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JP6004331B2 - 加工セルロースエアロゲルおよびその製造方法、ならびに復元セルロースハイドロゲルの製造方法 - Google Patents
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JP6004331B2 - 加工セルロースエアロゲルおよびその製造方法、ならびに復元セルロースハイドロゲルの製造方法 - Google Patents

加工セルロースエアロゲルおよびその製造方法、ならびに復元セルロースハイドロゲルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加工セルロースエアロゲルおよびその製造方法、ならびに復元セルロースハイドロゲルの製造方法に関する。
セルロース繊維を含むエアロゲルおよびハイドロゲル(以下「セルロースエアロゲル」および「セルロースハイドロゲル」ともいう)は、工業材料、医療用材料、食用材料として注目を集めている。セルロースハイドロゲルはセルロース繊維の三次元ネットワーク構造中のポア(空孔)に水を保持してなるゲルであり、この水を空気で置換することによりセルロースエアロゲルが得られる。さらに、当該エアロゲル中の空気を再び水で置換すると、セルロースハイドロゲルとなる。
例えば特許文献1には、バクテリアから産生されるセルロースからなるバクテリアセルロースのハイドロゲルを乾燥して得たエアロゲルを用いた成形材料が開示されている。また、特許文献2にはバクテリアセルロースハイドロゲルを用いた複合材料が開示されている。
特開昭62−36467号公報 特開2006−241450号公報
前述のとおりセルロースハイドロゲルは水を含んでいるため重く、輸送する際のコストが嵩む。そこでコストを低減させるために、セルロースハイドロゲルを乾燥してセルロースエアロゲルとして輸送し、使用する場所でセルロースハイドロゲルに復元することが提案されている。しかしながら、従来のセルロースエアロゲルでは、セルロースハイドロゲルへの復元性が十分ではなく、復元に労力や時間がかかるという作業上の問題や、水が浸透しない白残り部分が生じる等の外観上の問題が生じていた。上記を鑑み、本発明は、復元性に優れるセルロースエアロゲルを提供することを課題とする。
発明者らは課題解決について検討を重ねた結果、セルロースエアロゲルには繊維密度が高い部分があり、当該部分に水が浸透しにくいことが原因であるとの知見を得た。そして、当該箇所に特殊な加工を施すことで前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
[1](A)セルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、
前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ最外層の一つが前記第2エアロゲル層である、セルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
(B)前記最外層を構成する第2エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
[2](A1)セルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されているセルロースエアロゲルを加工して、
前記第2エアロゲル層からなる1層セルロースエアロゲル、または前記第2エアロゲル層が最外層である2層以上のセルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
(B1)1層セルロースエアロゲル表面、または2層以上のセルロースエアロゲルの前記最外層を構成する第2エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
[3](A2)空気相に存在する空気相培地部分を備える培地にてセルロース産生菌を培養して得たセルロースハイドロゲルから製造され、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する略立方体または略直方体の1層セルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
(B2)前記表面に、下記式で定義される深さx:
0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
[4] (A3)セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造される略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、
空気相培地部分由来のセルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層、および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い、液相培地部分由来の第2エアロゲル層を備え、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ
最外層の一つが、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する前記第1エアロゲル層であるセルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
(B3)前記最外層を構成する第1エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法で得られる、加工セルロースエアロゲル。
[6]前記[5]に記載のセルロースエアロゲルを、0〜100℃において吸水させることを含む、復元セルロースハイドロゲルの製造方法。
本発明により復元性に優れるエアロゲルが提供できる。
セルロースエアロゲルの概要図 加工方法を示す図 加工方法を示す図 セルロースエアロゲルのSEM像 実施例1と比較例1の結果を示す図 実施例2と比較例2の結果を示す図 実施例3と比較例3の結果を示す図 実施例4で得た多層セルロースエアロゲル表面のSEM像 実施例4で得た多層セルロースエアロゲル切断面のSEM像
以下、本発明を詳細に説明する。本発明には、セルロースエアロゲルの第2エアロゲル層に加工を施す場合(「第1の方法」ともいう)と、セルロース産生菌を培養して得たセルロースエアロゲルの気相培地由来の層に加工を施す場合(「第2の方法」ともいう)が存在する。以下、説明を簡略にするため両者を分けて説明する。本発明において「〜」はその両端の値を含む。
I.第1の方法
1.加工エアロゲルの製造方法
1−1.工程A
工程Aでは、セルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、各層は、主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように積層されており、かつ最外層の一つが前記第2エアロゲル層であるセルロースエアロゲルを準備する。
(1)セルロースエアロゲル
セルロースエアロゲルはセルロース繊維の三次元ネットワーク構造中のポア(空孔)に空気を保持してなるゲルである。本発明で使用するセルロースエアロゲルの例を図1に示す。図1(a)は2層セルロースエアロゲル、図1(b)多層セルロースエアロゲルであり、10は第1エアロゲル層、20は第2エアロゲル層である。本発明においては、3層以上を多層という。図に示すとおり、各層の主面は、略立方体または略直方体の底面に略平行である。略平行とは、平行または平行に準ずる状態をいう。主面とは、各層の主たる面であり、他の層が積層される面である。
1)第1エアロゲル層、第2エアロゲル層
第1エアロゲル層は、第2エアロゲル層に比べて繊維密度が低い層である。層の特定は、セルロースエアロゲルを電子顕微鏡等で観察してポア径を測定することにより可能である。ポア径が大きい層が第1エアロゲル層、ポア径の小さい層が第2エアロゲル層である。あるいは、セルロースエアロゲルに水を吸収させてセルロースハイドロゲルとした場合に生じる透明度の違いによって層を特定できる。この場合、透明度の高い層が第1エアロゲル層由来の層であり、透明度の低い層が第2エアロゲル層由来の層である。
第1エアロゲル層と第2エアロゲル層とは、相対的に繊維密度に差があればよく、その程度は特に限定されない。しかしながら、第1エアロゲル層の平均ポア径:第2エアロゲル層の平均ポア径の組合せは、i)0.6〜1.0μm:0.1〜0.6μm、ii)0.2〜0.5μm:0.1〜0.3μm、iii)0.9〜5μm:0.3〜0.9μmが好ましい。i)のようなセルロースエアロゲルは、市販の2層セルロースハイドロゲルから入手でき、ii)のようなセルロースエアロゲルは市販の多層セルロースハイドロゲルから入手できる。また、iii)のようなセルロースエアロゲルは、後述するような特定の温度範囲でセルロース産生バクテリアを培養することにより得られるセルロースハイドロゲルから入手できる。iii)における前記組合せは、0.9〜5μm:0.6〜0.9μmがより好ましい。
上記組合せにおいて、例えばi)0.6〜1.0μm:0.1〜0.6μmのように、表記上は0.6μmが重複する。しかし、第1エアロゲル層の平均ポア径は常に第2エアロゲル層の平均ポア径よりも大きく、前記表記は、両者の値が同じになることは意味しない。以下の平均繊維束間距離についても同様である。
平均ポア径は、次のようにして測定される。1)セルロースエアロゲルの表面を電子顕微鏡等で観察した際に認められるポア(空孔)の径を測定する。ポアが円でない場合は、長径と短径を測定し、その平均をポア径とする。2)複数のポアについてポア径を測定し、平均する。
また、エアロゲル層における繊維密度は、以下のように測定される平均繊維束間距離によっても影響を受ける。通常セルロースハイドロゲルは、まず薄いシート状のセルロースハイドロゲルが産生され、次いで当該シート状のゲルが積層されてある程度の大きさのセルロースハイドロゲルが形成される。前述のとおりセルロース産生バクテリアを用いてセルロースハイドロゲルを製造する場合、通常、前記シート状のゲルは液面に平行に液相側に積層される。よって、セルロースハイドロゲル中にはセルロースの繊維が寄り集まった繊維束が層状に存在する。当該繊維束同士の最短距離を繊維束間距離といい、複数の繊維束について繊維束間距離を測定し平均したものを平均繊維束間距離という。平均繊維束間距離は繊維密度の指標となり、平均繊維束間距離が大きいほど繊維密度は小さくなる。第1エアロゲル層と第2エアロゲル層とにおける平均繊維束間距離は、前記i)の場合は、5〜10μm:3〜5μm、ii)の場合は3.5〜5μm:3〜4μm、iii)の場合は3.5〜5μm:0.1μm以上3μm未満が好ましい。平均繊維束間距離は、次のようにして測定される。1)カッター等を用いてセルロースエアロゲルを積層面に垂直に切断する。2)切断面を電子顕微鏡等で観察して、層状に存在する繊維束同士の層間の最短距離を測定する。3)複数の繊維束について前記距離を測定し平均する。
この他、繊維密度はセルロースハイドロゲル単位質量あたりの乾燥質量Rを算出する、乾燥質量法でも評価できる。具体的にR(%)はD/W×100で定義される。Dはハイドロゲル乾燥時の質量であり、Wはハイドロゲルの飽和吸水時の質量である。ハイドロゲル乾燥時とは、ハイドロゲルが完全に乾燥されエアロゲルになっている状態である。飽和吸水時とは、常態(室温、大気圧下)でゲルを吸水させた際に吸水量が飽和する時点である。Dを第1エアロゲル層の乾燥時の質量D1とし、Wを第1エアロゲル層を飽和吸水させた質量W1とすれば、第1エアロゲル層のR、すなわちR1が求められる。同様に、第2エアロゲル層のR、すなわちR2も求められる。
具体的なWおよびDの求め方について、W1およびD1を求める場合を例に説明する。
1)前述の方法により第1エアロゲル層および第2エアロゲル層を特定する。
2)第1エアロゲル層から試料を採取する。
3)当該試料を室温にて水に1晩侵漬した後、質量を秤量し飽和吸水時質量W1を求める。
4)前記3)で得た試料を乾燥した後、質量を秤量して乾燥時質量D1を求める。
秤量は、精密天秤を用いて、0.1mgのオーダーまで測定することが好ましい。乾燥は、熱風乾燥、凍結乾燥、または自然乾燥等により行なってよいが、乾燥効率を考慮すると熱風乾燥が好ましい。第1エアロゲル層と第2エアロゲル層を分割する場合には、ゲルをつぶさないようにカッター等を用いて切断することが好ましい。
Rが大きい方が第2エアロゲル層(高密度層)であり、小さい方が第1エアロゲル層(低密度層)である。
好ましいR1:R2は、
前記i)の場合、「0.1以上0.42未満」:「0.42〜1.5」
前記ii)の場合、「0.34以上0.50未満」:「0.50〜1.5」
前記iii)の場合、「0.05以上0.50未満」:「0.50〜1.2」
である。
本発明で用いる多層セルロースエアロゲルは、最外層のうち1つが第2エアロゲル層である。最外層の1つを繊維密度の高い第2エアロゲル層とすることで、セルロースエアロゲルの強度を高めることができ、また、復元セルロースハイドロゲルとした時の形状安定性も高められる。
2)形状、寸法
本発明で用いるセルロースエアロゲルは略立方体または略直方体である。略立方体とは立方体に準じる形状である。例えば、略立方体は、面と面とがなす角度が直角からややずれている、または丸みを帯びている形状や、各辺が略平行であるような形状を含む。略直方体についても同様である。略直方体とは、一辺の長さが他の辺よりも短い板状の形状も含む。板状とはバクテリアを培養して得られる前述のシートより厚く、当該シートとは異なる。
本発明で用いるセルロースエアロゲルの寸法は、特に限定されないが、取扱性等を考慮すると、一辺の長さが0.5〜2.0cmであることが好ましく、1.0〜1.8cmであることがより好ましい。
(2)セルロースエアロゲルの調製
セルロースエアロゲルは、セルロースハイドロゲルを準備して、これを乾燥させることで調製することが好ましい。以下、調製方法について説明する。
1)セルロースハイドロゲル
セルロースハイドロゲルはセルロース繊維の三次元ネットワーク構造中のポアに水を保持してなるゲルである。セルロースハイドロゲルとして、図1に示す構造と同様の構造を有するものを選択すればよい。図1(a)と同じ構造を有するセルロースハイドロゲルは、セルロース産生菌を、液相中に存在する液相培地部分と空気相に存在する空気相培地部分とを備える培地にて培養して、液相培地部分由来の繊維密度の低い第1ハイドロゲル層および空気相培地由来の繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を形成して製造できる。酢酸菌は好気性菌であるので、空気相培地においてセルロースを盛んに産生する。このため空気相培地においては繊維密度の高い層が得られる。通常、ゲルは鉛直下方向(液相培地方向)へ伸長して厚みが増していくが、液相培地においては、酸素濃度が低い、培養するにつれて老廃物がたまり栄養分が乏しくなる等の理由から菌の活性および増殖が低下する。よって液相培地においては繊維密度の低い層が得られる。さらに、空気相培地は水分が乏しいので産生されたセルロース繊維同士間に水があまり存在しない。このためセルロース繊維同士間の距離が短くなり、結果として得られる層の繊維密度はより高くなる。逆に、水分に富む液相培地では、繊維密度のより低い層が形成される。セルロース産生菌としては、公知のものを使用できるが、例えば、ATCC23769、ATCC10245、ATCC35959、ATCC10821、ATCC700178、Acetobacter xylinum FF-88 (FERM BP-4407)の菌株を使用できる。培地も公知のもの、例えば、寒天状の固体培地や液体培地(培養液)等を使用できる。培養液としては、コーンスティープリカーおよび果糖を主成分とし、pHを5程度に調整した培養液等が挙げられる。また、培養は静置培養であることが好ましい。
培養後の培地に公知の後処理を施すことでセルロースハイドロゲルとできる。例えば、産生物を培地から取り出した後、水洗、アルカリ処理によりバクテリアを除去することにより、セルロースハイドロゲルを得ることができる。このようにして製造されたセルロースハイドロゲルとしては、株式会社フジッコ製「フジッコナタデココ」、株式会社たらみ製「おいしい果汁のゼロカロリーゼリー」、和歌山産業株式会社製「生菓子(ナタデココ)」等が挙げられる。このセルロースハイドロゲルからは、前記i)の平均ポア径、切断面平均層間距離、およびRの組合せを有するセルロースエアロゲルが調製できる。
また、図1(b)と同じ構造を有するセルロースハイドロゲルは、セルロース産生菌を、23〜40℃で培養して繊維密度の低い第1ハイドロゲル層を形成する高温培養、セルロース産生菌を10℃以上23℃未満で培養して繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を形成する低温培養を交互に繰り返して製造できる。高温(23〜40℃)で培養することにより、セルロース産生菌がセルロースハイドロゲルを産生する。温度設定の容易さ、コスト等を考慮すると、当該培養温度は、23〜33℃が好ましく、25〜32℃がより好ましく、26〜31℃がさらに好ましい。また培養時間は所望の層の厚さを得るために適宜調整してよいが、12時間〜60日が好ましく、3日〜22日が好ましく、4日〜10日がより好ましい。この際、培養は静置培養であることが好ましい。
低温(10℃以上23℃未満)でセルロース産生菌を培養することで前記第1ハイドロゲル層よりも繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を形成する。一般に、温度が高い方がバクテリアの活性が高くなるので、得られる層の繊維密度も高くなると考えられるが、この方法においては、低い温度で培養することにより、繊維密度の低い層を得る。この理由は限定されないが、次のように考えられる。一般に、セルロース産生菌を培養すると、菌はセルロースを吐き出しながらランダムに運動する。培養温度が適温の場合には菌は活発に運動し、かつ増殖する。このため、産生されるセルロース繊維の量は多いが、菌の移動距離も大きいので単位体積あたりの繊維密度が低くなり低繊維密度層が得られる。しかし培養温度が低い場合には菌の運動性が低下するため、菌の行動範囲が狭まり、菌は位置をあまり変えずに増殖する。このため、一定の限られた場所で菌が増殖し、かつセルロースを産生するので、単位体積あたりの繊維密度が高くなり高繊維密度層が得られる。
また、10℃以上23℃未満という低温で培養することにより、酢酸菌の活性は低下しないが他の菌の活性が低下するので、ゲル中の不純物を少なくできる、または培地が腐食しにくくなる等の利点がある。
これらの効果をより効率よく発現するために、低温培養における培養温度は15〜20℃が好ましく、17〜19℃がより好ましい。培養時間は高温培養で述べたとおりである。
高温培養と低温培養を交互に行なうことで、第1ハイドロゲル層と第2ハイドロゲル層が交互に積層された構造となる。効率よく製造するために高温培養と低温培養とは、連続して行うことが好ましい。また、得られるセルロースハイドロゲルの最外層が繊維密度の高い第2ハイドロゲル層であると、ゲルの強度、形状安定性が良好となるので、低温培養を最初に行ない、その後、両方の培養を繰り返し、最後に低温培養を実施することがより好ましい。
この方法においては、第1ハイドロゲル層および第2ハイドロゲル層の厚みを所望のとおりに制御できる。一般に、各層の厚みは、1〜8mmが好ましく、2〜4mmがより好ましい。このセルロースハイドロゲルからは、前記iii)の平均ポア径、切断面平均層間距離、およびRの組合せを有するセルロースエアロゲルが調製できる。
また、図1(b)と同じ構造を有するセルロースハイドロゲルは、ミニストップ株式会社製「ハロハロ」に含まれるナタデココ、株式会社ドール「ナタデココシラップづけ(ライト)」として入手できる。これらの市販のセルロースハイドロゲルは、異なる温度での培養を繰り返すことで製造できるが、前述の方法とは培養温度の点で異なる。すなわち、これらの市販の多層セルロースハイドロゲルは、タイやフィリピン等の東南アジア地域において自然環境下において製造される。この際、昼間の高温(29〜32℃)培養においてバクテリアが高活性となり繊維密度の高い層が産生され、夜間(24〜25℃)の低温培養においてバクテリアが低活性となり繊維密度の低い層が産生される。このセルロースハイドロゲルからは、前記ii)の平均ポア径、切断面平均層間距離、およびRの組合せを有するセルロースエアロゲルが調製できる。
このような多層セルロースハイドロゲルは、層間または層中を切断して最外層が第2ハイドロゲル層となるように成形してもよい。
2)乾燥前処理
前述のとおり、セルロースハイドロゲルを乾燥するとセルロースエアロゲルが得られるが、単に乾燥させると、セルロースハイドロゲルにヒビが入る等の不具合が生じることがある。この理由は、乾燥中にセルロースハイドロゲル内部に存在する水が体積膨張を起こすことがあり、これによって生じたひずみにより、既に乾燥して強度が低下しているセルロースハイドロゲル表面が破壊されるためと考えられる。発明者らは、この不具合を解消するために、乾燥前にセルロースハイドロゲル表面を水で被覆する方法を開発している(特願2010−020455参照)。従って、本発明においても同様にして乾燥を行なうことが好ましい。
また、本発明においては、セルロースハイドロゲル表面を水で被覆する代わりに、セルロースハイドロゲルをマルトース(麦芽糖)等の二糖類を含む水溶液に浸漬してもよい。このような水溶液を用いると、乾燥時のセルロースハイドロゲルの破損を防止するだけでなく、復元セルロースハイドロゲルを得る際の復元率および食感が向上する。マルトースとは、2つのα−グルコースが、α1−4グリコシド結合で結合した二糖である。この他、二糖類としては、スクロース(ショ糖)またはラクトース(乳糖)を用いてもよい。濃度範囲は0.001〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましく、0.2〜0.3質量%がよりさらに好ましく、0.22〜0.27質量%が特に好ましい。
マルトースは、水あめに主成分として含まれているので、本発明においては、マルトースを含む水溶液として、水あめを含む水溶液を用いることが好ましい。水あめとは、主成分のマルトースの他に、ブドウ糖およびデキストリンを含む食用の甘味料である。水あめを用いると表面のつやを向上できる。水あめ水溶液の濃度は、当該水溶液に含まれるマルトースの濃度が前記範囲となるように調製される。しかしながら水あめには他の成分が含まれているので水あめの濃度が高くなるとゲル内に浸透しにくくなる。よって、この観点からは、水あめ濃度は0.01〜0.25質量%が好ましい。
また、マルトースを含む水溶液として、水あめ2〜10gとゼラチン10〜20mLを30mLの水に溶解して得た水溶液を、さらに10〜1000倍に希釈して得た水溶液を用いてもよい。ゼラチンとは、コラーゲンを水で煮沸して得られる誘導たんぱく質である。
セルロースハイドロゲルを前記水溶液に1〜24時間浸漬することで、前記水溶液がセルロースハイドロゲル中に浸透する。浸漬時の温度は室温が好ましい。
このような水溶液を用いることで復元セルロースハイドロゲルの食感および外観が向上する理由は限定されないが以下のように推察される。マルトース等の二糖類は、セルロース類似の化学構造を有し、かつ分子量も低いので、セルロースハイドロゲル内に浸透しやすい。そして二糖類は、セルロース繊維と親和性がよいので、乾燥時にもセルロース繊維間に存在する。このため、マルトースがなければ乾燥によってセルロース繊維同士が強固に結びついてしまうところ、二糖類により、セルロース繊維同士が強固に結びつくことが低減される。その結果、再び吸水させて復元セルロースハイドロゲルを得る際に、元のセルロース繊維によるネットワーク構造が再現されやすくなる。さらに二糖類をセルロースハイドロゲル中に浸透させる際に、本発明では比較的低い濃度の水溶液を用いる。濃度が低いので毛細管現象が生じやすく二糖類をセルロースハイドロゲル内により一層浸透させやすくなる。
また、二糖類と併用されるゼラチンは、分子量が高いのでセルロースハイドロゲルの外郭を補強するように作用していると考えられる。しかしながら、ゼラチンも前記同様に比較的低い濃度の水溶液として用いるため、セルロースハイドロゲルを完全被膜することはないので、食感を低下させないと考えられる。
この他、二糖類を含む水溶液の代わりに寒天を含む水溶液を用いてもよい。寒天とは、紅藻類の粘液質を凍結および乾燥して得たものである。
3)乾燥
乾燥方法としては、凍結乾燥、減圧乾燥、超臨界液体乾燥、亜臨界液体乾燥が挙げられる。凍結乾燥は、水を凍結して昇華して行なう乾燥である。本発明においては、ゲルの劣化を避けるため、減圧下、50℃以下の低温において凍結乾燥することが好ましい。具体的には、15〜25Paの圧力下、−50〜−40℃の温度にて凍結乾燥することが好ましい。
減圧乾燥は、減圧下において水を除去する乾燥である。本発明においては、25Pa〜0.1MPaの圧力下、−40〜100℃の温度にて乾燥することが好ましい。
超臨界液体乾燥は、溶媒溶液を超臨界以上に加熱した後、穏やかに溶媒蒸気を系外に排出することにより乾燥させる方法である。亜臨界液体乾燥とは、溶媒溶液を、超臨界よりも温度および圧力がやや低い状態の亜臨界状態にし、溶媒蒸気を系外に排出することにより乾燥させる方法である。
本発明においては、セルロースハイドロゲル中の水をそのまま、またはエタノール、メタノール、二酸化炭素等で置換し、水またはエタノール等を超臨界液体乾燥または亜臨界液体乾燥することが好ましい。臨界温度および圧力は以下に示すとおりである。例えば、エタノールを用いる場合、6.38MPa、243℃で超臨界液体乾燥することができる。
水を置換せずにそのまま乾燥させる場合は、超臨界状態で行なうとセルロースが分解する場合があるので、亜臨界状態で行なうことが好ましい。例えば、大気圧で100℃以上、かつ22.12MPaで温度374.15℃(647.30K)以下とすることが好ましい。
二酸化炭素:304.1(K)、7.38(MPa)
水 :647.3(K)、22.12(MPa)
メタノール:512.6(K)、8.09(MPa)
エタノール:513.9(K)、6.14(MPa)
アセトン :508.1(K)、4.70(MPa)
乾燥時間は、乾燥状態により適宜調整できるが、24〜72時間程度行なうことが好ましい。
この他、セルロースハイドロゲルを被覆する代わりに、セルロースハイドロゲルの30〜50体積%を水または前記水溶液に浸漬した状態で乾燥に供してもよい。
1−2.工程A1
本発明においては、上記の他、後述する方法で調製した第2エアロゲル層からなる1層セルロースエアロゲル、あるいは第2エアロゲル層が最外層となる2層以上のセルロースエアロゲルを、次工程で行なう加工の対象として用いてもよい。
これらのセルロースエアロゲルは、2層以上のセルロースエアロゲルを調製し、当該セルロースエアロゲルを加工して製造できる。この場合の加工としては、研磨、切削、裁断等が挙げられる。第2エアロゲル層のみからなるセルロースエアロゲルを例にすると、2層セルロースエアロゲルを調製し、第1エアロゲル層と第2エアロゲル層の界面を切断する、あるいは第2エアロゲル層内を積層面と略平行に切断すれば、第2エアロゲル層からなる1層セルロースエアロゲルが得られる。また、2層以上のセルロースハイドロゲルを調製し、当該セルロースハイドロゲルをカッター等で切断して第2ハイドロゲル層(乾燥すると第2エアロゲル層となる)からなる1層セルロースハイドロゲルを調製し、当該セルロースハイドロゲルを前述の方法で乾燥すれば、第2エアロゲル層からなる1層セルロースエアロゲルが得られる。第2エアロゲル層が最外層となるセルロースエアロゲルについても同様である。
1−3.工程Bおよび工程B1
(1)切込加工
工程Bおよび工程B1では、前記1層セルロースエアロゲルの表面、または前記最外層を構成する第2エアロゲル層表面に、i)深さxの切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、またはii)深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行して深さxの切込2を複数設ける。i)の加工を「平行カット」、ii)の加工を「クロスカット」ともいう。図2は、このような加工が施されたセルロースエアロゲルを示す。図2(a)は平行カットを施したセルロースエアロゲルを、図2(b)はクロスカットを施したセルロースエアロゲルを示す。図2中、30は切込1であり、s1は切込1に平行な辺1(長さはL1)である。32は切込2であり、s2は切込2に平行な辺2(長さはL2)である。図2中、第1エアロゲル層および第2エアロゲル層の表示は省略してある。
切込の深さxは、前記略立方体または略直方体(以下「略立方体等」ともいう)の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さをL(=(長辺+短辺)/2)としたときに、0.02L〜0.1Lとなる長さである。具体的には、0.5〜1mm程度が好ましい。
また、切込の深さ方向と切込を設ける面とのなす最小角度は、15〜90°であることが好ましい。当該角度が15〜30°程度であると、セルロースエアロゲルを損傷することなく切込を設けることができる場合がある。
このように、最外層を構成する第2エアロゲル層表面に加工を施すことにより、復元性に優れたセルロースエアロゲルが得られる。この理由は限定されないが、第2エアロゲル層は繊維密度が高いので、ポア径が小さく水が浸透しにくいが、前記加工を施すことにより、水が浸透しやすくなるためと推察される。この効果をより十分に発揮するために、切込1の長さは、当該切込に平行な辺1の長さL1の70〜100%が好ましい。また、隣接する切込1同士の間隔は、L1/5〜L1/100が好ましい。具体的には、1つの面に5〜100本程度設けることが好ましい。この場合、切込1はできるだけ非等間隔で設けられることが好ましい。切込2に関しても同様である。切込を、周期性を有するように等間隔に設けると、いわゆるハスの葉効果により表面が濡れ難くなって水が浸透しにくくなる場合がある。
切込を設ける手段は限定されない。例えば、カッターやカミソリを用いて切込を設けてよい。さらにこの切込加工は、略立方体等の他の5面に対して施してもよい。
(2)貫通穿孔加工
セルロースエアロゲルには、前記切込加工に加えて、貫通穿孔加工を施してもよい。貫通穿孔加工とは、略立方体等の面の中心を通り、対向する面の中心へ貫通する孔を設けることである。この孔により、水がセルロースエアロゲル中により浸透しやすくなる。図3(a)は貫通穿孔加工されたセルロースエアロゲルを示す。図3(a)中、40が貫通孔である。
穿孔には公知の材料を用いてよいが、例えば、直径が0.3〜1mmの針を用いることが好ましい。さらに、貫通穿孔加工は、略立方体等の6面に対して施してもよい。
(3)非貫通穿孔加工
セルロースエアロゲルには、前記切込加工に加えて、非貫通穿孔加工を施してもよい。非貫通穿孔加工とは、略立方体等の面から対向する面へ向けて、貫通しない孔を設けることである。図3(b)は貫通穿孔加工されたセルロースエアロゲルを示す。図3(b)中、42が非貫通孔である。非貫通孔42の深さ方向と、非貫通孔42が設けられる面とのなす最小角度は75〜90°が好ましい。
孔の深さは対向する面間の距離Mの10〜70%が好ましい。貫通しない孔の数は、2〜20個程度が好ましい。非貫通穿孔加工は、例えば、直径が0.3〜1mmの針を用いて行なうことが好ましい。さらに、非貫通穿孔加工は、略立方体等の6面に対して施してもよい。
(4)深切込加工
セルロースエアロゲルには、前記切込加工に加えて、深切込加工を施してもよい。深切込加工とは、略立方体等の対向する2面に、0.5M〜0.7M(ただしMは、前記対向する面間の距離)の深さの深切込を、双方の深切込がセルロースエアロゲル中で結合しないように1つずつ設けることである。この深切込により、水がセルロースエアロゲル中により浸透しやすくなる。図3(c)は深切込加工されたセルロースエアロゲルを示す。図3(c)中、44が深切込である。この場合、深切込の深さ方向と深切込を設ける面とのなす最小角度は75〜90°が好ましく、85〜90°がより好ましい。また、深切込を設けるz軸上の位置は、図3(c)のz軸方向の辺(s3)の長さをZとした場合、0.25Z〜0.33Zが好ましい。
深切込の幅(図3(c)におけるy軸方向の長さ)が過度に長いと、セルロースエアロゲルの強度が低下することがあるので、切込の幅は当該切込を設ける面の短辺と長辺の平均長さLの50〜70%が好ましい。深切込を設ける手段は、切込加工で述べたとおりである。
(5)前記加工の組合せ
前記(1)〜(4)で説明した加工は、任意に組合せてよい。特に、(1)〜(3)の加工を略立方体等の6面に対して施し、(4)の加工を対向する2面に対して施すと、極めて復元性に優れたセルロースエアロゲルが得られるので好ましい。この加工を特に「S加工」ということがある。
(6)セルロースエアロゲルに加工を施すことの意義
本発明では、セルロースエアロゲル、すなわち乾燥状態のゲルに対して加工を行なう。セルロースハイドロゲルに対して加工を行ない、これを乾燥すると、乾燥時に加工部近傍のセルロース繊維が過度に密着してしまう。密着したセルロース繊維は、吸水時には容易にほぐれないので、加工による吸水速度の向上効果が相殺されてしまい、満足の行く復元性が得られない。しかし、乾燥後のセルロースゲルに対して加工を行なうと、加工部近傍のセルロース繊維の過度な密着が生じないので優れた復元性を達成できる。
2.加工セルロースエアロゲル
本発明の製造方法により、第1エアロゲル層および第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ最外層の一つが前記第2エアロゲル層であり、前記第2エアロゲル層が特定の切込等を有する、加工セルロースエアロゲルが得られる。
3.復元ハイドロゲルの製造方法
(1)復元方法
本発明の加工セルロースエアロゲルは、吸水させることにより復元ハイドロゲルとすることができる。この時の温度は0〜100℃が好ましい。吸水は、前記温度の水または水溶液に本発明の加工セルロースエアロゲルを浸漬することで行なえる。水溶液としては、糖水溶液、無機イオン(ミネラル成分)を含む水溶液、炭酸水、だし汁等が挙げられる。
従来のセルロースエアロゲルでは、速やかに復元ハイドロゲルとするためには、熱水に浸漬する必要があったが、本発明の加工セルロースエアロゲルは、冷水(好ましくは4〜30℃、より好ましくは10〜30℃)でも容易に復元できる。
浸漬する時間は、1分〜24時間で選択できるが、本発明の加工セルロースエアロゲルは、特に3分程度の浸漬においても高い復元率を達成できる。
(2)復元性
復元性は、復元性は復元セルロースハイドロゲルの形状および性状が、元のセルロースハイドロゲルにどの程度近いかを表す指標である。復元性は、復元率を用いて評価できる。復元率は、復元セルロースハイドロゲルの質量/セルロースエアロゲルの質量で定義される。本発明の加工セルロースエアロゲルは、3分間水に浸漬した時点での復元率(「3分復元率」ともいう)が60%以上であることが好ましい。
また、復元性は復元セルロースハイドロゲルの白残りを目視で観察することによっても評価できる。「白残り」とは水が浸透しないため白く見える部分である。
II.第2の方法
第2の方法は、セルロース産生菌を培養して得たセルロースエアロゲルの気相培地由来の層に加工を施すことを特徴とする。
1.加工エアロゲルの製造方法
1−1.工程A2
工程A2は、セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分を備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造され、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する略立方体または略直方体の1層セルロースエアロゲルを準備する。このようなセルロースエアロゲルは、例えば、前記Iの1−1.で説明したとおり、まず、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にてセルロース産生菌を培養して、空気相培地由来の層と、液相培地由来の層を有するセルロースハイドロゲルを準備する。次に当該セルロースハイドロゲルを前述の方法で乾燥し、セルロースエアロゲルを製造し、空気相培地由来の層と液相培地由来の層との界面、または空気相培地由来の層中を切断する等により、1層セルロースエアロゲルを製造する。この場合、当該セルロースエアロゲルが培養時に空気に晒されていた表面を有するように加工する。
本方法では、セルロースエアロゲルは液相面に向けて伸長して行くので、最初に産生されたセルロースエアロゲル部分は、通常、空気に晒されている。よって、培養時に空気に晒されていた表面とは、最初に産生され空気に晒されていたセルロースハイドロゲルの表面を乾燥して得た面である。
空気相培地由来の層は、前述の第1エアロゲル層または第2エアロゲル層のいずれであってもよい。
1−2.工程A3
工程A3では、セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造される略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、気相培地部分由来の第1エアロゲル層、および液相培地部分由来の第2エアロゲル層を備え、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ最外層の一つが前記培養時に空気に晒されていた表面を含む前記第1エアロゲル層である、セルロースエアロゲルを準備する。
このようなセルロースエアロゲルは、前記Iの1−1.で説明したように、セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にて培養して調製できる。ただし、液相培地に由来する第2エアロゲル層(高密度層)と空気相培地に由来する第1エアロゲル層(低密度層)を得るためには、培養温度を初めは高温(23℃以上40℃未満)とし、後に低温(10℃以上23℃未満)とすることが必要である。前述のとおり、低温(10℃以上23℃未満)の培養により高密度層が生産されるので、液相培地に由来する第2エアロゲル層と空気相培地に由来する第1エアロゲル層を有するセルロースハイドロゲルが得られる。
このようにして得たセルロースハイドロゲルを、前記Iで説明したように乾燥することで、セルロースエアロゲルを調製できる。
1−3.工程B2
工程B2では、工程A2で得たセルロースエアロゲルの培養時に空気に晒されていた表面にIの1−3.で述べたとおりの加工を施す。培養時に空気に晒されていた表面は、セルロースハイドロゲル製造時点からずっと空気に晒されているのでその表層部には局部的に繊維が密着している部分が存在する。当該部分には水が浸透しにくく、このようなセルロースエアロゲルは復元性が低い。そこで本発明では、当該部分に前記加工を施すことで、復元性に優れた復元セルロースハイドロゲルを得る。
1−4.工程B3
工程B3では、工程A3で得たセルロースエアロゲルの、最外層に存在し、培養時に空気に晒されていた表面を備える第1エアロゲル層(低密度層)に、Iの1−3.で述べたとおりの加工を施す。一般に第1エアロゲル層は、第2エアロゲル層よりも水の浸透性は良好である。しかし、空気相培地に由来する第1エアロゲル層は、セルロースハイドロゲル製造時点からずっと空気に晒されているのでその表層部には局部的に繊維が密着している部分が存在する。従って、当該部分には水が浸透しにくく、このようなセルロースエアロゲルは復元性が低い。そこで本発明では、空気相培地に由来する第1エアロゲル層に加工を施すことにより復元性に優れた復元セルロースハイドロゲルを得る。
2.加工セルロースエアロゲル
本発明により、空気相に存在する空気相培地部分を備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造され、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する略立方体または略直方体の1層セルロースエアロゲルであって、前記表面に特定の切込等を備える加工セルロースエアロゲルが製造できる。
また、本発明により、セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造される略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、気相培地部分由来の第1エアロゲル層、および液相培地部分由来の第2エアロゲル層を備え、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ最外層の一つが培養時に空気に晒されていた表面を備える前記第1エアロゲル層であり、前記第1エアロゲル層に特定の切込等を備える加工セルロースエアロゲルが製造できる。通常、この加工セルロースエアロゲルは2層のセルロースエアロゲルである。
Iの2.で述べた方法において、当該セルロースエアロゲルを用いれば、復元セルロースハイドロゲルを製造できる。
[実施例1]2層セルロースエアロゲルの復元性
<実施例1−1>
図1(a)に示す構造と同じ構造を有する、1辺が1.4cmの立方体セルロースハイドロゲル(株式会社たらみ製ナタデココ)を準備し、十分に水洗した後、100℃の熱水で10回洗浄した。当該セルロースハイドロゲルは、セルロース産生菌を、液相培地部分と空気相培地部分とを備える培地にて培養して得られたセルロースハイドロゲルであり、液相培地部分由来の繊維密度の低い第1ハイドロゲル層および空気相培地由来の繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を備えていた。次いで当該セルロースハイドロゲルを水に室温で一晩浸漬した。浸漬後のセルロースハイドロゲルを凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製、FDU−1200)を用いて、−50〜−40℃、15〜25Paにて48時間凍結乾燥し、図1(a)に示すセルロースエアロゲルを得た。
当該セルロースエアロゲルの第1エアロゲル層および第2エアロゲル層の厚みはともに70mmであった。各層について、前述の方法で平均ポア径と平均繊維束間距離とを測定した。その結果、第1エアロゲル層の平均ポア径と平均繊維束間距離は1μm、8μmであり、第2エアロゲル層の平均ポア径と平均繊維束間距離は0.2μm、5μmであった。また、R1は0.29%、R2は0.52%であった。
当該セルロースエアロゲルの第1エアロゲル層および第2エアロゲル層の走査型電子顕微鏡像(日本電子株式会社製JSM−5200)を図4に示す。
第2エアロゲル層の表面に、カミソリ(貝印カミソリ株式会社製、長柄ゴールドアルファ)を用いて前述のクロスカット加工を施した。切込深さは0.5〜1mmとし、切込の数は、1面あたり100本(切込1が50本、切込2が50本)とした。切込1および切込2の深さ方向と、当該切込が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。
当該加工セルロースエアロゲルを、25℃の水に全浸漬して、一定時間毎に復元率を測定し、かつ目視で白残り状態を観察した。復元率は前述のとおり、復元セルロースハイドロゲルの質量/セルロースエアロゲルの質量から求めた。質量は化学天秤(カルツァイス社製)を用いて測定した。
白残りは、ゲルの表面と内部について観察し、以下の基準
A:白残りほぼなし
B:白残りややあり
C:白残り多い
D:白残りかなり多い
E:大部分が白残り
にて評価した。
<実施例1−2>
同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、実施例1−1と同様にして、6面にクロスカット加工を施したセルロースエアロゲルを準備し復元性を評価した。
[比較例1]2層セルロースエアロゲルの復元性
<比較例1−1>
同じロットのセルロースハイドロゲルに加工を施さなかった以外は、実施例1−1と同様にしてセルロースエアロゲルを調製し、復元性を評価した。
<比較例1−2>
同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、第2エアロゲル層の代わりに第1エアロゲル層にクロスカット加工を施した以外は、実施例1−1と同様にしてセルロースエアロゲルを調製し、復元性を評価した。
<比較例1−3>
実施例1−1と同じロットのセルロースハイドロゲルを準備した。当該セルロースハイドロゲルの全面に、実施例1−1と同じクロスカット加工を施した。当該加工セルロースハイドロゲルを水に室温で一晩浸漬した。浸漬後の加工セルロースハイドロゲルを実施例1−1と同様に凍結乾燥し、セルロースエアロゲルを調製し、復元性を評価した。
これらの結果を表1および図5に示す。
表1に示すとおり、最外層を構成する第2エアロゲル層(高繊維密度層)の表面に、切込加工を施した実施例1−1〜1−2のセルロースエアロゲルは、復元率が高く、かつ白残りが少なかった。
最外層を構成する第2ハイドロゲル層(ハイドロゲルにおける高繊維密度層)の表面に加工を施した後、乾燥して得た比較例1−3のセルロースエアロゲルの復元性は、実施例1−1〜1−2のセルロースエアロゲルの復元性には及ばなかった。
[実施例2]2層セルロースエアロゲルの復元性
<実施例2−1>
実施例1とは別のロットのセルロースハイドロゲル(株式会社たらみ製ナタデココ)を準備し、実施例1−1と同様にしてセルロースエアロゲルを得た。当該セルロースエアロゲルの6面に、実施例1−1と同様にしてクロスカット加工を施し、加工セルロースエアロゲルを得て評価した。R1は0.29%、R2は0.52%であった。
<実施例2−2>
実施例2−1と同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、同様にして6面にクロスカット加工を施したセルロースエアロゲルを準備した。当該セルロースエアロゲルの6面に、裁縫用針(直径0.71mm)を用いて前述の貫通穿孔加工を施し、さらに、裁縫用針(直径0.53mm)を用いて前述の非貫通穿孔加工を施した。非貫通孔の数は1面あたり20個とし、深さは1〜5mmとした。非貫通孔の深さ方向と、当該孔が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。実施例2−1と同様にして、当該加工セルロースエアロゲルの復元性を評価した。
<実施例2−3>
実施例2−1と同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、実施例2−2と同様にして、6面に、クロスカット加工、貫通穿孔加工、および非貫通穿孔加工を施したセルロースエアロゲルを準備した。図3(c)に示すように、当該セルロースエアロゲルの側面の対向する2面にメス(アズワン株式会社製、ディスポメスNo.10)を用いて深さ8mm、長さ14mmの深切込を1本ずつ、当該面に垂直に設け、「S加工」セルロースエアロゲルを得た。深切込の主面と、当該主面に平行なセルロースエアロゲル面との最短距離は、0.3mmであった。実施例2−1と同様にして、当該加工セルロースエアロゲルの復元性を評価した。
[比較例2]2層構造のセルロースエアロゲルの復元性
<比較例2−1>
実施例2−1と同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、セルロースエアロゲルに加工を施さなかった以外は、実施例2−1と同様にして復元性を評価した。
<比較例2−2>
実施例2−1と同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、クロスカット加工を施さなかった以外は、実施例2−2と同様にして加工セルロースエアロゲル(6面に、貫通穿孔加工および非貫通穿孔加工を施したセルロースエアロゲル)を準備し、復元性を評価した。
これらの結果を表2および図6に示す。
表1に示すとおり、最外層を構成する第2エアロゲル層(高繊維密度層)の表面に、切込加工を施した実施例2−1〜2−3のセルロースエアロゲルは、復元率が高く、かつ白残りが少なかった。
[実施例3]多層構造のセルロースエアロゲルの復元性
図1(b)に示すような多層構造を有する、縦、横の1辺が1.4cm、高さが1.7cmの直方体セルロースハイドロゲル(ミニストップ株式会社製「ハロハロ」に含まれるナタデココ)を準備した。当該ナタデココから不純物を除去し、十分な水洗を行なった後、100℃の熱水で10回洗浄した。実施例1と同様にして当該ナタデココを乾燥し、セルロースエアロゲルを得た。
当該セルロースエアロゲルは、2層の第1エアロゲル層と3層の第2エアロゲル層から形成されており、各層の厚みは第1エアロゲル層が約3.1mm、第2エアロゲル層が約3.6mmであった。当該セルロースエアロゲルについて、前述の方法で平均ポア径と平均繊維束間距離とを測定した。その結果、第1エアロゲル層の平均ポア径と平均繊維束間距離は0.4μm、4μmであり、第2エアロゲル層の平均ポア径と平均繊維束間距離は0.2μm、3.5μmであった。また、R1は0.45%、R2は1.0%であった。
当該セルロースハイドロゲルの6面に、実施例1−1と同様にしてクロスカット加工を施した。当該加工セルロースエアロゲルの復元率を、実施例1−1と同様にして評価した。
[比較例3]多層構造のセルロースエアロゲルの復元性
実施例3と同じロットのセルロースハイドロゲルを用い、クロスカット加工を行なわなかった以外は実施例3と同様にしてセルロースエアロゲルを調製し、復元率を評価した。
これらの結果を図7に示す。図7から、最外層を構成する第2エアロゲル層(高繊維密度層)の表面に、切込加工を施した実施例3のセルロースエアロゲルは、復元率が高いことが分かる。当該セルロースエアロゲルの3分復元率はおよそ0.57であり、この値は実施例2−1の2層セルロースエアロゲルの3分復元率である0.54よりも高い。
多層セルロースエアロゲルにおいて優れた復元率が得られる理由は、多層セルロースエアロゲルは水を浸透させやすい第1エアロゲル層(低繊維密度層)を複数備えるためと推察される。すなわち本発明は、多層セルロースエアロゲルにおいてより優れた効果を奏する。
[実施例4]多層構造のセルロースエアロゲルの復元性
(1)セルロースハイドロゲルおよびセルロースエアロゲルの調製
セルロース産生菌として、酢酸菌(菌株ATCC23769)を準備した。液体培地用に、コーンスティープリカー(シグマーアルドリッチ社製、商品名 Corn Steep Liquor)10mL、果糖20g、(NHSO 1,65g、KHPO 0.5g、MgSO・7HO 125.0mg、ビタミンミクスチャー5.0mL、ソルトミクスチャー5.0mLを準備した。
ビタミンミクスチャーは、イノシトール 2.0mg/L、D−Chiroニコチン酸 0.4mg/L、ピリドキシン塩酸塩 0.4mg/L、チアミン塩酸塩 0.4mg/L、 パントテン酸カルシウム 0.2mg/L、リボフラビン 0.2mg/L、p−アミノ安息香酸 0.2mg/L、葉酸 0.002mg/L、ビオチン 0.002mg/L の混合溶液であり、各試薬は和光純薬株式会社製であった。
ソルトミクスチャーは、CaCl・2HO 14.7mg/L、FeSO・7HO 3.6mg/L、NaMoO・2HO 2.42mg/L、ZnSO・7HO 1.73mg/L、MnSO・5HO 1.39mg/L、CuSO・5HO 0.05mg/Lの混合液であり、各試薬は和光純薬株式会社製であった。
ビタミンミクスチャー以外の成分を蒸留水に溶解し500mLの水溶液を調製した。当該水溶液にNaOHを添加してpHを5に調整し、オートクレーブ滅菌(121℃で20分)処理を行なった。続いて、当該水溶液を室温まで冷却した後に、ろ過滅菌(フィルターとしてSartorius stedim Biotech社製、商品名 Minisart RC15、孔径0.20μmを使用)処理したビタミンミクスチャーを加えた。
15mLファルコンチューブにて培養を行なった。培養温度は、5日ごとに18℃と29℃に切り替えながら、合計で30日間実施した。これにより1cmの厚さのゲルを得た。
ゲルを水に浸漬し、105℃で20分間オートクレーブで処理した。次いで、水の代わりに0.1NのNaOHを用いて105℃で20分の条件でオートクレーブ処理を10回行なった。さらに水を用いて、105℃で20分の条件でオートクレーブ処理を行ない、十分洗浄してアルカリを除去した。
10mLビーカーに、得られたセルロースハイドロゲルを、培養時の気相面が下に、層が水平になるように入れた。当該ビーカーに、ゲルの半分が水に浸かるように蒸留水を入れ、このまま48時間凍結乾燥(東京理科器械株式会社製、FDU−1200使用、−40〜50℃、15〜25Pa)を行なった。
こうして得られたゲルは、29℃培養で産生された透明な層(第1ハイドロゲル層)3層と、18℃培養で産生された白濁した層(第2ハイドロゲル層)3層との計6層からなる多層構造を有していた。
このようにして得たセルロースハイドロゲルを、室温で、水に一晩浸漬した。浸漬後のセルロースハイドロゲルを凍結乾燥機で48時間凍結乾燥し、セルロースエアロゲルを得た。セルロースエアロゲルの第1ハイドロゲル層および第2ハイドロゲル層表面を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−5200)で観察した(図8)。電子顕微鏡像からポア径を観察した。具体的には図8において矢印で示す部分をポア径と認定し、複数のポアについてポア径を測定した。第1ハイドロゲル層および第2ハイドロゲル層の平均ポア径は、それぞれ1.0μmおよび0.90μmであった。また、R1は0.28%、R2は0.9%であった。
さらに、カミソリ(貝印カミソリ株式会社製、長柄ゴールドアルファ)を用いてセルロースエアロゲルを積層面に垂直な面で切断した。当該破断面を走査型電子顕微鏡で観察した(図9)。電子顕微鏡像から平均繊維束間距離を測定した。具体的には図9において矢印で示す部分を繊維束間距離と認定し、複数の繊維束について層間距離を測定した。第1ハイドロゲル層および第2ハイドロゲル層の平均繊維束間距離は、それぞれ3.78μmおよび1.15μmであった。
(2)加工セルロースエアロゲルの復元
前記(1)で厚さ1.7mmに調製したセルロースエアロゲルを、カミソリを用いて切断し、縦横の一辺が約1.4cmの直方体状とした。この際、積層面が底面と平行となるようにした。当該セルロースエアロゲルの6面の表面に、カミソリ(貝印カミソリ株式会社製、長柄ゴールドアルファ)を用いて前述のクロスカット加工を施した。切込深さは0.5〜1mmとし、切込の数は、1面あたり100本(切込1が50本、切込2が50本)とした。切込1および切込2の深さ方向と、当該切込が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。
次に、当該セルロースエアロゲルの6面に、裁縫用針(直径0.71mm)を用いて前述の貫通穿孔加工を施し、さらに、裁縫用針(直径0.53mm)を用いて前述の非貫通穿孔加工を施した。非貫通孔の数は1面あたり20個とし、深さは1〜5mmとした。非貫通孔の深さ方向と、当該孔が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。
さらに図3(c)に示すように、当該セルロースエアロゲルの側面の対向する2面にメス(アズワン株式会社製、ディスポメスNo.10)を用いて深さ8mm、長さ14mmの深切込を1本ずつ、当該面に垂直に設けた。深切込の主面と、当該主面に平行なセルロースエアロゲル面との最短距離は、0.3mmであった。
このように加工したセルロースエアロゲルを、25℃の水に全浸漬して、3分後の復元率を測定した。その結果、復元率(3分時復元率)は、0.7であった。
[実施例5]水溶液の効果
<調製例5−1>
(1)マルトースを含む水容液の調製
マルトース(ソントン食品工業株式会社製、麦芽糖水あめ)を水に溶解し、0.25質量%の水溶液S1を調製した。水溶液S1中のマルトース濃度は0.175質量%であった。
(2)セルロースハイドロゲルの調製
図1(b)に示す構造を有する、縦横の1辺が1cm、高さが1.5cmの立方体セルロースハイドロゲル(ミニストップ株式会社製「ハロハロ」に含まれるナタデココ)を準備した。当該ナタデココからは不純物を除去し、十分な水洗を行なった後、100℃の熱水で10回洗浄した。以下の実施例において同じロットのセルロースハイドロゲルを使用した。
(3)浸漬、乾燥
25℃において、前記加工セルロースハイドロゲルを前記水溶液に一晩浸漬した。水溶液S1を満たした容器に前記浸漬後のセルロースハイドロゲルを入れ、当該セルロースハイドロゲルの半分が水溶液S1に浸漬するようにした。この容器を凍結乾燥機(東京理科器械株式会社製、FDU−1200)に装填し、−50〜−40℃、15〜25Paにて48時間凍結乾燥し、セルロースエアロゲルを得た。
<実施例5−2>
(1)加工セルロースエアロゲルの調製
調製例5−1で得たセルロースエアロゲルの6面の表面に、カミソリ(貝印カミソリ株式会社製、長柄ゴールドアルファ)を用いて前述のクロスカット加工を施した。切込深さは0.5〜1mmとし、切込の数は、1面あたり100本(切込1が50本、切込2が50本)とした。切込1および切込2の深さ方向と、当該切込が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。
当該セルロースエアロゲルの6面に、裁縫用針(直径0.71mm)を用いて前述の貫通穿孔加工を施し、さらに、裁縫用針(直径0.53mm)を用いて前述の非貫通穿孔加工を施した。非貫通孔の数は1面あたり20個とし、深さは1〜5mmとした。非貫通孔の深さ方向と、当該孔が設けられた面とのなす最小角度は約90°であった。
続いて、図3(c)に示すように、当該セルロースエアロゲルの側面の対向する2面にメス(アズワン株式会社製、ディスポメスNo.10)を用いて深さ8mm、長さ14mmの深切込を1本ずつ、当該面に垂直に設けた。深切込の主面と、当該主面に平行なセルロースエアロゲル面との最短距離は、0.3mmであった。
(2)復元
前記(1)で得た加工セルロースエアロゲルを25℃の水に5分間全浸漬して復元セルロースハイドロゲルを得た。当該復元セルロースハイドロゲルについて、復元率、外観、食感を評価した。復元率は前述のとおり、復元セルロースハイドロゲルの質量/セルロースエアロゲルの質量から求めた。質量は化学天秤(カルツァイス社製)を用いて測定した。
外観は、ゲルを目視で観察し、以下の基準
a:全体的に透明
b:aほど透明でないが白濁あり
c:全体的に白残りはないが白濁色
d:局部的に白残りあり
e:全体的に白残りあり
にて評価した。
食感は、次の手順で評価した。
1)食用セルロースハイドロゲルの開発に従事しているパネラーに、本例の原料としたセルロースハイドロゲルを試食させ、みずみずしさ、歯ごたえ、弾力(こりこり感)を理解させた。
2)次いで、本例で得たセルロースハイドロゲルを試食させ、みずみずしさ、歯ごたえ、弾力(こりこり感)を、元のセルロースハイドロゲルと比べて、同等か、低下しているかを評価させた。
3)上記評価を5人のパネラーに対して行ない、各食感についての平均値を得た。すなわち、例えば弾力について5人中、3人以上が低下したと判断した場合、「弾力は低下した」と判断した。
4)平均値を次の基準
A:みずみずしさ、歯ごたえ、こりこり感とも、元のセルロースハイドロゲルと同等であった
B:上記3つの食感のうち、1つが低下した
C:上記3つの食感のうち、2つが低下した
D:上記3つの食感のうち、3つが低下した
にて評価した。
<実施例5−3>
水溶液S1の代わりに濃度が0.025質量%の水溶液S2を用いた以外は、実施例5−2と同様にして、復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−4>
水溶液S1の代わりに濃度が0.0025質量%の水溶液S3を用いた以外は、実施例5−2と同様にして、復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−5>
マルトースを含む水容液として、マルトース(ソントン食品工業株式会社製、麦芽糖水あめ)15mL、ゼラチン(森永製菓株式会社製、クックゼラチン)5gを水30mLに溶解し、原液を得た。当該原液を水で10倍希釈して、水溶液G1を調製した。水溶液G1中のマルトースの濃度は2.3質量%であった。当該水溶液G1を、水溶液S1の代わりに用いた以外は、実施例5−2と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−6>
前記原液を水で1000倍希釈して得た水溶液G2を用いた以外は、実施例5−5と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−7>
マルトースを含む水溶液にセルロースハイドロゲルを浸漬しなかったこと以外は、実施例5−2と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−8>
ゼラチン(森永製菓株式会社製、クックゼラチン)を水に溶解し、0.2質量%の水溶液を得た。当該水溶液を、水溶液S1の代わりに用いた以外は、実施例5−2と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−9>
0.002質量%のゼラチン水溶液を用いた以外は、実施例5−8と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−10>
寒天(伊勢食品工業株式会社製、パパ寒天)を水に溶解し、0.066質量%の水溶液を得た。当該水溶液を、水溶液S1の代わりに用いた以外は、実施例5−2と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
<実施例5−11>
0.00066質量%の寒天水溶液を用いた以外は、実施例5−10と同様にして復元セルロースハイドロゲルを調製し、評価した。
これらの結果を表3に示す。
表3より、二糖類を含む水溶液を用いた本発明のセルロースエアロゲルは、復元率に優れ、外観および食感により優れた復元セルロースハイドロゲルを与えることが明らかである。
10 第1エアロゲル層
20 第2エアロゲル層
30 切込1
s1 切込1に平行な辺1
32 切込2
s2 切込2に平行な辺2
40 貫通孔
42 非貫通孔
44 深切込
s3 辺

Claims (10)

  1. (A)セルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、
    前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ最外層の一つが前記第2エアロゲル層である、セルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
    (B)前記最外層を構成する第2エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
    0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
    の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
    深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
    を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
  2. (A1)セルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い第2エアロゲル層を備える、略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されているセルロースエアロゲルを加工して、
    前記第2エアロゲル層からなる1層セルロースエアロゲル、または前記第2エアロゲル層が最外層である2層以上のセルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
    (B1)1層セルロースエアロゲル表面、または2層以上のセルロースエアロゲルの前記最外層を構成する第2エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
    0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
    の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
    深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
    を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
  3. 前記工程(A)または(A1)が、
    (a1)セルロース産生菌を培養することによってセルロースハイドロゲルを製造する工程、および
    (a2)当該セルロースハイドロゲルを乾燥してセルロースエアロゲルを得る工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記工程(A)または(A1)が、
    (a3)セルロース産生菌を、液相に存在する液相培地部分と空気相に存在する空気相培地部分とを備える培地にて培養して、液相培地部分由来の繊維密度の低い第1ハイドロゲル層および空気相培地由来の繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を形成して、2層セルロースハイドロゲルを得る工程、ならびに
    (a4)当該2層セルロースハイドロゲルを乾燥して、第1ハイドロゲル層由来の前記第1エアロゲル層と、第2ハイドロゲル層由来の前記第2エアロゲル層とを有する、セルロースエアロゲルを得る工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  5. 前記工程(A)または(A1)が、
    (a5)セルロース産生菌を23〜40℃で培養して繊維密度の低い第1ハイドロゲル層を形成する高温培養、およびセルロース産生菌を10℃以上23℃未満で培養して繊維密度の高い第2ハイドロゲル層を形成する低温培養を、交互に繰り返して前記第1ハイドロゲル層および第2ハイドロゲル層が交互に3層以上積層された多層セルロースハイドロゲルを得る工程、ならびに
    (a6)当該多層セルロースハイドロゲルを乾燥して、第1ハイドロゲル層由来の前記第1エアロゲル層と、第2ハイドロゲル層由来の前記第2エアロゲル層とが交互に3層以上積層された多層セルロースエアロゲルを得る工程を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
  6. (A2)空気相に存在する空気相培地部分を備える培地にてセルロース産生菌を培養して得たセルロースハイドロゲルから製造され、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する略立方体または略直方体の1層セルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
    (B2)前記表面に、下記式で定義される深さx:
    0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
    の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
    深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
    を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
  7. (A3)セルロース産生菌を、空気相に存在する空気相培地部分と液相に存在する液相培地部分とを備える培地にて培養して得たセルロースハイドロゲルから製造される略立方体または略直方体のセルロースエアロゲルであって、
    空気相培地部分由来のセルロース繊維密度の低い第1エアロゲル層、および当該第1エアロゲル層よりもセルロース繊維密度の高い、液相培地部分由来の第2エアロゲル層を備え、前記層の主面が前記略立方体または略直方体の底面に略平行になるように各層が積層されており、かつ
    最外層の一つが、前記培養時に空気に晒されていた表面を有する前記第1エアロゲル層であるセルロースエアロゲルを準備する工程、ならびに
    (B3)前記最外層を構成する第1エアロゲル層表面に、下記式で定義される深さx:
    0.02L≦x≦0.1L(ただしLは前記略立方体または略直方体の切込が設けられる面の長辺と短辺の平均の長さ)
    の切込1を長辺と短辺のいずれかに平行に複数設ける、または
    深さxの切込1を長辺と短辺のいずれか一方の辺に平行に複数設け、さらに他方の辺に平行に深さxの切込2を複数設ける工程、
    を含む、加工セルロースエアロゲルの製造方法。
  8. 前記工程(B)〜(B3)における切込1の長さが、0.7L1〜L1(ただしL1は切込1に平行な辺1の長さ)であり、
    切込2の長さが、0.7L2〜L2(ただしL2は切込2に平行な辺2の長さ)である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記工程(B)〜(B3)における隣接する切込1同士の間隔が、L1/5〜L1/100(ただしL1は切込1に平行な辺1の長さ)であり、
    隣接する切込2同士の間隔が、L2/5〜L2/100(ただしL2は切込2に平行な辺2の長さ)である、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記工程(B)〜(B3)が、
    (b1)前記切込1、または前記切込1と切込2とを、前記略立方体または略直方体における他の5面に設ける工程、
    (b2)前記略立方体または略直方体の各面に、当該面の中心から対向する面の中心へ貫通する穿刺孔を設ける工程、
    (b3)前記略立方体または略直方体の各面に、対向する面へ向けて非貫通の穿刺孔を複数設ける工程、および
    (b4)前記略立方体または略直方体の対向する2面に、0.5M〜0.7M(ただしMは、前記対向する面間の距離)の深さの深切込を、双方の深切込がセルロースエアロゲル中で結合しないように1つずつ設ける工程、
    をさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
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