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JP5907553B2 - スピーカ用振動板の製造方法 - Google Patents
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本発明は、音響機器の一種であるヘッドホンやマイクロホンなどの電気音響変換器に用いられるスピーカ用振動板の製造方法に関する。
ヘッドホンやイヤホンは、日常生活において化粧品、整髪料、医薬品や飲料水・ソース・油などの食料品類、洗剤などの様々な(広義の)化学薬品が付着する可能性があり、スピーカ用振動板材料の溶解、膨潤などの異常による音響特性の変化が発生する虞がある。このため、スピーカ用振動板に用いられる材料は、たとえこれらの化学薬品類が付着しても製品の特性が変化せずに安定であることが要求される。
しかし、これらの化学薬品類に対して安定な材料は限られており、安定な材料で形成しても製品特性が満足されるとは限らない。すなわち、スピーカ用振動板には分割振動や共鳴による固有振動を少なくして変換効率が良いことが求められ、高ヤング率で内部損失が大きく、かつ軽量な素材である必要がある。このような種々の要求を十分に満足する材料はほとんどないため、通常は製品特性を満足する材料に対して、化学薬品類に接触しても影響を受けないようにする表面処理が施されている。
例えば特許文献1には、振動板材料に対して物性向上の目的で表面処理することが開示されている。この特許文献1の技術では、基材に天然絹繊維を用い、表面に化学的蒸着法により金属層を設け、熱架橋型樹脂のコーティングを施している。これにより、基材の内部損失が高く、また剛性を高めることができるため歪みが少なくなり、耐熱性や耐候性を向上することができる。
特開平5−183982号公報
上記特許文献1の技術は、スピーカ用振動板の表面に熱架橋型樹脂をコーティングするため、化学薬品類の接触に対して安定化させる効果も得られることが推測できる。しかしながら、剛体材料の物性向上が本来の目的であり、剛性を有する振動板胴体部には有効であるが、エッジ部を柔軟材料で形成した場合には剛性が上がることで最低共振周波数が高くなってしまう。
すなわち、フリーエッジタイプの振動板では、異常共振が発生しない程度の剛性を有する材料を用いた振動板胴体部と、最低共振周波数を下げるためにスティフネスの低い材料を用いたエッジ部との2ピース構造にすることで音質の向上を図っているが、熱架橋型樹脂のコーティングによってエッジ部の剛性が高くなると最低共振周波数が高くなり、音質の低下を招く。
化学薬品類の接触に対して安定化させる効果があり柔軟材料の剛性に影響を与えにくい処理として、例えばフッ素処理、シリコーン処理などが知られているが、これらの処理方法は、溶液タイプが一般的であり、しかも溶媒が有機溶剤のタイプが多く処理により基材材料が溶解、膨潤してしまう。
このため、柔軟材料に対して化学薬品類に対する安定化を図ろうとするとスピーカ用振動板の音響特性が変化する、という課題がある。
本発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、音響特性の変化を抑制しつつ、柔軟材料で形成されたエッジ部の化学薬品類に対する安定化を図れるスピーカ用振動板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明のスピーカ用振動板の製造方法は、スピーカ用振動板10における柔軟材料で形成されたエッジ部12表面に、化学気相蒸着法によりSiO、SiON、及びSiNのいずれかの皮膜13を形成したことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法において、前記化学気相蒸着法は、誘導結合型プラズマCVD法であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2いずれか1項記載のスピーカ用振動板の製造方法において、前記エッジ部12の柔軟材料は、加硫ゴム、エラストマー、織布もしくは不織布基材にゴムをコーティングした材料のいずれかを含むことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載のスピーカ用振動板の製造方法において、前記無機化合物の皮膜13の膜厚は、25nm以上、400nm以下、好ましくは50nm〜200nmの範囲であることを特徴とする。
請求項1に係る本発明によれば、振動板における柔軟材料で形成されたエッジ部表面に、化学薬品類に対して影響がないSiO、SiON、及びSiNのいずれかの無機化合物の皮膜を形成したので、エッジ部に要求される製品特性の変化を抑制しつつ化学薬品類に対する安定化を図れる。また、化学気相蒸着法により皮膜を形成するので、溶解、膨潤、変形などの製品特性変化を与えない処理を行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、誘導結合型プラズマCVD法を用いることで常圧、低温処理が可能であり、エッジ部の柔軟材料の変質や特性変化を抑制できる。
請求項3に記載したように、エッジ部の柔軟材料は、加硫ゴム、エラストマー、織布もしくは不織布基材にゴムをコーティングした材料を用いることができる。
請求項4に係る発明によれば、皮膜の膜厚を適切な範囲としたので、化学薬品類に対して耐性が得られかつ製品特性にも影響がない。
本発明の実施例に係るスピーカ用振動板の製造方法について説明するための工程図である。 図1に示した製造方法で作製された振動板を示しており、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A線矢示断面図である。 図2に示した振動板を用いたスピーカ(ヘッドホン用ドライバ)の構成例を示す断面図である。 無機化合物の皮膜の厚さと化学薬品類に対する耐性との関係について説明するための図である。 無機化合物の皮膜の厚さと音響特性(最低共振周波数)との関係について説明するための図である。
本発明は、スピーカ用振動板における柔軟材料で形成されたエッジ部表面に、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、無機化合物の皮膜を形成するものである。振動板胴体部とエッジ部は別の製造工程で形成し、エッジ部表面に無機化合物の皮膜を形成した後、振動板胴体部の外周縁にエッジ部を接着剤などにより接着、あるいは熱圧着により接合して振動板を形成する。
柔軟材料で形成されたエッジ部表面に、化学薬品類に対して影響がない無機化合物の皮膜を形成することにより安定化を図れる。上記無機化合物の皮膜の膜厚を適切に設定することにより、振動板としての音響特性の変化を抑制できる。また、化学気相蒸着法により皮膜を形成するので、溶解、膨潤、変形などの製品特性の変化を与えない処理を施すことができる。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るスピーカ用振動板の製造方法について説明するための工程図である。本例では、振動板胴体部とエッジ部を別の製造工程で形成して接合するフリーエッジ構造の製造方法を示している。図2は、図1に示した製造方法で作製された振動板を示しており、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A線矢示断面図である。
図1に示すように、本発明の実施例に係るスピーカ用振動板の製造方法は、(a)振動板胴体部の製造工程、(b)エッジ部の製造工程、(c)エッジ部表面への無機化合物の皮膜形成工程、(d)振動板胴体部とエッジ部の接合工程などからなる。ここで、(a)の振動板胴体部の製造工程と(b)のエッジ部の製造工程はどちらを先に行っても良い。
(a)振動板胴体部の製造工程
振動板胴体部11には、紙系、高分子系、金属系、複合化系及びセラミックス系など種々の材料を用いることができ、周知の製造方法により振動板胴体部11を製造する。紙系の材料を例に取ると、パルプを抄紙、乾燥、加熱プレスするなどして作製する。この際、パルプを主材料とし、必要とする音響特性に応じて他の副材料を強化材として混抄しても良い。高分子系の材料では、ポリエステルなどが広く用いられる。
そして、必要に応じてこの振動板胴体部11の表面に樹脂などをコーティングし、化学薬品類の接触に対して安定化させる。あるいはパルプを叩解して繊維状にし、樹脂の粉末を混ぜ合わせて分散させ、成型時に熱で溶融させることでパルプ間の隙間を埋めて振動板胴体部11に含浸させても同様な効果が得られる。
(b)エッジ部の製造工程
エッジ部12は、約10〜200μmの厚さの加硫ゴムやエラストマーなどの柔軟材料を含むシート状材料を加熱成形機にセットし、100〜200℃程度の温度で成形をした後、プレス機にてエッジ部12の内径抜きを行って形成する。
上記加硫ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ターポリマーゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、シリコーンゴムなど用いることができる。また、上記エラストマーとしては、例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系などを用いることができる。あるいは、織布や不織布基材にゴムなどをコーティングした柔軟材料を用いても良い。
(c)エッジ部表面への無機化合物の皮膜形成工程
上記のようにして形成されたエッジ部12表面に、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、無機化合物の皮膜13を形成する。上記柔軟材料は高圧や高温に弱いため、CVD法の中でも常圧、低温処理が可能な誘導結合型プラズマCVD(ICP−CVD:Inductively Coupled Plasma-CVD)を用いると良い。
ICP−CVD法で無機化合物、例えばSiOを堆積する場合、SiH、O、Nガスフローで高周波電力500W、圧力0.1Pa、温度50℃の条件で10分程度の時間成膜すると、厚さが200nmのSiO膜を形成できる。
上記無機化合物としては、SiO以外にSiONやSiNなどが好適である。無機化合物の皮膜13は、化学薬品類に対して影響がないので、溶解、膨潤、変形などの製品特性に変化を与えない。しかし、一般に剛性が高いので、振動板10のエッジ部12に必要以上の厚さに形成すると弾性率や最低共振周波数などの音響特性を変化させてしまう。
そこで、化学薬品類に対して耐性が得られる厚さと音響特性に影響のない厚さのバランスを考慮し、膜厚は化学薬品類に対して耐性が得られるように25nm以上でかつ音響特性に影響のない400nm以下であり、より好ましくは50nm〜200nmの範囲とする。
(d)振動板胴体とエッジ部の接合工程
上述した工程が終了した後、周知の方法を用いて振動板胴体部11とエッジ部12の接合工程を行う。この工程では、例えば、製造した振動板胴体部11の外周縁部と、エッジ部12の内周縁部とを接着剤などにより接着する。
接着剤としては、例えばウレタン系接着剤を用いることができる。これによって、図2(a)、(b)に示すように、振動板胴体部11の外周縁部と、表面に無機化合物の皮膜13が形成されたエッジ部12の内周縁部が接合され、2ピース構造の振動板10が形成される。
図3は、図2に示した振動板10を用いたスピーカ(ヘッドホン用ドライバ)1の構成例を示す断面図である。このスピーカ1は、いわゆる内磁型であり、フレームを兼ねたポット型のヨーク2、マグネット3及び円盤状のポールプレート4を有する磁気回路5と、この磁気回路5の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイル6を屈曲部下方に配置した振動板胴体部11と、この振動板胴体部11の外周縁部に接合されたエッジ部12とを備えている。上記振動板胴体部11とエッジ部12とは接着剤などにより接着されて一体化されている。
上記のような製造方法によれば、振動板10における柔軟材料で形成されたエッジ部12に、化学薬品類に対して影響がない無機化合物の皮膜13を形成したので、振動板10としての音響特性の変化を抑制しつつ化学薬品類に対する安定化を図れる。特に、ヘッドホンやマイクロホンなどの場合、エッジ部12は装着時に使用者の耳側に突出しているので化学薬品類が付着しやすく、高い効果が得られる。
また、常圧、低温処理が可能な誘導結合型プラズマCVDにより皮膜を形成するので、エッジ部12の柔軟材料の変質や特性変化を抑制しつつ、溶解、膨潤、変形などの製品特性変化を与えない処理を行うことができる。
本発明者は、作製した振動板10の化学薬品類に対する耐性と音響特性を調べる実験を行った。図4は、無機化合物の皮膜の厚さと化学薬品類に対する耐性との関係について説明するための図である。図5は、無機化合物の皮膜の厚さと音響特性との関係について説明するための図である。
図4に示すように、無機化合物の皮膜の厚さを厚くするのにしたがって化学薬品類に対する耐性が高くなり、図5に示すように無機化合物の皮膜の厚さを厚くするのにしたがって最低共振周波数が高くなる。化学薬品類に対して十分な耐性が得られる厚さと最低共振周波数に影響のない厚さのバランスを考慮すると、無機化合物の膜厚は化学薬品類に対して耐性が得られるように25nm以上でかつ最低共振周波数の上昇が少ない400nm以下が望ましく、より好ましくは50nm〜200nmの範囲である。
また、エッジ部12の材料として、材厚40μmのTPU(Thermoplastic Polyurethane)と呼ばれる熱可塑性ポリウレタンに対して、ICP−CVD法によりSiOを300nmの厚さに形成して弾性率を測定した。この処理により弾性率は10%程度上昇したが、製品に対しての影響は見られなかった。
この処理品に日常生活で使用する薬品類として、日焼け止めクリーム(NIVEA SUN (登録商標) PROTECT WATER GEL SPF30 PA++)を塗布した。未処理品は膨潤したが、処理品には膨潤は見られなかった。
従って、本発明の製造方法によれば、音響特性の変化を抑制しつつ、柔軟材料で形成されたエッジ部の化学薬品類に対する安定化を図れるスピーカ用振動板を提供できる。
1 スピーカ
2 ヨーク
3 マグネット
4 ポールプレート
5 磁気回路
6 ボイスコイル
10 振動板(スピーカ用振動板)
11 振動板胴体部
12 エッジ部
13 無機化合物の皮膜

Claims (4)

  1. スピーカ用振動板(10)における柔軟材料で形成されたエッジ部(12)表面に、化学気相蒸着法によりSiO、SiON、及びSiNのいずれかの皮膜(13)を形成したことを特徴とするスピーカ用振動板の製造方法。
  2. 前記化学気相蒸着法は、誘導結合型プラズマCVD法であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法。
  3. 前記エッジ部(12)の柔軟材料は、加硫ゴム、エラストマー、織布もしくは不織布基材にゴムをコーティングした材料のいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載のスピーカ用振動板の製造方法。
  4. 前記無機化合物の皮膜(13)の膜厚は、25nm以上、400nm以下、好ましくは50nm〜200nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のスピーカ用振動板の製造方法。
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