JP5994982B2 - 電解質としてイオン性液体、空気極としてカーボンを分散したイオン性ゲルを用いたリチウム−空気二次電池 - Google Patents
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Description
リチウム−空気電池は、酸素正極とリチウム負極との組み合わせにより、正極反応:2Li++O2+2e-→Li2O2、負極反応:2Li→2Li++2e-、トータルでは、反応2Li+O2→Li2O2に従い、3600Wh/kgのエネルギー密度(=容量1200Ah/kg×操作電圧3.0V)を理論的に供給することができる(非特許文献1)。このエネルギー密度は、従来の炭素/LiMn2O4(または炭素/LiCoO2、炭素/LiFePO4)系統の充電可能なリチウムイオン電池の6倍以上である。
ここで、当該理論エネルギー密度(3600Wh/kg)は、必要とするリチウムおよび酸素の全質量に基づいて算出されたものであり、もしも空気から供給される無尽蔵の酸素が直接利用できるならば、リチウム−空気電池はより高いエネルギー密度を有することになる。
しかしながら、リチウム−空気電池は、リチウムイオン電池とは電気化学反応が異なる。また、リチウム−空気電池では、正極の空気極が酸素ガスを取り入れるために、リチウムイオン電池とは異なる、開放系の構造が採用されている。
このような相違により、従来の有機電解液は、リチウム−空気電池においては、(1)充放電に伴い、酸素と反応して、分解する(非特許文献18)、(2)空気極を介して空気中に揮発する、(3)空気極を介して空気中の水分を溶解する、(4)空気極の細孔に容易に浸透することにより、空気極に必要とされる電子電導通路、イオン電導通路およびガス拡散通路の、三つの通路全部を確保することが難しい、すなわち、有機電解液の浸透は、リチウムイオンを空気極内に供給するために必要なことであるが、一方、空気極の細孔が液体電解質で完全に満たされた後は、それにより、酸素の空気極内への拡散が阻害される(非特許文献19、20)、という大きな問題を有している。
これらの問題に起因して、従来の有機電解液を用いたリチウム−空気電池は、(1)により、有機電解液が消耗されるとともに、放電反応の生成物としてLi2O2のみならず、有機電解液との反応によりLi2CO3などが生成する複雑なメカニズムとなること、(2)により、長時間の充放電および電池の長時間の保存ができないこと、(3)に対処するためには、空気に代えて、酸素ボンベからのドライ酸素を使用することになり、実用には向かないこと、(4)により、空気極内の電気化学反応は、有機電解液中に溶存する酸素ガスのみに基づくことになること等の難点を有し、これらによって、電池の容量が小さく、サイクル特性が悪く、レート特性が良くないなどの結果が生じることとなる。
このため、従来の有機電解液に代わり、より電気化学的に安定であり、かつ、不揮発性、水の不溶性を有する電解質が求められ、また、電子電導通路、イオン電導通路、及びガス拡散通路が確保される構造を有する空気極が求められている。
本発明者らは、上記知見に基づき、電解質としてイオン性液体(IL)を用い、空気極としてゲルを用いることにより、上記課題が解決可能であることを見出した。
具体的には、負極としてリチウムイオン二次電池に用いられる負極材料を用いた負極を用い、電解質として、電気化学的に安定であり、かつ、不揮発性、水の不溶性を有する、非水系のイオン性液体を用い、これにリチウム塩を加えて電解質層を構成し、また、空気極として、カーボンナノチューブ(又はグラフェンないしグラファイトシート)とイオン性液体を混合することにより作製した、カーボンナノチューブ(又はグラフェンないしグラファイトシート)が単本(又は単層)ずつ分散されているイオン性ゲルを用いて、リチウム−空気二次電池を構築する(図3)。
当該リチウム−空気二次電池の空気極に用いるイオン性ゲルは、電池の大容量とハイレート特性を実現するために、カーボンナノチューブ(又はグラフェンないしグラファイトシート)がゲル中に、束構造を解かれて、単本(又は単層)ずつ分散されており、このようなゲルは、例えば、カーボンナノチューブ(又はグラフェンないしグラファイトシート)粉末とイオン性液体を一定の比率で混合し、超音波で分散し、研磨し、更に遠心分離して、25℃-250℃で30分から24時間の範囲で乾燥するなどの方法により作製される。
本発明のリチウム−空気二次電池は、上記構成を備えることにより、可逆的に充放電可能であり、かつ、安定性と大容量及びハイレート特性を兼ね備えたリチウム−空気二次電池を提供するという、上記課題を解決するものである。
〈1〉微細孔を含むイオン性ゲルを含む、リチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
〈2〉カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシート粉末をイオン性液体に対し1〜50重量%の範囲の一定比率で混合し、超音波で分散し、研磨し、更に遠心分離して、乾燥することより作製される、微細孔を含むイオン性ゲル状空気極であることを特徴とする、〈1〉に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
〈3〉イオン性ゲルの乾燥を、25℃-250℃の温度範囲で30分から24時間行うことを特徴とする、〈2〉に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
〈4〉疎水性のガス拡散層を備えたことを特徴とする、〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
〈5〉リチウムイオン二次電池に用いられる負極材料を用いた負極/イオン性液体からなる電解質層/微細孔を含むイオン性ゲル状空気極という構造を有することを特徴とする、リチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
〈6〉イオン性液体からなる電解質層がリチウム塩を含むことを特徴とする、〈5〉に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
〈7〉空気極が、カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシート粉末をイオン性液体に対し1〜50重量%の範囲の一定比率で混合し、超音波で分散し、研磨し、更に遠心分離して、乾燥することより作製された、微細孔を含むイオン性ゲル状空気極であることを特徴とする、〈5〉又は〈6〉に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
〈8〉イオン性ゲルの乾燥を、25℃-250℃の温度範囲で30分から24時間行うことを特徴とする、〈7〉に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
〈9〉ゲル状空気極に疎水性のガス拡散層を備えたことを特徴とする、〈5〉〜〈8〉のいずれかに記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
これに対し、本発明のリチウム−空気二次電池では、酸素雰囲気下で行う放電反応後に、生成している反応物質はLi2O2であること、また、充電反応後に、生成したLi2O2が分解したことが、エックス線回折で確認され、これにより、反応メカニズムが、正極反応:2Li++O2+2e-⇔Li2O2、負極反応:2Li⇔2Li++2e-、トータルでは、反応2Li+O2⇔Li2O2であり、安定した充放電が可能であることが確認された。
(2)従来の有機電解液は揮発性であるため、電池の長時間の充放電、および保存が出来ない。
これに対し、本発明のリチウム−空気二次電池は、長時間放置しても、長時間充放電作動しても、電解液は全く揮発・蒸発しない。
(3)従来の有機電解液には空気中の水分が溶解し得、これにより電池性能が劣化することがあるため、これを避けるために、従来の有機電解液を用いるリチウム−空気電池では、酸素ボンベからのドライ酸素を使用している。
これに対し、本発明のリチウム−空気二次電池では、イオン性液体への水分の浸透は僅かであるため、空気をそのまま使用しても、数週間、使用することが可能となった。水分が全く溶けないイオン性液体を使用することにより、この問題は完全に解決されるはずである。
(4)従来の有機電解液を使用するリチウム−空気二次電池は、放電容量が小さく、また、可逆性が悪くて、充電ができない場合が多く、更にレート特性が悪い。
これに対し、本発明のリチウム−空気二次電池は、従来の有機電解液を用いるリチウム−空気二次電池に比べて、電極反応の可逆性が良好であり、放・充電サイクル特性も有し、レート特性も優れ、容量は従来の有機電解液を用いるリチウム−空気二次電池の平均値の約5倍〜10倍に達する。
このように、本発明のリチウム−空気二次電池においては、イオン性液体が電気化学的に安定であり、不揮発性であり、水の溶解性が小さいこととともに、本発明のイオン性ゲルが、電子電導通路、イオン電導通路、および空気拡散通路が確保された、理想的な空気極として働くことにより、従来の非水系リチウム空気二次電池の性能が大幅に向上されることが確認されている。
SWNTsは、明確に定義された原子構造、長さの径に対する高い比率(非特許文献23、24)および高い電気伝導性(102-103Scm-1)を有している(非特許文献25)ことから、本発明の電池の空気極においては、他の炭素質材料(非特許文献2、22)のように放電生成物の担持体であるばかりではなく、電気伝導性の通路となると見なされる。SWNTsは、典型的には、高度にもつれた束構造を有しており、このままでは効果的な表面領域が限定される。これに対し、本発明のCNG中では、SWNTsは、イオン性液体中に超音波分散された後、研磨されることにより、イオン性液体[C1C2im][NTf2]中に取り込まれて、おそらくは[C1C2im][NTf2]におけるカチオンとπ電子性のナノチューブ表面との間に存在し得る特異的な相互作用によって、もつれが解かれている(非特許文献26)。研磨により、SWNTsのもつれが解かれるイメージを図1に示す。このようにして分散されたSWNTsは、数多くの微弱な物理的架橋により互いにつながり、SWNTs/ILのCNGを形成する(図2のB)。
図2のBにおいて、SWNTs(フィラメントで表示)は、イミダゾリウムカチオン[C2C1im](細線の楕円で表示)とのπ-カチオン/π-電子の相互作用により細かくもつれが解かれ、架橋された網状の物理ゲルを形成している。[NTf2]アニオン(太線の楕円で表示)はゲルに付着しており、これにより電気的中性が保たれている。酸素は、架橋された網状ゲルの全体に充満している。
当該SWNTs/ILのCNGの働きは、主に、以下の4つの側面から記述することができる。
(1)SWNTsは、十分な電子の通路として働く。
(2)分子の秩序化によってSWNTs中に付着され、それゆえ隣接するSWNTsナノワイヤーを相互に連結させる[C1C2im][NTf2]ILは、SWNTs/IL・CNG内における高度なリチウムイオンの伝導を受け持つ。
(3)架橋したSWNTs/ILの網状構造は、細かく分散したSWNTsの大きな表面積により、そして、配向する[C1C2im]カチオンの間にたぶん存在する無数の割れ目や細孔により、なくてはならない酸素の拡散チャンネルを提供する。
(4)SWNTs/IL・CNGがその製造過程における強力な遠心分離の後にILについて飽和状態にあると仮定すると、IL電解質のCNGへの更なる浸透は抑制することができる。
このようにして、従来の空気極における3相電気化学界面に代わり、SWNTs/IL・CNGにおいては、その全体に拡張された電子、イオンおよび酸素の通路の三次元のネットワーク、すなわち、「電子、イオンおよび酸素の三次元のトリコンティニュアスな通路」が形成されている。
なお、上記事例では、イオン性液体とともに架橋した網状のイオン性ゲルを構成する炭素質としてカーボンナノチューブを用いたが、カーボンナノチューブに代えて、グラフェンまたはグラファイトシートを用いることもできる。
図2のAは、従来の炭素質材料を用いた空気極であり、3相界面反応は、炭素粒子間に満たされた電解液中に含まれる溶存酸素により制限される。
これに対し、図2のCは、放電時におけるCNGを示しており、リチウムイオンは、外部のイオン性液体電解質から架橋網状ゲル(CNG)へ移動し、内部に付着した[NTf2]アニオンにより調和される。架橋網中の酸素は、SWNTsに沿って、リチウムイオンおよび電子と組み合わされ、放電生成物へと変化する。
後述する実施例3−1に示すように、このようにして作製された本発明のSWNTs/IL・CNGと、SWNTsおよびILを混合し、超音波分散させただけの普通の混合物を空気極として用いたときの充放電特性を比較すると、SWNTs/IL・CNGの放電容量は、SWNTs/ILの混合物のそれ(950mAh/g)の6倍以上(5930mAh/g)であった(図4)。
このことは、超音波分散後の研磨によりSWNTsの束構造が完全に分散し、トリコンティニュアスな通路が十分に構築され、SWNTsが放電生成物に対し適応する能力が大きく増加したことの明確な電気化学的証拠を提供するものである。
固体−液体―気体の複雑な不均一反応として、Li+O2⇔Li2O2の反応速度は、単位界面面積に顕著に影響される。アセチレンブラックのような従来の担体では、界面領域の構築は、リチウムイオンを提供するための電解液の担体への浸透に不可避的に依存し、利用可能な酸素もまた、界面領域近傍の溶存酸素分子に制限される。このため、アセチレンブラックのような従来の担体を用いた電池においては、高レートでの充放電は困難である。
一方、SWNTs/IL・CNGでは、π-カチオンπ相互作用によりナノチューブの表面に付着した[C1C2im][NTf2]は、電解質中の同一のIL溶液のCNG内部への特別な延長と見なすことができる。SWNTsに付着した[C1C2im][NTf2]により占められることによって、CNGへの電解質の更なる浸透は抑制され得るが、リチウムイオンの移動は、電位を受けて、SWNTsに付着した[C1C2im][NTf2]を介して円滑に保たれる。同時に、CNGは微孔性の固体状のゲルであり、外部からの酸素に対し拡大された移動スペースを提供し、これにより酸素はCNG中のSWNTsおよびILの表面に沿って拡散し、リチウムイオンおよび電子と合体する。結果として、界面領域は、SWNTs/IL・CNGの網状組織全体に拡大されており、かくして、本発明のSWNTs/IL・CNGを空気極とするLi−空気電池においては、酸素雰囲気下において、高い電流を維持することができたと考えられる。
200mA/gの放電電流密度では、2440Wh/kg、すなわち理論値の約70%の比エネルギーが得られた。ここで、2440Wh/kgは、Li2O2と触媒であるSWNTsの重量に基づくものである。これは、リチウムイオン電池について、6C+LiMn2O4⇔LiC6+Mn2O4の反応に基づき、電極活性物質の重量に基づいて算出された、約425Wh/kgの理論値よりも約6倍高い値である。一方、本発明の電池の200mA/gにおける比電力は、100W/kgよりも低く、本発明の電池は、低い電流密度では、高エネルギーおよび低電力という一般のLi−空気電池の特徴を示していた。
しかしながら、放電電流密度が増加するにつれて、比電力もまた確実に上昇した。2000mA/gでは、比電力は、SWNTsおよび生成するLi2O2の全重量に基づき、1660W/kgに達し、一方、1680Wh/kgの実質的な比エネルギーが得られた。これらのデータは、電気自動車に対する一般的な比電力(1000〜1500Wh/kg)および自動車への適用に対し使用し得るガソリンの比エネルギー(約1700Wh/kg)(非特許文献31)の要件に近似している。
本発明のLi−空気電池の上述の特性は、すべて酸素雰囲気下での充放電におけるものである。一方、空気中に含まれるH2O、CO2等は、従来の有機電解液を用いるLi−空気電池において、電池性能の劣化につながることが知られている。そこで、本発明のSWNTs/IL・CNGを空気極とするLi−空気電池に対し、大気(酸素分圧:0.21気圧;湿度:約50%)中のH2OおよびCO2分子が与える影響を調べた。
後述の実施例3−3に示すように、本発明のSWNTs/IL・CNGを空気極とするLi−空気電池を、大気中、200mA/gSWNT電流密度で充放電させたとき、驚くべきことに、本発明のLi−空気電池は、大気中で、10200mAh/gという、酸素中で操作するよりも大きな放電容量を与えた(図8)。これに対し、多孔性グラフェン担体用いた従来例では、空気中における放電容量は酸素中のそれよりもずっと少ない(非特許文献32)。一方、1.23Vという、充電曲線と放電曲線の間の、酸素中で操作するよりも高い中電位の偏差(図8)は、空気中の酸素の濃度が低いことと関連している。
これらの現象は、空気からの低い酸素濃度ではLi2O2の形成がCNGの網状構造中に、酸素中で放電する場合よりも、もっと広く分布して起こりやすく、これにより、1.23Vというより大きな充放電履歴に導かれるものの、一方で、より大きな放電容量が得られたものと推測される。この、空気中での使用によりもたらされるより大きな容量は、CNGの界面反応領域が、従来の多孔性炭素担体における限定された3相界面ではなく、CNGの網状組織の全体に拡張されていることの、もう一つの証拠になると考えられる。
上記放電および充電後のSWNTs/IL・CNGのXRDパターンは、空気中における放電過程の間に、Li2O2とLiOHが形成されることを示した(図9)。このことは、空気中のいくらかのH2O分子もまたSWNTs/IL・CNG中へ浸透することができることを示している。
空気中での充電曲線は、7260mAh/gの後に、強く散乱するプロットを有している(図8)。この時点で、LiOHがLi負極の表面に形成されていた(図8の挿入図)。これは、明らかに空気からのH2Oの浸透によるものである。7260mAh/g以後の不安定な充電電位は、主にこのLiOHによる絶縁によるものと考えられる。この時点での空気極においては、放電により生じたLiOHのピークは消滅していたが、弱いLi2O2のピークは残され、また、Li2CO3のピークが生じていた。これは、空気からのCO2の混入によるものと考えられる。
以上のことから、SWNTs/IL・CNGを用いたLi−空気電池の大気中での充放電においては、以下の反応が起こると見なすことができる:
主反応(1) 2Li+O2 ⇔ Li2O2
主反応(2) 4Li+O2+2H2O ⇔ 4LiOH
副反応(1) 2LiOH+CO2 → Li2CO3+H2O
副反応(2) 2Li2O2+2CO2 → 2Li2CO3+O2
空気中で50時間を超える長期間の放電後においてさえもXRDパターンにLi2CO3のピークがない(図9)ことから、H2Oの混入が、SWNTs/IL・CNGを用いたLi−空気電池の性能に影響を与える最大のものであると推測される。図10および図11に、1000mAh/gまでの限定された充放電における、Li−空気電池の酸素雰囲気下、および、大気中でのサイクル特性を比較した。大気中の充放電では、Li−空気電池の放電電位が第5サイクルから上昇し始め、徐々に2つの平坦部が生じること、これに対し、酸素雰囲気下では10回のサイクルすべてにおいて単一の平坦部であることを観察した。大気中において上昇する平坦部は、約3.0Vで安定に存続する。これは、アルカリ水溶液の電解質を有するLi−空気電池の放電電位と一致する(非特許文献33)。これらの結果は、SWNTs/IL・CNGの通路を介して大気中から混入するH2Oを取り除くことが、本発明のLi−空気電池の空気中でのさらなる実用化に関し重要であることを明確に示している。
SWNTs/IL・CNGの通路を介する大気中からのH2Oの混入を抑制することにより、本発明のLi−空気電池の空気中における充放電特性がどのように影響を受けるか検討するために、CNGとカーボンペーパー(CP)集電体の間に疎水性のガス拡散層を介在させた空気極を用いたLi−空気電池を作製し(実施例2の(2))これを用いて、大気中で充放電試験(実施例3−4)を行った。
放電状態を1000mAh/gまでに限定した、大気中、200mA/gSWNTの電流密度で行った充放電サイクル試験の結果(図12)によれば、放電電位は、試験された10回のサイクルの間、2Li+O2⇔Li2O2の反応にのみ対応する単独平坦部を保持した。このことは、大気中のH2Oの混入に起因する放電電位の混乱が空気極への疎水性ガス拡散層の追加により抑制されていることを示唆する。
この疎水性ガス拡散層によりH2Oの混入を完全に防止することは困難であると考えられる。それにもかかわらず、疎水性ガス拡散層により、空気中の水分による悪影響を緩和することによって、本発明のLi−空気電池の大気中における操作において、電池性能に対し有意な改善が成し遂げられている(図13)。
すなわち、大気中、200mA/gSWNTの電流密度で行った充放電試験において、疎水性ガス拡散層を有する本発明のLi−空気電池は、放電電位2.0Vまでの10730mAh/gの放電容量、そしてその後の充電電位約4.0Vまでの完全に可逆的な充電過程を、1.17Vの中電位偏差をもって、示している(図13)。このように、空気極に疎水性ガス拡散層を設けることにより、大気中においても、魅力的な電池容量と、電極反応の優れた可逆性が得られた。
SWNTs/IL架橋網状ゲル(CNG)の調製
SWNTs/IL・CNGの調製は、以前報告した方法(非特許文献25)により行われた。5mgのSWNTs(HipcoSuperPure)が、30分間の超音波分散により、0.5mlのイミダゾリウムイオンベースのイオン性液体[C2C1im][NTf2](東京化学工業)中に分散された。このようにして調製された懸濁物が、20分間、瑪瑙乳鉢中で研磨された。研磨されることにより、SWNTs/ILの懸濁物の粘度が徐々に増加し、最終的に粘つくペーストが形成された。次いで、当該ペーストを遠心分離管に移し、9100gで3時間、遠心分離した。上部の余剰のイオン性液体が除去され、下部の黒色のSWNTs/IL架橋網状ゲルが得られた。
もつれたSWNTsともつれが解かれたSWNTsの電気化学特性を比較するため、超音波分散により調製されたSWNTsと[C2C1im][NTf2]の同様の懸濁物が、研磨されることなく、直接、9100gで3時間、遠心分離され、最終的にSWNTs/IL混合物が得られた。
Li−空気電池および空気極側に疎水性ガス拡散層を有するLi−空気電池の作製
(1)Li−空気電池
SWNTs/IL・CNGが5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むカーボンペーパーの集電体上に精密に貼り付けられた。装着面積は、0.36cm2であった。このようにして作製された電極は、真空下、80℃で12時間乾燥され、SWNTsの装着重量0.5〜0.6mg/cm2の空気極が得られた。SWNTs/IL・CNGは、当該熱および真空処理に対し、優秀な安定性を示した。その後、電池組み立てのすべての操作は、アルゴンで満たされた、高度に完成されたグローブボックス中で行われた。2032コイン型セルがホルダーとして、0.2mm厚のリチウム金属がアノードとして、また、0.5MのLi[NTf2]の[C2C1im][NTf2]溶液が、グラスファイバーのセパレータ中に浸けられて、電解質層として、それぞれ使用された。その外形は、図4の図内挿入図に示すとおりである。組み立て後、当該コイン型セルは、酸素の入り口および出口以外は高度に気密性のグラスチャンバー内に置かれた。
(2)空気極側に疎水性ガス拡散層を有するLi−空気電池
疎水性の層を有する空気極を作製するために、60重量%のアセチレンブラックと40重量%のPTFE乳化物が超音波分散によって混合され、カーボンペーパー上に被覆された(装着重量0.6mg/cm2)。当該カーボンペーパーは、次いで、350℃で10分間熱処理され、良好な疎水特性が得られた。当該疎水性の層は、燃料電池においては、通常、ガス拡散層と呼ばれている。我々は、当該疎水性のガス拡散層によって空気からのH2Oの空気極を介する電池内部への混入を軽減するために、実施例1で調製したSWNTs/IL・CNGを当該疎水性の層上に貼り付けることにより、空気極を作製し、当該空気極を用いて、(1)と同様にして、空気極側に疎水性ガス拡散層を有するLi−空気電池を組み立てた。
電池特性の測定
(1)電気化学的測定
酸素雰囲気下でのLi−空気電池の電気化学的試験では、Li−空気電池は、試験の間、酸素フローの下、グラスチャンバー内に保持された。グラスチャンバー内の酸素圧は、1気圧であった。疎水性ガス拡散層を有さない、および、有する、Li−空気電池についての空気中での電気化学的試験では、電気化学的測定は、双方とも、0.21気圧の酸素分圧、および、約50%の湿度の空気中で行われた。これらの電気化学的試験は、25℃の温度で、Hokuto charge/discharge machineおよびSolartron instrumentを使用して行われた。
(2)ラマンおよびXRD測定
ラマンスペクトルはCNG中のSWNTsの状態を確認するために使用された。粉体X線回折は、酸素雰囲気下、および、空気中でのLi−空気電池の充放電生成物の分析を行うために使用された。放電または充電の後、電池はグローブボックス中で開かれ、カーボンペーパー集電体に取り付けられたSWNTs/IL架橋ゲルは、XRD検出のためにしっかり密閉された。
本発明によるCNGを空気極として用いた場合とSWNTsと[C 2 C 1 im][NTf 2 ]の混合物を空気極として用いた場合のLi−空気電池の充放電特性の対比
SWNTsと[C2C1im][NTf2]のCNG、および、ゲル化前のSWNTsと[C2C1im][NTf2]の混合物を用いたLi−空気電池を、それぞれ、酸素1気圧、200mA/gSWNTの電流密度で、充放電させた。カットオフ電圧は、放電時2.0V、充電時は、CNGおよび混合物について、それぞれ、約4.0Vおよび4.5Vであった。その結果得られた充放電曲線を、図4に示す。容量は、SWNTsの重量当たりのものである。
図4から、SWNTs/IL・CNGを用いた場合の放電容量は、SWNTs/ILの混合物のそれ(950mAh/g)の6倍を超える、5930mAh/gに達していることがわかる。
本発明のLi−空気電池の酸素雰囲気下での充放電試験
上述の実施例3−1における充放電試験において、CNGを空気極として用いた本発明の電池では、放電及び充電の電圧の間の履歴現象の軽減が観察された。すなわち、本発明の電池は、従来の多孔性炭素担体を用いた、同じ200mA/gの電流密度における充放電において通常観察される約1.50Vの値よりも明らかに小さい、1.07Vの中電位偏差を示した(図4)。
図5は、上記充放電に用いた、カーボンペーパー(CP)集電体上に装着されたSWNTs/IL・CNGの放電後および充電後のXRDパターンを示したものである。当該CPには、5重量%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が含まれている。
上記充放電において、放電時には、Li2O2の粉体X線回折(XRD)パターン(Li2O2の4つの強いピーク)が明確に観察された(図5)。これらの4つのピークは、Li/Li+に対し4.0Vにまで充電された後は、すべて消失した(図5)。
図6は、SWNTs/IL・CNGを使用した本発明の電池を、酸素1気圧、500から2000mA/gSWNTまでの段階的電流密度で充放電させたときの充放電特性を示したものである。カットオフ電圧は、放電時2.0V、充電時4.5Vとした。
図6によれば、本発明の電池は、電流密度が増加しても平坦な放電曲線を維持しており、2000mA/gの高い電流密度においてもなお、2020mAh/gの放電容量が得られている。
また、本発明の電池は、2000mA/gにおいて64%の充放電クーロン効率を維持している。
200mA/gの放電電流密度では、2440Wh/kg、すなわち理論値の約70%の比エネルギーが得られた。一方、比電力は、100W/kgよりも低く、200mA/gの放電電流密度では、高エネルギーおよび低電力という一般のLi−空気電池の特徴を示していた。
しかしながら、放電電流密度が増加するにつれて、比電力もまた確実に上昇した。2000mA/gでは、比電力は、1660W/kgに達し、一方、1680Wh/kgの実質的な比エネルギーが維持された。
本発明のLi−空気電池の空気中での充放電試験
本発明のSWNTs/IL・CNGを空気極とするLi−空気電池に対し、大気(酸素分圧:0.21気圧;湿度:約50%)中のH2OおよびCO2分子が与える影響を調べるため、以下の実験を行った。
本発明のSWNTs/IL・CNGを空気極とするLi−空気電池を、大気中、200mA/gSWNTの電流密度で充放電させた。得られた充放電曲線を図8に示す。図8中の挿入図は、充電後のLi負極(アノード)およびCNG空気極(カソード)の表面のXRDパターンである。
本発明のLi−空気電池は、大気中で、10200mAh/gという、酸素中で操作するよりも大きな放電容量を与えた。一方、1.23Vという、酸素中で操作するよりも高い中電位の偏差が観察された(図8)
図9に、上記放電および充電後のSWNTs/IL・CNGのXRDパターンを示す。当該SWNTs/IL・CNGは、カーボンペーパー(CP)集電体上に装着されている。図9のXRDのパターンは、空気中における放電過程の間に、Li2O2とともにLiOHが形成されることを示した。このことは、空気中のいくらかのH2O分子もまたSWNTs/IL・CNG中へ浸透することができることを示している。
空気中での充電曲線は、7260mAh/gの後に、強く散乱するプロットを有している(図8)。この現象を完全に分析するため、空気極のみならず、この時点でのリチウム負極のXRDパターンも調べられた(図8の挿入図)。LiOHがLi負極の表面に形成されていた。これは、明らかに空気からのH2Oの浸透によるものであり、7260mAh/g以後の不安定な充電電位は、主にこのLiOHによる絶縁によるものと考えられる。この時点での空気極においては、放電により生じたLiOHのピークは消滅していたが、弱いLi2O2のピークは残され、また、Li2CO3のピークが生じていた。これは、空気からのCO2の混入によるものと考えられる。
以上のことから、SWNTs/IL・CNGを用いたLi−空気電池の大気中での充放電においては、以下の反応が起こると見なすことができる:
主反応(1) 2Li+O2 ⇔ Li2O2
主反応(2) 4Li+O2+2H2O ⇔ 4LiOH
副反応(1) 2LiOH+CO2 → Li2CO3+H2O
副反応(2) 2Li2O2+2CO2 → 2Li2CO3+O2
空気中で50時間を超える長期間の放電後においてさえもXRDパターンにLi2CO3のピークがない(図9)ことから、H2Oの混入が、SWNTs/IL・CNGを用いたLi−空気電池の性能に影響を与える最大のものであると推測される。
1000mAh/gまでの限定された充放電における、Li−空気電池の酸素雰囲気下、および、大気中でのサイクル特性を、図10および図11に示す。大気中の充放電では、Li−空気電池の放電電位が第5サイクルから上昇し始め、徐々に2つの平坦部が生じること、これに対し、酸素雰囲気下では10回のサイクルすべてにおいて単一の平坦部であることが観察された。大気中において上昇する平坦部は、約3.0Vで安定に存続する。これは、アルカリ水溶液の電解質を有するLi−空気電池の放電電位と一致する(非特許文献33)。
疎水性のガス拡散層を有する本発明のLi−空気電池の空気中での充放電試験
CNGとカーボンペーパー(CP)集電体の間に疎水性の拡散層を導入することにより、空気極のH2Oへの抵抗性が改善されるか、どうかを調べるために、以下の実験を行った。
図12に、放電状態を1000mAh/gまでに限定した場合の、疎水性ガス拡散層を有する本発明のLi−空気電池の、大気中、200mA/gSWNTの電流密度における充放電サイクル特性を示す。
図12においては、放電電位は、試験された10回のサイクルの間、2Li+O2⇔Li2O2の反応にのみ対応する単独平坦部を保持した。このことは、大気中のH2Oの混入に起因する放電電位の混乱が疎水性ガス拡散層の追加により抑制されていることを示唆する。
図13は、疎水性ガス拡散層を有する本発明のLi−空気電池の、大気中、200mA/gSWNTにおける充放電曲線を示している。カットオフ電圧は、放電時2.0V、充電時約4.0Vであった。ここで、疎水性ガス拡散層は、CP集電体とSWNTs/IL・CNGSの間に設けられている。
図13において、疎水性層を有する本発明のLi−空気電池は、放電電位2.0Vまでの10730mAh/gの放電容量、そしてその後の充電電位約4.0Vまでの完全に可逆的な充電過程を、1.17Vの中電位偏差をもって、示している。このように、空気極に疎水性拡散層を設けることにより、大気中においても、魅力的な電池容量と電極反応の優れた可逆性が得られることが観察された。
Claims (7)
- カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシートとイオン性液体から構成され、カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシートが束構造を解かれて分散、架橋された網状構造を有するイオン性ゲルを含む、リチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
- カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシート粉末をイオン性液体に対し
1〜50重量%の範囲の一定比率で混合し、超音波で分散し、研磨し、更に遠心分離して、
乾燥することよりイオン性ゲルを作製することを特徴とする、請求項1に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極の製造方法。 - イオン性ゲルの乾燥を、25℃-250℃の温度範囲で30分から24時間行うことを特徴とする、請求項2に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極の製造方法。
- 疎水性のガス拡散層を備えたことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池用空気極。
- リチウムイオン二次電池に用いられる負極材料を用いた負極/イオン性液体からなる電
解質層/カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシートとイオン性液体から構成され、カーボンナノチューブ、グラフェン又はグラファイトシートが束構造を解かれて分散、架橋された網状構造を有するイオン性ゲル状空気極という構造を有することを特徴とする、リチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。 - イオン性液体からなる電解質層がリチウム塩を含むことを特徴とする、請求項5に記載
のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。 - ゲル状空気極に疎水性のガス拡散層を備えたことを特徴とする、請求項5または6に記載のリチウム−空気電池又は充・放電可能なリチウム−空気二次電池。
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