以下、本発明に係る構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は感光体の表面層における分散剤の機能を(1)塗料中における金属酸化物フィラーの沈降防止、(2)感光体の表面層中における金属酸化物フィラーの分散又は凝集状態の制御及び(3)感光体露光部電位の低減に分離し、三つの機能に応じ分散剤は単一ではなく複数の材料を用いることで課題を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、支持体上に複数の層が形成され、そのうち表面の層として金属酸化物フィラーと分散剤を含有する表面層が形成された電子写真感光体において、
前記表面層に酸価が0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
また本発明によれば、酸価が0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸を含まない溶液で金属酸化物フィラーを分散して成る金属酸化物フィラー分散液を調製し、次いで酸価が0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸を添加してなる表面層用塗料を用いて前記表面層を形成することを特徴とする上記電子写真感光体の製造方法が提供される。
本明細書では、感光体の表面層は支持体から最も離れた層を指す。保護層が積層される場合、表面層は保護層を指し、感光体最表が電荷輸送層の場合、表面層は電荷輸送層になる。ただし、画像形成装置によって滑剤などがコーティングされるものは皮膜として上の表面層と区別する。
感光体の表面層における分散剤の機能分離化に基づき、露光部電位の低減を確保しつつ分散剤の選択肢を拡大することができる。露光部電位の低減は本来、電子写真感光体に限って必要とされる機能であり、市販される分散剤は通常、この機能を持たない。本発明では上記の(1)と(2)の機能を実質的に発現するものを分散剤と定義し、(1)と(2)の機能をもつ分散剤に(3)の機能を発現させるために酸価が0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸有機酸を併用する特徴をもつ。よって、(3)のみの機能をもつ有機酸を単独で含有するものは本発明の概念に含まない。
本発明において有機酸の酸価とは、1グラムの有機酸を中和するのに要する水酸化カリウムの質量と定義する。水酸化カリウムの質量は通常、ミリグラム単位を使用するが本発明では定義する値の大きさから便宜上、グラム単位を用いる。
本発明では有機酸の酸価の測定は次の通り行う。
すなわち、0.1gの有機酸にエタノール100mlを加え、室温環境下で溶解する。有機酸溶液に指示薬として1.0mlのフェノールフタレイン液を加えて0.1Nのイソプロピルアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、30秒間持続して淡紅色を呈する滴定量を終点とする。酸価は次式(1)から算出する。
酸価(gKOH/g)=(56.11×N×(s−b)×F)/S・・・(1)
ここで、
N:KOH/イソプロピルアルコール溶液の規定度
s:滴定量(ml)
b:ブランク滴定量(ml)
F:滴定液の力価
S:有機酸の質量(g)
である。
本発明では酸価が0.8g以上1.0g以下の有機酸に対して、概ね酸価の大きさに応じて露光部電位を低減できる効果を見いだした。
酸価が0.8gKOH/g以下では効果が小さいため、露光部電位の低減に対して有意でない。このため、有機酸の酸価の下限は0.8gKOH/gとする。有機酸の酸価は大きい程、この効果が強く発現されるが、硫酸のような強酸を加えると材料の変質をもたらす原因となるため適当ではない。
本発明では酸価が1.0gKOH/gまで不具合を来さず所期の効果が得られることが確かめられたため、この数値を上限値とする。従来、分散剤の酸価は分散剤との特徴を示す重要な物性値として利用されている。これを従来の数値範囲から大きく外れる有機酸を対象に適用する事例はみることが少ない。これは本発明の特徴の一つと言うことができる。
分散剤の酸価は分散剤メーカーのカタログ値として開示されるものが多く一般的なパラメーターと言える。例えば、発明の構成要素として、参考文献1(特許第3802787号公報)では分散剤の酸価を30〜400mgKOH/gの規定があり、参考文献2(特許第4425487号公報)には分散剤の酸価として10〜400mgKOH/gの規定がある。
また、参考文献3(特開2011−13355号公報)の段落[0038]〜[0044]に感光体の残留電位特性や画像特性乃至金属酸化物フィラーの分散性から10〜700mgKOH/gの規定が見られる。
しかし、いずれも酸価の規定範囲が幅広く特定できない。分散剤は分散剤の分散性や感光体を低抵抗化させる作用、分散剤自体の電荷トラップ性など複数の特性が交互に作用するため、一つの分散剤で複数の機能を満足することは難しい。これが酸価の規定に幅をもつ理由と思われる。
これに対し、本発明では分散剤を機能分離することで、感光体の露光部電位を低減する機能に対して従来にない大きな酸価を適当な数値範囲として定義し、かつ酸価に応じて露光部電位が低減できる酸価の範囲を規定することに成功している。
ここで、本発明で用いる有機酸は有機化合物の酸の総称として定義する。有機酸はカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシ酸、スルホン酸などを挙げることができる。これらは分子骨格の特徴から脂肪族化合物と芳香族化合物、飽和化合物と不飽和化合物の有機酸に分類できる。有機酸の一例として、シクロヘキサンカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、メリット酸、メリト酸、コハク酸、グリコール酸、マレイン酸、クエン酸、マロン酸、乳酸、キナ酸、2−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、グリセリン酸、シュウ酸、酒石酸、プロトカテク酸、ガリック酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。これらは東京化成工業社、関東化学社、和光純薬工業社などの試薬メーカーから入手することができる。有機酸のうち、特に、クエン酸またはマレイン酸のいずれかを用いることが好適である。
これらの有機酸は、後述するテトラヒドロフランなどの塗料溶媒に溶解可能であり、揮発しない材料が好ましい。また、シクロヘキサンカルボン酸などの不快なにおいのする有機酸は扱いが困難であるため用いない方が良い。このうち、酸価が1.0gKOH/gのマレイン酸は溶剤可溶で塗料に適用しやすく、不快なにおいがなくかつ露光部電位の低減効果が大きく好ましい材料である。
感光体の表面層に含有する有機酸の含有量は表面層の総固形分に対して0.5重量%〜3重量%にすると所期の効果を発現しやすい。有機酸の含有量に応じて露光部電位は低減するとは必ずしも言えない。有機酸自体が電荷を蓄積する作用があると考えられる。クエン酸は取り扱いやすく、クエン酸の含有率に応じて露光部電位の低減が得られる化合物として有利な材料である。
本発明は少なくとも金属酸化物フィラーと分散剤が含有される表面層を積層する電子写真感光体において、酸価が0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸を添加すると、露光部電位の低減が得られるため、金属酸化物フィラーと分散剤の選択肢が広げられる。現在市販される膨大な分散剤を感光体表面層の塗料に利用できる。
また、感光体の表面層に用いる分散剤は、水に溶解しない分散剤を用いると露光部電位の上昇を更に抑制することができる。この機構の詳細は不明だが次の通り考える。
有機酸添加による以上の効果は、金属酸化物フィラーの親水性部位を有機酸が不活性化すると考えられる。この考えによれば親水性の分散剤は金属酸化物フィラーと同じ影響で露光部電位が上昇すると考えられる。よって、有機酸の一部が分散剤の親水性を不活性化するものに費やされ、金属酸化物フィラーの不活性化が不十分になると考える。感光体の表面層に含有する有機酸のうち、分散剤の不活性化に費やす分が少なければ、その分、金属酸化物フィラーの不活性化に作用することができるため、露光部電位の低減に対して効果が強くなると考えられる。
本発明では、金属酸化物フィラーの分散液にビヒクルを注いで表面層の塗料を作製する手順が好ましい。有機酸はこの後に添加するかビヒクルに含ませると良い。
金属酸化物フィラーの分散工程は有機酸を介在させない状態で金属酸化物フィラーの表面に分散剤を付着させることで分散剤に固有の金属酸化物フィラーの分散状態をつくる。塗料の作製は、この後に有機酸を添加すると、金属酸化物フィラーの分散状態の特徴を崩すことがない。このため、感光体表面は特定の形状を安定してつくることができる。
以上の本発明の特徴をもつ感光体を搭載する画像形成用プロセスカートリッジ、画像形成装置は露光部電位が低くコントラストや階調性に優れる画像形成に有利である。また、画像形成装置に最適なクリーニング条件を感光体表面形状から実現できるため、画像ノイズの抑制に有利で、画質一貫性に優れる画像形成用プロセスカートリッジ乃至画像形成装置が実現できる。
画像形成装置の一例を、図1を用いて説明する。図1の装置では潤滑剤3Aは塗布ブラシ3Bで電子写真感光体表面に入力され、次いで塗布ブレード3Cでならされ、次にクリーニングブレード17で除去され、再び塗布ブラシ3Bへ戻るサイクルを経る。電子写真感光体11表面には潤滑剤3Aの他にトナーの入出力があるため、潤滑剤3Aはトナーと混合される状態で存在する。
潤滑剤3Aのロス成分がゼロになる状態を想定すると、少なくとも帯電装置12、塗布ブラシ3B、塗布ブレード部3C、クリーニングブレード17の鏡面部分及び電子写真感光体11表面にはトナーと潤滑剤3Aとの混合物の滞留は無い。
また、潤滑剤3Aを処方に含まないトナーを用いるとき、現像器内部のトナーは潤滑剤濃度がゼロとなる。すなわち、これらの滞留分と現像器内部の潤滑剤成分が潤滑剤のロス成分と見積もられる。尚、帯電装置12には帯電装置12をクリーニングするクリーナー12cが当接して設けられてなる。
画像形成装置内に電子写真感光体表面に皮膜をコーティングする塗布装置を内蔵するため、電子写真感光体は事実上摩耗することがない。尚、以下において電子写真感光体を単に感光体と称することもある。従来、電子写真感光体は消耗品として頻繁に交換して使用してきたが、本発明ではその必要がない。電子写真感光体は新たに製造することも回収することも不要であり、本発明の画像形成装置は省資源化による低環境負荷に対して極めて有利に働く。従来型の電子写真感光体である電子写真感光体を一度回収した後リサイクル使用する方法では本発明の形態に対してプリント一枚当たりのリサイクルコストの優位性に遠く及ぶことはできない。
本発明の画像形成装置は、電子写真感光体の表面層上に皮膜を形成する材料(以下、潤滑剤と称する)をコーティングする塗布量が、次のコーティングを行う直前までの清掃で潤滑剤を除去する量以下とする新規なプロセスである。これは電子写真感光体最表面に潤滑剤の皮膜を設けることを成立させる重要な要件となる。潤滑剤の除去量に応じて潤滑剤をコーティングすることで、電子写真感光体を中心に出入りする潤滑剤のマスバランスは等価性を得ることができる。
以上のプロセスは一見、既存の電子写真感光体へ潤滑剤を塗布する手段に類似するが、潤滑剤塗布はクリーニング性を持続するなどの電子写真感光体表面の潤滑機能を確保するために潤滑剤を電子写真感光体へ厚塗りする設計になっている。これまでの潤滑剤を電子写真感光体へ塗布する方式は電子写真感光体表面に潤滑剤の皮膜を積層する思想はなく、例えば電子写真感光体表面の保護や、あるいは電子写真感光体表面の摩擦係数を所定以下とするために潤滑剤を電子写真感光体表面に外部供給してきたに過ぎない。このような潤滑剤が外部から供給される感光体表面を観察すると、粒状の潤滑剤が感光体表面に付着している様相が観察できる。このような粒状の潤滑剤は装置内を汚染する原因になっている。
以上の画像形成用プロセスカートリッジ及び画像形成装置において潤滑剤の清掃によって除去される量(除去量)は回収したトナーに含まれる潤滑剤濃度から算出可能である。この分析には後述するICP(Inductively Coupled Plasma)分析またはXRF(X-ray Fluorescence)分析によって計量することができる。このように消失速度(潤滑剤の消費量の総量)を予め求めておくことで、潤滑剤の除去量と塗布量との関係を成立させることができる。
次に、1サイクル当たりの潤滑剤の塗布量が清掃によって除去される量以下にする決定方法について述べる。
潤滑剤の消費量は電子写真感光体に対する潤滑剤の付着効率と画像形成プロセスによって生じる損失分の補償を掛け合わせた値として決定される。画像形成プロセスによって生じる損失分は、潤滑剤全消費量のうち、ブラシによって粉体形成された潤滑剤が飛散や落下によって感光体表面にコーティングできなかった分として、潤滑剤塗布手段の周囲に滞留している粉末を回収することで計量することができる。
また、潤滑剤が感光体表面から除去された成分はクリーニング手段以降、一般には廃トナーボトルに至る経路に残留する分を回収することで計量することができる。トナーが含まれる場合は回収した全粉末の重量を求め、更にこの粉末について潤滑剤濃度を分析することで、感光体表面から除去された潤滑剤の質量を求めることができる。
潤滑剤の全消費量に対して以上のプロセスによる損失分と感光体表面からの除去分の差分が生じる場合、帯電手段などの他のモジュールへの汚染分とみなされる。電子写真感光体表面の潤滑剤の付着効率は、塗布ブレードなどの潤滑剤を塗布する部材と感光体とのなじみによって決定される。
塗布ブレードを用いる場合、潤滑剤を薄く均質にかつ隈無くコーティングするには感光体と塗布ブレードとの摺擦に際して、塗布ブレードが潤滑剤を完全にせき止めてしまっては効率が悪い。適度なギャップを形成したり、ビビリを防止したりすることが重要となる。
種々の外乱を含む画像形成プロセスに並行して潤滑剤をコーティングする場合、この付着効率はプロセスに起因する損失とコーティングする下地表面層の汚染具合に起因する損失分を補償する必要がある。外乱の有無による潤滑剤の付着効率差から損失分が算出される。
ただし、潤滑剤の皮膜が成立する画像形成装置の場合は、単純に潤滑剤の消費量を増減させて潤滑剤の皮膜欠陥と感光体表面のフィルミングの度合いを評価し、潤滑剤の皮膜の成立点を特定することができる。
この画像形成装置は、電子写真装置内で潤滑剤を電子写真感光体の表面層上へコーティングすることを特徴としており、良質な製膜を確保するために、耐久使用をしても表面層の塗布面は清浄であることが望ましくかつ表面層を変質させない状態にすることが望ましい。
前者は清浄を崩すトナーを最大限排除する方法として、潤滑剤の皮膜の塗布装置を電子写真感光体表面移動方向に対してクリーニング装置よりも下流に配置することが重要である。更に、後者に対しては特に電子写真感光体と接触する部材間のなじみに変調を来す表面層の形状変化を防止する必要がある。このため、表面層が直接、帯電ハザードに曝されないようにするために、以上の塗布装置は電子写真感光体表面移動方向に対して帯電装置よりも上流に配置して潤滑剤の皮膜をコーティングすることが重要である。
以上の画像形成用プロセスカートリッジおよび画像形成装置に搭載する場合、本発明の電子写真感光体の表面層に循環型の皮膜が形成される。ここでは、この皮膜を循環型表面層と称することがある。この皮膜の欠陥は少なくとも10%未満で、かつ、潤滑剤の皮膜の質量膜厚が一分子層以上三分子層未満である。質量膜厚はICP分析や簡易的なXRF分析によって算出できる。
ICP分析は、参考文献4(特開2008−122870号公報)に準じて得ることができ、XRF分析はICP分析結果による検量線から付着量を算出している。質量膜厚は参考文献5(中井泉編、蛍光X線分析の実際、154−161、朝倉書店、2005)に基づき算出される。
また、感光体表面層の上にコーティングする被膜の欠陥は100%から被覆率を引いた値として算出する。被覆率は参考文献4に記載の方法に準じてXPS分析法から求める値である。質量膜厚は参考文献5に記載の面密度(g/cm2)を密度(g/cm3)で割ることで長さすなわち質量膜厚を得ている。
本発明の実施例で扱うステアリン酸亜鉛は一分子の厚みを5nmとして重なる分子数を厚みの単位として用いている。この厚みは、例えば、参考文献6(特開2006−91047号公報)の段落[0021]に基づいている。
尚、本発明の電子写真感光体は未使用の感光体表面に潤滑剤を設ける場合のみ潤滑剤の除去量と付着量の関係は無視される。なぜなら、潤滑剤が全く存在しない状態で潤滑剤の塗布量が潤滑剤の除去量以下とすると潤滑剤は全く塗布されなくなるためである。
潤滑剤を設ける場合とは、感光体ドラムを画像形成装置へ着荷するまでの非定常状態を指す。具体的には新たな感光体を画像形成装置に装着してから初期プリント1000枚以下を指す。感光体表面へ潤滑剤を設ける手段は、感光体表面の潤滑剤塗布が不十分なために、画像形成装置のクリーニング機能が不十分な性状を利用して感光体表面に潤滑剤を蓄積させても良いし、予め、セッティングパウダーなどを用いて塗布しても良い。
電子写真感光体表面の潤滑剤の皮膜は以上の通り定義するが、画像形成装置内あるいは画像形成プロセスの最中に潤滑剤の皮膜を形成させることは容易ではない。なぜなら、画像形成プロセスでは、電子写真感光体の表面層の物性は絶えず履歴を堆積していくためである。
画像形成プロセスの途上において、潤滑剤を電子写真感光体の表面層にコーティングするのみならず、トナーによる画像形成を伴う。このように潤滑剤の皮膜のコーティングと画像形成を同時に行う場合、潤滑剤のコーティングが不十分なときには電子写真感光体の表面層は紙粉やトナー成分がフィルミングしたり、メダカ形状のフィルミングが生じたりする。
これらのフィルミングは画像形成のサイクルを繰り返す度に潤滑剤のコーティングを困難にしてしまう。また、潤滑剤の被覆機能が弱く潤滑剤の供給に対して皮膜形成が追いつかなくなると潤滑剤のコーティング膜が粒だつことがある。また、電子写真感光体と接触する部材に潤滑剤が滞留したりすり抜けたりして、電子写真感光体表面は砂利をまぶしたような付着状態になることがある。
こうなると、電子写真感光体周りの部材(帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置)を汚染して寿命を縮めたり、現像器へ潤滑剤が混入してトナーの帯電を不調にさせたりするなど、画像形成装置を耐久使用するときの問題になる。このような粒だちは必ずしも0%である必要はないが、問題が回避できる目安として、□2mm程度領域で電子写真感光体表面を観察したときに粒だちの面積比率が0.05%未満、より好ましくは0.03%未満がよい。粒だちの面積比率はimageJ(アメリカ国立衛生研究所製)やImageProplus(メディアサイバネティックス社製)等の画像解析ソフトで算定できる。
現在、画像形成装置内で一般的な潤滑剤を塗布する場合、潤滑剤の被覆率は85%程度である場合が多く、その付着量は二分子層から四分子層程度である場合が多い。粒だちはプリントパターンによって変わるが、0.1%から2.5%程度である場合が多い。このため、耐久使用時に異常画像を来したり、電子写真感光体の交換を要したりしており、潤滑剤の皮膜を形成しているとは言えない状態である。
これに対し潤滑剤の皮膜が形成されると、電子写真感光体の表面層のフィルミングと部材汚染による寿命を克服し、電子写真感光体の寿命を寿命レスへ極める進歩性をもつ。また、本発明の画像形成装置で用いる潤滑剤を皮膜する塗布装置は既存の潤滑剤塗布手段を流用することが可能である。このため、本発明の画像形成装置は格別なコストアップを抑えることができる。
以上の画像形成装置について、クリーニング装置までの清掃で、潤滑剤を除去する量よりも少ない塗布量で電子写真感光体の表面層へ潤滑剤をコーティングすることにより、皮膜の欠陥が少なくとも10%未満で、かつ、潤滑剤の皮膜の質量膜厚が一分子層以上三分子層未満である潤滑剤の皮膜を形成するには、潤滑剤を電子写真感光体の表面層全面へ隈無く塗布できるかが鍵となる。
この塗布機能の強化は、電子写真感光体と塗布ブレードとの摺擦状態の制御が必要である。より簡単に言えば、これらのなじみを良くするプロセスが必要となる。
本発明者は、以上の画像形成用プロセスカートリッジおよび画像形成装置と同じ構成の画像形成装置を耐久使用し、塗布ブレードの電子写真感光体との摺擦部分を観察すると、電子写真感光体の表面層の形状によって塗布ブレードの荒れ方が異なる特徴を知り得た。
この観察ではブレード鏡面の真上から対物レンズが100倍の共焦点顕微鏡で□180μmの視野を観察している。また、塗布ブレードは電子写真感光体に対してトレーリング配置で使用している。塗布ブレードの荒れ具合は、塗布ブレードのカット面エッジ部から垂直方向に90μm幅で、全長180μm領域の面粗さ(Ra)と、凹凸の局部山頂の平均間隔(Sm)から計量した。
RaとSmの大きさについてマッピングした粗さ加減の分類分けを試みると、電子写真感光体の表面層の断面曲線について、低周波成分の凹凸が小さい方と、中周波成分の凹凸が適度に高い方が粗さは小さい特徴を得た。更に耐久使用後の塗布ブレードの粗さに応じて皮膜の粒だちが強くなる傾向を知り得た。塗布ブレードの粗さはレーザーテック社製共焦点顕微鏡OPTELICS H−1200による観察と付属するソフトウエアLMeyeを用いて面粗さRaを求めたところ、0.3μmから0.6μmに亘るサンプル差を得た。また、局部山頂の平均間隔(Sm)は2.5μmから5.5μmに亘るサンプル差を得た。耐久使用後の塗布ブレードの荒れ具合は電子写真感光体表面とのなじみを反映した記録である。
そこで、この荒れ具合を抑える感光体表面形状の造形が必要となる。上記の通り、発明者は金属酸化物フィラーが分散剤に応じて多様な凝集を形成し、これに応じて感光体の表面形状が変わる性状を見いだした。この性状を利用し、分散剤で感光体表面形状を意図するものに仕上げることができる。ただし、分散剤の多くは極端に露光部電位を上昇させてしまい、感光体表面の造形を実質的に不能としてきた。この課題を解消する技術として、本発明では有機酸が用いられる。
以上の画像形成装置が備える電子写真感光体の皮膜の形成に対して、潤滑剤は電子写真感光体の表面層から除去しやすく、かつコーティングしやすい材料が望ましい。潤滑剤による皮膜を永続させるために一サイクルでコーティングする物質量と清掃によって除去する物質量が等価であることが特に好ましい。また、潤滑剤の消費率が過剰でないことも必要となる。潤滑剤の消費率は画像形成プロセスで生じる電子写真感光体の走行距離に対する潤滑剤投入量(mg/km)として定義する。
以上の要件に対して、潤滑剤に用いられる材料として、ワックスないし高級脂肪酸金属塩が有利である。ワックスはハゼろう、ウルシろう、パームろう、カルナウバろう等の植物系ワックス、蜜ろう、鯨ろう、イボタろう、羊毛ろう等の動物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス等の鉱物系ワックスを利用できる。
特に、従来、一般に使用されてきた高級脂肪酸金属塩の多くは材料の性質面から有利である。この代表的な化合物であるステアリン酸亜鉛はラメラ構造をとり得る化合物である。ラメラ構造とは分子が規則的に折りたたまれて成す層が積み重なって配列する構造である。このラメラ構造は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れてはがしやすい。この作用は潤滑剤の循環を成立させるのに有利である。
ステアリン酸亜鉛がせん断力を受けて均一に電子写真感光体表面を覆っていくラメラ構造の特性は、少量の潤滑剤によって効果的に電子写真感光体表面を覆うことができる。この方法で潤滑剤を塗布する場合、その潤滑剤の塗布状態を制御するには様々な方法がある。例えば、固形潤滑剤と塗布ブラシとの接触圧力を高めたり、塗布ブラシの回転速度を制御したりする手段を考えることができる。また、画像形成情報に応じて、塗布ブラシの回転数を制御する試みもある。
潤滑剤はワックスや高級脂肪酸金属塩を単独で用いても良いが、これらをバインダーとして、電荷輸送物質や酸化防止剤など他の機能材料と混合して利用することができる。
このような潤滑剤を用い、画像形成装置内で皮膜形成と除去がしやすい材料を特定するため、潤滑剤の除去とコーティングの繰り返し工程に際して物質量の等価性を得やすい効果を享受することができる。このため、潤滑剤の塗布と除去を担うモジュールを簡単にすることができる。また、潤滑剤の皮膜を永きにわたって形成可能にすることができる。更に、前述の表面層の形状との組み合わせにより、一サイクル当たりの被覆能力を格別に高めることが実現でき、潤滑剤の消費率の減量化を享受することができる。
更に、本発明における潤滑剤としては、ラメラ構造をとり得る脂肪酸金属塩として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸のうち少なくとも一種以上の脂肪酸を含有し、かつ、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムのうち少なくとも一種以上の金属を含有する脂肪酸金属塩が好ましい。
特に、ステアリン酸亜鉛は、工業的規模で生産され、かつ多方面での使用実績があることから、コスト、品質、安定性、及び信頼性において最も好ましい材料である。また、従来、潤滑剤の効率的な塗布方法として蓄積してきた豊富な塗布技術を応用しやすい有利性をもつ。尚、一般に工業的に使われる高級脂肪酸金属塩は、その名称の化合物単体組成ではなく、多かれ少なかれ類似の他の脂肪酸金属塩、金属酸化物、及び遊離脂肪酸を含むものであり、本発明の脂肪酸金属塩もこの慣例に従う。
このような潤滑剤を用いることで、潤滑剤の皮膜の形成に対して高信頼性と低コスト化を享受することができる。また、潤滑剤の塗布技術として蓄積のある塗布技術を応用しやすい装置開発の利便性を得ることができる。
電子写真感光体の表面層の造形により、潤滑剤の塗布性を飛躍的に向上させる効果を享受することができる。この効果を永続するには表面層の強度を高めることが有利である。電子写真プロセスによる画像形成で電子写真感光体が摩耗する場合、表面形状が変化する。その様子は表面粗さの変化からみることができ、本発明者は実験的に電子写真感光体の摩耗の進行とともに表面粗さが増加する傾向を確認している。
はじめに、前述の新規な形状の造形にはウエットプロセスによる製膜が有利である。これはミクロンからミリスケールにわたる表面形状を制御するもので機械的な加工よりも技術面とコスト面で有利であるためである。ウエットプロセスによる製膜では塗料の粘度は低粘度の方が形状制御の範囲を広くすることができる。具体的には0.9mPa・sから10mPa・s程度が良い。塗料の粘度の下限は溶媒粘度に漸近する値から決定しており、上限は形状制御がしにくくなる理由から決めている。塗料の粘度は低く、かつ、製膜後の表面層が実用上十分な強度を得るには、塗料に三次元架橋構造をとる反応タイプの樹脂モノマーを主成分に選ぶと良い。
電子写真感光体の表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いることで耐摩耗性に優れる表面層を得ることができる。この理由は、耐久劣化により、樹脂膜を形成する化学結合の一部が破断しても別の部位の化学結合が残存していれば直接摩耗に至らないためと考える。優れた耐摩耗性は表面形状の安定化に直接寄与する。その結果、表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いると、潤滑剤の塗布性を安定化することができる。
三次元架橋構造をもつ樹脂の中でもアクリル樹脂はポリカーボネートと電荷輸送物質との固溶体と比較して誘電率が大きいため、静電特性面の凹凸形状の影響が小さいメリットを有する。更に、本発明の有機酸の併用に対して画像ボケの抑制に優れる効果もあり、特に有利である。
以上の通り、表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を用いることで、電子写真感光体の表面層の造形を容易にする効果があり、潤滑剤の塗布性を容易に改良できる。また、表面層の特別な表面形状の変化を抑え、潤滑剤の塗布性を安定化させる効果を享受することができる。
表面層の造形に対して、比較的低粘度の塗料を基に、金属酸化物フィラーを添加すると凹凸形状を付与することができる。金属酸化物フィラーの凝集状態を制御することで多様な凹凸形状が得られる。電子写真感光体の表面層に三次元架橋構造をもつ樹脂を利用し、更に金属酸化物フィラーを配合する技術は過去にも知られていたが、ねらいが機械的強度に主眼を置くものが多く、意外にも金属酸化物フィラーの分散剤を併用する技術は多く見ることがなかった。
更に、分散剤による金属酸化物フィラーの凝集状態を変えることで電子写真感光体の表面形状を制御しようとする概念は新規な概念である。。金属酸化物フィラーの中でも、配合する金属酸化物フィラーは金属酸化物フィラーで1次粒径がナノオーダーのものが好ましく、α−アルミナ、酸化スズ、チタニア、シリカ、セリアなどの金属酸化物の金属酸化物フィラーが有用である。
有機微粒子、無機微粒子などの金属酸化物フィラーの一部に、分散が困難で、表面粗さがミクロンオーダー以上しか得られないものやトゲ状の突起が多く、塗布ブレードやクリーニングブレードの刃こぼれを生じるものがあるが、金属酸化物フィラーはこのような不具合を抱えないものが多い。同じ理由から金属酸化物の含有量は表面層の1wt%以上20wt%以下が良い。金属酸化物含有量の下限と上限は表面層の形状制御が困難になる理由から規定している。また、金属酸化物の併用により、機械的な強度が向上する効果は本発明においても同様に享受することができる。
潤滑剤のコーティングが万一、不十分な事態に陥った場合、電子写真感光体の表面層に紙粉やトナー成分がフィルミングしたり、メダカ形状のフィルミングが生じたりするケースが想定される。このとき、表面層の濡れ性が変質して潤滑剤の所期の循環プロセスが破綻してしまいかねない。
これに対し、電子写真感光体の表面層へ略球形のα−アルミナ微粒子を添加すると、以上のフィルミングを大幅に低減できることが実験的に得られており、有効である。この理由は今のところ明らかにしていないが、α−アルミナの高い硬度が下地表面層への創傷予防に効果があり、この効果がフィルミングの機会を与えにくくしていることや、潤滑剤が不足してもα−アルミナの凹凸が電子写真感光体と塗布ブレードないしクリーニングブレードとの摺擦状態をある程度安定でいられる効果をもつためと考えている。略球形のα−アルミナの金属酸化物フィラー粒径は多くの場合、0.1μm以上2μm以下、より好ましくは0.3μm以上1.5μm以下の場合、製膜時にトゲの様な極端な凹凸形成が抑制できるため、有利な形状を形成しやすい。
以上の通り、平均1次粒子径が0.1μm以上2μm以下のα−アルミナを含有することで、電子写真感光体表面の変質を予防する効果を享受することができる。
また、金属酸化物の併用により、機械的な強度が向上する効果は本発明においても同様に享受することができる。
表面層へ金属酸化物フィラーを添加すると微細な凹凸形状を付与することができる。これにより、潤滑剤の循環効率を高める効果が得られやすい。
以上の感光体の表面形状と潤滑剤による欠陥が所定以下の皮膜を感光体表面に形成する画像形成用プロセスカートリッジ及び画像形成装置の実現には感光体の表面層の形状を任意に制御する必要がある。これは画像形成装置の特徴に応じて感光体表面形状を微調整する必要が生じるためである。
特定の金属酸化物フィラーに対して特徴的な分散剤で個々に分散(表面処理)すると、金属酸化物フィラーは分散剤に固有の表面処理が施される。このため、分散剤に固有の2次粒子の粒度分布が溶液とコーティング後は表面層中で形成される。金属酸化物の分散(表面処理)に際しては複数の分散剤を一度に混合するよりも分散剤1品種毎にミルベース(又は塗料)を調整し、複数のミルベース(又は塗料)を任意の割合で調合すると形状制御の加成性が鮮明になり造形の効率が良い。
金属酸化物フィラーの分散剤は金属酸化物と塗料溶媒、及びビヒクルとの親和性を制御する機能をもつ。前者の塗料溶媒との親和性は沈降を防止するために必須となる。これは金属酸化物フィラーが沈降したりしなかったりするような状態では表面形状の再現性が保証できないためである。この必須条件に加え、分散剤とビヒクルとの親和性は分散剤とビヒクルとの物理化学的な親和性や立体障害によって多様に調節可能である。ただし、先の理由から分散剤は金属酸化物フィラーを十分に表面処理する必要ある。
このような多種の分散剤を用いると感光体の静電特性が劣化し、極端な場合、感光体の光減衰特性が消失してしまう。従来、分散剤はこのような副作用のため、以上の考えに想到することは困難であった。これに対し、0.8gKOH/g以上1.0gKOH/g以下の有機酸有を併用すると良い。更に感光体の表面層に有機酸を添加する場合において、感光体の表面層に用いる分散剤は、水に溶解しない分散剤を用いると露光部電位の上昇を更に抑制することができる。水の溶解性は水と分散剤を加えたときに目視による相分離を観察することで判別できる。
有機酸の添加量は表面層の全固形分の重量に対して0.5%以上3%以下が適当である。下限は添加による効果の大きさから決定されるものであり、上限は他の成分の減量による機械的な強度から決定される。
以下、図面を参照しつつ本発明の電子写真感光体について詳細に説明する。図2は本発明の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に電荷発生層25と電荷輸送層26と表面層28が設けられている。
図3は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と電荷発生層25の間に下引き層24が設けられ、電荷発生層25の上に電荷輸送層26と表面層28が設けられている。
[導電性支持体]
導電性支持体21としては体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理した管等を使用することができる。
[下引き層]
本発明に用いられる電子写真感光体には導電性支持体と感光層(電荷発生層25と電荷輸送層26とが積層したもの)との間に下引き層24を設けることができる。下引き層は接着性の向上、モアレの防止、上層の塗工性の改良、導電性支持体からの電荷注入の防止等の目的で設けられる。
下引き層24は通常、樹脂を主成分とする。通常、下引き層24の上に感光層を塗布するため、下引き層24に用いる樹脂は有機溶剤に難溶である熱硬化性樹脂が好ましい。特に、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂は以上の目的を十分に満たすものが多く、特に好ましい材料である。樹脂はテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いて適度に希釈したものを塗料とすることができる。
また、下引き層24には伝導度の調節やモアレを防止するために、金属、又は金属酸化物等の微粒子を加えてもよく、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
微粒子はテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液と樹脂成分を混合した塗料とする。
下引き層24は以上の塗料を浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等で導電性支持体上に成膜する。必要な場合、加熱硬化することで形成される。
下引き層24の膜厚は2〜5μm程度が適当になるケースが多い。電子写真感光体の残留電位の蓄積が大きくなる場合、3μm未満にするとよい。
本発明における感光層は電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型感光層が好適である。ただし、本発明における感光層は電荷発生能と電荷輸送能とを兼ね備えた単層型感光層であってもよい。
[電荷発生層]
積層型電子写真感光体における各層のうち、電荷発生層25について説明する。電荷発生層25は積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能(電荷発生能)をもつ。この層は含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。電荷発生層25は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料としては結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいてはダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが好ましく用いられる。
一方、有機系材料としては公知の材料を用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる。このうち、金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型若しくは非対称型のアゾ顔料及びペリレン系顔料は電荷発生の量子効率が軒並み高く、本発明に用いる材料として好適である。これらの電荷発生物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
電荷発生層25に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。また、後述する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。このうちポリビニルブチラールが使用されることが多く、有用である。これらのバインダー樹脂は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
電荷発生層25を形成する方法としては大きく分けて真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法がある。
前者の方法には真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法等があり、上述した無機系材料や有機系材料からなる層が良好に形成できる。
また、キャスティング法によって電荷発生層25を設けるには上述した無機系又は有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布すればよい。このうちの溶媒として、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。塗布は浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等により行うことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層25の膜厚は通常、0.05〜2.0μm程度が適当である。
残留電位の低減や高感度化が必要となる場合、電荷発生層25は厚膜化するとこれらの特性が改良されることが多い。反面、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成等帯電性の劣化を来すことも多い。これらのバランスから電荷発生層25の膜厚は0.05〜2.0μmの範囲がより好ましい。
また、必要により、電荷発生層中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1〜20phr、好ましくは0.1〜10phr、レベリング剤の使用量は0.001〜0.1phr程度が適当である。
[電荷輸送層]
電荷輸送層26は電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた電子写真感光体の表面電荷を中和する機能(電荷輸送能)を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層26の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分ということができる。
電荷輸送物質に用いることのできる材料としては低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質が挙げられる。
電子輸送物質としては例えば非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
正孔輸送物質としては電子供与性物質が好ましく用いられる。その例としてはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾ−ル環を有する重合体、参考文献7(特開昭57−78402号公報等)に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、参考文献8(特開昭63−285552号公報等)に例示されるポリシリレン重合体、参考文献9(特開2001−330973号公報)の一般式(1)〜一般式(6)に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。特に参考文献9の例示化合物は静電特性面の性能が良好であり有用である。
高分子電荷輸送物質は表面層28を積層する際、低分子型の電荷輸送物質と比べて、表面層28へ電荷輸送層26を構成する成分のしみだしが少なく、表面層28の硬化不良を防止するのに適当な材料である。また、電荷輸送物質の高分子量化により耐熱性にも優れる性状から表面層28を成膜する際の硬化熱による劣化が少なく有利である。
電荷輸送層26のバインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。このうち、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートは電荷輸送成分のバインダー成分として用いる場合、電荷移動特性が良好な性能を示すものが多く、有用である。また、電荷輸送層26はこの上層に表面層28が積層されるため、電荷輸送層26は従来型の電荷輸送層26に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレン等、透明性が高いものの機械強度が多少低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、電荷輸送層26のバインダー成分として有効に利用することができる。
これらの高分子化合物は単独又は二種以上の混合物として、あるいはそれらの原料モノマー二種以上からなる共重合体として、さらに、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
電荷輸送層26の改質に際して電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合にはフルオレン等のかさ高い骨格をもつカルドポリマー型のポリエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、C型ポリカーボネートのようなビスフェノール型のポリカーボネートに対してフェノール成分の3,3’部位がアルキル置換されたポリカーボネート、ビスフェノールAのジェミナルメチル基が炭素数2以上の長鎖のアルキル基で置換されたポリカーボネート、ビフェニル又はビフェニルエーテル骨格をもつポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンの様な長鎖アルキル骨格を有するポリカーボネート(例えば、参考文献10(特開平7−292095号公報))やアクリル樹脂、ポリスチレン、水素化ブタジエンが有効である。
ここで電気的に不活性な高分子化合物と、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は電荷輸送層26の全固形分に対して50wt%以下とすることが好ましい。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、その使用量は40〜200phr、好ましくは70〜100phr程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100質量部に対して樹脂成分が0〜200質量部、好ましくは80〜150質量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
また電荷輸送層26に二種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差を0.10eV以下とすることにより、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。
このイオン化ポテンシャルの関係は電荷輸送層26に含有する電荷輸送物質と後述する硬化性電荷輸送物質との関係についても同様にこれらの差は0.10eVにするとよい。尚、本発明における電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル値は理研計器社製大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1により一般的な方法で計測して得られた数値である。
高感度化を満足させるには電荷輸送成分の配合量を70phr以上とすることが好ましい。また、電荷輸送物質としてα−フェニルスチルベン化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物の単量体、二量体及びこれらの構造を主鎖又は側鎖に有する高分子電荷輸送物質は電荷移動度の高い材料が多く有用である。
電荷輸送層塗料を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
電荷輸送層26は電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
電荷輸送層26の上層には表面層28が積層されているため、この構成における電荷輸送層26の膜厚は実使用上の摩耗を考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要である。電荷輸送層26の膜厚は実用上、必要とされる感度と帯電能を確保する都合、10〜40μm程度が適当であり、より好ましくは15〜30μm程度が適当である。
また、必要により、電荷輸送層26中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1〜20phr、好ましくは0.1〜10phr、レベリング剤の使用量は0.001〜0.1phr程度が適当である。
電荷輸送層26に金属酸化物フィラー、分散剤、および有機酸を含有する場合、前記したものを用いることができる。
[保護層]
保護層28は樹脂(モノマー)成分を含有する塗料がコーティングされた後、重縮合反応によって架橋構造の樹脂を製膜する。樹脂膜が架橋構造をもつため電子写真感光体各層のなかで最も耐摩耗性が強靱である。また、架橋の電荷輸送性の構造単位が含まれるため電荷輸送層と類似の電荷輸送性を示す。
(粗面化)
電子写真感光体表面は摺擦するブレードのエッジを荒れさせない表面形状を造形するとよい。このため、電子写真感光体表面の特別な粗面化が必要となる。この具体的な方策として、一種以上の分散剤によるミルベースを調合して任意の表面形状をつくる。この副作用として静電特性の劣化が生じることが多い。しかし、分散剤とは別に上記の有機酸を加えることでこの課題を解消することができる。分散剤はビックケミー社、楠本化成社、共栄社化学社、竹本油脂社、花王社、味の素ファインテクノ社、ハリマ化成社等の分散剤メーカーから上市される分散剤が用いられる。このうち、水に溶解しない分散剤が露光部電位の低減に対して有利に作用する。
(ラジカル重合性材料成分)
本発明では電子写真感光体表面にトリメチロールプロパントリアクリレートを用いると画像流れが解消されることが多く有利である。他に電子写真感光体表面の耐摩耗性の強化にも優れる。
3官能以上のバインダー成分はカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートないしジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有させるとよい。これにより架橋膜自体の耐摩耗性が向上したり、強靱性が増大したりすることが多い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーはトリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。これらは東京化成社等の試薬メーカー、日本化薬社KAYARD DPCAシリーズ、同DPHAシリーズ等を入手することができる。
また、硬化を促進させたり、安定化させたりするためにチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社イルガキュア184等の開始剤を保護層の塗料に含む全固形分に対して5〜10wt%程度加えてもよい。
架橋性の電荷輸送材料としてはアクリロイルオキシ基やスチレン基を有する連鎖重合系の化合物、水酸基やアルコキシシリル基、イソシアネート基を有する逐次重合系の化合物が挙げられ、電荷輸送構造を含み(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有する化合物が利用できる。また、電荷輸送構造を含まない(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有するモノマーやオリゴマーと併用した組成の構成にしても良い。少なくとも塗工液中にこのような化合物を含有させて保護層を形成し、熱、光、あるいは電子線、γ線等の放射線によるエネルギーを与えて架橋し硬化させることで保護層を形成できる。架橋性の電荷輸送材料としては例えば、以下の一般式1にある電荷輸送性化合物が挙げられる。
(一般式1中、d、e、fはそれぞれ0又は1の整数、g、hはそれぞれ0〜3の整数を表す。R13は水素原子又はメチル基を表し、R14、R15はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、又は下記式(2)〜(4)に示す2価基のいずれかを表す。)
具体的な化合物として以下に示す構造式No.1ないしNo.26のものが挙げられる。
保護層塗料を調製する際に使用する分散溶媒はモノマーを十分に溶解するものが好ましく、上述のエーテル類、芳香族類、ハロゲン類、エステル類の他、エトキシエタノールのようなセロソルブ類、1−メトキシ−2−プロパノールのようなプロピレングリコール類を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1−メトキシ−2−プロパノールはクロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
保護層塗料のコーティングとして、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。多くの場合、塗料はポットライフが長くないため、少量の塗料で必要な分量のコーティングができる手段が環境への配慮とコスト面で有利となる。このうちスプレー塗工法とリングコート法が好適である。更に本発明の特別な形状を付与するためにインクジェット方式を用いると良い。
保護層を製膜する際、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できる。また、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋型電荷輸送層表面に局部的なしわが発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生じたりする。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜はがれの原因となる。
必要により、保護層中に従来において周知慣用の酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤、また電荷輸送層で記載した高分子化合物を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して塗料総固形分中の0.1〜20wt%、好ましくは0.1〜10wt%、レベリング剤の使用量は0.1〜5wt%程度が適当である。
保護層の膜厚は2〜10μm程度が適当である。より好ましくは3μm〜5μmである。下限は塗膜欠陥のない均質な製膜を得るために有利な条件であり、上限は帯電安定性や光減衰感度等の静電特性と膜質の均質性から設定される。
(画像形成装置)
以下、図面に沿って画像形成装置の他の構成例を説明する。本発明に係る画像形成装置には後述する潤滑剤を電子写真感光体表面に入力する手段が取り付けられる。この点については後述する。
図4は本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図であり、後述するような変形例も本発明に含まれる。
図4において、電子写真感光体11は表面層を積層する電子写真感光体である。電子写真感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
帯電装置12は電子写真感光体11の表面を一様に帯電させる手段であり、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラをはじめとする公知の手段が用いられる。帯電装置12は消費電力の低減の観点から、電子写真感光体11に対し接触若しくは近接配置したものが良好に用いられる。なかでも、帯電装置12への汚染を防止するため、電子写真感光体11と帯電装置12表面の間に適度なすきまを有する電子写真感光体11近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写装置16には一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
露光装置13、また他の形態で示す除電装置(図5の1A)等に用いられる光源には蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
現像装置14により電子写真感光体11上に現像されたトナー15は印刷用紙やOHP用スライド等の印刷メディア18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、電子写真感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーはクリーニング装置17により、電子写真感光体11より除去される。クリーニング装置17はゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
電子写真感光体11に帯電装置12によって正(負)帯電を施し、露光装置13によって画像露光を行うと、電子写真感光体11表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを現像装置14によって負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像装置14には公知の方法が適用され、また、除電装置にも公知の方法が用いられる。印刷メディア18上に現像されたトナー画像は電子写真感光体11と転写装置16との対向位置から定着装置19に搬送され、この定着装置19により印刷メディア18に定着される。
また、潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の回転方向において、クリーニング装置17の下流であって、帯電装置12の上流に配置される。これらの配置関係については、以下に示す他の実施の形態においても同様である。
図5に、画像形成装置の他の例を示す。図5において、電子写真感光体11は表面層を積層する電子写真感光体11である。電子写真感光体11はベルト状の形状を示しているが、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。電子写真感光体11は駆動手段1Cにより駆動され、帯電装置12による帯電、露光装置13による像露光、現像(図示せず)、転写装置16による転写、クリーニング前露光装置1Bによるクリーニング前露光、クリーニング装置17によるクリーニング、除電装置1Aによる除電が繰り返し行われる。潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の移動方向に対して図示のようにクリーニング装置17と帯電装置12の間に配置される。
図5においては、電子写真感光体11(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行われる。
以上の電子写真プロセスは一例であって、例えば、図5において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、電子写真感光体に光照射を行うこともできる。
また、以上に示すような画像形成手段は複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジの形状は多く挙げられるが、一般的な例として、図6に示すものが挙げられる。電子写真感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
図7に画像形成装置の他の例を示す。この画像形成装置では電子写真感光体11の周囲に帯電装置12、露光装置13、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の色ごとの現像装置14Bk,14C,14M,14Y、中間転写体である中間転写ベルト1F、クリーニング装置17が順に配置されている。
なお、図7中に示す(Bk、C、M、Y)の添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて適宜省略する。電子写真感光体11は表面層を積層する電子写真感光体である。各色の現像装置14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像装置のみが駆動される。電子写真感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写装置1Dにより、中間転写ベルト1F上に転写される。
第1の転写装置1Dは電子写真感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを電子写真感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写装置1Eにより、印刷メディア18に一括転写された後、定着装置19により定着されて画像が形成される。第2の転写装置1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
転写ドラム方式の画像形成装置では転写ドラムに静電吸着させた印刷メディアに各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという印刷メディアの制限があるのに対し、図7に示すような中間転写方式の画像形成装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、印刷メディアの制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図7に示す装置に限らず前述の図4、図5、図6及び後述する図8、図9に記すような画像形成装置にも適用することができる。
潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の回転方向に対して図示のように、クリーニング装置17と帯電装置12の間に配置される。
図8に画像形成装置の他の例を示す。この画像形成装置はトナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、色ごとに画像形成部が配設されている。また、各色の電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkが設けられている。この画像形成装置に用いられる電子写真感光体11は表面層を積層する電子写真感光体である。各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkの周りには帯電装置12Y,12M,12C,12Bk、露光装置13Y,13M,13C,13Bk、現像装置14Y,14M,14C,14Bk、クリーニング装置17Y,17M,17C,17Bk等が配設されている。
また、直線上に配設された各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkに対向する転写位置には転写装置16Y,16M,16C,16Bkが配設されている。
図8に示すタンデム方式の画像形成装置は色ごとに電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkをもち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された印刷メディア18に順次転写するため、電子写真感光体を一つしかもたないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。転写材としての印刷メディア18上に現像されたトナー画像は電子写真感光体11Bkと転写装置16Bkとの対向位置から定着装置19に搬送され、この定着装置19により印刷メディア18に定着される。
また、例えば、図9に示されるような実施の形態における構成であってもよい。すなわち、図8に示した搬送転写ベルト1Gを用いた直接転写方式にかえて、図9に示すように中間転写ベルト1Fを用いる構成とすることができる。
図9に示す例では色ごとに電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkをもち、これらに形成された各色のトナー像を、ローラ1Cにより駆動張架されてなる中間転写ベルト1F上に1次転写手段1Dにより順次転写して積層し、フルカラー画像を形成する。
次いで、中間転写ベルト1Fはさらに駆動され、これに担持されてなるフルカラー画像は2次転写手段1Eと2次転写手段1Eに対向して配置されてなるローラ1Cとの対向位置まで搬送される。そして、2次転写手段1Eにより転写材18に2次転写され、転写材上に所望の画像が形成される。
(潤滑剤供給手段)
図10に示すように潤滑剤3Aを電子写真感光体11の表面に供給するための潤滑剤供給手段として、潤滑剤塗布装置3を上記の画像形成装置のすべてについて設けている。この潤滑剤塗布装置3は塗布部材としてのファーブラシ3B、潤滑剤3A、潤滑剤をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ3D、及び潤滑剤3Aを規制あるいはならして塗布するための塗布ブレード3Cを有している。
潤滑剤3Aはバー状に成型された潤滑剤である。ファーブラシ3Bは電子写真感光体表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって潤滑剤3Aをいったんブラシにくみあげ、電子写真感光体11の表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して電子写真感光体11の表面に塗布する。
また、経時で潤滑剤3Aがファーブラシ3Bにかき削られて減少してもファーブラシ3Bに接触しなくならないように、加圧バネ3Dによって所定の圧力で潤滑剤3Aがファーブラシ3B側に押圧されている。これによって、微量の潤滑剤3Aでも常に均一にファーブラシ3Bにくみあげられる。
また、電子写真感光体11の表面に潤滑剤3Aをコーティングする潤滑剤供給装置を設けてもよい。この手段はクリーニングブレードのような板をトレーリング方式又はカウンター方式で電子写真感光体11に押し合てる手段がある。
潤滑剤3Aは例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−オキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。特にラメラ構造をとる材料は循環効率が高く、更にステアリン酸亜鉛がコスト面で有利である。
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
肉厚1mm、長さ352mm、外径φ40mmのアルミニウムドラムに、下記組成の下引き層用塗料、電荷発生層用塗料、電荷輸送層用塗料を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22.5μmの電荷輸送層を形成した。
その上に保護層用塗料をスプレーで塗工した。スプレー塗工はスプレーガンにオリンポス社 PC−WIDE308を使用し、2.5kgf/cm2の霧化圧力でスプレーガンのノズル先端と電子写真感光体間の距離が50mmとなる位置で行った。吐出量は3cc〜4ccだった。保護層を塗工後、このドラムとUV硬化ランプから120mm距離を置いて、ドラムを回転させながらUV硬化を施した。この位置でのUV硬化ランプ照度は550mW/cm2(紫外線積算光量計UIT−150、ウシオ社製による測定値)であった。また、ドラムの回転速度は25rpmとした。UV硬化を行う際、アルミニウムドラム内に30℃の水を循環させて連続4分間、UV硬化した。その後、130℃にて30分間加熱乾燥した。
結果、3.5μmの保護層が形成された実施例1の電子写真感光体を得た。また、保護層用塗料は金属酸化物、分散剤、及び有機溶剤からなる固形分濃度が10重量%からなるミルベースに固形分濃度が16質量部のビヒクルを注いで調製した。最終的に得られる表面層塗料は下記の表面層用塗料の項に記す組成である。
ミルベースは50ml用UMサンプルびんに分散メディアとしてφ2mmのYTZボール(ニッカトー社製)100gと、固形分濃度を10質量部にする金属酸化物と1種の分散剤及びテトラヒドロフランを仕込み、イカ社バイブレーションシェーカーで2時間分散を行った。分散強度は1600rpmにした。分散剤3種に対して個々に3つのミルベースを用意した。保護層用塗料を調製するとき、3種のミルベースを混合し、直ちに16質量部のビヒクルで希釈して固形分濃度が15重量パーセントの保護層用塗料を調製した。次いで、有機酸であるマレイン酸を加えた。
〔下引き層用塗料〕
・アルキッド樹脂溶液 12質量部
(ベッコライト M6401−50、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 8.0質量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40質量部
・メチルエチルケトン 200質量部
〔電荷発生層用塗料〕
・下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5.0質量部
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.0質量部
・シクロヘキサノン 200質量部
・メチルエチルケトン 80質量部
〔電荷輸送層用塗料〕
・Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、帝人化成社製) 10質量部
・下記構造の電荷輸送物質 7.0質量部
・テトラヒドロフラン 100質量部
・1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1質量部
〔保護層用塗料〕
・下記構造の架橋型電荷輸送物質 43質量部
・トリメチロールプロパントリアクリレート 21質量部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬社製)
・カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 21質量部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製)
・アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと
プロポキシ変性−2−ネオペンチルグリコールジアクリレート混合物 0.1質量部
(BYK−UV3570、ビックケミー社製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4質量部
(イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・α−アルミナ
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 10質量部
・リン酸系湿潤分散剤(スーパーダインV201、竹本油脂社) 0.33質量部
・リン酸系湿潤分散剤(HIPLAAD ED151、楠本化成社) 0.33質量部
・アクリルコポリマー分散剤(フローレンWK−13E、共栄社化学社) 0.33質量部
・マレイン酸(酸価;1.0gKOH/g、東京化成工業社) 0.5質量部
・テトラヒドロフラン 566質量部
ここで用いる分散剤のうち、WK−13Eのみ水に溶解した。残りの2種の分散剤は水に溶解しない。
(比較例1)
実施例1の電子写真感光体に対して、保護層用塗料のマレイン酸を除いた他は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。保護層の膜厚は3.5μmだった。
(比較例2)
実施例1の電子写真感光体に対して、保護層用塗料のマレイン酸を1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(酸価;0.7gKOH/g、 東京化成工業社)に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。保護層の膜厚は3.5μmだった。
(比較例3)
実施例1の電子写真感光体に対して、保護層用塗料のマレイン酸を硫酸(特級、関東化学社)に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。保護層の膜厚は3.5μmだった。
(実施例2)
実施例1の電子写真感光体に対して、保護層用塗料のマレイン酸をクエン酸(酸価;0.8gKOH/g、 東京化成工業社)に変えた以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。保護層の膜厚は3.5μmだった。
(実施例3)
実施例2の保護層用塗料におけるクエン酸の配合量を0.5質量部から1.0質量部に変えた以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を作製した。保護層膜厚は3.5μmだった。
(実施例4)
実施例1の保護層用塗料におけるマレイン酸の配合量を0.5質量部から1.0質量部に変え、吐出量を2.0ccとすることで膜厚が2μmの保護層を製膜した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例5)
実施例4の保護層用塗料の吐出量を3.5ccとすることで膜厚が3.5μmの保護層を製膜した以外は実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例6)
実施例4の保護層用塗料の吐出量を5ccとすることで膜厚が5μmの保護層を製膜した以外は実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例7)
実施例3の保護層用塗料の吐出量を2ccとすることで膜厚が2μmの保護層を製膜した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例8)
実施例3の保護層用塗料の吐出量を5ccとすることで膜厚が5μmの保護層を製膜した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。
(実施例9〜実施例13)
実施例3の電子写真感光体の作製において、保護層用塗料の分散剤を表1の通りに変えた以外は実施例3と同様にして実施例9〜実施例13の電子写真感光体を作製した。
尚、実施例9〜実施例13の表面層用塗料は1種か2種の分散剤を用いる。このとき、金属酸化物のミルベースは分散剤1品種毎に実施例3と同様にして用意した。表面層塗料を調製するときに最大2種のミルベースを混合し、直ちに16質量部のビヒクルで希釈して15重量%の表面層用塗料を調製した。分散剤は楠本化成社製のHIPLAAD ED−151(リン酸系湿潤分散剤)、共栄社化学社製フローレンWK−13E、及び竹本油脂社製のスーパーダインV201(リン酸系湿潤分散剤)を用いた。保護層膜厚は全て3.5μmとなるように製膜した。
(実施例14)
実施例3の電子写真感光体の作製において、保護層塗料の調製において、有機酸であるクエン酸1.0質量部を添加する手順を、塗料の調製手順における最後に添加せず、フィラーと共に分散した以外は実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。
以上のようにして作製した実施例1〜実施例14および比較例1〜比較例3の感光体ドラムを実装用にした後、画像形成装置(imagio MP C4500、リコー社製)のシアン現像ステーションに搭載し、画素密度が600dpi×600dpiで8×8のマトリクス中に4ドット×4ドットを描いたハーフトーンパターンと白紙パターンを交互に連続5枚ずつ印刷する条件で通算10万枚、コピー用紙(My Paper A4、NBSリコー社品)にプリントアウトした。トナーと現像剤はimagio MP C4500純正品のシアン用トナーを使用した。トナーは重合トナーである。画像形成装置は図1と同じレイアウトである。
試験では下記の潤滑剤及び潤滑剤塗布装置を用いた。潤滑剤の消費速度は感光体ドラムの走行距離に対して120mg/kmの割合で固形潤滑剤が重量減少させる割合にした。
感光体ユニットは純正品を使用した。帯電ローラの印加電圧はAC成分としてピーク間電圧2.1kV、周波数1.7kHzを選択した。また、DC成分は試験開始時の感光体の帯電電位が−700Vとなるようなバイアスを設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また、現像バイアスは−580Vとした。なお、この装置において、除電手段は設けていない。
試験終了後、カラーテストチャートをPPC用紙TYPE−6200A3に複写印刷した。試験環境は25℃/55%RHであった。また、同じ画像形成装置を用いて、感光体ドラムの線速が205mm/s、書き込み光量が4.0μJ/cm2、帯電電位が−800Vとなる条件で試験開始時に全ベタパターンを書き込ませたときの露光部電位を測定した。結果を表2に記す。
尚、試験で用いる潤滑剤は次の通り作製した。ステアリン酸亜鉛(日本油脂製、ジンクステアレートGF200)をフタの付いたガラス製容器に入れ、160℃から250℃に温度制御したホットスターラーにより、かくはんしつつ溶融した。あらかじめ150℃に加熱した内寸法12mm×8mm×350mmのアルミニウム製の金型を満たすように、かくはん溶融した該潤滑剤を流し込み、木製の台の上で40℃まで放冷後、固形物を型から外し、反り防止のため重しを乗せ室温まで冷却した。冷却後、長手方向の両端を切断し、底面を切削して6mm×6mm×322mmの角柱形状の潤滑剤バーを作製した。潤滑剤バーの底面に両面テープをはり付け金属製支持体に固定した。
また、潤滑剤塗布装置は潤滑剤を電子写真感光体に供給する手段と電子写真感光体に供給された潤滑剤をコーティングする手段を併せて画像形成装置に取り付けた。潤滑剤の供給手段は支持体に保持されるように角柱状に成形した固形状のステアリン酸亜鉛を所定の消費量となるようなバネ定数の加圧スプリングで塗布ブラシに加圧し、塗布ブラシが回転することよりステアリン酸亜鉛を削って電子写真感光体上に削り粉を設ける装置を取り付けた。加圧バネはバネ定数と潤滑剤の消費量との関係から適当なものを選んだ。
ここでは潤滑剤の消費率が125mg/kmになる条件として、ばね定数が0.039N/mmの引張ばねを使用した。支持体の両サイドに一点支持の可動式のフィンを取付け、これに引張ばねをまわすことで、ばねの引っ張り応力によって塗布ブラシと潤滑剤との接触圧を調整した。塗布ブラシは金属シャフトにファーブラシをはり合わせた純正品をそのまま用いた。この塗布ブラシは電子写真感光体面移動方向に対してカウンター方向に回転するようにした。塗布ブレードは鋼板のブレードホルダーに前記電子写真感光体に:19°で当接する方向に支持されたポリウレタンゴム(ShoreA硬さ;84、反発弾性;52%、厚さ;1.3mm)を用いた。
画像評価はテストチャートS−5Y(リコー製)を複写プリントし、グレースケールの階調性を評価した。
5; 画像濃度が10%から80%のグレースケールが全て明瞭に階調されている。
4; 画像濃度が10%から80%のグレースケールが十分識別されている。
3; 画像濃度が10%から80%のグレースケールの階調に問題がない。
2; 低画像濃度の階調がやや不明瞭であるが実使用上許容できる。
1; 画像濃度が10%のパッチ画像が十分に現像できていない。
金属酸化物フィラーと分散剤が含有される表面層を積層する実施例1の電子写真感光体は同じ比較例1の感光体に対して酸価が1.0gKOH/gのマレイン酸を含む特徴をもつ。比較例1と比べて、露光部電位が格段に向上されることが理解される。
比較例2は比較例1と比較して表面層に酸価が0.7gKOH/gの1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が含有される特徴がある。しかしながら露光部電位の上昇は抑制されていない。また、表面層に硫酸を含む比較例3も露光部電位の低減効果は見られない。
実施例1と比較例2、及び実施例2について、表面層に含有する有機酸の酸価と露光部電位の関係をみると、酸価に応じて露光部電位が低下する特徴が見られる。この傾向から表面層に添加する有機酸の酸価は0.8gKOH/gから1.0gKOH/gが有利と判断される。
また、実施例3の表面層は実施例2と同じくクエン酸を含有するが実施例3はクエン酸の含有量が多い。クエン酸の含有量が多い実施例3の露光部電位の低減効果が実施例2よりも強い。クエン酸は露光部電位の低減に対して極めて有利に作用することが理解される。
実施例4〜6は電子写真感光体の表面層にマレイン酸が等しい割合で含まれるもので、それぞれ表面層の膜厚が異なる。膜厚に応じて露光部電位が上昇する傾向が見られる。実施例2と実施例7、及び実施例8は電子写真感光体の表面層にクエン酸が等しい割合で含まれるもので、それぞれ表面層の膜厚が異なる。実施例4〜実施例6の組合せと同様、膜厚に応じて露光部電位が上昇する傾向が見られる。ただし、クエン酸を含む実施例2と実施例7及び実施例8の組み合わせの方が露光部電位が低い。これから露光部電位の低減にクエン酸が極めて有利であると判断される。
また、実施例2、及び実施例9〜実施例13の組合せは電子写真感光体の表面層にクエン酸が等しい割合で含まれるものであるが、これらの表面層に用いられる3種の分散剤の配合比率が異なる。水に溶解しない分散剤の比率が高いほど、露光部電位が低い結果が得られている。これから、有機酸を併用する条件下では分散剤は水に溶解しないものを用いると露光部電位の低減に有利であると理解される。
また、実施例14の電子写真感光体の表面層は実施例3と等しい割合でクエン酸が含まれるが、塗料の調製でクエン酸を添加する手順が異なる。これらの感光体はクエン酸の添加により露光部電位の低減効果が等しく発現されている。複写画像の画質に差が見られるのは感光体表面の形状差が生じたことが原因と考えられる。ここでは塗料の調製に際して後にクエン酸を最後に添加した方が有利な結果が得られている。