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JP5987675B2 - 鋼材の冷却方法および冷却設備 - Google Patents
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本発明は、鋼材の冷却方法および冷却設備に関するものであり、特に、肉厚の鋼材を冷却用水槽に浸漬して冷却する、いわゆる浸漬冷却に用いられる冷却設備および冷却方法に関する。
厚鋼板など肉厚の厚い鋼材の製造において、多量の合金成分の添加を行わずに高強度、高靭性を得るためには、オフラインでローラークエンチによる熱処理を行うのが一般的である。しかし、例えば板厚が100mmを超える極厚鋼板のような鋼材は、テーブルローラーがたわむなどの搬送上の問題が生じるため、冷却用水槽に浸漬して焼入処理が行なわれる。たとえば、図5に示すような設備において、鋼材7を加熱炉1で加熱した後、台車2で鋼材7を炉外に抽出し、クレーン4および吊具5で吊上げて冷却用水槽3内の水8に浸漬させる方法がとられており、焼入中の冷却速度を速くするほど高強度で高靭性な材質が得られることとなる。
高い冷却速度を得るためには、鋼材表面に高流速の噴流を衝突させるなどして、冷却を促進する技術が知られている。これは、通常、冷却用水槽内に多数のノズルを配置し、多量の冷却水を鋼材全面に噴射させることにより実現される。
一方、噴流衝突以外の冷却方法として、酸化物などの膜を鋼材表面に形成させた状態で水冷する技術が知られている。
特許文献1には、表面膜塗布装置から粉状の表面膜材(例えば酸化物セラミック系耐熱塗料やセラミック系耐熱塗料)をスケールの剥離部やスケール厚みの薄い部分に噴射して表面膜を形成することにより、鋼板表面のスケールを含めての膜厚が均一となり、均一な冷却によって鋼板形状の平坦度の向上を図る技術が開示されている。
特許文献2には、鋳造、熱処理等の高温における製造工程で不可避的に起こる酸化皮膜の生成に加えて、更に酸化皮膜の生成を促進するための処理を行って金属部材表面に酸化皮膜を形成した状態で浸漬焼入れを行う技術が開示されている。
特開2001−300627号公報 特開2003−213324号公報
鋼材焼入時の鋼材板厚中心部の冷却速度は図2に示すように鋼材板厚が厚いほど低下する。図2は、900℃に加熱した厚鋼板を水中に浸漬させた際の、板厚中心部の冷却速度に及ぼす板厚の影響を示す。図2において、横軸は厚鋼板の板厚で、縦軸は板厚中心部における800℃から400℃までの平均冷却速度である。図2からわかるように、板厚中心部では800℃から400℃までの平均冷却速度は、例えば板厚が100mmの場合は2℃/sであるが、板厚が200mmの場合は0.5℃/sと非常に低くなる。したがって、本発明が対象とするように、浸漬冷却による熱処理が必要とされる肉厚の鋼材の熱処理に対しては、冷却速度増加のための対策が特に重要となっている。
ところで、一般に、高温鋼材の冷却では、鋼材表面が高温の領域では膜沸騰状態となり、鋼材表面は蒸気膜で覆われるため、膜沸騰状態での冷却能力は小さい。鋼材の冷却が更に進行すると、鋼材表面温度が下がり膜沸騰と核沸騰が混在する遷移沸騰が起こり、冷却能力は急激に増大する。
このため、高い冷却速度を得るためには、蒸気膜を破壊して冷却の初期段階から遷移沸騰(または核沸騰)を起こすことが有効である。鋼材表面に十分に高流速の噴流を衝突させると、図3の冷却曲線Bのように冷却の初期段階から遷移沸騰を起こし、冷却速度が速くなることが知られている。しかし、そのためには、鋼材全体の表面においてその状態を実現するためには、冷却用水槽内に高流速の噴流を形成可能な多数のノズルを配置し、多量の冷却水を鋼板全面に噴射させなければならないので、設備コストが膨大となるという問題がある。さらに、ノズルの配置によっては冷却むらができてしまうという問題もある。
これに対して、特許文献1や2に記載される技術は、酸化物などの膜を鋼材表面に形成させた状態で水冷時の冷却挙動を制御するもので、上述のような大掛かりな設備を必ずしも必要としない点で注目される。
しかしながら、特許文献1の技術は、厚鋼板の仕上圧延後に厚鋼板を制御冷却する方法であり、本発明が対象とする冷却用水槽を使った極厚鋼板の焼入処理とは冷却方式が全く異なること、また、酸化皮膜形成の目的が、スケール厚み分布に応じてスケールの薄い部分に酸化皮膜を形成し、この部分の冷却速度を酸化皮膜形成前に比べて遅くすることにより鋼板全体における冷却速度の均一化を図り、鋼板形状の平坦度向上と材質の均一化を図るものであって、積極的に鋼材全体についての冷却能力を上げようとする技術ではない。
また、特許文献2の技術は、鋼材の表面に酸化皮膜を形成してから冷却用水槽に浸漬する技術であり、金属部材表面に酸化皮膜を形成した状態で浸漬焼入れすると、膜沸騰が短時間で終了し冷却速度が高まるとの知見を活用している。そして、焼入れ時の冷却速度が他の部位よりも遅くなる特定部位にのみ酸化皮膜を形成することにより、特定部位の冷却速度を高めて部材全体の冷却速度を均一化できることが記載されている。
しかしながら、特許文献2の技術は、鋼材の表面に酸化剤を塗布してから酸化皮膜を形成する技術である。このため、酸化剤を鋼材表面に均一に塗布した上で、さらに加熱条件を厳密に制御しなければ、均一な酸化皮膜を形成することができず、酸化皮膜の均一性が不十分だと、水中への浸漬時の冷却挙動も不均一となり、材質の均一性に悪影響を及ぼすおそれがあった。
本発明は、冷却用水槽を使って鋼材を浸漬冷却する焼入処理において、高速噴流の冷却装置を用いずに高い冷却速度での冷却を実現し、高強度、高靭性の鋼材を得られる冷却方法、冷却設備を提供することを目的とする。
本発明者は、鋼材表面に所定膜厚の酸化膜を形成するに際して、酸化剤を塗布した後に酸化反応を起こして酸化皮膜を形成するのではなく、初めから酸化物を鋼材表面に膜状に塗布して形成すれば、酸化処理の不安定性に起因する酸化膜厚の不均一を回避できることを想到した。そして、さらに検討を加えて本発明に至った。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]表面に金属酸化物または無機酸化物を含有する膜を有する高温鋼材を、冷却用水槽に浸漬して浸漬焼入処理することを特徴とする鋼材の冷却方法。
[2]前記酸化物を含有する膜は、膜厚が5mm以下であることを特徴とする前記[1]に記載の鋼材の冷却方法。
[3]前記酸化物を含有する膜は、鋼材表面の複数箇所に形成されており、前記酸化物を含有する膜形成部分の合計の面積が鋼材全表面の10%以上であり、隣り合う膜形成部分の間隔が鋼材の肉厚の2倍未満であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の鋼材の冷却方法。
[4]前記冷却用水槽の容積が鋼材の体積の20倍以上であることを特徴とする前記[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の鋼材の冷却方法。
[5]加熱した鋼材の表面に、金属酸化物または無機酸化物を含有する液体をスプレー状に塗布することにより、前記酸化物を含有する膜を形成し、その後に、前記鋼材を冷却用水槽に浸漬して浸漬焼入処理することを特徴とする前記[1]乃至[4]の何れか1項に記載の鋼材の冷却方法。
[6]表面に金属酸化物または無機酸化物を膜状に塗布した鋼材を、加熱後、冷却用水槽に浸漬して浸漬焼入処理することを特徴とする前記[1]乃至[4]の何れか1項に記載の鋼材の冷却方法。
[7]鋼材を加熱する加熱炉と、加熱炉に装入する前、または加熱炉から抽出した後の鋼材表面に金属酸化物または無機酸化物をスプレー状に塗布する塗布装置と、鋼材全体を冷却水に浸漬できる冷却用水槽とを近接させて設置することを特徴とする鋼材の冷却設備。
本発明の鋼材の冷却方法及び冷却設備を用いると、冷却用水槽に浸漬させた鋼材を高い冷却速度で冷却することができるため、高強度・高靭性の鋼材の製造が可能となる。また、高速噴流の冷却装置を用いずに高い冷却速度での冷却を実現するので、膨大な設備コストがかかるという問題がない。
酸化物の鋼板への塗布方法の一例を説明する図である。 板厚と板厚中心部の冷却速度との関係を説明する図である。 焼入処理における温度と時間との関係を説明する図である。 酸化物の鋼板への塗布方法の他の例を説明する図である。 冷却用水槽を使った従来の焼入処理を説明する図である。 酸化物を含有する膜が鋼材表面の複数個所に形成された例を説明する図である。 酸化物を含有する膜が鋼材表面の複数個所に形成された例を説明する図である。
極厚鋼板を高い冷却速度で冷却するには、極厚鋼板の加熱前に鋼板の表面に金属酸化物(例えばAl、Cr、TiO、BeO、MgO、ZnO)または無機酸化物(例えばSiO、CaO、SnO、B)を含有する膜を有する高温鋼材を、冷却用水槽に浸漬して浸漬焼入処理すればよい。ここで、高温とは、一般的な焼入れ処理であれば、Ar変態点以上の温度を指す。なお、オーステナイト−フェライト二相域に加熱してから冷却するいわゆる二相域焼入れの場合には、高温とは、Ar変態点を超えてAr変態点未満の温度域を指す。
高温鋼材の表面に金属酸化物または無機酸化物を含有する膜を形成するには、たとえば、極厚鋼板の加熱前に鋼板の表面に金属酸化物または無機酸化物を膜状に塗布することができる。
塗布方法としては、台車上に置かれた極厚鋼板に前記酸化物を含有する液体をはけなどで全面に塗布する方法がある。または、例えば図4に示すように、台車上の鋼板(鋼材)7片面に前記酸化物を含有する液体をスプレー状に塗布し、台車2で搬送後、クレーン4などで吊り上げて鋼板7を裏返し、もう一方の面にもスプレー6で塗布する方法がある。塗布した液体中の前記酸化物は加熱中に鋼板表面に焼付き、塗膜が形成される。この状態で浸漬冷却を行うと、冷却能力(水冷熱伝達係数)が5倍以上に上昇する。
例えば板厚が200mmの場合では、板厚中心部での800℃から400℃までの平均冷却速度は、従来の0.5℃/sから1.0℃/sまで大きくなり、高強度・高靭性の材質を得ることが可能となる。この方法だと、高速噴流の冷却装置などを用いずに高い冷却速度で冷却を行うことができるので、膨大な設備コストがかかるという問題は生じない。
また、鋼材を加熱する前ではなく、加熱した後であっても、図1に示すように冷却用水槽3に浸漬する直前に前記酸化物を含有する液体をスプレー状に塗布することによって、鋼材7を高い冷却速度で冷却することができる。この方法により、鋼材の表裏全面に前記酸化物を均一に塗布することができ、鋼材全面を高い冷却速度で冷却することが可能となり、高強度・高靭性で材質ばらつきの小さい高品質の鋼材を製造できる。
次に鋼材の加熱条件、酸化物の塗布条件等について説明する。
酸化物の膜厚:5mm以下
前記酸化物の膜厚は5mm以下として塗布すれば、冷却速度が速くなり、高強度・高靭性の材質を得ることができる。これは、酸化物は水に対する濡れ性がよいので、酸化物の膜を鋼材表面に形成することにより、鋼材表面において容易に、遷移沸騰、あるいは、膜沸騰の状態が実現されるためである。この効果は、酸化物の膜厚が1μm以上のときに発揮される。なお、酸化物の膜厚は乾燥状態での膜厚とする。
膜厚が5mmを超えると、加熱または冷却中に酸化物が剥離しやすくなるほか、酸化物の熱伝導率が鋼材に比べて低いので、鋼材内部からの熱伝導が妨げられ、かえって冷却速度が低下するという問題が生じる。よって、酸化物の膜厚は5mm以下とするのがよい。より好適には3μm以上、0.5mm以下である。なお、酸化物の膜厚は、事前に、塗布条件と掲載される酸化膜の膜厚との関係を求めておくことにより、当条件を制御すれば所望の膜厚の酸化物膜を形成することができる。
膜形成部分の面積割合:10%以上
膜形成部分間の距離:鋼材の肉厚の2倍未満
前記酸化物を含有する膜形成部分は水冷直後に急冷されて、その周囲も熱伝導により急冷される。そのため、鋼材表面の全面に前記酸化物を塗布するなどして酸化物を含有する膜を形成することが理想的であるが、必ずしも鋼材表面の全面に酸化物を含有する膜を形成しなくとも、前記酸化物を含有する膜を鋼板表面の複数個所に形成されており、前記酸化物を含有する膜形成部分が鋼材の全表面の10%以上で、隣り合う膜形成部分の間隔が鋼材の肉厚の2倍より短くすることにより、鋼材全面を高い冷却速度で冷却することができ、高強度・高靭性の材質を得ることができるので好ましい。
膜形成部分の面積が鋼材表面の10%未満となると、鋼材の平均冷却速度が遅くなり、強度・靭性を確保するのに必要とされる冷却速度を満足できないおそれがある。従って、膜形成部分の面積割合は鋼材の全表面の10%以上とすることが好ましい。より好ましくは25%以上の範囲である。
また、隣り合う膜形成部分間の距離が鋼材の肉厚の2倍以上となると、鋼材面内の冷却速度の差が大きくなり、材質にばらつきが生じてしまうおそれがある。よって、隣り合う膜形成部分の間隔は鋼材の肉厚の2倍未満とすることが好ましい。より好ましくは0.5倍以内である。
酸化物を含有する膜を鋼板表面の複数個所に形成する場合、その形状や大きさは特に限定されるものではない。たとえば、図6(a)〜図6(d)の酸化物を含有する膜が形成された部分20に示すように、矩形あるいは円形膜形成部分を格子状にあるいは千鳥に配置することができる。
冷却用水槽の容積:鋼材体積の20倍以上
冷却用水槽焼入設備として鋼材体積の20倍以上の水を蓄えた冷却用水槽内で冷却すれば、冷却中に冷却用水槽内の水温が上昇して冷却能力が低下することはないため、高強度・高靭性の材質を確保することができるので好ましい。冷却用水槽内の水が鋼材体積の20倍未満である場合は、冷却中に冷却用水槽内の水温が上昇して冷却能力が低下し、強度・靭性が低下してしまうので、冷却用水槽の容積は鋼材体積の20倍以上とすることが好ましい。
鋼材の焼入れ処理に際して、本発明の冷却方法を用いる場合には、冷却開始前の鋼材の温度を、鋼材全体の組織が十分にオーステナイト化される温度に加熱することが好ましい。これにより、その後の浸漬冷却によって十分に焼きが入り、均一な材質の鋼材が得られる。なお、鋼材温度が1150℃を超えると、加熱中にオーステナイト粒が粗大化し、最終的に得られる組織も粗大化するため、靭性が低くなってしまい、所望の材質が確保できない可能性があるので、加熱温度は1150℃以下とすることが好ましい。
なお、本発明の冷却方法及び冷却設備は厚板の熱処理工程で用いれば大きな効果を発揮するが、本発明はこれに限るものではなく、鍛造品などの鋼材全般の熱処理工程に適用できる。
本発明において、加熱炉から塗布装置を経て冷却用水槽へ、あるいは、塗布装置から加熱炉を経て冷却用水槽へ、と鋼材を搬送するにあたり、鋼材の温度が各鋼種・焼入れ目的などで決定される焼入れ温度(冷却処理を施す直前の鋼材温度)が確保できる程度に、加熱炉と塗布装置と冷却装置とが近接していることが好ましい。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示す熱処理設備を用いた。台車2付き加熱炉1で重量25ton、板厚150mm、板幅2500mm、長さ8500mmの鋼板7を900℃まで再加熱した後、台車2によって鋼板7を加熱炉1から抽出し、クレーン4で鋼板7をその長手方向が略鉛直方向となるように吊具5を用いて吊り上げた。
冷却用水槽3の上方に鋼板7を移動させ、冷却用水槽3に浸漬前にSiOを含有した液体をスプレーノズル6によってスプレー噴射することでSiOを鋼板7の表面に表1に示す割合で塗布し、200mの水を蓄えた冷却用水槽3内に鋼板7を降下させて浸漬して、鋼板7全体が100℃以下になるまで冷却した。なお、比較のために酸化物を塗布しない場合についても浸漬試験を行った。
本実施例で用いた鋼において目標とする材質(強度・靭性)を確保するためには、板厚中心での800℃から400℃の間の平均冷却速度は1.2℃/s以上にする必要があり、板厚中心部での800℃から400℃の間の平均冷却速度は1.2℃/s以上にすることを目標とした。ここで、板厚中心部の温度は、鋼板中心部まで穴を開けて取り付けた熱電対により測定した。
試験条件と試験結果を表1に示す。
Figure 0005987675
比較例1では、鋼板表面塗布物無しとして、冷却用水槽中に浸漬冷却した。板厚中心部における冷却速度は0.9℃/sと遅く、目標値よりも低かった。このように、目標とする冷却速度が得られなかったので、同じ冷却条件で目標とする強度・靭性達成するためには、多量の合金製分を追加添加した成分系の鋼を採用しなければならないことが分かった。
発明例1では、加熱前、SiOを含有した液体をスプレーすることで、膜厚:0.05mmで、鋼板表面の10%の面積で塗布した。ここでは、SiOを含有した液体として、平均粒子径が0.1μmのSiO粒子を1mass%含有する水を用いた。塗布作業には、円形のフルコーンスプレーを用い、図7に示すように円形の膜を千鳥状配置に形成した。塗布部分は、鋼板の表面および裏面の合計で550箇所であり、隣接する塗布部分の間隔の最大値は250mmであった。
こうして得られた鋼板を冷却用水槽中に浸漬冷却した。SiO塗布部では冷却開始とともに遷移沸騰が起こり、板厚中央部での冷却速度は1.5℃/sと高かった。それ以外の部分でも近傍のSiO塗布部に多量に熱が流れ、まもなく遷移沸騰が起こった結果、板厚中央部での冷却速度は1.2℃/sとなり、目標を達成した。この場合には、多量の合金成分を追加添加した成分系の鋼を用いることなく、鋼板全面全体で高強度・高靭性の材質を得ることができる。
発明例2では、加熱後、SiOを含有した液体をスプレーすることで、SiOを鋼板表面全面に塗布し、冷却用水槽中に浸漬冷却した。ここでも、SiOを含有した液体として、平均粒子径が0.1μmのSiO粒子を1mass%含有する水を用いた。冷却開始と共に遷移沸騰が起こり、冷却速度は1.5℃/sとなり、目標を達成した。この場合にも、多量の合金成分を追加添加した成分系の鋼を用いることなく、鋼板全面全体で高強度・高靭性の材質を得ることができる。
発明例3では、鋼板を加熱した後、浸漬冷却する前に、SiOを含有した液体をスプレーすることで、膜厚:0.05mmで、鋼板表面の10%の面積で塗布した。ここでは、SiOを含有した液体として、平均粒子径が0.1μmのSiO粒子を1mass%含有する水を用いた。塗布作業には、円形のフルコーンスプレーを用い、図7に示すように円形の膜を千鳥状配置に形成した。塗布部分は、鋼板の表面および裏面の合計で550箇所であり、隣接する塗布部分の間隔の最大値は250mmであった。
こうして得られた鋼板を冷却用水槽中に浸漬冷却した。SiO塗布部では冷却開始とともに遷移沸騰が起こり、板厚中央部での冷却速度は1.5℃/sと高かった。それ以外の部分でも近傍のSiO塗布部に多量に熱が流れ、まもなく遷移沸騰が起こった結果、板厚中央部での冷却速度は1.2℃/sとなり、目標を達成した。この場合には、多量の合金成分を追加添加した成分系の鋼を用いることなく、鋼板全面全体で高強度・高靭性の材質を得ることができる。
1 加熱炉
2 台車
3 冷却用水槽
4 クレーン
5 吊具
6 スプレーノズル
7 鋼材(鋼板)
8 水
20 酸化物を含有する膜が形成された部分
A 通常の冷却
B 冷却の初期段階から遷移沸騰を起こした場合の冷却

Claims (5)

  1. 加熱した鋼材の表面に金属酸化物または無機酸化物を含有する液体をスプレー状に塗布することにより、前記酸化物を含有する膜を形成し、その後に、前記鋼材を、冷却用水槽に浸漬して浸漬焼入処理することを特徴とする鋼材の冷却方法。
  2. 前記酸化物を含有する膜は、膜厚が5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼材の冷却方法。
  3. 前記酸化物を含有する膜は、鋼材表面の複数箇所に形成されており、前記酸化物を含有する膜形成部分の合計の面積が鋼材全表面の10%以上であり、隣り合う膜形成部分の間隔が鋼材の肉厚の2倍未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材の冷却方法。
  4. 前記冷却用水槽の容積が鋼材の体積の20倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鋼材の冷却方法。
  5. 鋼材を加熱する加熱炉と、加熱炉から抽出した後の鋼材表面に金属酸化物または無機酸化物をスプレー状に塗布する塗布装置と、鋼材全体を冷却水に浸漬できる冷却用水槽とを近接させて設置することを特徴とする鋼材の冷却設備。
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