JP5966298B2 - 中空糸炭素膜の製造方法 - Google Patents
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本発明はまた、上述した本発明の中空糸炭素膜を用いた分離膜モジュールについても提供する。
本発明の中空糸炭素膜は、破断伸度(引張伸度)が1〜4%であることを特徴とする。本発明によれば、破断伸度が1〜4%の範囲内であることで、ガス分離性能に優れ、かつ柔軟性にも優れるため、破損しにくく、モジュール化が容易であり、実用性に優れた中空糸炭素膜が提供される。中空糸炭素膜の破断伸度が1%未満である場合には、中空糸炭素膜として十分な柔軟性が得られず、破損しやすいため、モジュール作製時の取扱い性に困難を生じるという不具合があり、また、4%を超える場合には、炭素化が十分に進行していないために耐酸性、耐薬品性、ガス分離性能が十分でないという不具合がある。すなわち中空糸炭素膜としての柔軟性を確保し、かつ炭素膜としての耐酸性、耐薬品性、ガス分離性能をも向上させるという理由からは、本発明の中空糸炭素膜の破断伸度は、1〜4%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.5%の範囲内であることがより好ましい。なお、中空糸炭素膜の破断伸度は、日本工業規格「炭素繊維−単繊維の引張特性の試験法」(JIS R7606)に準拠して、たとえば引張試験機テクノグラフ(TGI−200N、ミネベア株式会社製)を用いて引張試験を行うことで測定することができる。
本発明の中空糸炭素膜の製造方法は、(1)ポリフェニレンオキサイドを非プロトン性溶媒に溶解させる工程(溶解工程)と、(2)PPOを温度誘起相分離点以上の温度で紡糸ノズルより吐出し、中空糸状にする工程(吐出工程)と、(3)中空糸状のPPOを水あるいは水と有機溶媒の混合溶液により凝固させる工程(凝固工程)と、(4)凝固した中空糸状物を、溶媒置換処理を行うことなく、水を含んだ状態から乾燥させて中空糸炭素膜前駆体を得る工程(乾燥工程)と、(5)中空糸炭素膜前駆体を炭素化処理する工程(炭素化処理工程)とを含むことを特徴とする。上述した本発明の中空糸炭素膜は、このような本発明の中空糸炭素膜の製造方法によって好適に製造することができるが、上述したような本発明の中空糸炭素膜の特徴を備えるものであれば、本発明の中空糸炭素膜の製造方法で製造されたものに限定されるものではない。
本発明の中空糸炭素膜の製造方法では、まず、PPOを非プロトン性溶媒に溶解させる。PPOの溶媒は、たとえば公知文献(G. Chowdhury, B. Kruczek, T. Matsuura, Polyphenylene Oxide and Modified Polyphenylene Oxide Membranes Gas, Vapor and Liquid Separation, 2001, Springer)にまとめられているように、ベンゼン、トルエン、クロロホルムなど環境負荷が大きく、人体に有害なものが多い。一方、たとえば特開平3−65227号公報には、およそ100℃以上の温度では、比較的環境負荷の小さい非プロトン性の溶媒にPPOが溶解されることが開示されている。本発明において用いられる非プロトン性溶媒としては、たとえばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどが用いられ、中でもPPOの溶解性が特に優れることから、非プロトン性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
続く工程では、上述のようにしてPPOを非プロトン性溶媒に溶解させた溶液(PPO紡糸原液)を、紡糸ノズルより吐出させて中空糸状にする。本発明における紡糸の形式は特に制限されるものではなく、従来公知の紡糸法を適用することができるが、PPO中空糸膜の構造制御を精密に行う観点および、作製の容易さの観点からは、乾湿式紡糸法を適用することが好ましい。
上述した吐出工程で吐出された紡糸原液は、続く凝固工程において、貧溶媒で満たされた凝固浴に浸漬される。なお、中空糸状物の表面のポリマー濃度を高くして、表面を緻密にするなどの膜構造制御の観点から、吐出工程の後、中空糸状に形成されたPPO紡糸原液は、溶媒を部分的に乾燥処理した後に、当該凝固工程に供するようにすることが好ましい。凝固工程では、中空糸状に形成されたPPO紡糸原液は、非溶媒誘起相分離により、中空糸状物に凝固する。
上述した凝固工程の後、凝固した中空糸状物を、溶媒置換処理を行うことなく、水を含んだ状態から乾燥させて中空糸炭素膜前駆体を得る。なお、凝固工程で相分離を終えた中空糸状物は、十分に水洗して残存する溶媒を除去した後に、当該乾燥工程に供することが好ましい。
最後に、得られた中空糸炭素膜前駆体を炭素化処理するが、好ましくは、炭素化処理の前処理として、耐炎化処理が施される。耐炎化処理では、空気雰囲気下で150〜350℃、より好ましくは200〜300℃で、30分間から4時間程度、中空糸炭素膜前駆体を加熱する。このような耐炎化処理を施すことによって、ポリマーの熱架橋反応が促進され、炭素化後の膜構造が強固なものとなり、分離性能や柔軟性の向上に有利である。
本発明は、上述した本発明の中空糸炭素膜を用いた分離膜モジュールについても提供する。分離膜モジュール自体は公知であり、本発明の分離膜モジュールも、本発明の中空糸炭素膜を用いること以外は、従来公知の適宜の材質、構造を組み合わせて実現することができる。たとえば典型的な構造の分離膜モジュールとして、所定の長さに切断された複数本の本発明の中空糸炭素膜が束ねられた状態でその両端をそれぞれ接着剤で固めた分離膜モジュールが例示される。この際、束ねられた状態の中空糸炭素膜の一方側の端部は開口するように接着剤で固められ、開口を有するキャップが取付けられる。また、束ねられた状態の中空糸炭素膜の他方側の端部は開口しないように接着剤で固められ、開口を有さないキャップが取付けられる。なお、これはあくまで一例に過ぎず、束ねられた状態の中空糸炭素膜の一方側の端部が開口し、他方側の端部が閉口している構造であればよい。
<実施例1>
ポリフェニレンオキサイド(PPO)(No.181781、アルドリッチ社製)13.75gに対して、N−メチル−2−ピロリドン36.25gを加え、混練して均一な懸濁液を作製した後、100〜150℃の範囲の温度で混練しながら加熱することで均一な紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を150℃に保温した状態で、同じく130℃に加熱保温した紡糸原液押出し機に充填し、二重円筒管ノズルのスリット部より、紡糸原液を定量押出しした。二重円筒管ノズルの内孔からは、内液として、エチレングリコールを定量吐出させ、中空状に押出された紡糸原液の内層部分に相分離を誘起させつつ、50mmのエアギャップで、紡糸原液表層部の乾燥処理を行い、その後、10℃に保温したN−メチル−2−ピロリドン30%水溶液で満たした凝固浴中で、完全に相分離を進行させた。固化した中空糸状物を十分水洗した後、水を含んだ状態のまま、80℃の乾燥炉にて乾燥処理した。
凝固浴組成を10℃に保温した純水に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPPO中空糸炭素膜を得た。
炭素化処理における温度を700℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPPO中空糸炭素膜を得た。
炭素化処理における温度を500℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPPO中空糸炭素膜を得た。
固化した中空糸膜を十分に水洗した後、50重量%エタノール水溶液に2時間浸漬し、さらにエタノールに一晩浸漬させた後、ヘキサンに一晩浸漬させた後に常温で乾燥処理を行ったこと以外は実施例1と同様にしてPPO中空糸炭素膜を得た。
ポリフェニレンオキサイド(PPO)(No.181781、アルドリッチ社製)13.75gに対して、クロロホルム36.25gを加え、混練して均一な紡糸原液を作製した後、これを紡糸原液押出し機に充填し、二重円筒管ノズルのスリット部より、常温条件下で紡糸原液を定量押出しした。二重円筒管ノズルの内孔からは、内液として、エタノールを定量吐出させ、中空状に押出された紡糸原液の内層部分に相分離を誘起させつつ、紡糸原液表層部の乾燥処理を行い、その後、10℃に保温したエタノールで満たした凝固浴中で、完全に相分離を進行させた。固化した中空糸状物を乾燥処理して巻取り、中空糸状物を得た。このようにして得られた中空糸状物に対し実施例1と同様の条件で耐炎化処理および炭素化処理を行ない、PPO中空糸炭素膜を得た。
JIS R7606:2000に準拠して、引張試験機テクノグラフ(TG−200NB、ロードセル型式TT3D−10N、ミネベア株式会社製)を用いて引張試験を行った。中空糸炭素膜サンプルの断面積は、JIS R7607:2000のC法に準拠して、中空糸膜断面積を測定した。サンプルの把持部での端部切れを防ぐために、図1のような四角の枠状のサンプル台紙1の両端に、サンプル2を載せて、サンプル2の両端部を二液性エポキシ樹脂3により接着、固化させた。作製したサンプル台紙1の両端のチャック把持部5を引張試験機のチャックにて把持、固定する。続いて接続部4を切り離した後、サンプル2の引張試験を開始する。サンプル長は25mmとした。引張り速度は5mm/minとした。測定本数は20本行い平均値を評価した。各サンプルについての破断伸度および引張弾性率を表1に示す。
実施例および比較例のPPO中空糸炭素膜の柔軟性は、上記の引張り試験に加えて、中空糸炭素膜を曲げたときに破断するときの、最小曲げ半径についても評価を行った。1mm刻みで異なる様々な直径の円柱に中空糸炭素膜を180°以上巻きつけて、中空糸炭素膜が破断するかどうかを確認し、最小曲げ半径は、中空糸炭素膜が破断しない円柱において、最小の半径を有する円柱を求め、その円柱の半径の値で示すことにより、膜の柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
実施例および比較例のPPO中空糸炭素膜をそれぞれ用いて、中空糸炭素膜100本からなる分離膜モジュールをそれぞれ10個ずつ作製して、そのうち、ガス分離評価を行ったときに、モジュール作製時に中空糸炭素膜が破損した場合および、ガス透過試験時にリークが起こった場合の個数の、百分率での割合を破損率として評価した。結果を表1に示す。
試験ガス(He,CO2,N2)を用いて、中空糸炭素膜のガス分離性能を測定した。自作の中空糸用気体透過率測定装置に各サンプル(PPO中空糸炭素膜またはPPO中空糸状物)を装着し、各サンプルの内面に一定圧力で試験ガスを供給し、透過する気体流量を流量計で測定した。この際に、下記式で求められるガス透過速度Q(10−6cm3(STP)・cm−2・s−1・cmHg−1(=GPU))により気体分離性能を評価した。また、Qの比からガスの理想分離係数を求めた。
結果を表2に示す。
Claims (2)
- ポリフェニレンオキサイドを用いた中空糸炭素膜前駆体を炭素化して得られる、破断伸度が1〜4%である中空糸炭素膜を製造する方法であって、
ポリフェニレンオキサイドを非プロトン性溶媒に溶解させる工程と、
ポリフェニレンオキサイドを温度誘起相分離点以上の温度で紡糸ノズルより吐出し、中空糸状にする工程と、
中空糸状のポリフェニレンオキサイドを水あるいは水と有機溶媒の混合溶液により凝固させる工程と、
凝固した中空糸状物を、溶媒置換処理を行うことなく、水を含んだ状態から乾燥させて中空糸炭素膜前駆体を得る工程と、
中空糸炭素膜前駆体を炭素化処理する工程とを含む、中空糸炭素膜の製造方法。 - 引張弾性率が5GPa以上である、請求項1に記載の中空糸炭素膜の製造方法。
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