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JP5968658B2 - 膜厚測定方法および膜厚測定装置 - Google Patents
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JP5968658B2 - 膜厚測定方法および膜厚測定装置 - Google Patents

膜厚測定方法および膜厚測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、誘起される渦電流の強度を検知することにより、被膜の膜厚を測定する膜厚測定方法、膜厚測定装置に関するものである。
従来、渦電流式膜厚測定装置として、測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、誘起される渦電流の強度を検知することにより、母材上に形成された被膜の厚さを測定する膜厚測定装置が知られている。この渦電流式膜厚測定装置は、電磁誘導の原理を利用したもので、交流電界を発生させるコイルを備えたプローブを、測定対象物の表面に近づけると、当該測定対象物の内部に渦電流が生成されるので、かかる渦電流をコイルで検知することにより、前記被膜の厚さを測定するものである。
上記の渦電流式膜厚測定装置は、高度な測定技能を必要とせず、測定対象物の表面にプローブの先端をあてるだけの簡単な操作で、測定対象物が脆弱な素材であってもダメージを与えずに、被膜の膜厚を非破壊測定できるので、作業現場での塗装膜や陽酸化被膜の膜厚測定などに広く用いられている。昨今は、小型の携帯型測定装置によって、例えばナノメートルオーダの薄い膜厚まで測定可能となっている。
渦電流式膜厚測定装置の利用場面の一例として、液化天然ガスの気化に用いられるオープンラック式気化器の定期点検が挙げられる。オープンラック式気化器は、この気化器の伝熱管内に液化天然ガスを流す一方、伝熱管の外面に海水を流し、この海水によって液化天然ガスを加熱するものである。
したがって、常に海水と接する伝熱管は腐食しやすいので、母材のアルミニウム合金を腐食から保護するため、従来、伝熱管の表面に400〜600μm程度の厚さのアルミニウム−亜鉛合金膜を溶射(メタリコン)することにより、母材の犠牲防食が図られている。かかる溶射膜は、海水腐食による消耗の他、海水中の貝類や泥砂などの固形物擦過などにより、想定外の早さで消耗する場合があるので、定期的に膜厚検査が施され、測定膜厚が100μm程度以下になると、再溶射などによる補修作業が行われている。
従来の渦電流式膜厚測定装置の例として、特許文献1に記載の渦電流式膜厚測定装置が挙げられる。従来の一般的な渦電流式膜厚測定装置による膜厚測定原理は、概ね次のとおりである。
予め、測定対象物と母材が同じで被膜の膜厚が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプルを複数用意する。次いで、各標準サンプルの表面に対して交流電界を付与し、標準サンプル内に渦電流を誘起してその強度を測定することにより導電率を測定し、測定対象物の導電率と被膜の膜厚との相関関係を示す標準曲線(検量線)を作成しておく。そして、実際の膜厚測定時には、測定対象物の表面に対して交流電界を付与し、測定対象物内に渦電流を誘起してその強度を測定することにより測定対象物の導電率を測定し、前記標準曲線を用いて測定導電率の値から被膜の膜厚を導出する。
特開2007−298292号公報
しかし、前記従来の渦電流式膜厚測定装置では、測定対象物の被膜が溶射膜である場合、次の理由によって、正確な膜厚測定が困難であった。
すなわち、溶射によって被膜を形成する場合、形成された溶射膜の膜質は、溶射条件によって大きく異なる。たとえ溶射材の材質が同じであっても、例えば、溶射速度、溶射温度、溶射距離、溶射雰囲気、溶射ガス圧等の各溶射条件が異なれば、形成密度の相違、酸化物の巻き込みの相違などにより、異なる膜質の被膜が形成される。それゆえ、形成された溶射膜の膜質は、溶射処理を実行する装置の特性、作業環境に依存し、例えば製造ロットによってバラツキが生じることがある。さらには、溶射膜の膜質は、周囲温度や経年劣化によって変化することもある。
しかしながら、前述のように、従来の渦電流式膜厚測定装置は、標準サンプルと実際に膜厚を測定する測定対象物との間の膜質の相違を考慮、補正等していないので、前提とする標準曲線は、実際の測定対象物における導電率と被膜の膜厚との相関を必ずしも正しく示しておらず、それゆえ、測定対象物が変わるたびに、導出した被膜の膜厚には測定誤差が生じていた。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、例えば測定対象物上の被膜が溶射膜である場合のように、測定対象物の被膜の膜質にバラツキが存在する場合であっても、誤差の少ない被膜の膜厚測定ができる膜厚測定方法、膜厚測定装置を提供することを目的としている。
本発明の膜厚測定方法は、母材と母材上の被膜とからなる測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知することにより、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定方法に係る。
本発明の膜厚測定方法は、
前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて前記被膜の固有導電率を測定する被膜導電率測定段階と、
異なる前記被膜の固有導電率に対応し、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの前記測定対象物の測定導電率と前記被膜の膜厚との相関を示すとともに、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成される複数の膜質別標準曲線の中から、前記被膜導電率測定段階で測定された被膜の固有導電率に基づいて、前記被膜の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する標準曲線選択段階と、
前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて前記測定対象物の導電率を測定し、測定した前記測定対象物の導電率と前記測定用標準曲線とを用いて、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定段階とを備えるものである。
上記の構成において、被膜導電率測定段階では、前記測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度が検知され、この検知結果に基づいて、前記被膜の固有導電率が測定される。
前記被膜導電率測定段階では、前記測定対象物の表面に対し、外部から次第に周波数を変化させながら前記交流電界を付与して前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて、前記周波数毎に前記測定対象物の導電率の値を測定するとともに、前記周波数の増加に対して測定導電率が飽和した値を、前記被膜の固有導電率として決定する。
前記交流電界の周波数を増加させるほど、前記渦電流ないし測定導電率は、前記測定対象物のより浅い領域の導電状態を反映したものとなることが知られている。したがって、前記周波数を低い値から高い値に変化させながら、前記渦電流の強度検知ないし前記測定対象物の導電率測定を行っていくと、低周波数での導電率測定では、前記母材と前記被膜との両方の導電状態を反映した導電率の値が得られるが、所定周波数以上の周波数での導電率測定では、前記被膜のみの導電状態を反映した導電率の値が得られる。それゆえ、前記周波数の増加に対して測定導電率は飽和した略一定の値となり、この飽和値は、前記被膜の固有導電率を示しているものと考えられる。
本発明は、前記被膜の固有導電率、または前記周波数の増加に対する測定導電率の飽和値に着目すれば、渦電流式膜厚測定に影響する限りにおいて、前記被膜の膜質の相違や製造バラツキ(密度や硬度、不純物の混合度のバラツキなどを含む)を的確に識別できる、という技術的思想を新規に提供し、技術的に実現するものである。
とりわけ前記被膜が、前記母材上に形成された溶射膜である場合には、溶射材の材質が同じであっても、例えば、溶射速度、溶射温度、溶射距離、溶射雰囲気、溶射ガス圧等の各溶射条件によって、異なる膜質の被膜が形成される。それゆえ、一般的には、溶射処理を実行する装置の特性、作業環境や製造ロット等によって、前記被膜の膜質は異なることがあるが、本発明によれば、かかる膜質の相違に起因する被膜の膜厚測定の誤差を効果的に抑制することができる。また、本発明によれば、前記被膜が、前記母材上に形成された塗装膜、クラッド層のいずれかであっても、膜質の相違に起因する被膜の膜厚測定の誤差を効果的に抑制することができる。
上記の構成において、前記母材は非磁性金属であるとともに、前記被膜は非磁性材料からなることも好ましい。前記母材を構成する非磁性金属としては、アルミや銅など任意の非磁性金属を用いることができ、これらの合金を用いてもよい。また、前記被膜を構成する非磁性材料としては、母材と異なる非磁性金属の他、塗膜材料、メッキなど任意の非磁性材料を用いることができる。
前記標準曲線選択段階では、前記被膜導電率測定段階で測定された前記被膜の固有導電率、または前記周波数の増加に対する測定導電率の飽和値に基づいて、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成された、複数の膜質別標準曲線の中から、実際に前記被膜の膜厚測定に用いる測定用標準曲線が選択される。この膜質別標準曲線は、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの前記測定対象物の測定導電率と前記被膜の膜厚との相関を示すものである。
例えば、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群、を用いて予め作成された複数の膜質別標準曲線の中から、実際に被膜の膜厚を測定する測定対象物における前記導電率の飽和値、または前記被膜の固有導電率に、最も近い値を、前記飽和値ないし前記固有導電率として有する標準サンプルを用いて作成され、これら固有導電率ないし飽和値と関連づけられた一の標準曲線が前記測定用標準曲線として選択される。
すなわち、前記標準サンプル群のうち、電気特性上、実際に膜厚を測定する測定対象物の被膜と最も近い膜質を有する被膜を備えた標準サンプルを用いて作成された測定用標準曲線を用いながら、前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記渦電流の強度を検知し、前記測定対象物の被膜の膜厚を測定する。
なお、前記標準サンプル群の被膜の材質と、実際に膜厚測定の対象とする測定対象物の被膜の材質とは同じであることが好ましいが、本発明は、被膜の諸性質を捨象して電気特性上の固有導電率のみで識別するので、前記標準サンプル群の被膜の材質と、実際に膜厚測定の対象となる測定対象物の被膜の材質とが異なる場合であっても、本発明を適用することが可能である。
以上の構成により、本発明の膜厚測定方法を用いれば、実際の測定対象物における導電率と被膜の膜厚との相関をより的確に示した標準曲線に基づいて、被膜の膜厚を測定することができる。これにより、測定対象物の被膜の膜質にバラツキが存在する場合であっても、誤差の少ない被膜の膜厚測定を実現することが可能となる。
また、本発明の膜厚測定装置は、
母材と母材上の被膜とからなる測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知することにより、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定装置に係る。
本発明の膜厚測定装置は、
コイルに交流電圧を印加して前記測定対象物の表面に対し、交流電界を付与する交流電圧印加部と、
前記交流電圧印加部によって付与された交流電界によって、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知する渦電流強度検知部と、
前記渦電流強度検知部が検知した渦電流の強度に基づいて、前記測定対象物の導電率を測定する導電率測定部と、
前記コイルに印加する交流電圧の周波数を次第に変化させる周波数調整部と、
前記周波数調整部が前記周波数を次第に変化させたときに前記導電率測定部が測定する前記測定対象物の導電率の値を前記周波数毎に格納する周波数別導電率格納部と、
前記周波数別導電率格納部に格納された前記周波数毎の前記測定対象物の導電率の値から、前記周波数の増加に対する前記測定対象物の導電率の飽和値を決定する飽和導電率決定部と、
異なる前記被膜の固有導電率に対応し、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの前記測定対象物の測定導電率と前記被膜の膜厚との相関を示すとともに、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成される複数の膜質別標準曲線を格納する標準曲線群格納部と、
前記飽和導電率決定部が決定した前記飽和値に基づいて、前記標準曲線群格納部に格納された複数の膜質別標準曲線の中から、前記被膜の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する標準曲線選択部と、
前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記導電率測定部が測定した前記測定対象物の導電率と前記標準曲線選択部が選択した前記測定用標準曲線とに基づいて、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定部とを備えるものである。
上記の構成により、本発明の膜厚測定装置は、前記膜厚測定方法と同様の作用効果を奏し、測定対象物の被膜の膜質にバラツキが存在する場合であっても、誤差の少ない被膜の膜厚測定を実現することができる。
本発明に係る膜厚測定方法、膜厚測定装置によれば、測定対象物の被膜の膜質にバラツキが存在する場合であっても、誤差の少ない被膜の膜厚測定を実現することができる。
本発明の一実施形態に係る膜厚測定装置の制御ブロックを示した機能ブロック図である。 図1の膜厚測定装置の外観図である。 膜厚測定処理の流れを示すフローチャートである。 被膜導電率測定の流れを示すフローチャートである。 コイルに付与する交流電圧の周波数と測定対象物の測定導電率との関係を示すグラフである。 図5のグラフを複数種類の測定対象物(試料A,試料B)について実験的に得たものである。 標準曲線選択から被膜膜厚測定までの流れを示すフローチャートである。 複数の膜質別標準曲線の分類を示すリストである。 交流電界の周波数別の導電率と膜厚との関係を示すグラフである。 被膜膜厚測定の流れを示すフローチャートである。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面に基づき説明する。
〔1.膜厚測定装置の構成例〕
図2は、本発明の一実施形態に係る膜厚測定装置1の外観を示す図である。同図に示すように、膜厚測定装置1は、筐体とこの筐体に接続されたプローブ10とから構成されている。プローブ10は、測定対象物の表面に近接させるものであって、かかる表面に交流電界を付与するためのコイルを内蔵している。
図1は、膜厚測定装置1の主な制御ブロックを示す機能ブロック図である。膜厚測定装置1は、母材Mと母材M上の被膜Fとからなる測定対象物の表面に対して、プローブ10によって交流電界を付与し、測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知することにより被膜Fの膜厚を測定するものである。同図に示すように、膜厚測定装置1の制御ブロックは、交流電圧印加部11,渦電流強度検知部12,導電率測定部13,周波数調整部14,周波数別導電率格納部15,飽和導電率決定部16,標準曲線群格納部17,標準曲線選択部18,膜厚測定部19から構成されている。また、膜厚測定装置1は、ユーザインタフェースとして、ユーザからの入力指示を受け付ける各種入力・選択キーや、各種情報を表示するディスプレイからなる入出力部20を備えている。
交流電圧印加部11は、プローブ10内蔵のコイルに接続されており、このコイルに交流電圧を印加する電源部である。なお、プローブ10内蔵のコイルは、出力ないし検知感度を調整するために、測定対象物の被膜Fが厚いときに用いるものと、測定対象物の被膜Fが薄いときに用いるものとで、設計や仕様を変えることも好ましい。
渦電流強度検知部12は、交流電圧印加部11の交流電圧によって付与された交流電界に起因して測定対象物の内部に誘起される渦電流の強度を、プローブ10内蔵のコイルを通じて検知する。
導電率測定部13は、渦電流強度検知部12が検知した渦電流の強度に基づいて、測定対象物の導電率を測定する。なお、導電率測定部13は、測定対象物の導電率を絶対的な値として測定する構成でなくとも、かかる導電率に比例する値を相対的に測定する構成であってもよい。渦電流強度検知部12が検知する渦電流の強度は、検知感度に依存して異なるからである。
周波数調整部14は、交流電圧印加部11がプローブ10内蔵のコイルに印加する交流電圧の周波数を任意の値に調整する。周波数調整部14の働きによって、プローブ10に対峙する測定対象物の表面に対し、調整した周波数の交流電界を付与することが可能となる。後述のように、周波数調整部14は、プローブ10内蔵のコイルに印加する交流電圧の周波数を低周波数から高周波数へと次第に増加させることができる。
周波数別導電率格納部15は、周波数調整部14がプローブ10内蔵のコイルに印加する交流電圧の周波数を次第に増加させたときに、導電率測定部13が測定する測定対象物の導電率の値を前記周波数毎に格納する格納部である。すなわち、周波数別導電率格納部15は、前記交流電圧を低周波数としたときの測定導電率、前記交流電圧を高周波数としたときの測定導電率などを、周波数別に格納している。
飽和導電率決定部16は、周波数別導電率格納部15に格納された周波数毎の測定導電率の値に基づいて、前記周波数の増加に対する測定対象物の導電率の飽和値を決定する。かかる導電率の飽和値の意義については後述する。
標準曲線群格納部17は、実際に膜厚を測定する測定対象物と、母材Mの材質および形状が略同じで被膜Fの膜質が異なり、被膜Fの膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成された複数の膜質別標準曲線を格納するデータ格納部である。この膜質別標準曲線は、異なる前記飽和値に対応しており、測定対象物の測定導電率と被膜Fの膜厚との相関を示すものとなっている。標準曲線群格納部17は、デジタル記憶構成により、例えば数百〜数千パターンの膜質別標準曲線を格納することができ、任意の膜質別標準曲線を簡単にデータ呼び出し可能な構成である。
標準曲線選択部18は、飽和導電率決定部16が決定した前記飽和値に基づいて、標準曲線群格納部17に格納された複数の前記膜質別標準曲線の中から、実際の被膜Fの膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する構成である。より具体的には、標準曲線選択部18は、前記複数の膜質別標準曲線の中から、実際に膜厚を測定する測定対象物における前記飽和値(被膜Fの固有導電率)と最も近い飽和値(被膜Fの固有導電率)に関連づけられた一の標準曲線を、前記測定用標準曲線として選択する。これにより、前述の標準サンプル群のうち、電気特性上、実際に膜厚を測定する測定対象物の被膜Fと、最も近い性質を有する被膜Fを備えた標準サンプルを用いて作成された標準曲線を、前記測定対象物の被膜Fの膜厚測定に用いることになる。
膜厚測定部19は、導電率測定部13が測定した測定対象物の導電率と標準曲線選択部18が選択した測定用標準曲線とに基づいて、被膜Fの膜厚を測定する構成である。膜厚測定部19による被膜Fの膜厚測定結果は、入出力部20のディスプレイに適宜表示される。また、膜厚測定部19は、膜厚測定装置1の制御動作全体を司るセンター制御部として、膜厚測定装置1の各制御動作を統合的に制御する働きを有している。
〔2.膜厚測定処理の流れ〕
次に、図3〜図10を参照しながら、膜厚測定装置1による膜厚測定処理の詳細について説明する。
図3は、膜厚測定装置1の実行する膜厚測定処理(膜厚測定方法)の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、母材Mと母材M上に溶射(メタリコン)した被膜Fとからなる測定対象物(オープンラック式気化器の一部)において、被膜Fの膜厚を測定する場合を考える。本実施形態において、母材Mは、非磁性金属のアルミニウム合金(例えば、Znを含有しないAl−Mn系,Al−Mg系,Al−Mg−Si系)から構成し、具体的な組成としては、例えばA3004,A5052,A5083材を用いる。また、被膜Fには、非磁性材料の一例としてアルミニウム−亜鉛合金の溶射膜を用いる。
図3に示すとおり、この膜厚測定処理は、被膜の固有導電率の測定処理S1,標準曲線の選択処理S2,被膜膜厚の測定処理S3の三段階から構成されている。
被膜の固有導電率の測定処理S1は、母材Mと母材M上の被膜Fとからなる測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与しながら、測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて被膜Fの固有導電率を測定する処理である。
標準曲線の選択処理S2は、異なる被膜Fの固有導電率に対応し、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの測定対象物の測定導電率と被膜Fの膜厚との相関を示す複数の膜質別標準曲線の中から、実際の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する処理である。かかる膜質別標準曲線は、測定対象物と母材Mの材質および形状が略同じで被膜Fの膜質が異なり、被膜Fの膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成される。
被膜膜厚の測定処理S3は、外部から交流電界を付与して、測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて測定対象物の導電率を測定し、測定した測定対象物の導電率と測定用標準曲線とを用いて、被膜Fの膜厚を測定する処理である。
図4は、被膜の固有導電率の測定処理S1の流れ(サブルーチン)をより詳しく示すフローチャートである。
被膜の固有導電率の測定処理S1は、前述のように、被膜Fの固有導電率を測定する処理であり、主に、膜厚測定装置1の飽和導電率決定部16の司令に基づいて実行される。具体的には、膜厚測定装置1は、飽和導電率決定部16の司令に基づいて、図4に示すS10〜S13の各処理によって、前記交流電界の周波数を次第に増加させながら測定対象物に付与して、渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて、周波数毎に測定対象物の導電率の値を測定したうえで、前記周波数の増加に対して測定導電率が飽和した値を、被膜Fの固有導電率として決定する。
すなわち、飽和導電率決定部16の司令に基づいて、膜厚測定装置1は、図4に示すように、低周波数(例えば約100KHz)の交流電界を付与して測定対象物の導電率を測定し(S10)、中周波数(例えば約250KHz)の交流電界を付与して測定対象物の導電率を測定し(S11)、高周波数(例えば約500KHz)の交流電界を付与して測定対象物の導電率を測定する(S13)。そして、これら測定結果を周波数別に周波数別導電率格納部15に格納する。なお、何通りの周波数で導電率を測定すべきかは、測定に要する時間と後述の飽和値(固有導電率)を導出するのに必要なデータ数とを考慮して適宜設定すればよい。一般には、データ数が多くなるほど、飽和値(固有導電率)の導出は正確となる。
このように、交流電界の周波数を変化させながら、測定対象物の導電率を測定する理由は、渦電流式膜厚測定の測定可能深さが、交流電界の周波数の2乗に反比例することが知られているからである。すなわち、測定導電率の値は、交流電界の周波数を増加させるほど、測定対象物のより浅い領域の導電状態を反映したものとなる。したがって、交流電界の周波数を低い値から高い値に増加させながら、測定対象物の導電率を測定していくと、低周波数領域の導電率測定では、母材Mと被膜Fとの両方の導電状態を反映した導電率の値が得られるが、所定周波数以上の高周波数領域の導電率測定では、被膜Fのみの導電状態を反映した導電率の値が得られると考えられる。
図5は、前記コイルに付与する交流電圧の周波数(測定対象物に付与する交流電界の周波数)と測定対象物の測定導電率との関係を概念的に示すグラフである。同図に示すように、交流電圧の周波数が所定以上の領域では、測定導電率は、周波数の増加に対して飽和(サチュレイト)し、略一定の値となっている。この飽和値は、被膜Fのみの導電率、すなわち被膜Fの固有導電率を示していると考えられる。このように、測定周波数を低周波数から高周波数に増加させながら飽和導電率を測定することにより、被膜Fが薄い場合であっても、被膜Fの固有導電率を的確に測定することが可能となる。
なお、交流電界の周波数があまりに高すぎると、測定対象物の表面ざらつきの影響が強くなるほか、ごく表層だけの状態を反映した測定導電率の値となり、適切な固有導電率が得られないことがある。一般に、測定対象物の膜厚が厚いときには、測定周波数を低めに設定する一方、測定対象物の膜厚が薄いときには、測定周波数を高めに設定することが好ましい。
図4において、飽和導電率の決定(S13)は、S10〜S12の各処理にて測定された周波数別導電率の値に基づいて、周波数の増加に対する導電率の上記飽和値を求めることによって行われる。
図6は、異なる測定対象物(試料Aの被膜はクラッド層,試料Bの被膜は溶射膜である。)について、交流電界の周波数と測定導電率との関係を実測した結果を示すグラフである。図6をみると、試料の構成によって、交流電界の周波数が増加したときに測定導電率が増加する場合と、交流電界の周波数が増加したときに測定導電率が減少する場合とがあることがわかる。この違いは、母材Mの導電率と被膜Fの導電率との大小関係の違いに起因して生ずるものである。
しかし、図6の試料A,試料Bのいずれについても、交流電界の周波数増加につれて各測定導電率の値は飽和しており、この飽和値から測定対象物のごく浅い領域の導電率、すなわち被膜Fの固有導電率を読み取ることができる。膜厚測定装置1の飽和導電率決定部16は、前記飽和値の具体的算出方法として、十分に飽和した高周波領域の導電率の値をそのまま前記飽和値として用いてもよいし、所定の算出式により適宜のフィッティング処理や補間処理などを施して前記飽和値を算出してもよい。
図7は、標準曲線(検量線)の選択処理S2の流れ(サブルーチン)をより詳しく示すフローチャートである。
標準曲線の選択処理S2は、前述のように、測定対象物の測定導電率と被膜Fの膜厚との相関を示す複数の膜質別標準曲線の中から、実際の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する処理であり、主に、膜厚測定装置1の膜厚測定部19の司令に基づいて実行される。具体的には、膜厚測定装置1は、膜厚測定部19の司令に基づいて、S20〜S22の各処理によって前記測定用標準曲線を選択する。
膜厚測定部19は、図7に示すように、実際の膜厚測定の対象となる測定対象物の母材材質の選択(S20)と母材形状の選択(S21)として、入出力部20を介し、ユーザからの入力指示を受け付ける。このような選択が必要となるのは、渦電流式膜厚測定においては、原理上、測定対象物の母材Mの材質および形状が、測定用標準曲線を得る標準サンプルの母材Mの材質および形状と略同じであることが前提となるので、膜厚測定に用いる測定用標準曲線を的確に選択するためには、母材Mの材質および形状の情報が必要となるからである。
ここで、標準サンプルとは、膜厚測定に用いる標準曲線を作成するための試料のことであり、測定対象物と母材Mの材質および形状が略同じで、被膜Fの膜厚が既知のものをいう。このような標準サンプルの具体的作成要領としては、例えば、測定対象物と同一の母材Mの上に、溶射回数を一回、二回、三回・・・と変えて被膜Fを溶射することにより膜厚の異なる試料を作成し、この試料の被膜Fの膜厚を実際に測定すればよい。例えば、後述の標準曲線作成後に、破壊試験によって膜厚測定を実施することもできる。後述の標準曲線を得るにあたっては、標準サンプルの膜厚バリエーションは多いほどデータが豊富となって好ましい。
前述した溶射プロセスの不安定さにより、標準サンプルの作成時に、上記溶射処理を実行する装置や溶射処理ロット、作業環境を異なるものとすれば、自然と膜質の異なる標準サンプル群ができあがるので、例えば、装置Aにて溶射した標準サンプル群や装置Bにて溶射した標準サンプル群、工場Cで溶射した標準サンプル群や工場Dで溶射した標準サンプル群を作成するなどすれば、母材Mおよび被膜Fの材質が同じでも、被膜Fの膜質状態が異なる標準サンプル群を準備することができる。このような標準サンプル群は、測定対象となる母材Mの材質および形状別に準備される他、被膜Fの膜質状態が異なるものを極力他種類ないし多数準備することが好ましい。
そして、予め、測定対象物の母材Mの各材質と各形状とで分類して、異なる膜質の各標準サンプルについて、前記被膜の固有導電率の測定処理S1と同様の手順により、前記飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率を測定しておく。これにより、各標準サンプルをその飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率によって識別することが可能となり、この飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率は、被膜Fの膜質を反映した代表値となる。
次いで、膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、前記交流電界の周波数を実際の膜厚測定時に用いる交流電界の周波数(測定周波数)と同じに設定した状態で、全ての標準サンプルについて、導電率と既知の膜厚との相関を示す標準曲線を測定し、データベース化された数値群や数値プロットしたグラフの形式等で標準曲線群格納部17に格納しておく。これら標準曲線は、標準サンプル毎に異なっており、各標準サンプルの前記飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率の値と対応づけられている。なお、実際の膜厚測定時に用いる交流電界の周波数(測定周波数)は、所定の固定値であるが、その設定要領の詳細については後述する。
このようにして、標準サンプル群に基づいて、測定対象物の母材Mの材質および形状ごとに分類されるとともに、異なる被膜Fの固有導電率に対応し、測定対象物の測定導電率と測定対象物の被膜Fの膜厚との相関を示す複数の膜質別標準曲線を得ることができる。
本発明の特徴は、被膜F、とりわけ溶射された被膜Fの膜質(材質の他、密度や硬度などを含む)を、前記飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率によって的確に示すことが可能であることを本発明者が見出し、実証したことにある。すなわち、かかる飽和導電率ないし固有導電率のみに着目して整理すれば、多数準備された膜質別標準曲線のデータから、実際に測定対象となる被膜Fの膜質を的確に反映した測定用標準曲線を的確に選択することができる。
図8は、膜厚測定装置1の標準曲線群格納部17が格納する標準曲線の分類例を示すリストである。膜厚測定装置1では、標準曲線選択部18が、図8のリストを保有しており、同リストは、第一に母材Mの材質によって、第二に母材Mの形状(測定対象部材に対応している)によって、前記標準曲線を分類している。
図8の「A3004」「A5052」「A5083」は、前述した母材Mの材質(前述したアルミニウム合金の組成名)を示す一方、同図の「フィン」「付根」「ヘッダ」とは、オープンラック式気化器のいずれの部材を膜厚測定するのかを示しており、これら部材名は母材Mの形状に対応している。具体的には、「フィン」は、オープンラック式気化器のフィン部に相当する平板(幅約10mm)の形状を示し、「付根」は、オープンラック式気化器のチューブ付根部に相当するパイプ(約30mmφ)の形状を示し、「ヘッダ」は、オープンラック式気化器の下ヘッダ部に相当するパイプ(約200mmφ)の形状を示している。
図8のリストでは、前提として母材Mの材質および形状に基づいて、標準サンプル群の標準曲線データ(No.1〜27)を分類しているので、前記S20における母材Mの材質の選択結果(例えば「A3004」)と、前記S21における母材Mの形状の選択結果(例えば「フィン」)とに基づいて標準曲線データを絞り込んだ上で、さらに、前記飽和導電率ないし被膜Fの固有導電率に基づいて、一の標準曲線データを選択することができる。これにより、標準曲線群格納部17が格納する多数の標準曲線(膜質別標準曲線)の中から、実際に被膜Fの膜厚測定に用いる測定用標準曲線が選択される。
例えば、測定対象物と母材Mの材質および形状が略同じで被膜Fの膜質が異なり、被膜Fの膜厚が既知の標準サンプル群、を用いて予め作成された複数の膜質別標準曲線の中から、実際に被膜Fの膜厚を測定する測定対象物における導電率の飽和値、または被膜Fの固有導電率に、最も近い値を、前記飽和値ないし前記固有導電率として有する標準サンプルを用いて作成され、これら固有導電率ないし飽和値と関連づけられた一の標準曲線が前記測定用標準曲線として選択される。
図8のリストを参照すれば、例えば、母材材質「A3004」の母材形状「フィン」について、異なる三種類の飽和導電率の値A,B,Cに各々対応づけられた膜質別標準曲線No.1〜3が存在することがわかる。膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、膜質別標準曲線No.1〜3の中から、S13において決定した測定対象物の飽和導電率の値が最も近い飽和導電率(例えばA)を有する標準曲線(No.1)を、後述の膜厚測定に用いる測定用標準曲線として選択する(図7のS22)。
標準サンプル群を用いて得ておく標準曲線に関するデータは、図8に示した母材Mの材質,形状,飽和導電率による分類の他、さらに、被膜Fを形成した溶射装置の違いなどの各要素によって細分化されていてもよい。もちろん、かかる場合には、ユーザは、適切な標準曲線を選択するために、母材Mの材質,形状,飽和導電率だけでなく、上記の細分化項目についても指示入力することが必要である。
なお、前述のように、プローブ10のコイルを、主に測定対象物の被膜Fが厚いときに用いるものと、主に測定対象物の被膜Fが薄いときに用いるものとで、設計や仕様を変えて使い分ける場合には、プローブ10の種類毎に分類して、各標準サンプル群の標準曲線を準備しておく。
次いで、図7のS23に示すように、膜厚測定装置1は、膜厚測定部19の司令に基づいて、実際の膜厚測定時に用いる交流電界の周波数(測定周波数)を設定する。一般に、前記測定周波数を低く設定するほど、測定対象物のより深い領域の情報を得ることができる一方、膜厚の測定感度(精度)が悪くなることが知られている。他方、前記測定周波数を高くしすぎると、測定対象物のごく浅い領域の情報しか得られないので、被膜Fと母材Mとの境界周辺の情報が測定結果にうまく反映されず、適切な膜厚測定ができない。したがって、上記のトレードオフ関係を考慮すると、測定対象物における被膜Fの膜厚をある程度把握し、前記測定周波数を、被膜Fの膜厚を適切に測定できる範囲で、できるだけ高く設定することが好ましい。
図9は、同一の測定対象物に対して、前記測定周波数を60kHz〜480kHzの範囲内で変化させた場合の測定導電率と膜厚との関係を例示するグラフ(標準曲線)である。同図においては、測定導電率の値を、単位を有する絶対的な導電率に換算せず、相対導電率として記載している。
図9のグラフを参照すると、測定周波数が60kHz,120kHz,240kHz,480kHzと高くなるにつれて、所定値の膜厚に対応する導電率の値が次第に大きくなることがわかる。同図では、全ての測定周波数において、グラフは略右上がりの単調増加曲線となっており、膜厚と導電率とは、略一対一の対応関係を示している(ただし、480kHzのグラフでは、約300μm以上の膜厚領域において、膜厚の増加に対する導電率の減少が生じている)。
したがって、測定対象物の被膜Fの膜厚が約300μm未満の範囲内であるならば、測定周波数の値を、前述のうち480kHzに設定することにより、測定導電率の広いダイナミックレンジを最大限に活用した感度の高い膜厚測定を実施することができる。特に、測定対象物の被膜Fの膜厚が約100μm未満の範囲内であるならば、測定周波数を480kHzに設定した場合は、測定周波数を60kHz,120kHz,240kHzに設定した場合よりも、膜厚の変化に対する導電率の変化が大きくなるので、膜厚測定の感度を向上することが可能となる。
標準曲線群格納部17に格納した標準曲線を測定するときに用いた前記実際の膜厚測定時に用いる交流電界の周波数(測定周波数)とは、S23にて設定される測定周波数のことである。例えば、膜厚測定装置1は、膜厚測定部19の司令に基づき、例えば図9のグラフを基に決定するに際して、測定対象物の被膜Fの膜厚が約300μm未満の範囲内と想定されるならば(例えば、前回の膜厚測定結果の値を参考にする)、測定周波数を480kHzに設定する一方、測定対象物の被膜Fの膜厚が約300〜400μmの範囲内と想定されるならば、測定周波数を60kHz(膜厚が約300〜400μmの範囲内において最も測定感度が優れている)に設定する。
S23において、膜厚測定装置1は、測定周波数を決定するための前提情報として、測定対象物の被膜Fの膜厚の大凡の値や設計値、範囲に関する情報を、入出力部20を介して、ユーザから受け付けることも好ましい。なお、膜厚測定装置1は、測定周波数をユーザの直接的な指示ないし選択に基づいて決定してもよい。
図10は、被膜膜厚の測定処理S3の流れ(サブルーチン)をより詳しく示すフローチャートである。
被膜膜厚の測定処理S3は、前述のように、前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて前記測定対象物の導電率を測定し、測定した前記測定対象物の導電率とS22で選択された測定用標準曲線とを用いて、被膜Fの膜厚を測定する処理であり、主に、膜厚測定装置1の膜厚測定部19の司令に基づいて実行される。具体的には、膜厚測定装置1は、膜厚測定部19の司令に基づいて、図7に示すS20〜S22の各処理によって前記測定用標準曲線を選択する。
校正処理(S30)とは、S22で選択された測定用標準曲線を用いて実際に膜厚測定を実施する準備段階として、測定導電率が許容されるダイナミックレンジ(測定レンジ)の範囲内に収まっているかを試験ないし確認し、測定導電率が所定の測定レンジ内に適切に収まるように感度調整する処理である。
上記の感度調整は、電気的増幅量を調整する手法の他、前述したようなプローブ10の使い分けによっても実現することができる。すなわち、巻き数の異なるコイルを内蔵した複数種類のプローブ10を準備し、被膜Fが厚いときには、厚膜用のプローブ10を用いる一方、被膜Fが薄いときには、薄膜用のプローブ10を用いることにより感度調整を行うことができる。このような感度調整を行う場合には、膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、入出力部20のディスプレイにメッセージ表示して、適宜ユーザにプローブ10の交換を促す。一般的に、被膜Fが厚いときには、測定導電率の値が大きくなりやすく、被膜Fが薄いときには、測定導電率の値が小さくなりやすい。
なお、上記の感度調整を行う場合には、測定用標準曲線を用いて膜厚測定するに際し、電気的増幅量の調整分を勘案して測定導電率の値を適宜補正したり、測定用標準曲線を異なる種類のプローブ10に対応する別の標準曲線に変更したりする処理が必要となる。
前記校正処理が終われば、膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、測定対象物の導電率測定を開始し(S31)、測定導電率が上記で許容されたダイナミックレンジ(測定レンジ)内に入っているかどうかを判定する(S32)。前記判定の結果、測定導電率が測定レンジ内に入っていなければ、S30に戻って再び校正処理を行う一方、前記判定の結果、測定導電率が測定レンジ内に入っていれば、膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、S33の処理に進み、前記交流電界の周波数をS23で設定された固定値として、S22で選択された測定用標準曲線とS31で測定した導電率の値とに基づいて、測定対象物における被膜Fの膜厚を算出する。そして、膜厚測定装置1の膜厚測定部19は、算出した膜厚を入出力部20のディスプレイに表示して処理を終了する(S34)。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何らこれらに限定されるものではない。例えば、上記の説明において、膜厚測定装置1が自動的ないし自律的に実行するものとした処理の一部を、膜厚測定装置1ではなく、ユーザが行うようにしてもよい。また、上記の説明においては、主に、溶射膜からなる被膜Fの膜厚を測定する実施形態を示したが、本発明による膜厚測定の対象は、溶射膜に限られず、塗装膜、クラッド層の他、任意の被膜Fを用いることができる。
以上説明したように、本発明は、測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、誘起される渦電流の強度を検知することにより、被膜の膜厚を測定する膜厚測定方法、膜厚測定装置に好適に利用できるものである。
1 膜厚測定装置
10 プローブ
11 交流電圧印加部
12 電流強度検知部
13 導電率測定部
14 周波数調整部
15 周波数別導電率格納部
16 飽和導電率決定部
17 標準曲線群格納部
18 標準曲線選択部
19 膜厚測定部
20 入出力部

Claims (5)

  1. 母材と母材上の被膜とからなる測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知することにより、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定方法であって、
    前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて前記被膜の固有導電率を測定する被膜導電率測定段階と、
    異なる前記被膜の固有導電率に対応し、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの前記測定対象物の測定導電率と前記被膜の膜厚との相関を示すとともに、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成される複数の膜質別標準曲線の中から、前記被膜導電率測定段階で測定された被膜の固有導電率に基づいて、前記被膜の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する標準曲線選択段階と、
    前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて前記測定対象物の導電率を測定し、測定した前記測定対象物の導電率と前記測定用標準曲線とを用いて、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定段階とを備え
    前記被膜導電率測定段階では、
    前記測定対象物の表面に対し、外部から次第に周波数を変化させながら前記交流電界を付与して前記渦電流の強度を検知し、検知した渦電流の強度に基づいて、前記周波数毎に前記測定対象物の導電率の値を測定するとともに、前記周波数の増加に対して測定導電率が飽和した値を、前記被膜の固有導電率として決定することを特徴とする膜厚測定方法。
  2. 前記被膜は、前記母材上に形成された溶射膜、塗装膜、クラッド層のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の膜厚測定方法。
  3. 前記母材は非磁性金属であるとともに、前記被膜は非磁性材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の膜厚測定方法。
  4. 前記母材はアルミまたはアルミ合金であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の膜厚測定方法。
  5. 母材と母材上の被膜とからなる測定対象物の表面に対し、外部から交流電界を付与して、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知することにより、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
    コイルに交流電圧を印加して前記測定対象物の表面に対し、交流電界を付与する交流電圧印加部と、
    前記交流電圧印加部によって付与された交流電界によって、前記測定対象物に誘起される渦電流の強度を検知する渦電流強度検知部と、
    前記渦電流強度検知部が検知した渦電流の強度に基づいて、前記測定対象物の導電率を測定する導電率測定部と、
    前記コイルに印加する交流電圧の周波数を次第に変化させる周波数調整部と、
    前記周波数調整部が前記周波数を次第に変化させたときに前記導電率測定部が測定する前記測定対象物の導電率の値を前記周波数毎に格納する周波数別導電率格納部と、
    前記周波数別導電率格納部に格納された前記周波数毎の前記測定対象物の導電率の値から、前記周波数の増加に対する前記測定対象物の導電率の飽和値を決定する飽和導電率決定部と、
    異なる前記被膜の固有導電率に対応し、前記交流電界の周波数を所定の固定値としたときの前記測定対象物の測定導電率と前記被膜の膜厚との相関を示すとともに、前記測定対象物と母材の材質および形状が略同じで被膜の膜質が異なり、当該被膜の膜厚が既知の標準サンプル群を用いて予め作成される複数の膜質別標準曲線を格納する標準曲線群格納部と、
    前記飽和導電率決定部が決定した前記飽和値に基づいて、前記標準曲線群格納部に格納された複数の膜質別標準曲線の中から、前記被膜の膜厚測定に用いる測定用標準曲線を選択する標準曲線選択部と、
    前記交流電界の周波数を前記所定の固定値とした状態で、前記導電率測定部が測定した前記測定対象物の導電率と前記標準曲線選択部が選択した前記測定用標準曲線とに基づいて、前記被膜の膜厚を測定する膜厚測定部とを備えることを特徴とする膜厚測定装置。
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