAフィルムから所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、PGAフィルム試験片の状態を目視で観察したところ、75%分解しており、該PGAフィルム試験片の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[実施例6]
〔PLA不織布の製造〕
実施例1で使用したペレット状のPGAに代えて、ペレット状のPLA(ネイチャーワークス社製の「Ingeo」(登録商標)4032D、Mw:18万、Mn:8万、溶融粘度(温度225℃、せん断速度122sec−1で測定):505Pa・s(調湿処理により溶融粘度を調整した。)、融点:175℃、ガラス転移温度:58℃)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして(すなわち、カルボキシル基末端封止剤及び熱安定剤を添加している。)、メルトブローPLA不織布を製造した。得られた不織布は、目付15g/m、厚み82μmであり、不織布の繊維径は4.5μm、空孔率は87%であった。この不織布を構成するPLA繊維のTc1は、110℃、ΔHTC1は、22J/gであった。
〔悪臭低減性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した不織布から所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、不織布試験片の状態を目視で観察したところ、50%分解しており、該PGA不織布試験片の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
[比較例2]
〔PLAフィルムの製造〕
実施例6で使用したペレット状のPLA(カルボキシル基末端封止剤及び熱安定剤を添加)を押出機で溶融押出した後、二軸延伸(MD方向3倍、TD方向2.5倍)して、厚み20μmのPLAフィルムを製造した。このPGAフィルムは、昇温結晶化温度(Tc1)が検出されなかった(ND。したがって、ΔHTC1は、0J/gであった。)。
〔悪臭低減性〕
製造した二軸延伸PLAフィルムから所定の大きさに切り出して、99%エタノールで清浄化して試験片を調製した。この試験片を用いて、塩基性悪臭物質として、気体状のトリメチルアミンについて、悪臭低減性の測定を行った。悪臭低減性の測定結果を表1に示す。
〔生分解性〕
製造した二軸延伸PLAフィルムから所定の大きさに切り出して調製した試験片を、25℃に温度を保った土壌中に埋設し、3か月後に掘り出して、PLAフィルム試験片の状態を目視で観察したところ、45%分解しており、該PLAフィルム試験片の端をピンセットでつかんで取り出そうとしたところ、崩れてしまって取り出すことができなかった。
Figure 0005871574
Figure 0005871574
Figure 0005871574
表1〜表3の結果から、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が607または352Pa・sであるPGA、または、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が505Pa・sであるPLAから形成され、目付が15〜106g/m、繊維径が4.4〜16.4μm、空孔率が82〜92%である、実施例1〜6の生分解性脂肪族ポリエステル不織布は、塩基性悪臭物質である、気体状のトリメチルアミン及びアンモニア、並びに、液体状のアンモニアを吸収することによって、塩基性悪臭物質の濃度を顕著に低減させる効果があり、また、生分解性も優れていることが分かった。
これに対して、溶融粘度が607Pa・sであるPGA、または、溶融粘度が505Pa・sであるPLAから形成された、比較例1及び2の生分解性脂肪族ポリエステルフィルムは、生分解性は優れてはいるが、塩基性悪臭物質である、気体状のトリメチルアミンを低減させる効果が、生分解性脂肪族ポリエステル不織布より小さいことが分かった。
さらに、実施例1の不織布と比較例1のフィルムとを対比すると、比較例1において195.5時間経過後に到達する塩基性物質(具体的には気体状のトリメチルアミン)濃度(63μg/cm)を、実施例1においては、約1/8程度の時間である25.5時間経過後に凌駕し(50μg/cm)、更に195.5時間経過後まで、塩基性物質濃度が極めて低い値で保持されていることから、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布は、悪臭低減性の効果の持続性にも優れていることが確認できた。
本発明の融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから得られる繊維により形成される不織布が、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させることにより、優れた塩基性悪臭物質の低減効果を示すメカニズムは必ずしも明らかではないが、PGA等の生分解性脂肪族ポリエステルが、水の存在下での塩基性悪臭物質の作用により加水分解して加水分解物を生成し、生成した加水分解物が塩基性悪臭物質と化学的中和反応を起こし、結果として塩基性悪臭物質の濃度が低減するのではないかと推察される。しかしながら、溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから形成される二軸延伸フィルムにおいては、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布と同程度の生分解性を有しながらも、悪臭低減性の点では、本発明の塩基性悪臭物質吸収性不織布より効果が小さい。したがって、加水分解物による化学的中和反応による塩基性悪臭物質の低減というメカニズムに加えて、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sであるという特定の溶融粘度を有する生分解性脂肪族ポリエステルから形成される塩基性悪臭物質吸収性不織布においては、不織布を構成する生分解性脂肪族ポリエステル繊維の表面構造や、該繊維同士の立体構造が特異なものとなり、これが塩基性悪臭物質に対する吸収性を示し、塩基性悪臭物質と接触することによって、優れた塩基性悪臭物質の濃度の低減がもたらされるという予期できない顕著な効果を奏するのではないかと推察される。
本発明は、融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sである生分解性脂肪族ポリエステルから得られる繊維により形成されることを特徴とする塩基性悪臭物質吸収性不織布であることによって、実質的に消臭剤を含有することなく、悪臭低減性及びその効果の持続性と、生分解性とに優れた不織布を提供することができるので、生産効率の向上、資源の節約及び環境負荷の低減に資するため、産業上の利用可能性が高い。特に、不織布を形成する繊維が、生分解性脂肪族ポリエステルのガラス転移温度+10℃以上である昇温結晶化温度と、5J/g以上である昇温結晶化熱量を有するものであるものとし、さらに、好ましくは生分解性脂肪族ポリエステルが末端封止剤を含有するものとして、目付1〜500g/m、繊維径300nm〜100μm、及び空孔率50〜95%である不織布とすることによって、極めて優れた悪臭低減性と生分解性を備える塩基性悪臭物質吸収性不織布を得ることができるので、産業上の利用可能性が一層高い。

Claims (4)

  1. 融点(Tm)+50℃の温度、及び、せん断速度122sec−1の条件下で測定した溶融粘度が300〜900Pa・sであるポリグリコール酸から得られる繊維により形成される塩基性悪臭物質吸収性不織布であって、
    前記繊維が、ポリグリコール酸のガラス転移温度+10℃以上である昇温結晶化温度と、5J/g以上である昇温結晶化熱量を有するものであることを特徴とする塩基性悪臭物質吸収性不織布。
  2. 目付1〜500g/m、繊維径300nm〜100μm、及び空孔率50〜95%である請求項1記載の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
  3. 前記ポリグリコール酸が、末端封止剤を含有する請求項または記載の塩基性悪臭物質吸収性不織布。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の塩基性悪臭物質吸収性不織布を、水の存在下で、塩基性悪臭物質と接触させることを特徴とする塩基性悪臭物質の低減方法。
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