一般に、光ファイバ通信では、データ情報は光信号の振幅や位相に重畳される。異なるデータ情報は異なる振幅/位相に対応し、各データ情報に対応する振幅/位相情報をシンボルと呼ぶ。通常、各シンボルの発生確率は一様分布を示し、振幅の大小にかかわらず各シンボルの発生頻度は一定である。一方で、非線形光学効果による光信号波形劣化は信号パワー(強度)の大きな光信号に対して顕著に発生する事象である。したがって、非線形光学効果による光信号波形劣化を抑えるためには、振幅の大きなシンボルの発生確率を小さくし、振幅の小さなシンボルの発生確率を大きくすることが望まれる。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、光伝送路における非線形光学効果による光信号波形劣化を抑制することができる光伝送システム、光送信器、光受信器、光送信方法、光受信方法を提供することを目的としている。
本発明によれば、上記目的は特許請求項の範囲に示した手段により達成される。
即ち、本発明による光送信器の一態様は、光伝送路を介して相互に接続された光送信器と光受信器とを備え、前記光送信器から前記光伝送路を介して前記光受信器に光信号を伝送する光伝送システムであって、前記光送信器は、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される入力データ列を、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される送信データ列に符号化する符号部と、前記符号部により得られた送信データ列を前記光信号に多重化する多重部と、を備え、前記光受信器は、前記光信号から、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列を分離する分離部と、前記分離部により得られた前記受信データ列を、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される出力データ列に復号化する復号部と、を備えた光伝送システムの構成を有する。
前記光伝送システムの一態様において、例えば、前記入力データ列および前記出力データ列を、(A1,A2,…AN)とし、前記送信データ列および前記受信データ列を、(B1,B2,…BN)とし、N×Nアダマール行列をHnとしたときに、前記符号部は、次式(1A)により、前記入力データ列を前記送信データ列に符号化し、前記復号部は、次式(2A)により、前記受信データ列を前記出力データ列に復号化する。
本発明による光送信器の一態様は、光信号を光伝送路に送出する光送信器であって、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される入力データ列を、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される送信データ列に符号化する符号部と、前記符号部により得られた送信データ列を前記光信号に多重化する多重部と、を備えた光送信器の構成を有する。
前記光送信器の一態様において、例えば、前記入力データ列を、(A1,A2,…AN)とし、前記送信データ列を、(B1,B2,…BN)とし、N×Nアダマール行列をHnとしたときに、前記符号部は、前式(1A)により、前記入力データ列を前記送信データ列に符号化する。
本発明による光受信器の一態様は、光伝送路から光信号を受信する光受信器であって、前記光信号から、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列を分離する分離部と、前記分離部により得られた前記受信データ列を、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される出力データ列に復号化する復号部と、を備えた光受信器の構成を有する。
前記光受信器の一態様において、例えば、前記受信データ列を、(B1,B2,…BN)とし、前記出力データ列を、(A1,A2,…AN)とし、N×Nアダマール行列をHnとしたときに、前記復号部は、前式(2A)により、前記受信データ列を前記出力データ列に復号化する。
本発明による光送信方法の一態様は、光信号を光伝送路に送出する光送信方法であって、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される入力データ列を、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される送信データ列に符号化する符号段階と、前記符号段階により得られた送信データ列を前記光信号に多重化する多重段階と、を含む光送信方法の構成を有する。
本発明による光受信方法の一態様は、光伝送路から光信号を受信する光受信方法であって、前記光信号から、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列を分離する分離段階と、前記分離段階により得られた前記受信データ列を、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される出力データ列に復号化する復号段階と、を含む光受信方法の構成を有する。
上述の本発明は、次のように換言することができる。
本発明による光送信器の一態様は、光信号を生成し、光ファイバ伝送路へ送出する光送信器において、複数の異なるデータ情報を有するデータ列A1, A2, …. ANに対して符号化処理を施すことで、それぞれのデータ列の各シンボルの発生確率を一様分布からガウス分布に変換し、信号パワーの大きなシンボルの発生確率を低減することを特徴とする、光送信器の構成を有する。ここで、データ列A1, A2, …, ANは光信号の振幅/位相情報を有するものとし、その値は任意の複素数で表されるものとする。
本発明による光送信器の一態様は、光信号を生成し、光ファイバ伝送路へ送出する光送信器において、複数の異なるデータ情報を有するデータ列A1, A2, …. ANに対してN×Nアダマール行列を用いて前記式(1A)に示される符号化処理を施すことで、それぞれのデータ列の各シンボルの発生確率がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNを生成することを特徴とする光送信器の構成を有する。ここで、データ列A1, A2, …, AN、データ列B1, B2, …, BNは光信号の振幅/位相情報を有するものとし、その値は任意の複素数で表されるものとする。
本発明による光送受信器の一態様は、光信号を生成し、光ファイバ伝送路へ送出する光送信器と、光信号を検波し、送信信号を復元する光受信器と備えた光送受信器において、複数の異なるデータ情報を有するデータ列A1, A2, …. ANに対して前式(1A)に示される符号化処理を施すことで、それぞれのデータ列の各シンボルの発生確率がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNを生成することを特徴とし、かつ、データ列B1, B2, …, BNに対して前式(2A)に示される復号化処理を施すことで、データ列A1, A2, …, ANを復元することを特徴とする光送受信器の構成を有する。ここで、データ列A1, A2, …, AN、データ列B1, B2, …, BNは光信号の振幅/位相情報を有するものとし、その値は任意の複素数で表されるものとする。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送信器および光送受信器の一態様において、例えば、前記光送信器が、符号器、光変調器、光源、合波器から構成されており、各データ列A1, A2, …, ANがデジタル電気信号として符号器に入力され、前式(1A)に示される符号化処理が施されることで各シンボルの発生確率分布がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNが生成され、それぞれのデータ列が有するデータ情報がデジタル電気信号として異なる光変調器に入力され、それぞれ異なる任意の波長λ1, λ2, …, λNを有する光に振幅/位相情報として重畳され、このように生成された光信号を、合波器を用いて波長多重し、光ファイバ伝送路へ送出する。データ列が複素数で表される場合は、光変調器として光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分として、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光受信器が、分波器、デジタルコヒーレント受信器、遅延調整器、復号器から構成されており、データ列B1, B2, …, BNが重畳された波長多重された光信号が分波器により波長分離され、それぞれの光信号がデジタルコヒーレント受信器に入射されることで、光信号の振幅/位相情報を保持した状態でデジタル電気信号に変換され、かつ光ファイバ伝送路で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化が補償され、かつ遅延調整器により光ファイバ伝送路の波長分散等により発生する各データ列間の遅延差を可変遅延線等の遅延調整器により補償することでデータ列B1, B2, …, BNがデジタル電気信号として得られ、さらに復号器にて前式(2A)に示される演算処理を施すことにより、データ列A1, A2, …, ANを復元する。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光送信器が、符号器、時分割多重器、光変調器、光源から構成されており、各データ列A1, A2, …, ANがデジタル電気信号として符号器に入力され、前式(1A)に示される符号化処理が施されることで各シンボルの発生確率分布がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNが生成され、かつ時分割多重器によりデータ列B1, B2, …, BNが時多重されたデータ列Cが生成され、データ列Cが有するデータ情報がデジタル電気信号として光変調器に入力され、任意の波長λの光に振幅/位相情報として重畳され、このように生成された光信号を光ファイバ伝送路へ送出することを特徴とする。データ列が複素数で表される場合は、光変調器として光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分として、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光受信器が、デジタルコヒーレント受信器、時分割多重器、復号器から構成されており、データ列Cが重畳された光信号がデジタルコヒーレント受信器に入射されることで、光信号の振幅/位相情報を保持した状態でデジタル電気信号に変換し、かつ光ファイバ伝送路で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化を補償し、さらに時分割多重器によりデータ列Cを時分離することでデータ列B1, B2, …, BNが得られ、さらに復号器にて前式(2A)に示される演算処理を施すことにより、データ列A1, A2, …, ANを復元することを特徴とする。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光送信器が、符号器、光変調器、光源、偏波結合器、合波器から構成されており、各データ列A1, A2, …, ANがデジタル電気信号として符号器に入力され、前式(1A)に示される符号化処理が施されることで各シンボルの発生確率分布がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNが生成され、それぞれのデータ列が有するデータ情報がデジタル電気信号として異なる光変調器に入力され、それぞれ異なる任意の波長λ1, λ2, …, λN/2を有する光に振幅/位相情報として重畳され、さらに偏波結合器を用いて同じ波長の光信号どうしを偏波多重することで偏波多重信号を生成し、このように生成された光信号を合波器を用いて波長多重し、光ファイバ伝送路へ送出することを特徴とする。このとき、B1を重畳する光変調器とB2を重畳する光変調器には同じ波長λ1の光が入射されることとする。同様に、B3を重畳する光変調器とB4を重畳する光変調器には同じ波長λ2の光が入射されるといった具合に、Bnを重畳する光変調器とBn+1を重畳する光変調器には同じ波長の光が入射されることとする。ここで、nは奇数であるとする。
データ列が複素数で表される場合は、光変調器として光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分として、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光受信器が、分波器、デジタルコヒーレント受信器、遅延調整器、復号器から構成されており、請求項4に記載のデータ列B1, B2, …, BNが重畳された偏波多重かつ波長多重された光信号が分波器により波長分離され、それぞれの光信号がデジタルコヒーレント受信器に入射されることで、光信号の振幅/位相情報を保持した状態でデジタル電気信号に変換し、かつ光ファイバ伝送路で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化を補償するとともに偏波分離を行い、かつ遅延調整器により光ファイバ伝送路の波長分散等により発生する各データ列間の遅延差を可変遅延線等の遅延調整器により補償することでデータ列B1, B2, …, BNがデジタル電気信号として得られ、さらに復号器にて前式(2A)に示される演算処理を施すことにより、データ列A1, A2, …, ANを復元することを特徴とする。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、例えば、前記光送信器が、符号器、時分割多重器、光変調器、光源、偏波結合器、合波器から構成されており、各データ列A1, A2, …, ANがデジタル電気信号として符号器に入力され、前式(1A)に示される符号化処理が施されることで各シンボルの発生確率分布がガウス分布に従うデータ列B1, B2, …, BNが生成され、かつ時分割多重器によりデータ列B1, B2, …, BNが時多重されたデータ列C1, C2, …, CN/Mが生成され、それらデータ列が有するデータ情報がデジタル電気信号として光変調器に入力され、それぞれ異なる任意の波長λ1, λ2, …, λN/2Mを有する光に振幅/位相情報として重畳され、さらに偏波結合器を用いて同じ波長の光信号どうしを偏波多重することで偏波多重信号を生成し、このように生成された光信号を合波器を用いて波長多重し、光ファイバ伝送路へ送出することを特徴とする。このとき、C1を重畳する光変調器とC2を重畳する光変調器には同じ波長λ1の光が入射されることとする。同様に、C3を重畳する光変調器とC4を重畳する光変調器には同じ波長λ2の光が入射されるといった具合に、Cnを重畳する光変調器とCn+1を重畳する光変調器には同じ波長の光が入射されることとする。ここで、nは奇数であるとする。また、時分割多重の多重数をMとしている。
データ列が複素数で表される場合は、光変調器として光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分として、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
前記光送受信器の一態様において、前記光受信器が、分波器、デジタルコヒーレント受信器、遅延調整器、時分割多重器、復号器から構成されており、データ列C1, C2, …, CN/Mが重畳された偏波多重かつ波長多重された光信号が分波器により波長分離され、それぞれの光信号がデジタルコヒーレント受信器に入射されることで、光信号の振幅/位相情報を保持した状態でデジタル電気信号に変換し、かつ光ファイバ伝送路で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化を補償するとともに偏波分離を行い、かつ遅延調整器により光ファイバ伝送路の波長分散等により発生する各データ列間の遅延差を可変遅延線等の遅延調整器により補償することでデータ列C1, C2, …, CN/Mがデジタル電気信号として得られ、さらに時分割多重器によりデータ列C1, C2, …, CN/Mを時分離することでデータ列B1, B2, …, BNが得られ、それらデータ列に対して復号器にて前式(2A)に示される演算処理を施すことにより、データ列A1, A2, …, ANを復元することを特徴とする。また、データに対する閾値判定はデータ列A1, A2, …, ANに対して実施することとする。
本発明によれば、伝送対象の光信号の振幅が大きくなるシンボルの発生確率を小さくすると共に、その光信号の振幅が小さくなるシンボルの発生確率を大きくすることができる。従って、非線形光学効果の影響を受けにくい光信号を生成することができ、光伝送路における非線形光学効果による光信号の波形劣化を抑制することが可能となる。
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
なお、全実施形態おより全図面にわたって、同一符号は同一要素を表している。
(本発明の原理の説明)
本発明の実施形態の説明に先だって、本発明の原理を説明する。
概略的に、本発明は、光信号に重畳するデータ情報、すなわち光信号の振幅/位相情報を、例えばアダマール行列を用いて符号化して、中心極限定理に基づき各シンボルの発生確率を一様分布から近似的にガウス分布に変換することにより、振幅の大きなシンボルの発生確率を小さくし、振幅の小さなシンボルの発生確率を大きくする技術である。アダマール行列の詳細については、例えば文献“Digital Communication”の422ページに記載されている。ただし、アダマール行列に限らず、データ列を複数の異なる方法で平均化し、かつ変換前と変換前後とでデータ列が1対1に対応する行列であれば、任意の行列を用いることができる。
図1は、本発明の原理を説明するための説明図であり、シンボルの発生確率の分布が信号パワーの分布に与える影響を説明するための図である。同図(a)に、信号パワーの平均が等しい状況において、各シンボルの発生確率が一様分布に従う場合と、各シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合の信号振幅と発生確率密度との関係の一例を示す。同図(a)に実線で示すように、各シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合、点線で示す一様分布に従う場合に比べて信号振幅の大きなシンボルの発生確率が小さくなり、信号振幅の小さなシンボルの発生確率が大きくなる傾向を示す。
図1(b)に、同様に信号パワーの平均が等しい状況における信号パワーの発生確率分布を示す。同図(b)に実線で示すように、シンボルの発生確率が点線で示す一様分布に従う場合に比べて、シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合、信号パワーの小さなシンボルの発生確率が大きくなる。例えば、信号パワーの平均よりも小さなパワーを有するシンボルが発生する確率は、一様分布の場合で53%であり、ガウス分布の場合で64%である。これは、一様分布の場合よりもガウス分布の場合の方が、非線形光学効果に伴う光信号波形劣化が生じにくいことを意味している。
各シンボルの発生確率の分布を一様分布からガウス分布に変換する本発明の手法を説明する。まず、複数の異なるデータ情報を有するデータ列A1,A2,…,AN(Nは2以上の整数)を考える。ここで、A1,A2,…,ANの各データ列は、光信号の振幅/位相情報を表し、任意の複素数で表されるものとする。また、各データ列は、互いに独立な一様分布に従うものとする。一般に、データ情報に対応する各シンボルの発生確率は一様分布を示すので、データ列A1,A2,…,ANにおける各シンボルの発生確率はそれぞれ独立な一様分布に従う。ここで、これらデータ列A1,A2,…,ANに対して下式(1)に示すN×Nアダマール行列Hnを用いて、下式(2)に示す演算、すなわち符号化を実行する。この演算操作は、データ列A1,A2,…,ANをN個の異なる方法で多重化(平均化)することを意味する。ここで、本実施形態では、Nを多重数と称す。
なお、N×Nアダマール行列のNの値は、光信号波形劣化の閾値以下となる光の振幅の度数分布が所望の値、例えば従来の光送受信機よりも多くなる程度に、光の振幅の度数分布が近似的にガウス分布になる値であればよい。
式(2)において、B1,B2,…,BNは符号化後のデータ列を表し、例えばN=4の場合、符号化後のデータ列B1,B2,…,BNは、式(3)により表される。
図2に、変調方式として64QAMを用いた場合における信号パワーと発生回数との関係の一例を示す。ここで、図2(a)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)のデータ列A1,A2,…,ANに対応する光信号の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを4として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)のデータ列B1,B2,…,BNに対応する光信号の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。また、図2(b)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを8として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。更に、図2(c)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを16として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。ここで、図2(a)から(c)のそれぞれにおいて、符号化前の信号パワーの平均と符号化後の信号パワーの平均はともに等しく、0.21である。
図2(a)〜(c)から理解されるように、符号化を施すことにより、シンボルの発生が低パワーに集中するようになる。また、多重数Nが大きいほどシンボルの発生がより低パワー側に集中する傾向を示す。この例では、多重数N=8の場合と多重数N=16の場合とでは、信号パワーの分布に大きな違いは見られないため、多重数Nは8から16程度で十分であるといえる。平均パワー以下の信号が発生する確率は、シンボルの発生確率が一様分布に従う場合(符号化前)では49%であり、シンボルの発生確率が多重数N=16のガウス分布に従う場合(符号化後)では62%である。
図3に、変調方式として16QAMを用いた場合における信号パワーと発生回数との関係の一例を示す。ここで、図3(a)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)のデータ列A1,A2,…,ANに対応する光信号の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを4として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)のデータ列B1,B2,…,BNに対応する光信号の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。また、図3(b)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを8として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。更に、図3(c)は、符号化する前(シンボルの発生確率が一様分布に従う場合)の信号パワーと発生回数との関係(点線)と、多重数Nを16として上記データ列を符号化した後(シンボルの発生確率がガウス分布に従う場合)の信号パワーの分布と発生回数との関係(実線)を示す。ここで、図3(a)から(c)のそれぞれにおいて、符号化前の信号パワーの平均と符号化後の信号パワーの平均はともに等しく、0.27である。
図3(a)〜(c)から理解されるように、変調方式として64QAMを用いた場合と同様に、符号化を施すことにより、シンボルの発生が低パワーに集中するようになる。また、多重数Nが大きいほどシンボルの発生がより低パワー側に集中する傾向を示す。この例では、多重数N=4の場合と多重数N=8の場合と多重数N=16とでは、信号パワーの分布に大きな違いが見られないため、多重数Nは4から16程度で十分であるといえる。平均パワー以下の信号が発生する確率は、シンボルの発生確率が一様分布に従う場合(符号化前)では25%であり、シンボルの発生確率が多重数N=16のガウス分布に従う場合(符号化後)では62%である。
上述のシンボルの発生が低パワーに集中する符号化後のデータ列B1,B2,…,BNに対応する光信号を、送信側から光伝送路を介して受信側に伝送することにより、光伝送路上での非線形光学効果による光信号波形劣化を抑制することが可能になる。
一方、受信側では、上述の送信側における符号化と同様の式(1)で示されるN×Nアダマール行列を用いて、符号化後のデータ列B1,B2,…,BNに対して下式(4)に示す演算を実行する。これにより、受信側において、符号化後のデータ列B1,B2,…,BNが符号化前のデータ列A1,A2,…,ANに復号化される。復号化されたデータ列A1,A2,…,ANの各データに対する閾値判定が実施され、シンボルが識別される。
本発明は、光の振幅の三乗で影響する三次の非線形光学効果を中心とする非線形光学効果による光信号の波形劣化を抑圧するものである。特に、本発明は、光信号の振幅/位相情報を、例えばアダマール行列を用いて符号化することにより、中心極限定理に基づき各シンボルの発生確率を一様分布から近似的にガウス分布に変換する。これにより、信号パワーの平均が等しい状況下で振幅の小さなシンボルの発生確率を大きくする。本発明によれば、或る閾値となる光振幅の値を境に光信号の波形劣化がステップ関数状に無視できなくなる状況下で、特に波形劣化の頻度を低減できる効果がある。
図2および図3の例では、波形劣化が無視できなくなる光の振幅の値として、光振幅の平均値を用いたが、波形劣化が無視できなくなる光の振幅の値として、本発明による光送信器および光受信器の光の振幅で超過する度数よりも、従来の光送受信機の光の振幅で超過する度数の方が多くなる任意の光の振幅の値の場合に、本発明は有効である。
(第1実施形態)
次に、図4および図5を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態では、上述した本発明の原理に基づいて生成した符号化後のデータ列B1,B2,…,BNを波長多重して伝送する。
[構成の説明]
本実施形態による光伝送システムは、光伝送路900を介して相互に接続された図4の光送信器100と図5の光受信器200とを備え、光送信器100から光伝送路900を介して光受信器200に光信号を伝送するものである。本実施形態では、光伝送路900として、光ファイバ伝送路を想定するが、この例に限定されず、光信号を伝送することができること限度として、任意の媒体を用いることができる。
図4に、本実施形態による光伝送システムが備える光送信器100の構成の一例を示す。光送信器100は、光信号Sを生成して光伝送路900に送出するものであり、符号部110と多重部120とを備える。ここで、符号部110は、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される入力データ列A1,A2,…,ANを、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される送信データ列B1,B2,…,BNに符号化(変換)するものである。多重部120は、符号部110により得られた送信データ列B1,B2,…,BNを光信号Sに多重化するものである。ここで、入力データ列A1,A2,…,ANは、複数の異なるデータを有するデータ列であり、光信号の振幅および位相情報を表し、任意の複素数により表される。また、各データ列は互いに独立な一様分布に従う。
なお、図4において、実線の矢印は光信号を表し、点線の矢印は電気信号を表す。他の図においても同様である。
本実施形態では、符号部110は、前述の式(1)に示すN×Nアダマール行列Hnを用いて入力データ列A1,A2,…,ANを送信データ列B1,B2,…,BNに符号化するための行列演算を実施する演算処理部111を備える。演算処理部111は、前述の式(2)の演算を実施することにより、入力データ列A1,A2,…,ANを送信データ列B1,B2,…,BNに符号化する。
多重部120は、N個の光源1211〜121Nと、N個の光変調部1221〜122Nと、合波部123とを備える。光源1211〜121Nは、それぞれ、波長λ1〜λNの連続光(CW光)を発生させるものである。光変調部1221〜122Nは、光源1211〜121Nが発生させた連続光を送信データ列B1,B2,…,BNに基づいて光変調することにより、波長λ1〜λNに対応したN個の変調光を生成するものである。合波部123は、光変調部1221〜122Nにより生成された波長λ1〜λNに対応したN個の変調光を合成して光信号Sを生成するものである。合波部123により生成された光信号Sは、光伝送路900に送出される。
図5に、本実施形態による光伝送システムが備える光受信器200の構成の一例を示す。光受信器200は、光伝送路900から光信号Sを受信して、この光信号Sからデータ列を復元するものであり、分離部210と復号部220とを備える。このうち、分離部210は、光信号Sから、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列を分離するものである。ここで、本実施形態では、分離部210により分離して得られる受信データ列は、上述の光送信器100における送信データ列B1,B2,…,BNに相当する。以下では、上述の送信データ列と同様に、分離部210により得られる受信データ列を、B1,B2,…,BNと称す。
分離部210は、分波部211、N個のデジタルコヒーレント受信部2121〜212N、遅延調整部2131〜213Nを備える。このうち、分波部211は、光伝送路900から入射された光信号Sを波長ごとにN個の光信号に分波(波長分離)するものである。デジタルコヒーレント受信部2121〜212Nは、分波部211により分波されたN個の光信号と局発光(図示なし)との検波結果をデジタル信号に変換して出力するものである。デジタルコヒーレント受信部2121〜212Nとして、従来から光デジタルコヒーレント通信で用いられる一般的なデジタルコヒーレント受信器を用いることができる。遅延調整部2131〜213Nは、デジタルコヒーレント受信部2121〜212Nから出力されたデジタル信号に対し、光伝送路900における波長分散等に起因する遅延を補償するための処理を実施するものである。遅延調整部2131〜213Nから受信データ列B1,B2,…,BNが分離部210の出力信号として出力される。
復号部220は、分離部210により得られた受信データ列B1,B2,…,BNを、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される出力データ列に復号化するものである。ここで、本実施形態では、復号部220により復号化された出力データ列は、上述の光送信器100における入力データ列A1,A2,…,ANに相当する。以下では、上述の入力データ列と同様に、復号部220により復号化して得られる出力データ列を、A1,A2,…,ANと称す。
本実施形態では、復号部220は、前述の式(1)に示すN×Nアダマール行列Hnを用いて受信データ列B1,B2,…,BNを出力データ列A1,A2,…,ANに符号化するための行列演算を実施する演算処理部221を備える。演算処理部221は、前述の式(4)の演算を実施することにより、受信データ列B1,B2,…,BNを出力データ列A1,A2,…,ANに復号化する。
次に、本実施形態による光伝送システムを構成する光送信器100および光受信器200の動作を説明する。
本実施形態では、光送信器100は、符号部110における符号化により得られた複数のデータ列B1,B2,…,BNを、異なる波長の光に重畳することにより波長多重を行って伝送する。
図4の光送信器100では、入力データ列A1,A2,…,ANはデジタル電気信号として符号部110に入力され、前述の式(2)に示される演算処理が施されることにより送信データ列B1,B2,…,BNが生成される。送信データ列B1,B2,…,BNを構成する個々のデータ列B1、データ列B2、…、データ列BNが有するデータ情報は、それぞれ、デジタル電気信号として異なる光変調部1221〜122Nに入力され、異なる波長λ1,λ2,…,λNの光に振幅/位相情報として重畳される。このようにして生成された光信号Sを、合波部123を用いて波長多重した後に光伝送路900へ送出する。各データ列が複素数である場合、例えば、光変調部1221〜122Nとして光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分とし、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。
一方、図5の光受信器200では、波長多重された光信号Sが分波部211により分波(波長分離)され、分波された各光信号がデジタルコヒーレント受信部2121〜212Nに入射される。デジタルコヒーレント受信部1211〜212Nは、振幅/位相情報を保持した状態で、入射した光信号をデジタル電気信号に変換する。また、デジタルコヒーレント受信部1211〜212Nは、光伝送路900で生じた波長分散や偏波モード分散等に起因した線形の光信号波形劣化を補償するための処理を実施して受信データ列B1,B2,…,BNを得る。
ここで、受信データ列B1,B2,…,BNの各データ列間では、光伝送路900の波長分散や、光送信器100における各データ間での経路差に起因した既知の遅延差が生じるため、遅延調整部2131〜213Nによりこれを補償する。この遅延調整部2131〜213Nとして、可変遅延線などを用いることができる。こうして遅延調整が施された受信データ列B1,B2,…,BNは、デジタル電気信号として復号部220に入力される。
復号部220は、前述の式(4)に示される演算処理を実施することにより、受信データ列B1,B2,…,BNから出力データ列A1,A2,…,ANを生成し、これにより、送信側の入力データ列A1,A2,…,ANを復元する。復号部220により得られた出力データ列A1,A2,…,ANの各データに対して閾値判定が実施され、シンボルが識別される。
上述した第1実施形態によれば、各シンボルの発生確率を一様分布ではなく、振幅の大きなシンボルの発生確率を小さくし、振幅の小さなシンボルの発生確率を大きくすることができる。これにより、非線形光学効果による光信号波形劣化を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
本実施形態では、上述した本発明の原理に基づいて生成した符号化後のデータ列B1,B2,…,BNを時分割多重することで単一の波長の光に重畳して伝送する。
図6は、本実施形態による光伝送システムが備える光送信器300の構成の一例を示すブロック図であり、図7は、本実施形態による光伝送システムが備える光受信器400の構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、本実施形態による光送信器300は、符号部110と多重部320とを備える。このうち、多重部320は、時分割多重部321、光源322、光変調部323から構成されている。ここで、時分割多重部321は、送信データ列B1,B2,…,BNをデジタル電気信号のデータ列Cに時多重するものである。光変調部323は、時分割により多重化された送信データ列B1,B2,…,BNに基づいて、光源322が発生させた波長λの連続光を光変調することにより光信号Sを生成するものである。光信号Sは光伝送路900に送出される。
一方、図7に示すように、光受信器400は、分離部410と復号部220とから構成される。本実施形態では、分離部410は、デジタルコヒーレント受信部411、時分割多重部412から構成される。ここで、デジタルコヒーレント受信部411は、光伝送路900から入射される光信号Sと局発光(図示なし)との検波結果をデジタル電気信号のデータ列Cに変換して出力するものである。デジタルコヒーレント受信部411としては、従来から光デジタルコヒーレント通信で用いられる一般的なデジタルコヒーレント受信器を用いることができる。時分割多重部412は、デジタル信号Cを受信データ列B1,B2,…,BNに時分離するものであり、上述の光送信器300における時分割多重部321とは逆の処理を実施するものである。受信データ列B1,B2,…,BNは復号部220に入力される。
なお、複数の異なるデータ情報を有する入力データ列A1,A2,…,ANは光信号の振幅/位相情報を表し、任意の複素数で表されるものとする。また、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列は互いに独立な一様分布に従うものとする。
次に、本実施形態による光伝送システムを構成する光送信器300および光受信器400の動作を説明する。
図6の光送信器300において、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列はデジタル電気信号として符号部110に入力される。符号部110は、前述の式(2)に示される演算処理を実施することにより送信データ列B1,B2,…,BNを生成する。送信データ列B1,B2,…,BNの各データ列が有するデータ情報は、デジタル電気信号として時分割多重部321に入力され、時分割多重部321は、時多重により新たなデータ列Cを生成する。データ列Cはデジタル電気信号として光変調部323に入力される。光変調部323は、データ列Cを振幅/位相情報の形で波長λの局発光に重畳して光信号Sを生成する。このようにして生成された光信号Sは、光伝送路900へ送出される。データ列が複素数である場合には、例えば、光変調部323として光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分とし、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。
一方、図7の光受信器400において、光伝送路900から光信号Sがデジタルコヒーレント受信部411に入射される。デジタルコヒーレント受信部411は、振幅/位相情報を保持した状態で光信号Sをデジタル電気信号に変換し、光伝送路900で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化を補償することによりデータ列Cを得る。データ列Cはデジタル電気信号として時分割多重部412に入力される。時分割多重部412は、データ列Cを時分離して受信データ列B1,B2,…,BNを出力する。受信データ列B1,B2,…,BNはデジタル電気信号として復号部220に入力される。
復号部220は、前述の式(4)に示される演算処理を実施することにより、受信データ列B1,B2,…,BNから出力データ列A1,A2,…,ANを生成し、これにより、送信側の入力データ列A1,A2,…,ANを復元する。復号部220により生成された出力データ列A1,A2,…,ANの各データに対して閾値判定が実施され、シンボルが識別される。
図8は、本実施形態による光伝送システムにおける時分割多重部321による時多重および時分割多重部421による時分離を説明するための説明図である。ここでは、データ列Bmのタイムスロットtにおける値をBm(t)としている。同図(a)に示すように、受信データ列B1,B2,…,BNを構成するデータ列B1、データ列B2、…データ列BNを所定のルールに従って直列化してデータ列Cを生成することにより、受信データ列B1,B2,…,BNをデータ列Cに時多重する。また、同図(b)に示すように、データ列Cを構成する各データ列を、時多重とは逆のルールに従って並列化することにより、データ列Cを受信データ列B1,B2,…,BNに時分離する。
図9は、本実施形態による光伝送システムにおいて、変調方式として16QAMを用いた場合における光信号の特性を説明するための特性図である。同図(a)および同図(b)は、データ列A1,A2,…,ANとして64QAMを用いた場合における、データ列B1とデータ列Cの同相成分の振幅の発生分布をそれぞれ示す。ここで、多重数Nは4としている。また、同図(c)および同図(d)は、同様の条件における、データ列B1とデータ列Cの信号パワーの発生分布をそれぞれ示す。同図(a)および同図(b)に例示されるように、時多重されたデータ列であるデータ列Cの振幅の発生分布は、時多重される前のデータであるデータ列B1の振幅の発生分布と同様に、ガウス分布となる。また、同図(c)および同図(d)に例示されるように、データ列Cの信号パワーはデータ列B1の信号パワーとほぼ同等の発生分布を示す。ここでは、データ列A1,A2,…,ANとして64QAMを用いているので、データ列A1,A2,…,ANの信号パワーの発生分布は、図2(a)における点線の特性に示す通りである。
本実施形態によれば、上述の第1実施形態に比べて、光受信器400において遅延調整が不要である。また、光送信器300において多重数Nに相当する個数の光変調部を準備する必要がない。従って、光送信器300および光受信器400の構成を簡略化することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
本実施形態では、上述した本発明の原理に基づいて生成した符号化後のデータ列B1,B2,…,BNを異なる波長の光に重畳し、偏波多重信号として伝送する。
図10は、本実施形態による光伝送システムが備える光送信器500の構成の一例を示すブロック図である。光送信器500は、符号部110と多重部520とを備える。このうち、多重部520は、光源5211〜521N/2、光変調部5221〜522N、偏波結合部5231〜523N/2、合波部524から構成される。光源5211〜521N/2は、波長λ1〜λN/2の光を発生させるものである。光変調部5221〜522Nは、送信データ列B1,B2,…,BNに基づいて波長λ1〜λN/2の光を光変調して変調光(x偏波、y偏波)を生成するものである。偏波結合部5231〜523N/2は、光変調部5221〜522Nからの変調光を偏波結合して光信号D1〜DN/2を発生させるものである。光信号D1〜DN/2は合波部524に入力される。合波部524は、光信号D1〜DN/2を光信号Sに合成するものである。光信号Sは光伝送路900に送出される。
図11に、本実施形態による光伝送システムが備える光受信器600の構成の一例を示す。光受信器600は、光伝送路900から光信号Sを受信してデータ列を復元するものであり、分離部610と復号部220とを備える。このうち、分離部610は、光信号Sから、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列B1,B2,…,BNを分離するものである。
分離部610は、分波部611、N個のデジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2、遅延調整部6131〜613Nを備える。このうち、分波部611は、光伝送路900から入射された光信号Sを波長ごとにN/2個の光信号に分波(波長分離)するものである。デジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2は、分波部611により分波されたN/2個の光信号と局発光(図示なし)との検波結果をデジタル電気信号に変換して出力するものである。遅延調整部6131〜613Nは、デジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2から出力されるデジタル信号に対し、光伝送路900における波長分散等に起因する遅延を補償するための処理を実施するものである。遅延調整部6131〜613Nから受信データ列B1,B2,…,BNは、分離部610の出力信号として復号部220に出力される。
なお、複数の異なるデータ情報を有する入力データ列A1,A2,…,ANは光信号の振幅/位相情報を表し、任意の複素数で表されるものとする。また、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列は互いに独立な一様分布に従うものとする。
次に、本実施形態による光伝送システムが備える光送信器500および光受信器600の動作を説明する。
図10において、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列は、デジタル電気信号として符号部110に入力される。符号部110は、前述の式(2)に示される演算処理を施すことによりデータ列B1,B2,…,BNを生成する。それぞれのデータ列が有するデータ情報は、デジタル電気信号として異なる光変調器5221〜522Nに入力され、振幅/位相情報として異なる波長λ1, λ2, …,λN/2の光に重畳される。このとき、データ列B1を重畳する光変調器5221とデータ列B2を重畳する光変調器5222には同じ波長λ1の光が入射される。同様に、データ列B3を重畳する光変調器5223とデータ列B4を重畳する光変調器5224には同じ波長λ2の光が入射されるといったように、データ列Bnを重畳する光変調器とデータ列Bn+1を重畳する光変調器には同じ波長の光が入射される。ここで、nは奇数である。
このようにして光変調部5221〜522Nにより生成された光信号を、偏波結合部5231〜523N/2を用いて同じ波長の光信号の組を偏波多重することにより、偏波多重信号D1〜DN/2を生成する。さらに、合波部524は、偏波多重信号D1〜DN/2を波長多重して光信号Sを生成して光伝送路900へ送出する。データ列が複素数である場合には、例えば、光変調器5221〜522Nとして光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分とし、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。
図11の光受信器600では、分波部611は、波長多重された光信号Sを波長分離し、波長分離された各光信号がデジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2に入射される。デジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2は、振幅/位相情報を保持した状態で光信号をデジタル電気信号に変換され、光伝送路900で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化を補償し、偏波分離を施す。このようにして、受信データ列B1,B2,…,BNが得られる。各データ列間では、光伝送路900の波長分散や、送信器における各データ間での経路差に起因した既知の遅延差が生じているため、遅延調整器6131〜613Nによりこれを補償する。遅延調整器6131〜613Nとしては、可変遅延線などを用いることができる。こうして遅延調整が施されたデータ列B1,B2,…,BNは、デジタル電気信号として復号部220に入力される。復号部220は、前述の式(4)に示される演算処理を実施することにより、受信データ列B1,B2,…,BNから出力データ列A1,A2,…,ANを生成し、これにより、送信側の入力データ列A1,A2,…,ANを復元する。復号部220により生成された出力データ列A1,A2,…,ANの各データに対して閾値判定が実施され、シンボルが識別される。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
本実施形態は、第1実施形態と第2実施形態と第3実施形態を組み合わせ、すなわち、波長多重と時分割多重と偏波多重の組み合わせに相当する。
図12は、本実施形態による光伝送システムが備える光送信器700の構成の一例を示すブロック図であり、図13は、本実施形態による光伝送システムが備える光受信器800の構成の一例を示すブロック図である。
図12の光送信器700は、符号部110と多重部720とから構成される。このうち、多重部720は、時分割多重部7211〜721N/M、光源7221〜722N/2M、光変調部7231〜723N/M、偏波結合部7241〜724N/2M、合波部725から構成される。ここで、時分割多重部7211〜721N/Mは、第2実施形態の時分割多重部321に対応する要素であり、送信データ列B1,B2,…,BNを時多重して送信データ列C1,C2,…,CN/Mを生成するものである。光変調部7231〜723N/Mは、第3実施形態の光変調部5221〜522Nに対応する要素であり、時多重された送信データ列C1,C2,…,CNに基づいて、光源7221〜722N/2Mが発生させた波長λ1,λ2,…,λN/2Mの連続光を光変調して変調光(x偏波、y偏波)を生成するものである。偏波結合部7241〜724N/2Mは、第3実施形態の5231〜523N/2に対応する要素であり、光変調部7231〜723N/Mからの変調光(x偏波、y偏波)を偏波結合して光信号D1〜DN/2Mを発生させるものである。光信号D1〜DN/2Mは合波部725に入力される。合波部725は、光信号D1〜DN/2Mを光信号Sに合成するものである。光信号Sは光伝送路900に送出される。
図13の光受信器800は、分離部810と復号部220とから構成される。このうち、分離部810は、分波部811、デジタルコヒーレント受信部8121〜812N/2M、遅延調整部8131〜813N/M、時分割多重部8141〜814N/Mから構成される。このうち、分波部811は、第3実施形態の分波部611に対応する要素であり、光伝送路900から入射される光信号Sを波長ごとにN/2個の光信号D1〜DN/2Mに分波(波長分離)するものである。デジタルコヒーレント受信部8121〜812N/2Mは、第3実施形態のデジタルコヒーレント受信部6121〜612N/2に対応する要素であり、分波部811により分波されたN/2M個の光信号と局発光(図示なし)との検波結果をデジタル信号に変換して出力するものである。遅延調整部8131〜813N/2Mは、第3実施形態の遅延調整部6131〜613Nに対応する要素であり、デジタルコヒーレント受信部8131〜813N/2Mから出力されるデジタル信号に対し、光伝送路900における波長分散等に起因する遅延を補償するための処理を実施するものである。遅延調整部8131〜813N/2Mからのデータ列C1,C2,…,CN/Mは、時分割多重部8141〜814N/Mに入力される。時分割多重部8141〜814N/Mは、データ列C1,C2,…,CN/Mを受信データ列B1,B2,…,BNに時分離するものである。
なお、複数の異なるデータ情報を有する入力データ列A1,A2,…,ANは光信号の振幅/位相情報を表し、任意の複素数で表されるものとする。また、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列は互いに独立な一様分布に従うものとする。
次に、本実施形態による光伝送システムを構成する光送信器700および光受信器800の動作を説明する。
図12において、入力データ列A1,A2,…,ANの各データ列は、デジタル電気信号として符号部110に入力される。符号部110は、前述の式(2)に示される演算処理を施すことにより送信データ列B1,B2,…,BNを生成する。それら送信データ列は時分割多重部7211〜721N/Mに入力される。時分割多重部7211〜721N/Mは、送信データ列B1,B2,…,BNを時多重してデータ列C1,C2,…,CN/Mを生成する。ここでは、時分割多重の多重数をMとしている。それぞれのデータ列が有するデータ情報は、デジタル電気信号として異なる光変調器7231〜723N/Mに入力され、振幅/位相情報として、異なる波長λ1, λ2, …, λN/2Mの光に重畳される。このとき、データ列C1を重畳する光変調器7231とデータ列C2を重畳する光変調器7232には同じ波長λ1の光が入射される。同様に、データ列C3を重畳する光変調器7233とデータ列C4を重畳する光変調器7234には同じ波長λ2の光が入射されるといったように、データ列Cnを重畳する光変調器とデータ列Cn+1を重畳する光変調器には同じ波長の光が入射される。ここで、nは奇数である。
このようにして光変調部7231〜723N/Mにより生成された光信号を、偏波結合部7241〜724N/2Mを用いて同じ波長の光信号の組を偏波多重して、偏波多重信号D1〜DN/2Mを生成する。さらに、合波部725は、偏波多重信号D1〜DN/2Mを波長多重して光信号Sを生成して光伝送路900へ送出する。データ列が複素数である場合には、例えば、光変調器7241〜724N/2Mとして光ベクトル変調器(IQ変調器)を用いて、データ列の実数成分を同相成分として、虚数成分を直交位相成分として変調を施す。
図13の光受信器800では、分波部811は、波長多重された光信号を波長分離し、それぞれの光信号D1,D2,…,DN/2Mがデジタルコヒーレント受信部8121〜612N/2Mに入射される。デジタルコヒーレント受信部8121〜812N/2Mでは、光信号は、振幅/位相情報を保持した状態でデジタル電気信号に変換され、光伝送路900で生じた波長分散や偏波モード分散に起因した線形の光信号波形劣化が補償され、偏波分離が施される。このようにして、受信データ列C1,C2,…,CN/Mが得られる。
ここで、各データ列間では、光伝送路900の波長分散や、送信器における各データ間での経路差に起因した既知の遅延差が生じているため、遅延調整器8131〜813N/2Mによりこれを補償する。遅延調整器8131〜813N/Mとしては、可変遅延線などを用いることができる。こうして遅延調整が施されたデータ列C1,C2,…,CN/Mは、デジタル電気信号として時分割多重部8141〜814N/Mに入力される。時分割多重部8141〜814N/Mは、データ列C1,C2,…,CNを時分割して受信データ列B1,B2,…,BNを生成する。受信データ列B1,B2,…,BNは復号部220に入力される。復号部220は、前述の式(4)に示される演算処理を実施することにより、受信データ列B1,B2,…,BNから出力データ列A1,A2,…,ANを生成し、これにより、送信側の入力データ列A1,A2,…,ANを復元する。このデータ列A1,A2,…,ANの各データに対して閾値判定が実施され、シンボルが識別される。
上述した各実施形態では、本発明を光送信器および光受信器として表現したが、本発明は、光送信方法および光受信方法として表現することもできる。この場合、本発明による光送信方法は、光信号を光伝送路に送出する光送信方法であって、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される入力データ列を、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される送信データ列に符号化する符号段階と、前記符号段階により得られた送信データ列を前記光信号に多重化する多重段階と、を含む光送信方法として表現することができる。
また、本発明による光受信方法は、光伝送路から光信号を受信する光受信方法であって、前記光信号から、発生確率がガウス分布に従うシンボルによって表される受信データ列を分離する分離段階と、前記分離段階により得られた前記受信データ列を、発生確率が一様な分布に従うシンボルによって表される出力データ列に復号化する復号段階と、を含む光受信方法として表現することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意の変形や修正が可能である。
例えば、上述した各実施形態による光送信器および光受信器は、位相と振幅のいずれか一方の情報を用いて符復号化しても良く、デジタル信号処理以外のアナログ信号処理で処理してもよい。