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JP6004263B2 - 細菌の中央代謝経路を解析する方法、及び該方法に用いるアンチセンスrna発現ベクターのセット - Google Patents
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JP6004263B2 - 細菌の中央代謝経路を解析する方法、及び該方法に用いるアンチセンスrna発現ベクターのセット - Google Patents

細菌の中央代謝経路を解析する方法、及び該方法に用いるアンチセンスrna発現ベクターのセット Download PDF

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Description

本発明は、細菌において包括的に中央代謝経路を解析する方法に関する。中でも特に、大腸菌中央代謝経路に関与する遺伝子をサイレンシングするための、アンチセンスRNA発現ベクターを作成する方法に関する。またその方法によって作成されたベクター群及び該ベクター群を用いて、包括的に中央代謝経路を解析する方法に関する。
細菌の代謝経路は、数多くの遺伝子が関与する非常に複雑な系である。中でも、解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路、TCA回路、呼吸鎖、これら経路を統括的に調節する転写因子をまとめて、中央代謝経路と言い(図1から4)、大変重要な役割を果たしている。この代謝経路を理解するために、従来までは遺伝子数個か、高々十数個だけに着目して、それらの個々の遺伝子のノックアウト株(遺伝子破壊株、遺伝子欠損株などとも呼ばれる)あるいはそれらの遺伝子を複数組み合わせてノックアウトしたノックアウト株を作成し、表現型などを解析することが多かった。
遺伝子ノックアウトは、細菌の持つ相同組換え能を利用するなどして、ゲノム上から標的遺伝子を取り除く技術であるが、大腸菌をはじめ様々な細菌で可能であることが示されている。遺伝子ノックアウトでは、ほぼ完全に遺伝子機能を取り除くことができるが、大量の遺伝子を包括的に解析するためには、時間がかかりすぎて不向きである。その結果、代謝経路の一部分だけの解析で終わってしまい、代謝経路の全体像を理解するのが難しかった。さらに、生育に必須な遺伝子を標的にするのが難しいといった問題もある。
一方、遺伝子ノックアウト以外にも、人為的に細菌の遺伝子が働かないようにする他の手段がある。アンチセンスRNAを用いた遺伝子サイレンシング方法がそれである。これを以下、単にアンチセンス法と言う。アンチセンス法では、標的mRNAに相補的な配列を持つアンチセンスRNAを作成し、標的mRNAにハイブリダイズさせることで遺伝子のサイレンシングが起こる。本法は、作業が迅速で、細胞の増殖に必須な遺伝子に対しても適用可能である事に利点がある。つまり、大量の遺伝子について同条件で包括的な解析を行いたい場合に適している。
アンチセンス法では、標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドン周辺に対してアンチセンスRNAをハイブリダイズさせると効率良くサイレンシングが起こることが知られている(非特許文献1及び非特許文献2)。これにより、標的mRNAはリボソームに取り込まれず、翻訳が阻害されるために機能不全に陥る。さらには、リボソームの結合していないmRNA(naked mRNAと言われる)は速やかに分解される事が知られており、これによってもmRNAは機能不全に陥る(非特許文献1及び非特許文献2)。
以下に、アンチセンス法の具体的実施方法を述べる。まず、標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドン周辺に対応する細菌ゲノムDNA領域を、PCR法で増幅する。そして、増幅した断片を適当な発現ベクター上の、適当なプロモーターの下流に本来の向きとは逆にして挿入する。これによって、アンチセンスRNA発現ベクターが作られる。さらに、この発現ベクターを細菌に導入し、適当な条件下におき、アンチセンスRNAを発現させる。用いるプロモーターを、薬剤やその他適当な条件で発現が誘導されるものにすれば、必要なタイミングで必要なだけ(つまり誘導的に)アンチセンスRNAを発現させる事ができる。
しかし、細菌でのアンチセンス法は一般に低効率で、標的遺伝子の機能を十分にサイレンシングしきれず、実用に耐えない場合も多くあった。この低効率の問題を解決するために本発明者らは、大腸菌を用いて鋭意研究を行い、以下の2点を改良すると効率が向上することを明らかにした(非特許文献1及び非特許文献2)。
(1)できるだけ発現量の多いプロモーターを使うこと
(2)アンチセンス配列がステムループ構造のループ部分に配置され、ステム部分が38塩基の逆向き繰り返し配列からなるRNA(以下、末端対合型アンチセンスRNAと言う)を用いること
(1)については、弱いアラビノース誘導型(badプロモーター)などよりも、より強く発現量の多いIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)誘導型プロモーター、trcプロモーターを使うと良いことが分かった。(2)については、末端対合構造によって、アンチセンスRNAの細胞内安定性が上昇し(=半減期が増大し)、細胞内濃度が増加することが分かった。おそらく、末端対合構造はRNA全体の安定化に寄与すると考えられる。この2つの改良によって、例えばackAという酢酸代謝に関わる遺伝子のサイレンシングでは、アラビノース誘導型プロモーター利用で末端対合無しの場合だと、ほぼ0%であったサイレンシング効率(抑制によって失われたAckA酵素活性を意味する)が、trcプロモーター利用で末端対合有りでは78%まで向上した。この時、ackAアンチセンスRNAの細胞内濃度は、24倍上昇していた(非特許文献1)。
これまでに、同様の方法によってackA以外にも20種類以上の標的遺伝子のサイレンシングを試みており、サイレンシングの効率は最大で90%を超えている(非特許文献3)。これまで試した全ての標的遺伝子でサイレンシングが可能であったこと、及び発現抑制によって遺伝子破壊株と同様の表現型が得られたことから、本発明者らのtrcプロモーターを用いた末端対合型アンチセンスRNAによるサイレンシング方法は、実用上十分必要な効率と信頼性を持ち合わせていると言える。これ以降、「trcプロモーターを用いた、末端対合型アンチセンスRNAを発現するベクター」を「trcPTベクター」と呼ぶ。
以上のようにアンチセンス法は本発明者らによって、実用に耐えうるレベルまで改良されたものの、包括的に大腸菌遺伝子を解析するには至っていなかった。
また、trcPTベクターを用いた中央代謝遺伝子のサイレンシングのうち、以下の遺伝子の結果については本発明者らが論文などで発表済みである。
ptaackAでは、用いたオリゴヌクレオチドの配列とそれらのサイレンシング効率(非特許文献1及び非特許文献2)
ackAptapoxBaceEpflBaccAではサイレンシングによってピルビン酸が蓄積すること(非特許文献4)
また、包括的に大腸菌遺伝子の研究を行なうためには、「KEIO collection」と呼ばれる遺伝子破壊株を、系統的に大量に作成した例が存在する(非特許文献5)。しかし、遺伝子破壊では、任意の大腸菌株で解析ができないこと、遺伝子複数組み合わせの解析を行なうのに多大な時間を要すること、生育に必須な遺伝子を標的にできないことなどの不利な点がある。
ピルビン酸は、医薬品の原材料や食品添加物などとして利用され、さらにはバイオエタノールなどバイオ燃料生産の出発物質ともなる有用な物質である。また、生物にはほぼ普遍的に存在する解糖系の中間代謝物質の一つである。現在の市場価格は1kgあたり2000円から3000円で、その工業価値は高いと言える。
現在ピルビン酸は、化学合成及び大腸菌などによる生物合成の2通りによって生産されているが、より低コストで低環境負荷である生物合成による生産が近年注目を集めつつある。大腸菌以外でもCandida属、Debaryomyces hanseniiSaccharomyces cerevisiaeTorulopsis属、Schizophyllum communeなどの微生物を遺伝子改変して、あるいは改変すること無く生産する方法が知られている(非特許文献6、特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
ピルビン酸の生物合成の中でも、大腸菌によるものでは一般的な方法のひとつで、いくつかの研究・実用例が報告されている(特許文献1、非特許文献7及び非特許文献8)。大腸菌の場合、pflBfrdBCldhAatpFadhEsucApoxB ackAaceErngcrappcなどの遺伝子を欠損させるとピルビン酸が蓄積するようになることが知られている。しかし、解糖系の中間代謝物質であるピルビン酸を大量に生産させるためには、ピルビン酸代謝に関与する多くの遺伝子をノックアウト(破壊、欠損とも呼ばれる)あるいは変異させる必要があるが、どのような遺伝子改変を施せば生産性が高まるのか、不明な点も多くある。よって、過去文献等から、ピルビン酸近傍代謝経路の機能を類推して、相当の試行錯誤をしながら遺伝子改変を進めているのが現状である。
また、本発明者らはtrcPTベクターを用いて、ackAptapoxBaceEpflBaccAをサイレンシングすると、ピルビン酸が蓄積することをすでに発表している(非特許文献4)。
特開2005-333855号公報 特開2003-24048号公報 特開2000-78996号公報
Nakashima et al., Nucleic Acids Res. (2006)34:e138 Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103 Nakashima et al., Methods Mol.Biol. (2012)815: 307- 中島信孝、田村具博 (2011)「アンチセンスRNAによる細菌での遺伝子サイレンシング」バイオサイエンスとインダストリー, 69(3), 204- Baba et al., Mol. Syst. Biol. (2006) 2: 2006.0008. Li et al., (2001) Appl. Microbiol. Biotechnol. 57: 451- Causey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004)101: 2235- Yokota et al., (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41: 638-
本発明は、細菌の中央代謝経路に関与する遺伝子をサイレンシングすることにより、中央代謝経路を包括的に解析する方法、及び解析に用いるツールの提供を目的とする。
本発明者は、中央代謝経路について、すべての反応ステップ(60ステップ、71遺伝子産物)を遺伝子サイレンシングするためのtrcPTベクター71個を作成することとした。そして、その結果できたベクター群全てで野生型大腸菌を形質転換し、各遺伝子をサイレンシングし、その結果現れる表現型を解析することで、包括的な大腸菌中央代謝経路の解析をすることが出来ることを見出した。これによって、従来までの少数遺伝子を対象とした解析では予見できなかった、有用物質生産に必要な遺伝子改変情報を得る事ができたり、糖や代謝などに関する予想外の遺伝子機能について情報が得られる。これらの情報があれば、有用物質生産のためなどに欠損あるいは増強させるべき遺伝子を合理的(rational)に広範に選択することができ、遺伝子改変の試行錯誤の回数を減らすことなどが可能になる。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 細菌の中央代謝経路を解析するために、該中央代謝経路に関与する以下の71の遺伝子をそれぞれサイレンシングするための、配列番号1〜71のDNAをそれぞれ含み、71の遺伝子に対するアンチセンスRNAをそれぞれ発現する71個のアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット:ppsAppcptasucAgltAzwfarcAaceEmaeAmaeBgapnuondhmdhfrdAfnrcyopfkAcydAicdpykFmqosdhCaccAatpFcragcdpflBldhAadhEackApoxBacsglkptsGpgipfkBfbpfbaAfbaBtpiApgkgpmAgpmBgpmIenopykAgntKidnKpgleddedagndrpiArpiBtktAtktBtalAtalBrpeacnAacnBsucCfumAfumBfumCpckAaceAaceBglcB、及びmlc
[2] さらに、trcプロモーターを含み、該プロモーターがアンチセンスRNAをコードするDNAに機能的に連結されている、[1]の71個のアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット。
[3] さらに、lacI q 遺伝子を有し、該遺伝子がアンチセンスRNAをコードするDNAに機能的に連結されている、[2]の71個のアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット。
[4] 細菌の中央代謝経路を解析するために、該中央代謝経路に関与する以下の71の遺伝子をそれぞれサイレンシングするためのアンチセンスRNAをコードする、配列番号1〜71のDNAからなる71個のポリヌクレオチドのセット:ppsAppcptasucAgltAzwfarcAaceEmaeAmaeBgapnuondhmdhfrdAfnrcyopfkAcydAicdpykFmqosdhCaccAatpFcragcdpflBldhAadhEackApoxBacsglkptsGpgipfkBfbpfbaAfbaBtpiApgkgpmAgpmBgpmIenopykAgntKidnKpgleddedagndrpiArpiBtktAtktBtalAtalBrpeacnAacnBsucCfumAfumBfumCpckAaceAaceBglcB、及びmlc
[5] [1]〜[3]のいずれかの71個のアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセットを用いて、細菌の中央代謝経路に関与する遺伝子をサイレンシングし、細菌の中央代謝経路を解析する方法。
[6] 細菌の中央代謝経路の解析が、細菌において有用物質である代謝産物を蓄積させるためにサイレンシングさせる遺伝子の選択である、[5]の細菌の中央代謝経路を解析する方法。
[7] 有用物質である代謝産物が、ピルビン酸、フマル酸、酢酸又はグルコースである、[6]の細菌の中央代謝経路を解析する方法。
本発明の細菌の中央代謝経路に関与する酵素をコードする遺伝子をサイレンシングし得るアンチセンスRNAを発現しうる71個のベクターセットを用いることにより、細菌の中央代謝経路を解析することができる。また、特定の遺伝子をサイレンシングすることにより特定の中間代謝産物を蓄積させることができる。従って、遺伝子改変によりピルビン酸等の有用な物質の産生能が向上した細菌を作製することができる。
大腸菌の解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路を示す図である。図中{}は多次反応による複雑な反応系を示す。図中には、遺伝子名、中間代謝物名、補酵素、反応副産物を明示してある。 大腸菌のTCA回路を示す図である。[]はマルチサブユニットによる反応を示す。 大腸菌の呼吸鎖を示す図である。 大腸菌の解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路、TCA回路、呼吸鎖を調節する転写因子群。「+」「-」はそれぞれ正、負に調節することを意味する。 ppcについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 arcAについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 ndhについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 fnrについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 cyoについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 mqoについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 craについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 poxBについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 acsについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 fbaAについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 gpmlについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 gntKについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 eddについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 rpiBについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 rpeについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 sucCについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 fumCについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 pckAについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 aceAについて、満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を示す図である。 サイレンシング効率が高く、実用的であると判断されたベクターと、その構築に用いたヌクレオチドのセットを示す図である。 サイレンシング効率が高く、実用的であると判断されたベクターと、その構築に用いたヌクレオチドのセットを示す図である(図24−1の続き)。 サイレンシング効率が高く、実用的であると判断されたベクターと、その構築に用いたヌクレオチドのセットを示す図である(図24−2の続き)。 サイレンシング効率が低く、実用的でないと判断されたベクターと、その構築に用いたヌクレオチドのセットを示す図である。 サイレンシング効率が低く、実用的でないと判断されたベクターと、その構築に用いたヌクレオチドのセットを示す図である(図25−1の続き)。 aceEicd及びsdhCをサイレンシングするtrcPTベクターの評価の結果を示す図である。 gltAatpFeno及びidnKをサイレンシングするtrcPTベクターの評価の結果を示す図である。 gap及びaccAをサイレンシングするtrcPTベクターの評価の結果を示す図である。 trcPTベクターによる糖資化能の包括解析の結果を示す図である。 trcPTベクターによる糖資化能の包括解析の結果を示す図である(図29−1の続き)。 trcPTベクターによる糖資化能の包括解析の結果を示す図である(図29−2の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって増減した中間代謝物質を示す図である。 各遺伝子のサイレンシングによって増減した中間代謝物質を示す図である(図30−1の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって増減した中間代謝物質を示す図である(図30−2の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって増減した中間代謝物質を示す図である(図30−3の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって増減した中間代謝物質を示す図である(図30−4の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって蓄積したピルビン酸量を示す図である。 各遺伝子のサイレンシングによって蓄積したピルビン酸量を示す図である(図31−1の続き)。 各遺伝子のサイレンシングによって蓄積したピルビン酸量を示す図である(図31−2の続き)。 2つの遺伝子を組合せた2重サイレンシングによって蓄積したピルビン酸量を示す図である。 2つの遺伝子を組合せた2重サイレンシングによって蓄積したピルビン酸量を示す図である(図32−1の続き)。 本発明のベクターを用いたアンチセンスRNAの発現のメカニズムとアンチセンスRNAの構造を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は大腸菌において中央代謝経路の遺伝子をサイレンシングするためのベクター群であり、さらに、それらを用いて中央代謝経路を解析する方法である。
サイレンシングする中央代謝経路の標的遺伝子は60の反応ステップにトータル71個の遺伝子が存在する。解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路、TCA回路、呼吸鎖、これら経路を統括的に調節する転写因子をまとめて、中央代謝経路という。図1に大腸菌の解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路を、図2に大腸菌のTCA回路を、図3に大腸菌の呼吸鎖を示す。図1〜図3には、各経路の反応を触媒する上記酵素が明示されている。さらに、図4に大腸菌の解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路、TCA回路、呼吸鎖を調節する転写因子群を示す。
標的とすべき中央代謝経路71遺伝子の遺伝子名は、以下の通りである。
ppsAppcptasucAgltAzwfarcAaceEmaeAmaeBgapnuondhmdhfrdAfnrcyopfkAcydAicdpykFmqosdhCaccAatpFcragcdpflBldhAadhEackApoxBacsglkptsGpgipfkBfbpfbaAfbaBtpiApgkgpmAgpmBgpmIenopykAgntKidnKpgleddedagndrpiArpiBtktAtktBtalAtalBrpeacnAacnBsucCfumAfumBfumCpckAaceAaceBglcB、及びmlc
本発明の中央代謝経路の遺伝子をサイレンシングするためのベクター群は、上記の71個のそれぞれの遺伝子をサイレンシングするアンチセンスRNAを発現する71個のベクターからなるセットである。
本発明のベクターが発現するアンチセンスRNAは、標的遺伝子の標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドン周辺に対してハイブリダイズし得る。また、本発明のベクターが発現するアンチセンスRNAはアンチセンス配列がステムループ構造のループ部分に配置され、ステム部分が38塩基の逆向き繰り返し配列であることを特徴とし、このようなアンチセンスRANを末端対合型アンチセンスRNAと呼ぶ。
本発明のアンチセンスRNAを発現するベクターは、アンチセンスRNAをコードするDNAを含み、その上流に機能的にプロモーターが連結されている。用いるプロモーターとしては、trcプロモーターが挙げられる。本発明のアンチセンスRNAを発現するベクターをtrcPTベクターと呼ぶ。該ベクターはtrcプロモーター(IPTGで発現誘導)を有し、さらにlacリプレッサー遺伝子(lacI q 遺伝子:trcプロモーターのIPTG依存的調整用)を有していてもよい。また、アンチセンスRNAをコードするDNAを挿入する部位であるマルチクローニングサイトの両端に38bpのステムループ構造を有している。アンチセンス配列として標的遺伝子からリボソーム結合部位から開始コドン周辺のDNA断片を作成し、trcプロモーターの下流に本来と逆向きにライゲーションすることにより、アンチセンスRNAが発現する。図33に本発明のベクターを用いたアンチセンスRNAの発現のメカニズムとアンチセンスRNAの構造を示す。
trcPTベクター71個の作成は、例えば以下の方法で行う。まず、標的遺伝子の一部分をオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR法で大腸菌ゲノムDNAから増幅し、それを空のtrcPTベクター(ベクター名、pHN1257(Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103))のtrcプロモーター下流に、本来の方向とは逆向きに連結する。なお、pHN1257は、trcプロモーター以外に、カナマイシン耐性遺伝子、pSC101H 自律複製起点(ori)、lacI q 遺伝子を持つ。PCRで増幅すべき断片は、すでに述べたように標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドンを含まなければならない。また、断片の長さは、過去の本発明者らの研究から最適であると分かっている、100塩基対前後であり、例えば、60〜203塩基対である(Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103)。次いで、作成したtrcPTベクターが予想通り機能しているかどうか調べるために、野生型細胞をtrcPTベクターで形質転換し、それをIPTGを含む培地で培養し、標的遺伝子をサイレンシングする。そして、以下の方法のどれか1つで、数字の小さい方法から優先して調べる。
1.当該遺伝子の機能欠損変異株と同じ、遺伝子に特異的な表現型が観察できるか
2.サイレンシングによって糖資化性が変化する場合、その変化が、当該遺伝子の過剰発現で回復できるか
3.標的タンパク質の酵素活性を測定し、60%以上の活性が低下するか
4.mRNAの存在量をリアルタイムPCR法で測定し、60%以上の量が低下するか
本発明者らのこれまでの結果によると、このように作成したとしても、全てのtrcPTベクターが満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすとは限らない(Nakashima et al., Methods Mol. Biol. (2012)815: 307-)。よって上記の実験でサイレンシング効率が不十分だと分かった場合には、PCRで増幅する断片を数塩基対から数十塩基対だけずらして同じ操作を行なう。ただし、依然として標的mRNAのリボソーム結合部位とスタートコドンは標的として含まなければならない。満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターが出来るまで、これを繰り返す。このような方法により、遺伝子をサイレンシングするのに最適な配列を決定することができる。配列番号1〜71の配列は、この方法によりサイレンシングに最適な配列として決定されたアンチセンスRNAをコードするDNA配列であり、図5〜図23、図24−1〜24−3並びに図25−1及び25−2に示すように、配列が数塩基対から十数塩基対ずれただけで、サイレンシング効率は大きく低下する。図5〜23のベクターの詳細は図24−1〜24−3並びに図25−1及び25−2に示される。また、図5〜23において、各遺伝子のスタートコドン上流と下流200塩基対が最上部に実線で示してあり、ベクター作成に用いたアンチセンス配列をその下に実線で示す。数字は塩基対の番号である。
この操作を、71個の遺伝子全てについて行うことで、すべてのベクターが完成する。本発明のベクターを用いることにより、そのベクターが標的とする遺伝子を60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上サイレンシングすることができる。ここで、遺伝子を60%以上サイレンシングするとは、その遺伝子がコードする酵素の活性がサイレングしない場合に対して60%以上低下すること、あるいは、その遺伝子のmRNAの転写量がサイレンシングしない場合に対して60%以上低下することをいう。
なお、lacI q 遺伝子は有していても、有していなくてもよく、例えば、一度に多数の遺伝子をサイレンシングするために、細菌を複数個の異なる遺伝子を標的とするベクターで形質転換する場合、lacI q 遺伝子が過剰に存在し、trcプロモーターからの発現が抑制される可能性があるので、複数のベクターを用いる多重サイレンシングを行う場合、lacI q 遺伝子を含まないベクターを用いてもよい。
配列番号1〜71にそれぞれ71個の遺伝子をサイレンシングするために用いるtrcPTベクターが含むアンチセンスRNAをコードするDNA配列を示す。該DNA配列は、標的遺伝子のセンス鎖DNAの標的部分の配列の逆向きの配列を有する。該trcPTベクターから標的遺伝子の標的mRNAに対するアンチセンスRNAが転写され、標的mRNAにハイブリダイズし、標的遺伝子の発現を抑制する。該ベクターはtrcプロモーターを含み、該プロモーターはアンチセンスRNAをコードするDNA配列の上流に機能的に連結されている。
配列番号1〜71に示す配列部分は、標的遺伝子のサイレンシングに効果がある配列として選択された。71個の遺伝子とそれぞれの遺伝子をサイレンシングするための71個のtrcPTベクターが含む配列の配列番号は以下のとおりである。
ppsA(配列番号1)、ppc(配列番号2)、pta(配列番号3)、sucA(配列番号4)、gltA(配列番号5)、zwf(配列番号6)、arcA(配列番号7)、aceE(配列番号8)、maeA(配列番号9)、maeB(配列番号10)、gap(配列番号11)、nuo(配列番号12)、ndh(配列番号13)、mdh(配列番号14)、frdA(配列番号15)、fnr(配列番号16)、cyo(配列番号17)、pfkA(配列番号18)、cydA(配列番号19)、icd(配列番号20)、pykF(配列番号21)、mqo(配列番号22)、sdhC(配列番号23)、accA(配列番号24)、atpF(配列番号25)、cra(配列番号26)、gcd(配列番号27)、pflB(配列番号28)、ldhA(配列番号29)、adhE(配列番号30)、ackA(配列番号31)、poxB(配列番号32)、acs(配列番号33)、glk(配列番号34)、ptsG(配列番号35)、pgi(配列番号36)、pfkB(配列番号37)、fbp(配列番号38)、fbaA(配列番号39)、fbaB(配列番号40)、tpiA(配列番号41)、pgk(配列番号42)、gpmA(配列番号43)、gpmB(配列番号44)、gpmI(配列番号45)、eno(配列番号46)、pykA(配列番号47)、gntK(配列番号48)、idnK(配列番号49)、pgl(配列番号50)、edd(配列番号51)、eda(配列番号52)、gnd(配列番号53)、rpiA(配列番号54)、rpiB(配列番号55)、tktA(配列番号56)、tktB(配列番号57)、talA(配列番号58)、talB(配列番号59)、rpe(配列番号60)、acnA(配列番号61)、acnB(配列番号62)、sucC(配列番号63)、fumA(配列番号64)、fumB(配列番号65)、fumC(配列番号66)、pckA(配列番号67)、aceA(配列番号68)、aceB(配列番号69)、glcB(配列番号70)、及びmlc(配列番号71)
本発明は、これらの細菌の中央代謝経路を解析するために用い得る上記71個のベクターのセットを包含する。さらに、これらのベクターを用いて細菌の中央代謝経路を解析する方法を包含する。ここで、中央代謝経路を解析するとは、解糖系、ペントースリン酸経路、エントナー・ドウドロフ経路、TCA回路、呼吸鎖、これら経路を統括的に調節する転写因子を含む中央代謝経路に関与する71個の遺伝子がどのように作用しているかを調べるために、71個の遺伝子の全部又は一部をサイレンシングした場合に表れる表現型を解析すること等を含む。具体的には、中央代謝経路に関与する遺伝をサイレンシングするベクターを用いて、特定の遺伝子をサイレンシングし、その遺伝子のサイレンシングにより出現する表現型、すなわち、代謝産物の産生量の低下、喪失や増大を解析すればよい。代謝産物としては、ピルビン酸、フマル酸、酢酸、グルコース等の中間代謝産物、最終代謝産物を挙げることができる。この方法により、特定の代謝産物を細菌に産生蓄積させるためにサイレンシングさせるべき遺伝子を解析し、選択することができる。
複数の遺伝子産物であるタンパク質が複合体をなして引き起こされる反応ステップでは、その内の1つだけを標的として、そのタンパク質をコードする遺伝子をサイレンシングすればよい。一方、同一の反応ステップが複数の遺伝子産物であるタンパク質によって引き起こされる場合は、そのすべてのタンパク質をコードする遺伝子を標的として、それらの遺伝子をサイレンシングすればよい。
さらに、それらベクターを用いて、有機物質を多く生産する株を作成するために必要な遺伝子改変に関する情報を得る。
例えば、本発明のベクターを用いて特定の遺伝子をサイレンシングすることにより、ピルビン酸等の有用物質である代謝産物を大量に生産するように表現型を変えることが可能になる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕
実験手法
以下に記載の実施例において、大腸菌の培養、遺伝子組換え操作等は、本発明者らの論文および特許公報(Nakashima and Tamura, Biotechnol. Bioeng. (2004) 86:136-、Nakashima and Tamura, Appl. Environ. Microbiol. (2004) 70:5557-、Nakashima et al., Nucleic Acids Res. (2006)34:e138、Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103、特許第3793812号、特許3944577号)に基づいて行った。特に断りがない限り、大腸菌の培養にはLB培地(1% Difco Bacto Tryptone、0.5% Difco Yeast Extract、1%塩化ナトリウム)を用い、37℃で行った。寒天培地による培養の場合、寒天濃度は1.7%で、9 cm直径のプラスチックシャーレに入れたものを使った。プラスミドを含む大腸菌を培養する場合は、必要な抗生物質を加えて行った。抗生物質の終濃度は、カナマイシン15 mg/L、クロラムフェニコール34 mg/Lである。M9最小培地の組成は、17 g/L Na2HPO4-12H2O, 3 g/L KH2PO4, 0.5 g/L NaCl, 1 g/L NH4Cl, 0.24 g/L MgSO4, 0.011 g/L CaCl2, 0.02 g/L チアミンである。サイレンシングや有機物質生産の宿主として用いた野生型株は大腸菌MG1655株で、PCRの鋳型としたゲノムDNAは全て同株のものである。また、液体培養によってサイレンシングの実験をする際は、培養条件を揃えるために、本培養の前に前培養を行なった。具体的には、形質転換の操作によって得られたコロニーを爪楊枝で液体培地に植菌し、一晩培養後、それを希釈することで本培養を開始させた。希釈率は、断りの無い限り600倍である。
〔実施例2〕
PCRによるアンチセンス配列の増幅とpHN1257へのライゲーション
PCRによってアンチセンス配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドは、北海道システムサイエンス社などに合成を委託した。これらは、標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドンを必ず含み、増幅後のDNA断片末端に必ずNcoIとXhoI認識配列が追加されるように設計されている。増幅の操作は、東洋紡社製のKODplusポリメラーゼあるいはKODFXポリメラーゼで行った。増幅した断片は全てNcoIとXhoIで切断し、pHN1257の同サイトにライゲーションした。以上で、trcPTベクターが作成された。PCRの鋳型に用いたMG1655株ゲノムDNAは、全ゲノム配列が解読され公開されていることから、オリゴヌクレオチドの配列が決定されれば、増幅されるアンチセンス配列も一義的に決定されることになる。
上記操作に用いたオリゴヌクレオチドの配列を配列番号111〜300に示し、どのオリゴヌクレオチドでどの遺伝子が増幅されたか、及びライゲーションの結果出来たベクター名を図24−1〜24−3並びに図25−1及び25−2に示す。また、増幅の結果得られるアンチセンス配列は配列番号1〜110に示した。サイレンシングの結果は実施例3に後述するが、図24−1〜24−3は満足出来るレベルにサイレンシングが起こされていたtrcPTベクターで(配列番号1〜71)、図25−1及び25−2はそうでなかったtrcPTベクターを示す(配列番号71〜110)。
配列番号1〜110に配列を示すDNAを含むベクターが標的とする遺伝子名及びベクターの名称を以下に示す。
配列番号1:ppsA, pHN1297、配列番号2:ppc, pHN1858、配列番号3:pta, pHN1260、配列番号4:sucA, pHN1314、配列番号5:gltA, pHN1320、配列番号6:zwf, pHN1315、配列番号7:arcA, pHN1801、配列番号8:aceE, pSM8、配列番号9:maeA, pHN1503、配列番号10:maeB, pHN1504、配列番号11:gap, pHN1505、配列番号12:nuo, pSM9、配列番号13:ndh, pHN1854、配列番号14:mdh, pSM11、配列番号15:frdA, pSM12、配列番号16:fnr, pSM78、配列番号17:cyo, pHN1807、配列番号18:pfkA, pSM15、配列番号19:cydA, pSM28、配列番号20:icd, pSM16、配列番号21:pykF, pSM17、配列番号22:mqo, pHN1816、配列番号23:sdhC, pSM19、配列番号24:accA, pSM20、配列番号25:atpF, pHN1313、配列番号26:cra, pHN1836、配列番号27:gcd, pHN1321、配列番号28:pflB, pHN1312、配列番号29:ldhA, pHN1318、配列番号30:adhE, pHN1319、配列番号31:ackA, pSM27、配列番号32:poxB, pSM66、配列番号33:acs, pSM75、配列番号34:glk, pHN1821、配列番号35:ptsG, pSM21、配列番号36:pgi, pSM22、配列番号37:pfkB, pSM30、配列番号38:fbp, pSM23、配列番号39:fbaA, pHN1825、配列番号40:fbaB, pSM31、配列番号41:tpiA, pSM32、配列番号42:pgk, pSM34、配列番号43:gpmA, pSM35、配列番号44:gpmB, pSM36、配列番号45:gpmI, pSM76、配列番号46:eno, pSM25、配列番号47:pykA, pSM38、配列番号48:gntK, pHN1831、配列番号49:idnK, pSM40、配列番号50:pgl, pSM41、配列番号51:edd, pSM77、配列番号52:eda, pSM43、配列番号53:gnd, pSM44、配列番号54:rpiA, pSM45、配列番号55:rpiB, pHN1827、配列番号56:tktA, pSM47、配列番号57:tktB, pSM48、配列番号58:talA, pSM49、配列番号59:talB, pSM50、配列番号60:rpe, pSM79、配列番号61:acnA, pSM52、配列番号62:acnB, pSM53、配列番号63:sucC, pSM80、配列番号64:fumA, pSM56、配列番号65:fumB, pSM62、配列番号66:fumC, pSM81、配列番号67:pckA, pSM82、配列番号68:aceA, pSM83、配列番号69:aceB, pSM60、配列番号70:glcB, pSM70、配列番号71:mlc, pSM67、配列番号72:ppc, pHN1783、配列番号73:ppc, pHN1795、配列番号74:ppc, pHN1796、配列番号75:ppc, pHN1797、配列番号76:ppc, pHN1798、配列番号77:ppc, pHN1840、配列番号78:arcA, pHN1316、配列番号79:arcA, pHN1799、配列番号80:arcA, pHN1800、配列番号81:ndh, pSM10、配列番号82:ndh, pHN1789、配列番号83:ndh, pHN1803、配列番号84:ndh, pHN1804、配列番号85:ndh, pHN1805、配列番号86:ndh, pHN1852、配列番号87:ndh, pHN1853、配列番号88:fnr, pSM13、配列番号89:cyo, pSM64、配列番号90:cyo, pHN1806、配列番号91:cyo, pHN1808、配列番号92:mqo, pSM18、配列番号93:cra, pHN1350、配列番号94:cra, pHN1834、配列番号95:cra, pHN1835、配列番号96:poxB, pSM29、配列番号97:acs, pSM33、配列番号98:fbaA, pSM24、配列番号99:gpmI, pSM37、配列番号100:gntK, pSM39、配列番号101:gntK, pHN1832、配列番号102:edd, pSM42、配列番号103:rpiB, pSM46、配列番号104:rpiB, pHN1828、配列番号105:rpe, pSM51、配列番号106:sucC, pSM55、配列番号107:fumC, pSM57、配列番号108:fumC, pSM57u、配列番号109:pckA, pSM58、配列番号110:aceA, pSM59
さらに、配列番号111〜410に配列を示すプライマーオリゴヌクレオチドの名称を以下に示す。
配列番号111:sSN1235、配列番号112:sSN1236、配列番号113:sSN1672、配列番号114:sSN1673、配列番号115:sSN1193、配列番号116:sSN1194、配列番号117:sSN1265、配列番号118:sSN1266、配列番号119:sSN1267、配列番号120:sSN1268、配列番号121:sSN1271、配列番号122:sSN1272、配列番号123:sSN11013、配列番号124:sSN1274、配列番号125:sSN1218、配列番号126:sSN1219、配列番号127:sSN1321、配列番号128:sSN1322、配列番号129:sSN1323、配列番号130:sSN1324、配列番号131:sSN1372、配列番号132:sSN1373、配列番号133:sSN1424、配列番号134:sSN1425、配列番号135:sSN11019、配列番号136:sSN1670、配列番号137:sSN1428、配列番号138:sSN1429、配列番号139:sSN1430、配列番号140:sSN1431、配列番号141:sSN1436、配列番号142:sMO90、配列番号143:sMO91、配列番号144:sSN11016、配列番号145:sSN1442、配列番号146:sSN1443、配列番号147:sSN1444、配列番号148:sSN1445、配列番号149:sSN1446、配列番号150:sSN1447、配列番号151:sSN1448、配列番号152:sSN1449、配列番号153:sSN1450、配列番号154:sSN11018、配列番号155:sSN1452、配列番号156:sSN1453、配列番号157:sSN1454、配列番号158:sSN1455、配列番号159:sSN1263、配列番号160:sSN1264、配列番号161:sMO95、配列番号162:sSN1669、配列番号163:sSN1269、配列番号164:sSN1270、配列番号165:sSN1216、配列番号166:sSN1217、配列番号167:sSN1259、配列番号168:sSN1260、配列番号169:sSN1261、配列番号170:sSN1262、配列番号171:sSN17、配列番号172:sSN18、配列番号173:sMO97、配列番号174:sMO98、配列番号175:sMO101、配列番号176:sMO102、配列番号177:sSN1588、配列番号178:sSN1497、配列番号179:sSN1486、配列番号180:sSN1487、配列番号181:sSN1498、配列番号182:sSN1499、配列番号183:sMO7、配列番号184:sMO8、配列番号185:sSN1508、配列番号186:sSN1509、配列番号187:sSN11009、配列番号188:sSN1501、配列番号189:sMO3、配列番号190:sMO4、配列番号191:sMO9、配列番号192:sMO10、配列番号193:sMO11、配列番号194:sMO12、配列番号195:sMO13、配列番号196:sMO14、配列番号197:sMO15、配列番号198:sMO16、配列番号199:sMO103、配列番号200:sMO104、配列番号201:sSN1502、配列番号202:sSN1503、配列番号203:sMO19、配列番号204:sMO20、配列番号205:sSN1662、配列番号206:sSN11008、配列番号207:sMO23、配列番号208:sMO24、配列番号209:sMO25、配列番号210:sMO26、配列番号211:sMO107、配列番号212:sMO108、配列番号213:sMO29、配列番号214:sMO30、配列番号215:sMO31、配列番号216:sMO32、配列番号217:sMO33、配列番号218:sMO34、配列番号219:sMO35、配列番号220:sMO110、配列番号221:sMO41、配列番号222:sMO42、配列番号223:sMO43、配列番号224:sMO44、配列番号225:sMO45、配列番号226:sMO46、配列番号227:sMO47、配列番号228:sMO48、配列番号229:sMO111、配列番号230:sMO112、配列番号231:sMO51、配列番号232:sMO52、配列番号233:sMO53、配列番号234:sMO54、配列番号235:sMO55、配列番号236:sMO114、配列番号237:sMO57、配列番号238:sMO58、配列番号239:sMO59、配列番号240:sMO60、配列番号241:sMO61、配列番号242:sMO116、配列番号243:sSN1586、配列番号244:sSN1587、配列番号245:sSN1584、配列番号246:sMO66、配列番号247:sMO67、配列番号248:sMO68、配列番号249:sMO117、配列番号250:sMO118、配列番号251:sMO99、配列番号252:sMO100、配列番号253:sSN11011、配列番号254:sSN11012、配列番号255:sSN1257、配列番号256:sMO122、配列番号257:sMO121、配列番号258:sSN1258、配列番号259:sSN1666、配列番号260:sSN1667、配列番号261:sSN1273、配列番号262:sMO124、配列番号263:sMO123、配列番号264:sSN1426、配列番号265:sSN1427、配列番号266:sSN11020、配列番号267:sMO126、配列番号268:sMO125、配列番号269:sSN1437、配列番号270:sSN1438、配列番号271:sSN1439、配列番号272:sSN11015、配列番号273:sSN1451、配列番号274:sSN1293、配列番号275:sSN1294、配列番号276:sSN1668、配列番号277:sMO96、配列番号278:sMO1、配列番号279:sMO2、配列番号280:sMO5、配列番号281:sMO6、配列番号282:sSN1500、配列番号283:sMO17、配列番号284:sMO18、配列番号285:sMO21、配列番号286:sMO22、配列番号287:sSN1663、配列番号288:sMO27、配列番号289:sMO28、配列番号290:sMO36、配列番号291:sMO109、配列番号292:sSN11006、配列番号293:sMO49、配列番号294:sMO50、配列番号295:sMO56、配列番号296:sMO62、配列番号297:sMO115、配列番号298:sMO63、配列番号299:sMO64、配列番号300:sMO65、配列番号301:sSN1283、配列番号302:sSN1284、配列番号303:gltAOE1、配列番号304:gltAOE2、配列番号305:atpFOE1、配列番号306:atpFOE2、配列番号307:enoOE1、配列番号308:enoOE2、配列番号309:idnKOE1、配列番号310:idnKOE2、配列番号311:sSN1250、配列番号312:sSN1251、配列番号313:sSN1245、配列番号314:sSN1246、配列番号315:sSN1243、配列番号316:sSN1244、配列番号317:sucAqpcrF、配列番号318:sucAqpcrR、配列番号319:arcART1、配列番号320:arcART2、配列番号321:sfcRT1、配列番号322:sfcRT2、配列番号323:maeBRT1、配列番号324:maeBRT2、配列番号325:nuoqpcrF、配列番号326:nuoqpcrR、配列番号327:ndhRT1、配列番号328:ndhRT2、配列番号329:frdART1、配列番号330:frdART2、配列番号331:fnrRT1、配列番号332:fnrRT2、配列番号333:cyoRT1、配列番号334:cyoRT2、配列番号335:cydART1、配列番号336:cydART2、配列番号337:pykFRT1、配列番号338:pykFRT2、配列番号339:mqoRT1、配列番号340:mqoRT2、配列番号341:craRT1、配列番号342:craRT2、配列番号343:gcdRT1、配列番号344:gcdRT2、配列番号345:adhEqpcrF、配列番号346:adhEqpcrR、配列番号347:poxBRT1、配列番号348:poxBRT2、配列番号349:acsRT1、配列番号350:acsRT2、配列番号351:glkqpcrF、配列番号352:glkqpcrR、配列番号353:pfkBRT1、配列番号354:pfkBRT2、配列番号355:fbpqpcrF、配列番号356:fbpqpcrR、配列番号357:fbaAqpcrF、配列番号358:fbaAqpcrR、配列番号359:fbaBRT1、配列番号360:fbaBRT2、配列番号361:pgkqpcrF、配列番号362:pgkqpcrR、配列番号363:gpmART1、配列番号364:gpmART2、配列番号365:gpmBRT1、配列番号366:gpmBRT2、配列番号367:gpmIRT1、配列番号368:gpmIRT2、配列番号369:pykART1、配列番号370:pykART2、配列番号371:gntKRT1、配列番号372:gntKRT2、配列番号373:pglRT1、配列番号374:pglRT2、配列番号375:eddRT1、配列番号376:eddRT2、配列番号377:edaqpcrF、配列番号378:edaqpcrR、配列番号379:rpiART1、配列番号380:rpiART2、配列番号381:rpiBRT1、配列番号382:rpiBRT2、配列番号383:tktART1、配列番号384:tktART2、配列番号385:tktBRT1、配列番号386:tktBRT2、配列番号387:talART1、配列番号388:talART2、配列番号389:talBRT1、配列番号390:talBRT2、配列番号391:rpeRT1、配列番号392:rpeRT2、配列番号393:acnAqpcrF、配列番号394:acnAqpcrR、配列番号395:acnBqpcrF、配列番号396:acnBqpcrR、配列番号397:sucCRT1、配列番号398:sucCRT2、配列番号399:fumART1、配列番号400:fumART2、配列番号401:fumBRT1、配列番号402:fumBRT2、配列番号403:fumCRT1、配列番号404:fumCRT2、配列番号405:aceBRT1、配列番号406:aceBRT2、配列番号407:glcBRT1、配列番号408:glcBRT2、配列番号409:mlcRT1、配列番号410:mlcRT2
〔実施例3〕
trcPTベクターの評価
作成したtrcPTベクターが予想通り機能しているかどうか調べるために、野生型細胞をtrcPTベクターで形質転換し、IPTGを含む培地で培養し(つまり末端対合型アンチセンスRNAを発現させ)、標的遺伝子をサイレンシングした。そして、以下のようにしてベクターを評価した。
aceEicdsdhCをサイレンシングするtrcPTベクターでは、形質転換体をM9最小培地+グルコース(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+コハク酸(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+ピルビン酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)、M9最小培地+酢酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)の各寒天培地上に塗布し、生育を観察した。その結果を図26に示す。図26に記載のように、過去の研究から予想される通りの糖資化性を示したことから、これらのtrcPTベクターは満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすと結論された。
gltAatpFenoidnKをサイレンシングするtrcPTベクターでは、上記同様に形質転換体を寒天培地上に塗布し、生育を観察した。すると図27のような結果になった。そこで、これらの生育の結果が、trcPTベクターによって特異的に引き起こされているか(非特異的なオフ・ターゲット効果によるものでないか)を知るために、サイレンシングされた遺伝子の過剰発現により、生育が元どおりに回復されるかを観察することとした。そのために以下の操作を行った。まず、過剰発現用のベクターを作成するために、pTrc99aベクター(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ 社製)を鋳型として、配列表の配列番号301及び302に配列を示すプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた0.3 kbの断片はtrcプロモーターを含む。この断片をNsiIとSpeIで消化し、pHN678(Nakashima et al., Nucleic Acids Res. (2006)34:e138)のNsiI/SpeI部位に導入した。できたベクターをpHN1343と名前を付けた。pHN1343はtrcプロモーターとその下流にマルチクローニング部位とrrnB遺伝子由来ターミネーターを持つ。さらに、pHN1343はpACYC184由来のoriとクロラムフェニコール耐性遺伝子を持つことから、pSC101由来のoriとカナマイシン耐性遺伝子を持つpHN1257及びその派生ベクターと共導入が可能である。次いで、gltAatpFenoidnKの全長を配列表の配列番号303〜310に配列を示すプライマーを用いて、大腸菌ゲノムDNAからPCRでそれぞれ増幅し、増幅した断片をgltAではPciIとSpeI、それ以外ではNcoIとSpeIで切断し、pHN1343のNcoI/SpeI部位にライゲーションした。これによって作成されたベクターを当該trcPTベクターと共に野生型細胞に導入し、上記同様に寒天培地上での生育を観察した。すると、gltAatpFでは、コハク酸最小培地上での生育、enoではグルコース最小培地上での生育、idnKではグルコース最小培地とコハク酸最小培地上での生育が回復した。よって、これらのtrcPTベクターは、特異的に標的遺伝子をサイレンシングしており、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすと結論された。
pflBをサイレンシングするtrcPTベクターでは、本発明者らが以前に報告した(Nakashima et al., Nucleic Acids Res. (2006)34:e138)、標的遺伝子とレポーター遺伝子との融合遺伝子を用いたレポーターアッセイによって評価することとした。まず、野生型大腸菌株のゲノムを鋳型として、配列表の配列番号311及び312に配列を示すプライマーを用いて、PCRによるDNAの増幅を行った。得られた2.3 kbの断片はpflBプロモーターとpflBのORF全てを含むが、終止コドンを欠く。この断片をBamHIで消化し、pHN1304R(Nakashima et al., Methods Mol. Biol. (2012)815: 307-)のSnaBI/BamHI部位に導入した。できたベクターにpHN1307と名前を付けた。pHN1307は、pflBプロモーター下流に、pflBと赤色蛍光タンパク質をコードするDsRed遺伝子が融合した遺伝子を持ち、さらに下流にrrnB遺伝子由来ターミネーターを持つ。さらに、pHN1307はpACYC184由来の自律複製起点(ori)とクロラムフェニコール耐性遺伝子を持つことから、pSC101由来のoriとカナマイシン耐性遺伝子を持つpHN1257及びその派生ベクターと共導入が可能である。pHN1307を、pflBに対するtrcPTベクターであるpHN1312と野生型細胞に共導入し、1 mM IPTG存在下で中期対数増殖期まで培養した。そして、その培養液50μLを黒いポリスチレン製96ウェルプレート(Corning Costar, Corning, N.Y.; product no. 3915)に入れ、532 nm励起波長、580 nm蛍光波長によって赤色蛍光を観察した。コントロールとして、DsRed遺伝子を含まないpHN1304L(Nakashima et al., Methods Mol. Biol. (2012)815: 307-)とpHN1312を共共導入した野生型細胞と、pHN1304RとpHN1257を共導入した野生型細胞でも同様の操作を行った。すると、pHN1304RとpHN1307を共に持つ細胞では、pHN1304LとpHN1312を共導入した細胞とほとんど赤色蛍光の強度に差がなかったが、pHN1304RとpHN1257を持つ細胞では、強い赤色蛍光が観察された。よって、pflBのtrcPTベクターは、特異的に標的遺伝子をサイレンシングしており、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすと結論された。
生育に必須な遺伝子であると考えられているgapaccAのtrcPTベクターについては(Biochemistry (2007) 46: 12501-)、サイレンシングすると、M9最小培地+グルコース(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+コハク酸(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+ピルビン酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)、M9最小培地+酢酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)、LB+ IPTG(1 mM)の寒天培地上全てでほとんど生育が見られなくなったことから(図28)、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすと結論された。fbaApgkenoも生育に必須な遺伝子であると考えられているが(Biochemistry (2007) 46: 12501-)、本実験のサイレンシングでは、用いる培地によって生育したり、しなかったりした。詳細な結果は後述する。
pfkAptsGpgiについては、過去文献により(EMBO J. (2001) 20: 3587-)欠損すると炭素カタボライト抑制機構が失われることが報告されている。そこで、これらのtrcPTベクターを持つ野生型細胞を、グルコース1%とIPTG 1mMを含む液体LB培地で中期対数増殖期まで培養し、粗抽出液中のベータガラクトシダーゼの活性を測定した。コントロールとして、pHN1257を持つ野生型細胞でも同様の測定をした。測定方法は本発明者らの発表済みの文献に準じた(Nakashima et al., Methods Mol. Biol. (2012)815: 307-)。すると、pHN1257を持つ細胞では、炭素カタボライト抑制機構が機能していることにより、ベータガラクトシダーゼの活性はほとんど認められなかったのに対し、この3つの遺伝子のtrcPTベクターを持つ細胞では高いベータガラクトシダーゼの活性が見られた。つまり、炭素カタボライト抑制機構が失われていた。このことから、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすと結論された。
ptazwfmdhldhAackAtpiAgndpckAaceAについては、それらのコードするタンパク質の酵素活性を直接知ることができることから、酵素活性をサイレンシング前と後で比較することで、評価することとした。測定は、Ptaタンパク質とAckAタンパク質については本発明者らがすでに報告している方法で(Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103)、それ以外のタンパク質に関してはPengとShimizuによる方法で(Peng and Shimizu, Appl. Microbiol. Biotechnol. (2003) 61: 163-)行った。結果は図24−1〜24−3と図25−1及び25−2に示してある。pckAaceAに関しては、図25−1及び25−2に記した最初に構築したtrcPTベクターではサイレンシング効率が低かったため、ベクターの再構築を行い、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすものを作成した。
残りの49遺伝子については、定量PCR法による標的mRNAの定量によって評価を行った。これは、遺伝子サイレンシングが起こると、サイレンシングされた遺伝子のタンパク質だけでなくmRNAの量も減少することを利用した方法である(BMC Microbiol. (2006) 6: 97)。定量PCRは、Agilent (Stratagene)社製 Mx3000PとTakara社製のOne Step SYBR PrimeScript RT-PCR Kit II (Perfect Real Time)を用い、それぞれの説明書に従って行った。用いたオリゴヌクレオチドの配列は配列表の配列番号313〜410に示してある。結果は図24−1〜24−3と図25−1及び25−2に示してある。図25−1及び25−2に記したtrcPTベクターではサイレンシング効率が低かったため、ベクターの再構築を行い、満足出来るレベルにサイレンシングを引き起こすものが出来るまで再構築を繰り返した。その結果を図24−1〜24−3に示す。
上記実験で用いたアンチセンス配列は、すでに述べたように、すべて標的mRNAのリボソーム結合部位、スタートコドンを含む100塩基対前後のものであった。しかし、それであっても、図25−1及び25−2に示すように、満足できるレベルにサイレンシングを起こさなかったtrcPTベクターが多数存在していた。満足出来るサイレンシングを引き起こすベクターとそうでないベクターの比較を図5〜23に示す。その原因は、アンチセンス配列によって、アンチセンスRNAの二次構造、RNaseによる分解されやすさ、標的mRNAへの結合能力などに差があることが予想される。よって現時点で、「どのような配列のオリゴヌクレオチドのセットを用いてアンチセンス配列を増幅すると、満足出来るレベルにサイレンシングを起こすtrcPTベクターが作成されるか」を予測するのは難しく、ベクターの作成と評価を繰り返す他無い。図24−1〜24−3で示された71のオリゴヌクレオチドのセット、およびそれによって作成されるtrcPTベクターに新規性・意外性があるといえる。
〔実施例4〕
サイレンシングによる糖資化能の変化
ここに記したアンチセンス法による遺伝子サイレンシングによって、包括的に大腸菌中央代謝経路を解析する例として、サイレンシングによってどのように糖資化能が変化するかを観察した。これは、ある遺伝子の欠損による糖資化能の変化が予めわかっていれば、その遺伝子欠損株を宿主とした物質生産の際に、必要になる炭素源を予測することが出来る、などの長所があるからである。
上述のように構築・評価したtrcPTベクター71個と、コントロールのpHN1257で野生型大腸菌を形質転換し、それらをM9最小培地+グルコース(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+コハク酸(10 g/L)+IPTG(1 mM)、M9最小培地+ピルビン酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)、M9最小培地+酢酸(10 g/L)+ IPTG(1 mM)の寒天培地上にストリークし、生育を観察した。その結果を図29−1〜29−3に示す。gapaccAaceEicdsdhCsucAnuomdhsucCサイレンシングの結果は、過去の遺伝子欠損株による結果とよく一致するが(Biochemistry (2007) 46: 12501-、Microbiology (2001) 147: 1483-、Microbiology (1997) 143: 1837-、J. Biol. Chem. (1972) 247: 6323-、J. Gen. Micobiol. (1972) 99: 263-、Mol. Syst. Biol. (2006) 2: 2006.0008、Biochem. Eng. J. (2006) 30: 286-296)、fbaApgkenoppsAppcgltAtpiAではあまり一致しなかった(J. Bacteriol. (2005) 182: 6892-、Biochemistry (2007) 46: 12501-)。
遺伝子欠損に伴う糖資化能の変化は、欠損した遺伝子の機能から類推が可能な場合と、そうでない場合がある。また、遺伝子によっては過去文献で、糖資化能の変化を解析した結果が公開されており、そこで情報を知ることも可能である。しかし、文献によって用いた菌株の遺伝学的背景が異なっていたり、培地成分や培養条件が異なっていたりし、画一的条件下で比較した情報を得ることが難しい。よって、この実施例のように中央代謝経路に関して包括的に解析する方法を提供していれば、誰でも簡単に画一的な条件下での糖資化能に関する情報を取り出すことが出来る。少数個遺伝子のサイレンシング解析しかできない場合に比べても、取り出せる情報量が圧倒的に多く、遺伝子間の相互作用を理解するためには(特に代謝経路の遠位にある遺伝子間の場合)、情報量が多い必要性がある。また、本実験に類する、遺伝子破壊株ライブラリーを用いて、糖資化能の変化を包括解析した例も存在する(Mol. Syst. Biol. (2006) 2: 2006.0008)。しかし、遺伝子破壊株ライブラリーでは、菌株の遺伝学的背景を変更して実験を再度行なうことは非常に困難である。その点、本発明の方法では可動性のプラスミドを用いていることから、任意の菌株について適用できることに利点がある。
〔実施例5〕
サイレンシングによるグルコース代謝経路の変化
実施例2及び3で構築・評価したtrcPTベクター71個(図24−1〜24−3)と、コントロールのpHN1257で野生型大腸菌を形質転換し、それらをM9最小培地+グルコース(20 g/L)+IPTG(1 mM)からなる液体培地で24時間培養した。そして、培地中に存在する有機酸を高速液体クロマトグラフィーによって解析した。高速液体クロマトグラフィーでは、Cationic Exchange Column Aminex HPX-87HとMicro-Guard Golumn, Aminex 85H (共にBio-Rad Labs, Richmond, CA 社製)を用いた。解析条件は、4 mM H2SO4の溶媒相、流速0.5 mL/min、カラム温度45℃で、糖はrefractive index indicator、有機酸は UV indicator (210 nm 波長)で検出した。結果を図30−1〜30−5に示す。
ピルビン酸について、aceEadhEpflBppsApoxBをサイレンシングすると高蓄積していた。これらは、ピルビン酸を直接代謝する酵素群をコードしていることから(図1及び2)、それらの機能不全により、ピルビン酸が代謝されなくなった結果、蓄積したと容易に想像がつくし、同様の報告例もある(Causey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004) 101, 2235-)。また、ackAppcaccAのサイレンシングでもピルビン酸が高蓄積していたが、これらも過去の文献上から遺伝子欠損によってピルビン酸が高蓄積することが知られていた(Causey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004) 101, 2235-、中島信孝、田村具博 (2011)「アンチセンスRNAによる細菌での遺伝子サイレンシング」バイオサイエンスとインダストリー, 69(3), 204-)。一方で、acnAenofumAgndtktAmaeAcydAnuofbaBpgkgpmAgpmBmlcでも高蓄積していた。これらについてはこれまでの知見では予想できなかった結果で、包括的に、画一的にサイレンシングをしたことで初めて得られた情報で、個別に少数個の遺伝子を欠損あるいはサイレンシングしたところで得られる情報ではないと言える。
また、poxBaceEfumAacnAaccAnuogpmBmaeAackApgkpykApflBppcmlcgndについてより詳しく、時間を追ってどのようにピルビン酸が蓄積するかを調べた。その結果を図31−1〜31−3に示すが、本当にピルビン酸が高蓄積していることを改めて示すことが出来た。
どのように遺伝子を改変すれば、標的とする物質の生産に有利になるか、事前予想は大変困難である。従来までは、このような遺伝子改変に関する情報は、相当回数の試行錯誤によってのみ得られるものであった。しかし、本発明の71個のtrcPTベクターを用いて、包括的にサイレンシングすることによって、予想することが難しい、遺伝子改変に関する新しい情報を得ることが出来る事ができることが示された。また、それによって試行錯誤の回数を大幅に減らすことが出来ると考えられる。
〔実施例6〕
二重サイレンシングによるピルビン酸の蓄積
実施例5において調べた遺伝子のうち、poxBaceEnuoacnAについて二重サイレンシングによって、単独サイレンシングに比して、ピルビン酸蓄積に効果があるか調べた。まず、二重サイレンシングに必要なベクターを以下のように作成した。
pHN678をPstIで切断し、生じた2.8 kbの断片を精製し、リガーゼ反応によって自己閉環化した。出来たベクターにpHN1464と名付けた。pHN1464はpACYC184由来のoriとクロラムフェニコール耐性遺伝子を持つことから、pSC101由来のoriとカナマイシン耐性遺伝子を持つpHN1257及びその派生ベクターと共導入が可能である。pHN1464は、pHN1257と同様にtrcPTベクターであるが、pHN1257とは違い、lacI q 遺伝子を持たない。次いで、pHN1464のNcoI/XhoI部位に、図24−1〜図24−3に記載したオリゴヌクレオチドを用いてaceEnuoacnAのアンチセンス配列を増幅したものを、実施例2同様にライゲーションした。完成したベクターには、それぞれpHN1475、pHN1918、pHN1905と名付けた。
野生型株をpSM66とpHN1464、pSM8とpHN1464、pSM9とpHN1464、pSM52とpHN1464、pSM66とpHN1475、pSM66とpHN1918、pSM66とpHN1905、pSM8とpHN1918、pSM8とpHN1905、pSM9とpHM1905で共形質転換した。その結果を図32−1及び32−2に示す。その結果、poxBaceEを二重サイレンシングすると、最も多くピルビン酸が蓄積することが分かった。
実施例5では、包括解析から得られた情報を元に、遺伝子改変する遺伝子を絞込んだ。本実施例では、その絞込み情報を元にさらなる多重遺伝子改変を施し、よりピルビン酸生産に適した株を作成するための遺伝子改変情報を得ることが出来た。
同時多重のサイレンシングは本発明者らの過去の発表で公知である(Nakashima and Tamura, Nucleic Acids Res. (2009) 37:e103)。その発表においては、1つの大腸菌細胞内に同時に保持させ、同時多重サイレンシングをするための、それぞれ異なる自律複製起点と薬剤耐性マーカーを持つ4つのtrcPTベクターについて述べた。それらベクターの名称はpHN678、pHN1009、pHN1257、pHN1270であり、うちpHN1257が、本発明の実施例1から5に利用されたものである。しかし、これら4つのベクターには全てlacI q が存在していたため、共形質転換した場合、lacI q があまりに過剰に存在してしまうと予想され、lacI q 遺伝子産物によって抑制されるtrcプロモーターからの発現に悪い影響を及ぼすと考えられる。そこで、本実施例ではlacI q 遺伝子を欠いたpHN1464を新規に作成し、二重サイレンシングに供している。
さらに、二重サイレンシングの利便性を高めるために、pHN1464の場合と同様に、pHN1009、pHN1257、pHN1270からlacI q を除いたベクターpHN1476、pHN1465、pHN1928もそれぞれ以下のように作成した。pHN1009をNheIPstIで切断後、長い方の断片を精製し、T4 DNA polymeras(東洋紡社製)によって末端を平滑化した。それをT4 DNA ligaseで連結し、pHN1476を得た。pHN1257をNsiIで切断し、生じた長い方の断片を精製した。これをリガーゼ反応によって自己閉環化し、pHN1465を得た。pHN1270をHpaIとPstIで切断後、長い方の断片を精製し、T4 DNA polymeras(東洋紡社製)によって末端を平滑化した。それをT4 DNA ligaseで連結し、pHN1928を得た。
配列番号1〜410 合成

Claims (7)

  1. 大腸菌の中央代謝経路を解析するために、該中央代謝経路に関与する以下の71の遺伝子のすべてをサイレンシングするための、配列番号1〜71それぞれで示される核酸配列からなるDNAをそれぞれ含み、71の遺伝子に対するアンチセンスRNAをそれぞれ発現する71個すべてのアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット:ppsAppcptasucAgltAzwfarcAaceEmaeAmaeBgapnuondhmdhfrdAfnrcyopfkAcydAicdpykFmqosdhCaccAatpFcragcdpflBldhAadhEackApoxBacsglkptsGpgipfkBfbpfbaAfbaBtpiApgkgpmAgpmBgpmIenopykAgntKidnKpgleddedagndrpiArpiBtktAtktBtalAtalBrpeacnAacnBsucCfumAfumBfumCpckAaceAaceBglcB、及びmlc
  2. さらに、trcプロモーターを含み、該プロモーターがアンチセンスRNAをコードするDNAに機能的に連結されている、請求項1記載の71個すべてのアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット。
  3. さらに、lacI q 遺伝子を有し、該遺伝子がアンチセンスRNAをコードするDNAに機能的に連結されている、請求項2記載の71個すべてのアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセット。
  4. 大腸菌の中央代謝経路を解析するために、該中央代謝経路に関与する以下の71の遺伝子のすべてをサイレンシングするためのアンチセンスRNAをコードする、配列番号1〜71それぞれで示される核酸配列からなるDNAからなる71個すべてのポリヌクレオチドのセット:ppsAppcptasucAgltAzwfarcAaceEmaeAmaeBgapnuondhmdhfrdAfnrcyopfkAcydAicdpykFmqosdhCaccAatpFcragcdpflBldhAadhEackApoxBacsglkptsGpgipfkBfbpfbaAfbaBtpiApgkgpmAgpmBgpmIenopykAgntKidnKpgleddedagndrpiArpiBtktAtktBtalAtalBrpeacnAacnBsucCfumAfumBfumCpckAaceAaceBglcB、及びmlc
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の71個すべてのアンチセンスRNA発現ベクターからなるアンチセンスRNA発現ベクターのセットを用いて、大腸菌の中央代謝経路に関与する71個の遺伝子のすべてをサイレンシングし、大腸菌の中央代謝経路を解析する方法。
  6. 大腸菌の中央代謝経路の解析が、大腸菌において有用物質である代謝産物を蓄積させるためにサイレンシングさせる遺伝子の選択である、請求項5記載の大腸菌の中央代謝経路を解析する方法。
  7. 有用物質である代謝産物が、ピルビン酸、フマル酸、酢酸又はグルコースである、請求項6記載の大腸菌の中央代謝経路を解析する方法。
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