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JP5963355B2 - 金属丸断面線材の製造方法、およびニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材の製造方法、溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法、抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法 - Google Patents
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金属丸断面線材の製造方法、およびニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材の製造方法、溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法、抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、帯板材から丸断面線材に成形することにより、表面損傷のない金属丸断面線材を製造することが可能な金属丸断面線材の製造方法と、この製造方法によって得られる金属丸断面線材、ニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材、溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材に関する。
これまで、金属製丸断面線材の中には、一般市場に流通していないものがあり、例えば、固相窒素吸収処理によりニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼線を得ようとする場合の被処理線材は一般市場において流通していない。また、燃料電池用改質装置に用いられる耐高温酸化性フェライト系ステンレス鋼板を締結するための溶接線材も一般市場に流通していない。
従来の一般的な金属線の製造方法としては、鍛造した丸棒状のビレットを熱間圧延および冷間圧延を施した後、穴ダイスにより引抜加工した製線ロット材を、伸線機により逐次所定の細さまで引抜いていく方法が採られている。
この場合、線材としての需要量が少ない成分系ビレットの場合には、製鋼メーカーは板材だけを製造し、製線ロット材を製造することができない。そのため、板材と同じ成分系の鋼線は市場に流通せず、同板材を溶接する等の際には、成分が近い溶接線を止むを得ず使用しているのが実情である。
特許文献1には、薄板材をV溝圧延ロールを用いて、上下対称的にV溝を形成した後に分離し、複数の折線よりなる斜面を設けた上下線対象の断面としたことを特徴とする金属線材が開示されている。しかし、特許文献1では、切断した上下線対称断面の線材を圧延ロールによって成形することは記されているものの、丸断面までに成形すること、特に表面や表層に欠陥がない丸断面線材を得る方法にまでは至っていない。
また、この方法では著しく効率が低いチタン材などの難加工材については、薄板を所定幅に切断した方形断面素材をローラ成形する技術が、特許文献2に記載されている。この特許文献2には、板材スリットから丸断面線材を成形する過程において、巻き込みキズを取り除く為に皮むきダイスを通過させることや表面研磨を施すことなどが提案されているが、完全に疵を解消するための詳しい手法については明らかにされていない。また、薄板を所定幅に切断した方形断面素材を溝ローラによって圧延成形する技術が、特許文献3に開示されている。また、溝ローラ成形後に皮むきを行う技術等が、特許文献4に開示されている。
特開平7−112201号公報 特公平1−26763号公報 特開平7−204709号公報 特開平9−276901号公報
しかし、薄板を所定幅に切断して得た断面方形の素材から、半丸溝のロール圧延や丸孔ダイスによる引抜き伸線加工を行って、断面丸形細線を得る場合には、方形の隅部が丸形状に移行する過程で倒れこみ巻き込みながら丸形状に成形されていくことになる。そのため、最終仕上げ線の表面、特に角部が倒されて巻き込まれたラインに無数の疵が残る。また、伸線加工で見かけ上の表面疵は確認できなかったとしても、塑性加工の性質により内部欠陥や表層剥離等の問題は必ず起こる。特に、普通にせん断しただけで得られる4角形断面形状のものでは、角部の角度が鋭いために引抜加工により容易に倒され巻込まれるため、最終仕上げ線径の表面に大きな疵を数多く発生させる。これらの問題は、曲げ加工や圧造加工、転造加工等の次工程加工において、破断や内部欠陥の増大、あるいは表面損傷の増大などの新たな問題を引き起こす原因となる。
これらの問題点は、線材を様々な用途に用いた場合に、多くの悪影響を及ぼす。例えば、機械構造物に使用する際には設計強度不足等の原因となり、医療用器具材に使用する際には医療事故発生の原因となる。また、装飾具材に使用する際には表層欠陥による美観損耗の原因となり、電熱線や抵抗線等の部材に使用する際には、欠陥部が電気抵抗の増大を招いて、ショートする等の原因となる。
また、この倒れ巻き込みキズ対策のために、線材成形の初期または中間段階で、線材の直径より若干小さい穴径を有する皮むきダイスを通して表層部を疵ごと削りとる方法も提案されている。しかし、断面方形素材時には角部を均等に削ることが困難なことや、線径2mm以下の比較的細い線材では、却って皮むきダイス刃の喰い込みによる伸線加工途中に起こる断線や、局部的に喰い込みキズが発生するなどして、そのキズが最終仕上げまで残ってしまうという問題が生じている。これらの問題に配慮して加工を行うと、加工効率が著しく低下することになる。従って、皮むき加工単独では、その効果に限界がある。
金属製丸断面線材の用途として期待されているものの一つに、ニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼線がある。
ニッケルについての規制は、欧州では、皮膚と直接かつ長時間接触する製品についての使用および流通に対する規制が定められており、これらの製品では、少なくとも2年間の日常使用において、ニッケルの溶出量が0.5μg/cm/週を超えないことが保証されない限り、使用することができない。このような規制は、日本国内においても今後なされることが予想されることから、該当する装身具部材や医療器具等の分野では、これらの規制に対応できる革新的な素材として、ニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼線が強く求められている。
ニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼線の製造方法については、ニッケルの代替として窒素を添加する製法が最も有望とされ、製鋼の段階での加圧溶解窒素添加法や、Fe−20〜30Cr鋼を基材として、これに固相窒素吸収させる方法等が研究されているが、実用化されている例は無い。ニッケルフリーオーステナイト線材の基材となるFe−20〜30Cr線材は市場に一般流通していない一方で、鋼板帯板材についてのFe−20〜30Cr鋼は存在している。
従って、世の中で強く求められているニッケルフリーオーステナイト鋼線材を実用化するために、一般流通しているFe−20〜30Cr鋼板帯板材から連続で角断面に切断した線材に、連続窒素吸収処理によりニッケル代替の窒素を添加した後、丸断面線材に伸線仕上げすることができれば、特に装身具材や医療器具材に求められる、表面キズが無く、寸法精度の優れたニッケルフリーオーステナイト線材を得ることができると考えられる。
また、線材の用途として検討されているもう一つの例として、燃料電池用改質装置に用いられる耐高温酸化用フェライト系ステンレス鋼板を締結する溶接線がある。
近年、開発実用化が進められている定置用燃料電池、中でも固体酸化物形燃料電池(SOFC, Solid Oxide Fuel Cell)は、改質部において改質反応に適するように、900〜1000℃の高温に加熱される。
改質部は、燃焼火炎が発生する燃焼室、水素や一酸化炭素等の改質ガスが通過するガス通路、改質用燃料を改質させる水蒸気通路等が備えられた構造となっている。使用される板材にはそれぞれの層環境における過酷な状況に対して、熱膨張係数が小さくかつ耐酸化性、耐クロム蒸発性に優れたアルミ含有フェライト系ステンレス鋼板が使用されている。
しかし、この優れた特性の鋼板を使用して上記の筒体を作製するためには、鋼板を繋ぎ合せるために溶接加工が必要とされるが、その溶接加工に関しては、同成分の溶接ワイヤが一般市販されていないため、成分値が最も近いとされるSUH鋼溶接ワイヤを用いているのが現状である。この溶接ワイヤの使用で問題なく締結は可能なものの、長期耐久性でみた場合には、鋼板部に比較して溶接部の方が先に劣化してしまうという欠点がある。
従って、構造体に使用される鋼板コイルと同じ成分組成を有する溶接ワイヤを得るために、同鋼板帯板から連続で角断面に切断した線材を丸断面線材に仕上げすることができれば、極めて有用である。
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ニッケルフリーオーステナイト線材や、構造体に使用される鋼板コイルと同じ成分組成を有する溶接ワイヤへの適用を想定して、薄板を所定幅に切断して得た断面方形の素材から断面丸形細線へ成形する加工技術を用いて、線材の表面に生じる倒れこみ巻き込みキズをなくすことにより、表面キズが無く、寸法精度の優れた線材を製造することが可能な金属丸断面線材の製造方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の金属丸断面線材の製造方法は、圧延加工された金属帯板材を長手方向に連続スリッティング加工を行うスリッティング工程と、前記スリッティング工程によって得られた、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材に対する引抜伸線加工と、前記引抜伸線加工によって潰されて引き込まれた角部の層を除去するための皮むき加工と、線材断面外周表面を研磨する研磨加工とからなる組み合わせ加工工程とを有し、前記組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行い、引き続いて線材の直径が所定の直径寸法となるまで、引抜伸線にて加工することを特徴とする。
スリッティング工程によって得られた角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材に対して、引抜伸線加工を施すことにより、角部を潰しこんで薄層にし、皮むき加工により疵発生の根源となる薄層を剥ぎ落とす。その後、研磨加工により皮むき刃が届かない部分、すなわち、円ダイスに接触した後の円弧部と平面部の継ぎ目を滑らかにし、皮を剥いた部分を滑らかにする。これらの組合せ加工を、線材断面外周の深い傷がなくなるまで繰返し、その後に引抜きを行うことにより、板材から表面性状の優れた疵の少ない金属丸断面線材を得ることができる。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記スリッティング工程は、表裏1対のV形状ロールまたはR付ロールにより、表裏対称に溝を形成する溝加工工程と、刃側と抑え側に角度またはRを有するせん断ロールを用いて、溝の傾斜角を壊さずに表側溝頂点から裏側溝頂点までをせん断して、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成するせん断加工工程とからなるようにすることができる。
溝加工工程による溝の形成後に、角度なしのせん断ロールを用いると、溝の型崩れが起きて、線材が歪な形状となるが、刃側と抑え側に角度またはRを有するせん断ロールを用いることにより、溝の型崩れを防ぎ、断面形状が綺麗な線材を得ることができる。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記スリッティング工程は、表裏1対のV形状ロールまたはR付ロールにより、表裏対称に溝を形成する溝加工工程と、刃側と抑え側に角度またはRを有するせん断ロールを用いて、溝の傾斜角を壊さずに表側溝頂点から裏側溝頂点までの途中まで切込みを入れる第一せん断加工工程と、前記V形状ロールまたは前記R付ロールを逆方向から線断面の半分まで押し当てる第二せん断加工工程と、圧延平ロールによって圧延を行って、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成する圧延平ロール分離加工工程とからなるようにすることができる。
第一せん断加工工程と第二せん断加工工程と圧延平ロール分離加工工程とを行うことによって、せん断面にばりが発生することを防止できる。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記組み合わせ加工工程を、線材の直径がスリッティング加工前の金属帯板材の厚み寸法の80%以上95%以下の円直径寸法になるまで、同一列上にて連続的に行い、引抜伸線加工における断面減少率は1%以上20%以下であり、皮むき加工における皮むき量は、皮むき加工前の線材の直径よりも、皮むき加工後の線材の直径が0.001mm以上0.1mm以下の範囲で減少するようになされるものであり、前記組み合わせ加工工程の後になされる引抜伸線加工は、線材の直径が金属帯板厚み寸法の75%以下の寸法線径になるまで、断面減少率が1%以上20%以下となるように行うことができる。
スリッティング加工では、せん断面に凹凸部が生じる。また、引抜伸線加工では、線材の平面部が内側に圧縮されることにより、この部分が凹状態となっており、これによって、初期の板厚寸法よりも寸法が減少している部分が存在する。さらに、線材の平面部が内側に圧縮されることにより、表面が皺状になり、これによる凹凸も生じている。従って、良好な表面を有する線材を得るためには、これらの凹凸を除去する必要があるが、組み合わせ加工工程を、線材の直径がスリッティング加工前の金属帯板材の厚み寸法の80%以上95%以下の円直径寸法になるまで行うことにより、これらの凹凸を除去することができる。各凹凸が酷い場合には、より80%に近いものとすることが好ましい。
また、その後の引抜伸線加工を、線材の直径が金属帯板厚み寸法の75%以下の寸法線径になるまで行うことによって、その前段階で生じる線材長手方向の皮むき線状痕および研磨加工による研磨痕を均らして、表面を平滑に仕上げることができる。これらの線状痕が深い状況であれば、より小さな値となるまで行うことが好ましい。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記研磨加工は、研磨対象である線材の表面に対して、表面粗さが20番手以上1000番手以下の研磨布輪を少なくとも上下左右に配置して行うことが好ましい。
線材の形状が丸断面になりきれておらず、凹凸や疵が深い初期の状態では、研磨量を多く取ることができる、#20に近い番手が粗いものを使用し、線材の形状が丸断面形状に近づいてくれば、#1000に近い番手の細かいものを用いて最終仕上げをすることにより、表面性状の優れた金属丸断面線材を得ることができる。研磨布輪は少なくとも上下左右、更には斜めに配置したほうが、線材断面全周に亘りくまなく研磨できるため好ましい。また、研磨布輪を増やすほど線送り速度を上げることができる。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記V形状ロールもしくはR付ロールの先端角度は、30°以上120°以下であり、前記せん断ロールの刃角度は15°以上60°以下であり、前記せん断ロールの抑え角度は、15°以上60°以下であることが好ましい。
切刃のV形状先端角度が30°以下であると、刃の剛性不足により刃の欠損が生じる恐れがある。また、切刃のV形状先端角度が120°以上であると、面圧が掛かりすぎてワークに刃が入らず、意味がない。従って、切刃のV形状先端角度は、30°以上120°以下とするのが好ましい。
スリッティング工程によって得られる線材の断面を正8角形とする場合には、V形状ロールもしくはR付ロールの先端角度は90°とする。線材の断面を8角以上の多角形とするためには、1圧を120°、2圧を60°、3圧を30°のように、段階的に深く入れていくか、あるいは先端から段階的に角度が大きくなるVロールを用いることもできる。
上記の手法により、スリッティング工程において、角数が8角以上の多角形断面を有する線材を形成することができ、線材断面を、角数が8角以上の多角形状とすることにより、この線材に対して上述した組み合わせ加工を施して疵なし丸断面線材を得るに際して、組み合わせ加工に大きな負担がかかることがない。
本発明の金属丸断面線材の製造方法においては、前記V形状ロールまたは前記R付ロールと前記せん断ロールは複数組並列設置されており、1度に数条の、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成することを可能とするようにすることができる。
これにより、スリッティング工程における生産効率を上げることができる。
本発明の金属丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造された金属丸断面線材であって、巻き込み疵が無いことを特徴とするものである。
本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、板材としてでしかラインナップされていない成分の線材を、長尺にて得ることができる。
本発明のニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.06質量%以下、Ni:0.6質量%以下、Cr:20.0〜25.0質量%、Mo:1.0〜1.5質量%、N:0.02質量%以下、Ti:0.05〜0.5質量%、Nb:0.1〜0.6質量%、残部がFe及び不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として、固相窒素吸収処理を施して得られることを特徴とするものである。
本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、寸法精度の優れたニッケルフリーオーステナイト線材を得ることができる。そのため、特に装身具材や医療器具材の分野への適用が可能である。
本発明の溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.06 質量%以下、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:2.0質量%以下、Cr:16〜20質量%、Al:1〜6質量%、Ti:0.5質量%以下、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、必要に応じて希土類元素を含有するフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得られることを特徴とするものである。
本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、欠陥部が電気抵抗の増大を招いて、ショートする等の原因となることがない。そのため、電熱線や抵抗線等の部材として有効に使用することができる。
また、燃料電池用改質装置に用いられる耐高温酸化性フェライト系ステンレス鋼板を締結するための溶接線材として有効に使用することができる。
本発明の抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.08質量%以下、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:1.0質量%以下、Cu:2.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:10.0〜15.0質量%、Cr:15.0〜22.0質量%、Nb:0.05〜0.25質量%、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物よりなるオーステナイト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得られることを特徴とするものである。
本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、欠陥部が電気抵抗の増大を招いて、ショートする等の原因となることがない。そのため、電熱線や抵抗線等の部材として有効に使用することができる。
本発明によると、帯板材から丸断面線材を得るにあたって、スリッティング加工から得られる方形断面線材の角部が、丸断面に成形移行される過程で、倒され巻込まれて、表面欠陥や表層欠陥になることがなく、表面キズが無く、寸法精度の優れた線材を製造することができる。その結果、一般市場に流通していない成分系の金属丸断面線材を帯板材から得ることができる。
(a)は、本発明の実施形態に係る金属丸断面線材の製造方法におけるスリッティング工程の概略を示す図であり、(b)は、V溝加工工程において用いられるV形状ロールの構造と配置を示す図であり、(c)は、せん断加工工程において用いられるせん断ロールの構造と配置を示す図である。 (a)は、V形刃の形状を示す図であり、(b)は、せん断刃の形状を示す図である。(c)、(d)は、(a)、(b)の変形例である。 V溝加工工程の詳細を示す図である。 せん断加工工程の詳細を示す図である。 第二せん断加工工程と圧延平ロール分離加工工程を示す図である。 V溝加工工程において、単角度V形状のV形状ロールを段階的に使用する場合を示す図である。 図6に示す工程の後に、せん断ロールによって多角形断面線材を得る工程を示す図である。 V形状ロールのV形刃の先端角度を段階的に変化させた例を示す図である。 引抜伸線加工と皮むき加工と研磨加工の詳細を説明する図である。 1パス毎伸線と連続伸線の詳細を示す図である。 線材断面の最長対角線について説明する図である。 線材断面の最長対角線について説明する図である。 引抜伸線加工と研磨加工による巻き込み層の変遷を説明する図である。
以下に、本発明の金属丸断面線材の製造方法を、その実施形態に基づいて説明する。
図1(a)に、本発明の実施形態に係る金属丸断面線材の製造方法におけるスリッティング工程の概略を示す。なお、以下の説明においては、金属丸断面線材の断面が8角形となる場合を例示しているが、金属丸断面線材の断面の形状は、角数が8以上の多角形状であれば、これに限定されない。また、V形状ロールにより表裏V溝を形成するV溝加工工程の場合を例示しているが、後に説明するように、R付ロールを用いることもできる。そのため、V形状ロールまたはR付ロールを用いた溝加工工程として把握されるものであり、予備切断面形成工程を意味するものである。
圧延加工された金属帯板材である材料板コイル1は、スリッティング装置2によってスリッティング加工されて、8角形断面線材3となるとともに、材料板コイル残4が得られる。材料板コイル残4は、繰り返しスリッティング装置2によってスリッティング加工されて、8角形断面線材3が順次製造される。
スリッティング装置2におけるスリッティング加工は、表裏1対のV形状ロールにより表裏V溝を形成するV溝加工工程5と、刃側と抑え側に角度を有するせん断ロールを用いて、V溝の傾斜角を壊さずに表側V溝頂点から裏側V溝頂点までの途中まで切込みを入れる第一せん断加工工程6と、せん断ロールを逆方向から線断面の半分まで押し当てる第二せん断加工工程7と、圧延平ロールによって圧延を行って8角形断面線材を形成する圧延平ロール分離加工工程8とからなる。
あるいはこれを簡略化して、スリッティング装置2におけるスリッティング加工は、表裏1対のV形状ロールにより表裏V溝を形成するV溝加工工程5と、刃側と抑え側に角度を有するせん断ロールを用いて、V溝の傾斜角を壊さずに表側V溝頂点から裏側V溝頂点までをせん断して8角形断面線材を形成するせん断加工工程とからなるようにすることができる。
図1(b)に、V溝加工工程5において用いられるV形状ロール11の構造と配置を示す。材料板コイル1に対してV形状ロール11が表裏1対に配置されており、V形状ロール11はV形刃12を有している。V形刃12によって、材料板コイル1に表裏V溝が形成される。このプロセスについては後に詳述する。
図1(c)に、せん断加工工程において用いられるせん断ロール13の構造と配置を示す。材料板コイル1に対してせん断ロール13が表裏1対に配置されており、せん断ロール13はせん断刃14を有している。せん断刃14によって、材料板コイル1の両端に8角形断面線材15が形成される。このプロセスについては後に詳述する。
図2(a)に、V形刃12の形状を示し、図2(b)に、せん断刃14の形状を示す。
V形刃12の先端角度であるV角度αは、30°以上120°以下であり、図2においては90°としている。せん断刃14の刃角度βは15°以上60°以下であり、図2においては45°としている。せん断刃14の抑え部16の抑え角度γは、15°以上60°以下であり、図2においては45°としている。これらの刃は、ハイス鋼(焼入)、ダイス鋼(焼入)、超硬、セラミック等を用いて形成することができる。
また、図2(c)、(d)に、図2(a)、(b)の変形例を示す。
図2(c)に示すものは、V形状ロール11の変形例にあたるR付ロールであり、V溝加工工程5において用いられる切刃の変形例であって、所定の曲率半径Rを有する曲面が形成されている。また、図2(d)に示すものは、せん断刃14の変形例であり、所定の曲率半径Rを有する曲面が形成されている。
図3(a)、(b)、(c)、(d)に、V溝加工工程の詳細を示す。また、図3(e)、(f)、(g)、(h)には、材料板コイル1の両端部の詳細を示す。
図3に示すように、圧延加工された金属帯板である材料板コイル1の帯板端から厚み寸法×1.0〜厚み寸法×1.3の位置に、表裏1対のV形状ロール11を配置し、材料板コイル1に対して上下方向から、V形状ロール11のV形刃12の先端部を接触させ、材料板コイル1の両端部の、表面と裏面の条切線の位置に、材料板コイル1の厚み寸法の0.1〜0.45倍の深さまで、上部V形溝17と下部V形溝18を形成する。
V形状ロール11の材質は、被圧延材よりも硬度が高いものであれば良いが、硬すぎると刃先に欠損が出やすくなる。また、軟らかすぎると刃先の磨耗に繋がることになる。そのため、被圧延材に合わせて使い分けることが好ましい。
図4(a)、(b)、(c)、(d)に、せん断加工工程の詳細を示す。また、図4(e)、(f)、(g)、(h)には、材料板コイル1の両端部の詳細を示す。
せん断加工工程は、刃側と抑え側に角度を有するせん断ロールを用いて、予備切断面形成工程で形成されたV溝の傾斜角を壊さずに、表側V溝頂点から裏側V溝頂点までをせん断して多角形断面線材を得ることを目的として行うものである。
せん断ロール13は、せん断刃14a面の反対側に、予備切断面形成加工で形成されたV溝に合致する角度を有する抑え部16aを備えている。
図4に示すように、材料板コイル1に対して上方向から、せん断ロール13のせん断刃14aの先端部が、上部V形溝17の傾斜面17aに接触するとともに、材料板コイル1に対して下方向から、せん断ロール13のせん断刃14bの先端部が、下部V形溝18の傾斜面18aに接触する。これにより、材料板コイル1の両端部において、表面V形溝の頂点から裏面V形溝の頂点に沿ってせん断を行う。このように、せん断ロール13の刃先端を予備切断面形成加工で形成されたV溝の最深部条線に合わせ、上下のせん断ロール13の刃先端が0mm〜0.2mmラップすることでせん断分離が行われる。
せん断ロール13は、せん断刃14と抑え部16を有しており、せん断の際に、抑え部16aが上部V形溝17の傾斜面17bに接触するとともに、抑え部16bが下部V形溝18の傾斜面18bに接触するため、せん断の最終位置においても、V溝加工工程で形成されたV形溝の45°傾斜線を壊すことなくせん断が可能となる。そのため、上記の工程により、8角形断面線材15を得ることができる。このように、せん断分離時において、せん断ロール13の抑え部は、予め形成されたV溝に合致している角度を有していることから、予め形成されたV溝形状を壊さずにせん断することができる。
1方向のみのせん断を行う場合に、片側にばりやカエリ等の欠陥が発生しやすい場合があるが、このような場合には、せん断を2工程に分けて行うことが好ましい。例えば、線材になる側を、1工程目では上方向にせん断分離までの6割まで押し上げ、2工程目では下にせん断分離する方法を採ることができる。あるいは、更には3工程目に分け、1工程目では前記のものと同様に行い、2工程目もせん断分離までの6割程度に抑え、3工程目で平形状ロールにて圧延分離すれば、より良好なせん断面が得られる。
せん断加工工程において、角部にばりが著しく発生する場合は、図4に示すせん断を線断面の途中の2/3までに留めて、第一せん断加工工程6とし、図5に示す、第二せん断加工工程7と、圧延平ロール分離加工工程8を実施する。
図5(a)、(b)に、第二せん断加工工程7の詳細を示す。また、図5(e)、(f)には、材料板コイル1の両端部の詳細を示す。第二せん断加工工程7は、逆せん断加工工程というべきもので、せん断ロール13を、図4に示すものとは逆方向から、線断面の半分まで押し当てて行うものである。
図5(a)、(b)、(e)、(f)に示すように、材料板コイル1に対して上方向から、せん断ロール13のせん断刃14aの先端部が、上部V形溝17の傾斜面17bに接触するとともに、材料板コイル1に対して下方向から、せん断ロール13のせん断刃14bの先端部が、下部V形溝18の傾斜面18bに接触する。すなわち、第二せん断加工工程7においては、上部V形溝17と下部V形溝18に対して、第一せん断加工工程6とは逆方向にせん断刃14a、14bを接触させて、線断面の半分まで押し当てる。
図5(c)、(d)に、圧延平ロール分離加工工程8の詳細を示す。また、図5(g)、(h)には、材料板コイル1の両端部の詳細を示す。図5(c)、(d)に示すように、材料板コイル1に対して上方向から、圧延平ロール19が接触して圧延する。その結果、図5(g)、(h)に示すように、材料板コイル1の両端部の線断面の間に亀裂20が生じで分離し、8角形断面線材15が得られる。上記の工程により、バリなしせん断を行うことができる。
V形状ロール11またはR付ロールとせん断ロール13を複数組並列設置すると、1度に数条の、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成することができる。
上部V形溝17と下部V形溝18の溝形成は、求める多角形状により、1回の圧延で行ってもよく、または数回に分けて圧延して行うこともできる。
図6は、V溝加工工程5において、単角度V形状のV形状ロールを段階的に使用する場合を示している。
板圧1.2mmの材料板コイル1に対して、1圧目の(a)では、先端角が120°のV形刃12aを用いて、深さ0.2mmで角度120°の溝を形成する。次に、2圧目の(b)では、先端角が60°のV形刃12bを用いて、深さ0.35mmで角度60°の溝を追加して形成する。さらに、3圧目の(c)では、先端角が30°のV形刃12cを用いて、深さ0.5mmで角度30°の溝を追加して形成する。その結果、上部V形溝17と下部V形溝18はいずれも、角度が120°、60°、30°と段階的に変化する形状となり、角部の角度が大きくより円に近い予備切断面を得ることができる。
図7は、図6に示す工程の後に、せん断ロール13によって多角形断面線材15aを得る工程を示している。図8は、V形状ロール11のV形刃12の先端角度を段階的に変化させたものであり、先端角が先端側から順に、30°、60°、120°となっている。
図9に基づいて、引抜伸線加工と皮むき加工と研磨加工の詳細を説明する。本発明においては、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材に対して、引抜伸線加工と皮むき加工と研磨加工とからなる組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行い、引き続いて線材の直径が所定の直径寸法となるまで、引抜伸線にて加工する。
図9(a)に示すように、スリッティング工程によって得られた8角形断面線材3を素材として、引抜ダイス21を用いて引抜伸線加工を行う。次に、引抜伸線加工によって潰されて引き込まれた角部の層を除去するために、皮むきダイス23を用いて皮むき加工を行う。次に、線材断面外周表面を研磨する研磨加工を行う。研磨加工は、皮むき加工の際に皮むき刃が及ばない部分に対して効力を発揮するものであり、研磨対象である線材の表面に対して、表面粗さが20番手以上1000番手以下の研磨布輪22を少なくとも上下左右に配置し、研磨布輪22を回転させて線材の全面に当たるように研磨工程を行う。その後、キャプスタンロール25を介して巻き取られる。
図9(b)は、引抜ダイス21による引抜伸線加工の詳細を示しており、8角形断面線材3の断面の最長対角線の距離を直径とする円の面積の80%以上99%以下に値する直径円ダイスを用いる。断面の最長対角線の距離を直径とする円の面積の概念については、後に詳述する。この引抜伸線加工により、引抜伸線加工における8角形断面線材3の断面減少率は1%以上20%以下となる。すなわち、伸線前の線材24aの断面積をA、伸線後の線材24bの断面積をBとすると、BはAの0.8倍から0.99倍となる。引抜ダイス21は、ダイヤモンドまたは超硬を用いて形成されている。
引抜伸線加工の第1パス目においては、線材断面の最長対角線の距離を直径とする円の面積の85%以上99%以下に値する直径円ダイスを用いて、長手方向に連続的に引抜加工を行う。引抜伸線加工の第2パス目においては、皮むき加工に用いられる皮むきダイスの円面積の80%以上99%以下に値する直径円ダイスを用いて、長手方向に連続的に引抜加工を行う。
円ダイスの直径を決定する要素は、次に行う皮むき加工の皮むき量により決定する。次に行う皮むき加工の線材表面からの皮むき量(深さ)が微小な場合は大きな直径の円ダイスを用い、皮むき量(深さ)が大きい場合は小さな直径の円ダイスを用いる。
図9(c)は、皮むきダイス23による皮むき加工の詳細を示している。皮むき加工は、引抜伸線加工で引き込まれた、巻込み疵の原因となる表層部を除去することを目的とするものであり、引抜伸線加工に用いたダイス孔径よりも0.005mm〜0.1mm小さな孔径の皮むきダイス23を引抜ダイス21と同心円上に配置し、円周表層部を均一に削り取るものである。皮むき加工における皮むき量は、皮むき加工前の線材24cの直径よりも、皮むき加工後の線材24dの直径が0.001mm以上0.1mm以下の範囲で減少するようになされる。
図9(d)は、研磨布輪22の構成配置を示している。線材の断面形状が初期より円形状であれば、皮むき工程により均一に表層部除去ができるが、線材の断面形状が多角形状であると、円形状に達するまでは、皮むきダイス23により除去できない部分が生じる。研磨工程は、この初期段階での皮むきダイス23では除去できない部分を除去することを目的としており、粒度#20〜#1000の研磨布輪を回転させ、線材の全面に当たるように研磨工程を行う。
研磨対象である線材24の表面に対して、研磨布輪22が上下左右に配置され、モーターにより回転する構造となっている。研磨布輪22が線材24の四方から当たることにより、巻き込み層を削り落す。研磨布輪22は、研磨砥石と比較して柔軟性に富むことから、線材24の全周を隈なく研磨することができる。
このように、研磨布輪22は、線材断面に向かって少なくとも上下左右に配置し線材表面全面に当たるように設置されており、布素材であるため線材表面円弧に柔軟に接触することができるが、更には45°毎、22,5°毎というように、研磨布ロール22の設置個所が多くなるほど、研磨の安定性が増す。そのため、線送り速度を大きくとることができ、表面品質の向上と加工効率の向上に繋がる。
研磨布輪22は、引抜伸線+皮むき+研磨の組合せ加工工程の初期段階から、組合せ加工工程が完了する段階までに、その粒度を徐々に細かくしていくことが好ましい。伸線加工初期の段階においては、表面の巻込み層が大きく、表面も凹凸の状況が多いため、より粗めのものを用いることにより、巻込み層の削ぎ落とし効率を上げることができる。仕上げ線径に近づくにつれて、粗めの研磨布輪22では研磨痕が残ってしまう恐れがあることや、巻込み層が薄く小さくなっていくことから、段階的に粒度を細かくしていくことが、表面品質を良好にするためには好ましい。
上述した組み合わせ加工工程を、線材の直径がスリッティング加工前の金属帯板材の厚み寸法の80%以上95%以下の円直径寸法になるまで、同一列上にて連続的に行う。組み合わせ加工工程の後になされる引抜伸線加工は、線材の直径が金属帯板厚み寸法の75%以下の寸法線径になるまで、断面減少率が1%以上20%以下となるように行う。これにより、疵の無い表面品質の優れた丸断面線材が得られる。
上記のように設定したのは、以下の理由による。スリッティング加工では、せん断面に凹凸部が生じる。また、引抜伸線加工では、線材の平面部が内側に圧縮されることにより、この部分が凹状態となっており、これによって、初期の板厚寸法よりも寸法が減少している部分が存在する。さらに、線材の平面部が内側に圧縮されることにより、表面が皺状になり、これによる凹凸も生じている。従って、良好な表面を有する線材を得るためには、これらの凹凸を除去する必要があるが、組み合わせ加工工程を、線材の直径がスリッティング加工前の金属帯板材の厚み寸法の80%以上95%以下の円直径寸法になるまで行うことにより、これらの凹凸を除去することができる。各凹凸が酷い場合には、より80%に近いものとすることが好ましい。
また、その後の引抜伸線加工を、線材の直径が金属帯板厚み寸法の75%以下の寸法線径になるまで行うことによって、その前段階で生じる線材長手方向の皮むき線状痕および研磨加工による研磨痕を均らして、表面を平滑に仕上げることができる。これらの線状痕が深い状況であれば、より小さな値となるまで行うことが好ましい。
図10に、1パス毎伸線と連続伸線の詳細を示す。
図10(a)は、1パス毎伸線の工程図であり、引抜ダイス21、皮むきダイス23、研磨布輪22を直線状に配置して、引抜伸線加工と皮むき加工と研磨加工とからなる組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行うものである。1パスあたりの線材の断面積減少率は1%から20%である。
図10(b)は、連続伸線の工程図であり、引抜ダイス21、皮むきダイス23、研磨布輪22を複数配置して、引抜伸線加工と皮むき加工と研磨加工とからなる組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行うものである。
図11、図12に基づいて、線材断面の最長対角線について説明する。
図11は、断面が8角形の場合の線材断面の最長対角線を示し、この最長対角線の距離を直径とする円の面積の90%の円を示している。図11(a)は、線材断面が正8角形に近いものの場合であり、図11(b)は、線材断面が扁平な8角形の場合である。
また、図12は、断面が4角形の場合の線材断面の最長対角線を示し、この最長対角線の距離を直径とする円の面積の70%の円を示している。図12(a)は、線材断面が正方形に近いものの場合であり、図11(b)は、線材断面が長方形の場合である。
図13は、引抜伸線加工、研磨加工を経ることによる巻き込み層26の変遷を示している。8角形断面線材3は、引抜伸線加工によって、8角形の角部が潰されて、外周部に間隔を置いて巻き込み層26が存在する線材24となる。この線材24に対して、研磨布輪22を用いて研磨すると、外周部において突出している巻き込み層26が削られる。その後、線材24を引抜伸線加工によって伸線すると、巻き込み層26がさらに薄くなる。これを繰り返すと、巻き込み層26が消滅し、巻き込みキズが無い良好な表面を持つ最終仕上げ線材が得られる。なお、図13においては、皮むき加工は省略している。
上述したように、本発明におけるスリッティング工程により得られる、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材は、4角形状断面線材に比べ、角部の角度が大きいため、引抜伸線加工による角部の倒れこみや巻込みによる疵の発生は圧倒的に少なく、その巻込みの程度も小さくなる。そのため、スリッティング工程の後に施される、引抜伸線加工+皮むき加工+研磨加工による組み合わせ加工工程により、巻き込み層を安易に除去できる。
また、スリッティング工程により得られる、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材は、4角形状断面線材に比べ、対角線距離が短くなるため、細線径から引抜伸線を開始することができ、工程数が少なくなり、加工効率が向上する。さらに、引抜伸線加工+皮むき加工+研磨加工による組み合わせ加工工程を同一列にて行うことにより、同心同方向における外層を均一に削除することができ、加工効率が高い。
また、6角形断面の線材の場合には、4角形断面の線材と比較すると、倒れこみや巻込みによる疵の発生頻度は低い。しかし、スリッティング工程において、V形状ロール11による押し切りのため、数度に分けて押圧する状況が発生する。数回に分けて押圧した場合には、調整によっては芯ずれする。芯ずれが発生すると、線材の断面形状は6角形にならず歪な形になってしまう。このような事情から、6角形断面の線材の場合には、加工上の問題点がある。
以下に、具体的な実施例を示す。
厚さ1.5mm、幅30mmのオーステナイト系ステンレス鋼板帯板材をスリッティング工程にて、以下の2つのサンプルを作製した。
1:辺間距離 縦1.5mm×横1.5mmの4角形断面
2:辺間距離 縦1.5mm×横1.5mmの8角形断面
この2つのサンプルのそれぞれに対して、後工程にて、
A 引抜伸線加工のみ(最長対角線直径の円面積にて−10%毎伸線)
B 本発明技術 最長対角線直径の円面積にて−10%毎伸線加工+皮むき加工(引抜伸線径の−0.01mm)+研磨加工(初期粗さ#100、最終粗さ#400)の組合せにて帯板厚み寸法の80%〜95%の範囲となる直径寸法円まで加工後、引抜伸線加工にて帯板厚み寸法の67%直径寸法円となる直径φ1.000mmまで加工を施す
サンプル1、2に対して加工A、Bを行った、4つのケースについて、表面疵残留頻度を確認した。その結果を表1に示す。
Figure 0005963355
表中での注の内容は、以下のとおりである。
※1:引抜伸線加工条件=1パス毎の最長対角線を直径とする面積減少率、または皮むき加工後の円からの面積減少率
※2:皮むき加工条件=引抜伸線加工に用いる円ダイスの直径に対する皮むきダイスの直径減少値
※3:研磨加工条件=研磨輪の研磨布の粗さ番手。後期は研磨完了線径から数え、2パス目まで遡る。
※4:表面傷頻度=観察視野/10cmにて30μm以上の大きさの疵を計数
上記の結果により、スリッティング工程により、角数が8以上の多角形断面の線材を形成し、この線材に対して、本発明の引抜伸線加工+皮むき加工+研磨加工の組合せ加工を施すことの効果が実証されている。
以下に、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造された金属丸断面線材の各技術分野への適用例について説明する。
第一に、本発明のニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.06質量%以下、Ni:0.6質量%以下、Cr:20.0〜25.0質量%、Mo:1.0〜1.5質量%、N:0.02質量%以下、Ti:0.05〜0.5質量%、Nb:0.1〜0.6質量%、残部がFe及び不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として、固相窒素吸収処理を施して得られるものである。
このニッケルフリーオーステナイト線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、寸法精度が優れているため、特に装身具材や医療器具の素材として有用である。
第二に、本発明の溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.06 質量%以下、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:2.0質量%以下、Cr:16〜20質量%、Al:1〜6質量%、Ti:0.5質量%以下、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、必要に応じて希土類元素を含有するフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得られるものである。
この溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、欠陥部が電気抵抗の増大を招いて、ショートする等の原因となることがない。そのため、電熱線や抵抗線等の部材として有効に使用することができる。また、燃料電池用改質装置に用いられる耐高温酸化性フェライト系ステンレス鋼板を締結するための溶接線材として有効に使用することができる。
第三に、本発明の抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造され、C:0.08質量%以下、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:1.0質量%以下、Cu:2.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:10.0〜15.0質量%、Cr:15.0〜22.0質量%、Nb:0.05〜0.25質量%、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物よりなるオーステナイト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得られることを特徴とするものである。
この抵抗用・電熱線用丸断面線材は、本発明の金属丸断面線材の製造方法によって製造されるものであるため、表面キズが無く、欠陥部が電気抵抗の増大を招いて、ショートする等の原因となることがない。そのため、電熱線や抵抗線等の部材として有効に使用することができる。
本発明は、薄板を所定幅に切断して得られる断面方形の素材から断面丸形細線へ成形する加工技術を用いて、線材の表面に生じる倒れこみ巻き込みキズをなくすことにより、表面キズが無く、寸法精度の優れた線材を製造することが可能な金属丸断面線材の製造方法として利用することができる。この技術を用いると、一般市場に流通していない金属丸断面線材を得ることができ、特に、ニッケルフリーオーステナイト線材や、構造体に使用される鋼板コイルと同じ成分組成を有する溶接ワイヤへの適用が可能である。
1 材料板コイル
2 スリッティング装置
3 8角形断面線材
4 材料板コイル残
5 V溝加工工程
6 第一せん断加工工程
7 第二せん断加工工程
8 圧延平ロール分離加工工程
11 V形状ロール
12、12a、12b、12c V形刃
13 せん断ロール
14 14a、14b せん断刃
15 8角形断面線材
15a 多角形断面線材
16、16a、16b 抑え部
17 上部V形溝
17a、17b 傾斜面
18 下部V形溝
18a、18b 傾斜面
19 圧延平ロール
20 亀裂
21 引抜ダイス
22 研磨布輪
23 皮むきダイス
24 線材
24a 伸線前の線材
24b 伸線後の線材
24c 皮むき加工前の線材
24d 皮むき加工後の線材
25 キャプスタンロール
26 巻き込み層

Claims (10)

  1. 圧延加工された金属帯板材を長手方向に連続スリッティング加工を行うスリッティング工程と、前記スリッティング工程によって得られた、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材に対する引抜伸線加工と、前記引抜伸線加工によって潰されて引き込まれた角部の層を除去するための皮むき加工と、線材断面外周表面を研磨する研磨加工とからなる組み合わせ加工工程とを有し、前記組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行い、引き続いて線材の直径が所定の直径寸法となるまで、引抜伸線にて加工する金属丸断面線材の製造方法であって、前記スリッティング工程は、表裏1対のV形状ロールまたはR付ロールにより、表裏対称に溝を形成する溝加工工程と、刃側と抑え側に角度またはRを有するせん断ロールを用いて、溝の傾斜角を壊さずに表側溝頂点から裏側溝頂点までをせん断して、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成するせん断加工工程とからなることを特徴とする金属丸断面線材の製造方法。
  2. 圧延加工された金属帯板材を長手方向に連続スリッティング加工を行うスリッティング工程と、前記スリッティング工程によって得られた、角数が8角以上の多角形状断面を持つ線材に対する引抜伸線加工と、前記引抜伸線加工によって潰されて引き込まれた角部の層を除去するための皮むき加工と、線材断面外周表面を研磨する研磨加工とからなる組み合わせ加工工程とを有し、前記組み合わせ加工工程を線材の長手方向に連続的に繰返し行い、引き続いて線材の直径が所定の直径寸法となるまで、引抜伸線にて加工する金属丸断面線材の製造方法であって、前記スリッティング工程は、表裏1対のV形状ロールまたはR付ロールにより、表裏対称に溝を形成する溝加工工程と、刃側と抑え側に角度またはRを有するせん断ロールを用いて、溝の傾斜角を壊さずに表側溝頂点から裏側溝頂点までの途中まで切込みを入れる第一せん断加工工程と、前記V形状ロールまたは前記R付ロールを逆方向から線断面の半分まで押し当てる第二せん断加工工程と、圧延平ロールによって圧延を行って、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成する圧延平ロール分離加工工程とからなることを特徴とする金属丸断面線材の製造方法。
  3. 前記組み合わせ加工工程を、線材の直径がスリッティング加工前の金属帯板材の厚み寸法の80%以上95%以下の円直径寸法になるまで、同一列上にて連続的に行い、引抜伸線加工における断面減少率は1%以上20%以下であり、皮むき加工における皮むき量は、皮むき加工前の線材の直径よりも、皮むき加工後の線材の直径が0.001mm以上0.1mm以下の範囲で減少するようになされるものであり、前記組み合わせ加工工程の後になされる引抜伸線加工は、線材の直径が金属帯板厚み寸法の75%以下の寸法線径になるまで、断面減少率が1%以上20%以下となるように行うことを特徴とする請求項1または2記載の金属丸断面線材の製造方法。
  4. 前記研磨加工は、研磨対象である線材の表面に対して、表面粗さが20番手以上1000番手以下の研磨布輪を少なくとも上下左右に配置して行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の金属丸断面線材の製造方法。
  5. 前記V形状ロールもしくはR付ロールの先端角度は、30°以上120°以下であり、前記せん断ロールの刃角度は15°以上60°以下であり、前記せん断ロールの抑え角度は、15°以上60°以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の金属丸断面線材の製造方法。
  6. 前記V形状ロールまたは前記R付ロールと前記せん断ロールは複数組並列設置されており、1度に数条の、角数が8角以上の多角形状断面線材を形成することを可能とする請求項1から5のいずれかに記載の金属丸断面線材の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の金属丸断面線材の製造方法によって製造、巻き込み疵が無いことを特徴とする金属丸断面線材の製造方法
  8. 請求項1から6のいずれか1項に記載の金属丸断面線材の製造方法によって製造、C:0.06質量%以下、Ni:0.6質量%以下、Cr:20.0〜25.0質量%、Mo:1.0〜1.5質量%、N:0.02質量%以下、Ti:0.05〜0.5質量%、Nb:0.1〜0.6質量%、残部がFe及び不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として、固相窒素吸収処理を施して得ることを特徴とするニッケルフリーオーステナイトステンレス鋼丸断面線材の製造方法
  9. 請求項1から6のいずれか1項に記載の金属丸断面線材の製造方法によって製造、C:0.06 質量%以下、Si:1.0質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:2.0質量%以下、Cr:16〜20質量%、Al:1〜6質量%、Ti:0.5質量%以下、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなり、必要に応じて希土類元素を含有するフェライト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得ることを特徴とする溶接線用・抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法
  10. 請求項1から6のいずれか1項に記載の金属丸断面線材の製造方法によって製造、C:0.08質量%以下、Si:2.0〜5.0質量%、Mn:1.0質量%以下、Cu:2.0質量%以下、P:0.050質量%以下、S:0.03質量%以下、Ni:10.0〜15.0質量%、Cr:15.0〜22.0質量%、Nb:0.05〜0.25質量%、N:0.06質量%以下、残部がFe及び不可避的不純物よりなるオーステナイト系ステンレス鋼板帯板材を素材として得ることを特徴とする抵抗用・電熱線用丸断面線材の製造方法
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