JP5887903B2 - 溶接性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)溶接熱影響部の軟化を低減するうえでは、熱延鋼板の組織を、焼き戻しの影響を受けないフェライト単相とすることが有効であること。
(2)低温変態相生成を回避し、実質的にフェライト単相組織である熱延鋼板を得るには、焼き入れ性元素であるMnの含有量を0.5%未満とする必要があること。
(3)実質的にフェライト単相組織であり、しかも固溶強化元素であるMnの含有量を0.5%未満にまで低減された熱延鋼板について、その引張強さを850MPa以上とするためには、Ti炭化物、V炭化物およびTiとVの複合炭化物による析出強化を採用し、これらの微細な炭化物を鋼板のマトリックスであるフェライト粒内に多く析出させる必要があること。
(4)炭化物による析出強化を採用するに際し、溶接性にも優れた高強度鋼板を得るには、鋼中への溶解量の小さいTiを最大限利用したうえで、溶解量の大きいVを効果的に複合添加することが重要であること。
(6)溶接熱影響部での軟化域の抑制、すなわち炭化物の溶解、粗大化の抑制には、熱延鋼板に所定量のBを含有させることが有効であること。
(7)Mn含有量が0.5%未満であり且つマトリックスが実質的にフェライト単相組織である熱延鋼板について、フェライト粒内に炭化物を析出させて引張強さを850MPa以上にするとともに、溶接熱影響部における炭化物の溶解、粗大化を抑制するには、上記炭化物の平均粒子径を5nm以上20nm以下とすることが有効であること。
[1] 質量%で、
C :0.055%以上0.11%以下、 Si:0.4%以下、
Mn:0.5%未満、 P :0.02%以下、
S :0.01%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.01%以下、 B :0.0005%以上0.005%以下、
Ti:0.05%以上0.25%以下、 V :0.01%以上0.5%以下
を、C、TiおよびVが下記(1)を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径が5nm以上20nm以下である組織を有し、引張強さが850MPa以上であることを特徴とする、溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51) ≦ 1.5 ・・・ (1)
([C]、[Ti]、[V]:各元素の含有量(質量%))
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93) ≦ 1.5 ・・・ (2)
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))
C :0.055%以上0.11%以下、 Si:0.4%以下、
Mn:0.5%未満、 P :0.02%以下、
S :0.01%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.01%以下、 B :0.0005%以上0.005%以下、
Ti:0.05%以上0.25%以下、 V :0.01%以上0.5%以下
を、C、TiおよびVが下記(1)を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を、1100℃以上1350℃以下の温度に加熱し、仕上げ圧延温度を820℃以上とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後3秒以内に強制冷却を開始し、20℃/s以上の冷却速度で700℃以上800℃以下の温度域まで冷却したのち冷却を停止し、2s以上25s以下の間放冷し、再度20℃/s以上の冷却速度で冷却し、550℃以上700℃以下の巻取り温度でコイル状に巻き取ることを特徴とする、溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51) ≦ 1.5 ・・・ (1)
([C]、[Ti]、[V]:各元素の含有量(質量%))
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93) ≦ 1.5 ・・・ (2)
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))
まず、本発明鋼板の組織および炭化物の限定理由について説明する。
本発明の熱延鋼板は、フェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径が5nm以上20nm以下である組織を有する。
低温変態相は、溶接熱影響部の強度低下を招来する。溶接部近傍では溶接時に急速加熱→冷却という熱履歴を経ることで溶接熱影響部が形成されるが、低温変態相を含む鋼板を溶接すると、溶接熱影響部のうち急速加熱後の冷却速度が緩やかな領域の低温変態相が焼き戻されて軟化するためである。以上の理由により、本発明では、溶接熱影響部の軟化を抑制する目的で、熱延鋼板のマトリックスをフェライト単相とすることが好ましい。また、フェライト単相とすることは、鋼板の加工性を確保する観点からも好ましい。但し、熱延鋼板のマトリックスが完全にフェライト単相でなくても実質的にフェライト単相、具体的にはフェライト相の面積率が95%以上であれば上記した溶接熱影響部の軟化を効果的に抑制することができる。したがって、フェライト相の面積率は95%以上とする。好ましくは98%以上である。
上記のとおり、本発明の熱延鋼板では、低温変態相を抑制する目的で焼き入れ元素であり且つ固溶強化元素でもあるMnの含有量を低減するため、固溶強化による鋼板強度の向上化は期待できない。そこで、本発明の熱延鋼板では、強度を確保する上でフェライト相の結晶粒内に炭化物を微細析出させることが必須となる。本発明においてフェライト相の結晶粒内に炭化物を微細析出させる炭化物としては、Ti炭化物、V炭化物およびTiとVの複合炭化物、或いはこれら炭化物中にNbやMo、Wを含むものが挙げられる。なお、これらの炭化物の多くは、熱延鋼板製造工程における仕上げ圧延終了後の冷却過程で、オーステナイト→フェライト変態と同時に相界面析出する炭化物である。
本発明の熱延鋼板は、上記の炭化物をマトリックスであるフェライト相の結晶粒内に微細に分散させることで強化を図っている。ここで、炭化物が粗大化すると、転位の運動を阻害する炭化物数が減じることから、鋼板の高強度化には、炭化物が微細化であるほど好ましい。引張強さ850MPa以上の高強度熱延鋼板を得るには、炭化物の平均粒子径を20nm以下とする必要がある。好ましくは15nm以下である。一方、極度に微細な炭化物は、溶接時、高温に晒されたときに溶解し易い。特に、5nm未満の炭化物は、後述するBによる熱安定性の向上効果が小さいため、炭化物平均粒子径の下限を5nmとする。
C :0.055%以上0.11%以下
Cは、TiやV、或いは更にNbやMo、Wと結合し、炭化物として鋼板中に微細分散する。すなわちCは、微細な炭化物を形成してフェライト組織を著しく強化させる元素であり、熱延鋼板を強化する上で必須の元素である。引張強さ850MPa以上の高強度鋼板を得るには、C含有量を少なくとも0.055%以上とする必要がある。一方、C含有量が0.11%を超えると、炭化物として析出しないC量が多くなる結果、低温変態相が生じ、溶接熱影響部での焼き戻し軟化を招き、溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.055%以上0.11%以下とする。好ましくは0.06%以上0.10%以下である。
Siは、フェライト形成元素であり、溶接時にオーステナイト域まで加熱された鋼板が冷却する際、高温でオーステナイトとフェライトの二相分離を促進させる。このように高温で変態(二相分離)する場合、鋼板中の元素の拡散速度が速いため、CやMnといった低温変態相を生成させる元素が未変態のオーステナイト中に濃縮してしまい、結果として溶接熱影響部に低温変態相が生成し易くなる。このような観点から、溶接部(溶接熱影響部)における低温変態相の生成を抑制する目的で、Si含有量を0.4%以下とする。好ましくは0.2%以下である。なお、Si含有量は不純物レベルまで低減してもよい。
Mn含有量は、本発明において重要な要件のひとつである。先述のとおり、本発明では、フェライト粒内に析出させる炭化物の熱安定性を高める目的で鋼板に所定量のBを含有させることを必須とするが、Bは焼き入れ性向上効果が極めて高い元素であり、低温変態相の生成を促進する元素でもある。そこで、鋼板組織を実質的にフェライト単相組織とする本発明では、焼き入れ性元素であるMnの含有量を低減させる必要があり、0.5%%未満とする。好ましくは0.4%以下である。但し、Mn含有量が極端に少なくなると、熱延後のフェライト変態点が上昇し、これに伴い炭化物が過度に粗大化することが懸念されるため、Mn含有量は0.1%以上とすることが好ましく、0.2%以上とすることがより好ましい。
Pは、粒界に偏析して溶接部の粒界脆化を促進させるため、著しく溶接性を低下させる有害な元素である。そのため、本発明では、可能な限り低減することが望ましいが、0.02%までの含有は許容できるため、P含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.015%以下である。
Sは、鋼中で介在物を生成し、溶接部でミクロボイド生成の原因となり、延性低下を招く有害な元素である。そのため、本発明では、S含有量を可能な限り低減することが好ましいが、0.01%までは許容できるため、S含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Alは、脱酸剤として作用する元素である。このような効果を得るためには0.02%以上含有することが望ましいが、Al含有量が0.1%を超えると粗大なAl2O3などの介在物を形成して溶接部における強度低下の要因となるため、Al含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
Nは、溶接熱影響部に破壊の基点となる窒化物を形成し、溶接継手強度を低下させる有害な元素である。そのため、本発明ではN含有量を可能な限り低減することが好ましいが0.01%までは許容できるため、0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下である。
Bは、本発明において重要な元素である。先述のとおり本発明では、フェライト結晶粒内に微細な炭化物を析出させることで所望の熱延鋼板強度(引張強さ:850MPa以上)を確保するが、鋼板の溶接熱影響部では炭化物が溶解または粗大化して強度低下が生じ易い。この溶接熱影響部における炭化物の溶解や粗大化を抑制するうえでは、Bを含有させることが有効である。B含有量が0.0005%未満では、上記効果が十分に発現しない。一方、Bは焼き入れ性向上効果を有する元素であるため、B含有量が0.005%を超えると低温変態相が生成し易くなってしまう。したがって、B含有量は0.0005%以上0.005%以下とする。好ましくは0.0008%以上0.002%以下である。
Tiは、Cと結合して微細な炭化物を形成し、鋼板の高強度化に寄与する元素である。引張強さ850MPa以上の熱延鋼板強度を得るには、Ti含有量を0.05%以上とする必要がある。一方、Ti含有量が0.25%を超えると、炭化物が粗大化して溶接継手強度が低下する。したがって、Ti含有量は0.05%以上0.25%以下とする。好ましくは0.05%以上0.20%以下である。
なお、鋼板強度は炭化物の析出量に比例するという観点から、Ti含有量の8割以上を炭化物として析出させて固溶Tiを抑制することが好ましい。
Vは、Tiと同様、Cと炭化物を形成して鋼板の高強度化に寄与する元素である。また、Vは、Tiと結合し微細な複合炭化物を形成するため、鋼板の高強度化に有効である。所望の熱延鋼板強度(引張強さ:850MPa以上)を確保するためには、V含有量を0.01%以上とする必要がある。一方、Vは、鋼中の溶解度が高いため、V含有量が過剰になると完全に析出しきれず固溶分として鋼中に残存する。そして、V含有量が0.5%を超えると、鋼板の溶接時、溶接熱履歴を受けた部分で固溶Vが粗大な炭化物を形成し、溶接熱影響部の強度低下を招来する。したがって、V含有量は0.01%以上0.5%以下とする。好ましくは0.01%以上0.40%以下である。
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51) ≦ 1.5 ・・・ (1)
([C]、[Ti]、[V]:各元素の含有量(質量%))
上記(1)式は、熱延鋼板の組織(マトリックス)を実質的にフェライト単相組織とし、且つ熱延鋼板の引張強さを850MPa以上とするために満足すべき要件であり、本発明において重要な指標である。
したがって、本発明では、([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51)を0.8以上1.5以下とする。好ましくは0.9以上1.4以下である。
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93) ≦ 1.5 ・・・ (2)
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))
Nbは、熱間圧延時にオーステナイトの再結晶を阻害することで、熱間圧延に続く冷却・巻取り工程においてオーステナイト→フェライト変態後のフェライト粒を細粒化するとともに、変態後にはフェライト粒内に微細な炭化物を形成することで熱延鋼板の高強度化に寄与する元素である。このような効果を得るには、Nb含有量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Nb含有量が0.2%を超えると、熱延鋼板を製造する際、熱間圧延前の鋼素材の加熱時に粗大なNb炭化物が完全に溶解せず、最終的に得られる熱延鋼板に粗大なNb炭化物が残存する場合がある。そして、この粗大なNb炭化物は鋼板強度の低下を招き、鋼板の引張強さを850MPa以上とすることが困難となる。したがって、Nb含有量は0.01%以上0.2%以下とすることが好ましい。また、0.01以上0.15以下とすることがより好ましい。
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))
先述のとおり、炭化物形成元素の合計含有量(原子%)に対するC含有量(原子%)が過剰になると、炭化物として析出しない固溶Cが多くなる結果、低温変態相が生成することに起因して溶接熱影響部に軟化域が生じ、溶接性が低下する。一方、炭化物形成元素の合計含有量(原子%)に対するC含有量(原子%)が少なくなると、炭化物形成元素と結合するCが不足し、所望の熱延鋼板強度(引張強さ:850MPa以上)とするために必要となる炭化物析出量を確保することができなくなる。そこで、Nbを含有する場合には、前記(1)式に代えて(2)式を満足することとする。
[Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93≧0.0031 … (3)
([Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%))
ここで、(3)式左辺の値を算出するに際し、鋼板がNbを含有しない場合には[Nb]をゼロとして算出するものとする。
Cr:0.1%以下
Crは、炭化物を構成し、更なる溶接継手強度ならびに鋼板強度の上昇に有効な元素である。しかし、Cr含有量が0.1%を超えると、粒界が鋭敏化して溶接性が低下する。したがって、Cr含有量は0.1%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05%以下である。
Niは、溶接部の靱性を向上させる効果を有する。しかし、Ni含有量が0.05%を超えると、低温変態相が生成するため溶接熱影響部での軟化が生じ、溶接性が低下する。したがって、Ni含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
Wは、熱安定性が良好な炭化物、すなわち、溶接熱履歴を受けても溶解、粗大化し難い炭化物を形成するため、溶接性の向上に有効な元素である。しかし、W含有量が0.05%を超えると、低温変態相が生成するため溶接熱影響部での軟化が生じ、溶接性が低下する。したがって、W含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
Moも、Wと同様に熱安定性が良好な炭化物を形成するため、溶接性の向上に有効な元素である。しかし、Mo含有量が0.05%を超えると、低温変態相が生成するため溶接熱影響部での軟化が生じ、溶接性が低下する。したがって、Mo含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
自動車車体の軽量化には、鋼板強度は大きい方が望ましい。また、溶接熱影響部における軟化量の小さい鋼板の引張強さが850MPa以上になると、自動車車体軽量化効果の他に溶接部の耐疲労性や引張強さが格段に改善されるため、一層望ましい。これらの要望に対し本発明は、上記のように炭化物を微細に分散させて強化する粒子分散強化を最大限活用する設計を行うとともに、溶接熱影響部における軟化現象を抑制する手段が講じられている。
本発明は、上記した組成の鋼素材(鋼スラブ)を加熱し、熱間圧延を施し、仕上げ圧延終了後、冷却し、巻き取り、熱延鋼板とする。この際、前記加熱の加熱温度を1100℃以上1350℃以下とし、前記熱間圧延の仕上げ圧延温度を820℃以上とし、熱間圧延終了後(仕上げ圧延終了後)3秒以内に強制冷却を開始し、20℃/s以上の冷却速度で700℃以上800℃以下の温度域まで冷却したのち冷却を停止し、2s以上25s以下の間放冷し、再度20℃/s以上の冷却速度で冷却し、550℃以上700℃以下の巻取り温度でコイル状に巻き取ることを特徴とする。
上記の如く得られた鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施すが、本発明においては、粗圧延に先立ち鋼素材を加熱して実質的に均質なオーステナイト相とし、粗大な炭化物を溶解する必要がある。鋼素材の加熱温度が1100℃を下回ると、粗大な炭化物が溶解しないため、熱間圧延終了後の冷却・巻取り工程で微細分散する炭化物の量が減じることとなり、最終的に得られる熱延鋼板の強度が著しく低下する。一方、上記加熱温度が1350℃を上回ると、スケールが噛み込み、鋼板表面性状を悪化させる。
仕上げ圧延温度が820℃を下回ると、仕上げ圧延中にフェライト変態が開始し、フェライト粒が伸展された組織となるうえ、部分的にフェライト粒の粒成長が進行した混粒組織となるため、鋼板強度が著しく低下する。したがって、仕上げ圧延温度は820℃以上とする必要がある。好ましくは850℃以上である。仕上げ圧延温度の上限は特に定める必要はないが、熱間圧延前の加熱温度、圧延通板速度、鋼板板厚などにより自ずと決定される。このため実質的には仕上げ圧延温度の上限は980℃である。
仕上げ圧延終了後の鋼板を高温に長時間保持すると、炭化物がひずみ誘起析出し、該炭化物が不均一に析出、成長しコイル面内の強度ばらつきの原因となる。このような強度ばらつきは安定した溶接継手強度が得られない原因となるので、本発明では、ひずみ誘起析出を抑制する目的で熱間圧延終了後速やかに強制冷却を開始する必要があり、仕上げ圧延終了後、少なくとも3s以内に冷却を開始する。好ましくは2s以内である。
上記のとおり、仕上げ圧延終了後の鋼板の高温に維持される時間が長いほど、ひずみ誘起析出による炭化物の粗大化が進行し易くなり、上記のように強度ばらつきの原因となる。そのため、仕上げ圧延後は急冷する必要があり、上記問題を回避するには20℃/s以上の平均冷却速度で冷却する必要がある。好ましくは30℃/s以上である。但し、仕上げ圧延終了後の冷却速度が過剰に大きくなると、次工程での冷却停止温度が700℃未満となり炭化物が過度に微細化することが懸念されるため、150℃/s以下とすることが好ましい。
先述のとおり本発明では、最終的に得られる熱延鋼板のマトリックス中に析出する炭化物の平均粒子径を5nm以上20nm以下とする必要がある。ここで、仕上げ圧延終了後の鋼板を上記した平均冷却速度:20℃/s以上で700℃未満にまで強制冷却すると、析出する炭化物の平均粒子径が極端に小さくなり、最終的に得られる熱延鋼板のマトリックス中に析出する炭化物の平均粒子径を5nm以上とすることが困難になる。一方、上記の強制冷却を800℃超の温度範囲で停止すると、析出する炭化物の平均粒子径が大きくなり過ぎてしまい、最終的に得られる熱延鋼板のマトリックス中に析出する炭化物の平均粒子径を20nm以下とすることが困難になる。したがって、上記強制冷却の停止温度は700℃以上800℃以下とする。好ましくは700℃以上750℃以下である。
本発明では、上記の如く700℃以上800℃以下の温度域で強制冷却を停止したのち放冷することで、所定の平均粒子径(5nm以上20nm以下)を有する炭化物の析出を促進する。ここで、放冷時間が2s未満では炭化物が十分に析出されない一方、放冷時間が25sを超えると炭化物が過度に粗大化する。したがって、放冷時間は2s以上25s以下とする。好ましくは2s以上15s以下である。なお、放冷中の鋼板温度は、700℃以上800℃以下に保持することが好ましい。
本発明では、上記の放冷により得られた炭化物の状態を維持する必要がある。ここで、上記放冷後の平均冷却速度が20℃/s未満であると、放冷によって得られた炭化物が粗大化し、最終的に得られる熱延鋼板のマトリックス中に析出する炭化物の平均粒子径を20nm以下とすることが困難となる。したがって、上記放冷後の平均冷却速度は20℃/s以上とする。好ましくは30℃/s以上である。但し、上記放冷後の平均冷却速度が150℃/sを超えると、後述する所望の巻取り温度に制御することが困難となるおそれがあるため、150℃/s以下とすることが好ましい。
巻取り温度が550℃未満では、低温変態相が生成し、溶接熱影響部で軟化が生じる。一方、巻取り温度が700℃を超えると、炭化物が粗大化し、熱延鋼板強度および溶接継手強度が低下する。そのため、巻取り温度は550℃以上700℃以下とする。好ましくは580℃以上680℃以下である。
更に、得られた熱延鋼板の一部(鋼板No.8,10,13)に対しては、焼鈍温度700℃の連続溶融亜鉛めっきラインに通板し、その後、460℃のめっき浴(めっき組成:Zn-0.13mass%Al)に浸漬し、次いで520℃で合金化処理を施してめっき材(GA材)とした。めっきは鋼板の表裏面の両方に形成され、めっき付着量は片面当たり45g/m2とした。
フェライト相の面積率は以下の手法により評価した。圧延方向に平行な断面の板厚中心部について、5%ナイタールによる腐食現出組織を走査型光学顕微鏡で400倍に拡大して10視野分撮影した。フェライト相は、粒内に腐食痕が観察されず粒界が滑らかな曲線で観察される組織である。フェライト相の面積率は画像解析によりフェライト相とベイナイトやマルテンサイト等のフェライト相以外を分離し、観察視野に対するフェライト相の面積率によって求めた。このとき、線状の形態として観察される粒界はフェライト相の一部として計上した。
フェライト相の結晶粒内の炭化物の平均粒子径は、得られた熱延鋼板の板厚中央部から薄膜法によってサンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(倍率:120,000倍)で観察を行い、100点以上の析出物について得られた析出物粒子径の平均によって求めた。この析出物粒子径を算出する上で、粒子径が1.0μm以上の粗大なセメンタイトや窒化物は含まないものとした。
得られた熱延鋼板から圧延方向と垂直方向にJIS13号B引張試験片を作製し、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠した引張試験を5回行い、平均の降伏強度(YS)、引張強さ(TS0)、全伸び(El)を求めた。引張試験のクロスヘッドスピードは10mm/minとした。
得られた熱延鋼板を用いてアーク溶接を行い、溶接サンプルを作成した。上記アーク溶接は、直径1.2mmのMGS-80のワイヤーを用いた炭酸ガスアーク溶接とした。上記アーク溶接の溶接条件は、溶接速度:80cm/min、溶接電流:220A、溶接電圧:25V、板隙:1mmの突き合わせ溶接とした。溶接後、ビード部断面を切り出し、その断面の板厚中央部について、0.5mm間隔で試験荷重1kgfのビッカース硬さ試験を行った。ビッカース硬さ試験により、母材の硬さHV0と溶接熱影響部での最小硬さHV1とを求め、両者の差(HV0−HV1)を求めた。
上記(iii)の溶接サンプルから、JIS13号B引張試験を作製し、上記(ii)と同じ条件で引張試験を行い、溶接性の評価を行った。JIS13号B引張試験の作製は、溶接サンプルの溶接ビード部が試験片評点間距離中央部の試験片幅方向に横切る条件とした。
溶接性の評価は、溶接サンプルの引張強さTS1と上記(ii)で測定された引張強さTS0(溶接前の試験片の引張強さ)の差TS0−TS1が20MPa以下であり、且つ引張試験後引張試験片の破断位置が母材であったものを溶接性良好(○)とした。一方、溶接サンプルの引張強さTS1と上記(ii)で測定された引張強さTS0(溶接前の試験片の引張強さ)の差TS0−TS1が20MPaを超えるもの、或いは引張試験後引張試験片の破断位置が溶接熱影響部であったものを溶接性不良(×)とした。
得られた結果を表3に示す。
Claims (10)
- 質量%で、
C :0.055%以上0.11%以下、 Si:0.4%以下、
Mn:0.5%未満、 P :0.02%以下、
S :0.01%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.01%以下、 B :0.0005%以上0.005%以下、
Ti:0.05%以上0.25%以下、 V :0.01%以上0.5%以下
を、C、TiおよびVが下記(1)を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径が5nm以上20nm以下である組織を有し、引張強さが850MPa以上であることを特徴とする、溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51) ≦ 1.5 ・・・ (1)
([C]、[Ti]、[V]:各元素の含有量(質量%)) - 前記組成に加えてさらに、質量%でNb:0.01%以上0.2%以下を、前記(1)式に代えて下記(2)式を満足するように含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93) ≦ 1.5 ・・・ (2)
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%)) - 前記組成に加えてさらに、質量%でCr:0.1%以下、Ni:0.05%以下、W :0.05%以下、Mo:0.05%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%でCa、Zr、Co、Hf、Sn、Sb、As、Mg、Zn、Cu、Pb、REMのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
- 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板。
- 質量%で、
C :0.055%以上0.11%以下、 Si:0.4%以下、
Mn:0.5%未満、 P :0.02%以下、
S :0.01%以下、 Al:0.1%以下、
N :0.01%以下、 B :0.0005%以上0.005%以下、
Ti:0.05%以上0.25%以下、 V :0.01%以上0.5%以下
を、C、TiおよびVが下記(1)を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材を、1100℃以上1350℃以下の温度に加熱し、仕上げ圧延温度を820℃以上とする熱間圧延を施し、熱間圧延終了後3秒以内に強制冷却を開始し、20℃/s以上の冷却速度で700℃以上800℃以下の温度域まで冷却したのち冷却を停止し、2s以上25s以下の間放冷し、再度20℃/s以上の冷却速度で冷却し、550℃以上700℃以下の巻取り温度でコイル状に巻き取り、フェライト相の面積率が95%以上であり、該フェライト相の結晶粒内の炭化物平均粒子径が5nm以上20nm以下である組織を有し、引張強さが850MPa以上である熱延鋼板とすることを特徴とする、溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51) ≦ 1.5 ・・・ (1)
([C]、[Ti]、[V]:各元素の含有量(質量%)) - 前記組成に加えてさらに、質量%でNb:0.01%以上0.2%以下を、前記(1)式に代えて下記(2)式を満足するように含有することを特徴とする、請求項6に記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
記
0.8 ≦ ([C]/12)/([Ti]/48+0.7×[V]/51+[Nb]/93) ≦ 1.5 ・・・ (2)
([C]、[Ti]、[V]、[Nb]:各元素の含有量(質量%)) - 前記組成に加えてさらに、質量%でCr:0.1%以下、Ni:0.05%以下、W :0.05%以下、Mo:0.05%以下のいずれか1種以上を含有することを特徴とする、請求項6または7に記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%でCa、Zr、Co、Hf、Sn、Sb、As、Mg、Zn、Cu、Pb、REMのいずれか1種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする、請求項6ないし8のいずれかに記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 更に、めっき処理を施して表面にめっき層を形成することを特徴とする、請求項6ないし9のいずれかに記載の溶接性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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