JP5889566B2 - 転がり軸受およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来の技術では、機械損失の低減を目的にリップ部の接触抵抗を減らす技術が挙げられる。例えば、接触タイプのシールリップ接触面に、ショットピーニングを施すことで、その表面の最大粗さRyを2.5μm以下にし、シールトルクを低減することが提案されている(特許文献1)。
そこで本件出願人は、図10に示すように、トランスミッション用の軸受に必要な耐異物と低フリクションを両立した高摩耗性ゴムシール50を適用することで、自動車の省燃費化技術に寄与するアイテムとしていた。この高摩耗性ゴムシール50は、リップ先端部51が高摩耗性ゴム材料から成り、このリップ先端部51が対向する軌道輪周面52に対しリップ締代δ1をもって接触する。軸受の運転によりリップ先端部51が摩耗することで、トルク低減を図ると共に耐異物侵入性の向上を図っていた。しかし、このような高摩耗性ゴムシール50を適用した軸受であっても油潤滑下ではシール摩耗に時間が掛かる場合があった。すなわち従来の軸受では、リップ締代によっては、十分な押付け力が得られず、シール部材が十分に摩耗しないことがあった。
(1) シールトルクがなくなる。
(2) 従来品に対して、軸受の自己昇温が下がる。
(3) 軸受の自己昇温が下がることで、従来使用していたオイルよりもさらに低粘度のオイルを選択できる。
(4) トランスミッション全体の損失低減が見込める。
(5) ラビリンスすきまのため、軸受寿命に影響するような粒径の大きい異物が、軸受内に侵入することを防げる。
したがって、シールリップ部の締代にかかわらず、シール部材を十分にかつ確実に摩耗させて、低トルク化を図ることができると共に、軸受の耐異物侵入性の向上を図ることができる。
この発明における第1の転がり軸受の製造方法は、前記高摩耗材をゴム材または樹脂材とした転がり軸受の製造方法であって、前記高摩耗材がゴム材であり、前記シール部材は、前記ゴム材を加硫成形して形成する。
この発明における第2の転がり軸受の製造方法は、前記高摩耗材をゴム材または樹脂材とした転がり軸受の製造方法であって、前記高摩耗材が樹脂材であり、前記シール部材は、前記樹脂材を射出成形して形成する。
前記高摩耗材が、固体潤滑材、不織布、または軟鋼であっても良い。
前記シール部材本体の基端に、金属製から成る芯金が設けられ、この芯金が、前記一方の軌道輪に嵌合固定されるものとしても良い。この場合、例えば、弾性部材が芯金全体を覆うものより、シール部材の剛性を高めることができ、他方の軌道輪に押付け力をより安定して与えることが可能となる。
この実施形態に係る転がり軸受は、例えば、自動車のトランスミッションに用いられる。以下の説明は、シール部材の装着方法についての説明をも含む。図1に示すように、この転がり軸受は、軌道輪である内外輪1,2の軌道面1a,2aの間に複数の転動体3を介在させている。これら内外輪1,2および転動体3は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼や、マルテンサイト系のステンレス鋼等からなる。但し、これらの鋼に限定されるものではない。これら転動体3を保持する保持器4を設け、内外輪1,2間に形成される環状の軸受空間の両端をそれぞれシール部材5で密封している。この軸受内にはグリースが初期封入される。この転がり軸受は、転動体3を玉とした深溝玉軸受であり、この例では内輪1を回転輪とし、外輪2を固定輪とした内輪回転タイプとしている。ただしシール付き軸受としてアンギュラ玉軸受を適用することも可能である。また、内輪1を固定輪とし、外輪2を回転輪とした外輪回転タイプとすることも可能である。
これに対して本願発明のものは、図2(B)に示すように、シールリップ部9の先端を摩耗させるために、このシールリップ部9の突起部分12の先端に負荷を与えている。
《接触させない理由について説明する。》
リップ先端が内輪1と接触している部分に負荷されている押付け力はゴムの弾性のみを想定しており、軸方向突出部12cがリップ基端部10の外側面と接触させてしまうとゴムの弾性以外の負荷がかかり、回転抵抗があがってしまう。リップへの負荷は上がるので、摩耗の促進は期待できるかも知れないが、一方で外輪側のスリップを回避するために連れ回りトルクも上げる必要が出てくる。(内輪側のトルク>外輪側のトルクとなると外輪側でシールがすべりが生じるので、シール内径側のリップの摩耗はしない。)
前述のように、シールリップ部9を断面V字状の屈曲形状とし、シールリップ部9を内輪1の外周面1bに嵌合させることで、突起部分12に内輪1への反力つまり押付け力が作用する。換言すれば、シールリップ部9を、軸受空間に対する外側の面に逃がし凹部13が生じるように、径方向の中間部分となる腰部11で屈曲したV字状の屈曲形状とすることで、シールリップ部9は、腰部11で屈曲するばねのようになり、突起部分12を内輪1に摩耗可能な面圧で押付ける。内輪1が回転して突起部分12の摩耗が進むと、それに追従するように腰部11の曲がりがシール部材組付け前の状態に戻ろうとするため、突起部分12の摩耗が連続して進行する。内輪1に対するシールリップ部9の反力(「リップ反力」と言う場合がある)が「0」に近づくと、シールリップ部9の摩耗は完了し、最適なラビリンスすきまが形成される。
この構成によると、図3(B)に示すように、運転初期には接触タイプであったシール部材5が、図3(C)に示すように、運転数十分後には、摩耗により非接触または軽接触タイプのシール部材5となる。つまり軸受を回転状態で使用することで、シールリップ部9の突起部分12が摩耗する。このとき図3(B)に示すように、シールリップ部9の突起部分12の締代が運転に伴い変位しても、このシール部材5は、締代の変位に追従して内輪1に一定のラジアル方向の押付け力F1を与える。
(1)シールトルクが低減される。
(2)従来品に対して、軸受の自己昇温が下がる。
(3)軸受の自己昇温が下がることで、従来使用していたオイルよりもさらに低粘度のオイルを選択できる。
(4)トランスミッション全体の損失低減が見込める。
(5)ラビリンスすきまδsのため、軸受寿命に影響するような粒径の大きい異物が、軸受内に侵入することを防げる。
軸受呼び番号6207の深溝玉軸受について、本実施形態に係るシール部材を組み込んだ複数個の開発品のシール摩耗確認試験を行ったところ、以下のような結果を得た。試験条件は、ラジアル荷重:500N、回転速度:4000min−1、オイル条件:オートマチックトランスミッションフルードによる油浴、略称;ATF油浴とした。ここでシール部材5の突起部分12が摩耗して、接触圧が零と見なせる程度の軽接触となるシールトルク(起動トルク)のレベルは0.04N・mであり、非接触となるシールトルクのレベルは0.01N・mである。試験開始して予め定めた運転時間経過時に、各開発品の起動トルクを確認したところ、運転数十分後には、少なくとも軽接触となるシールトルクのレベルとなった。このようにシールトルクの低減を図ることができる。
図2(B)に示すように、シールリップ部9は、軸受空間に対する外側の面に逃がし凹部13が生じるように、径方向の中間部分となる腰部11で屈曲したV字状の屈曲形状としたため、シール部材5を軸受に組込むとき、組込み方向に沿ってシールリップ部9が弾性変形する。このため、シール部材5の軸受組込み時にシールリップ部9が軸受外部側に逃げ易くなり、シールリップ部9が不所望に反転することはない。
シールリップ部9は腰部11で屈曲するばねのような形状なので、シールリップ部9の突起部分12が摩耗可能な適度の反力が、この突起部分12に働く。軸受運転時に突起部分12の摩耗が進んでも、それに追従して腰部11の曲がりがシール部材組付け前の状態に弾性復帰しようとするので、リップ反力は急激に低下しない。また、図2(B)に示すように、シールリップ部9は腰部11で屈曲するが、逃がし凹部13があるので、シールリップ部9が大きな剛性を持たず、シールリップ部9と内輪1との接触部で過大な反力が働かない。これにより、図2(A)に示すように、シール部材5の外輪側つまりシール部材本体8の基端が、外輪シール溝2bに対しスリップすることを防ぐことができ、シールリップ部9の摩耗を阻害することはない。
突起部分12の摩耗が進んでも、急激にリップ反力が低下しない。
シールリップ部9全体が大きな剛性を持たないので、過大なリップ反力が働かない。
したがって、シールリップ部9の締代にかかわらず、シール部材5を十分にかつ確実に摩耗させて、低トルク化を図ることができる。これに共に、軸受の耐異物侵入性の向上を図ることができる。
図2(A)に示すように、弾性部材7が芯金6の全体を覆う構成としたため、シール部材本体8の基端にある弾性部材7の一部が、外輪2のシール溝2bに弾性変形した状態で固定される。これにより、外輪2とシール部材本体8の基端との密封性をより高めることができる。
なお、いずれかの実施形態に係る転がり軸受を、無断変速式トランスミッションや、手動変速式トランスミッションに用いても良い。
2…外輪
1a,2a…軌道面
3…転動体
5…シール部材
6…芯金
7…弾性部材
8…シール部材本体
9…シールリップ部
11…腰部
12…突起部分
13…逃がし凹部
Claims (10)
- 内外輪と、この内外輪の軌道面間に介在する複数の転動体と、前記内外輪間に形成される軸受空間を密封するシール部材とを備えた転がり軸受において、
前記シール部材は、シール部材本体の基端が内外輪のいずれか一方の軌道輪に固定され、シール部材本体の先端に、他方の軌道輪に対してラジアル方向に接するシールリップ部を有し、このシールリップ部の断面形状は、軸受空間に対する外側の面に逃がし凹部が生じるように、径方向の中間部分となる腰部で屈曲したV字状の屈曲形状であって、前記腰部よりも先端側の部分である突起部分が先端に至るに従って狭まる先細り形状であり、この突起部分の先端の軸方向位置を前記腰部の最小の軸方向幅内に設け、
前記シール部材は、このシール部材を軸受に組込んだ状態で、前記シールリップ部は前記腰部で屈曲し、前記突起部分の締代の変位に対し、前記他方の軌道輪に押付け力を与えるものとし、
前記シールリップ部の突起部分は、軸受を回転状態で使用することで、前記突起部分が摩耗して非接触となるかまたは接触圧が零と見なせる程度の軽接触となる高摩耗材からなり、前記シール部材は、前記突起部分の摩耗が進むと、それに追従するように前記腰部の曲がりがこのシール部材の組込み前の状態に戻ろうとするものとしたことを特徴とする転がり軸受。 - 請求項1において、前記高摩耗材をゴム材または樹脂材とした転がり軸受。
- 請求項2に記載の転がり軸受を製造する転がり軸受の製造方法であって、前記高摩耗材がゴム材であり、前記シール部材は、前記ゴム材を加硫成形して形成する転がり軸受の製造方法。
- 請求項2に記載の転がり軸受を製造する転がり軸受の製造方法であって、前記高摩耗材が樹脂材であり、前記シール部材は、前記樹脂材を射出成形して形成する転がり軸受の製造方法。
- 請求項1または請求項2において、前記シール部材は、環状の芯金と、この芯金の全体または一部を覆う弾性部材とを有し、シールリップ部は前記弾性部材からなるものとした転がり軸受。
- 請求項2に記載の転がり軸受を製造する転がり軸受の製造方法であって、前記シール部材は、前記芯金の全体または一部に、弾性部材を加硫成形または射出成形して形成する転がり軸受の製造方法。
- 請求項1において、前記高摩耗材が、固体潤滑材、不織布、または軟鋼である転がり軸受。
- 請求項1、2、5のいずれか1項において、前記シール部材本体の基端にゴム材から成る弾性部材が設けられ、この弾性部材が、前記一方の軌道輪に嵌合固定される転がり軸受。
- 請求項1、2、5、7のいずれか1項において、前記シール部材本体の基端に、金属製から成る芯金が設けられ、この芯金が、前記一方の軌道輪に嵌合固定される転がり軸受。
- 請求項1、2、5、7ないし請求項9のいずれか1項において、前記転がり軸受が、自動車のトランスミッションに用いられる転がり軸受。
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