以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.移動物体検出の基本原理 >>>
本発明に係る撮影視野変動検知装置は、定点カメラの向きが変動したことを、当該カメラによる撮影画像自体を解析することにより、撮影視野の変動として検知する機能を有している。その基本原理は、定点カメラの撮影画像から移動物体を検出し、この移動物体の変動量とその分布に基づいて、撮影視野が変動したことを判定する、というものである。そこで、ここでは、撮影画像から移動物体を検出する基本原理を説明する。
いま、図1の左側に示すように、フレーム単位の撮影画像P10,P20,P30,P40がこの順番で与えられたものとしよう。図示の例は、街頭に設置された定点ビデオカメラによる撮影画像を示すものであり、右から左へと1台の車両(移動物体)が通過する状態が示されている。なお、一般的なビデオカメラの場合、1秒間に30フレーム程度の周期で連続して撮影画像が出力されるので、実際には、より細かな時間間隔で多数のフレーム画像が得られることになるが、ここでは、説明の便宜上、図示のとおり、4枚のフレーム画像P10,P20,P30,P40が順番に与えられたものとしよう。
これら4枚の画像を見ると、画像P10は街の背景のみであるが、画像P20では、右側に車両の一部が侵入したため、背景上に車両の一部が重なった画像になっている。同様に、画像P30,P40も、背景上に車両が重なった画像になっている。背景は静止しているため、画像P10〜P40について共通になるが、車両は移動物体であるため、画像P10〜P40では異なる。ここでは、各画像上において、背景を構成する領域を背景領域b、車両(移動物体)を構成する領域を前景領域fと呼ぶことにする。
ここで説明する移動物体の検出とは、与えられた各画像P10〜P40について、それぞれ背景領域bと前景領域fとを区別することにある。図1の右側に示す各画像F10〜F40は、それぞれ左側に示す各画像P10〜P40について、背景領域bと前景領域fとの区別を示す画像である。図にハッチングを施した領域が前景領域fであり、白地の領域が背景領域bである。いずれの領域かを識別できればよいので、これらの画像F10〜F40は、二値画像として与えられる。たとえば、背景領域bに所属する画素には画素値「0」を与え、前景領域fに所属する画素には画素値「1」を与えることにすれば、画像F10〜F40は、1ビットの画素値をもった画素の集合体からなる画像データの形式で得ることができる。
ここで述べる移動物体の検出処理によれば、与えられた個々のフレーム画像のそれぞれについて、対応する二値画像を作成することができる。すなわち、この移動物体検出処理の本質は、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の撮影画像について、それぞれ背景領域bと前景領域fとの区別を示す二値画像を作成する処理ということができる。そこで、以下、便宜上、時系列で連続的に与えられる撮影画像を「原画像」と呼び、この「原画像」に基づいて作成される二値画像を「前景画像」と呼ぶことにする。
図1に示す例では、各原画像P10〜P40のそれぞれについて、前景画像F10〜F40が作成された例が示されている。前景画像F10は、全面が背景領域b10(白地の領域)によって構成されているが、これは原画像10上に移動物体が存在しないことを示している。これに対して、前景画像F20,F30,F40は、それぞれ前景領域f20,f30,f40(ハッチングを施した領域)と、その余の背景領域b20,b30,b40(白地の領域)とによって構成されている。ここで、前景領域f20,f30,f40は、移動物体が占める領域を示している。
このように、前景画像F上の前景領域fは、原画像P上での移動物体が占める領域を示すものであり、この前景画像Fを利用すれば、移動物体の形状やサイズを把握したり、移動物体の部分をズームアップして、車両のナンバーを確認したり、人物を特定したりする処理を行うことが可能になる。また、画面上で移動物体をズームアップしたまま追跡したり、移動経路を把握したりすることも可能になる。
もちろん、このような前景画像Fの作成を、1枚の原画像Pのみから行うことは困難である。たとえば、図示の原画像P20のみが静止画像として与えられた場合、人間の脳は様々な情報から車両の存在を認識することができるが、この1枚の静止画像P20のみから、コンピュータに車両の存在を認識させ、図示の前景画像F20を生成するには、複雑なアルゴリズムに基づく処理が必要となる。そこで、一般的な移動物体検出アルゴリズムでは、原画像と背景画像との差を求めることにより、当該差の領域を移動物体の領域(前景領域f)と判断する手法が採られる。
たとえば、予め原画像P10を背景画像として指定しておけば、原画像P20が入力された時点で両者を比較することにより、差の領域を前景領域f20と認識し、図示のような前景画像F20を作成することが可能になる。差の領域の認識手法としては、新たに入力した原画像P20と背景画像P10とを画素単位で比較して、両画素の画素値が同一もしくは類似している場合、当該画素は背景領域b20を構成する画素であるとし、類似していない場合、当該画素は移動物体を構成する前景領域f20を構成する画素であるとする方法を採ればよい。
背景画像としては、予め移動物体が存在しない状態(たとえば、原画像P10に示す状態)で撮影した静止画像を利用することも可能であるが、天候や時刻などの要因により、照明環境は時々刻々と変化してゆくものであり、ある特定の時点で撮影した静止画像をそのまま背景画像として継続して利用するのは不適切である。そこで、通常は、過去に入力された複数の原画像に基づいて、これら原画像の平均的な特徴を有する平均画像を作成し、この平均画像を背景画像として利用する手法が採られる。ここに述べる例でも、このような手法で得られた平均画像を、背景画像として利用している。平均画像は新たな画像が入力されるたびに逐次更新されるので、常に、その時点で最適な背景画像として機能する。
図2は、このような方法で移動物体を検出する基本原理を示す図である。ここで、図の上段に示す画像P(1),P(2),... ,P(i−2),P(i−1),P(i)は、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像であり、これまでに第1番目の原画像P(1)から第i番目の原画像P(i)まで、iフレーム分の画像が与えられた状態が示されている。一方、図の中段左に示す画像P(i+1)は、新たに与えられた第(i+1)番目の原画像であり、図の中段右に示す画像A(i)は、図の上段に示す過去に与えられたiフレーム分の原画像P(1)〜P(i)の平均的な特徴を有する平均画像である。
新たに入力された原画像P(i+1)についての前景画像F(i+1)は、当該原画像P(i+1)と平均画像A(i)とを比較することによって作成される。図2の下段は、このようにして作成された前景画像F(i+1)を示すものである。具体的には、原画像P(i+1)上の各画素の画素値を、平均画像A(i)上の対応する画素の画素値と比較し、類似範囲内と判定された画素については背景領域b(i+1)を示す画素値(たとえば、「0」)を与え、類似範囲外と判定された画素については前景領域f(i+1)を示す画素値(たとえば、「1」)を与えることにより、二値画像からなる前景画像F(i+1)を作成すればよい。
続いて、第(i+2)番目の原画像P(i+2)が入力されたときには、過去に入力された第(i+1)番目の原画像P(i+1)までの平均的な特徴を有する平均画像A(i+1)が新たに作成され、原画像P(i+2)と平均画像A(i+1)とを比較することにより、前景画像F(i+2)が作成される。このように、平均画像は逐次更新されてゆくため、天候や時刻などの要因により、照明環境が変化した場合でも、各時点に適した背景画像としての機能を果たすことができる。
なお、平均画像を作成する際には、時系列に沿った重みづけを行うようにし、最新の原画像の情報に重みをおいた加重平均を求めるようにするのが好ましい。たとえば、過去10分間に入力された原画像について重み1、それ以前に入力された原画像について重み0を与えて平均を求めれば、常に、最新10分間に得られた原画像についての平均画像を得ることができ、照明環境が変化した場合にも対応することができる。もちろん、常に最新の原画像ほど重みづけが大きくなるように、重みづけをきめ細かく設定することもできる。
結局、この図2に示す例の場合、平均画像を作成する際には、第i番目の原画像P(i)が入力されたときに(i=1,2,...)、当該原画像P(i)を含めた過去の原画像について、それぞれ対応する位置の画素の各色別の画素値の重みづけ平均値を算出し、当該平均値をもつ画素の集合体からなる第i番目の平均画像A(i)を作成すればよい。そして、第(i+1)番目の原画像P(i+1)について、第(i+1)番目の前景画像F(i+1)を作成する際には、原画像P(i+1)と、第i番目の平均画像A(i)とを比較すればよい。
ただ、1秒間に30フレームという一般的なフレームレートで動画画像が入力された場合、過去10分間の原画像であっても、その画像データをすべて蓄積しておくには、画像データのバッファにかなりの記憶容量が必要になる。そこで、実用上は、第i番目の原画像P(i)が与えられたときに、第(i−1)番目の平均画像A(i−1)と、当該第i番目の原画像P(i)との2枚の画像に基づいて、第i番目の平均画像A(i)を作成する手法が採られる。図3は、このような手法に基づく平均画像の作成方法の一例を示す図である。
まず、最初の原画像P(1)が与えられたときには、当該原画像P(1)をそのまま最初の平均画像A(1)とする処理を行う。そして、以後、図3の上段右に示す第i番目の原画像P(i)が入力されるたびに(i=2,3,...)、図3の上段左に示す第(i−1)番目の平均画像A(i−1)を利用して、図3の中段に示す第i番目の平均画像A(i)を、図3の下段に示す
a(i)=(1−w)・a(i−1)+w・p(i) 式(1)
なる演算式を用いて作成すればよい。ここで、a(i)は、平均画像A(i)の所定位置の画素の所定色の画素値、a(i−1)は、平均画像A(i−1)の前記所定位置の画素の前記所定色の画素値、p(i)は、原画像P(i)の前記所定位置の画素の前記所定色の画素値、wは、所定の重みを示すパラメータ(w<1)である。
要するに、直前に与えられた原画像P(i−1)までの原画像について算出された第(i−1)番目の平均画像A(i−1)の画素値a(i−1)と、新たに与えられた第i番目の原画像P(i)の画素値p(i)とについて、重みwを考慮した平均値が算出され、当該算出値を第i番目の平均画像A(i)の画素値a(i)とする処理が行われることになる。このように、新たな原画像P(i)が入力されるたびに、平均画像A(i)を更新してゆき、しかも更新には直前の平均画像A(i−1)のみを用いるようにすれば、過去の原画像データを何フレーム分にもわたって蓄積保持しておく必要がないので、処理を行うために必要なバッファの容量を大幅に節約することができる。
図3に示すとおり、重みwの値を大きくすればするほど、最新の原画像P(i)の画素値が平均画像A(i)の画素値に大きな影響を与えることになる。図4は、図3に示す方法に基づいて作成される平均画像上の1画素の画素値変遷プロセスを示す図である。この例では、重みw=0.01に設定した具体例が示されている。
たとえば、第1番目(i=1)の原画像P(1)の特定位置の画素の画素値がp(1)=100であったとすると、第1番目の平均画像A(1)の当該特定位置の画素の画素値a(1)は、そのままa(1)=100となる。続いて、第2番目の原画像P(2)の当該特定位置の画素の画素値がp(2)=100であったとすると、第2番目の平均画像A(2)の当該特定位置の画素の画素値a(2)は、a(1)とp(2)との重みつき平均「0.99×100+0.01×100」を計算することにより、a(2)=100になる。
図示の例では、原画像の当該特定位置の画素値は、p(1)〜p(4)まで100のまま変化しないため、平均画像の当該特定位置の画素値も、a(1)〜a(4)まで100を維持する。ところが、第5番目の原画像P(5)では、画素値p(5)=200に急変したため、第5番目の平均画像A(5)の画素値a(5)は、図4の下段の式に示すとおり、a(4)とp(5)との重みつき平均「0.99×100+0.01×200」を計算することにより、a(5)=101になる。更に、第6番目の原画像P(6)および第7番目の原画像P(7)では、画素値p(6)=p(7)=200が維持されているため、図4の下段の式に示すとおり、第6番目の平均画像A(6)および第7番目の平均画像A(7)では、画素値a(6)=102、画素値a(7)=103、と徐々に増加している。
この例のように、重みwを0.01程度の値に設定すると、原画像の画素値が急激に変化しても、平均画像の画素値は直ちに変化することはなく、原画像の画素値にゆっくりと近づいてゆくことになる。したがって、図1に示す例のように、車両が通過する動画が与えられたとしても、一過性の画素値変化は、平均画像の画素値に大きな変化をもたらすことはなく、平均画像は背景画像としての機能を果たすことができる。一方、時刻が日中から夕暮れに変わった場合など、照明環境に変化が生じた場合、当該変化は多数のフレーム画像にわたって持続するため、平均画像の画素値も当該変化に追従して変化することになる。したがって、日中には日中の背景画像に適した平均画像が得られ、夕暮れには夕暮れの背景画像に適した平均画像が得られることになる。
本発明における前景画像は、このような方法で作成された平均画像を背景画像として、個々の原画像を比較することによって作成される。図5は、このようにして作成される前景画像の画素値決定プロセスを示す図である。第i番目の原画像P(i)についての前景画像F(i)は、次のような方法で決定される画素値をもつ画素の集合体からなる二値画像である。すなわち、前景画像F(i)の特定位置の画素の画素値f(i)は、原画像P(i)の当該特定位置の画素の画素値p(i)と、平均画像A(i−1)の当該特定位置の画素の画素値a(i−1)との比較によって決定され、両画素値が類似範囲内であれば、背景領域b内の画素であることを示す画素値(たとえば、「0」)が与えられ、両画素値が類似範囲外であれば、前景領域f内の画素であることを示す画素値(たとえば、「1」)が与えられる。
なお、実際には、原画像は三原色の各画素値(たとえば、RGB表色系の場合、R,G,Bの3色の画素値)をもったカラー画像であるので、原画像P(i)を構成する各画素の画素値p(i)や、平均画像A(i)を構成する各画素の画素値a(i)は、いずれも色ごとに独立した3つの値から構成されていることになる。そして、式(1)の演算は、個々の色ごとにそれぞれ独立して実行されることになる。たとえば、平均画像A(i)上の特定位置の画素の画素値a(i)は、R色の画素値、G色の画素値、B色の画素値という3組の画素値によって構成され、R色の画素値は、過去の原画像のR色の画素値の重みつき平均として得られた値になる。
したがって、図5における画素値p(i)と画素値a(i−1)との比較は、単なる2つの値の比較ではなく、3組の画素値と3組の画素値との比較ということになる。当然ながら、画素の類否判定は、この3組の画素値同士が類似するか否かを判定する処理ということになる。このような画素の類否判定の具体的な処理については、§2において詳述する。
<<< §2.画素の類否判定方法 >>>
本発明では、まず、原画像P(入力画像)について、移動物体を構成する前景領域fを抽出して前景画像Fを作成する必要がある。そのための方法として、§1で述べた方法では、原画像Pと平均画像A(背景画像)とを画素単位で比較して、両画素が類似している場合は背景領域bの画素、非類似の場合は前景領域fの画素という判定を行う。このように画素単位で類否判定を行う方法では、画素の類否判定が移動物体の検出精度を左右するファクターになるため、どのような方法で、どの程度の範囲までを「類似範囲」と判定するかが非常に重要である。
たとえば、§1では、図1の画像P10を平均画像(背景画像)とし、画像P20を原画像(入力画像)とした場合、両者の比較により、画像F20のような前景画像が得られることを述べた。ここで、前景画像F20の前景領域f20は、両画像P10,P20を比較した結果、画素が類似範囲外と判定された領域であり、背景画像b20は、画素が類似範囲内と判定された領域である。この場合、類似範囲を適切に設定しないと、正しい前景画像を得ることはできない。
すなわち、図1では、背景部分に全く同じ画像が描かれているが、実際の風景では、雲の動きで太陽光による照明環境が変化し、風により樹木の葉の位置や向きが微妙に変化する。したがって、画素の類否判定基準を厳しくすると、実際には背景部分であるのに、類似範囲外との誤判定が生じ、前景領域f内の画素との認定がなされてしまう。逆に、画素の類否判定基準を緩めると、実際には前景部分であるのに、類似範囲内との誤判定が生じ、背景領域b内の画素との認定がなされてしまう。
しかも、カラー画像の場合、前述したように、画素の類否は、一方の画素の3組の画素値と他方の画素の3組の画素値との比較に基づいて行う必要があるため、様々な類否判定基準を設定することが可能である。そして、どのような類否判定基準を採用するかによって、判定精度も変わってくる。通常、このようなカラー画像の画素の比較は、三次元の色空間上で、双方の画素値に対応する座標点をプロットし、両座標点の空間的な位置関係を調べることによって行われる。以下、各画素がRGB表色系の画素値をもっている場合について、色空間上での類否判定を行ういくつかの方法を説明する。
図6は、画素の類否判定の最も単純な方法を示す三次元色空間図である。図示のとおり、三原色R,G,Bの画素値を各座標軸にとったRGB三次元直交座標系に、座標点AおよびPがプロットされている。ここで、座標点A(Ra,Ga,Ba)は、背景を示す平均画像A上の画素の画素値(Ra,Ga,Ba)をプロットした点であり、座標点P(Rp,Gp,Bp)は、判定対象となる原画像P上の画素の画素値(Rp,Gp,Bp)をプロットした点である。
ここで、この三次元色空間上での2点A,Pの距離をδとすれば、当該距離δは、両画素の類似度を示す1つの指標になる。δ=0であれば、両画素は全く同一の画素値をもった画素になり、δが大きくなればなるほど、3つの画素値の総合的な類似度は低下する。したがって、予め所定の閾値δthを設定しておき、δ<δthであれば類似範囲内、δ≧δthであれば類似範囲外と判定するようにすれば、一応の判定基準を設定することができる。
あるいは、原点Oを起点として、座標点Aへ向かうベクトルVaと座標点Pへ向かうベクトルVpとを定義し、両ベクトルVa,Vpのなす角θを、両画素の類似度を示す指標として用いることもできる。θ=0の場合、2点A,Pは必ずしも同一の点にはならないが、原点Oを通る同一直線上の点になるため、少なくとも三原色R,G,Bの配合割合で決まる両画素の色相は類似したものになる。結局、θが小さければ、色相の類似性は高まることになるので、指標δを用いた判定基準と同様に、予め所定の閾値θthを設定しておき、θ<θthであれば類似範囲内、θ≧θthであれば類似範囲外と判定するようにすれば、一応の判定基準を設定することができる。
ただ、このような距離δや角度θを基準とした単純な類否判定方法を、一般的な実写画像における移動物体検出処理に利用した場合、満足した検出結果を得ることが困難であることが知られている。これは、距離δや角度θという単純なパラメータの値だけでは、太陽光による照明環境の変化、風による樹木等の明暗の変化など、実際の撮影環境に対応した適切な判定基準を設定することが困難なためである。
このような問題に対処するための具体的な方法として、円柱モデルを用いる類否判定方法が提案されている。図7は、この円柱モデルを用いる方法の基本原理を示す三次元色空間図である。この図7においても、図6と同様に、背景を示す平均画像A上の画素の画素値(Ra,Ga,Ba)が座標点Aとしてプロットされ、判定対象となる原画像P上の画素の画素値(Rp,Gp,Bp)が座標点Pとしてプロットされている。ここでも、ベクトルVa,Vpは、原点Oを起点として、各点A,Pへ向かうベクトルである。
このモデルでは、図示のとおり、座標点Aを中心として所定半径をもった長さLの円柱Cが定義されている。別言すれば、円柱Cは、ベクトルVa上に定義された基準軸Zを中心軸とし、その中心点が座標点Aにくるように配置された円柱ということになる。そして、この円柱Cの内部の空間領域を、背景を示す平均画像Aを構成する画素の類似範囲と定める。したがって、図示の例のように、座標点Pに対応する画素値をもった画素は、円柱Cの外側に位置するため類似範囲外と判定され、前景領域fを構成する画素と認定されることになる。逆に、座標点Pが円柱Cの内部に位置していれば、類似範囲内と判定され、背景領域bを構成する画素と認定される。
この円柱モデルの特徴は、ベクトルVaの方向を向いた基準軸Zを長手方向とする円柱領域が設定される点である。この円柱Cの半径は、色相の類似範囲を決めるパラメータとして機能し、長さLは明度の類似範囲を決めるパラメータとして機能する。前述したとおり、実際の景色では、太陽光による照明環境の変化、風による樹木等の明暗の変化などによって、背景領域bの画素値に時間的変動が生じることになるが、このような変動は、色相よりも明度に大きな影響を及ぼすと考えられる。したがって、このモデルのように、基準軸Zを長手方向とする円柱Cに基づいて類似範囲を設定することは理にかなっている。
一方、特開2011−076311号公報には、図7に示す円柱モデルの円柱Cの代わりに、回転楕円体を用いるモデルも提案されている。図8は、図7に示す円柱Cを回転楕円体Eaに置き換えた回転楕円体モデルを示す三次元色空間図である。ここで、類似範囲を示す回転楕円体Eaは、平均画像Aの画素値を示す座標点Aを中心点とし、ベクトルVa上に定義された基準軸Zaを長軸方向とする楕円を、基準軸Zaを回転軸として回転させることにより得られる回転体である。この回転楕円体Eaのサイズは、長軸方向の長さLa1と短軸方向の長さLa2によって規定される。
この回転楕円体モデルを用いた場合でも、類否判定の方法は、前述の円柱モデルを用いた場合の判定方法と同様であり、回転楕円体Eaの内部領域にプロットされる画素は、座標点Aに対応する画素値をもった画素に対して類似する画素と判定されることになる。具体的には、図示の例の場合、座標点Pに対応する画素値をもった画素は、回転楕円体Eaの外側に位置するため類似範囲外と判定され、前景領域fを構成する画素と認定される。逆に、座標点Pが回転楕円体Eaの内部に位置していれば、類似範囲内と判定され、背景領域bを構成する画素と認定される。
一方、図9は、図8に示す回転楕円体モデルのバリエーションを示す三次元色空間図である。図示のとおり、このモデルにおける類似範囲を示す回転楕円体Epは、判定対象となる原画像Pの画素値を示す座標点Pを中心点とし、ベクトルVp上に定義された基準軸Zpを長軸方向とする楕円を、基準軸Zpを回転軸として回転させることにより得られる回転体である。この回転楕円体Epのサイズは、長軸方向の長さLp1と短軸方向の長さLp2によって規定される。
図8に示すモデルの場合、背景を示す平均画像Aの画素値(Ra,Ga,Ba)をプロットした座標点Aを基準として、類似範囲を示す回転楕円体Eaが定義され、比較対象となる原画像Pの画素値(Rp,Gp,Bp)をプロットした座標点Pが、回転楕円体Eaの内側にあるか外側にあるかを判定していたのに対して、図9に示すモデルの場合、比較対象となる原画像Pの画素値(Rp,Gp,Bp)をプロットした座標点Pをプロットした座標点Pを基準として、類似範囲を示す回転楕円体Epが定義され、背景を示す平均画像Aの画素値(Ra,Ga,Ba)をプロットした座標点Aが、回転楕円体Epの内側にあるか外側にあるかを判定することになる。
要するに、前者では、新たに入力された原画像Pの画素が、背景を示す過去の平均画像Aの画素の類似範囲に入っているか否かを判定する手法をとるのに対して、後者では、背景を示す過去の平均画像Aの画素が、新たに入力された原画像Pの画素の類似範囲に入っているか否かを判定する手法をとることになる。結局、両者の相違は、比較対象となる2つの画素のどちらを基準にして回転楕円体を定義するかという点だけである。
そこで、以下の説明では、比較対象となる2つの画像のうち、一方の画像の画素値を基準画素値(R,G,B)と表記し、他方の画像の画素値を比較画素値(r,g,b)と表記することにする。また、三次元色空間上で基準画素値(R,G,B)をプロットした座標点Q(R,G,B)を基準点Qと呼び、比較画素値(r,g,b)をプロットした座標点q(r,g,b)を比較点qと呼ぶことにする。類否判定は、基準点Qを中心として定義された回転楕円体と比較点qとの位置関係に基づいてなされることになる。
図10は、このような一般的な表記にしたがって、回転楕円体モデルを図示した三次元色空間図である。原点Oを起点として基準点Qへ向かうベクトルをベクトルVとすれば、基準軸Zは、このベクトルV上の軸になる。そして、回転楕円体Eは、基準点Qを中心点とし、ベクトルV上に定義された基準軸Zを長軸方向とする楕円を、基準軸Zを回転軸として回転させることにより得られる回転体である。ここで、比較点q(r,g,b)が回転楕円体Eの内部に位置すれば、両画素は類似範囲内と判定され、回転楕円体Eの外部に位置すれば、両画素は類似範囲外と判定される。
図8に示すモデルは、図5に示す類否判定を行う際に、平均画像A(i−1)上の画素a(i−1)の画素値を基準画素値(R,G,B)として基準点Q(R,G,B)をプロットし、原画像P(i)上の画素p(i)の画素値を比較画素値(r,g,b)として比較点q(r,g,b)をプロットしたものである。これに対して、図9に示すモデルは、図5に示す類否判定を行う際に、原画像P(i)上の画素p(i)の画素値を基準画素値(R,G,B)として基準点Q(R,G,B)をプロットし、平均画像A(i−1)上の画素a(i−1)の画素値を比較画素値(r,g,b)として比較点q(r,g,b)をプロットしたものである。
特開2011−076311号公報によると、図7に示す円柱モデルに比べて、図10に示す回転楕円体モデルは、次の2つの利点を有している。第1の利点は、§1で述べた移動物体検出方法における画素の類否判定処理に利用した場合に、時刻や天候などによる照明変動の影響を排除した、より正確な移動物体の検出が可能になる点である。
図11は、円柱モデルに対する回転楕円体モデルの利点を示す断面図である。図示の例において、円柱Cの断面と回転楕円体Eの断面とを比較すると、いずれも基準点Qを中心として、基準軸Zの方向を長手方向とする図形であるが、図にハッチングを施す領域が、円柱Cでは内部領域と判定されるのに対して、回転楕円体Eでは外部領域と判定されることがわかる。したがって、比較点qが、このハッチング領域に位置する場合、一方では類似範囲内と判定され、他方では類似範囲外と判定される。もちろん、いずれの判定結果が正しいものであるかは、一概には決定できないが、少なくとも実写画像を用いた移動物体の検出処理に利用する限りにおいて、後者の判定結果が正しい結果となる可能性が高い。
すなわち、円柱モデルの場合、比較点qが図のハッチング領域内に位置する場合、判定対象となる画素は背景画像に類似しているため背景領域b内の画素とされることになるが、実際には、背景画像に対して非類似であり、前景領域f内の画素とすべきであった、というケースが比較的高い確率で生じる。図11に示すとおり、断面形状で比較すると、回転楕円体Eの断面は曲面からなる楕円であるのに対して、円柱Cの断面は直線からなる矩形であり、実写画像を対象物とした類否判定の境界線としては、断面が曲面からなる楕円の方が適している。
このように、少なくとも、実写画像に基づく移動物体の検出処理に利用する場合、円柱モデルよりも回転楕円体モデルの方が検出精度が向上するという第1の利点が得られる。一方、回転楕円体モデルを採用することにより得られる第2の利点は、演算負担の軽減を図ることができる点である。これは、回転楕円体Eのサイズを、三次元座標系の原点Oと基準点Qとの距離Δに比例した値に設定することができるようになるためである。
具体的には、図10に示すとおり、距離Δに、所定のパラメータm(但し、m<1)を乗じて求まる値α=m・Δを長軸半径とし、所定のパラメータn(但し、n<m)を乗じて求まる値β=n・Δを短軸半径とする楕円を、原点Oと基準点Qとを結ぶ基準軸Z上に長軸が重なるように、かつ、基準点Qが中心点となるように配置し、基準軸Zを中心に回転させることにより回転楕円体Eを定義すればよい。
このような条件で回転楕円体Eのサイズを決定すると、基準点Qが原点Oから離れれば離れるほど、回転楕円体Eのサイズは大きくなり、それだけ類似範囲が広くなる。これは、より明度の高い部分、すなわち、画像のハイライト部ほど、類似範囲が広くなることを意味するが、実用上、そのような類似範囲設定がなされても支障は生じない。一方、類似範囲内か否か、すなわち、回転楕円体Eの内部か外部かを判定するための演算負担は、長軸半径をα=m・Δ、短軸半径をβ=n・Δと設定することにより(すなわち、楕円のサイズを、距離Δに比例した値に設定することにより)、大幅に軽減することができる。その詳細は、特開2011−076311号公報に記載されているので、ここでは説明は省略する。
以上、カラー画像からなる原画像と背景画像(平均画像)とについて、互いに対応する位置にある画素の類否判定方法として、円柱モデルを用いた例および回転楕円体を用いた例を述べたが、本発明を実施するにあたり、カラー画像についての画素の類否判定方法は、必ずしも上述した方法に限定されるものではない。たとえば、円柱や回転楕円体の代わりに任意形状の立体を用いるようにしてもかまわない。
任意形状の立体モデルを採用する場合は、三原色の各画素値を各座標軸にとった三次元座標系において、基準画素値に対応する座標に位置する基準点Qと比較画素値に対応する座標に位置する比較点qをとり、基準点Qを中心とする所定サイズの立体と比較点qとの位置関係を調べ、比較点qが前記立体の外部に位置すると判定できる場合には類似範囲外との判定を行い、内部に位置すると判定できる場合には類似範囲内との判定を行うようにすればよい。
<<< §3. 本発明に係る撮影視野変動検知方法の基本原理 >>>
続いて、図1に示す例について、本発明に係る撮影視野の変動検知処理を施すことにより、撮影視野の変動を検知する基本原理を説明する。§1で述べたとおり、図1は、街頭に設置された定点ビデオカメラによる撮影画像を示すものであり、右から左へと1台の車両(移動物体)が通過する状態が示されている。このような4枚のフレーム画像P10,P20,P30,P40が原画像として与えられると、§1および§2で述べた方法により移動物体が検出され、それぞれについて前景画像F10,F20,F30,F40が作成される。
本発明では、こうして作成された前景画像F10,F20,F30,F40を解析することにより、撮影視野の変動、すなわち、カメラの向きの変動が生じたことを検知することになる。そのために、時間差をもって撮影された2枚の原画像の前景画像について、差分領域を抽出し、抽出した差分領域を示す差分画像を作成する。
図12は、2組の前景画像F30,F40に基づいて差分画像D40を生成するプロセスを示す平面図である。ここで、図12の上段に示す前景画像F30,F40は、図1に示す前景画像F30,F40と同じものであり、それぞれ原画像P30,P40を背景画像(平均画像)と比較することにより得られたものである。前景画像F30上の前景領域f30は車両に対応する領域であり、前景画像F40上の前景領域f40はこの車両が左方へと移動した状態を示すものである。なお、ここでは説明の便宜上、前景領域f30とf40とでは、斜線によるハッチングの向きを変えて示してある。
図12の中段は、前景画像F30,F40を同一平面上に重ねたものであり、前景領域f30とf40との相互位置関係が明瞭に示されている。すなわち、図に二重ハッチング(向きの異なる斜線が交差する網目状ハッチング)が施された領域は、前景画像F30,F40に共通する前景領域を示し、一重ハッチングが施された領域は、一方の前景画像にのみ存在する前景領域を示している。ここで言う差分領域とは、この一重ハッチングが施された領域を意味する。
すなわち、本発明において一対の前景画像F30,F40から抽出する差分領域とは、両前景画像F30,F40を重ねたときに、両前景領域f30,f40に差が生じている部分(幾何学的な排他的論理和部分)を意味する。図12の下段に示す画像は、こうして、両前景画像F30,F40から抽出された差分領域d40を示す差分画像D40である。ここでは、差分領域d40にドットによるハッチングを施して示すことにする。
要するに、各前景画像F30,F40を、前景領域f内の画素の画素値を「1」、背景領域b内の画素の画素値を「0」とする二値画像によって構成した場合、差分画像D40は、前景画像F30,F40について、幾何学的な排他的論理和演算を行うことによって得られる画像ということになる。
ところで、図1では、説明の便宜上、4枚のフレーム画像P10,P20,P30,P40が原画像として順番に与えられた場合を説明し、図12では、このうち、原画像P30,P40に対応して作成された前景画像F30,F40について、差分画像D40を求めるプロセスを示した。しかしながら、前述したとおり、一般的なビデオカメラの場合、1秒間に30フレーム程度の周期で連続して撮影画像が出力されるので、実際には、より細かな時間間隔で多数のフレーム画像が得られることになる。そこで、ここでは、原画像P30の次のフレームとして、移動物体(車両)がわずかだけ左方へ移動した原画像P31が得られたものと想定し、この原画像P30,P31に対応して作成された前景画像F30,F31について、差分画像D31を求めるプロセスを考えてみよう。
図13は、2組の前景画像F30,F31に基づいて差分画像D31を生成するプロセスを示す平面図である。この図13の上段に示す前景画像F30は、図12の上段に示す前景画像F30と同じものであるが、前景画像F31は、前景画像F40よりも前の時点に得られた画像であり、車両の位置を示す前景領域f31は、前景領域f30に比べて、わずかだけ左方に移動したものになっている。
図13の中段は、前景画像F30,F31を同一平面上に重ねたものであり、前景領域f30とf31との相互位置関係が明瞭に示されている。図13の下段に示す画像は、両前景画像F30,F31から抽出された差分領域d31を示す差分画像D31である。ここでも、差分領域d31にドットによるハッチングを施して示す。
結局、差分領域dは、比較対象となる一対の前景画像Fについて、前景領域f(移動物体を示す領域)の変動量を示すことになり、その面積が大きければ大きいほど、変動量も大きいことになる。別言すれば、移動物体の移動速度が速ければ速いほど、差分領域dの面積は大きくなる。
もっとも、差分領域dの面積は、比較対象となる一対の前景画像間の時間差にも依存する。たとえば、図12の下段に示す差分画像D40内の差分領域d40の面積(ドットによるハッチング部分)は、図13の下段に示す差分画像D31内の差分領域d31の面積よりも大きいが、これは車両の移動速度が異なるためではなく、原画像P30,P40の撮影時の時間差の方が、原画像P30,P31の撮影時の時間差よりも長く設定されているためである。したがって、差分領域dの面積に基づいて、移動物体の速度を評価するには、比較対象となる一対の前景画像間の時間差を予め定めておく必要がある。
たとえば、定点カメラが1秒間に30フレームの周期で連続して撮影画像を出力するビデオカメラであった場合、一連の撮影画像は、1/30秒の時間間隔をもった多数のフレーム画像として与えられることになるので、これらの画像をすべて原画像として取り込んで前景画像を生成し、各前景画像について、直前の前景画像との間で差分画像を生成することにすれば、比較対象となる一対の前景画像間の時間差は1/30秒ということになる。もちろん、当該ビデオカメラから得られる撮影画像を1フレームおきに原画像として取り込むような運用を行うこともでき、その場合は、比較対象となる一対の前景画像間の時間差は1/15秒ということになる。
このように、差分画像Dを求める際に用いる一対の前景画像間の時間差は、任意に設定することが可能であるが、この時間差の設定は差分領域dの面積を左右するパラメータになるため、同一の判定条件で変動検知を行う上では、当該時間差を一定値に維持するのが好ましい。以下の説明では、1秒間に30フレームのレートで与えられる撮影画像をそのまま原画像として取り込み、1秒間に30枚の前景画像を作成し、時間軸上で隣接する一対の前景画像(1/30秒の時間差をもった前景画像)について、それぞれ差分画像Dを求める場合を例にとることにする。
たとえば、図13に示す例の場合、前景画像F30とF31とは、1/30秒の時間差をもった原画像P30とP31について作成された画像ということになり、前景領域f31は、前景領域f30によって示されている移動物体(車両)の1/30秒後の位置を示している。そして、差分画像D31は、この1/30秒間において当該移動物体(車両)が変動した領域を差分領域d31として示す画像ということになる。同様に、原画像P32についても前景画像F32が作成され、前景画像F31とF32とについて差分画像D32が作成され、原画像P33についても前景画像F33が作成され、前景画像F32とF33とについて差分画像D33が作成され、... という具合に処理が続けられてゆくことになる。
本発明の基本原理は、定点カメラの撮影画像から移動物体を検出し、この移動物体の変動量と変動の分布に基づいて、撮影視野が変動したことを判定する、というものである。より具体的には、撮影視野に変動が生じたと判定するために、2つの条件が課されている。第1の条件は、移動物体の変動量が所定の基準以上であること、そして第2の条件は、移動物体の変動が撮影画面の全体に分布して生じていることである。
第1の条件を課す理由は、様々なゆらぎ成分の影響によって、撮影視野が変動したものと誤って判定されることを防ぐためである。図1には、背景画像が全く変化しない理想的な状況で移動物体(車両)を検出した例が示されており、前景画像F20,F30,F40に含まれる前景領域f20,f30,f40は、車両の輪郭を正確に検出したものになっている。しかしながら、実際の風景では、雲の動きによる照明環境の変化、風による樹木の葉の変化など、様々なゆらぎ成分の影響によって、本来は背景領域とすべき部分にも細かな前景領域が形成される。移動物体の変動量が所定の基準以上である、とする第1の条件を課せば、このようなゆらぎ成分に起因した細かな前景領域が判定に寄与することを防ぐことができる。
ここで、第1の条件判断に必要な移動物体の変動量は、差分画像D内の差分領域dの面積として把握することができる。たとえば、図13に示す例の場合、差分領域d31の面積は、移動物体の変動量を示している。そこで、本発明では、撮影視野に変動が生じたと判定するためには、この差分領域d31の面積が所定の基準以上である、とする第1の条件を課している。
もっとも、第1の条件が満たされただけでは、撮影視野に変動が生じた(定点カメラの向きが変化した)と判定するわけにはゆかない。実際、ここに示す例の場合、図13に示す差分領域d31の面積が所定の基準以上であっても、その原因は、車両がある程度の速度をもって撮影視野を通過したためであり、撮影視野に変動が生じたためではない。
そこで、本発明では、移動物体の変動が撮影画面の全体に分布して生じていること、という第2の条件を設定している。撮影視野内を人や車両などの移動物体が通過した場合、当該移動物体の変動は、図13に示すような差分領域d31として検出される。一方、定点カメラの向きが変化した場合は、人や車両だけでなく、撮影視野内の背景を含めたすべての被写体が移動することになり、いわば、人、車両、家屋、道路、樹木、空などがすべて移動物体として検出されることになる。したがって、その場合に得られる差分画像は、差分領域が画面全体に分布していることになろう。
第2の条件は、このような考え方に基づいて課されるものであり、差分領域が差分画像の全体に広く分布しているか否かという観点から判断することができる。たとえば、図13に示す差分画像D31の場合、差分領域d31は、主に画面の右下部分にのみ分布しているため、全体に分布していると判断することができない。したがって、第2の条件は満たされていない。
このように、本発明において、撮影視野に変動が生じたか否か、すなわち、定点カメラの向きが変化したか否か、を判定するためには、上記2つの条件判断が必要になる。そのため、本発明では、得られた差分画像Dを複数のブロックに分割し、ブロックごとに差分領域が占める占有割合を算出する、という手法を用いる。そして、占有割合が第1の閾値以上となるブロックを急変ブロックと認識し、個々の差分画像ごとに、急変ブロックの数を計数し、急変ブロックの数が第2の閾値以上となる差分画像が得られたときに、撮影視野に変動が生じた旨の検知を行うのである。
この手法を具体例に即して説明しよう。図14は、図13の下段に示す差分画像D31の拡大平面図である。ここでは、一般論として説明するため、この図14に示す画像を、第i番目の差分画像という意味で差分画像D(i)と呼ぶことにし、そこに含まれる差分領域を差分領域d(i)と呼ぶことにする。本発明では、この差分画像D(i)を複数のブロックに分割する。図15は、この差分画像D(i)を、縦に4分割、横に5分割して、合計20個のブロックB1〜B20に分割した例を示す平面図である。
こうして得られた20個のブロックB1〜B20について、それぞれ差分領域(図の例の場合、ドットによるハッチング部分)が占める占有割合Hを算出する。たとえば、図15に示す例の場合、ブロックB1〜B11,B16には、差分領域は一切含まれていないので、これらのブロックについての占有割合HはH=0%になる。一方、ブロックB12については、右下隅の微小部分が差分領域となっているため、H=2%といった結果が得られ、同様に、ブロックB13についてはH=17%、ブロックB14についてはH=3%、ブロックB15についてはH=12%、... 、といった結果が得られることになる。
図16は、図15に示す20個のブロックB1〜B20についてそれぞれ算出した差分領域の占有割合Hを示す平面図である。ここでは、第1の閾値をTh1=20%と設定し、閾値Th1以上となるブロックを太枠で表示してある。図示のとおり、占有割合Hが第1の閾値以上となるブロックは、右下のブロックB20(H=21%)のみである。本発明では、占有割合Hが第1の閾値Th1以上となるブロックを急変ブロックと呼んでいる。この急変ブロック内では、被写体の位置が急激に変動を生じていると推定できる。もちろん、そのような被写体の急激な変動が、車両などが通過したために生じたものであるのか、カメラの向きが変化したために生じたものであるのかは、当該ブロックについての占有割合Hの値だけからは判断することはできない。
そこで、1つの差分画像を構成する複数のブロックのうち、急変ブロックと認識されたブロックの数を計数し、この急変ブロックの数が第2の閾値Th2以上となる差分画像が得られたときに、撮影視野に変動が生じたと判定するのである。たとえば、第2の閾値Th2として、Th2=10個なる値(合計20個のブロックに対して50%となる値)を設定した場合、急変ブロックの数が10個以上あれば、撮影視野に変動が生じたと判定することができる。図16に示す例の場合、太枠で示す急変ブロックは、ブロックB20のみであるから、第2の閾値Th2には届かず、撮影視野に変動が生じたとの判定はなされない。
もちろん、急変ブロックか否かの認定基準は、第1の閾値Th1として与えられるものであるから、Th1の設定を変えれば、急変ブロックの数も変わることになる。たとえば、図17は、第1の閾値をTh1=15%に緩和した場合の急変ブロックを太枠で表示した例を示す平面図である。この場合、ブロックB13,B17,B20が急変ブロックとして認定されることになり、急変ブロックの数は3ということになるが、やはり第2の閾値Th2=10個には満たないため、撮影視野に変動が生じたとの判定はなされない。
実際、図1に示す事例は、カメラの向きに変動は生じず、同一の撮影視野を維持したまま、車両が通過する状態を撮影した場合に得られる撮影画像を示す例であるので、上記判定は正しい判定ということになる。
これに対して、図18に示す事例を考えてみよう。この事例は、原画像P30が撮影された時点までは、図1に示す事例と全く同じであるが、原画像P31の撮影直前にカメラの向きが変化し、撮影視野に変動を生じた事例である。たとえば、原画像P30に対応するフレーム画像が撮影された直後に、カメラの上に猫が飛び乗り、カメラの向きが下方に急変したようなケースでは、この事例のような原画像P31が得られることになる。原画像P10〜P30までの撮影視野は同一であるのに対して、原画像P31以降の撮影視野は全く異なるものになってしまっている。
原画像P30とP31とを比較すると、もちろん、通過車両が左方へと進行している点が異なるが、撮影視野全体が下方に移動しているため、上方部分に見えていた空がなくなり、下方部分には花壇や犬といった新たな被写体が出現している。その結果、原画像P31について得られる前景画像F31は、図18の左下に示すように、大部分が前景領域f31になる。これは、カメラの撮影視野を基準にした場合、背景を含めた被写体全体が上方に移動した形になるためである。すなわち、§2で述べた方法で、画像上の対応位置にある画素の類否判定を行って前景領域を抽出すると、大部分の画素が非類似と判断され、前景領域に含まれることになる。
図19は、図18に示す前景画像F30,F31に基づいて作成された差分画像D31の拡大平面図である。ここでは、一般論として説明するため、この図19に示す画像を、第i番目の差分画像という意味で差分画像D(i)と呼ぶことにし、そこに含まれる差分領域を差分領域d(i)と呼ぶことにする。ここでも、上述した例と同様に、この差分画像D(i)を合計20個のブロックに分割してみる。図20は、図19に示す差分画像D(i)に対して、このような分割を行った状態を示す平面図である。ここで、各ブロックについて、それぞれ差分領域が占める占有割合Hを算出し、急変ブロックの認定作業を行ってみる。
図21は、図20に示す各ブロックについてそれぞれ算出した差分領域の占有割合Hを示す平面図である。ここでは、第1の閾値をTh1=20%と設定し、占有割合Hが閾値Th1以上となる急変ブロックを太枠で表示してある。その結果、全20個のブロックのうち、17個のブロックが急変ブロックとして認識されている。したがって、上述した例と同様に、第2の閾値Th2として、Th2=10個なる値を設定した場合、急変ブロックの数が第2の閾値Th2以上となっているため、撮影視野に変動が生じたとの判定がなされることになる。
図22は、第1の閾値をTh1=50%として、急変ブロックの条件をより厳しくした場合の例を示す平面図である。このように条件を厳しく設定しても、全20個のブロックのうち、太枠で示す16個のブロックが急変ブロックとして認識され、やはり撮影視野に変動が生じたとの判定がなされることになる。実際、図18に示す事例は、原画像P31の撮影直前にカメラの向きが変化し、撮影視野に変動を生じた事例であるから、上記判定は正しい判定ということになる。
<<< §4. 本発明に係る撮影視野変動検知方法の手順 >>>
続いて、§3で述べた基本原理に基づいてカメラの撮影視野の変動(カメラの向きの変動)を検知する変動検知方法の手順を、図23の流れ図を参照しながら説明する。この手順は、実際には、コンピュータによる画像処理として実行されることになる。
はじめに、ステップS1において、必要な初期設定がなされる。具体的には、差分画像Dの分割数や分割方法、第1の閾値Th1や第2の閾値Th2の設定、図3に示す重みwの設定、図10に示すパラメータm,nの設定(回転楕円体の設定)などの処理が行われる。また、原画像(撮影されたフレーム画像)の番号を示すパラメータiを初期値1に設定した上で、初期原画像P(1)を入力し、これをそのまま初期平均画像A(1)に設定し、両者の初期差分画像D(1)が求められ、続いて、パラメータi=2に更新する処理が行われる。この場合、初期原画像P(1)と初期平均画像A(1)とは同一画像であるので、初期差分画像D(1)は全領域が背景領域bになる。続く、ステップS2以降の処理は、パラメータをi=2に設定してから順次行うようにする。
まず、ステップS2では、第i番目の原画像P(i)が入力され、続くステップS3において、この原画像P(i)から前景領域f(i)が抽出され、前景領域f(i)と、それ以外の領域(背景領域b(i))とを区別した二値画像として、前景画像F(i)が生成される。たとえば、パラメータi=2の場合、第2番目の原画像P(2)が入力され、この原画像P(2)と平均画像A(1)とを比較することにより、前景画像F(2)が生成されることになる。ここで、平均画像A(i)の具体的な更新方法や、前景画像F(i)の具体的な生成方法は、図3〜図5で説明したとおりである。
次に、ステップS4では、前景画像F(i)と1つ前の前景画像F(i−1)との差分(幾何学的な排他的論理和)をとることにより、差分領域d(i)が抽出され、差分画像D(i)が求められる。この差分画像D(i)は、たとえば、図14や図19に示すように、差分領域d(i)を示す画像である。そして、ステップS5では、図15や図20に示すように、差分画像D(i)が複数のブロックに分割される。
続いて、ステップS6において、ブロックの番号を示すパラメータjを初期値1に設定し、急変ブロック数を示すパラメータkを初期値0に設定した上で、ステップS7以降の処理が実行される。まず、ステップS7では、第j番目のブロック内の差分領域d(i)の占有割合Hが算出される。そして、ステップS8において、占有割合Hが第1の閾値Th1以上であるか否かが判断され、肯定的な場合には、ステップS9において、パラメータkが1だけ増加される。これは、占有割合Hが第1の閾値Th1以上であった場合には、当該ブロックを急変ブロックと認識し、急変ブロックの計数値を1だけ増やす処理ということになる。占有割合Hが第1の閾値Th1未満であった場合は、パラメータkの値は増加されない。
このステップS7〜S9の処理は、第i番目の差分画像D(i)内の全ブロックについて繰り返し実行される。すなわち、全ブロックについての処理が完了するまで、ステップS10からステップS11へと進み、パラメータjが1だけ更新され、ステップS7からの処理が続行されることになる。
こうして、全ブロックについての処理が完了すると、ステップS10からステップS12へと進み、パラメータkの値が第2の閾値Th2以上であるか否かが判断され、肯定的な場合には、ステップS13において、変動検知が行われる。すなわち、第i番目の差分画像D(i)内の急変ブロックの個数が第2の閾値Th2以上である場合、ステップS13の変動検知が行われることになるが、これは第i番目の原画像P(i)が撮影された直前において、カメラの向きが変わり、撮影視野が変動したことが検知されたことを意味する。
このようなステップS2〜S13の処理が、時系列で連続的に与えられる原画像P(i)について繰り返し実行される。すなわち、ステップS14において処理完了と判断されるまで、ステップS14からステップS15へと進み、パラメータiが1だけ更新され、ステップS2からの処理が続行されることになる。ステップS14における処理完了の判断は、たとえば、ステップS13の変動検知が行われた場合には、無条件で処理完了とするようにしておくことができる。この場合、変動が検知された時点で、この流れ図に示す処理は終了することになる。また、新たに入力される原画像がなくなった場合にも、処理完了とするようにしておくとよい。この場合は、変動が検知されなかったとしても、新たに処理すべき原画像がなくなると(定点カメラからの撮影画像の提供が中断すると)、この流れ図に示す処理は終了することになる。
要するに、本発明に係るカメラの撮影視野変動検知方法は、カメラによる撮影画像を、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像として入力する原画像入力段階と、過去に入力された複数の原画像の平均的な特徴を有する画像を背景画像として求め、新たに入力された第i番目(i=1,2,... )の原画像P(i)について、背景画像と相違する前景領域を抽出し、抽出した前景領域を示す前景画像F(i)を順次生成する前景領域抽出段階と、生成された第i番目(i=2,3,... )の前景画像F(i)と第(i−1)番目の前景画像F(i−1)とについて差分領域を抽出し、抽出した差分領域を示す差分画像D(i)を順次生成する差分領域抽出段階と、生成された個々の差分画像D(i)を複数のブロックに分割するブロック分割段階と、得られた個々のブロックごとに、それぞれ差分領域が占める占有割合を算出する占有割合算出段階と、占有割合が第1の閾値以上となるブロックを急変ブロックと認識し、個々の差分画像ごとに、急変ブロックの数を計数するブロック計数段階と、急変ブロックの数が第2の閾値以上となる差分画像が得られたときに、撮影視野に変動が生じた旨の検知を行う変動検知段階と、をコンピュータが実行するようにすればよい。
§3で述べたとおり、本発明では、「撮影視野が変動した」との判定を行うために、「移動物体の変動量が所定の基準以上である」という第1の条件と、「移動物体の変動が撮影画面の全体に分布して生じている」という第2の条件と、を課している。図23に示す手順では、第1の条件が満たされているか否かを判断するために、差分領域の占有割合Hが第1の閾値Th1以上となるブロックを急変ブロックと認識する処理(ステップS8)を行い、第2の条件が満たされているか否かを判断するために、急変ブロックの数が第2の閾値Th2以上であるか否かを判定する処理(ステップS12)を行っていることになる。
このように、第1の閾値Th1は第1の条件を左右するパラメータであり、第2の閾値Th2は第2の条件を左右するパラメータということになり、この2つのパラメータの設定によって、最終的な判定結果は左右される。したがって、この2つのパラメータTh1,Th2をどのような値に設定するかは、最終的な判定の精度を向上させるために非常に重要である。また、差分画像に対するブロック分割の分割数も判定の精度を左右するパラメータになる。
ただ、実際には、定点カメラの設置場所が屋外か屋内か、本来の撮影視野内の背景が浜辺のような単純な景色か、都市のような複雑な景色か、撮影視野内を横切る移動物体の速度が歩行者程度のものか高速走行中の車両程度のものか、移動物体の画面内の大きさがどの程度のものか、といった様々な要因に基づいて、ブロック分割の数、パラメータTh1,Th2の最適値は変わるものである。したがって、実用上は、個々の定点カメラの設置環境や用途を考慮して、ブロック分割数、パラメータTh1,Th2の最適値を適宜設定するようにするのが好ましい。
一般論としては、ステップS5におけるブロック分割の総数は、少なくすればするほど変動検知の感度は高くなり、多くすればするほど変動検知の感度は低くなる。このため、分割数をあまり少なくすると、ごく一部の領域にだけ変化があった場合にも撮影視野変動として検出されることになり、車両などの通過を撮影視野変動として誤検出してしまう可能性が高くなる。逆に、分割数をあまり多くすると、背景に白壁などの景色が含まれていた場合には、実際には撮影視野変動が生じているのに、ステップS13による変動検知が行われない検出漏れが発生する可能性が高くなる。
一方、ステップS8の判定で用いる第1の閾値Th1は、小さく設定すればするほど変動量に関する検知感度が高くなるので、車両が通過した際に生じる微細な振動などを、撮影視野変動として誤検出してしまう可能性が高くなる。逆に、大きく設定すればするほど変動量に関する検知感度は低くなるので、カメラの向きがある程度大きく変化しないと、撮影視野変動としての検出は行われなくなる。
また、ステップS12の判定で用いる第2の閾値Th2は、小さく設定すればするほど変動分布に関する基準が低くなるので、大型トラックが通過したような場合に、これを撮影視野変動として誤検出してしまう可能性が高くなる。逆に、大きく設定すればするほど変動分布に関する基準が高くなるので、画面全体に分布するような変動が検出されないと、撮影視野変動としての検出は行われなくなる。
本願発明者が行った一般的な実験によると、ステップS2で入力する原画像P(i)として、横320画素×縦240画素の解像度をもったカラービデオカメラで撮影された画像を用い、ステップS5におけるブロック分割を、横を8等分、縦を4等分するようにして、合計32個のブロックを形成し、第1の閾値Th1=50%、第2の閾値Th2=10個(全ブロック数の30%)という設定を行ったところ、様々な設置環境の定点カメラについて、撮影視野変動を正確に検知することができた。もちろん、上記特定の設定条件は、本願発明者が実験的に行った一例を示すものであり、本発明を実施するにあたっての設定条件が、上記特定の設定条件に限定されるものではない。
<<< §5. 本発明に係る撮影視野変動検知装置の構成 >>>
ここでは、§4で述べた変動検知方法を実施する機能をもった撮影視野変動検知装置100の構成を図24のブロック図を参照しながら説明する。この変動検知装置100は、定点カメラなどの撮影視野に変動が生じたこと、すなわち、本来は、同一の場所において同一の視野を一定期間にわたって継続して撮影することを目的として設置されたカメラの向きが、不測の要因によって変化したことを検知するための装置である。
図示のとおり、この変動検知装置100は、画像入力部110、前景領域抽出部120、前景画像格納部130、差分領域抽出部140、ブロック分割部150、占有割合算出部160、ブロック計数部170、変動判定部180、判定結果通知部190によって構成されている。以下、これらの各構成要素の機能を順に説明する。
画像入力部110は、カメラによる撮影画像を、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像Pとして入力するための構成要素である。たとえば、1秒間に30フレームのレートで撮影を行うデジタルビデオカメラからの画像を入力する場合、1/30秒の周期で連続的に与えられるフレーム画像をデジタルデータとして順次取り込む処理が行われる。ここでは、第i番目のフレーム画像を原画像P(i)と呼んで、以下の説明を行うことにする。
前述したとおり、本発明による変動検知処理は、コンピュータによる画像処理として実行されるため、アナログカメラからの画像を入力する場合は、入力時にデジタル画像に変換する処理が必要になる。また、カメラが撮影した画像がカラー画像の場合は、原画像P(i)は、三原色の各画素値を有する画素の集合体データとして与えられる。なお、画像入力部110は、必ずしもカメラで撮影された画像をリアルタイムで取り込む必要はなく、既に撮影済みの録画画像を原画像Pとして取り込んでもかまわない。この場合、撮影を行ったカメラの撮影視野変動をリアルタイムで検出することはできないが、撮影済みの録画画像を解析することにより、どのタイミングで撮影視野変動が発生したかを特定する処理を行うことが可能になる。
前景領域抽出部120は、こうして入力された原画像P(i)から前景領域f(i)を抽出し、抽出した前景領域f(i)を示す前景画像F(i)を順次生成する処理を行う。この前景画像F(i)は、前景領域f(i)とそれ以外の領域(背景領域b(i))とを区別する二値画像によって構成される。たとえば、図1に示す例の場合、原画像P10〜P40について、それぞれ前景画像F10〜F40が生成されることになる。
前景領域f(i)の抽出処理は、過去に入力された複数の原画像の平均的な特徴を有する画像を背景画像として求め、新たに入力された原画像について、背景画像と相違する領域を求めることによって行われる。前景領域抽出部120の具体的な構成例については後述する。
前景画像格納部130は、前景領域抽出部120によって生成された前景画像F(i)を順次格納する機能を有する。もっとも、前景画像F(i)は、差分領域を抽出する処理が行われるまでの間、一時的に格納されていれば足りるため、前景画像格納部130は、生成された前景画像F(i)をすべて格納する記憶容量をもった装置(メモリ)で構成する必要はない。すなわち、前景画像格納部130は、個々の原画像P(i)について生成された前景画像F(i)のうち、少なくとも2組の最新前景画像を格納する機能をもっていればよい。
したがって、実用上は、図示のとおり、前景画像格納部130を、奇数番目のフレームの前景画像を格納する第1のフレームメモリ131と、偶数番目のフレームの前景画像を格納する第2のフレームメモリ132と、によって構成し、前景領域抽出部120が、新たに生成した前景画像によって、第1のフレームメモリ131と第2のフレームメモリ132とを交互に書き換える処理を行うようにすればよい。
具体的には、第1番目の前景画像F(1)が生成されたら、これを第1のフレームメモリ131に格納し、第2番目の前景画像F(2)が生成されたら、これを第2のフレームメモリ132に格納し、第3番目の前景画像F(3)が生成されたら、これを第1のフレームメモリ131に格納し(F(1)を書き換えてしまってかまわない)、第4番目の前景画像F(4)が生成されたら、これを第2のフレームメモリ132に格納し(F(2)を書き換えてしまってかまわない)、というように、交互に書き換える処理を行えばよい。そうすれば、前景画像格納部130内には、常に、時間軸上で隣接する2組の最新前景画像F(i−1),F(i)が格納された状態になる。
差分領域抽出部140は、前景画像格納部130に格納されている2組の最新前景画像F(i−1),F(i)についての差分領域d(i)を抽出し、抽出した差分領域d(i)を示す差分画像D(i)を順次生成する処理を行う。たとえば、図13に示す例は、2組の前景画像F30,F31について差分画像D31を求めた例である。前述したとおり、この差分画像を求める処理は、対象となる2組の前景画像F(i−1),F(i)について幾何学的な排他的論理和を求める演算として行うことができる。
前景領域抽出部120によって生成された前景画像Fは、前景領域fを示す第1の画素値(たとえば「1」)と背景領域bを示す第2の画素値(たとえば「0」)とのいずれか一方の画素値をもった画素の集合体からなる二値画像として与えられる。そこで、差分領域抽出部140は、一方の前景画像F(i−1)の所定位置の画素と他方の前景画像F(i)の前記所定位置の画素とを読み出し、両者の画素値が同一か非同一かを判定する処理を行い、差分画像D(i)を構成する前記所定位置の画素に対して、非同一との判定が得られた場合には差分領域d(i)を示す画素値(たとえば「1」)を、同一との判定が得られた場合には差分領域外を示す画素値(たとえば「0」)を、それぞれ与えることにより、二値画像からなる差分画像D(i)を生成すればよい。
ブロック分割部150は、こうして生成された個々の差分画像D(i)を複数のブロックに分割する処理を行う。図15や図20には、差分画像D(i)を縦に4分割、横に5分割して、合計20個のブロックに分割した例が示されている。ここに示す例のように、画像入力部110が、矩形状の輪郭をもった原画像P(i)を入力すれば、前景領域抽出部120が生成する前景画像F(i)も矩形状の輪郭をもった画像になり、差分領域抽出部140が生成する差分画像D(i)も矩形状の輪郭をもった画像になる。このような一般的な例の場合、ブロック分割部150は、この矩形状の輪郭をもった差分画像D(i)を縦にN分割、横にM分割することにより、N×M個の矩形状のブロックに分割すればよい。
もちろん、本発明で取り扱う原画像Pは、必ずしも矩形状の輪郭をもった画像である必要はなく、たとえば、魚眼レンズなどを組み込んだ全方位カメラで撮影された円形画像であってもかまわない。また、ブロック分割の方法も、必ずしも縦にN分割、横にM分割する必要はなく、たとえば、同心円状や放射状に分割してもよいし、正六角形のブロックに分割してもかまわない。ただ、矩形状の輪郭をもった一般的な撮影画像を原画像として入力する場合は、上例のように、縦にN分割、横にM分割すれば、各画素の座標位置を求める演算負担が軽減される。
占有割合算出部160は、得られた個々のブロックごとに、それぞれ差分領域d(i)が占める占有割合Hを算出する処理を行う。たとえば、差分領域抽出部140が、差分領域d(i)を示す画素値を「1」、差分領域外を示す画素値を「0」とする差分画像D(i)を生成した場合、個々のブロックごとに、画素値「1」をもつ画素を計数し、当該ブロック内の全画素数に対する割合を求めればよい。その結果、図16や図21に%値として例示するような占有割合が算出される。
ブロック計数部170は、こうして算出された占有割合Hに基づいて、占有割合Hが第1の閾値Th1以上となるブロックを急変ブロックと認識し、個々の差分画像D(i)ごとに、急変ブロックの数kを計数する。図16,図17,図21,図22において太枠で示したブロックが急変ブロックであり、ブロック計数部170は、個々の差分画像D(i)ごとにその総数を計数することになる。
変動判定部180は、この急変ブロックの数kが第2の閾値Th2以上となる差分画像D(i)が得られたときに、当該差分画像D(i)に対応する原画像P(i)が撮影されたタイミングで、撮影視野に変動が生じたものと判定する。この判定結果は、判定結果通知部190により外部に通知される。
このように、図24に示す変動検知装置100は、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像Pを順次入力して、個々の原画像Pに対応する差分画像Dに基づいて変動の有無を判定する処理を実行し、判定結果を出力する機能を有している。このような処理は、実際には、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現することができ、図24に示す変動検知装置100は、ハードウエアとしてのコンピュータとこれに組み込まれたソフトウエアとの有機的結合体として構成することができる。あるいは、それと同等の機能を果たす装置を、半導体集積回路によって構成することも可能である。特に、図24に示す変動検知装置100の各構成要素が行う演算処理は、加算、乗算、比較演算といった比較的演算負担の軽い処理であるため、比較的安価なCPUを組み込んだ半導体集積回路でも十分に構成することができる。
なお、ブロック分割部150においてブロックを分割する際のブロック分割数、ブロック計数部170において急変ブロックか否かを判定する基準として用いられる第1の閾値Th1、変動判定部180において撮影視野に変動が生じたか否かを判定する基準として用いられる第2の閾値Th2は、§4で述べたとおり、判定精度を左右するパラメータになるので、カメラの設置環境などに応じた最適値を適宜設定するようにするのが好ましい。そこで、ブロック分割部150、ブロック計数部170、変動判定部180には、オペレータの操作によって、上記各パラメータ値を所望の値に設定できるような設定機能を設けておくのが好ましい。
続いて、図24に示す前景領域抽出部120の詳細な構成例を、図25を参照しながら説明する。前景領域抽出部120の役割は、過去に入力された複数の原画像Pの平均的な特徴を有する平均画像Aを背景画像として求め、新たに入力された原画像Pについて、この平均画像Aと相違する前景領域fを抽出し、抽出した前景領域fを示す前景画像Fを生成することにある。このような処理を行うために、図25に示す前景領域抽出部120は、図示のとおり、原画像格納部121、平均画像作成部122、平均画像格納部123、画像比較部124、パラメータ設定部125を有している。
ここで、原画像格納部121は、図24に示す画像入力部110によって入力された原画像Pを逐次格納する構成要素である。一方、平均画像作成部122は、過去に入力された複数の原画像Pに基づいて、これら原画像の平均的な特徴を有する平均画像Aを逐次作成する構成要素であり、平均画像格納部123は、作成された平均画像Aを逐次格納する構成要素である。
原画像Pがカラー画像の場合、平均画像作成部122は、第i番目の原画像P(i)が入力されたときに(i=1,2,...)、当該原画像P(i)を含めた過去の原画像について、それぞれ対応する位置の画素の各色別の画素値の重みづけ平均値を算出し、当該平均値をもつ画素の集合体からなる第i番目の平均画像A(i)を背景画像として作成し、平均画像格納部123に格納する処理を行うことになる。
原画像格納部121や平均画像格納部123は、バッファメモリによって構成することができる。平均画像作成部122が、図3に示す方法で重みwをパラメータとして平均画像Aを逐次作成し、これを平均画像格納部123に格納してゆくようにすれば、原画像格納部121には、常に処理に必要な最新の原画像Pのみが格納されるようにし、平均画像格納部123には、常に処理に必要な最新の平均画像Aのみが格納されるようにすればよいので、バッファメモリの容量を節約することができる。
具体的には、平均画像作成部122が、最初の原画像P(1)が入力されたときに、当該原画像P(1)をそのまま最初の平均画像A(1)として平均画像格納部123へ格納する処理を行い、以後、第i番目の原画像P(i)が入力されるたびに(i=2,3,...)、第i番目の平均画像A(i)を、
a(i)=(1−w)・a(i−1)+w・p(i)
(但し、a(i)は、平均画像A(i)の
所定位置の画素の所定色の画素値、
a(i−1)は、平均画像A(i−1)の
前記所定位置の画素の前記所定色の画素値、
p(i)は、原画像P(i)の
前記所定位置の画素の前記所定色の画素値、
wは、所定の重みを示すパラメータ(w<1))
なる演算式を用いて作成すればよい。
一方、画像比較部124は、平均画像格納部123に格納されている平均画像Aを背景画像として、原画像格納部121に格納されている原画像Pと比較し、相違する部分を前景領域f、それ以外の部分を背景領域bと認識し、前景領域fと背景領域bとを区別する二値画像として、前景画像Fを生成する機能を果たす構成要素である。要するに、画像比較部124は、図2に示すとおり、第(i+1)番目の原画像P(i+1)が入力されたときに、当該原画像P(i+1)と、第i番目の平均画像A(i)とを比較し、第(i+1)番目の前景画像F(i+1)を作成する処理を行うことになる。実際には、生成された前景画像Fは、図24に示す前景画像格納部130内のフレームメモリ131,132のいずれか一方に格納されることになる。
図25には、この画像比較部124を、画素値読出部124A、類否判定部124B、画素値書込部124Cによって構成した具体例が示されている。以下、これらの各構成要素の機能を順に説明する。
画素値読出部124Aは、比較対象となる一対の画像(すなわち、原画像格納部121に格納されている原画像Pと、平均画像格納部123に格納されている平均画像A)のうち、いずれか一方の画像の所定位置の画素の画素値を基準画素値(R,G,B)として読み出し、他方の画像の対応位置の画素の画素値を比較画素値(r,g,b)として読み出す処理を行う。
既に述べたとおり、図8に示すモデルを採用する場合は、平均画像Aの画素の画素値を基準画素値(R,G,B)として読み出し、原画像Pの画素の画素値を比較画素値(r,g,b)として読み出すことになる。これに対して、図9に示すモデルを採用する場合は、逆に、原画像Pの画素の画素値を基準画素値(R,G,B)として読み出し、平均画像Aの画素の画素値を比較画素値(r,g,b)として読み出すことになる。
類否判定部124Bは、比較画素値(r,g,b)が、基準画素値(R,G,B)について設定された所定の類似範囲に入っているか否かを判定する処理を行う。具体的には、図10に示すように、三原色の各画素値を各座標軸にとった三次元座標系において、基準画素値(R,G,B)に対応する座標に位置する基準点Q(R,G,B)と比較画素値(r,g,b)に対応する座標に位置する比較点q(r,g,b)をとり、基準点Qを中心とする所定サイズの回転楕円体Eと比較点qとの位置関係を調べ、比較点qが回転楕円体Eの外部に位置すると判定できる場合には類似範囲外との判定を行い、内部に位置すると判定できる場合には類似範囲内との判定を行う。このとき、回転楕円体Eのサイズは、パラメータm,nを参照して決定される。
そして、画素値書込部124Cは、前景画像Fを構成する所定位置(画素値読出部124Aの読出対象となった位置)の画素の画素値として、類否判定部124Bの判定結果に応じた値を定め、図24に示す前景画像格納部130内のフレームメモリ131,132のいずれか一方に書き込む処理を行う。すなわち、類否判定部124Bが類似範囲内と判定した場合には背景領域bを示す画素値(たとえば、「0」)を、類否判定部124Bが類似範囲外と判定した場合には前景領域fを示す画素値(たとえば、「1」)を、それぞれ前景画像格納部130内のフレームメモリ131もしくは132に書き込む処理を行う。
一方、パラメータ設定部125は、平均画像作成部122による平均画像作成処理に利用されるパラメータw(図3に示す重みw)と、類否判定部124Bの類否判定処理に利用されるパラメータm,n(図10に示す長軸半径αおよび短軸半径βを決定するための値)とを、ユーザの操作入力によって任意の値に設定する機能を有する。ユーザは、必要に応じて、これらパラメータw,m,nの値を調整することにより、より精度の高い検出結果を得ることができる。もっとも、これらのパラメータの一部もしくは全部は、固定値にしておくことも可能である。全部のパラメータ値を固定値にする実施例では、パラメータ設定部125を設ける必要はない。
<<< §6. 本発明に係る撮影視野変動検知装置の応用例 >>>
本発明に係る撮影視野変動検知装置は、カメラによる撮影画像を、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像として入力して解析し、カメラの撮影視野の変動を検知する処理を行う機能をもった装置である。ここでは、この撮影視野変動検知装置を定点監視システムおよび画像処理システムに応用した実施形態を述べることにする。
図26は、本発明に係る定点監視システムの構成例を示すブロック図である。図示のとおり、このシステムは、定点カメラ10、モニタ装置20、変動検知装置100によって構成されている。定点カメラ10は、所定の視野内の撮影画像を時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像として出力するカメラであり、一般的な監視カメラとして利用されているデジタルビデオカメラによって構成することができる。
もちろん、この定点カメラ10には、向きを制御する機構が組み込まれていてもかまわない。本発明にいう「定点カメラ」とは、同一の場所において同一の視野を一定期間にわたって継続して撮影することができるカメラであればよいので、特定箇所を継続して監視する用途等に利用できれば、遠隔操作等によって向きを調整する機能をもったカメラでもかまわない。
モニタ装置20は、定点カメラ10で撮影された画像をリアルタイムで表示する機能をもった装置であり、たとえば、一般的な液晶ディスプレイなどで構成することができる。このように、定点カメラ10にモニタ装置20を組み合わせた定点監視システムは、ごく一般的に広く利用されているシステムである。図26に示す定点監視システムは、この一般的なシステムに、更に変動検知装置100を付加したものである。この変動検知装置100は、図24に示す装置であり、定点カメラ10の撮影視野の変動を検知する機能を有している。定点カメラ10が撮影したフレーム単位の画像は、モニタ装置20に与えられるとともに、変動検知装置100にも与えられ、定点カメラ10の撮影視野の変動が検知される。
特に、図26に示す実施形態の場合、変動検知装置100内の変動判定部180が、撮影視野に変動が生じたものと判定した場合に、変動検知装置100内の判定結果通知部190が、オペレータに対する変動警報を発する機能を有している。変動警報としては、たとえば、警報ブザーを鳴動させるような音による警報手段や、赤ランプを点灯あるいは点滅させるような光による警報手段を採用することができる。モニタ装置20を監視しているオペレータは、このような変動警報により、定点カメラ10の向きに異常が生じたことを認識することができる。
もちろん、オペレータが単一のモニタ画面のみを注視しているような場合には、撮影視野が変動したときに、モニタ画面上の情報から異常発生を直ちに認識することができるかもしれないが、ビルの警備室などのように、多数の定点カメラからの撮影画像を多数のモニタ画面に表示しながら監視する環境では、1つの定点カメラの撮影視野に異常が発生したことを直ちに認識することは困難である。したがって、変動検知装置100からの変動警報は、オペレータに異常発生を認識させる上で非常に有益である。
図27は、本発明に係る定点監視システムの別な構成例を示すブロック図である。このシステムは、定点カメラ10、モニタ装置20、変動検知装置100に加えて、更に画像記録装置30を備えており、定点カメラ10で撮影された画像は、モニタ装置20、画像記録装置30、変動検知装置100に与えられる。モニタ装置20は、定点カメラ10で撮影された画像をリアルタイムで表示する機能をもった装置であり、画像記録装置30は、定点カメラ10の撮影画像を記録する機能をもった装置である。また、変動検知装置100は、図24に示す装置であり、定点カメラ10の撮影視野の変動を検知する機能を有している。
この図27に示す定点監視システムでは、変動検知装置100内の変動判定部180が、撮影視野に変動が生じたものと判定した場合に、変動検知装置100内の判定結果通知部190が、画像記録装置30に対して撮影画像の記録を中止させるための記録中止信号を与える機能を有している。画像記録装置30は、起動後の通常動作状態では、定点カメラ10による撮影画像を逐次記録してゆく処理(録画処理)を行うことになるが、変動検知装置100から記録中止信号が与えられると、そこで録画処理を中止する機能をもっている。
したがって、たとえば、定点カメラ10によって、図18に原画像P10〜P30として示すような画像が撮影された場合、原画像P10〜P30までは画像記録装置30によって記録されるが、原画像P31が撮影された時点で、変動検知装置100によって撮影視野の変動が検知され、記録中止信号が出される。したがって、それ以降の撮影画像(不適切な撮影視野についての撮影画像)の記録は中止される。
もちろん、図26に示す実施形態と同様に、変動検知装置100にオペレータに対する変動警報を行う機能をもたせておけば、記録中止信号が出力されたときに、オペレータに対して変動警報がなされることになるので、オペレータは異常発生により録画処理が中止されたことを認識することができる。オペレータが、定点カメラ10の向きを正常に戻した後、システムを再起動すれば、再び、画像記録装置30による録画処理が続行する。
防犯の目的で利用される監視システムでは、画像記録装置30に長時間の記録を行うことが多く、通常は記録容量を抑制するために古い画像データから消去するような処理が行われる。このように、ハードウエア的に限られた記録容量を有効利用する上では、無駄な画像データの記録を避けることは重要である。図27に示すシステムでは、撮影視野に変動が生じた場合、録画処理が中止されるので、不適切な撮影視野についての撮影画像が無駄に記録されることを防ぐことができ、限られた記録容量を有効利用することができる。
なお、撮影画像の記録のみを行い、リアルタイムでの監視が不要な場合には、図27に示すシステムにおけるモニタ装置20は省略することができる。
図28は、本発明に係る画像処理システムの構成例を示すブロック図である。図示のとおり、このシステムは、定点カメラ10、モニタ装置20、画像処理装置40、変動検知装置100によって構成されている。図27に示すシステムと同様に、定点カメラ10は、所定の視野内の撮影画像を時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像として出力するカメラであり、モニタ装置20は、定点カメラ10で撮影された画像をリアルタイムで表示する機能をもった装置である。また、変動検知装置100は、図24に示す装置であり、定点カメラ10の撮影視野の変動を検知する機能を有している。
一方、画像処理装置40は、定点カメラ10から時系列で順次与えられる原画像に対して所定の画像処理を行う装置である。この画像処理装置40としては、たとえば、§1で述べた前景領域抽出処理と同等の処理によって移動物体を認識する処理、認識した移動物体が車両である場合にはナンバーを認識する処理、認識した移動物体が人物である場合には顔を認識する処理などを行う装置を用いることができる。この画像処理装置40による処理結果は、モニタ装置20に表示することができる。
この画像処理システムの特徴は、定点カメラ10による撮影画像が、モニタ装置20および画像処理装置40に与えられるとともに、変動検知装置100へも与えられて変動検知が行われ、変動検知装置100内の変動判定部180が、撮影視野に変動が生じたものと判定した場合に、変動検知装置100内の判定結果通知部190が、画像処理装置40に対して画像処理を中止させるための処理中止信号を与える点である。
画像処理装置40は、定点カメラ10の位置および向きが固定され、常に所定の撮影視野内を撮影することを前提として、撮影画像に対して何らかのアルゴリズムに基づく画像処理を実行する装置であるため、与えられた撮影画像が、本来想定していた撮影視野内の画像でなかった場合には、正しい処理を行うことができない。
たとえば、駐車場のゲートに設置された定点カメラ10で、車両のナンバー付近を撮影視野として画像を撮影し、当該撮影画像に対して画像処理装置40において画像処理を施し、車両のナンバーの情報を抽出する作業が行われる場合を考えてみよう。この場合、画像処理装置40は、与えられる撮影画像が、車両のナンバー付近を撮影視野として得られた画像であるという前提で、車両のナンバーを検出する作業を行うことになる。したがって、不測の原因によって撮影視野が変動してしまうと、正しい検出作業を行うことはできなくなり、誤った検出結果を出力する可能性がある。
このような場合でも、図28に示すシステムでは、変動検知装置100によって撮影視野の変動が検知され、画像処理装置40に対して処理中止信号が与えられるので、画像処理装置40によるナンバー検出処理は中止され、誤った検出結果が出力されることを防止することができる。このように、図28に示す画像処理システムでは、撮影視野に変動が生じた時点で画像処理装置40に対して処理を中止させることができ、不適切な画像処理が続行されることを防止することができる。
続いて、図28に示す画像処理システムの変形例を図29に示す。図28に示す画像処理システムと図29に示す画像処理システムとの相違点は、前者における定点カメラ10を、後者では画像記録装置35に置き換えた点だけである。すなわち、図29に示す画像処理システムには、定点カメラは含まれていない。ただ、画像記録装置35には、複数枚の原画像が時系列で記録されている。すなわち、画像記録装置35内には、定点カメラ10で撮影された所定の視野内の撮影画像が、時系列で連続的に与えられるフレーム単位の原画像として記録されている。
画像処理装置40は、定点カメラ10から与えられる画像に代えて、この画像記録装置35に記録されている原画像を時系列に沿って順次読み出し、読み出した原画像に対して所定の画像処理を行うことになる。要するに、図28に示す画像処理システムでは、定点カメラ10によって撮影された画像が、画像処理装置40内でリアルタイムで処理されるのに対して、図29に示す画像処理システムでは、定点カメラ10によって撮影された画像が、一旦、画像記録装置35によって記録され、画像処理装置40が、この画像記録装置35内に記録されている画像に対して処理を行うことになる。
この図29に示すシステムでは、画像処理装置40が画像記録装置35から読み出した原画像は、変動検知装置100にも与えられ、変動検知装置100内の変動判定部180が、撮影視野に変動が生じたものと判定した場合に、変動検知装置100内の判定結果通知部190が、画像処理装置40に対して画像処理を中止させるための処理中止信号を与えることになる。したがって、図28に示すシステムと同様に、撮影視野に変動が生じた時点で画像処理装置40に対して処理を中止させることができ、不適切な画像処理が続行されることを防止することができる。
なお、図28または図29に示す画像処理システムにおいて、画像処理のみを行い、モニタ画面上での確認を行う必要がない場合には、モニタ装置20は省略することができる。
以上、本発明に係る撮影視野変動検知装置の応用例として、定点監視システムおよび画像処理システムを例示したが、本発明に係る撮影視野変動検知装置は、この他にも様々な用途に利用可能である。たとえば、定点カメラから撮影画像データを伝送するための伝送ケーブルや、通信回線に何らかのトラブルが生じて、撮影画像の伝送が途絶えた場合も(受信側では、いわゆる、真っ黒の画像が得られることになる)、本発明に係る撮影視野変動検知装置によって視野変動の検出が行われる。
同様に、伝送ケーブルや通信回線がノイズの影響を受け、伝送されてきた画像上にノイズが混入した場合にも、本発明に係る撮影視野変動検知装置によって視野変動の検出が行われる。したがって、本発明に係る撮影視野変動検知装置は、伝送ケーブルや通信回線の異常検出という一般的な用途にも利用することが可能である。
また、定点カメラの向きに変動が生じていなくても、たとえば、風で飛ばされたゴミ袋がカメラのレンズを覆ってしまったり、鳥の糞、ペンキ、その他の汚物がレンズに付着したような場合にも、本発明に係る撮影視野変動検知装置によって撮影視野の変動検知が行われる。このように、本発明に係る撮影視野変動検知装置によって検知可能な変動は、必ずしもカメラの向きの変動に限定されるものではなく、カメラの光学系の一部もしくは全部が何らかの障害物で覆い隠されたことに起因した撮影視野の変動も含まれる。