JP5881300B2 - リグノセルロース系バイオマスからのエタノール醗酵微生物 - Google Patents
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Description
本願発明は、上記知見に基づくものである。
[1] グリシン合成系タンパク質の遺伝子及び/又はメチオニン合成系タンパク質の遺伝子の発現機能を喪失させ、かつキシロース代謝酵素遺伝子を導入した微生物。
[2] 前記グリシン合成系タンパク質の遺伝子がGLY1遺伝子である、前記[1]に記載の微生物。
[3] 前記メチオニン合成系タンパク質の遺伝子がMET6又はMET32遺伝子である、前記[1]又は[2]に記載の微生物。
[4] 酵母である、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微生物。
[5] サッカロミセス・セレビシエである、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の微生物。
[6] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の微生物。
[7] グリシン合成系タンパク質の遺伝子及び/又はメチオニン合成系タンパク質の遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した微生物を作製する方法。
[8] 前記グリシン合成系タンパク質の遺伝子がGLY1遺伝子である、前記[7]に記載の方法。
[9] 前記メチオニン合成系タンパク質の遺伝子がMET6又はMET32遺伝子である、前記[7]又は[8]に記載の方法。
[10] 前記微生物が酵母である、前記[7]〜[9]のいずれか1つに記載の方法。
[11] 前記微生物がサッカロミセス・セレビシエである、前記[7]〜[10]のいずれか1つに記載の微生物。
[12] 前記微生物がキシロース代謝酵素遺伝子が導入されたものである、前記[7]〜[11]のいずれか1つに記載の方法。
[13] 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、前記[12]に記載の方法。
[14] 前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法。
本発明により、優れたキシロース醗酵能を有する微生物が提供される。また、本発明の微生物の作製方法を用いることにより、広範囲な微生物を宿主として、同様に高いキシロース醗酵能を有する育種を作成することができる。本発明の微生物を用いることにより、キシロース含有原料から効率よくエタノールを製造することができる。また、本発明の微生物を用いると、例えばアミノ酸含有量の低いバイオマスを原料とした場合でも、効率よくエタノールを製造することができる。
本発明は、ある実施態様において、グリシン合成系タンパク質遺伝子及び/又はメチオニン合成系タンパク質遺伝子の発現機能を喪失させた、微生物を提供する。
好ましくは、微生物は、糖に対する醗酵能を有する種であり、より好ましくは、酵母である。酵母は、出芽酵母又は分裂酵母のいずれであってもよい。ある実施態様では、酵母は、サッカロミセス・セレビシエNBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954、X2180-1A (ATCC26786)、CB11 (Berkley Stock Center)、W303-1A (BY4848)、MT8-1(BY2685)、NBRC1440、NBRC1445等の出芽酵母であってもよい。別の実施態様では、酵母は、シゾサッカロミセス・ジャポニクス(Schizosaccharomyces japonicus (Hasegawaea japonicus))、シゾサッカロミセス・オクトスポルス(Schizosaccharomyces octosporus (Octosporomyces octosporus))及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の分裂酵母であってもよい。
本発明は、宿主微生物のグリシン合成系タンパク質の遺伝子及び/又はメチオニン合成系タンパク質の遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した醗酵微生物を作製する方法を提供する。
グリシン合成系タンパク質遺伝子及び/又はメチオニン合成系タンパク質遺伝子の発現機能を喪失させる方法としては、ジーンターゲティング又はRNAi等のノックアウト又はノックダウン技術が挙げられる
ジーンターゲティングは、相同組換えを利用して染色体上の特定遺伝子に変異を導入する手法である(Capeccchi, M.R. Science, 244, 1288-1292, 1989)。
このようなターゲティングベクターは、市販のプラスミドベクター(例えば、pENTR/D-TOPO(登録商標:Invitrogen)やpBluescriptII (Stratagene)等)をベースにして構築することができる。
これらの組換え配列間に組換えを生じさせるためには、適切なリコンビナーゼを発現させる必要がある。上記の組換え配列間に組換えを生じさせるリコンビナーゼは、それぞれ、Flippase(FLP:FLP-FRTリコンビネーション)、Cre(Cre-loxPリコンビネーション)、R Recombinase (R:RS リコンビネーション)、GIX recombinase (R:RS リコンビネーション)等が挙げられる。
さらに、リコンビナーゼをコードするプラスミドも宿主細胞から脱落していることが好ましい。宿主細胞の複数の対象タンパク質遺伝子の破壊において、選択マーカーが制限されないからである。
したがって、リコンビナーゼをコードするプラスミドは、宿主細胞内で不安定なものが好ましく、特に、当該プラスミドの選択マーカーに対する選択圧をかけない状態において、宿主細胞から脱落するものが好ましい。
そのようなプラスミドの例としては、YRpタイプのプラスミドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
次に、取得した株にFLPをコードするプラスミド(図4に示すpYRNFLP)を導入してFRT配列間に組換えを生じさせ、ジェネティシン耐性遺伝子を脱落させる。
さらに、pYRNFLPも不安定であるため、非選択圧下において宿主細胞から脱落している。このようにして作製された本発明の微生物は、選択マーカーを有しないため、複数の遺伝子の破壊を行う際に、先の遺伝子の破壊に使用した選択マーカーと、同一の選択マーカーを繰り返し用いることが可能である。
上記以外にも、対象タンパク質遺伝子の発現機能を欠損させる方法として、siRNA(small interfering RNA)等を用いたRNA干渉(RNA interference: RNAi)法が挙げられる。RNAi は、複数の段階を経て行われるマルチステッププロセスである。最初に、RNAi発現ベクターから発現した二本鎖RNA(Double Stranded RNA: dsRNA)又はヘアピン状のshRNA(Small Hairpin RNA)が Dicerによって認識され、21〜23 ヌクレオチドの siRNAs に分解される。次に、siRNAs は RNA 誘導型サイレンシング複合体 (RNA-Induced Silencing Complex: RISC) と呼ばれる RNAi 標的複合体に組み込まれ、RISC とsiRNAsとの複合体がsiRNAの配列と相補的な配列を含む標的mRNAに結合し、mRNAを分解する。標的mRNAは、siRNAに相補的な領域の中央で切断され、最終的に標的mRNAが速やかに分解されてタンパク発現量が低下する。最も効力の高い siRNA 二重鎖は、19bpの二重鎖の各3’末端にウリジン残基2個の突出部分を持つ 21 ヌクレオチド長の配列であることが知られている(Elbashir S.M. et al., Genes and Dev, 15, 188-200 (2001))。
このようなキシロース代謝酵素遺伝子は、例えば、ピキア・スティピティス、サッカロミセス・セレビシエ、大腸菌、ラクトバシラス・カゼイ、ラクトバシラス・アシドフィラス、アスペルギルス・フミガツス、スタフィロコッカス・アウレウス、ピキア・パストリス、シゾサッカロミセス・ポンベ等に由来するものであってもよい。
本発明の微生物には、前記キシロース代謝酵素のうち、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子又はキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つが導入されていることが好ましく、これら遺伝子の2つ以上、あるいは、3つ全ての遺伝子が導入されていてもよい。
Xylose+NADPH→Xylitol+NADP
Xylitol+NAD→Xylulose+NADH
Xylulose+ATP→Xylulose-5P+ADP
(i)宿主細胞内で転写可能なプロモーター;
(ii)該プロモーターに結合した、キシロース代謝酵素遺伝子;及び
(iii)RNA分子の転写終結及びポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセット
を含むように構成される。
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、栄養要求性マーカー(ura3、ura5、niaD)、薬剤耐性マーカー(ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネチシン耐性)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m, PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992; Hussain et al., gene, 101, 149, 1991)等が利用可能である。
上記のようにして作製された本発明の微生物は、同種の野生型微生物と比べて、キシロース醗酵能が増加している。ここで、キシロース醗酵とは、キシロースを資化することにより、エタノールを生成することを意味する。したがって、本発明の微生物をキシロース含有原料の存在下で培養した場合、同種の野生型微生物を同一条件下で培養した場合よりも、早くキシロースを資化することが出来、副生成物であるキシリトールの生成量が少なく、キシロースからのエタノール醗酵能が上昇する。
このことから、本発明は、別の実施態様において、本発明の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法を提供する。
本発明の微生物を活性な状態でキシロース含有材料と接触させる方法の例としては、本発明の微生物が増殖可能な培養条件において、かつ、キシロース含有原料の存在下で、本発明の微生物を培養する方法が挙げられる。このような、培養条件は、微生物種によって異なるが、例えば、酵母であれば、キシロース含有原料を添加したYPD培地(イーストエキストラクト 10 g/L、ポリペプトン 20 g/L、グルコース 20 g/L)、SX培地(キシロース50 g/l、6.7 g/l yeast nitrogen baseアミノ酸抜き、アデニン20 mg/l、ヒスチジン 20 mg/l、ロイシン 100 mg/l、トリプトファン 20mg/l)等の適切な培地中で30℃にて培養することができる。
あるいは、本発明の微生物は、キシロース含有原料の存在下で培養を行う前に、本発明の微生物が増殖可能な培養条件において培養して菌体を増殖させ、その後、キシロース含有原料の存在下で、本発明の微生物を用いて醗酵を行なってもよい。
但し、培養条件は、上記に限定されるものではない。当業者であれば、適宜、微生物種に応じた適切な培養条件を選択し、実際に培養を行うことができる。
よって、この定義に基づき、「キシロース含有バイオマス」は、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものであって、キシロースを含むもの」と定義することができる。
キシロース含有バイオマスの具体例としては、サトウキビ、トウモロコシ、テンサイ、ジャガイモ、サツマイモ、麦、モロコシ(=こうりゃん)、ソルガムなどの非可食部や、廃木材、パルプ廃液、バガス、もみ殻、コーンコブ、稲ワラ、スイッチグラス、エリアンサス、ネピアグラスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施例で用いた試験項目および試験方法を以下に示す。特に断りのない限り、本実施例における試験方法はこれに準じた。
本発明において用いた株は、以下の(a)〜(e)のとおりである。いずれの株も、P.stipitisのキシロース還元酵素遺伝子(XYL1:配列番号7)とキシリトール脱水素酵素遺伝子(XYL2:配列番号9)とS.cerevisiaeのキシルロースリン酸化酵素遺伝子(XKS1:配列番号11)とをS.cerevisiaeのTDH3遺伝子のプロモーター制御下に連結させた発現ユニットを持つプラスミド・pIUX1X2XK(図1)が、染色体上のURA3遺伝子領域に相同組換えで導入されている。株については、これに限定されるものではなく、キシロース醗酵能を持つ酵母であれば、何でも良い。
(a) MT8-1/pIUX1X2XK(Mata ade his3 leu2 trp1/pIUX1X2XK)
(b) MT8-1/pIUX1X2XK/Ad(Mata ade his3 leu2 trp1, キシロース培地に順化した株)
(c) MT8-1/pIUX1X2XK/pGK404-ScTal(Mata ade his3 leu2 /pIUX1X2XK/pGK404-ScTal)
(d) NBRC1440/pIUX1X2XK(Matα・his3 trp1/pIUX1X2XK)
(e) NBRC1445/pIUX1X2XK(Mata his3 trp1/pIUX1X2XK)
MT8-1は、ナショナルバイオリソースプロジェクトにNBRP No. BY2685として登録されている。
以下の各々のプライマー(1)〜(16)を用いて、プラスミドpBIITGRFRT(図2)((1)+(2))、あるいはpUGRFRT(図3)((3)+(4)、(5)+(6))を鋳型としてPCRを行った。これらにより、MET6((1) +(2))、MET32((3)+(4))、GLY1 ((5)+(6))の各ORFの開始コドンから下流80塩基の配列、あるいは終始コドンから上流80塩基の配列がそれぞれ両端に付加された、FRT-G418R-FRT断片を増幅される。FRTとは酵母2μプラスミド上にある、リコンビナーゼによって組換えが起こる、組換え部位であり、その配列は、5’-GAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTC-3’(配列番号13)である。G418Rとは、G418耐性マーカー遺伝子( PGK1p::KanMX)であり、pBIITGRFRTとpUGRFRTは両者とも、FRT-G418R-FRT断片を持つプラスミドである。増幅した各ORFの両末端配列を持つFRT-G418R-FRT断片でMT8-1/pIUX1X2XKを形質転換し、形質転換後の菌体をジェネティシン 300 μg/mlを含むYPD (イーストエキストラクト 10 g/L、ポリペプトン 20 g/L、グルコース*20 g/L(ろ過滅菌添加*))に塗布した。生育した株において、FRT-G418R-FRT断片が、それぞれMET6、MET32、GLY1のORFと置き換わったことを確認するために、各々、数個のコロニーからゲノミックDNAを調製した。これを鋳型として、MET6については、(7)と(10)、MET32については(8)と(10)、GLY1については(9)と(10)、のプライマーを用いてPCRを行った。プライマー(7)、(8)、(9)は、各ORFの5’上流の配列、(10)はG418耐性遺伝子に相補的な配列である。PCRで適切な大きさのDNAが増幅された株については、さらにプラスミドpYRNFLP (図4)を形質転換し、Nourseothricin dihydrogen sulfate 50 μg/mlを含むYPDに塗布した。
(1) MET6DF1: 5’-ATGGTTCAATCTGCTGTCTTAGGGTTCCCAAGAATCGGTCCAAACAGAGAATTAAAGAAGGCCACTGAAGGTTACTGGAAACTCAAGCTATGCATCAAGC-3’ (配列番号14)
(2) MET6DR1: 5’-TTAATTCTTGTATTGTTCACGGAAGTACTTGGCGGCTTCGACCATATGAGTCAAAGACAATCT
AGTTTCTTCCCAGCCTCAATACGACTCACTATAGGGC-3’ (配列番号15)
(3) MET32DF1:5’-ATGGAGGATCAGGATGCTGCATTTATCAAACAGGCTACAGAAGCAATAGTGGATGTATCATTA
AATATAGATAACATAGAGTAAAACGACGGCCAGTGCC-3’ (配列番号16)
(4) MET32DR2: 5’-TCAGCCATTACTGCTACCATTGTGGTTGTTATCTTGACGATGAACGATGTTGGATTGCTTG
ACTTTTTTCAGTAATTCATCCGGCTCGTATGTTGTGTGG-3’ (配列番号17)
(5) GLY1DF1: 5’-ATGACTGAATTCGAATTGCCTCCAAAATATATCACCGCTGCTAACGACTTGCGGTCAGACACA
TTCACCACTCCAACTGCGTAAAACGACGGCCAGTGCC-3’ (配列番号18)
(6) GLY1DR1: 5’-TCAGTATTTGTAGGTTTTTATTTCGCGGATAGCGTTGCCATCAACGTCGACCTCGGTGGATTC
ACTACGGTAAATCTGGGCCGGCTCGTATGTTGTGTGG-3’ (配列番号19)
(7) MET6-5UF1: 5’-AAACTGTGGTAGTCATAGCTC-3’ (配列番号20)
(8) MET32-5UF1: 5’-TATACTAGTCAAAGATAGTATCCACC-3’ (配列番号21)
(9) GLY1-UF1: 5’-ATGTCACGCGAAACGGACC-3’ (配列番号22)
(10) G418MER: 5’-AAATGCTTGATGGTCGGAAG-3’ (配列番号23)
(11) MET6NF1: 5’-ATGGTTCAATCTGCTGTCTTAGGGT-3’ (配列番号24)
(12) MET6CR: 5’-TTAATTCTTGTATTGTTCACGGAAGTAC-3’ (配列番号25)
(13) MET32NF1: 5’-ATGGAGGATCAGGATGCTGCATTT-3’ (配列番号26)
(14) MET32CR2: 5’-TCAGCCATTACTGCTACCATTGTG-3’ (配列番号27)
(15) GLY1NF1: 5’-TGACTGAATTCGAATTGCCTC-3’ (配列番号28)
(16) GLY1CR1: 5’-ATAGCGTTGCCATCAACGTC-3’ (配列番号29)
酵母細胞を50 μlのLysis buffer(0.125 mg/ml ザイモリアーゼ100T、1 M ソルビトール、40 mM リン酸カリウムバッファー pH6.8、1 mMジチオスレイトール)に懸濁する。30℃で1時間インキュベートした後、プロテアーゼE (1 mg/ml) を5μl加え、さらに55℃で20分、99℃で10分インキュベートする。15,000 rpmで10分遠心を行い、上清を鋳型DNAとした。
SD培地(20 g/lグルコース、6.7 g/l yeast nitrogen baseアミノ酸抜き、アデニン20 mg/l、ヒスチジン 20 mg/l、ロイシン 100 mg/l、トリプトファン 20 mg/l)5 mlで前培養した酵母を初期OD600が0.03になるように500 mlのSD培地(casamino acid 20 g/lを含有)に移し、48 h、30℃で振とう培養機で好気培養した。細胞を遠心分離機で回収し、滅菌水で洗浄した後、初期OD600が20になるように100 mlのSX培地(キシロース50 g/l、6.7 g/l yeast nitrogen baseアミノ酸抜き、アデニン20 mg/l、ヒスチジン 20 mg/l、ロイシン 100 mg/l、トリプトファン 20 mg/l)に入れ、醗酵を開始した。醗酵は、生成した二酸化炭素ガスを逃すための出口がついた100 mlメディウム瓶で行い、100-150 rpmのスターラーで培養液を撹拌した。醗酵の進行を監視するために、培地を1 ml回収し、1000 gで遠心分離した後、上澄みを回収し、HPLCで分析した。
醗酵液から経時的にサンプリングした酵母細胞は遠心分離(1000 g、 3分)によって収穫した。細胞のペレットは、MilliQ水(Millipore、 Tokyo、Japan)で2回洗浄した後、液体窒素で凍結した。細胞は凍結乾燥し、使用時まで-80°Cで保存した。
醗酵培地中のキシロース、キシリトール、エタノール濃度はShimPack SPR-Pbカラム(Shimadzu、Kyoto、Japan)を用いたHPLC法(GL-7400システム、GL Sciences)によって定量した。カラムは80℃に保温し、MilliQ水を移動相として用い、流量は0.6 ml/minと設定した。各化合物はGL-7454の示差屈折率検出器(Shimadzu)によって検出した。
<GC-MS分析>
・ 10 mgの酵母の乾燥細胞を2 mlチューブに入れる
・ 混合溶媒1000 ml (MeOH : CHCl3 : H2O = 2.5 : 1 : 1)と内部標準溶液60 ml (2-isopropylmalic acid 1 mg/ml )を加える
・ シェーカーで1200 rpm、 37℃ 、 30分混合する
・ 遠心分離機で15000 x g、 4℃、 3分遠心分離する
・ 上澄み900 mlを1.5 mlチューブに移し、MilliQ水を400 ml加え、vortexで混合する
・ 遠心分離機で15000 x g、 4℃、 3分で遠心分離する
・ 上澄み200 mlを1.5 mlチューブに移し、遠心濃縮機及び凍結乾燥機で乾燥させる
・ メトキシアミン(ピリミジンで溶解)20 mg/mlを100 ml加える
・ シェーカーで1200 rpm、 30℃、 90分混合する
・ MSTFA 1 mg/mlを50 ml加え、シェーカーで1200 rpm、 37℃、 30分混合する
・ バイアルに移し、1 mlをGC-TOF/MSに注入し、分析する
分析条件
GCシステム : 6890N (Agilent)
カラム : CP-Sil 8 CB-Low Bleed 30 m x 0.25 mm ID (DF = 0.25 mm)
オーブン温度 : 80℃ (2分保持)、 15℃/分で330℃まで温度上昇 後、6分保持
インジェクター温度 : 230℃
イオン源温度 : 200℃
MS システム : PegasusIII TOF-MS (Leco)
マスレンジ : 85-500 m/z
スキャン速度 : 20 スキャン/秒
・ 10 mgの酵母の乾燥細胞を2 mlチューブに入れる
・ MeOH 500ml、 CHCl3 500ml、 MilliQ水180ml、と内部標準溶液20ml (100mM ribitol、 100mM PIPES)を加え、vortexで混合する
・ 遠心分離機で15000 x g、 4℃、 3分遠心分離する
・ 上澄み350 mlを1.5 mlチューブに移し、MilliQ水を100ml加え、vortexで混合する
・ 沈殿物にMilliQ水100mlを加え、vortexで混合する
・ 両サンプルを遠心分離機で15000 x g、 4℃、 3分遠心分離する
・ 上澄みを2本の減外ろ過チューブ(Millpore Ultrafree-MC 5kDa MWCO)にチューブに移す
・ 遠心濃縮機でオーバーナイト乾燥させる
・ MilliQ水50mlで溶解する
・ バイアルに移し、分析する
分析条件
CEシステム : P/ACE MDQ (Beckman Coulter)
キャピラリー : Fused silica capillary 50μm i.d. x 80 cm
シーズ液 : 5 mM HCOONH3 in 50% MeOH
電解質 : 50 mM CH3COONH3 (pH 9.0)
電圧 : 30.0 kV
MSシステム : 4000 QTRAP (Applied Biosystems)
イオン化法 : ESI
送液ポンプ : MP-711 (GL Sciences)
7種類のキシロース醗酵性酵母 ((1) MT8-1/pIUX1X2XK (2) MT8-1/pIUX1X2XK/Ad (3) MT8-1/pIUX1X2XK/pGK404-ScTal (4) NBRC1440/pIUX1X2XK (5) NBRC1445/pIUX1X2XK)を、実験方法に示した方法にてSD培地にて前培養し、細胞を集菌した後、滅菌水で洗浄した。酵母細胞をOD600=20となるように100 ml のSX培地に植菌して、キシロースからのエタノール醗酵試験を行った。適時醗酵もろみを1mlサンプリングし、HPLCでキシロース、キシリトール、エタノール濃度を測定した。また、同時に酵母細胞をサンプリングし、実験方法に示した方法で、GC-MSおよびCE-MS分析を行い、細胞内成分の網羅的分析を行った。得られた代謝物プロファイルを説明変数、諸性能評価値を応答変数としたOPLS回帰モデルを構築して、モデル構築に重要な説明変数を解析した結果、下記の化合物がキシロースからのエタノール醗酵性能と深く関与することがわかった。
Homoserine
Homocysteine
Methionine
Threonine
Glycine
Serine
MT8-1/pIUX1X2XK株のMET6、MET32、GLY1遺伝子を実験方法に示したように、破壊した。すなわち、各遺伝子の開始コドンから下流80 bpと、終始コドンから上流80 bpの配列を両端に持ち、その間にFRT-G418R-FRTを持つDNA断片をPCRにて調製し、MT8-1/pIUX1X2XK株に形質転換して、ジェネティシン耐性を持つ株を選択した。複数の株よりPCRでMET6、MET32、GLY1各遺伝子に、FRT-G418R-FRTが挿入されたものを選択し、続いてpYRNFLPを形質転換した。Nourseothricin dihydrogen sulfate耐性を持つ株を選択し、pYRNFLP から発現される、リコンビナーゼの活性により、FRT配列間での組換えが起こり、G418耐性遺伝子がループアウトした株を、PCRにて選択した。
MT8-1/pIUX1X2XK株(親株)とMET6、MET32、GLY1の破壊株を用いて、実験方法に示した方法にてSD培地にて前培養し、細胞を集菌した後、滅菌水で洗浄した。酵母細胞をOD=20となるように100 ml のSX培地に植菌して、エタノール醗酵試験を行った(n=3)。適時醗酵もろみを1 mlサンプリングし、HPLCでキシロース、キシリトール、エタノール濃度を測定した。キシロース資化経過を図5に、エタノール生成経過を図6に、キシリトール生成経過を図7に示す。また、醗酵パフォーマンスを表すいくつかの指標を図8に示した。
以上記載したように、解糖系や、ペントースリン酸経路、あるいは、導入したキシロース還元酵素、キシリトール脱水素酵素のような、キシロースからのエタノールへの代謝経路にあたる酵素ではなく、直接には関係のない、グリシン生合成経路、メチオニン生合成経路に関与する遺伝子を破壊することで、キシロースからのエタノール生成パフォーマンスを向上させることができた。
本発明で育種した酵母を使用することによって、キシロースからのエタノール醗酵能、あるいは醗酵速度を改善することができる。どのような醸造用酵母、実験室酵母においても、同様の育種をすることができる。また、キシロースを含むものであれば、どのようなバイオマスから得られたもろみであっても、本育種酵母で同様の効果が見込める。
配列番号14:合成DNA
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号23:合成DNA
配列番号24:合成DNA
配列番号25:合成DNA
配列番号26:合成DNA
配列番号27:合成DNA
配列番号28:合成DNA
配列番号29:合成DNA
Claims (10)
- GLY1遺伝子、MET6遺伝子又はMET32遺伝子の発現機能を喪失させ、かつキシロース代謝酵素遺伝子を導入した微生物。
- 酵母である、請求項1に記載の微生物。
- サッカロミセス・セレビシエである、請求項1又は2に記載の微生物。
- 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物。
- GLY1遺伝子、MET6遺伝子又はMET32遺伝子の発現機能を喪失させることにより、キシロース醗酵能力の増加した微生物を作製する方法。
- 前記微生物が酵母である、請求項5に記載の方法。
- 前記微生物がサッカロミセス・セレビシエである、請求項5又は6に記載の方法。
- 前記微生物がキシロース代謝酵素遺伝子が導入されたものである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キシロース代謝酵素遺伝子が、キシロース還元酵素遺伝子、キシリトール脱水素酵素遺伝子及びキシルロースリン酸化酵素遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つのものである、請求項8に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の微生物と、キシロース含有原料とを接触させる工程を含む、エタノールの製造方法。
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