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JP5978064B2 - 溶着金属、帯状電極、焼結型フラックス及びサブマージアーク溶接方法 - Google Patents
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JP5978064B2 - 溶着金属、帯状電極、焼結型フラックス及びサブマージアーク溶接方法 - Google Patents

溶着金属、帯状電極、焼結型フラックス及びサブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶着金属、この溶着金属を形成する際に使用される帯状電極及び焼結型フラックス、並びにサブマージアーク溶接方法に関する。より詳しくは、硬化肉盛溶接において母材と表面層(肉盛層)との間に設けられるバッファー層(下盛層)に好適な溶着金属、帯状電極、焼結型フラックス及びサブマージアーク溶接方法に関する。
低合金鋼などの硬化性が高い母材に肉盛溶接する場合や、極めて硬い材料を使用して肉盛溶接する場合は、溶接時に母材及び/又は溶着金属中に生じる引張応力に起因して、母材や溶着金属に割れが発生しやすい。そこで、一般に、硬化肉盛溶接を行う際は、前述した割れの抑制・低減のため、被覆アーク溶接などによる下盛溶接が行われている。その際、溶接材料としては、主に、軟鋼やオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。
一方、従来、サブマージアーク肉盛溶接用のフラックスも開発されている(特許文献1〜3参照)。例えば、特許文献1には、広範囲な溶接条件に適応し、優れた溶接作業性を有すると共に良好な機械的性能を得るため、MgO/Al及び塩基度を調整したフラックスが開示されている。また、特許文献2に記載の技術では、焼結型フラックスからCr、Mo、Ni、Vなどの合金成分を添加することで、肉盛層の高靭化及び高強度化を図っている。
一方、特許文献3には、オーステナイト系ステンレス鋼帯状電極と組み合わせた際に、炭素量が低い溶着金属が得られるフラックスが提案されている。この特許文献3に記載のフラックスでは、溶接金属中の炭素量を低減することで、スラグ剥離性及び溶接ビード形状の向上を図っている。
特開昭58−128295号公報 特開昭58−9795号公報 特開2001−300765号公報
しかしながら、前述した従来の下盛溶接には、施工性の観点から、被覆アーク溶接は溶着速度が小さいという問題があり、経済性の観点から、オーステナイト系ステンレス鋼用溶接材料はコストが増加するという問題がある。施工効率の改善に関しては、帯状電極を使用したサブマージアーク溶接が有効であるが、前述した特許文献1〜3に記載の技術を下盛溶接に適用しても、施工効率及び施工コストの両方を改善することは難しい。
例えば、特許文献1には、溶接作業性については言及されているが、溶着効率、溶着金属の組成や機械的性能については記載されていない。このため、特許文献1に記載のフラックスを下盛溶接に適用した場合、どのような溶着金属が得られるのか、また、得られた溶着金属が硬化肉盛溶接におけるバッファー層として優れた性能を示すかは不明である。
また、特許文献2に記載のフラックスは、Cr、Mo、Vなどの高強度化に寄与する合金元素を含有しているため、溶着金属に硬化組織が形成されやすく、拡散性水素の存在と応力集中の重畳により、遅れ割れ性の発生が懸念される。この遅れ割れを抑制又は低減するためには、溶接時の厳密な施工管理だけでなく、溶接作業後の脱水素処理が必要となるため、施工効率の低下を招く。
更に、特許文献2に記載のフラックスを使用すると、溶着金属にVが添加されるため、溶接後熱処理を実施すると、熱処理段階で微細なV炭化物が析出して組織が著しく硬化し、応力集中部においてSR割れ(再熱割れ)が発生する虞もある。加えて、特許文献2に記載のフラックスは、各種合金成分を含有しているため、コストが増加する。
一方、特許文献3に記載のフラックスは、オーステナイト系ステンレス鋼からなる帯状電極と組み合わせて使用し、化学反応容器や原子炉反応容器の内面などに耐食性を有する肉盛金属(表面層)を形成するためのものであり、バッファー層(下盛層)に適用した場合の有用性は検討されておらず、不明である。
そこで、本発明は、施工効率及びコストに優れ、下盛溶接に適用したとしたときに肉盛層における割れの発生を抑制することができる軟鋼系の溶着金属、帯状電極、焼結型フラックス及びサブマージアーク溶接方法を提供することを主目的とする。
本発明者は、表面硬化肉盛層の形成に際して、硬化性の高い母材を用いる場合や高硬度な肉盛金属を形成する場合に発生する母材又は肉盛金属層の割れを軽減するために施工される下盛溶接について、施工効率及び施工コストを改善するため、「(1)高効率な溶接方法の導入」及び「(2)軟鋼系溶接金属の導入」という着想を得た。そして、(1)の実現には、帯状電極サブマージアーク溶接法の利用が有効であり、(2)の実現には、軟鋼系溶接材料の利用が有効であるという結論を得た。
更に、本発明者は、溶着金属について検討を行い、上盛層溶接時の熱応力(上盛層溶着金属の熱収縮に伴う引張応力)に耐えうる十分な塑性変形能を有する組成を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明に係る溶着金属は、帯状電極を用いたサブマージアーク溶接によって形成される溶着金属であって、Si:0.30〜0.60質量%、Mn:1.00〜1.50質量%を含有すると共に、C:0.20質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、溶接したままの状態で常温引張試験により測定した破断伸びが30%以上である。
この溶着金属は、O:0.05〜0.10質量%を含有していてもよい。
また、前記不可避的不純物のうち、Biを0.005質量%以下に規制してもよい。
更に、前記不可避的不純物のうち、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量を0.5質量%以下に規制してもよい。
本発明に係る帯状電極は、サブマージアーク溶接に用いられる帯状電極であって、Mn:0.20〜0.50質量%を含有すると共に、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる。
本発明に係る焼結型フラックスは、帯状電極を用いたサブマージアーク溶接に使用される焼結型フラックスであって、SiO:15〜35質量%、ZrO:10〜30質量%、Al:10〜30質量%、Mn(金属Mn換算):5〜15質量%、金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%、弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%を含有すると共に、Bi:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制した組成を有する。
本発明に係る及びサブマージアーク溶接方法は、Mn:0.20〜0.50質量%を含有すると共に、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる帯状電極と、SiO:15〜35質量%、ZrO:10〜30質量%、Al:10〜30質量%、Mn(金属Mn換算):5〜15質量%、金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%、弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%を含有すると共に、Bi:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制した組成を有する焼結型フラックスとを使用し、Si:0.30〜0.60質量%、Mn:1.00〜1.50質量%を含有すると共に、C:0.20質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、溶接したままの状態で常温引張試験により測定した破断伸びが30%以上である溶着金属を得る。
本発明によれば、塑性変形性能に優れた溶着金属が得られるため、下盛溶接に適用したとしたときに母材及び肉盛層における割れの発生を抑制することができ、更に帯状電極溶接であるため高効率での施工が可能となる。
本発明の実施例における肉盛溶接の積層方法を模式的に示す図である。 本発明の実施例における試験片採取位置を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る溶着金属は、帯状電極を用いたサブマージアーク溶接により形成され、Si:0.30〜0.60質量%、Mn:1.00〜1.50質量%を含有すると共に、C:0.20質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する。また、この溶着金属は、溶接したままの状態で常温引張試験により測定した破断伸びが30%以上である。
[Si:0.30〜0.60質量%]
Siは、溶着金属中のOと反応する脱酸作用があり、溶着金属の洗浄度を向上させる効果がある。また、Siには、溶接ビード止端のなじみ性を改善する効果もある。ただし、溶着金属中のSi量が0.30質量%未満の場合、これらの効果が不十分となる。一方、Siの過剰な添加は溶着金属の破断伸びを低下させるため、溶着金属中のSi量は0.60質量%以下に抑える必要がある。よって、本実施形態の溶着金属では、Si含有量を0.30〜0.60質量%とする。
[Mn:1.00〜1.50質量%]
MnもSiと同様に、溶着金属の脱酸に不可欠な元素であるが、溶着金属中のMn量が1.00質量%未満の場合、十分な脱酸効果が得られない。一方、Mnも過剰に添加すると、溶着金属の破断伸びを低下させるため、溶着金属中のMn量は1.50質量%以下に抑える。従って、本実施形態の溶着金属では、Mn含有量を1.00〜1.50質量%とする。
[C:0.20質量%以下]
Cの過剰な添加は、溶着金属の破断伸びを低下させ、遅れ割れや高温割れの感受性を著しく高めるため、本実施形態の溶着金属では規制成分とする。具体的には、溶着金属中のC量が0.20質量%を超えると、肉盛金属層に遅れ割れや高温割れなどが発生しやすくなるため、本実施形態の溶着金属では、C含有量を0.20質量%以下に規制する。また、溶着金属におけるC含有量は0.15質量%以下とすることが好ましく、これにより耐割れ性を向上させることができる。
[O:0.05〜0.10質量%]
本実施形態の溶着金属では、前述した各成分に加えて、更にOを含有していてもよい。Oは、アーク熱によって溶融した電極及びフラックスにより構成される溶融金属の粘度を下げ、溶接ビード止端及び母材や前パスのラップ(重ね)部とのなじみ性を改善する効果がある。ただし、Oを過剰に添加すると、溶着金属の靭性を著しく劣化させることとなる。
具体的には、溶着金属中のO量が0.05質量%未満の場合、前述した添加効果が得られないことがあり、また、溶着金属中のO量が0.10質量%を超えると靭性が大幅に低下することがある。よって、O含有量は、0.05〜0.10質量%であることが好ましい。
[残部:Fe及び不可避的不純物]
本実施形態の溶着金属における残部は、Fe及び不可避的不純物である。なお、ここでいう不可避的不純物には、P、S、Cu、B、Sn、Sb、As及びPbなどが挙げられる。また、Bi、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlなどは、意図的に含有させると本発明の目的を達成することが困難になる。このため、本実施形態の溶着金属では、これらの元素を積極的に添加することはせず、不可避的不純物として含有する場合も、その含有量を以下に示す範囲に規制する。
[Bi:0.005質量%以下]
Biは、溶着金属の高温割れ感受性を高める元素である。また、上盛層の溶接後にPWHT(Post Weld Heat Treatment:溶接後熱処理)が実施される場合、又は上盛層の溶接時に高温での予熱・パス間温度管理が必要とされる場合、溶着金属にBiが多量に含有されていると、下盛層溶着金属のSR割れ(再熱割れ)感受性が高まる。このため、耐割れ性向上の観点から、溶着金属中のBi量は0.005質量%以下であることが好ましく、0.003質量%以下であることがより好ましい。
[[A]:0.5質量%以下]
Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlなどの合金元素は、溶着金属の強度を高め、破断伸びを低下させる。そこで、下盛層の耐SR割れ性を向上するには、これらの合金元素を低減することが効果的である。特に、Ti、Nb及びVは、上盛層溶接後のPWHTや高温の予熱・パス間管理溶接時に微細な炭化物を形成し、溶着金属の強度を著しく高めるため、溶着金属にこれらの元素が多量に含まれていると、SR割れ感受性が高くなる。
具体的には、溶着金属におけるCr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量([A])は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。このように、溶着金属に含まれるこれらの合金成分を低減することにより、耐SR割れ性を更に向上させることができる。
[破断伸び:30%以上]
溶着金属の破断伸びは、塑性変形能の指標である。溶着金属の破断伸びは、溶接したままの状態で、JIS Z3111に規定されるタイプIIA2号試験片を用いた常温引張試験により測定することができる。そして、溶着金属の破断伸びが30%未満の場合は、上盛溶接時の熱応力を軽減できず、肉盛金属層に割れが発生することがある。このため、本実施形態の溶接金属においては、破断伸びは30%以上とする。
このような溶着金属を下盛層とすることで、上盛層溶接時の熱収縮に起因する引張応力を、下盛層(溶着金属)の塑性変形によって軽減し、肉盛金属層全体の割れ感受性を軽減することができる。なお、溶着金属の破断伸びは35%以上であることが好ましく、これにより耐割れ性を更に向上させることができる。
[溶接方法]
次に、本実施形態の溶着金属を得るための溶接方法について説明する。本実施形態の溶着金属は、帯状電極を用いたサブマージアーク溶接により形成される。その際使用する帯状電極の成分組成は、帯状電極の加工性及び溶着金属中への合金元素の歩留まりの観点から、軟鋼系であれば特に限定されるものではないが、例えば、Mn:0.20〜0.50質量%を含有すると共に、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するものを使用することができる。
また、溶接時に使用するフラックスは、焼結型及び溶融型のいずれでもよいが、鉄粉系原料を添加可能な焼結型フラックスを用いると、溶着効率の更なる改善が見込まれる。具体的には、SiO:15〜35質量%、ZrO:10〜30質量%、Al:10〜30質量%、Mn(金属Mn換算):5〜15質量%、金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%、弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%を含有すると共に、Bi:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制した組成を有する焼結型フラックスなどを使用することができる。
(帯状電極)
以下、前述した帯状電極の各成分の数値限定理由について説明する。
<Mn:0.20〜0.50質量%>
帯状電極に含有されるMnは、溶着金属中のMn量を高め、脱酸効果によって溶着金属の洗浄度を高める効果がある。しかしながら、その含有量が0.20質量%未満の場合、添加効果が十分に得られず、0.50質量%を超えてMnを含有していると、帯状電極の強度が高まり、圧延性が低下する。よって、帯状電極中のMn量は0.2〜0.50質量%であることが好ましい。
<C:0.10質量%以下>
Cを過剰に添加すると、帯状電極の強度が高まり、圧延性が低下する。よって、帯状電極中のC量は、0.1質量%以下に規制されていることが好ましく、これにより加工性を良好にすることができる。
<Si:0.10質量%以下>
SiもCと同様に、帯状電極の強度を高め、圧延性を低下させる元素である。このため、加工性向上の観点から、帯状電極中のSi量は、0.1質量%以下に規制されていることが好ましい。
<[A]:1.0質量%以下>
Cr、Mo、Ti、Nb及びVなどの合金元素も、帯状電極の強度を高める作用があり、過剰に添加されると、圧延性が低下する。また、これら元素に加えて、Ni及びAlが過剰に含有されると、溶着金属中の[A]値が大きくなり、溶着金属のSR割れ感受性が高くなる。よって、帯状電極の加工性向上及び溶着金属の耐割れ性向上の観点から、帯状電極は、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量([A])が、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
(焼結型フラックス)
以下、前述した焼結型フラックスの各成分の数値限定理由について説明する。
<SiO:15〜35質量%>
SiOは、酸性物質であり、溶接中に、フラックス中に含まれる他の塩基性物質と反応してガラス状のスラグを形成し、アーク雰囲気中の溶融金属を保護し、溶着金属や溶接ビードの酸化及び窒化を防止すると共に、ビード形状を改善する効果がある。ただし、SiO含有量が15質量%未満の焼結型フラックスでは、前述した効果が得られないことがある。
一方、SiOは、溶接中に還元反応を起こすため、過剰な添加は、溶着金属中のSi量を高め、破断伸びを低下させることとなる。具体的には、35質量%を超えてSiOを添加すると、溶着金属の破断伸びが低下することがある。よって、焼結型フラックスのSiO含有量は、15〜35質量%であることが好ましい。
<ZrO:10〜30質量%>
ZrOは、スラグ形成剤としてフラックスに添加されるが、その含有量が10質量%未満の焼結型フラックスでは、十分な効果が得られないことがある。一方、ZrOを過剰に添加すると、溶融スラグの粘度が上昇して、溶融スラグが先行しやすくなるため、溶接ビードのなじみ性が低下し、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が誘発される。具体的には、ZrOが30質量%を超える焼結型フラックスでは、溶接欠陥が発生しやすくなる。よって、焼結型フラックスのZrO含有量は、10〜30質量%であることが好ましい。
<Al:10〜30質量%>
Alは、塩基性物質であり、フラックス中に含まれる他の酸性物質と溶接中に反応してガラス状のスラグを形成することにより、アーク雰囲気中の溶融金属を保護し、溶着金属や溶接ビードの酸化を防止すると共に、ビード形状を改善する効果がある。ただし、Al含有量が10質量%未満の焼結型フラックスでは、前述した効果が得られないことがある。
一方、Alは、溶接中に還元反応を起こすため、過剰な添加は、溶着金属中のAl量や[A]値を高めることとなる。具体的には、30質量%を超えてAlを添加すると、溶着金属中の[A]値が大きくなり、溶着金属のSR割れ感受性が高くなることがある。よって、焼結型フラックスのAl含有量は、10〜30質量%であることが好ましい。
<Mn(金属Mn換算):5〜15質量%>
Mnは、合金元素添加剤又はスラグ形成剤として、例えば金属Mn、Fe−Mn合金などの形態で添加される。ただし、フラックス中のMn量が5質量%未満の場合、その添加効果が得られないことがある。一方、例えば15質量%を超えて、Mnを過剰に添加すると、溶着金属中のMn量が高くなり、破断伸びが低下する。よって、焼結型フラックスのMn含有量は、5〜15質量%であることが好ましい。なお、MnがFe−Mn合金やFe−Si−Mn合金などの形態で添加された場合には、ここでいうMn量は、金属Mnに換算した量を指す。
<金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%>
金属炭酸塩は、アーク熱によって金属酸化物とCOに分解する。金属酸化物はスラグを形成することで溶接ビードを保護し、COは、アーク雰囲気中の水素分圧を下げ、溶着金属中の拡散性水素量を低減する効果がある。炭酸塩は、特に限定されるものではないが、例えばMgCO、CaCO、BaCO、NaCOなどの形態で添加することができる。
ただし、金属炭酸塩の総含有量が、CO換算で5質量%未満の場合、前述した効果が得られないことがある。また、金属炭酸塩を過剰に添加すると、溶融スラグの粘度が上昇して、溶融スラグが先行しやすくなるため、溶接ビード止端のなじみ性が低下し、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が誘発される。具体的には、金属炭酸塩の総含有量が、CO換算で10質量%を超える焼結型フラックスでは、溶接欠陥が発生しやくなる。よって、焼結型フラックスの金属炭酸塩の総含有量は、CO換算で5〜10質量%であることが好ましい。
<弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%>
弗素化合物は、前述したZrOと同様に、スラグ形成剤として作用する。焼結型フラックスに添加される弗素化合物は、特に限定されるものではなく、BaF、CaF、KF、NaF、AlFなどに代表される金属弗化物だけでなく、KSiFなどの複合金属弗化物や、PTFE(polytetrafluoroethylene)などの弗素樹脂でもよい。
ただし、これら弗素化合物の総含有量が、F換算で0.5質量%未満の場合、前述した効果が得られないことがある。また、弗素化合物を過剰に添加すると、具体的には弗素化合物の総含有量がF換算で3質量%を超えると、ビード形状が劣化することがある。よって、焼結型フラックスにおける弗素化合物の総含有量は、F換算で0.5〜3質量%であることが好ましい。
<Bi:0.10質量%以下>
Biは、溶接時のスラグ剥離性を改善し、美麗な溶接ビードを形成する効果があり、施工コストの低減にも寄与するが、溶着金属中で還元反応を起こすため、焼結型フラックス中のBi量は0.10質量%以下に規制することが好ましい。フラックス中のBi量が0.10質量%を超えると、溶着金属中のBi量が増加し、溶着金属の高温割れ感受性及びSR割れ感受性が高くなる虞がある。なお、焼結型フラックスにおけるBi含有量は0であってもよい。
<[A]:1.0質量%以下>
フラックス中のCr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量([A])が1.0質量%を超えると、溶着金属のSR割れ感受性が高くなることがある。そこで、焼結型フラックスも、帯状電極と同様に、溶着金属の耐割れ性向上の観点から、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量([A])を、1.0質量%以下に規制することが好ましく、0.5質量%以下に規制することがより好ましい。
以上詳述したように、本実施形態の溶着金属は、溶接ままの状態で破断伸びが30%以上であるため、この溶着金属で下盛層を形成することにより、上盛層溶接時の熱収縮に起因する引張応力を下盛層(溶着金属)の塑性変形により軽減することが可能となる。その結果、下盛層及び上盛層の引張残留応力や割れ感受性が低減されるため、溶接部における割れの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の溶着金属は軟鋼系であり、Cr、Mo、Tiといった溶着金属の自硬性を高める合金元素を含まないため、下盛層に対するPWHTの施工や、ひいては高温の予熱・パス間温度管理が不要となり、施工コスト及び溶材コストを改善することも可能となる。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。図1は本実施例において実施した肉盛溶接の積層方法を模式的に示す図である。本実施例においては、板厚30mmの鋼板(JIS G3101 SS400)を母材1とし、帯状電極サブマージアーク溶接法により、焼結型フラックスを用いて、図1に示す肉盛溶接を行い、下盛層2のバッファー層としての機能を評価した。その際、帯状電極のサイズは厚さ0.4mm、幅50mmとし、焼結フラックスの粒度は12×65メッシュとした。
下記表1に試験に供した母材の成分組成を、下記表2に帯状電極の成分組成を、下記表3に焼結型フラックスの成分組成を、それぞれ示す。なお、下記表1及び表2に示す母材及び帯状電極の成分組成における残部は、Fe及び不可避的不純物である。また、下記表2に示す帯状電極の成分組成及び下記表3に示す焼結型フラックスの成分組成は、JIS G1258に規定される「鉄及び鋼−誘導結合プラズマ発光分光分析方法」及びJIS G1257に規定される「鉄及び鋼−原子吸光分析方法」に代表される湿式化学分析法により分析した値である。
Figure 0005978064
Figure 0005978064
Figure 0005978064
また、チップ(電極)・母材間距離は45mm、予熱・パス間温度は250℃、前パスのビードとラップ(重ね)幅は5mm、積層数は5層として、下盛層2を形成した。その他の溶接条件は下記表4に示す。
Figure 0005978064
また、同様に帯状電極サブマージ溶接法によって、13Cr−4Ni系溶着金属を肉盛溶接し、下盛層2の上に、上盛層(表面硬化肉盛層)3を形成した。なお、上盛層3の積層数は、3層とした。
前述した溶接試験によって、下盛層2の遅れ割れ及び高温割れ、並びにPWHT前後に下盛層2及び上盛層3について遅れ割れ、高温割れ、SR割れ発生の有無を確認した。各種割れは、X線透過試験により検出し、溶接長100mmにつき発生した割れ長さの総長が3.0mm以下のものを「良好(○)」、3.0mmより長くかつ5.0mm以下のものを「普通(△)」、5.0mmよりも長いものを「不良(×)」として評価した。また、SR割れについては、SR(再熱)前後で同様のX線透過試験を実施し、SR後に初めて検出された割れを「SR割れ」、その他の割れを「遅れ割れ」又は「高温割れ」と判断した。SR条件は、保持温度を600℃、保持時間を1時間とした。
下盛層2の破断伸び及び靭性の評価は、JIS Z3111に規定されるタイプIIA2号引張試験片及び2mm−Vノッチ試験片を用いた常温引張試験及びシャルピー衝撃試験により行った。図2は評価用試験片採取位置を示す図である。図2に示すように、シャルピー衝撃試験片10及び常温引張試験片20は、それぞれ下盛層2の最表面より6mmの位置から切り出した。
一方、溶接作業性については、「ビード形状」、「ビード揃い」及び「スラグ剥離性」について目視による官能評価を行い、「スラグ巻き込み性」については、下盛層の断面マクロ観察試験により評価した。具体的には、「ビード形状」は、肉眼観察により外観の良否を2段階で判断し、良好だったものを○、不良であったものを×とした。
また、「ビード揃い」は、アンダカット発生傾向により4段階に分類し、アンダカット発生傾向が極めて弱いものを◎、アンダカット発生傾向が弱いものを○、アンダカット発生傾向がやや強いものを△、アンダカット発生傾向が強いものを×とした。更に、「スラグ剥離剥離性」は、溶接ビード表面へのスラグ焼き付き傾向により4段階に分類し、スラグ焼き付き傾向が極めて弱いものを◎、スラグ焼き付き傾向が弱いものを○、スラグ焼き付き傾向がやや強いものを△、スラグ焼き付き傾向が強いものを×とした。
一方、「スラグ巻き込み性」は、前溶接ビードとの重ね部へのスラグ巻き込み傾向により4段階に分類し、スラグ巻き込み傾向が極めて弱いものを◎、スラグ巻き込み傾向が弱いものを○、スラグ巻き込み傾向がやや強いものを△、スラグ巻き込み傾向が強いものを×とした。
そして、総合評価は、溶接作業性の評価結果が全て良好(○又は◎)で、靭性が50J以上であり、かつSR前後の耐割れ性評価が良好(○)であったものを「◎」、溶接作業性の評価結果に普通(△)があるか、靭性が50J未満であるか、又はSR前後の耐割れ性評価に普通(△)があったものを「○」、溶接作業性の評価結果に不良(×)があるか、又はSR前後の耐割れ性評価に不良(×)があったものを「×」として評価した。
以上の評価結果を下記表5にまとめて示す。なお、下記表5に示す溶着金属の成分組成は、JIS G1253に規定される「鉄及び鋼−スパーク放電発光分析方法」及びJIS Z2613「金属材料の酸素定量方法通則」に準拠して分析した値である。
Figure 0005978064
上記表5に示すように、C含有量が本発明の範囲を超え、破断伸びが30%未満である比較例1の溶着金属は割れ感受性が高く、下盛層2及び上盛層3の両方に、SR前に遅れ割れ又は高温割れが発生し、SR後にSR割れが発生した。また、Si含有量が本発明の範囲に満たない比較例2の溶着金属は、なじみ性が劣り、スラグ巻き込み性が不良(×)となり、施工効率の点で問題があった。一方、Si含有量が本発明の範囲を超え、破断伸びも30%未満である比較例3の溶着金属は、上盛層3に遅れ割れ又は高温割れが発生した。
Mn含有量が本発明の範囲に満たない比較例4の溶着金属は、下盛層2に、遅れ割れ又は高温割れが発生した。一方、Mn含有量が本発明の範囲を超え、破断伸びも30%未満である比較例5,6の溶着金属は、上盛層3に、遅れ割れ又は高温割れが発生した。また、成分組成は本発明の範囲内であるが、破断伸びが30%未満である比較例7の溶着金属は、上盛層3に、遅れ割れ又は高温割れが発生した。
これに対して、本発明の範囲内の成分組成を有し、かつ破断伸びが30%以上である実施例1〜13の溶着金属は、比較例1〜7の溶着金属に比べて、割れの発生が少なく、溶接作業性及び靭性も優れていた。中でも、請求項1だけでなく、請求項2〜4の要件も満たしている実施例1〜8の溶着金属は、バッファー層としての特性及び溶接作業性が特に優れていた。
以上の結果から、本発明によれば、肉盛層での各種割れの発生を抑制可能なバッファー層(下盛層)を、効率良く形成できることが確認された。
1 母材
2 下盛層
3 上盛層
10 シャルピー衝撃試験片
20 常温引張試験片

Claims (7)

  1. 肉盛溶接のバッファー層用溶着金属であって、
    Si:0.30〜0.60質量%、
    Mn:1.00〜1.50質量%、
    を含有すると共に、
    C:0.20質量%以下、
    に規制され、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、
    溶接したままの状態で常温引張試験により測定した破断伸びが30%以上である溶着金属。
  2. 更に、O:0.05〜0.10質量%を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶着金属。
  3. 前記不可避的不純物のうち、Bi:0.005質量%以下に規制することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶着金属。
  4. 前記不可避的不純物のうち、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAlの総含有量を0.5質量%以下に規制することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶着金属。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶着金属を作製するための帯状電極であって、
    Mn:0.20〜0.50質量%、
    を含有すると共に、
    C:0.10質量%以下、
    Si:0.10質量%以下、
    Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下、
    に規制され、
    残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする帯状電極
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶着金属を作製するための帯状電極を用いたサブマージアーク溶接に使用される焼結型フラックスであって、
    SiO:15〜35質量%、
    ZrO:10〜30質量%、
    Al:10〜30質量%、
    Mn(金属Mn換算):5〜15質量%、
    金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%、
    弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%、
    を含有すると共に、
    Bi:0.10質量%以下、
    Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下、
    に規制した組成を有する焼結型フラックス。
  7. Mn:0.20〜0.50質量%を含有すると共に、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制され、残部がFe及び不可避的不純物からなる帯状電極と、
    SiO:15〜35質量%、ZrO:10〜30質量%、Al:10〜30質量%、Mn(金属Mn換算):5〜15質量%、金属炭酸塩(CO換算):5〜10質量%、弗素化合物(F換算):0.5〜3質量%を含有すると共に、Bi:0.10質量%以下、Cr、Mo、Ti、Nb、V、Ni及びAl:合計で1.0質量%以下に規制した組成を有する焼結型フラックスと、
    を使用し、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶着金属を得るサブマージアーク溶接方法。
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