本発明は、光通信システムや光情報処理システムにおいて用いられる半導体光変調器に関する。より詳細には、進行波型電極が構成された高い変調効率を持つ小型の半導体光変調器に関する。
スマートフォンをはじめとする新たなインターネット通信端末が幅広く普及する現在、携帯電話やインターネットを支える光通信の利用も爆発的に広がっている。光通信に対してはますますの高速化・大容量化が要請されている。光通信の高速・大容量化に対応するための技術として、波長の異なる複数の光信号を同時に利用することによって光ファイバーを多重利用する、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:以下WDM)光通信が利用されている。
WDM光通信システムの大容量化を実現するには、1波長あたりの伝送レートを増加することが有用である。伝送レートを増加するためには、簡単なものとして、光伝送路に送出する変調信号のシンボルレートを上げる方法がある。しかしながら、シンボルレートを上げる場合、変調によって占有周波数帯域幅もシンボルレートに比例して増大することになる。シンボルレートを増大させて行けば、やがては所定のグリッド間隔で並ぶ隣接チャネルとの符号間干渉が発生することなり、伝送特性の劣化が生じる。そのため近年では、シンボルレートを上げることなく、1シンボル当たりの信号多重度を上げることによって、システムの大容量化を実現する研究が盛んに行われている。
信号多重度を上げる方式として、例えば、1シンボルに2値(多重度2)を割り当てることによって伝送容量を2倍にするQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式や、1シンボルに4値(多重度4)を割り当てることによって伝送容量を4倍にする16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式、16APSK(Amplitude Phase Shift Keying)方式等の多値変調方式が知られている。
これらの多値変調を実装する場合には、通常、光変調器としてI/Q変調器が用いられる。I/Q変調器は直交変調器とも呼ばれ、お互いに直交する2つのチャネル(Iチャンネル、Qチャンネル)の光電界成分に独立して情報を付与できる変調器である。具体的な実現方法としては、例えばマッハツェンダ(MZ:Mach-Zehnder)変調器を並列に接続した特殊な構成をとる(例えば、特許文献1を参照)。
MZ変調器の代表的なものとしては、LiNbO3(LN)の誘電体を用いたLN変調器が広く用いられている。LN変調器では、直流または光周波数に比べて十分低い周波数の電界をLNへ印加することによって媒質の屈折率が変化する、電気光学効果を用いて動作する。しかしながら、材料の物理定数からLN変調器では必要な素子長が比較的長いものとなる。このため、LN変調器を含む光送信器モジュールが大きくなってしまう問題があった。
最近では、光送信器モジュールの小型化に向けて、半導体を用いたMZ変調器の開発も盛んに行われている。代表的な半導体MZ変調器の例としては、例えば、集中定数型電極を採用したp−i−n構造を有する光変調器(非特許文献1)が挙げられる。この光変調器では、光信号が伝播するコア層厚が比較的薄く、コア層に対して効率良く電界を印加することができる。しかしながら、その薄いコア層厚の故に、変調信号を加える電極などの静電容量Cの値が大きくなり、出力インピーダンス(抵抗R)との関係で決まるCR時定数による帯域制限によって、10Gbaudを超える伝送速度での高速動作は難しい。
また、半導体MZ変調器では、pクラッド層における光吸収も大きいため、低動作電圧化のため素子長を長くすることが困難であった。半導体MZ変調器の他の例として、高速動作可能にするために進行波電極を採用した構成のものも提案されている(非特許文献2)。しかしながら、この構成の半導体MZ変調器では、進行波型電極を動作させるために重要な、50Ωインピーダンス整合条件および電気と光との間の速度整合条件を満たすために、変調効率が下がってしまう問題があった。すなわち、進行波型電極が構成されている領域では、ある一定区間における一定の割合の部分には電極が光導波路上に形成されていない。したがって、電極が形成されていない部分では光導波路に電界を掛けることができず、変調に全く寄与しない領域(非変調領域)が存在する。このことは、進行波電極を採用した構成の半導体MZ変調器が、素子の単位長さ当たりの変調効率としては非効率であることを意味する。
本発明の光変調器は、コア層の構造にその特徴がある。本発明の光変調器では、半導体コア層として、光の伝搬方向に沿って、厚さの異なる2種類のコア層を周期的に配した構造を用いることを特徴としている。また、2種類のコア層の周期構造における繰り返しピッチ(長さ)は、変調器電極に加えられる電気信号の波長に対して十分小さい長さに設定する。コア層の周期構造の繰り返しピッチをこのように設定することによって、特性インピーダンスZ0や電気速度は、2種類のコア層のそれぞれの長さの割合に応じて加重平均された値とみなすことができる。
すなわち、本発明の光変調器は、第1の導電性半導体クラッド層と、ノンドープ半導体コア層と、第2の導電性半導体クラッド層とが順次積層して形成された導波路構造を備え、光の伝搬方向に沿って、前記半導体コア層が、第1の厚さを有する第1のコア層および第2の厚さを有する第2のコア層を含む、少なくとも2種類以上の異なる厚さのコア層が交互に形成された周期的構造を持つ。上記の2つのコア層の組成を異なるものとすることもできる。以下に、図面を参照しながら本発明の光変調器の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の光変調器の導波路構造を示す図である。図1の(a)は、導波路コアを含む光の進行方向の側面から見た断面図である。図1の(b)は、(a)におけるA−A´断面を光の進行方向に見た図である。尚、(b)におけるB−B´断面を見たものが(a)の断面図に対応している。
本実施例の光変調器では、半絶縁(SI)−InP基板101上に、n−InPクラッド層102、ノンドープの半導体コア層103、およびp−InPクラッド層104が、順次積層されて構成されている。半導体コア層103は光導波層として機能し、図1の(a)では、光信号は、例えば左端から右端に向かって半導体コア層103に沿って伝播する。半導体コア層103は、例えば、InGaAsPやInGaAlAsなどの材料系を用い、単一組成の四元混晶のバルク層または多重量子井戸層として構成することができる。さらに、多重量子井戸層と、その上下にあってバンドギャップが多重量子井戸層よりも大きくかつInP層よりも小さい値を持つ光閉じ込め層とを有する構造とすることもできる。また、これらの層の上下にノンドープのInP層をさらに挿入することも可能である。
上述の四元混晶のバルク層または多重量子井戸層のバンドギャップ波長は、使用する光波長において、電気光学効果が有効に作用し、かつ、光吸収が問題とならないように設定されている。また、光導波路は、図1の(b)に示すようにハイメサ導波路構造を有し、半導体コア層103へ電圧印加を行うため、p−InPクラッド層104およびn−InPクラッド層102の上部に、それぞれ電極105および電極106a、106bが設けられている。電極105と電極106a、106bとの間に電圧を印加すると、半導体コア層103において電気光学効果により屈折率変化が発生する。この結果、コア層103を伝播する光の位相が変化する。すなわち、コアの伝播光に対して位相変調を加えることができる。
高速変調が可能な光変調器を実現するためには、進行波型電極構造が有用である。よく知られているように、進行波型電極構造では、インピーダンス整合および光変調器における光と電気との間の速度整合が重要となる。電気信号の伝送線路モデルにおいて、特性インピーダンスZ0および伝搬定数(位相速度)γは、それぞれ次式で表される。
ここで、R、G、L、Cは、それぞれ、伝送線路の単位長さの抵抗、コンダクタンス、インダクタンス、静電容量を表す。RおよびGが十分小さいと考えられる場合には、上式は下のように簡略化される。
上式(3)および(4)によれば、光変調器の静電容量成分Cを制御することにより特性インピーダンスZ0または電気速度γを調整することができることを意味している。すなわち、変調効率を最大にする進行波型電極構造の決定にあたっては、ノンドープの半導体コア層103の厚さおよび導波路幅を適切に設計することが鍵となる。
より具体的なインピーダンス整合条件を考えると、光変調器に関連して使用される一般的な外部電気回路の特性インピーダンスである50Ωから±10Ω程度の誤差が許容できる。また、一般に光変調器は低電圧で駆動できることが求められている。このため、ノンドープコア層の光閉じ込め係数が極端に小さくならない限りは、ノンドープコア層の厚さはできるだけ薄くすることが好ましい。コア層を薄くすることによって、静電容量Cが大きくなる。
また、半導体は、LNと同様に1次の電気光学効果(ポッケルス効果)と、さらにフランツケルディシュや量子閉じ込めシュタルク効果による2次の電気光学効果とを有するという特徴がある。ノンドープコア層を薄くすることによって電界強度が上げれば、それだけ1次の電気光学効果以上の変調効率の上昇が見込める。ところが、光変調器の特性インピーダンスは、式(1)のように、定性的に静電容量Cの平方根に反比例する。このため、ノンドープコア層があまりに薄いと、特性インピーダンスZ0が逆に小さくなり過ぎてしまう。すなわち、特性インピーダンスZ0と変調効率との間で、トレードオフが発生してしまう。
一方、速度整合の度合いによる周波数帯域fBWは、次式によって表される。
ここで、cは光速であり、noptは光の群屈折率であり、nμは電気の屈折率であり、Lは電極長である。
光の群屈折率noptは、3.4〜3.7程度であり、所望の周波数帯域および電極長により、許容される電気の屈折率の範囲は決定される。例えば、帯域を40GHzで電極長3mmとすると、光の群屈折率と電気の屈折率との差(比)は、±1.1程度となる。なお、先の式(4)より定性的に半導体光導波層の静電容量Cを大きくすると、電気の速度γは遅くなる、すなわち、電気の屈折率は大きくなる。
図2は、ノンドープ半導体コア層の厚さが0.4μmと0.7μmと1.0μmの場合において、導波路幅に対する特性インピーダンスZ0および電気の屈折率をそれぞれ示したグラフである。
本発明の光変調器では、半導体コア層103として、光の伝搬方向に沿って、厚さの異なる2種類のコア層を周期的に配した構造を用いることを特徴としている。すなわち、第1の導電性半導体クラッド層102と、ノンドープ半導体コア層103と、第2の導電性半導体クラッド層104とが順次積層して形成された導波路構造を備え、光の伝搬方向に沿って、半導体コア層103が、第1の厚さを有する第1のコア層および第2の厚さを有する第2のコア層を含む、少なくとも2種類以上の異なる厚さのコア層が交互に形成された周期的構造を持つ。コア層の種類は2つだけに限られず、3以上の異なる厚さを持っていて、これらの異なる厚さの導波路を周期的に配した繰り返し構造を持つ場合であっても良い。
コア層が2種類の場合を例にすると、2種類のコア層の周期構造における繰り返しピッチ(長さ)は、変調器電極に加えられる電気信号の波長に対して十分小さい長さに設定する。例えば、電気信号の波長に対して、繰り返しピッチを最大で1/10程度までの長さに留めておくのが好ましい。具体例を挙げれば、電気信号を40GHzとするとき、その波長は真空中で7.5mmとなる。さらに、電気信号に対する媒質の屈折率を3〜4ぐらいとすると、伝送線路上(媒質中)では、電気信号の波長は1.8mm〜2.5mm程度の長さとなる。ここで、繰り返しピッチを、最大で電気信号の波長の1/10の長さまで許容するとすれば、180μm〜250μmの範囲となる。概ね、電気信号の波長は、伝送線路上では数ミリ程度となるので、最大で1/10の長さまで許容するとすれば、繰り返しピッチは数百ミクロン(μm)程度までが好ましい。
コア層の周期構造の繰り返しピッチをこのように設定することによって、特性インピーダンスZ0や電気速度は、2種類のコア層のそれぞれの長さの割合に応じて加重平均された値とみなすことができる。
例えば、厚い半導体コア層部の厚さを1.0μm、薄い半導体コア層部の厚さを0.4μm、導波路の幅を1.5μmとし、その長さの割合を1:1とした場合を考える。このとき、特性インピーダンスZ0はおよそ40Ω、電気の屈折率はおよそ3.8程度となり、インピーダンス整合条件および速度整合条件のいずれも、許容値内に収まることになる。
半導体コア層を、上記周期構造の例の加重平均値である0.7μmの均一の厚さとし、同じ導波路幅で形成した場合、特性インピーダンスZ0はおよそ40Ω程度、電気の屈折率はおよそ3.7程度となる。均一の厚さを持つ従来技術のコア層の構造の場合も、2つのコア層厚さを周期的に配した構造とほぼ同様の値が得られる。しかしながら、ここで注目すべきは、電極に変調信号電圧を印加した時に単位長さ当たりに受ける屈折率変化Δnの差異である。屈折率変化Δnは、コア層に印加される電圧E(V)との関係で次式の関係を持つ。
ここで、aは1次の電気光学効果(ポッケルス効果)の係数、bは2次の電気光学効果の係数である。簡単のために半導体コア層に1V印加したとして、コア層の繰り返し構造の1周期分で受ける屈折率変化は、式(6)に基づくと、次の数値に比例する。
(1/1+1/0.4)a ×106 +((1/1)2 +(1/0.4)2)b×1012
=3.5a ×106 + 7.25b × 1012
一方、従来技術のコア層が均一の構造で上記1周期分に相当する長さで受ける屈折率変化は、次の数値に比例する。
(1/0.7) ×2a × 106 + (1/0.7)2×2b × 1012
=2.86a× 106 + 4.08b × 1012
上記の2つの数値を比較すれば、光学係数a、bのいずれに関しても、その比例項は、2種類のコア層を周期的に配している本発明の構成(3.50および7.25)の方が、従来技術の加重平均値の厚さで均一に半導体コア層を形成する構成(2.86および4.08)よりも大きい。したがって、屈折率変化Δnは、本発明の構成のほうが大きく、変調効率が良いことがわかる。このように、本発明の光変調器のコア層構成によれば、進行波型電極構成で重要なインピーダンス整合条件および速度整合条件を満たし、かつ、従来技術の構成と比べてより高変調効率で小型の半導体MZ変調器が実現できる。
図1に示した本発明の光変調器における、光の伝搬方向に沿って厚さの異なる半導体コア層は、次のような手順で形成できる。一例として、まず、厚い半導体コア層103を全面に結晶成長したのち、ドライエッチングやウェットエッチングによって一部を選択エッチング除去して、薄いコア層を形成する。その後、上部半導体クラッド層104を一括成長することによって形成することができる。
また、バットジョイント技術を用いて、半導体コア層の一部を別のバンドギャップ波長の組成のものや層構造の異なるものに置き換えても良い。すなわち、第1のコア層および第2のコア層の組成が異なるものとすることができる。さらに、特性インピーダンスや速度を微調整するために、導波路幅も均一でなく光の導波方向に変化させても良い。尚、本実施例では、導波路構造として、ハイメサ導波路構造を用いているが、これに限らず、リッジ導波路構造を用いても良い。また、光導波路を形成する材料は、InP系材料に限定されるものではなく、例えば、GaAs基板と整合する材料系を用いても構わない。
なお、光導波路のシングルモード条件と伝搬損失の観点、ならびに、インピーダンス整合条件および速度整合条件を満たすことを考えると、光導波路幅は、1.2μm〜2.5μm程度、ノンドープ半導体コア層厚は、0.4μm〜2.0μm程度で調整されることが好ましい。
また、アーム導波路が2本以上による干渉計を構成した場合でも適用可能であるので、本発明に特有のコア層の構成は、本実施例に示したアーム導波路が2本の場合だけには限定されない。
以上述べたように、本発明の光変調器は、半導体コア層103として、光の伝搬方向に沿って、厚さの異なる2種類のコア層を周期的に配した構造を用いることによって、従来技術のコア層構造を持つ光変調器と比べて、進行波型電極構成で重要なインピーダンス整合条件および速度整合条件を満たしながら、かつ、従来技術の構成と比べてより高変調効率で小型の半導体変調器を実現できる。
図3は、本発明の第2の実施例の光変調器の導波路構造を示す図である。図3の(a)は、導波路コアを含む光の進行方向の側面から見た断面図である。図3の(b)は、(a)におけるA−A´断面を光の進行方向に見た図である。尚、図3の(b)におけるB−B´断面を見たものが(a)の断面図に対応している。実施例1の光変調器との相違点は、半導体クラッド層の層構造にあり、それ以外の構成は実施例1と同様である。したがって、以下では、本実施例に関する特有の層構造について絞って説明する。
本実施形例の光変調器では、SI−InP基板301上に、n−InPクラッド層302、ノンドープの半導体コア層303、p−InPクラッド層304およびn−InPクラッド層305が順次積層されて構成されている。半導体コア層303は、光導波層として機能し、図1の(a)では、光信号は、例えば左端から右端に向かって半導体コア層103に沿って伝播する。半導体コア層303は、例えば、InGaAsPやInGaAlAsなどの材料系を用い、単一組成の四元混晶のバルク層や多重量子井戸層で構成することができる。さらに、多重量子井戸層と、その上下にバンドギャップが多重量子井戸層よりも大きくかつInP層よりも小さい値を持つ光閉じ込め層とを有する構造とすることもできる。また、これらの層の上下にノンドープのInP層を挿入することも可能である。
上述の四元混晶のバルク層や多重量子井戸層のバンドギャップ波長は、使用する光波長において、電気光学効果が有効に作用し、かつ、光吸収が問題とならないように設定されている。また、光導波路は、図3の(b)に示すようにハイメサ導波路構造を有し、半導体コア層303へ電圧印加を行うため、n−InPクラッド層305およびn−InPクラッド層302の上部に、それぞれ電極306と電極307a、307bが設けられている。ここで、電極307a、307bをグランドとし、電極306に負のバイアス電圧を印加した場合を考える。このとき、負の印加電圧によってn−InPクラッド層305から電子が半導体コア層303側へ流れ込もうするが、p−InPクラッド層304がポテンシャルバリアとなり、電子の流入をブロックする。これにより、半導体コア層303に効率的に電界を印加することが可能となり、半導体コア層303における電気光学効果によって屈折率変化が発生する。この結果、コア層を伝播する光の位相が変化する。すなわち、コアの伝播光に対して位相変調を加えることができる。
したがって、本実施例の光変調器は、第1の導電性半導体クラッド層および第2の導電性半導体クラッド層の両方がn型半導体であって、ノンドープ半導体コア層と第1の導電性半導体クラッド層との間、または、ノンドープ半導体コア層と第2の導電性半導体クラッド層との間の少なくとも一方に、p型の第3の導電性半導体クラッド層が挿入されている構成を持つ。
また、本実施例では、実施例1の構成に比べて光吸収損失の大きなp型層が薄くなっている。この薄いp−InPクラッド層304によって、光フィールドとpクラッド層304とのオーバーラップが小さくなる。一般に、光フィールドがpクラッド層の領域に掛るほど損失が増大する。このため、本実施例の構成に拠れば、実施例1と比べてより低挿入損失の光変調器が実現できる。なお、本実施例では、半導体コア層303とn−InPクラッド層305の間にp−InPクラッド層を挿入した構成例を示したが、半導体コア層303とn−InPクラッド層302との間にp−InPクラッド層を挿入しても良い。この場合、印加電圧の符号は反転させて動作させる。さらに、半導体コア層303とn−InPクラッド層305の間および半導体コア層303とn−InPクラッド層302の間のどちらにもp−InPクラッド層を挿入して動作させることも可能である。
本実施例の光変調器でも、半導体コア層として、光の伝搬方向に沿って、厚さの異なる2種類のコア層を周期的に配した構造を用いることによって、従来技術のコア層構造を持つ光変調器と比べて、進行波型電極構成において重要なインピーダンス整合条件および速度整合条件を満たしながら、かつ、従来技術の構成よりも高変調効率で小型の半導体変調器を実現することができる。
図4は、本発明の第3の実施例の光変調器の導波路構造を示す図である。図4の(a)は、導波路コアを含む光の進行方向の側面から見た断面図である。図4の(b)は、(a)におけるA−A´断面を光の進行方向に見た図である。尚、(b)におけるB−B´断面を見たものが(a)の断面図に対応している。本実施例の光変調器の構成の第1の実施例との相違点は、半導体クラッド層の層構造にあり、それ以外の構成は実施例1と同様である。したがって、以下では、本実施例に関する特有の層構造について絞って説明する。
本実施例の光変調器では、SI−InP基板401上に、n−InPクラッド層402、ノンドープの半導体コア層403、ノンドープのInAlAsクラッド層404およびn−InPクラッド層405が順次積層されて構成されている。ノンドープの半導体コア層403は光導波層として機能し、図4の(a)では、光信号は、例えば左端から右端に向かって半導体コア層403に沿って伝播する。半導体コア層403は、たとえば、InGaAsPやInGaAlAsなどの材料系を用い、単一組成の四元混晶のバルク層または多重量子井戸層で構成することができる。さらに、多重量子井戸層と、その上下にバンドギャップが多重量子井戸層よりも大きくかつInP層よりも小さい値を持つ光閉じ込め層とを有する構造とすることもできる。また、これらの層の上下にノンドープのInP層を挿入することも可能である。
上述の四元混晶のバルク層または多重量子井戸層のバンドギャップ波長は、使用する光波長において、電気光学効果が有効に作用し、かつ、光吸収が問題とならないように設定されている。また、光導波路は、図4の(b)に示すようにハイメサ導波路構造を有し、半導体コア層403へ電圧印加を行うため、n−InPクラッド層405およびn−InPクラッド層402の上部に、それぞれ電極406および電極407a、407bが設けられている。
InAlAsは、InPに対して電子親和力が小さく、伝導体バンド不連続(文献値で0.39eV)により電子に対するポテンシャルバリアとして機能する。よって、電極407a、407bをグランドとし、電極406に負のバイアス電圧を印加した場合を考える。このとき、負の電圧を印加することによって、n−InPクラッド層405から、電子が半導体コア層403側へ流れ込もうするが、ノンドープのInAlAs層404がポテンシャルバリアとなり、電子の流入をブロックする。これにより、半導体コア層403に効率的に電界を印加することが可能となり、半導体コア層403における電気光学効果により屈折率変化が発生する。この結果、コア層403を伝播する光の位相が変化する。すなわち、コア層の伝播光に対して位相変調を加えことができる。
すなわち、本実施例の光変調器は、第1の導電性半導体クラッド層および第2の導電性半導体クラッド層の両方がn型半導体であって、ノンドープ半導体コア層と第1の導電性半導体クラッド層との間、または、ノンドープ半導体コア層と第2の導電性半導体クラッド層との間の少なくとも一方に、第3のノンドープクラッド層もしくはp型の半導体クラッド層が挿入され、ノンドープ半導体コア層と、第3のノンドープクラッド層もしくはp型の半導体クラッド層とがヘテロ接合を構成し、前記ヘテロ接合の接合面において前記第3の半導体クラッド層の電子親和力は前記ノンドープ半導体コア層の電子親和力に比べ小さいことを特徴とする。
本実施例の光変調器は、実施例1または実施例2と比べて、光吸収損失の要因となるp型層が存在していない。このため、実施例1または実施例2よりもさらに低挿入損失の光変調器が実現できる。なお、本実施例では、半導体コア層403とn−InPクラッド層405の間にInAlAsクラッド層を挿入した構成例を示したが、半導体コア層403とn−InPクラッド層402との間にInAlAsクラッド層を挿入しても良い。この場合、印加電圧の符号は反転させて動作させる。さらに、半導体コア層403とn−InPクラッド層405の間および半導体コア層403とn−InPクラッド層402の間のどちらにもp−InAlAsクラッド層を挿入しても動作させることも可能である。また、より耐圧特性を向上(ブレークダウン電圧向上)させるために、InAlAs層をp型層としても良い。
本発明の光変調器でも、半導体コア層として、光の伝搬方向に沿って、厚さの異なる2種類のコア層を周期的に配した構造を用いることによって、従来技術のコア層構造を持つ光変調器と比べて、進行波型電極構成において重要なインピーダンス整合条件および速度整合条件を満たしながら、かつ、従来技術よりも高変調効率で小型の半導体変調器を実現することができる。
実施例1から実施例3においては、本発明の半導体光変調器で使用される導波路構造における特徴的なコアの構成に焦点を絞って説明をしてきた。次に、この導波路構造を用いたマッハツェンダ型光変調器について説明する。本実施例におけるマッハツェンダ型光変調器は、実施例1から実施例3で説明をしてきた導波路構造の少なくともいずれかを備えている。
図5は、本発明の第4の実施例の2電極型のマッハツェンダ変調器の構成を示す図である。図5のマッハツェンダ変調器501では、CW光の入力光が左端部の入力導波路に与えられ、本発明に特徴的なコア層を持つ光導波路で変調を受けた後で、出力光として右端の出力導波路から出力される。入力光を2つに分岐する手段としてのMMI(Multi-Mode Interference)カプラ502の2つの出力端にはそれぞれ、本発明の各実施例で示した光変調導波路503a、503bが連結されている。光変調導波路503a、503bの出力端はそれぞれ、2つの入力光を合波する手段としてのMMIカプラ504の2つの入力端に連結されている。
上述のように実施例1〜実施例3のいずれかの導波路構造を用いて、マッハツェンダ変調器を構成することができる。すなわち、マッハツェンダ変調器は、入射された信号光を分岐させる光分岐手段502と、前記分岐手段からの分岐された信号光がそれぞれ伝播する、実施例1〜3のいずれかの導波路構造を有する少なくとも2本の導波手段503a、503bと、前記少なくとも2本の導波手段の各々で高周波電気信号により変調を受けた変調光を合流させる光合流手段504とを備える。
マッハツェンダ変調器501の基板上に形成された、コア層より基板側(下方)にある第1の半導体クラッド層の所定の領域に、電極506a、506b(106、307、407に相当)が設けられる。図5に示した電極506a、506bは、先の実施例における電極106a、106b、307a、307b、407a、407bに相当する。光変調導波路503a、503b上の所定の領域に高周波信号を印加する電極505a、505bが設けられている。図5に示した電極505a、505bは、先の実施例における電極105、306、406に相当する。
図5に示した構成において、MMIカプラ502の一方の入力端から入力光が入力されると、この入力光はMMIカプラ502によって2つに分岐される。分岐光のそれぞれは、光変調導波路503a、503bに導かれる。このとき、電極505aおよび電極506aにより、光変調導波路503aの変調領域に印加された電圧に基づいて位相変調導波路503aを通過する分岐光の位相を変調する。同様に、電極505bおよび電極506bにより、光変調導波路503bの変調領域に印加された電圧に基づいて位相変調導波路503bを通過する分岐光の位相を変調する。2つの位相変調導波路で変調された各変調光は、MMIカプラ504によって合波され、MMIカプラ504の一方の出力端から変調光が出力される。本実施例の半導体光変調器によれば、半導体変調器の持つ小型化された構成の特徴を保ちながら、従来技術よりも高い変調効率を実現するマッハツェンダ型光変調器を提供することができる。
図5に示した構成では、1つの変調導波路に対して、2つの電極を用いて変調信号を差動駆動するよう動作する。すなわち、第1の導電性半導体クラッド層に接続された第1の電極506a、506bと、第2の導電性クラッド層に接続された第2の電極505a、505bとで構成された進行波型電極が形成されている。しなしながら、本発明のマッハツェンダ型光変調器は、単電極を用いたシングルエンド駆動によっても動作させることができる。
図6は、本発明の第4の実施例の単電極型のマッハツェンダ変調器の構成を示す図である。図6において、入力光を2つに分岐する手段としてのMMIカプラ602の2つの出力端にはそれぞれ、実施例1から実施例3のいずれかの光変調導波路603a、603bが連結されている。光変調導波路603a、603bの出力端はそれぞれ、2つの入力光を合波する手段としてのMMIカプラ604の2つの入力端に連結されている。
図5に示したマッハツェンダ変調器と比較すれば、図6のマッハツェンダ変調器601は、電極の構成が相違している。光変調導波路603a、603bの、コア層の表面側(上方)にある第2の半導体クラッド層上に、それぞれ電極605a、605bが設けられる。電極605a、605bでインピーダンス整合条件や速度整合条件を満たした進行波型電極を形成することができる。
図6のような構成において、MMIカプラ602の一方の入力端から入力光が入力されると、この入力光はMMIカプラ602にて2つに分岐され、分岐光はそれぞれ、光変調導波路603a、603bに導かれる。このとき、電極605aと電極605b間に印加された電圧に基づいて、位相変調導波路603aおよび603bを通過する分岐光の位相を変調する。このとき、電極605aと電極605bのいずれか一方をグランドに接続し、他方に高周波変調信号を印加する。変調された光は、MMIカプラ604にて合波され、MMIカプラ604の一方の出力端から出力される。本実施例の半導体光変調器によれば、半導体変調器の持つ小型化の特徴を持ちながら、従来技術よりも高い変調効率を実現するマッハツェンダ型光変調器を提供することができる。
以上詳細に述べてきたように、本発明によって、インピーダンス整合条件および電気と光との間の速度整合条件を満たし、かつ、非変調領域の少ない、高効率で小型の進行波型の半導体光変調器を提供することができる。