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JP6004430B2 - 生体光計測装置 - Google Patents
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JP6004430B2 - 生体光計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光を用いて脳機能を計測する生体光計測装置に関する。
生体光計測装置として近赤外脳機能計測(fNIRS)はすでに知られており、近赤外脳機能計測(fNIRS)において多点計測を行うために、多数の入射プローブと検出プローブを頭表に配置し、入射プローブから近赤外光を脳内に照射し、検出プローブから出てくる光の輝度を計測すると、近赤外光は生体内のヘモグロビンによって吸収されるため計測輝度変化からヘモグロビン濃度変化を推定することができる。しかも、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンで光の波長に対する吸収係数が異なるため、異なる波長の近赤外光で計測を行うとオキシおよびデオキシヘモグロビン濃度の変化を求めることができ、これにより脳機能の状態を計測するものである。
正確に計測するためには、頭表に配置した多数の入射プローブと検出プローブについて、各プローブと頭表とのコンタクトが安定に保持されていることが重要である。不安定なコンタクトを検出するため、従来は、ある時間間隔のトータルヘモグロビンの変化量(特許文献1参照)や、三波長計測においてオキシおよびデオキシヘモグロビン変化を最小二乗法で求める際に出る残差(特許文献2参照)などを調べ、これらがある基準より大きく観測された場合に、そのチャンネルが不安定であるとした。
特開2004−261265号公報 特開2006−109964号公報
従来行われている不良コンタクトの検出では、チャンネルごとのノイズの大きさに注目している。このため、どのチャンネルに問題があるかを検出することは可能であるが、そのチャンネルを構成する入射プローブと検出プローブのどちらのプローブが問題なのかを特定することはできず、不良コンタクトの絞り込みを十分に行うことができなかった。また、あるチャンネルに問題があった場合、プローブ直下の頭髪の除去やプローブの結束の工夫などを試行錯誤しその改善を図るのであるが、この際にはそのチャンネルを構成する両方のプローブの調整を行わざるをえないため、場合によっては、問題の無い側のプローブをいじってしまい、逆にそのコンタクトを悪化させることもありえた。
さらに、不良コンタクトに起因するノイズとしては、モーションアーティファクト(体動に伴うノイズ)と計測ノイズ(ホワイトノイズ)が考えられるが、従来技術ではこれらを区別せずに扱っているため、ノイズの種類に応じてプローブ調整手法を変更するといったことができない。また、通常、モーションアーティファクトの方が、計測ノイズよりもデータに与える害が大きいが、モーションアーティファクトの大きなプローブのみ調整を行い他のプローブについては下手にいじらないといった柔軟な対応もできない。
プローブコンタクトの評価として、そこでの計測光の減衰の定常的な大きさおよび減衰度の時間的なふらつきを考える。計測ノイズの大きさは減衰の定常的な大きさから定まり、モーションアーティファクトの大きさは減衰度の時間的なふらつきの大きさから定まることを示すことができる。このため、計測データから各チャンネルでの二種のノイズの大きさを求め、それらから逆にコンタクトにおける計測光の減衰の定常的な大きさおよび減衰度の時間的なふらつきを計算し、それらを当該コンタクトの計測ノイズおよびモーションアーティファクトについての評価値として用いる。ただし、チャンネルは入射プローブと検出プローブとから構成されるため、各チャンネルのノイズの大きさは二つのプローブの評価の積によって定まる。多点計測においては、プローブがいくつかのチャンネルにまたがって用いられているため、各チャンネルがどのプローブを用いているかの情報を用い、逆問題を解くことにより各プローブの評価値を求める。
各チャンネルの計測データ(吸光度データ)には、生体血流動態変化から生じる信号も含まれており、不良コンタクトの検出という点からはこの信号は邪魔である。近赤外脳機能計測の基礎法則であるModified Beer−Lambert則によれば、この信号はオキシおよびデオキシヘモグロビンの吸光係数ベクトルで張られる平面(BL平面と呼ぶ)上に分布する。モーションアーティファクトなどのノイズは、必ずしもこの平面上に無いため、吸光度データのこの平面に直交する成分(BL平面直交成分と呼ぶ)を抽出することにより、ノイズ成分だけを取り出すことができる。また、モーションアーティファクトと計測ノイズは、その周波数スペクトルが異なるため、ローパスフィルタとハイパスフィルタを組み合わせることにより、それぞれの成分のみを抽出することができる。図9に本発明の処理の流れを示す。
すなわち、本発明は、多数の入射プローブおよび検出プローブを頭表に配置し、入射プローブから3波長以上の近赤外光を脳内に照射し、検出プローブから出てくる光の輝度を計測して得られた吸光度変化から、オキシおよびデオキシヘモグロビン濃度の変化を求めることにより脳機能の状態を計測するとともに、前記吸光度変化からノイズ成分としてBL平面直交成分を抽出してプローブのコンタクト不良を検知する生体光計測装置において、ローパスフィルタとハイパスフィルタを備え、前記抽出したノイズ成分をローパスフィルタ処理した出力をモーションアーティファクトのみによるもの、前記抽出したノイズ成分をハイパスフィルタ処理した出力を計測ノイズのみによるものとして2つに分解することを特徴とする。
また、本発明は、前記生体光計測装置において、入射プローブおよび検出プローブのコンタクトにおける計測光の減衰の定常的な大きさおよび減衰度の時間的なふらつきから、吸光度変化に含まれるモーションアーティファクトや計測ノイズの大きさが定まるため、前記ローパスフィルタ処理した出力からこの逆問題を解いて各プローブのコンタクトにおける計測光の減衰度の時間的なふらつきを算出し、前記ハイパスフィルタ処理した出力からこの逆問題を解いて各プローブのコンタクトにおける計測光の減衰の定常的な大きさを算出し、これらを当該コンタクトのモーションアーティファクトおよび計測ノイズに対する評価指標として用いることを特徴とする。
また、本発明は、前記生体光計測装置において、前記算出したモーションアーティファクトに対する評価指標および計測ノイズに対する評価指標を表示するモニターを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記生体光計測装置において、前記算出したモーションアーティファクトに対する評価指標および計測ノイズに対する評価指標をプローブ毎に表示する表示装置を各プローブに設置したことを特徴とする。
従来行われている不良コンタクトの検出では、チャンネルごとのノイズの大きさに注目している。このため、どのチャンネルに問題があるかを検出することは可能であるが、そのチャンネルを構成する入射プローブと検出プローブのどちらが問題なのかを特定することはできず、不良コンタクトの絞り込みを十分に行うことができなかった。また、あるチャンネルに問題があった場合、そのチャンネルを構成する両方のプローブの調整を行わざるをえないが、場合によっては、問題の無い側のプローブをいじってしまい、逆にそのコンタクトを悪化させることもありえた。本発明の手法は、チャンネルではなく、どのプローブのコンタクトに問題があるかをピンポイントで示すことが可能であり、このような問題が無い。
さらに本発明の手法では、不良コンタクトから生じている問題が、モーションアーティファクトであるのか計測ノイズであるのかを示すことができる。モーションアーティファクトと計測ノイズではその原因が異なっているため、提案した手法を用いれば、プローブ調整について両者で異なったアプローチをとることが可能である。また、通常、モーションアーティファクトの方が、計測ノイズよりもデータに与える問題が大きいため、計測ノイズに関わるプローブはさわらずに、モーションアーティファクトに関わるプローブのみを調整するといった選択を行うことができる。これにより、モーションアーティファクトを生じていなかったプローブを誤っていじってしまい、逆に不安定にしてしまうといったことを避けることができる。
BL平面(平面P)の説明図である。 実測に用いたfNIRS多点計測を説明するための図である。(a)は高密度プローブ配置を示しており、黒丸が入射プローブ、白丸が検出プローブであり、線が各チャンネルを表す。入射プローブ、検出プローブがそれぞれ16個あり、これらから44チャンネルが構成されている。(b)は高密度プローブを頭部に装着したところを説明した図である。 図3の(a)(b)(c)はそれぞれ被験者ABCに対応し、図2で『*』を付したch−20で計測されたものであり、左側の図は吸光度変化(780nm)を示し、右側の図はBL平面直交成分を示した図である。 図4は、図3の直交成分をカットオフ周波数0.1Hzのローパスフィルタおよび1.0Hzのハイパスフィルタで処理した結果を示した図である。 図5は被験者Bの計測結果であり、(a)は得られた各チャンネルの吸光度データからBL平面直交成分を求め、その大きさ(分散)をマップとして表示した図である。さらに、この成分をローパスフィルタ(0.1Hz)およびハイパスフィルタ(1.0Hz)を用いて処理した後、その、各チャンネルでの大きさ(分散)をやはりマップとして表示したものが(b)および(c)である。 図6(a)はローパスフィルタの出力から求めたα1〜α32を示す図であり、図6(b)はハイパスフィルタの出力から求めたβ1〜β32を示す図である。 図7は被験者Aの計測結果であり、(a)は得られた各チャンネルの吸光度データからBL平面直交成分を求め、その大きさ(分散)をマップとして表示した図である。さらに、この成分をローパスフィルタ(0.1Hz)およびハイパスフィルタ(1.0Hz)を用いて処理した後、その、各チャンネルでの大きさ(分散)をやはりマップとして表示したものが(b)および(c)である。 図8は被験者Cの計測結果であり、(a)は得られた各チャンネルの吸光度データからBL平面直交成分を求め、その大きさ(分散)をマップとして表示した図である。さらに、この成分をローパスフィルタ(0.1Hz)およびハイパスフィルタ(1.0Hz)を用いて処理した後、その、各チャンネルでの大きさ(分散)をやはりマップとして表示したものが(b)および(c)である。 本発明における計測データの処理の流れの概略を示した図である。
近赤外脳機能計測(fNIRS)において基本となるModified Beer−Lambert則は、波長による光路長の違いを無視すると次式で与えられる。
Figure 0006004430
ここで、ΔAiεHbO,λiεHbR,λiは波長λiについての吸光度変化、オキシおよびデオキシヘモグロビンのモル吸光係数であり、ΔHbOとΔHbRはオキシおよびデオキシヘモグロビンの濃度変化、Lは光路長である。この式から、オキシおよびデオキシヘモグロビン濃度の変化によって生じる吸光度変化は、測定に用いた波長に対するオキシおよびデオキシヘモグロビンのモル吸光係数ベクトル
Figure 0006004430

Figure 0006004430
が張る平面P上にあることがわかる(図1参照)。ここでは、この平面PをBL平面と呼ぶ。このため、計測信号中にヘモグロビン濃度変化とは異なる波長依存性を持つ何らかの吸光度変化(ノイズ、アーティファクト)がある場合、3波長以上の計測光を用いることにより、そのような吸光度変化を、Pに直交する成分として検出することが可能である。本論文では、このような直交成分をBL平面直交成分と呼ぶこととする。一方、2波長計測の場合には、どのような吸光度変化もそれをヘモグロビン濃度の変化に帰することが可能であるため、このような検出はできない。このためm≧3である必要があり、本論ではm=3とする。
モル吸光係数行列を
Figure 0006004430
とすると、吸光度変化aの平面Pに対する直交成分hは次のように求められる。
Figure 0006004430
ここで、E+はEの擬似逆行列である。3波長を用いる場合には、上式は次のように書ける。
Figure 0006004430
ここで、uはEの特異値分解をE=USVTとしたときのUの第3列ベクトル(特異値に対応していないベクトル)とする。この式から分かるように、ベクトルhの各成分は、その大きさが異なるだけで同じ時系列となるため、スカラー量としてのBL平面直交成分hを次式で定義して用いる。
Figure 0006004430
BL平面直交成分を生じさせる要因としては、次のようなものが考えられる。
(1)モーションアーティファクト
プローブは基本的に毛髪に乗っているため、体動によりプローブ先端と皮膚間の距離が変化したり、プローブの頭表に対する角度が変化したりすると、それに伴ってコンタクトでの計測光の減衰が変化し、それが吸光度変化となって観測される。また、毛髪が動くことによって、毛髪による計測光の吸収、反射の状況が変化し、これが吸光度変化に繋がることも考えられる。このような要因により生じるアーティファクトはモーションアーティファクトと呼ばれる。モーションアーティファクトは体動に起因するため、比較的低い周波数成分を持つものと考えられる。
(2)計測ノイズ
主に検出プローブにおける光電変化に伴って生じるホワイトノイズ。これは、各波長について無相関に生じるため、ヘモグロビン濃度変化では説明できない。吸光度は光強度の対数から計算されるため、各チャンネルの吸光度変化に含まれる計測ノイズの大きさは、検出プローブで検出される計測光の強度に反比例する。このため、入射プローブにしろ検出プローブにしろ、コンタクトでの光の減衰の大きなプローブがあれば、それが関係するチャンネルの計測ノイズは大きく観測される。
先に述べたように、コンタクトの変化により計測光の強度に変化が生じ、それがモーションアーティファクトとなる。また、コンタクトでの計測光の定常的な減衰の強弱により、計測ノイズの大きさに差が生じる。これらモーションアーティファクト、計測ノイズの様相には、プローブと頭表間のコンタクトのあり方が直接関係しているため、ここではコンタクトでの計測光の減衰についてのいくつかの定義を与える。
入射プローブあるいは検出プローブのコンタクトにおける計測光の減衰度をr(t)(0≦r(t)≦1、r(t)が小さいほど減衰が大きい)として、r(t)を次のように二つの成分に分解する。
Figure 0006004430
ここでr0は定常的な減衰の大きさを示しており、また
Figure 0006004430
はr0のまわりでの減衰度のふらつきを示している。
Figure 0006004430
の平均を0とする。
fNIRSの各チャンネルは一対の入射プローブと検出プローブで構成されるため、そのチャンネルで観測される計測ノイズの平均的な大きさは、入射プローブと検出プローブにおける定常的な減衰の大きさの積によって定まる。r0が小さいコンタクト(弱いコンタクトと呼ぶ)では平均的に計測光が強く減衰するため、関係するチャンネルには大きな計測ノイズが惹起されることになる。この意味から、計測ノイズに関する各コンタクトの評価をr0(あるいはlogr0)の大きさを用いて行うことができ、そのような評価値で測られるコンタクトの特性をコンタクトの弱さと呼ぶ。
同様に、入射プローブおよび検出プローブにおける減衰のふらつきの積によって、モーションアーティファクトの時間的変化が定まる。
Figure 0006004430
の大きさ(分散)が大きいコンタクト(不安定なコンタクトと呼ぶ)を含むチャンネルでは、体動等によるノイズが強く観測されることになる。このため、計測ノイズの場合と同様に、モーションアーティファクトに関する各コンタクトの評価を
Figure 0006004430
(あるいは
Figure 0006004430
)の分散を用いて行うことができ、そのような評価値で測られるコンタクトの特性をコンタクトの不安定性と呼ぶ。
fNIRSによる脳活動多点計測においては、入射プローブおよび検出プローブがいくつかのチャンネルにまたがって用いられる。このため、計測データのノイズが、どのプローブに起因するのかを判別することが必要である。ここでは、上記で定めたBL平面直交成分を手がかりとして、各プローブコンタクトの不安定性/弱さを評価する手法を提案する。
(プローブ配置行列)
入射プローブおよび検出プローブが、各チャンネルをどのように構成しているかをプローブ配置行列として定義する。
入射プローブおよび検出プローブの個数をそれぞれMsとMd、チャンネルの総数をNとする。入射プローブ i(1≦i≦Ms)と検出プローブ j(Ms+1≦j≦Ms+Md)がチャンネルk(1≦k≦N)を構成するとすると、プローブ配置行列GはN×(Ms+Md)行列であり、その要素gは次のように定められる。
Figure 0006004430
(プローブコンタクト不良により生じるBL平面直交成分)
入射プローブ i(1≦i≦Ms)と検出プローブ j(Ms+1≦j≦Ms+Md)がチャンネルk(1≦k≦N)を構成するとする。計測ノイズは主に検出プローブでの光電変換ノイズであるため、チャンネルkで計測される光Ik(t)に対して検出プローブ jでの光電変換ノイズnj(t)が重畳しているとすると、チャンネルkでの吸光度変化は
Figure 0006004430
である。検出プローブノイズの大きさが計測光の大きさに比較して十分小さい(nj(t)≪Ik(t))とすると、これは、
Figure 0006004430
と近似できる。右辺第2項が計測ノイズであり、その大きさが計測光の強度に反比例することがわかる。
次に、コンタクトi、jでの計測光の減衰を、(5)式に従いそれぞれ
Figure 0006004430
とする。入射プローブ iからの入力光の強度をIi、チャンネルkの生体における減衰をRk(t)とすると、
Figure 0006004430
であるから、
Figure 0006004430
となる。ここで第1項は組織でのヘモグロビン変化に伴う吸光度変化であり、第2項はコンタクトのふらつきが吸光度変化に与える影響、第3項は計測ノイズを示している。
計測に用いる3波長について上式を考え、(4)式を用いてBL平面直交成分を求める。(13)式の第1項はヘモグロビン変化に伴う吸光度変化であるから直交成分は0となり無視できる。コンタクトでの計測光の減衰が波長によらないとすると、BL平面直交成分hk(t)は次式で与えられる。
Figure 0006004430
右辺第1項がモーションアーティファクトに関する項、第2項が計測ノイズに関する項である。ここで
Figure 0006004430
であり、1は全ての要素を1とする列ベクトルとする。
(コンタクトの不安定性評価)
モーションアーティファクトに関する項hmotion,k(t)について、(14)式から次式が得られる。ここで両辺の平均を0とした。
Figure 0006004430
motion,k(t)を全てのkについてまとめたベクトルをhmotion(t)とし、また
Figure 0006004430
として、これをすべてのi(1≦i≦Ms+Md)についてまとめたベクトルをd(t)とすると
Figure 0006004430
と書ける。Gはプローブ配置行列である。これから
Figure 0006004430
と求められる。各probeのコンタクトの不安定性を各di(t)の分散で評価し、これをまとめたベクトルをαと書く。
(コンタクトの弱さ評価)
計測ノイズに関する項hnoise,k(t)について、(14)式から次式が得られる。
Figure 0006004430
各検出プローブで観測される定常的なノイズの大きさを考えるため、
Figure 0006004430
とし、また生体での減衰についても各チャンネルおよび波長で等しくRk,λ(t)=R0と仮定する。入射プローブからの入力光の強度も入射プローブおよび波長によらず一定I0とする。さらに、各検出プローブでのノイズnj,λ(t)の大きさも、検出プローブおよび波長によらず一定σn 2であり、波長間で独立であると仮定する。これらの仮定から、c2(t)の分散は
Figure 0006004430
となるため、hnoise,k(t)の分散を
Figure 0006004430
とすると、次式が得られる。
Figure 0006004430
Figure 0006004430
はi、jに依存しないため、ri,0、rj,0のスケールを問題としない場合には、
Figure 0006004430
とできる。
ここで、両辺の対数をとると、
Figure 0006004430
logσnoise,kをすべてのkについてまとめたベクトルをsnoiseとし、また、βi=logri,0として、これを全てのi(1≦i≦Ms+Md)についてまとめたベクトルをβとすると
Figure 0006004430
と書ける。これから
Figure 0006004430
と求められる。βiが小さなプローブほどコンタクトが弱い。
(hk(t)のhmotion,k(t)およびhnoise,k(t)への分解)
コンタクトの不安定性/弱さを評価するには、BL平面直交成分hk(t)をモーションアーティファクト hmotion,k(t)および計測ノイズhnoise,k(t)に分解する必要がある。このため、hk(t)に対してローパスフィルタおよびハイパスフィルタを適用する。hnoise,k(t)はホワイトノイズであるからローパスフィルタでの出力は非常に小さくなるが、hmotion,k(t)は体動に伴い生成する成分であるから、ローパスフィルタではあまり大きな影響を受けない。結果として、ローパスフィルタの出力をhmotion,k(t)として用いることができる。一方、ハイパスフィルタの出力にはhmotion,k(t)はほとんど含まれない。hnoise,k(t)にはコンタクトのふらつきに伴って変動する成分もあるが、これもハイパスフィルタの出力にほとんどふくまれない。このため、ハイパスフィルタの出力をhnoise,k(t)として用いることができる。
このような処理によって定まるhmotion,k(t)およびhnoise,k(t)は、その絶対的な大きさ(スケール)が正しくないかもしれないため、それから推定されるコンタクトの不安定性/弱さに関する評価値も、そのスケールが正しくないかもしれない。しかし、多数のコンタクトの中から比較的不安定であったり、弱いコンタクトを識別するためには、その絶対的な大きさ評価は不要であり、各コンタクト間の相対的な評価値がわかれば十分であるため、このような処理で問題は無い。
(不安定/弱いプローブコンタクトの識別)
各プローブコンタクトの不安定性およびその弱さはαおよびβの大きさで評価できる。しかし、実際の実験現場においては一度にたくさんのプローブコンタクトの点検・修正を行うことは困難であるため、コンタクトの中でも特に大きな不安定性/弱さを有するコンタクトを識別し、優先的に点検・修正することが、速やかに良好な計測を実現する上で効率的である。このため、αi、βiが次のような基準を満たすコンタクトiを、特に大きな不安定性/弱さを有するコンタクトとして選択する。
Figure 0006004430
ここで、μα、σαはαiの、μβ、σβはβiの平均および標準偏差とする。tα、tβはどれほどの多さのコンタクトを選択するかを定めるパラメータである。
本発明者らが用いたfNIRS多点計測のための高密度プローブ配置の例を図2(a)に示す。黒丸が入射プローブ、白丸が検出プローブであり、線が各チャンネルを表す。入射プローブ、検出プローブがそれぞれ16個あり、これらから44チャンネルが構成されている。これを頭部に装着する際には、プローブ配置中央部をEEG10−20systemのCz positionに合わせる(図2(b)参照)。NIRS装置は島津製作所製OMM−3000を用いた。計測光は780nm,805nm,830nmの3波長である。計測のサンプリング間隔は0.13秒であり、計測器からの出力のフィルタリングは行っていない。
被験者(A,B,C)について、このプローブ配置を用いて計測を行った。各被験者について手のひら全体を開いたり閉じたりすることを左右交互に行う課題を行い、その際の吸光度変化を測定した。実験は産業技術総合研究所人間工学実験委員会の承認の下で行われた。
得られた吸光度変化から、(4)式を用いてBL平面直交成分を求めた。典型的と思われる、その一部を図3右側に示す。これはいずれもch−20(図2(a)で『*』を付したチャンネル)で計測されたものであり、図3(a)(b)(c)が被験者A,B,Cに対応する。グレーで彩色された部分は課題を遂行した期間を示している。(b)では計測時間全体にわたるゆっくりとしたドリフトが観測されており、(c)では全体にわたって、大きく急激な変動が見られる。一方、各チャンネルにはホワイトノイズと思われる計測ノイズが乗っているが、その大きさは被験者によって異なり、被験者A、Bでは比較的大きく、被験者Cでは極めて小さいことが分かる。対応するもとの吸光度変化(780nm)を同図左側に示しているが、そこに見られるヘモグロビン濃度変化に由来すると思われる吸光度変化は、右側の直交成分においてはほとんど観測されない。
図3に見られるモーションアーティファクトと計測ノイズを分離するため、直交成分をフィルターで処理した。カットオフ周波数0.1Hzのローパスフィルタおよび1.0Hzのハイパスフィルタで処理した結果を図4に示す。ローパスフィルタで処理したもの(図4左側)がモーションアーティファクトを、ハイパスフィルタで処理したもの(図4右側)が計測ノイズを示し、それぞれ良好に分離できていることがわかる。
以上の結果から、次のようにして各プローブコンタクトの不安定性/弱さの評価を行う。まず、fNIRSイメージングによって得られた全てのチャンネルの吸光度変化から、(4)式を用いてBL平面直交成分を求め、さらにそれにローパスフィルタ(0.1Hz)とハイパスフィルタ(1.0Hz)を適用する。ローパスフィルタの出力を(19)式のhcontact,k(t)として用いることによりdi(t)を求め、これの各要素の分散αiを各プローブコンタクトの不安定性の評価とする。また、ハイパスフィルタの各チャンネル出力の標準偏差の対数をsnoise,kとして用いることによりβiを求め、これの各要素を各プローブコンタクトの弱さの評価とする。
被験者BのfNIRS多点計測について、得られた各チャンネルの吸光度データからBL平面直交成分を求め、その大きさ(分散)をマップとして表示したものが図5(a)である。また、この成分をローパスフィルタ(0.1Hz)およびハイパスフィルタ(1.0Hz)を用いて処理した後、その、各チャンネルでの大きさ(分散)をやはりマップとして表示したものが図5(b)および(c)である。図5(a)で示されるノイズが、このようなフィルター処理により図5(b)(c)に示す2種の成分にうまく分離できていることがわかる。
次に、ローパスフィルタの出力を(19)式のhmotion,k(t)として用いることによりdi(t)を求め、これの各要素の分散αiを求めると、図6(a)のように求まる。α1〜α16が入射プローブコンタクトの、α17〜α32が検出プローブコンタクトの不安定性を示している。値が大きい方が不安定性が高い。図から分かるように、このデータにおいては、α14が突出して大きく、14番の入射プローブが不安定であることが分かる。
また、ハイパスフィルタの出力の標準偏差の対数をsnoise,kとして用いることによりβiを求めると図6(b)のように求まる。β1〜β16が入射プローブコンタクトの、β17〜β32が検出プローブコンタクトの弱さを示している。この場合には、値が小さい方がコンタクトが弱い。図から分かるように、コンタクトの弱さについては突出して評価が悪いコンタクトは無いが、いくつかのコンタクト(β10 、β18 、β21)が悪い評価を与えられている。
上述の定義に従い、特に大きな不安定性/弱さを有するコンタクトを選択し、それらを図5のマップ(b)(c)に白いマークで書き込んだ。丸いマークは入射プローブコンタクトであり、四角いマークは検出プローブコンタクトである。ここでtα=tβ=1.5とした。結果として、効果的に不安定性/弱さを有するコンタクトを選択できている。
最後に、他の被験者のfNIRS多点計測データ2例についても、同様の処理を施した結果を図7および図8に示す(tα=tβ=1.5)。図7、8はそれぞれ被験者AおよびCの結果である。いずれの場合も良好な結果が得られている。被験者Cの場合は、総じて安定性は悪いが、弱いコンタクトは非常に少ないことが分かる。
各チャンネルは一対の入射プローブおよび検出プローブで構成されるため、あるチャンネルのノイズが大きい場合、その原因はそのチャンネルを構成する入射プローブおよび検出プローブのどちらか、あるいは両者にある。当該チャンネルだけを見た場合には、どこに原因があるかはわからないが、それらのプローブが関わるチャンネルを総合的に見ることにより、原因となるプローブを特定することが可能となる。例えば、図5(a)のch18(入射プローブS6および検出プローブD2から構成されるチャンネル)は大きなノイズを示すチャンネルであるが、そのノイズが主に計測ノイズに由来するものであることが、直交成分をフィルターで分解し、それぞれの分散を計算することによって分かる(図5(b)(c)参照)。また、ノイズの原因となっているのは主に検出プローブD2であることも図5(c)を見ることによって分かる。確かに、検出プローブD2が関与するチャンネル(D2周囲のチャンネル)は比較的大きなノイズを示しているが、入射プローブS6が関与するチャンネルはch18以外には大きなノイズを示していない。このように、チャンネル全体のノイズを分析的/総合的に調べることにより、問題のあるプローブをピンポイントで検出することが可能となった。
不安定あるいは弱いプローブコンタクトが検出された場合には、該当プローブと頭皮の間にある毛髪をできるだけ排除したり、ファイバの纏め方やプローブホルダの頭部への固定方法についての再点検を行うことにより、プローブの安定化を図る。その後、再度本手法を適用することにより、この修正がうまくいったかどうかを確認する。このようなサイクルを何度か繰り返すことにより、コンタクト全体を安定したものに収束させることができる。
従来行われている不良コンタクトの検出では、チャンネルごとのノイズの大きさに注目している。このため、どのチャンネルに問題があるかを検出することは可能であるが、そのチャンネルを構成する入射プローブと検出プローブのどちらが問題なのかを特定することはできず、不良コンタクトの絞り込みを十分に行うことができなかった。また、あるチャンネルに問題があった場合、そのチャンネルを構成する両方のプローブの調整を行わざるをえないが、場合によっては、問題の無い側のプローブをいじってしまい、逆にそのコンタクトを悪化させることもありえた。本発明の手法は、チャンネルではなく、どのプローブのコンタクトに問題があるかをピンポイントで示すことが可能であり、このような問題が無い。
さらに本発明の手法では、不良コンタクトから生じている問題が、モーションアーティファクトであるのか計測ノイズであるのかを示すことができる。モーションアーティファクトと計測ノイズではその原因が異なっているため、提案した手法を用いれば、プローブ調整について両者で異なったアプローチをとることが可能である。また、通常、モーションアーティファクトの方が、計測ノイズよりもデータに与える問題が大きいが、計測ノイズに関わるプローブはさわらずに、モーションアーティファクトに関わるプローブのみを調整するといった選択を行うことができる。これにより、モーションアーティファクトを生じていなかったプローブを誤っていじってしまい、逆に不安定にしてしまうといったことを避けることができる。
検出された不安定あるいは弱いプローブコンタクトの位置は計測装置のモニターに表示することが一番簡単である。しかしこの場合、検出されたプローブ位置の確認はモニターで行い、一方、プローブの修正は被験者のそばに移動して行う必要があり、コンタクト全体の安定化のためには、モニターとプローブ間を何度も行き来しなければならず、手間がかかる。一方、各プローブにそのコンタクトの不安定性、弱さを表示できるLEDなどのデバイスを附置できれば、問題のあるプローブの位置を実験者に直観的に表示することが可能である。こうすることにより、問題のあるプローブの位置が一目でわかるため、コンタクト全体の安定化処理を迅速に進めることができる。

Claims (4)

  1. 多数の入射プローブおよび検出プローブを頭表に配置し、入射プローブから3波長以上の近赤外光を脳内に照射し、検出プローブから出てくる光の輝度を計測して得られた吸光度変化から、オキシおよびデオキシヘモグロビン濃度の変化を求めることにより脳機能の状態を計測するとともに、前記吸光度変化からノイズ成分としてBL平面直交成分を抽出してプローブのコンタクト不良を検知する生体光計測装置において、
    ローパスフィルタとハイパスフィルタを備え、前記抽出したノイズ成分をローパスフィルタ処理した出力をモーションアーティファクトのみによるもの、前記抽出したノイズ成分をハイパスフィルタ処理した出力を計測ノイズのみによるものとして2つに分解することを特徴とする生体光計測装置。
  2. 入射プローブおよび検出プローブのコンタクトにおける計測光の減衰の定常的な大きさおよび減衰度の時間的なふらつきから、吸光度変化に含まれるモーションアーティファクトや計測ノイズの大きさが定まるため、前記ローパスフィルタ処理した出力からこの逆問題を解いて各プローブのコンタクトにおける計測光の減衰度の時間的なふらつきを算出し、前記ハイパスフィルタ処理した出力からこの逆問題を解いて各プローブのコンタクトにおける計測光の減衰の定常的な大きさを算出し、これらを当該コンタクトのモーションアーティファクトおよび計測ノイズに対する評価指標として用いることを特徴とする請求項1に記載の生体光計測装置。
  3. 前記算出したモーションアーティファクトに対する評価指標および計測ノイズに対する評価指標を表示するモニターを備えることを特徴とする請求項2に記載の生体光計測装置。
  4. 前記算出したモーションアーティファクトに対する評価指標および計測ノイズに対する評価指標をプローブ毎に表示する表示装置を各プローブに設置したことを特徴とする請求項2に記載の生体光計測装置。
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