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JP5962290B2 - 鋼材の熱伝達係数予測装置及び冷却制御方法 - Google Patents
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鋼材の熱伝達係数予測装置及び冷却制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を予測する鋼材の熱伝達係数予測装置、及びこの熱伝達係数予測装置によって予測された鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数に基づいて鋼材の冷却条件を制御する鋼材の冷却制御方法に関するものである。
一般に、鋼材の製品品質は、製鋼プロセスにおいて化学成分が調整され、圧延プロセスにおいて加熱工程、圧延工程、及び冷却工程が行われることによって作りこまれる。硬度等の材質特性値は鋼材の製品品質の中で最も重要な品質指標である。鋼材の製品品質を一定にするためには、化学成分や圧延プロセスの加熱工程、圧延工程、及び冷却工程の条件を常に目標値通りに制御すればよい。これらの条件の中でも、特に圧延プロセスの最終段である冷却工程出側の鋼材温度は鋼材の製品品質に大きく影響する。しかしながら、冷却工程出側の鋼材温度は外乱によって目標値通りにならないことが多い。冷却工程出側の鋼材温度に対する最も大きい外乱は、冷却工程における鋼材表面と冷却媒体との間の熱伝達係数の変化である。このため、この熱伝達係数を精度良く予測することは品質管理及び品質制御上非常に重要である。
このような背景から、鋼材表面と冷却媒体との間の熱伝達係数をオンラインで推定する技術が提案されている。具体的には、特許文献1には、実測温度と伝熱計算モデルとを用いて、シミュレーティッドアニーリング法等の探索法による伝熱計算モデルによって計算された冷却工程出側の鋼材温度の計算値と温度計により実測された鋼材温度の実績値とが一致する最適な熱伝達係数を求める方法が記載されている。また、特許文献2には、実測温度と伝熱計算モデルとを用いて、伝熱計算モデルの2つ以上のパラメータ係数の修正を繰り返し、伝熱計算モデルにより計算された冷却工程出側の鋼材温度の計算値と温度計により実測された鋼材温度の実績値とが一致する最適な熱伝達係数を求める方法が記載されている。
特開2004−244721号公報 特開2006−281258号公報
一般に、冷却工程出側の鋼材温度を適正に制御するためには、鋼材が冷却工程に到達する前に予め鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を精度良く予測し、予測された熱伝達係数を用いて冷却工程出側における鋼材温度が目標値になるような冷却条件を求める必要がある。しかしながら、特許文献1,2記載の技術は、鋼材が冷却工程を通過した後の鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を推定するものであり、鋼材が冷却工程に到達する前に予め鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を予測するものではない。
なお、同じような鋼材が次々に連続して冷却工程を通過するようなプロセスでは、鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数が大きく変化しないと考えられるので、熱伝達係数は鋼材間で全て同じと仮定して冷却制御を行えば鋼材の温度をある程度は適正に制御できる。しかしながら、近年、顧客要求の多様化に対応して、様々な寸法、材質、成分の製品が製造されるようになっている。一般に、寸法、材質、成分が変化すると、それに伴い冷却条件が変わり、鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数が変化する。このため、直前の鋼材の熱伝達係数と同じと仮定する従来の方法では、うまく冷却制御することが困難になってきている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、鋼材が冷却工程に到達する前に予め鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を精度高く予測可能な鋼材の熱伝達係数予測装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、冷却工程出側の鋼板温度を目標値に適正に制御可能な鋼材の冷却制御方法を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置は、過去に実施された冷却工程における、鋼材の冷却条件と鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数とを関連づけして格納する実績データベースと、前記実績データベース内に格納されている複数の冷却条件について、予測対象の冷却条件に対する類似度を算出する類似度算出部と、前記実績データベースに格納されている冷却条件に関する情報を用いて、冷却条件と前記熱伝達係数との関係を表す予測モデルを作成すると共に、前記類似度算出部によって算出された類似度を重みとする評価関数を予測モデルの予測誤差を評価する評価関数として最適化問題を解くことによって、前記予測モデルのパラメータを決定する予測式作成部と、前記予測式作成部によって作成された予測式に前記予測対象の冷却条件を入力することによって、予測対象の冷却条件で冷却工程を実施した場合の鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を予測する熱伝達係数予測部と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置は、上記発明において、前記予測式作成部は、予測対象の鋼材の物理的特性を制約条件として前記最適化問題を解くことを特徴とする。
本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置は、上記発明において、前記類似度算出部は、予測対象の冷却条件に対する類似度と予測対象との時間的な類似度との積を類似度として算出することを特徴とする。
本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置は、上記発明において、前記実績データベース、前記類似度算出部、前記予測式作成部、及び前記熱伝達係数予測部が処理に用いる冷却条件は、主成分分析により線形変換及び次元圧縮されたものであることを特徴とする。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼材の冷却制御方法は、本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置によって予測された鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数に基づいて冷却工程の冷却条件を制御するステップを含むことを特徴とする。
本発明に係る鋼材の熱伝達係数予測装置によれば、鋼材が冷却工程に到達する前に予め鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を精度高く予測することができる。
本発明に係る鋼材の冷却制御方法によれば、冷却工程出側の鋼板温度を目標値に適正に制御することができる。
図1は、本発明の一実施形態である冷却制御システムの構成を示すブロック図である。 図2は、図1に示す実績データベースに格納されている実績データの一例を示す図である。 図3は、本発明の一実施形態である熱伝達係数予測処理の流れを示すフローチャートである。 図4は、従来の熱伝達係数予測方法及び本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測誤差を示すヒストグラムと、熱伝達係数の実績値と従来の熱伝達係数予測方法及び本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測値との関係を示す図である。 図5は、本願発明の熱伝達係数予測方法において、時間における類似度を考慮しない場合と時間における類似度を考慮した場合とにおける、熱伝達係数の予測誤差のヒストグラムと熱伝達係数の実績値と予測値との散布図である。 図6は、本願発明の熱伝達係数予測方法において、そのままの冷却条件を用いる場合と主成分分析により線形変換された冷却条件を用いる場合とにおける、熱伝達係数の予測誤差のヒストグラムと熱伝達係数の実績値と予測値との散布図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である冷却制御システムの構成及びその動作について説明する。
〔冷却制御システムの構成〕
始めに、図1,図2を参照して、本発明の一実施形態である冷却制御システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である冷却制御システムの構成を示すブロック図である。図2は、図1に示す実績データベースに格納されている実績データの一例を示す図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態である冷却制御システム1は、入力装置2、出力装置3、実績データベース4、熱伝達係数予測装置5、及び冷却制御装置6を主な構成要素として備えている。入力装置2は、キーボード、マウスポインタ、テンキー等の情報入力装置によって構成され、オペレータが各種情報を熱伝達係数予測装置5に入力する際に操作される。出力装置3は、表示装置や印刷装置等の情報出力装置によって構成され、熱伝達係数予測装置5の各種処理情報を出力する。
図2に示すように、実績データベース4は、鋼材が冷却工程を通過する度毎に冷却工程の冷却条件のデータと鋼材と冷却水との間の熱伝達係数(以下、単に熱伝達係数と表記することもある)のデータとを関連付けして実績データとして格納する。具体的には、実績データベース4には、出力変数の実績値y(但し、n=1,2,…,N)と入力変数の実績値x(=[x ,x ,…,x )(但し、n=1,2,…,N、Mは入力変数の個数)とを関連付けして記憶する。なお、この場合、出力変数は熱伝達係数であり、入力変数は熱伝達係数と物理的な因果関係がある鋼材の寸法、製鋼プロセスで調整された化学成分、冷却工程の入側及び出側における鋼材の温度、冷却設備の水量密度、及び鋼材の搬送速度(冷却工程を通過する鋼材の速度)である。また、実績データベース4は、最新の実績データに基づいて予測モデルを構築できるように、先入れ先出し法等の方法によって古い実績データが除去されるように構成されている。
図1に戻る。熱伝達係数予測装置5は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、CPU10、RAM11、及びROM12を主な構成要素として備えている。CPU10は、熱伝達係数予測装置5全体の動作を制御する。CPU10は、ROM12内に予め格納されている熱伝達係数予測プログラム12aを実行することによって、類似度算出部10a、予測式作成部10b、及び熱伝達係数予測部10cとして機能する。これら各部の機能については後述する。冷却制御装置6は、熱伝達係数予測装置5によって予測された熱伝達係数に基づいて冷却条件を操作することによって冷却工程出側の鋼材温度が目標値になるように冷却条件を操作する。
〔熱伝達係数予測処理〕
このような構成を有する冷却制御システムでは、熱伝達係数予測装置5が、以下に示す熱伝達係数予測処理を実行することによって、冷却工程における鋼材の熱伝達係数を予測する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、熱伝達係数予測処理を実行する際の熱伝達係数予測装置5の動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態である熱伝達係数予測処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、外部の計算機が入力装置2に対し次に冷却工程を通過する鋼材の冷却条件を与えることによって冷却条件のデータを入力したタイミングで開始となり、熱伝達係数予測処理はステップS1の処理に進む。
ステップS1の処理では、類似度算出部10aが、入力装置2から入力された冷却条件のデータと実績データベース4に格納されている冷却条件のデータとの類似度を算出する。具体的には、始めに、類似度算出部10aが、入力装置2から入力された冷却条件に対応する入力変数空間内の点を要求点x(≡[x,x,…,x)として、実績データベース4に格納されている各入力変数の実績値xについて、以下に示す数式(1)を用いて要求点xからの距離Lを算出する。
なお、数式(1)中、パラメータλは、化学成分と温度等のように異なる尺度で測定される入力変数をスケーリングするための重み係数である。そして、類似度算出部10aは、実績データベース4に格納されている各入力変数の実績値xについて、以下に示す数式(2)を用いて要求点xから距離Lにある点の類似度Wを算出する。なお、数式(2)中、パラメータσは、実績データに対する数式(1)で表される距離Lの標準偏差、パラメータpは調整パラメータである。
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また、類似度算出部10aは、以下に示す数式(3)のように、予測対象の冷却条件に対する類似度と予測対象との時間的な類似度との積を類似度Wとして算出してもよい。なお、数式(3)中のパラメータλは、忘却要素であり、0より大きく1より小さい値の調整パラメータである。この忘却要素を入れることにより、新しい実績値xの類似度は大きくなり、古い実績値xの類似度は小さくなる。予測対象との時間的な類似度を考慮することによって、熱伝達係数をより精度高く予測できる。これにより、ステップS1の処理は完了し、熱伝達係数予測処理はステップS2の処理に進む。
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ステップS2の処理では、予測式作成部10bが、実績データベース4に格納されているN個の実績データ(入力変数の実績値x)とその要求点xとの類似度Wとを用いて、要求点xに類似する過去の実績データを重視した熱伝達係数の局所的な予測モデルを作成する。具体的には、予測式作成部10bは、以下に示す数式(4)によって表される熱伝達係数の予測モデルを作成する。数式(4)を構成する以下に示す数式(5)によって表されるモデルパラメータθは、以下に示す数式(6)〜(9)によって表される、類似度Wを重みとする熱伝達係数の実測値と予測値との誤差の二乗和である評価関数Jの値を最も小さくする最適化問題を解くことによって算出できる。
ここで、数式(7)中、パラメータy(但し、n=1、2、…、N)は、n番目の実績データに対応する出力変数の値であり、数式(8)中、パラメータdiag(s)は、sの要素を主対角要素とする対角行列を示す。熱伝達係数の予測値と実測値との重み付き二乗和を最小化するモデルパラメータを計算することによって、類似度が高い、すなわち要求点xに近い実績データをより良くフィッティングする局所的な予測モデルを作成することができる。
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なお、最適化問題を解く際、以下に示すような制約条件を与えて最適化問題を解いてもよい。具体的には、制約条件として、以下に示す数式(10)により表されるモデルパラメータ中の入力変数の偏回帰係数φの範囲に対して以下に示す数式(11)〜(13)により表される制限を設けるようにしてもよい。ここで、数式(12)及び数式(13)により表される下限値及び上限値には、入出力変数間の物理的先見情報を与えるものとする。
鋼材の一種である厚鋼板の冷却工程における熱伝達係数の予測を例に具体的に説明すると、入力変数として与えられる冷却工程入側の鋼材温度が上昇すれば熱伝達係数は下がる。従って、冷却工程入側の鋼材温度に対応するモデルパラメータについては、下限値及び上限値をそれぞれ−∞、0とする。また、入力変数として与えられる冷却工程の搬送速度が上昇すれば熱伝達係数は下がる。従って、冷却工程の搬送速度に対応するモデルパラメータについては、下限値及び上限値をそれぞれ−∞、0とする。さらに、入力変数として与えられる化学成分の一つの炭素濃度が上昇すれば硬度は上がる。従って、炭素濃度に対応するモデルパラメータについては、下限値及び上限値をそれぞれ0、∞にする。物理モデルから得られる先見情報に関する制約条件を加えることによって、要求点に近い実績データをより良くフィッティングし、且つ、予測対象の物理特性に合った偏回帰係数を持ち合わせた局所的な予測モデルを作成することができる。これにより、ステップS2の処理は完了し、熱伝達係数予測処理はステップS3の処理に進む。
Figure 0005962290
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ステップS3の処理では、熱伝達係数予測部10cが、ステップS2の処理によって作成された予測モデルに要求点xの値を代入することにより、鋼材の熱伝達係数の予測値を算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の熱伝達係数予測処理は終了する。
なお、ステップS1〜S3の処理を実行する前に、実績データベース4、類似度算出部10a、予測式作成部10b、及び熱伝達係数予測部10cの処理に用いられる冷却条件に関するデータを主成分分析によって線形変換及び次元圧縮してもよい。線形変換及び次元圧縮された冷却条件を用いることによって、熱伝達係数をより精度高く予測できる。具体的には、入力変数である冷却条件の実績値がx(=[x ,x ,…,x )(但し、n=1,2,…,N、Lは入力変数の個数)である場合、始めに、以下に示す数式(14)を用いて平均が0、標準偏差が1になるように、各実績値xを標準化する。なお、数式(14)中、xL,avは、実績値xの平均値であり、分母の値は標準偏差を示している。標準化後の冷却条件の実績値xをz(=[z ,z ,…,z )又は以下の数式(15)のように表記する。
Figure 0005962290
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次に、以下に示す数式(16)で定義される共分散行列Vを算出し、この共分散行列Vの固有値とそれに対応する固有ベクトルとを算出する。共分散行列Vには、非負の固有値が複数あり、それらに対応する固有ベクトルも複数ある。そこで、固有ベクトルを対応する固有値が大きい順に並べ替え、固有ベクトルを対応する固有値が大きいものから順にM個取り出したものを行列P(=[w,w,…,w)と表す。但し、Mは入力変数の個数Lより小さい自然数であり、行列Pはローディング行列と呼ばれる。そして、ローディング行列Pを用いて冷却条件の実績値zを以下に示す数式(17)のように線形変換したものを実績データベース4に格納する。
Figure 0005962290
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また、予測対象の冷却条件x(=[x,x,…,x)の各要素についても同様に、始めに以下に示す数式(18)を用いて標準化し、標準化後の予測対象の冷却条件z(=[z,z,…,z)を算出する。そして、ローディング行列Pを用いて以下に示す数式(19)のように線形変換したものを要求点として用いる。
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〔冷却制御処理〕
冷却制御装置6は、冷却予測装置5によって予測された鋼材と冷却水との間の熱伝達係数に基づいて冷却条件を操作することによって冷却工程出側の鋼材温度が目標値になるように冷却条件を操作する。具体的には、鋼材の表面温度をTs[K]、冷却水温度をTw[K]、熱伝達係数をα[W/(m・K)]とすると、鋼板と冷却水との間の熱流束密度J[W/m]は以下に示す数式(20)のように表される。
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熱伝達係数、鋼材の厚みと幅、鋼材の冷却工程入側温度、搬送速度、及び鋼材に冷却水がかかる面積が与えられると、数式(20)を境界条件として、偏微分方程式を解くことにより、鋼材の冷却工程出側の鋼材温度を計算することができる。この冷却工程出側の鋼材温度の計算値と予め与えられている目標値とを比較し、これらの値が一致するまで冷却水がかかる面積を操作し、偏微分方程式を解いて冷却工程出側の鋼材温度を計算する。最終的に計算値と目標値とが一致したときの冷却水がかかる面積に基づいて、冷却設備の冷却バンク数、すなわち冷却水を噴射するノズルの数を決定する。これに基づいて冷却設備の設定を行うことによって、冷却工程出側の鋼材温度を適正に制御できる。
〔実験例〕
本願発明の熱伝達係数予測方法と従来の熱伝達係数予測方法とを用いて、厚鋼板の加速冷却材を対象に、鋼材が冷却工程に到達する前に予め鋼材の熱伝達係数を予測した実験結果について説明する。ここで、従来の熱伝達係数予測方法とは、対象材の熱伝達係数は直前に冷却工程を通過した鋼材の熱伝達係数と同じであると仮定して予測する方法である。
図4(a),(b)はそれぞれ、従来の熱伝達係数予測方法及び本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測誤差(予測値−実績値)を示すヒストグラムである。図4(c),(d)はそれぞれ、熱伝達係数の実績値と従来の熱伝達係数予測方法及び本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測値との関係を示す図である。なお、図4(a),(b)に示すグラフの横軸及び図4(c),(d)に示すグラフの縦軸及び横軸に示す熱伝達係数の値は、標準化して無次元化した値としている。すなわち、標準化前の熱伝達係数(単位[W/(m・K)])をy、標準化後の熱伝達係数をΨと表したとき、両者は以下に示す数式(21)のような関係がある。なお、数式(21)の右辺の分母及び分子の第2項はそれぞれ標準偏差及び熱伝達係数の実績値y(n=1,2,…,N)の平均値を示し、以下に示す数式(22)、(23)のように表される。すなわち、標準化は、熱伝達係数の実績値が平均0、標準偏差1になるように線形変換されている。標準化後の熱伝達係数は、無次元化されているので単位は無い。図5以降においてもこのように標準化された熱伝達係数の値を用いて図示している。
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図4(a),(c)に示すように、従来の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測誤差のRMSE(Root Mean Square Error:根平均二乗誤差)は0.245(標準化後)であった。これに対して、図4(b),(d)に示すように、本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数の予測誤差のRMSEは0.078(標準化後)であった。このことから、本願発明の熱伝達係数予測方法によれば、熱伝達係数を精度高く予測できることが明らかになった。
図5(a),(b)はそれぞれ、本願発明の熱伝達係数予測方法において、時間における類似度を考慮しない場合と時間における類似度を考慮した場合とにおける、熱伝達係数の予測誤差(予測値−実績値)のヒストグラムである。また、図5(c),(d)はそれぞれ、時間における類似度を考慮しない場合と時間における類似度を考慮した場合とにおける、熱伝達係数の実績値と予測値との散布図である。ここで、時間における類似度を計算するための忘却要素の値は0.995を選択している。なお、図5(a),(b)に示すグラフの横軸は熱伝達係数の予測誤差(標準化後)である。また、図5(c),(d)に示すグラフの横軸及び縦軸はそれぞれ、熱伝達係数の実績値(標準化後)及び予測値(標準化後)を示す。図5(c)に示すように、時間における類似度を考慮しない場合における熱伝達係数の予測誤差のRMSEは0.138(標準化後)であった。これに対して、図5(d)に示すように、時間における類似度を考慮した場合における熱伝達係数の予測誤差は0.085(標準化後)であった。時間における類似度を考慮しない場合、図5(c)に示すように、誤差平均の絶対値が大きいことがわかる。これは、製造プロセスの特性の経年変化に対して十分に迅速に対応した学習が行われず、熱伝達係数予測について定常的な偏差が残っているものと考えることができる。時間における類似度を考慮しない場合は、実績データベースに蓄積されている古いデータも新しいデータも同様に扱うことによって生じると考えられる。そこで、忘却要素を導入して時間における類似度を考慮するようにし、古いデータの類似度は小さく、新しいデータの類似度は大きくなるようにした。これにより、図5(d)に示すように、誤差平均の絶対値が大幅に小さくなっていることがわかる。このことから、時間における類似度を考慮することによって、熱伝達係数をより精度高く予測できることがわかった。
図6(a),(b)はそれぞれ、本願発明の熱伝達係数予測方法において、そのままの冷却条件を用いる場合と主成分分析により線形変換された冷却条件を用いる場合とにおける、熱伝達係数の予測誤差(予測値−実績値)のヒストグラムである。また、図6(c),(d)はそれぞれ、そのままの冷却条件を用いる場合と主成分分析により線形変換された冷却条件を用いる場合とにおける、熱伝達係数の実績値と予測値との散布図である。なお、図6(a),(b)に示すグラフの横軸は熱伝達係数の予測誤差(標準化後)である。また、図6(c),(d)に示すグラフの横軸及び縦軸はそれぞれ、熱伝達係数の実績値(標準化後)及び予測値(標準化後)を示す。
図6(c)に示すように、そのまま冷却条件を用いる場合における硬度の予測誤差のRMSEは0.105(標準化後)であった。これに対して、図6(d)に示すように、主成分分析により線形変換された冷却条件を用いる場合における熱伝達係数の予測誤差のRMSEは0.084(標準化後)であった。そのままの冷却条件を用いる場合、図6(c)に示すように、予測誤差のRMSEが大きいことがわかる。これは、冷却条件の実績データの中に相関が非常に高いものが含まれる多重共線性といわれる状態にあるため、そのようなデータをもとに作ったモデルに予測対象の冷却条件を入れて計算した熱伝達係数予測値は誤差が大きくなる傾向にある。そこで、主成分分析により次元圧縮することで、多重共線性の問題を回避するようにした。これにより、図6(d)に示すように、予測誤差のRMSEが大幅に小さくなっていることがわかる。このことから、主成分分析により線形変換された冷却条件を用いることによって、熱伝達係数をより精度高く予測できることがわかった。
さらに、厚鋼板の加速冷却材について、従来の冷却制御方法と本願発明の制御方法とで、冷却工程出側の鋼材温度について制御誤差の比較を行った。従来の冷却制御方法は、従来の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数を用いて冷却工程出側の鋼材温度を制御する方法であり、本願発明の制御方法は、本願発明の熱伝達係数予測方法を用いて予測された熱伝達係数を用いて冷却工程出側の鋼材温度を制御する方法である。それぞれの方法について、冷却工程出側の鋼材温度の制御誤差(実績値−目標値)のRMSEの比較を行った。従来の冷却制御方法での制御誤差のRMSEは17.0[℃]であった。これに対して、本願発明の材質制御方法での制御誤差のRMSEは12.7[℃]であり、従来の冷却制御方法に比べて冷却工程出側の鋼材温度の制御誤差を大幅に低減できた。このことから、本願発明の冷却制御方法によれば、冷却工程出側の鋼材温度を精度高く目標値に近づけることが明らかになった。
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である熱伝達係数予測処理によれば、類似度算出部10aが、実績データベース4内に格納されている複数の冷却条件xについて、予測対象の冷却条件xに対する類似度Wを算出し、予測式作成部10bが、実績データベース4に格納されている冷却条件xのデータを用いて、冷却条件xと熱伝達係数yとの関係を表す予測モデルを作成すると共に、類似度算出部10aによって算出された類似度Wを重みとする評価関数を予測モデルの予測誤差を評価する評価関数として最適化問題を解くことによって、予測モデルのモデルパラメータを決定し、熱伝達係数予測部10cが、予測式作成部10bによって作成された予測モデルに予測対象の冷却条件xを入力することによって、予測対象の冷却条件xで鋼材を冷却した場合の熱伝達係数yを予測する。このような構成によれば、実績データベース4内に格納されている実績値に基づいて予測モデルの調整を自動的に行うことができるので、鋼材が冷却工程に到達する前に予め熱伝達係数を精度高く予測することができる。
また、本発明の一実施形態である熱伝達係数予測処理によれば、予測式作成部10bは、予測対象の鋼材の物理的特性を制約条件として最適化問題を解くので、物理現象に反する予測モデルが作成されることを抑制し、熱伝達係数の予測精度をさらに向上させることができる。
さらに、本発明の一実施形態である冷却制御処理によれば、本発明の一実施形態である熱伝達係数予測処理により従来と比べて精度の高い熱伝達係数予測値に基づいて冷却工程出側の鋼材温度を制御するので、冷却工程出側の鋼板温度を目標値に適正に制御することができる。ここでは、操作する冷却条件として、冷却設備の冷却バンク数、すなわち、冷却水を噴射するノズルの数を選択し、目標の鋼材温度になるための適正な値を計算し、冷却設備を設定するようにした。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
1 冷却制御システム
2 入力装置
3 出力装置
4 実績データベース
5 熱伝達係数予測装置
6 冷却制御装置
10 CPU
10a 類似度算出部
10b 予測式作成部
10c 熱伝達係数予測部
11 RAM
12 ROM
12a 熱伝達係数予測プログラム

Claims (4)

  1. 過去に実施された冷却工程における、鋼材の冷却条件と鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数とを関連づけして格納する実績データベースと、
    前記実績データベース内に格納されている複数の冷却条件について、予測対象の冷却条件に対する類似度を算出する類似度算出部と、
    前記実績データベースに格納されている冷却条件に関する情報を用いて、冷却条件と前記熱伝達係数との関係を表す予測モデルを作成すると共に、前記類似度算出部によって算出された類似度を重みとする評価関数を予測モデルの予測誤差を評価する評価関数として最適化問題を解くことによって、前記予測モデルのパラメータを決定する予測式作成部と、
    前記予測式作成部によって作成された予測式に前記予測対象の冷却条件を入力することによって、予測対象の冷却条件で冷却工程を実施した場合の鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数を予測する熱伝達係数予測部と、を備え、
    前記類似度算出部は、予測対象の冷却条件に対する類似度と予測対象との時間的な類似度との積を類似度として算出することを特徴とする鋼材の熱伝達係数予測装置。
  2. 前記予測式作成部は、予測対象の鋼材の物理的特性を制約条件として前記最適化問題を解くことを特徴とする請求項1に記載の鋼材の熱伝達係数予測装置。
  3. 前記実績データベース、前記類似度算出部、前記予測式作成部、及び前記熱伝達係数予測部が処理に用いる冷却条件は、主成分分析により線形変換及び次元圧縮されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼材の熱伝達係数予測装置。
  4. 請求項1〜のうち、いずれか1項に記載の鋼材の熱伝達係数予測装置によって予測された鋼材と冷却媒体との間の熱伝達係数に基づいて冷却工程の冷却条件を制御するステップを含むことを特徴とする鋼材の冷却制御方法。
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