定義
以下の説明、図、および表では、多くの用語が用いられる。このような用語に与えられる範囲を含め、本明細書および特許請求の範囲を記載する目的で、以下の定義を与える。
本明細書で用いられる「ある(a)」とは、それが用いられる文脈に応じて、1つ以上を意味し得る。
「農業形質」という用語は、植物体の生産力または経済的価値に寄与する、その植物体の表現型形質または遺伝形質について説明する。このような形質には、病害耐性、虫害耐性、ウイルス耐性、線虫耐性、干ばつ忍容性、高塩分忍容性、収量、草高、成熟日数、穀粒の粒ぞろい(すなわち、穀粒サイズの分画)、穀粒の窒素含量などが含まれる。
オオムギベースの飲料(例えば、ビール)の製造のプロセスに関して、特に、麦芽製造プロセスを記載するのに用いる場合の「オオムギ」という用語は、オオムギの穀粒を意味する。別段に指定しない限り、他のすべての場合、「オオムギ」が任意の育種系統または栽培品種または品種を含めたオオムギ植物体(Hordeum vulgare, L.)を意味するのに対し、オオムギ植物体の一部とは、オオムギ植物体の任意の一部、例えば、任意の組織または細胞であり得る。
「オオムギの醸造」プロセスにおいて、ウォートは、麦芽にしていないオオムギの抽出物を、オオムギ成分を加水分解する酵素混合物と共にインキュベートすることにより調製する。オオムギの醸造により生成されるウォートは、「オオムギウォート」、または「オオムギ醸造」ウォートと称することができる。
「病害耐性」とは、植物体が、植物体−病原体間相互作用の結果である病害症状を回避することを意図する。このようにして、病原体が、植物病害、ならびに関連する病害症状を引き起こすことが予防される。代替的に、病原体により引き起こされる病害症状は、最小化または軽減されるか、またはなお予防される。
本明細書で用いられる「DMSP」とは、DMS前駆体またはDMSポテンシャル、すなわち、飲料の作製の間においてDMSへと変換され得る分子の略号である。SMMが、DMSPの全部ではないにせよ、その主要部分を占める。本明細書では、特定の植物材料またはその生成物において、アルカリ性の条件で1時間にわたり煮沸することによりDMSPから生成され得るDMSの量として、DMSPのレベルを定義する。本明細書で定義される場合、1ppbのDMSPは、1ppbのDMSに変換され得る。
本明細書で用いられる「二重ヌルLOX」という用語は、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異および機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異を指す。したがって、「二重ヌルLOXのオオムギ植物体」とは、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異とを含むオオムギ植物体である。 同様に、「二重ヌルLOXの穀粒」とは、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異とを有する穀粒である。
「二重ヌルLOX−ヌルMMT」という用語は、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異、および機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異を指す。したがって、「二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体」とは、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを含むオオムギ植物体である。同様に、「二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒」とは、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを有する穀粒である。有用な二重ヌルLOX−ヌルMMTの例は「三重ヌル」と称し、本明細書の下記の実施例に記載する。
本明細書で定義される「穀類」植物とは、主にそれらのデンプン含有種子または穀粒のために栽培される、イネ科(Graminae)植物のメンバーである。穀類植物には、オオムギ(Hordeum属)、コムギ(Triticum属)、コメ(Oryza属)、トウモロコシ(Zea属)、ライムギ(Secale属)、オートムギ(Avena属)、ソルガム(Sorghum属)、ならびにライムギとコムギとの交配種であるライコムギが含まれるが、これらに限定されない。
特定の核酸との関連における「コードする」または「コードされる」とは、特定のタンパク質へと翻訳されるための情報を含むことを意味する。タンパク質をコードする核酸またはポリヌクレオチドは、その核酸の翻訳領域において非翻訳配列、例えば、イントロンを含む場合もあり、例えば、cDNAにおいて、かかる介在する非翻訳配列を欠く場合もある。タンパク質をコードする情報は、コドンを用いることにより指定される。
核酸と関連して本明細書で用いられる「発現」とは、核酸断片に由来するセンスmRNAまたはアンチセンスRNAの転写および蓄積として理解されるものとする。タンパク質との関連で用いられる「発現」とは、mRNAがポリペプチドへと翻訳されることを指す。
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAの断片を意味し、該コード領域に先行および後続する領域(プロモーターおよびターミネーター)を包含する。さらに、植物の遺伝子は一般に、イントロンが間に入るエクソンからなる。RNAへと転写されると、スプライシングによりイントロンが除去されて、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)が生成される。エクソンとイントロンとの間の「スプライス部位」は、一次RNA転写物からのイントロンの欠失と、切除されたイントロンの各側において残存するRNAの端の接合または融合とからなる、スプライシングプロセスのためのスプライスシグナルとして作用するコンセンサス配列により決定されることが典型的である。場合によって、スプライシングの代替的であるかまたは異なるパターンは、同じ単一のDNAの範囲(stretch)から、異なるタンパク質を生成させ得る。天然の遺伝子を、「内因性遺伝子」と称することができる。
核酸との関連において本明細書で用いられる「異種」とは、外来種に由来するか、または、同じ種に由来する場合、意図的で人為的な介入により、組成および/または遺伝子座が、その天然形態から実質的に改変されている核酸である。
本明細書で用いられる「発芽」という用語は、天然で見出されるような通常の土壌など、各種の組成物において、オオムギ穀粒の成長が開始または再開されることを意味する。したがって、発芽している胚芽とは、発芽を経過しつつある胚芽である。発芽はまた、成長チャンバーなどの中に置いたポットの土壌中で生じる場合もあり、または、例えば、標準的な実験室用ペトリディッシュ内に置かれた湿らせた濾紙上で生じる場合もあり、あるいは、麦芽になる間において(例えば、麦芽製造工場のスティープタンクまたは発芽箱内において)生じる場合もある。発芽は一般に、穀粒の水和、穀粒の膨潤、および胚芽の成長の誘導を包含すると理解される。発芽に影響する環境因子には、水分、温度、および酸素レベルが含まれる。根および苗条の発育が観察される。
「穀粒」という用語は、また、内種子とも称する穀類の頴果、外花頴、および内花頴を含むものと定義される。大半のオオムギ品種では、外花頴および内花頴が頴果に付着し、脱穀後における穀粒の一部をなす。しかし、裸性のオオムギ品種もまた生じる。これらにおいては、頴果が、外花頴および内花頴から遊離しており、コムギの場合と同様に、脱穀により完全に遊離する。本明細書では、「穀粒(kernel)」および「穀粒(grain)」という用語を互換的に用いる。
「穀粒の発生」とは、花粉細胞による卵細胞の受精で始まる期間を指す。受精の間、代謝による貯蔵物質、例えば、糖、オリゴ糖、デンプン、フェノール性物質、アミノ酸、およびタンパク質が、液胞の標的化を伴い、また、これを伴わずに、穀粒(穀粒)内の各種の組織、例えば、内乳、種皮、アリューロン、および胚盤へと蓄積され、これにより穀粒(穀粒)の拡大、穀粒(穀粒)の充実がもたらされ、穀粒(穀粒)の乾燥により終わる。
「機能的・・・の完全な喪失」という用語は、所与の酵素活性の欠如を指す。したがって、「機能的LOX−1および機能的LOX−2を完全に喪失」させたオオムギ植物体は、検出可能なLOX−1活性およびLOX−2活性を示さないオオムギ植物体である。LOX−1酵素およびLOX−2酵素は他の活性も有し得るが、本発明の文脈におけるLOX−1活性およびLOX−2活性は、リノール酸からの9−HPODEおよび13−HPODEの形成を決定するアッセイ手順により決定される。リノール酸からの9−HPODEおよび13−HPODEの形成は、国際特許第PCT/DK2009/050355号の実施例4において記載されている通りに決定することが好ましい。活性は、発芽胚のタンパク質抽出物を用いて決定するものとする。本発明の文脈では、国際特許第PCT/DK2009/050355号の実施例4において記載されているアッセイを用い、リノール酸を基質として用いる場合に、国際特許第PCT/DK2009/050355号の図5Aに示される基準物質の9−HPODEピークの5%未満、好ましくは3%未満に対応するクロマトグラムピーク、および/または、国際特許第PCT/DK2009/050355号の図5Aに示される基準物質の13−HPODEピークの5%未満、好ましくは3%未満に対応するピークが生成することにより、検出可能なLOX−1活性およびLOX−2活性が存在しないと考えられる。機能的LOXの完全な喪失を得るための分子手法は、前記酵素の転写物の完全な非存在を引き起こすか、もしくは対応するコードされた酵素の完全な非存在を引き起こす変異か、またはコードされた酵素を完全に不活化する変異の発生を含む。同様に、「機能的MMTを完全に喪失させた」オオムギ植物体とは、MMT酵素活性の欠如、すなわち、本明細書の下記の実施例2に記載するアッセイを用いた場合に検出可能なMMT活性を示さないオオムギ植物体を指す。あるいは、オオムギ植物体のMMT活性は、前記オオムギのMMT cDNAを単離し、前記cDNAによりコードされるタンパク質が、SAMからMetへのメチル基の転移を触媒し、これにより、SMMを形成することができるかどうかを決定することにより決定する。
「LOX−1活性」という用語は、オオムギLOX−1酵素の酵素活性を指す。特に、本発明の関連において、「LOX−1活性」とは、リノール酸から9−HPODEをもたらし、これよりはるかに劣る程度で13−HPODEをもたらす二原子酸素添加反応を酵素により触媒することである。LOX−1酵素は、他の反応を触媒することも可能であるが、本発明によるLOX−1の活性を決定する目的では、9−HPODE形成活性および13−HPODE形成活性だけを考えるべきである。図1Aは、リノール酸が9−HPODEへと変換される生化学経路を概説する。
「LOX−2活性」という用語は、オオムギLOX−2酵素の酵素活性を指す。特に、本発明の関連において、「LOX−2活性」とは、リノール酸から13−HPODEをもたらし、これよりはるかに劣る程度で9−HPODEをもたらす二原子酸素添加反応を酵素により触媒することである。LOX−2酵素は、他の反応を触媒することも可能であるが、本発明によるLOX−2の活性を決定する目的では、13−HPODE形成活性および9−HPODE形成活性だけを考えるべきである。図1Aは、リノール酸が13−HPODEへと変換される生化学経路を概説する。
「麦芽飲料」という用語および「麦芽ベースの飲料」という用語は、麦芽を用いて調製される飲料、好ましくは麦芽を熱湯と共にインキュベートする工程を含む方法により調製される飲料を指す。この用語は、本明細書では互換的に使用される。麦芽飲料は、例えばビールまたはモルティナであり得る。本出願のビールは、「オオムギの醸造」(上記の定義を参照されたい)を用いて作製することもできる。
「発酵麦芽飲料」という用語は、発酵させた麦芽飲料、すなわち、酵母と共にインキュベートした麦芽飲料を指す。
「麦芽製造」とは、麦芽製造工場のスティープタンクおよび発芽箱を含むが、これらに限定されない、制御された環境条件下で生じるオオムギ穀粒の発芽の特殊な形態である。本発明のプロセスによれば、麦芽製造は、オオムギ穀粒がスティーピングされる間および/またはスティーピングされた後で生じ始める。麦芽製造プロセスは、例えば、キルン乾燥プロセスにおいてオオムギ穀粒を乾燥させることにより、停止させることができる。キルン乾燥は、通常は高温で実施されるが、本発明の利点は、キルン乾燥を、それよりも低い温度で実施することができることである。麦芽がキルン乾燥されていない場合は、「緑麦芽」と称する。二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから調製された麦芽組成物は、純粋の二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽、または二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽を含む任意の麦芽のブレンドなど、二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽を含むものと理解される。好ましくは、前記組成物は、二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽のみから調製される。麦芽は、例えば、破砕することにより加工することができ、したがって、「破砕麦芽」または「フラワー」と称し得る。
「マッシング」とは、水中における破砕麦芽のインキュベーションである。マッシングは、特定の温度、および特定の体積の水で実施することが好ましい。温度および水の体積は、麦芽に由来する酵素活性の低下率に影響を及ぼし、このため、とりわけ、生じ得るデンプンの加水分解量に影響を及ぼすので重要であり、プロテアーゼ作用もまた重要であり得る。マッシングは添加物の存在下で行い得、これには、全穀粒として、または粗引き穀物、シロップ、もしくはデンプンなどの加工生成物としての、オオムギ(例えば、二重−ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギが挙げられる)、オオムギシロップ、またはトウモロコシ、またはコメなどであるがこれらに限定されない、麦芽以外の任意の炭水化物供給源が含まれるものと理解される。前述の添加物のすべてを、抽出物のさらなる供給源として主に用いることができる(ウォート加熱の間にはシロップを投与することが典型的である)。醸造における添加物を加工するための要件は、用いられる添加物の状態および種類、ならびに、特に、デンプンのゼラチン化温度または液化温度に依存する。該ゼラチン化温度が通常の麦芽の糖化のためのゼラチン化温度より高温である場合は、マッシュに添加する前に、デンプンをゼラチン化および液化させる。
「MMT活性」という用語は、オオムギのメチオニンS−メチルトランスフェラーゼ酵素の酵素活性を指す。本発明の文脈における「MMT活性」とは、SMMをもたらす、Metの硫黄原子におけるMMT触媒のメチル化である。MMT酵素は、他の反応も触媒することが可能であり得るが、本発明によるMMTの活性を決定する目的では、SMM形成活性だけを考慮すべきである。図1Bは、メチル化により、MetがSMMへと変換される生化学反応を概説する。
「変異」には、遺伝子のコード領域および非コード領域における欠失、挿入、置換、トランスバージョン、および点変異が含まれる。欠失は、全遺伝子を対象とする場合もあり、遺伝子の一部だけを対象とする場合もあり、この場合、非コード領域は、プロモーター領域、またはターミネーター領域、またはイントロンであることが好ましい。点変異は、1塩基または1塩基対の変化に関する場合があり、その結果として、終止コドン、フレームシフト変異、またはアミノ酸置換をもたらし得る。本明細書の図8(この図は、変異したオオムギの穀粒が、育種プログラムにおいて、どのようにして繁殖し得るかについての概要を提示する)を参照すると、M3世代の穀粒、ならびにこれらから直接的に繁殖した穀粒、またはそれらの植物体を含めた、任意の後続世代の穀粒を、「生の変異体」と称することができる。さらに、なおも本明細書の図8を参照すると、「育種系統」という用語は、栽培品種の植物体との異種交配の結果の場合もあり、別個の特異的な形質を有する別の育種系統との異種交配の結果の場合もある、M4世代の穀粒、ならびにこれらの植物体を含めた任意の後続世代を指す。
「ヌルLOX」という用語は、LOXをコードする遺伝子内に変異が存在し、コードされるLOX酵素(LOX−1もしくはLOX−2のいずれか、またはLOX−1とLOX−2の両方)の機能の完全な喪失を引き起こすことを指す。LOXをコードする遺伝子において未熟終止(ナンセンス)コドンを発生させる変異は、機能的LOXの完全な喪失を得ることができる1つの機構を表すに過ぎない。機能的LOXの完全な喪失を得る分子的手法は、前記酵素についての転写物の完全な非存在をもたらす変異、またはコードされる酵素の完全な不活化を引き起こす変異の発生を含む。植物体との関連における「ヌルLOX」とは、機能的LOX酵素の完全な喪失を結果としてもたらす変異を有する植物体を指す。
本明細書で用いられる、「ヌルMMT」という用語は、機能的なS−アデノシルメチオニン:メチオニンS−メチルトランスフェラーゼ酵素(メチオニンS−メチルトランスフェラーゼ酵素とも称する)の完全な喪失を指す。したがって、「ヌルMMTのオオムギ植物体」とは、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす、MMTをコードする遺伝子における変異を含むオオムギ植物体である。同様に、「ヌルMMTの穀粒」とは、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす、MMTをコードする遺伝子における変異を含む穀粒である。
「作動可能に連結された」とは、一方の機能が、他方により影響を受けるような、単一のポリヌクレオチド上における、2つ以上の核酸断片の会合を指すのに用いられる用語である。例えば、コード配列の発現に影響を及ぼすことが可能である場合、すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合、そのプロモーターは、そのコード配列と作動可能に連結されている。コード配列は、センス方向において制御配列と作動可能に連結される場合もあり、アンチセンス方向において制御配列と作動可能に連結される場合もある。
「PCR」または「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特定のDNA断片を増幅するのに用いられる技法として、当業者により周知である(Mullis, K.B.らへの米国特許第4,683,195号および同第4,800,159号)。
「植物体」または「植物材料」とは、植物細胞、植物プロトプラスト、ならびに、それからオオムギ植物体が再生され得る植物細胞組織の培養物(植物体のカルス(calli)、および、胚、花粉、胚珠、花、穀粒、葉、根、根端、葯、または植物体の任意の部分もしくは生成物など植物体において完全である、または植物体の部分である植物細胞を含めた)を包含する。一実施形態では、植物材料は、それからオオムギ植物体が再生され得ない植物細胞であり得る。
「植物生成物」という用語は、植物体または植物材料を加工することの結果として得られる生成物を意味する。したがって、前記植物生成物は、例えば、麦芽、ウォート、発酵飲料もしくは非発酵飲料、食物生成物、または飼料生成物であり得る。
タンパク質との関連において本明細書で用いられる「組換え」とは、外来種に由来するか、または、同じ種に由来する場合、意図的で人為的な介入により、組成がその天然形態から実質的に改変されているタンパク質である。
本出願の意味の範囲内における「専門家によるビール試飲パネル」とは、アルデヒド、紙質の(papery)風味、古い風味(old taste)、エステル、高級アルコール、脂肪酸および硫黄成分に特別の焦点を当てて、ビールの風味を味わい、説明することにおいて広く熟練した専門家によるパネルである。風味成分を評価するための分析ツールは多数存在するが、風味活性成分の相対的重要性を分析的に評価することは難しい。しかし、風味の専門家によれば、このような複雑な特性を評価することができる。彼らの持続的な訓練には、標準的なビール試料の試飲および評価が含まれる。
「スプライス部位」という用語は、遺伝子のエクソンとイントロンとの間の境界部位を意味する。したがって、スプライス部位は、エクソンからイントロンへと移行する境界部位(「ドナー部位」と呼ばれる)の場合もあり、イントロンをエクソンから隔てる境界部位(「アクセプター部位」と呼ばれる)の場合もある。植物体におけるスプライス部位は、コンセンサス配列を含むことが典型的である。イントロンの5’端は、一般に、保存的なGTジヌクレオチド(mRNAではGU)からなり、イントロンの3’端は、通常、保存的なAGジヌクレオチドからなる。したがって、イントロンの5’側スプライス部位は、イントロンの5’端を含み、該3’側スプライス部位は、イントロンの3’端を含む。本発明の文脈の範囲内では、イントロンのスプライス部位は、(一般にGTである)該イントロンの大半の5’側ジヌクレオチドからなる、5’側スプライス部位;または(一般にAGである)該イントロンの大半の3’側ジヌクレオチドからなる、3’側スプライス部位であることが好ましい。
別段に言及しない限り、「T2N」とは、遊離形態におけるtrans−2−ノネナール(T2N)を意味する。T2Nはまた、場合によって、2−E−ノネナールも指すことがある。
「T2Nポテンシャル」という用語により、1つ以上の反応において、T2Nを放出するか、またはT2Nへと変換される能力を有する化学物質が記載される。本明細書の文脈において、T2Nポテンシャルは、100℃、pH4.0で2時間にわたるインキュベーションの間、溶液、例えば、ウォートもしくはビール中へと放出されるT2Nの濃度として定義される。実用的に述べると、出発T2N濃度を決定し、その後、100℃、pH4.0で2時間にわたり溶液をインキュベートした後で、T2N濃度を決定する。出発T2N濃度と、終末T2N濃度との差を、T2Nポテンシャルと称する。熱処理、酸処理により、T2Nポテンシャルから、例えば、「T2N付加物」(この用語は、タンパク質(複数可)、亜硫酸塩、細胞破砕物、細胞壁などが含まれるがこれらに限定されない、1つ以上の物質にコンジュゲートしたT2Nを記載するのに用いられる)からT2Nを遊離させる。一般に、T2N付加物自体をオフフレーバーとして人が感知することはない。しかし、前記T2N付加物から放出されるT2Nは、オフフレーバーを発生させ得る。
「組織培養物」とは、種類が同じであるかもしくは異なる単離細胞、または、例えば、プロトプラスト、カルス、胚芽、花粉、葯などを含む植物体の一部へと組織化されたこのような細胞の集合体を含む組成物を指す。
本明細書で用いられる「トランスジェニック」とは、異種核酸を導入することにより改変された細胞への言及、または細胞が、このようにして改変された細胞に由来することへの言及を包含する。したがって、例えば、トランスジェニック細胞は、細胞の天然形態では同一の形態で見出されない遺伝子を発現するか、または意図的で人為的な介入の結果として、別の異常な形で発現するか、過小発現するか、またはまったく発現しない天然遺伝子を発現する。植物体、特に、オオムギ植物体との関連において本明細書で用いられる「トランスジェニック」という用語は、従来の植物育種法による(例えば、NaN3ベースの変異誘発)、または意図的で人為的な介入を伴わない天然におこるイベントによる細胞の変化を包含しない。
「野生オオムギ」(Hordeum vulgare ssp. spontaneum)は、現行のオオムギの栽培形態の先祖であると考えられる。野生状態から栽培状態へのオオムギの移行は、「オオムギ在来種」への該植物体の栽培化(domestication)と符合したと考えられている。これらは、野生オオムギより、新型栽培品種との遺伝子的類縁性がより密接である。
「野生型」オオムギという用語は、従来の方法で生成されたオオムギ植物体を指す。好ましくは、該用語は、本発明のオオムギ植物体が由来するオオムギ植物体、すなわち、親植物体を指す。野生型オオムギ穀粒は、一般に、例えば、種子会社から、「栽培品種」または「品種」、すなわち、米国の国立植物育種機関により列挙される遺伝子的に類似の穀粒として入手可能である。複数のヌルLOX−1のオオムギ栽培品種(例えば、栽培品種ChamonixおよびCharmay)が入手可能であるが、本明細書では、本発明をよりよく理解する目的で、すべてのヌルLOX−1植物体、ヌルLOX−2植物体、二重ヌルLOX植物体、および二重ヌルLOX−ヌルMMTの植物体を変異体の植物体と考え、野生型の植物体は変異体の植物体とは考えない。本明細書では、「栽培品種」および「品種」という表記法は、互換的に用いられる。
「ウォート」という用語は、麦芽、例えば、破砕麦芽もしくは緑麦芽、または破砕緑麦芽の液体抽出物を意味する。オオムギの醸造において、ウォートはまた、麦芽にしていないオオムギの抽出物を、オオムギ成分を加水分解する酵素の混合物と共にインキュベートすることによっても調製することができる。前記麦芽またはオオムギ由来の抽出物に加えて、該液体抽出物は、麦芽と、発酵性の糖へと部分的に変換されるさらなるデンプン含有材料など、さらなる成分とから調製することができる。ウォートは、一般に、マッシングにより得られるが、必要に応じて、マッシング後のビール粕から、残存する糖および他の化合物を熱湯により抽出するプロセスにおいて、「スパージング」を続いて実施する事によって得られる。スパージングは、濾過槽、マッシュフィルター、またはビール粕から抽出される水の分離を可能とする別の装置内で実施することが典型的である。マッシング後において得られるウォートを、一般に、「一番ウォート」と称するのに対し、スパージング後において得られるウォートを、一般に、「二番ウォート」と称する。指定しない限り、ウォートという用語は、一番ウォートの場合もあり、二番ウォートの場合もあり、両者の組合せの場合もある。従来のビール生産の間には、ウォートをホップと共に煮沸するが、本発明は、ウォートの煮沸を減らす、またはウォートの煮沸を回避するための方法を提供する。ホップを伴わないウォートは、「スイートウォート」とも称し得るのに対し、ホップと共に煮沸/加熱したウォートは、「煮沸ウォート」と称し得る。
オオムギベースの飲料を調製するための方法
本発明は、エネルギー投入の低減を伴う、オフフレーバーおよびその前駆体のレベルが低いオオムギベースの飲料を調製するための方法に関する。オフフレーバーは本明細書の下記の通りであるが、オフフレーバーはT2NおよびDMSであることが好ましい。方法は、好ましくは二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体であるオオムギ植物体の使用を包含する。このようなオオムギ植物体は、本明細書の以下でより詳細に記載する。
本発明によると、方法は、一般には、前記二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を麦芽にする工程を含むが、本発明のいくつかの実施形態では、オオムギベースの飲料は、麦芽にしていないオオムギを用いて調製する。麦芽製造については、本明細書の以下の節「麦芽製造」においてより詳細に記載する。
方法は、さらには、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギまたは二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽またはこれらの混合物を、必要に応じて、さらなる添加物の存在下で、マッシングすることによりウォートを調製する工程を含む。マッシングについては、本明細書の以下の節「マッシング」においてより詳細に記載する。
方法は、また、前記ウォートを、必要に応じてさらなる成分(複数可)の存在下で加熱する工程であって、ウォートの体積の最大で4%、例えば最大で2%を蒸発させ、これにより、加熱ウォートを得る工程も含む。この工程は、本明細書の節「加熱ウォート」においてより詳細に記載する。
最終的に、方法は、加熱ウォートを飲料へと加工する工程を含む。方法のその部分については、本明細書の以下の節「飲料の調製」においてより詳細に記載する。
麦芽製造
「麦芽製造」という用語により、制御された環境条件下で行なわれるプロセスにおける、スティーピングされたオオムギ穀粒の発芽(例えば、図9、工程2および3で示される)、それに続く乾燥工程が理解されるものとする。前記乾燥工程は、好ましくは発芽した穀粒を高温でキルン乾燥することであり得る。
乾燥させる前の、スティーピングされて発芽したオオムギ穀粒を「緑麦芽」と称するが、これもまた、本発明による植物生成物を表し得る。この上述の一連の麦芽製造イベントは、主に、死んだ内乳の細胞壁を解重合させ、穀粒の栄養物質を移動させ、他のデポリメラーゼを活性化するプロセスである、穀粒の改変を引き起こす多数の酵素を合成するのに重要である。その後の乾燥させるプロセスでは、化学褐変反応によって、風味および色が生成される。
麦芽製造とは、高度にエネルギーを消費するプロセスである。特にキルン乾燥もまた、高温が必要であるので、エネルギーを消費するプロセスである。キルン乾燥には、特に、(i)発芽したオオムギ穀粒を乾燥させること;(ii)発芽を停止させること;(iii)T2NおよびT2Nポテンシャルのレベルを低下させるためにリポキシゲナーゼを変性させること;および(iv)DMSを前駆体から生成し、DMSポテンシャルおよびDMSのレベルを低下させるためにDMSを除去することとを含めた、いくつかの目的がある。
本発明によると、キルン乾燥を低温で、かつ、上記の目的をなお実現しながら実施することができる。機能的LOX−1および機能的LOX−2が喪失したオオムギ植物体を用いることにより、リポキシゲナーゼを変性させる必要がなくなる。機能的MMTが喪失したオオムギ植物体を用いることにより、このようなオオムギ植物体においてはDMSおよびDMSポテンシャルのレベルは微小であるので、それらのレベルを低下させる必要がなくなる。したがって、低温においてさえもオオムギ穀粒を乾燥させることができ、発芽を停止させることができる。
したがって、本発明による麦芽製造は、
(a)二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギをスティーピングする工程と;
(b)前記オオムギを発芽させる工程と;
(c)前記オオムギを、好ましくはキルン乾燥により、乾燥させる工程と
を含むことが好ましい。
スティーピングは、当業者に公知の任意の従来の方法によって実施することができる。非限定的な一例は、10〜25℃の範囲内の温度で、乾燥条件と湿潤条件を交互に繰り返してスティーピングする工程を含む。スティーピングの間に、例えば、オオムギを、湿潤条件で30分間〜3時間の範囲内でインキュベートし、その後に乾燥条件で30分間〜3時間の範囲内でインキュベートし、必要に応じて、前記インキュベーションスキームを、2〜5回の範囲内で繰り返すことができる。スティーピング後の最終的な含水率は、例えば、40〜50%の範囲内であり得る。
発芽は、当業者に公知の任意の従来の方法によって実施することができる。非限定的な一例は、1〜4時間の範囲内で、10〜25℃の範囲内の温度で、必要に応じて温度変化を伴って発芽させることを伴う。
適切なスティーピングスキームおよび発芽スキームの非限定的な例は、本明細書の以下の実施例9において概説される。
キルン乾燥は、少なくとも75℃、例えば、80〜85℃の範囲内など、80〜90℃の範囲内など、従来の温度で実施することができる。したがって、例えば、麦芽は、Briggsら(1981年)およびHoughら(1982年)により記載される方法のうちのいずれかにより生成させることができる。しかし、麦芽を焙煎する方法が含まれるがこれらに限定されない、特殊麦芽(specialty malt)を生成させるための方法など、麦芽を生成させるのに適する他の任意の方法もまた、本発明と共に用いることができる。非限定的な例については、実施例6および8および9に記載する。
しかし、前記キルン乾燥は、低温で、より好ましくは80℃を下回る温度で、さらにより好ましくは、70℃を下回る温度など、例えば、65℃を下回る温度、60℃を下回る温度など、例えば、55℃を下回る温度、50℃を下回る温度など、例えば、45℃を下回る温度、41℃を下回る温度など、75℃を下回る温度で実施されることが好ましい。したがって、温度がキルン乾燥の間のいずれの時間においても80℃を超えない、好ましくは75℃を超えないことが好ましい。
前記乾燥が低温で実施される場合、発芽したオオムギ穀粒を十分に乾燥させるために、キルン乾燥の時間を増加させることができる。キルン乾燥は、発芽した穀粒の含水率を、10%未満、好ましくは8%未満、より好ましくは6%未満まで減少させるために十分な時間にわたり実施されることが好ましい。したがって、従来のキルン乾燥温度である85℃では、キルン処理時間(kilning time)は、1〜3時間の範囲内であり得るのに対して、70℃〜80℃の範囲内の温度におけるキルン処理では、1〜10時間の範囲内のキルン処理時間が必要になり得;50〜70℃の範囲内の温度におけるキルン処理では、3〜50時間の範囲内のキルン処理時間が必要になり得るのに対して、50℃を下回る温度、例えば、40〜50℃の範囲内でのキルン処理では、48時間など、40〜60時間の範囲内、例えば、45〜52時間の範囲内など、40時間を超えるキルン処理時間が必要になり得る。
一態様では、本発明は、麦芽製造により、好ましくは本明細書のすぐ上に記載された麦芽製造により二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒から調製される麦芽組成物にも関する。
前記麦芽組成物は、上記の通り低キルン処理温度で調製した場合でさえ、低レベルのT2NおよびT2Nポテンシャルを含む。特に、前記麦芽組成物は、低レベルのT2Nポテンシャル(およびT2N前駆体)を含む。
オオムギを高温処理および/または乳酸処理にかける場合がある浸漬プロセスにより、オオムギ穀粒内のLOX活性を低下させ得ることが記載されている。しかし、このような浸漬プロセスもまた、エネルギーを消費する。さらに、このような処理は、所望の酵素活性、例えば、フィターゼ活性を低下させるなど、他の有害作用を有し得る。加えて、このような処理は、LOX活性を、加熱処理を行った時点と比べて低下させるだけであり、それ以前におけるLOX活性に由来する生成物の蓄積には影響を及ぼさない。
本発明による一実施形態では、オオムギ穀粒を少なくとも70℃の温度での浸漬には供さない方法を用いて、植物生成物を調製する。オオムギ穀粒を、乳酸の存在下において、少なくとも57℃の温度での浸漬には供さない方法を用いて、本発明による植物生成物を調製することも好ましい。
前記麦芽組成物は、含むT2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した麦芽組成物と比較して60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満、例えば、20%未満であることが好ましい。
前記麦芽組成物は、70℃〜80℃の温度の範囲でキルン乾燥した場合でさえ、含むT2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した麦芽組成物と比較して60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満であることがさらに好ましい。
前記麦芽組成物は、50℃〜70℃の温度の範囲でキルン乾燥した場合でさえ、含むT2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した麦芽組成物と比較して60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満であることがさらに好ましい。
前記麦芽組成物は、40℃〜50℃の温度の範囲でキルン乾燥した場合でさえ、含むT2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した麦芽組成物と比較して60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満であることがさらに好ましい。
T2NおよびT2Nポテンシャルのレベルが低いことに加えて、本発明による麦芽は、上記の低キルン処理温度で調製した場合でさえ、含むDMSおよびDMS前駆体のレベルも低い。
興味深いことに、DMSは、沸点が37℃〜38℃の、どちらかといえば揮発性化合物であり(Imashuku、上掲)、麦芽生成の間、例えば、キルン乾燥の間に、一般に、相当量のDMSが蒸発するように、組成物を熱にかける。しかし、通常の麦芽組成物の冷却の間に、より多くのDMSがDMS前駆体(DMSP)から生成し得る。本発明の1つの主要な利点は、麦芽組成物において生成されるDMSP(特にSMM)がまったくない、または極めて少ないことである。
麦芽中におけるDMS濃度を低下させるための方法が記載されている。これらの方法の多くは、高度にエネルギーを消費する麦芽の加熱処理に依拠する。前記加熱処理は、例えば、キルン乾燥の間に単に麦芽を加熱することであり得る、または、蒸気をあてることにより遊離DMSを揮発させることおよび/または除去することを伴い得る。したがって、麦芽を蒸気処理することにより、麦芽中における遊離DMSのレベルを低下させ得るが、これはさらに、高エネルギーを消費するプロセスを意味する。さらに、これらの方法は、主に麦芽中における遊離DMSのレベルを低下させ、SMMのレベルに対する効果はほんの少しである。本発明の一実施形態では、本発明の麦芽組成物を、遊離DMSを蒸気により揮発させて除去することを伴う限定された処理のみに供しているか、あるいは、キルン乾燥の間に蒸気を用いて遊離DMSを揮発させて除去することを伴う処理に供していない。
本発明の一実施形態では、本発明による麦芽は、臭素酸カリウムまたは臭素酸カルシウムなどの臭素酸塩で処理されていないことが好ましい。
本発明の麦芽組成物は、含む遊離DMSが、最大で3μg/g、好ましくは最大で2μg/g、より好ましくは最大で1μg/g、なおより好ましくは最大で0.5μg/g、最大で0.2μg/gなどであることが好ましい。加えて、本発明の麦芽組成物は、含むDMSPが、好ましくは最大で2μg/g、好ましくは最大で1μg/g、より好ましくは最大で0.5μg/g、なおより好ましくは最大で0.2μg/gであることが好ましい。好ましくはSMMであり得るDMSPの濃度は、本文書の本箇所および他の箇所において、前記DMSPから放出し得るDMSの濃度で示される。
前記麦芽組成物は、70〜80℃の範囲内の温度でキルン乾燥した場合でさえ、含むDMSP(好ましくはSMM)が、最大で2μg/g、好ましくは最大で1μg/g、より好ましくは最大で0.5μg/g、なおより好ましくは最大で0.2μg/gであることがさらに好ましい。
前記麦芽組成物は、50℃〜70℃の温度の範囲でキルン乾燥した場合でさえ、含むDMSP(好ましくはSMM)が、最大で2μg/g、好ましくは最大で1μg/g、より好ましくは最大で0.5μg/g、なおより好ましくは最大で0.2μg/gであることがさらに好ましい。
前記麦芽組成物は、40℃〜50℃の温度の範囲でキルン乾燥した場合でさえ、含むDMSP(好ましくはSMM)が、最大で2μg/g、好ましくは最大で1μg/g、より好ましくは最大で0.5μg/g、なおより好ましくは最大で0.2μg/gであることがさらに好ましい。
別の態様では、本発明は、含むDMSPが最大で5000ppb、より好ましくは最大で2500ppb、なおより好ましくは最大で1000ppb、なおより好ましくは最大で500ppb、なおより好ましくは最大で250ppb、例えば最大で150ppbである緑麦芽組成物に関する。前記緑麦芽組成物は、含む遊離DMSが最大で200ppb、好ましくは最大で150ppb、より好ましくは最大で100ppb、なおより好ましくは最大で50ppb、最大で25ppbなどであることも好ましい。
麦芽は主に、飲料を生産するのに用いられるが、それはまた、例えば、製パン業における酵素供給源として、または麦芽もしくは麦芽フラワーの形態で、食品産業における香味剤および着色剤として、あるいは間接的に、麦芽シロップなどとして、他の産業プロセスでも用いることができる。したがって、本発明による植物生成物は、上述の生成物のいずれであってもよい。
別の態様では、本発明による植物生成物は、オオムギシロップまたはオオムギ麦芽シロップなどのシロップを含み、またはさらにそれからなる。植物生成物はまた、オオムギまたは麦芽の抽出物でもあり得る。
麦芽は、例えば、破砕することにより、さらに加工することができる。したがって、本発明による植物生成物は、未加工麦芽、またはフラワーなどの破砕麦芽などの任意の種類の麦芽であり得る。破砕麦芽およびそのフラワーは、麦芽の化学成分および再発芽する能力を欠く死滅細胞を含む。
破砕は、乾燥した状態で実施する、すなわち麦芽を乾燥しながら破砕することが好ましい。したがって、麦芽は、水中では破砕しないことが好ましい。
マッシング
本発明による方法は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギおよび/または麦芽、ならびに必要に応じてさらなる添加物をマッシングすることによりウォートを生成する工程を含む。前記マッシング工程は、必要に応じて、スパージングすることも含み得、したがって、前記マッシング工程は、スパージング工程を含むマッシング工程またはスパージング工程を除いたマッシング工程であり得る。
一般に、ウォート生成は、二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽および/または二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギを破砕することにより開始する。さらなる添加物を添加する場合、これらもまた、その性質に応じて破砕することができる。添加物が穀類の場合、それは、例えば、破砕することができるのに対して、シロップ、砂糖などは、一般に、破砕しない。破砕により、水が、マッシング相にある穀粒粒子に到達することが容易になる。マッシングの間には、麦芽製造の間に開始された酵素による基質の解重合が継続し得る。
図9では、工程4〜6により、麦芽からウォートを調製するための一般的な方法を示す。一般に、ウォートは、破砕麦芽と水とを混合およびインキュベートすることにより、すなわち、マッシングプロセスにおいて調製される。マッシングの間、麦芽/液体組成物には、炭水化物に富む付加組成物、例えば、破砕したオオムギ添加物、トウモロコシ添加物、またはコメ添加物を補充することができる。麦芽にしていない穀類添加物は一般に、含有する活性酵素が少量であるか、または活性酵素を含有せず、このため、麦芽または外因性酵素を補充して、多糖の解重合に必要な酵素を供給することなどが重要となる。
マッシングの間には、破砕された二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽および/または破砕された二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ、ならびに必要に応じてさらなる添加物を、水などの液体画分と共にインキュベートする。インキュベーション温度は、一般に、一定に保つ(等温マッシング)か、または段階的に上昇させる、例えば逐次的に上昇させる。いずれの場合も、麦芽/オオムギ/添加物中の可溶性物質は、前記液体画分中に放出される。その後の濾過により、ウォートと、残留する固体粒子との分離がなされ、後者をまた、「ビール粕(spent grain)」とも称する。こうして得られたウォートはまた、「一番ウォート」とも称する。スパージングとも称されるプロセスの間に、水などのさらなる液体をビール粕に添加することができる。スパージングおよび濾過後、「二番ウォート」を得ることができる。該手順を繰り返すことにより、さらなるウォートを調製することができる。ウォートを調製するのに適する手順の非限定的な例は、Briggsら(上掲)およびHoughら(上掲)により記載されている。
酵素を加熱処理することにより、LOX活性を低下させ得ること、および加熱処理により、DMSレベルを低下させ得ることが記載されている。また、ウォートを加熱処理してLOX活性を低下させることができ、またDMSのレベルを低下させることができること、および/または同じ目的に到達するために、マッシングを高温で実施する可能性のあることが記載されている。しかし、加熱処理は、他の酵素活性を低下させることなど、有害作用を有し得、また、加熱処理により、さらにエネルギーが消費される。加えて、加熱処理は、リポキシゲナーゼ活性およびDMSレベルを、加熱処理を行った時点と比べて低下させるだけであり、したがって、それ以前におけるLOX活性に由来する生成物およびDMS前駆体の蓄積には影響を及ぼさない。
したがって、本発明の一実施形態では、ウォートは、初期のマッシング温度が、70℃を超えない、好ましくは、69℃を超えない、したがって、例えば、初期のマッシング温度が、35℃〜69℃の範囲内、例えば35℃〜65℃の範囲内など、30℃〜69℃の範囲内、例えば、35℃〜45℃など、およそ40℃など、35℃〜55℃の範囲内であり得る方法を用いて調製する。本発明によるウォートは、70℃以上の温度に25分間超にわたり供されていないこと、好ましくは、20分間超にわたり供されていないことも好ましく、ウォートは、マッシングの間に、78℃超の温度に、20分間超にわたり供されていないこと、好ましくは15分間超、より好ましくは、10分間超にわたり供されていないことも好ましい。マッシング温度が高すぎると、マッシュ中における酵素活性に影響が及び、所望の酵素活性を低下させるか、またはさらに無効にし、この結果、ウォートの品質が変化する。本発明によるウォートは、マッシングの間に、65℃以上の温度に、100分間超にわたり供されていないこと、好ましくは90分間超、より好ましくは80分間超、さらにより好ましくは、70分間超にわたり供されていないことがさらに好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、マッシング中の温度は、80℃を超えず、好ましくは、78℃を超えない。
適切なマッシングの非限定的な一例は、
(1)およそ40℃など、35〜45℃の範囲内の温度に、およそ20分間など、10〜30分間の範囲内でマッシングすること;
(2)30〜90分間の範囲内で、好ましくは、およそ60分間など、45〜75分間の範囲内で、60〜70℃の範囲内の温度、好ましくは、およそ65℃など、60〜65℃の範囲内の温度まで加熱すること;
(3)およそ10分間など、5〜15分間の範囲内で70〜80℃の範囲内の温度、好ましくは、およそ78℃など、75〜78℃の範囲内の温度まで加熱すること
である。
適切なマッシングの別の非限定的な例は、
(4)およそ60℃など、55〜65℃の範囲内の温度で、およそ20分間など、10〜30分間の範囲内でマッシングすること
(5)30〜90分間の範囲内で、好ましくは、およそ60分間など、45〜75分間の範囲内で、60〜70℃の範囲内の温度、好ましくは、およそ65℃など、60〜65℃の範囲内の温度まで加熱すること;
(6)およそ10分間など、5〜15分間の範囲内で、70〜80℃の範囲内の温度、好ましくは、およそ78℃など、75〜78℃の範囲内の温度まで加熱すること
である。
上記の通り、ウォート組成物は、麦芽にしていない二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒、特に、破砕された、麦芽にしていない二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒、またはそれらの一部など、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体、またはそれらの一部をマッシングすることにより調製することができる。麦芽にしていないオオムギ穀粒は、細胞壁を分解することができる酵素またはデンプンを糖へと解重合することができる酵素など、ウォート生成に有益な酵素を欠く、またはそれを限られた量のみを含有する。したがって、マッシングするために麦芽にしていない二重ヌルLOX−ヌルMMTを用いる本発明の複数の実施形態では、1つ以上の適切な、外部の醸造用酵素をマッシュに添加することが好ましい。適切な酵素は、リパーゼ、デンプン分解酵素(例えば、アミラーゼ)、グルカナーゼ[好ましくは(1−4)−β−グルカナーゼおよび/または(1−3,1−4)−β−グルカナーゼ]、および/またはキシラナーゼ(例えば、アラビノキシラナーゼ)、および/またはプロテアーゼ、または上記の酵素のうちの1つ以上を含む酵素混合物、例えば、Cereflo、Ultraflo、またはOndea Pro(Novozymes)であり得る。麦芽にしていないオオムギから調製されたウォートから飲料を作製するための方法はまた、「オオムギ醸造」とも称し、これによるウォート組成物を、「オオムギウォート」または「オオムギ醸造」ウォートとも称することができる。
ウォート組成物は、また、麦芽になった二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体および麦芽にしていない二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体、またはそれらの一部の混合物を用いることにより調製することもでき、その場合、調製の間に1つ以上の適切な酵素を添加することができる。より詳細には、マッシングするために、本発明のオオムギを、これらに限定されないが、オオムギ:麦芽=およそ100:0、またはおよそ75:25、またはおよそ50:50、またはおよそ25:75の割合などで外部の醸造用酵素を伴って、または伴わずに、麦芽と共に任意の組合せで用いることができる。
本発明の他の実施形態では、マッシング前またはマッシングの間に、外部の酵素、特に、外部のプロテアーゼ、および/または外部のセルラーゼ(celluluase)および/または外部のα−アミラーゼおよび/または外部のβ−アミラーゼおよび/または外部のマルトース生成(maltogenic)α−アミラーゼを加えないことが好ましい。
マッシング後において得られるウォートはまた、「スイートウォート」とも称し得る。従来の方法では、スイートウォートをホップと共に、またはホップを伴わずに煮沸し、その後には、それは煮沸ウォートと称し得る。
本明細書で用いられる「およそ」という用語は、±10%、好ましくは±5%、さらにより好ましくは±2%を意味する。
ウォートの加熱
本発明によるオオムギベースの飲料を調製するための方法は、本明細書の上記の節「マッシング」において記載したマッシング工程後において得られるウォートを加熱する工程を包含する。
オフフレーバーおよびその前駆体、特に、T2NおよびDMSおよびその前駆体のレベルが低いオオムギベースの飲料を、ウォートを大規模に加熱する必要なく調製することができることは、本発明の利点である。
従来の醸造では、ウォートを、一般に、大規模な(extensive)時間にわたり煮沸する。ウォート煮沸には、特に:(i)酵素の不活化;(ii)タンパク質の凝固;(iii)ウォートの滅菌;(iv)ホップ化合物の抽出;(v)α酸の異性化;(vi)DMSへのDMSPの変換;および(vii)DMSおよびT2Nの蒸発といういくつかの目的がある。
これらの目的のいくつかは、大規模に煮沸することなく到達し得る。したがって、滅菌には、簡単な煮沸または加熱のみが必要である。ホップ化合物の抽出は、簡単な煮沸または加熱の間に行うこともできる。予め異性化されたα酸が市販されており、それをウォートに添加することができる。
機能的LOX−1および機能的LOX−2が喪失したオオムギ植物体を用いることにより、LOXを変性させる必要がなくなる。さらに、機能的LOX−1および機能的LOX−2が喪失したオオムギ植物体を用いることにより、T2Nレベルを低下させる必要もなくなる。機能的MMTが喪失したオオムギ植物体を用いることにより、このようなオオムギ植物体においてはDMSおよびDMSポテンシャルのレベルは微小であるので、それらのレベルを低下させる必要がなくなる。加えて、低温においてさえもオオムギ穀粒を乾燥させることができ、発芽を停止させることができる。
種々の手段により、例えば、望ましくない揮発性化合物を蒸気中に抽出するストリッピングプロセスと組み合わせて、蒸発をわずか3%まで減らすことにより、ウォート煮沸の間のエネルギー消費を減らすことが試みられている。しかし、蒸気の生成また、エネルギーを消費するプロセスである。
典型的なウォート煮沸を伴わずにウォートを調製することが試みられている。しかし、これらの方法は、一般に、マッシングの間ならびにウォートを蒸気でストリッピングする間に95℃に至るまでの高温を利用し、したがって、高エネルギーを消費するプロセスであると考えられる。
本方法は、好ましくはストリッピングプロセスがなくてさえ蒸発を減らす可能性を提供する。したがって、本発明の方法によると、ウォートを、好ましくは最大で4%、より好ましくは最大で3%、さらにより好ましくは最大で2%、さらにより好ましくは最大で1.5%、さらにまたより好ましくは最大で1%、さらにより好ましくは最大で0.5%、さらにより好ましくは、最大で0.01%など、最大で0.1%のウォートの体積が蒸発するようにして加熱する。なおより好ましくは、上記の蒸発の減少を、ウォートを蒸気処理せずに実施する。上記の蒸発の減少を、ウォートを、例えば、蒸気でストリッピングせずに実施することも好ましい。
蒸発の減少は、本質的に密閉された容器において、または好ましくは密閉された容器においてウォートを加熱することにより実現することができる。
該方法の他の工程のいずれにおいても、液体の大規模な蒸発を行わないことがさらに好ましい。したがって、本発明の好ましい実施形態は、エネルギー投入の低減を伴う、1つ以上のオフフレーバーおよびその前駆体(好ましくはT2NおよびDMSおよびその前駆体)のレベルが低いオオムギベースの飲料を調製するための方法であって、
(i)
(a)機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と;
(b)機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と;
(c)機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異と
を含むオオムギ植物体またはその一部を供給する工程と;
(ii)必要に応じて、前記オオムギの少なくとも一部を麦芽にし、これにより、麦芽になったオオムギを得る工程と;
(iii)前記オオムギおよび/または麦芽になったオオムギ、ならびに必要に応じてさらなる添加物をマッシングし、これによりウォートを得る工程と;
(iv)前記ウォートを、必要に応じて、さらなる成分(複数可)の存在下で加熱する工程と;
(v)前記加熱ウォートを飲料へと加工する工程と
を含み、上記の工程(ii)が完了した後、または、さらには上記の工程(iv)が完了した後の上記方法の間に、最大で4%、例えば、最大で3%、最大で2%など、例えば、最大で1.5%、最大で1%などの液体体積を蒸発させ、これらにより、1つ以上のオフフレーバーおよびその前駆体のレベルが低いオオムギ由来飲料を調製する方法に関する。
本明細書の上記の工程(iv)は、密閉された容器など、本質的に密閉された容器内にウォートを入れて実施することが好ましい。
さらに好ましい実施形態では、本発明は、エネルギー投入の低減を伴う、1つ以上のオフフレーバーおよびその前駆体(好ましくはT2NおよびDMSおよびその前駆体)のレベルが低いオオムギベースの飲料を調製するための方法であって、
(i)
(a)機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と;
(b)機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と;
(c)機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異と
を含むオオムギ植物体またはその一部を供給する工程と:
(ii)必要に応じて、前記オオムギの少なくとも一部を麦芽にし、これにより、麦芽になったオオムギを得る工程と;
(iii)前記オオムギおよび/または麦芽になったオオムギ、ならびに必要に応じてさらなる添加物をマッシングし、これによりウォートを得る工程と;
(iv)前記ウォートを、必要に応じて、さらなる成分(複数可)の存在下で加熱する工程と;
(v)前記加熱ウォートを飲料へと加工する工程と
を含み、液体/ウォート/飲料を、最大で30分間にわたり、より好ましくは最大で20分間にわたり80℃を超える温度まで加熱し、これらにより、1つ以上のオフフレーバーおよびその前駆体のレベルが低いオオムギ由来飲料を調製する方法を提供する。
前記液体/ウォート/飲料は、前記方法の間に最大で30分間にわたり、好ましくは、10〜30分間の範囲内、例えば10〜20分間の範囲内など、最大で20分間にわたり、80〜99.8℃の範囲内の温度まで、好ましくは、80〜99℃の温度など、80〜99.5℃の範囲内の温度まで、さらにまたより好ましくは90〜99℃の範囲内の温度まで、さらにまたより好ましくは95〜99℃の範囲内の温度まで加熱することが好ましい。
一番ウォート、二番ウォートおよびさらなるウォートを混合し、その後、加熱にかけることができる、またはそれぞれの種類のウォートを加熱することができる。本発明の方法によると、必ずしもウォートを煮沸する必要はない。純粋の一番ウォートであれ、混合ウォートであれ、煮沸されていないウォートをまた「スイートウォート」とも称し、煮沸後のウォートは、「煮沸ウォート」と称する場合がある。ウォートをビールの生産に用いる場合、煮沸前にホップを添加することが多い。
従来の醸造方法では、ウォートの体積の少なくとも5%、および時には25%までをも蒸発させるために、ウォートを、一般に、60分間〜120分間の範囲内の長時間煮沸する。しかし、長時間の煮沸は、いくつもの他の理由で、例えば、長時間の煮沸には著しいエネルギー供給が必要であるので、望ましくない。
本発明によると、長時間煮沸することなしでさえも、T2N、T2Nポテンシャル、DMSおよびDMSPのレベルが低いウォートを二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから生成することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態によると、ウォートを最大で30分間にわたり、より好ましくは最大で15分間にわたり、さらにより好ましくは最大で10分間にわたり、さらにまたより好ましくは最大で5分間にわたり、さらにより好ましくは最大で1分間にわたり煮沸し、さらにまたより好ましくはウォートをまったく煮沸しない。本発明による方法の工程ii)が完了した後、液体/ウォート/飲料を最大で30分間にわたり、より好ましくは最大で15分間にわたり、さらにより好ましくは最大で10分間にわたり、さらにまたより好ましくは最大で5分間にわたり、さらにより好ましくは最大で1分間にわたり煮沸すること、さらにまたより好ましくは液体/ウォート/飲料をまったく煮沸しないことがさらに好ましい。ウォートの加熱は、本質的に密閉された容器、好ましくは密閉された容器内において行うことが好ましい。
この文脈において、「煮沸」という用語は、液体またはウォートまたは飲料を水が蒸発する温度に至らせることを意味する。したがって、通常の圧力において、煮沸とは、ウォートなどの水性液体を100℃またはそれをわずかに超える温度に至らせることを意味することになる。
したがって、本発明の実施形態によるウォートを、少なくとも100℃の温度で、最大で30分間にわたり、より好ましくは最大で15分間にわたり、さらにより好ましくは最大で10分間にわたり、さらにまたより好ましくは最大で5分間にわたり、さらにより好ましくは最大で1分間にわたり保持することも好ましく、さらにまたより好ましくは、ウォートを少なくとも100℃の温度まで加熱することはまったくしない。さらに、本発明による方法の工程(ii)が完了した後、液体/ウォート/飲料を少なくとも100℃の温度で最大で30分間にわたり、より好ましくは最大で15分間にわたり、さらにより好ましくは最大で10分間にわたり、さらにまたより好ましくは最大で5分間にわたり、さらにより好ましくは最大で1分間にわたり保持することが好ましく、さらにまたより好ましくは、液体/ウォート/飲料を少なくとも100℃の温度まで加熱することはまったくしない。
本発明によるオオムギベースの飲料を調製する方法全体が、99.8℃超、好ましくは99.5℃、さらにまたより好ましくは99℃の温度まで加熱することを決して伴わないことも好ましい。
どちらかといえば、方法は、ウォートを、限られた時間量にわたり、最大で99.5℃、例えば、最大で99℃など、最大で98℃など、最大で99.8℃の温度まで加熱する工程を伴い得る。前記限られた時間量は、最大で30分間、より好ましくは最大で15分間、さらに好ましくは最大で10分間であることが好ましい。
したがって、ウォートを、最大で30分間にわたり、好ましくは、10〜30分間の範囲内、例えば、10〜20分間の範囲内など、最大で20分間にわたり、80℃を超える温度、好ましくは、80〜99.5℃の範囲内、例えば、80〜99℃の範囲内など、80〜99.8℃の範囲内、さらにまたより好ましくは、90〜99℃の範囲内の温度、さらにまたより好ましくは、95〜99℃の範囲内の温度まで加熱することが好ましい。
本発明のさらなる実施形態では、ウォートの煮沸の後、および発酵させる前にウォートを(例えば、CO2を用いる洗浄)に供しないことが好ましい。
ウォート
別の態様では、本発明は、ウォート組成物である植物生成物の種類に関する。前記ウォート組成物は、二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒に由来する麦芽組成物から調製されることが好ましい。前記麦芽は、二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒だけから調製することができ、他の穀粒も含む混合物から調製することもできる。本発明はまた、緑麦芽などの、単独で、または他の成分と混合された二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギまたはそれらの一部を用いて調製されるウォート組成物にも関する。
本発明によるウォート組成物は、本明細書の上記の節「マッシング」に記載した通りにマッシングにより調製されることが好ましい。さらに、ウォート組成物は、本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通りに加熱されていてよい。
前記ウォート組成物は、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満、なおより好ましくは40%未満であることが好ましい。
前記ウォートは、一番ウォート、および/または二番ウォート、および/またはさらなるウォート、および/またはこれらの混合物であり得る。ウォート組成物は、スイートウォートの場合もあり、加熱ウォートの場合もあり、これらの混合物の場合もある。加熱ウォートは、本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通りに加熱されていることが好ましい。ウォート組成物はまた、オオムギウォートの場合もある。一般に、ウォート組成物は、高含有量のアミノ窒素と、発酵性炭水化物とを含有し、後者は主にマルトースである。
一実施形態では、ウォートはスイートウォート、すなわち、加熱処理にかけられていないウォートであり得る。前記スイートウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、60%未満、より好ましくは50%未満であることが好ましい。前記ウォートを低温でキルン乾燥した麦芽から調製した場合、それが含むT2Nポテンシャルはさらに低くなり得る。したがって、前記スイートウォートが50〜70℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、好ましくは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、50%未満、なおより好ましくは、40%未満など、45%未満であることが好ましい場合がある。前記スイートウォートが40〜50℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、50%未満、さらにより好ましくは40%未満、さらにまたより好ましくは30%未満であることが好ましい場合がある。
前記スイートウォートは、また、含むDMSPのレベルが低く、含むDMSP(好ましくはSMM)が、好ましくは150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい。たとえ前記ウォートを低温でキルン乾燥した麦芽から調製したとしても、それが含むDMSPのレベルはなお低い。したがって、前記スイートウォートが50〜70℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、含むDMSPが、150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい場合がある。前記スイートウォートが40〜50℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートが含むDMSPは、150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい場合がある。
前記スイートウォートはまた、それが含むDMSのレベルが低く、含むDMSが、好ましくは90μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満であることが好ましい。
ウォートはまた、95〜99.8℃の範囲内の温度または95〜99℃の範囲内の温度で10〜30分間の範囲内にわたるなど、短時間加熱処理しただけのウォートでもあり得る。この場合、前記ウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、最大で60%、より好ましくは最大で50%、なおより好ましくは最大で45%、より好ましくは最大で40%であることが好ましい。前記ウォートはまた、含むDMSPが、最大で150μg/L、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることも好ましい。前記ウォートはまた、含むDMSが、最大で150μg/L、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満であることも好ましい。
ウォートはまた、加熱ウォート(好ましくは本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通り加熱された)でもあり得、その場合、ウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、最大で60%、より好ましくは最大で50%、さらにまたより好ましくは最大で40%であることが好ましい。
前記加熱ウォートはまた、含むDMSPのレベルも低く、含むDMSPが、好ましくは150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい。前記冷却ウォートが、50〜70℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、含むDMSPが、150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい場合がある。さらに、前記冷却ウォートが、40〜50℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、含むDMSPが、150μg/L未満、より好ましくは100μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることが好ましい場合がある。前記加熱ウォートはまた、含むDMSのレベルが低く、含むDMSPが、好ましくは30μg/L未満、より好ましくは20μg/L未満であることが好ましい。
ウォートはまた、加熱(好ましくは本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通りに加熱)され、その後冷却された(本明細書において、冷却ウォートとも称する)ウォートでもあり得、その場合、ウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、最大で60%、より好ましくは最大で50%、さらにまたより好ましくは最大で40%であることが好ましい。前記冷却ウォートが、40〜50℃の範囲内の温度でキルン乾燥された麦芽から調製された本発明の複数の実施形態では、前記スイートウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したウォート組成物と比較して、50%未満、さらにより好ましくは40%未満、さらにまたより好ましくは30%未満であることが好ましい場合がある。
前記冷却ウォートはまた、含むDMSPのレベルが低く、含むDMSPが、好ましくは90μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満、さらにまたより好ましくは15μg/L未満であることも好ましい。前記冷却ウォートはまた、含むDMSのレベルが低く、含むDMSが、好ましくは90μg/L未満、さらにより好ましくは50μg/L未満、さらにまたより好ましくは30μg/L未満、さらにより好ましくは20μg/L未満であることも好ましい。
本発明の特定の一実施形態では、本発明によるウォート組成物とは、加熱されたオオムギウォート、すなわち、麦芽にしていない(かつ、好ましくは破砕した)二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒を、水と共にインキュベートすることにより、好ましくはマッシングおよびスパージングすることにより調製されたウォートなど、オオムギウォートである。このようなオオムギウォートは、T2NおよびT2Nポテンシャルのレベルが極めて低いことを特徴とする。前記オオムギウォートは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerから同じ方法で調製したオオムギウォート組成物と比較して、50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満であることが好ましい。前記オオムギウォートは、含むT2N前駆体が、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したオオムギウォート組成物と比較して、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、なおより好ましくは30%未満であることも好ましい。
飲料
好ましい態様では、本発明は、飲料、より好ましくは二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから調製されるオオムギベースの飲料に関する。好ましい一実施形態では、前記飲料は、麦芽飲料、なおより好ましくは、発酵飲料、好ましくはビールなどのアルコール飲料など、発酵麦芽飲料であることが好ましい場合があり、前記飲料は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ、またはそれらの一部を用いて調製される。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、飲料を、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ、またはその一部、またはその抽出物を発酵させることにより、例えば、単独で、または他の成分と組み合わせた二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽からウォートを発酵させることにより調製することが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、上記の飲料を、
(i)
(a)機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と;
(b)機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と;
(c)機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異と
を含むオオムギ植物体またはその一部を供給する工程と:
(ii)必要に応じて、前記オオムギの少なくとも一部を麦芽にし、これにより、麦芽になったオオムギを得る工程と;
(iii)前記オオムギおよび/または麦芽になったオオムギ、ならびに必要に応じてさらなる添加物をマッシングし、これによりウォートを得る工程と;
(iv)前記ウォートを、必要に応じてさらなる成分(複数可)の存在下で加熱する工程であって、最大でウォートの体積の4%を蒸発させ、これにより、加熱ウォートを得る工程と;
(v)前記加熱ウォートを飲料へと加工する工程と
を含む方法により調製する。
しかし、他の実施形態では、本発明は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから調製される任意のオオムギベースの飲料に関する。したがって、本発明は、従来の醸造方法などの従来の方法を用いて、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから調製されるオオムギベースの飲料にも関する。
本発明のいくつかの実施形態では、飲料とは、非発酵飲料、例えば、ウォート、好ましくは二重ヌルLOX−ヌルMMTの麦芽から調製したウォートである。
前記飲料を、麦芽にしていないオオムギ植物体、好ましくは麦芽にしていない二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体またはその一部から、例えば、オオムギの醸造により調製し得ることもまた、本発明の範囲内に含まれる。
飲料は、非アルコール性ビール、またはモルティナなどの非アルコール性麦芽飲料など、他の種類の非アルコール性飲料などの非アルコール性飲料であり得る。
しかし、前記飲料は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒から調製される麦芽組成物から調製することが好ましい。前記飲料は、ビールであることがより好ましい。これは、当業者に公知の任意の種類のビールであり得る。一実施形態では、ビールが、例えば、ラガービールである。ビールは、発芽した二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギを含む麦芽組成物を用いて醸造することが好ましく、発芽した二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギだけから調製した麦芽組成物を用いて醸造することがより好ましい。しかし、麦芽組成物はまた他の成分、例えば、野生型のオオムギ、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ、コムギおよび/またはライムギなどの、他の発芽させた穀類もしくは発芽させていない穀類、またはシロップ組成物を含め、麦芽になった原料もしくは麦芽にしていない原料に由来する糖もしくは組成物を含む、発芽させていない原料なども含み得る。しかし、前記ビールを調製するのに用いられる、すべての麦芽になったオオムギ、および/もしくは麦芽にしていないオオムギ、ならびに/または発芽させたオオムギ、および/もしくは発芽させていないオオムギなど、好ましくはすべてのオオムギが、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギであることが好ましい。
したがって、本発明は、飲料を作製する方法であって、
(i)発芽した二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒を含む麦芽組成物を供給する工程と;
(ii)前記麦芽組成物を飲料へと加工する工程と
を含む方法にも関する。
好ましい実施形態では、本発明による飲料は、より好ましくは、キルン処理された麦芽(好ましくは本明細書の上記の節「麦芽製造」に記載した通りに調製された)から、前記キルン処理された麦芽をマッシングすることにより(好ましくは本明細書の上記の節「マッシング」に記載した通り)調製されたウォートから作製したビールであり、前記マッシングは、必要に応じて、スパージング工程を含有し得る。さらに、前記ウォートは、好ましくは本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通りに加熱されていることが好ましいが、本発明のある特定の実施形態では、ウォートを従来の方法において煮沸することにより加熱することができる。本明細書では、このように作製されたビールはまた、「麦芽で造られた(malted)」とも称する。しかし、本発明による飲料はまた、オオムギウォートから調製されたビールでもあり得る。このようなビールはまた、「オオムギビール」とも称する。
一般に述べると、アルコール飲料(ビールなど)は、麦芽になったオオムギ穀粒および/または麦芽にしていないオオムギ穀粒から製造することができる。ホップおよび酵母に加えて、麦芽が、ビールの風味および色に寄与する。さらに、麦芽は、発酵性糖および酵素の供給源として機能する。ビール生産の一般的なプロセスについての図式的表示を図9に示すが、麦芽製造および醸造に適切な方法の例についての詳細な記載は、例えば、Briggsら(1981年)およびHoughら(1982年)よる刊行物において見出すことができる。オオムギ生成物、麦芽生成物およびビール生成物の解析については、定期的に更新される多数の方法を用いることができ、例えば、American Association of Cereal Chemists(1995年)、American Society of Brewing Chemists(1992年)、European Brewery Convention(1998年)、およびInstitute of Brewing(1997年)があるが、これらに限定されない。所与の醸造所について、多くの特殊な手順が用いられており、その最も顕著な多様性は、各地の消費者の選好に関するものであると理解される。本発明と共に、ビールを生産する任意のこのような方法を用いることができる。
ウォートからビールを生産する最初の工程は、前記ウォートを本明細書の上に記載した通りに加熱し、その後のウォート冷却の段階、必要に応じて、旋回休止(whirlpool rest)が続くことが好ましい。冷却後、ウォートを、酵母を含有する発酵タンクへ移す。好ましくは、前記酵母は、ビール酵母のSaccharomyces carlsbergensisである。ウォートは、任意の適切な期間、一般には1〜100日間の範囲内で発酵させる。数日間にわたる発酵プロセスの間、糖はアルコールおよびCO2に変換され、一部の風味物質の生成が相伴う。
その後、ビールはさらに加工され、例えば、冷却され得る。それはまた、濾過および/またはラガリング(lagered)(快い芳香を生成させ、酵母風味を軽減するプロセス)を経る場合もある。また、添加物を添加する場合もある。さらに、CO2を添加する場合もある。最後に、ビールを低温殺菌および/または濾過してから、詰める(例えば、ボトルまたは缶に封入する)ことができる。好ましい実施形態では、本発明による飲料は、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料のT2Nポテンシャルと比較して、70%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満である。本発明による飲料が基礎をおく、元の抽出物中における°Pが、10〜12°Pの範囲内、より好ましくは11°Pに調整される場合、該飲料は、含むT2Nポテンシャルが、最大で2ppb、より好ましくは最大で1.5ppbであることも好ましい。
好ましい実施形態では、本発明による飲料は、含むT2N前駆体が、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料のT2N前駆体と比較して、70%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満である。本発明による飲料が基礎をおく、元の抽出物中における°Pが、10〜12°Pの範囲内、より好ましくは11°Pに調整される場合、該飲料は、含むT2N前駆体が、最大で2ppb、より好ましくは最大で1.5ppbであることも好ましい。
前記飲料、好ましくは、ビールは、含むDMSが、最大で60ppb、より好ましくは50ppb未満、さらにより好ましくは40ppb未満、さらにまたより好ましくは30ppb未満、さらにより好ましくは20ppb未満、さらにまたより好ましくは10ppb未満であることも好ましい。
本発明の特定の一実施形態では、該飲料は、オオムギビールであり、含むT2Nポテンシャルが、 野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種PowerまたはQuenchから同じ方法で調製したオオムギビールのT2Nポテンシャルと比較して、60%未満、好ましくは50%未満である。
本発明の別の特定の実施形態では、好ましくはビールである飲料を、95〜99.8℃の範囲内の温度または95〜99℃の範囲内の温度で10〜30分間の範囲内にわたるなど、短時間加熱処理しただけの加熱ウォートから調製する。前記加熱ウォートは、本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通り加熱されていることが好ましい。飲料、好ましくは、ビールを、このような加熱ウォートから調製する本発明の複数の実施形態では、前記飲料、好ましくは、ビールは、含むT2Nポテンシャルが、野生型のオオムギ、好ましくは、栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したビールのT2Nポテンシャルと比較して、60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは45%未満である。この実施形態では、前記飲料、好ましくは、ビールは、含むT2N前駆体が、飲料、好ましくは、野生型のオオムギ、好ましくは、栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製したビールのT2N前駆体と比較して、60%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは45%未満であることも好ましい。この実施形態では、本発明によるビールは、含むT2Nポテンシャルが最大で2ppb、より好ましくは最大で1.5ppbであることも好ましい。この実施形態では、本発明によるビールは、基礎をおく、元の抽出物中における°Pが、10〜12°Pの範囲内、より好ましくは11°Pに調整される場合、該飲料が含むT2N前駆体が、最大で2ppb、より好ましくは最大で1.5ppbであることがさらに好ましい。前記飲料、好ましくは、ビールは、含むDMSが、最大で60ppb、より好ましくは、50ppb未満、さらにより好ましくは、40ppb未満、さらにまたより好ましくは、30ppb未満、さらにより好ましくは、20ppb未満、さらにまたより好ましくは、10ppb未満であることも好ましい。
「感覚刺激性の品質」とは、ヒトの嗅覚および味覚に訴える品質を意味する。前記品質は、例えば、専門家によるビール試飲パネルにより解析される。好ましくは、前記パネルは、アルデヒド、紙質の風味、古い風味、エステル、高級アルコール、脂肪酸および硫黄様の成分に特別の焦点を当てて、ビールの風味を味わい、説明することにおいて熟練している。
一般に、試飲パネルは、3〜30人の範囲内のメンバー、例えば、5〜15人の範囲内のメンバー、好ましくは8〜12人の範囲内のメンバーからなる。試飲パネルは、紙質のオフフレーバー、酸化によるオフフレーバー、劣化によるオフフレーバー、およびパンのオフフレーバーならびにエステル、高級アルコール、硫黄成分およびビールの本体の風味など、各種の風味の存在について評価し得る。本発明との関連では、紙質のオフフレーバーおよび/または劣化によるオフフレーバーを特に低下させることが好ましいが、一方、芳香性の風味、エステル様の風味、アルコール様の/溶媒の風味、花のような風味および/またはホップのような風味などの風味は、野生型のオオムギから同一の方法を用いて調製した飲料と比較して増すことが好ましい場合がある。飲料の「感覚刺激性の品質」を判定する方法は、国際特許出願第WO2005/087934号の実施例6に記載されている。飲料の「感覚刺激性の品質」を判定する別の方法については、国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の実施例8および9に記載されている。さらにまた別の例は、本明細書の下記の実施例9に記載する。好ましい実施形態では、安定的な感覚刺激性の品質が、少なくとも部分的には、T2NまたはT2Nポテンシャルのレベルが低いことの結果である。芳香性の風味、エステル様の風味、アルコール様の/溶媒の風味、花のような風味、および/またはホップのような風味は、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例7に記載されている通り判定し得ることが好ましい。好ましい一実施形態では、本発明の飲料は、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の41頁、15行目〜44頁、9行目において記載されている通りの芳香性の風味、エステル様の風味、アルコール様の/溶媒の風味、花のような風味、および/またはホップのような風味についてのスコアを有する。
本発明による飲料は、約37℃など、30〜40℃の範囲内で少なくとも1週間にわたる保存後における紙質の風味が、野生型のオオムギ植物体(好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalina)から同じ方法で調製した同様の飲料と比較して弱いことを特徴とすることが好ましい。前記紙質の風味は、熟練の試飲パネルによる評価で90%未満、より好ましくは、70%未満など、80%未満であることが好ましい。
本発明による飲料は、高温での保存後における紙質の風味が、野生型のオオムギから調製した同様の飲料と比較して軽減されることも好ましい。熟練の専門家による試飲パネルが、「紙質の風味」の特性を判定し(上に記載した通り)、0を「なし」として5を「極めて強い」とする0〜5段階でスコア付けする場合、本発明の飲料は、紙質の風味についての以下のスコア:
(i)37℃で1週間にわたるインキュベーション後において、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料の紙質の風味についてのスコアより、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.7低い、紙質の風味についてのスコア;
(ii)37℃で2週間にわたるインキュベーション後において、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料の紙質の風味についてのスコアより、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8、少なくとも1低い紙質の風味についてのスコア
のうちの1つ、または好ましくは両方を有することが好ましい。
興味深いことに、本発明は、本発明に従って製造した飲料の全体的な風味スコアが野生型のオオムギから調製した飲料と比較して改善されていることを開示している。これは、DMSにより特定の望ましい風味が遮蔽され得るという知見に一部起因し得る。
したがって、本発明の飲料は、対応するウォートを煮沸せずに、好ましくは加圧加熱を用いて調製した場合、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料の風味スコアよりも少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2高い全体的な風味スコアを有することが好ましい。前記風味スコアは、専門家によるビール試飲パネルによりもたらされる、9が最高スコアを表す1〜9段階でスコア付けするものとする。
飲料は、保存後においても、含む遊離T2Nレベルが極めて低い場合に、「安定的な感覚刺激性の品質」を有するという。したがって、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を用いて製造された飲料(安定的な感覚刺激性の品質を有するビールなど)を提供することが、本発明の目的である。
したがって、本発明の飲料は、30〜40℃の範囲内の温度、好ましくは37℃で、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも3週間、なおより好ましくは少なくとも4週間にわたる保存後において、含む遊離T2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製された飲料と比較して、80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは65%未満、なおより好ましくは60%未満、なおより好ましくは55%未満であることが好ましい。本発明の飲料はまた、37℃で2週間にわたる保存後において、含む遊離T2Nが0.025ppb未満であることも好ましい。
本発明の別の特定の実施形態では、飲料、好ましくはビールを、95〜99℃の範囲内の温度で10〜30分間の範囲内にわたるなど、短時間加熱処理しただけの加熱ウォートから調製する。前記加熱ウォートは、本明細書の上記の節「ウォートの加熱」に記載した通り加熱されていることが好ましい。飲料、好ましくはビールを、このような加熱ウォートから調製する本発明の複数の実施形態では、前記飲料、好ましくは、ビールは、30〜40℃の範囲内の温度、好ましくは37℃で、少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも3週間、なおより好ましくは少なくとも4週間にわたる保存後において、含む遊離T2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製された飲料と比較して、80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは65%未満である。
特に、前記加熱ウォートから調製したこのような飲料、好ましくは、ビールは、30〜40℃の範囲内の温度、好ましくは37℃で、10ppmを超えないレベルのサルファイト、好ましくは1〜10ppmの範囲内、より好ましくは1〜8ppmの範囲内、より好ましくは2〜6ppmの範囲内、さらにまた好ましくは3〜6ppmの範囲内のレベルのサルファイトの存在下で2週間にわたる保存後において、含むT2Nのレベルが極めて低く、含む遊離T2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製された飲料と比較して、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは65%未満であることが好ましい。
ビール、例えばオオムギビールなどの本発明による飲料は、37℃で8週間にわたる保存後において、含むT2Nのレベルが極めて低く、含む遊離T2Nが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製された飲料と比較して、好ましくは80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、なおより好ましくは5%未満であることも特に好ましい。
一実施形態では、本発明は、特定のトリヒドロキシオクタデカン酸(THAとも称する)のレベルが低いビールなどの飲料、特に、9,12,13−THAレベルおよび9,10,13−THAレベルが低い飲料に関する。THAは、苦味の風味を特徴とし(BaurおよびGrosch、1977年;Baurら、1977年)、これにより前記化合物は飲料において望ましくないものとなる。
したがって、9,12,13−THAレベルおよび9,10,13−THAレベルは、例えば、1.3ppmより低い、1ppmより低いなど、可能な限り低いことが望ましい。したがって、9,12,13−THAのレベルは、例えば、1.3ppmより低い、1ppmより低いなど、可能な限り低いことが好ましい。9,10,13−THAレベルも、例えば、1.3ppmより低い、1ppmより低いなど、可能な限り低いことが好ましい。しかし、ビールなどの麦芽に由来する飲料中における9,12,13−THAおよび9,10,13−THAの総濃度はまた、前記特定の飲料を調製するのに用いられる麦芽の量にも依存する。したがって、一般に、強いビールは、含む9,12,13−THAおよび9,10,13−THAが、より軽いビールより多く、このため、より強いビールでは、許容される9,12,13−THAおよび9,10,13−THAの総レベルがより高くなる。したがって、本発明による飲料は、含む9,12,13−THAレベルおよび9,10,13−THAレベルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料より低いことが好ましい。特に、本発明による飲料は、9,12,13THAレベルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料中のレベルと比較して最大で50%、好ましくは最大で40%、より好ましくは最大で30%であることが好ましい。本発明による飲料は、9,10,13THAレベルが、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した飲料中のレベルと比較して、最大で70%、好ましくは、最大で50%、例えば最大で40%など、最大で60%であることがさらに好ましい。このような飲料は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギを用いることにより調製することができる。
本発明の一実施形態では、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから調製した飲料の泡の品質が改善されている。これは、飲料がビールである場合、特に重要である。したがって、泡の品質が優れたビールなどの飲料を提供することが、本発明の目的である。好ましくは、本発明の飲料は、60〜80分間、好ましくは80分間において生成させる泡が、野生型のオオムギ、好ましくは栽培品種Quenchから同じ方法で調製された飲料と比較して、少なくとも1.5倍多く、好ましくは少なくとも2倍多く、さらにまたより好ましくは少なくとも3倍多いことが好ましい。前記泡の生成は、本明細書の下記の実施例8に記載する通りに決定される。
植物生成物
1つ以上のオフフレーバーのレベルが低いことを特徴とする植物生成物、好ましくはオオムギ植物生成物を提供することが、本発明の目的である。特に、T2Nレベル、DMSレベルおよび対応するそれらの前駆体レベルが低い植物生成物、好ましくはオオムギ植物生成物を提供することが、本発明の目的である。本発明により説明されている通り、このような植物生成物は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギから有利に調製することができる。前記植物生成物は、麦芽、好ましくは本明細書の上記の節「麦芽製造」において記載した任意の麦芽であり得る。生成物は、ウォート、好ましくは本明細書の上記の節「ウォート」において記載した任意のウォートであり得る;生成物はまた、飲料、好ましくは本明細書の上記の節「飲料」において記載した任意の飲料でもあり得る。しかし、植物生成物はまた、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体またはその一部から調製した、T2N、T2Nポテンシャル、DMSおよびDMSPのレベルが低いことを特徴とする他の植物生成物でもあり得る。
したがって、本発明は、植物生成物に関し、それは、本明細書の下記のオオムギ植物体またはその一部を含む組成物、または、前記オオムギ植物体またはその一部から調製した植物生成物など、前記オオムギ植物体またはその一部から調製した組成物であり得る。前記オオムギ植物体はLOX−1活性、LOX−2活性およびMMT活性を欠くので、一般には、組成物は、極めて低いレベルのオフフレーバーおよびそれらの前駆体分子のレベル、特に、T2N、T2Nポテンシャル、DMSおよびDMSPを含む。機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを有するオオムギ植物体を含む、またはそれから調製した有用な植物生成物の例は、本明細書に記載されている。
前記植物生成物は、野生型のオオムギ植物体、好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalinaから同じ方法で調製した同様の植物生成物と比較して、以下:
(i)含む遊離T2Nが、60%未満、さらにより好ましくは50%未満、さらにまたより好ましくは、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満など、40%未満である;
(ii)含むT2Nポテンシャルが60%未満、さらにより好ましくは50%未満、さらにまたより好ましくは、30%未満、好ましくは25%未満など、40%未満である;
(iii)含むDMSが、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、なおより好ましくは10%未満である;
(iv)含むSMMが、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、なおより好ましくは、5%未満、例えば2%未満など、10%未満である;
(v)含むDMSPが、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは15%未満、なおより好ましくは10%未満である;
のうちの1つ以上、好ましくはこの内の少なくとも2つ、さらにより好ましくはこのすべてであることが好ましい。
本発明は、一態様では、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを有するオオムギ穀粒に関する。本発明は、前記穀粒を含む組成物、および前記穀粒から調製した組成物、ならびに前記穀粒から調製した植物生成物にも関する。
別の態様では、本発明は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体またはその一部を含む、食物組成物、飼料組成物、および芳香の原料組成物であり得る植物生成物に関する。食物組成物は、例えば、麦芽になったオオムギ穀粒および麦芽にしていないオオムギ穀粒、破砕オオムギ、オオムギ粉末、パン、ポリッジ、オオムギを含む穀類混合物、オオムギを含む飲料などの健康製品、オオムギシロップ、およびフレーク状オオムギ組成物、破砕オオムギ組成物、微粒子化したオオムギ組成物、または押出し成形したオオムギ組成物であり得るがこれらに限定されない。飼料組成物には、例えば、オオムギ穀粒および/またはオオムギ粉末を含む組成物が含まれる。飼料組成物は、例えば、マッシュであり得る。芳香の原料組成物については、本明細書の下記に記載する。
本発明はまた、本発明の種々の植物生成物の混合物にも関する。例えば、一態様では本発明が、
(i)機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを含むオオムギ植物体またはその一部を含む組成物;および
(ii)二重ヌルLOX−ヌルMMTの穀粒から調製される麦芽組成物
の混合物により調製される組成物に関する。
オオムギ植物体または植物生成物が、LOX−1、LOX−2およびMMTについての遺伝子における、それぞれ機能的LOX−1の完全な喪失、機能的LOX−2の完全な喪失および機能的MMTの完全な喪失を引き起こす変異を有するオオムギ植物体から調製されるかどうかを判定するには、各種の方法を利用することができる。植物生成物は、一般に、その生成のために用いられる植物体に由来する少なくとも一部のゲノムDNAを含む。したがって、麦芽は、大量のゲノムDNAを含有するが、ウォートなど、オオムギまたは麦芽の抽出物であっても、前記オオムギまたは麦芽に由来するゲノムDNAまたはその断片を含み得る。ビールなど、オオムギベースの飲料もまた、前記植物体に由来するゲノムDNAまたはその断片を含み得る。植物生成物中のDNAを解析することにより、そこから植物生成物が調製される植物体が、LOX−1、LOX−2およびMMTの遺伝子における、機能的LOX−1の完全な喪失、機能的LOX−2の完全な喪失および機能的MMTの完全な喪失を引き起こす変異を有するかどうかを確立することができる。前記変異は、例えば、本明細書の下記の節「機能的LOXの喪失」に記載する、LOX−1およびLOX−2遺伝子における変異のうちのいずれかであり得る。MMT遺伝子における前記変異は、例えば、本明細書の上記の節「機能的MMTの喪失」に記載した、MMT遺伝子における変異のうちのいずれかであり得る。ゲノムDNAは、配列決定などの任意の有用な方法により、またはPCRベースの方法を含めた増幅ベースの方法により解析することができる。LOX−1遺伝子および/またはLOX−2遺伝子および/またはMMT遺伝子における特定の変異が推定される場合は、例えば、SNP解析などの多型解析を用いることができる。LOX−1遺伝子および/またはLOX−2遺伝子における変異の決定に関して、有用なSNP解析の非限定的な例は、国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の実施例10に記載されている。MMT遺伝子における変異の決定に関して、有用なSNP解析の非限定的な例は、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例13および17に記載されている。当業者は、これらの実施例において記載されている特定のSNP解析を、他の変異または他の出発材料と共に用いるために適合させることができる。
上述の植物生成物が、二重ヌルLOX−ヌルMMTであるオオムギ植物体だけから調製される場合は、オオムギのLOX−1 mRNA、LOX−2 mRNAおよびMMT mRNAならびに/またはオオムギのLOX−1タンパク質、LOX−2タンパク質およびMMTタンパク質の存在対非存在も、前記植物生成物が、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体から調製されているかどうかを示し得る。植物生成物を、ウェスタンブロッティング解析または他のタンパク質解析により、あるいは、RT−PCRにより、またはノーザンブロット解析により、または他のmRNA解析により植物生成物の試験を完成することもできる。このような解析は、植物生成物が麦芽である場合、特に有用である。
オオムギ植物体
本発明は、穀類ベースの飲料に関する。穀類は、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシ、コメ、モロコシ、キビ、ライコムギ、ソバ、フォニオおよびキノア(quinona)からなる群から選択され得る。穀類は、オオムギ、コムギ、ライムギ、エンバク、トウモロコシおよびコメからなる群から選択されることがより好ましく、穀類はオオムギであることがより好ましい。
したがって、本発明は、オオムギベースの飲料および本発明の飲料を調製するために有用なオオムギ植物体に関することが好ましい。
オオムギとは、植物体のファミリーである。「野生オオムギ」、Hordeum vulgare ssp. spontaneumは、現行のオオムギの栽培形態の前駆体であると考えられる。野生状態から栽培状態へのオオムギの移行は、多数の遺伝子座における対立遺伝子頻度の根本的な変化と符合したと考えられている。希少な対立遺伝子、および新規の変異イベントは、「オオムギ在来種」と称する、栽培化された(domesticated)植物体集団において新規の形質を迅速に確立した農耕民により、肯定的に選択された。これらは、野生オオムギより、新型栽培品種との遺伝子的類縁性がより密接である。19世紀後半まで、オオムギ在来種は、早期世代におけるランダム異種交配に由来する少数の植物体を含めた、近交系と交配分離種(hybrid segregate)との高度にヘテロ接合型の混合体として存在した。該在来種の大半は、先進農業において、純粋系統の栽培品種により置き換えられている。中間レベルまたは高レベルの遺伝的多様性が、残りの在来種を特徴付けている。当初、「新型オオムギ」栽培品種は、在来種からの選択を表していた。これらは後に、地理的起源が多様な純粋系統など、確立された純粋系統間における異種交配の継続的サイクル(successive cycle)に由来した。最終的な結果は、多くの、おそらくはすべての先進農業における遺伝的基盤の顕著な狭小化であった。在来種と比較して、新型オオムギ栽培品種は、例えば、(i)穀粒が皮裸性(covered and naked)であること;(ii)種子の休眠;(iii)病害耐性;(iv)環境忍容性(例えば、干ばつまたは土壌pHに対する耐性);(v)リシンおよび他のアミノ酸の量;(vi)タンパク質含量;(vii)窒素含量;(viii)炭水化物組成;(ix)ホルデニン(hordein)含量および組成;(x)(1−3,1−4)−β−グルカンおよびアラビノキシラン含量;(xi)収量;(xii)茎の堅さ;(xiii)草高であるがこれらに限定されない1つ以上の多くの特性が改善されている(Nevo、1992年;von Bothmerら、1992年)。
本発明の範囲内において、「オオムギ植物体」という用語は、オオムギ在来種または新型オオムギ栽培品種などの任意のオオムギ植物体を含む。したがって、本発明は、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを含む、任意のオオムギ植物体に関する。このようなオオムギ植物体の例は、本明細書の下記の実施例に記載し、「三重ヌル」または「三重ヌルのオオムギ」と称する。
しかし、本発明により用いるのに好ましいオオムギ植物体は、新型オオムギ栽培品種または純粋系統である。本発明により用いられるオオムギ栽培品種は、例えば、Sebastian、Quench、Celeste、Lux、Prestige、Saloon、Neruda、Harrington、Klages、Manley、Schooner、Stirling、Clipper、Franklin、Alexis、Blenheim、Ariel、Lenka、Maresi、Steffi、Gimpel、Cheri、Krona、Camargue、Chariot、Derkado、Prisma、Union、Beka、Kym、アサヒ5号、KOU A、Swan Hals、カントウナカテゴールド、ハカタ2号、キリン直1号、関東後期品種ゴールド、フジニジョウ、ニューゴールデン、サツキオニジョウ、セイジョウ17号、アカギニジョウ、アズマゴールデン、アマギニジョウ、ニシノゴールド、ミサトゴールデン、ハルナニジョウ、Scarlett、RosalinaおよびJerseyからなる群から、好ましくは、ハルナニジョウ、Sebastian、Quench、Celeste、Lux、Prestige、Saloon、Neruda、およびPowerからなる群から、好ましくは、Harrington、Klages、Manley、Schooner、Stirling、Clipper、Franklin、Alexis、Blenheim、Ariel、Lenka、Maresi、Steffi、Gimpel、Cheri、Krona、Camargue、Chariot、Derkado、Prisma、Union、Beka、Kym、アサヒ5号、KOU A、Swan Hals、カントウナカテゴールド、ハカタ2号、キリン直1号、関東後期品種ゴールド、フジニジョウ、ニューゴールデン、サツキオニジョウ、セイジョウ17号、アカギニジョウ、アズマゴールデン、アマギニジョウ、ニシノゴールド、ミサトゴールデン、ハルナニジョウ、Scarlett、およびJerseyからなる群から、好ましくは、ハルナニジョウ、Sebastian、Tangent、Lux、Prestige、Saloon、Neruda、Power、Quench、NFC Tipple、Barke、Class、およびVintageからなる群から選択することができる。
したがって、本発明の一実施形態では、オオムギ植物体は、機能的LOX−1の完全な喪失を結果としてもたらす第1の変異と、機能的LOX−2活性の完全な喪失を結果としてもたらす第2の変異と、機能的MMTの完全な喪失を結果としてもたらす第3の変異とを含む新型オオムギ栽培品種(好ましくは本明細書の上記で列挙されているオオムギ栽培品種の群から選択される栽培品種)である。したがって、この実施形態では、オオムギ植物体が、オオムギ在来種ではないことが好ましい。
オオムギ植物体は、任意の適切な形態であり得る。例えば、本発明によるオオムギ植物体は、生存オオムギ植物体、乾燥植物体、ホモジナイズされた植物体、または破砕オオムギ穀粒であり得る。植物体は、成熟植物体、胚、発芽穀粒、麦芽になった穀粒、麦芽になった破砕穀粒、破砕穀粒などであり得る。
オオムギ植物体の一部は、穀粒、胚芽、葉、茎、根、花、またはこれらの断片など、該植物体の任意の適切な部分であり得る。断片は、例えば、穀粒、胚芽、葉、茎、根、または花の切片であり得る。オオムギ植物体の一部はまた、ホモジネートの断片、または破砕オオムギ植物体もしくは破砕穀粒の断片でもあり得る。
本発明の一実施形態では、オオムギ植物体の一部は、in vitroで、組織培養物中で増殖させ得る生細胞など、前記オオムギ植物体の細胞であり得る。しかし、他の実施形態では、オオムギ植物体の一部は、完全オオムギ植物体へと成熟することが不可能な生細胞、すなわち、生殖物質ではない細胞であり得る。
機能的LOXの喪失
本発明は、第1、第2の変異および第3の変異を有するオオムギ植物体(またはそれらの一部、またはそれらの植物生成物)に関し、該第1の変異は、機能的LOX−1の完全な喪失をもたらし、該第2の変異は、機能的LOX−2の完全な喪失をもたらす。該第3の変異は、本明細書の下記の節「機能的MMTの喪失」において記載される機能的MMTの完全な喪失をもたらす。
機能的LOX−1の完全な喪失と機能的LOX−2の完全な喪失とは、異なる機構に独自に基づき得る。例えば、LOX−1活性およびLOX−2活性の一方または両方の機能の完全な喪失は、オオムギ植物体において機能不全のタンパク質、すなわち、検出可能な9−HPODE形成活性(9−HPODEは、国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の実施例4に記載されている通りに決定され得ることが好ましい)を示さない、変異LOX−1タンパク質、および/または検出可能な13−HPODE形成活性(13−HPODEは、国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の実施例4に記載されている通りに決定され得ることが好ましい)を示さない、変異LOX−2タンパク質など、機能不全のLOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質により引き起こされ得る。
LOX−1および/またはLOX−2の機能の完全な喪失は、LOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質の欠如により引き起こされ得る。LOX−1タンパク質の欠如が、機能的LOX−1の完全な喪失をもたらし、LOX−2タンパク質の欠如が、機能的LOX−2の完全な喪失をもたらすことは明らかである。したがって、オオムギ植物体は、LOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質を含まない(またはこれらをごく少量しか含まず、より好ましくは、検出可能なLOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質を含まない)ことが好ましい場合がある。LOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質(複数可)は、当業者に公知の任意の適切な手段により検出することができる。しかし、該タンパク質(複数可)は、LOX−1タンパク質が、LOX−1およびLOX−2に対するポリクローナル抗体など、特異的なLOX−1抗体およびLOX−2抗体により検出される技法により検出されることが好ましい。前記技法は、例えば、ウェスタンブロット法の場合もあり、ELISA法の場合もある。前記抗体は、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もある。しかし、前記抗体は、LOX−1タンパク質およびLOX−2タンパク質それぞれにおける複数の異なるエピトープを認識するポリクローナルの性質であることが好ましい。LOX−1タンパク質および/またはLOX−2タンパク質はまた、例えば、LOX−1活性を決定する方法によって、またはLOX−2活性を決定する方法によって間接的に検出することもできる。本発明の好ましい一実施形態では、LOX−1タンパク質が、国際特許出願第WO2005/087934号の実施例4で概説された方法を用いて検出される。LOX−2タンパク質は、オオムギLOX−2に結合する抗体を用いて、同様の方法で検出することができる。
LOX−1活性およびLOX−2活性の一方または両方の機能の完全な喪失はまた、LOX−1転写物および/またはLOX−2転写物の発現がないという結果の場合もあり、これらがごくわずかしかないという結果の場合もあるが、これらの発現がないという結果の場合が好ましい。当業者は、LOX−1転写物および/またはLOX−2転写物の非存在がまた、それぞれ、翻訳されるLOX−1タンパク質またはLOX−2タンパク質の非存在も結果としてもたらすことを認める。代替的に、機能的LOX−1および機能的LOX−2の完全な喪失はまた、異常なLOX−1転写物および/または異常なLOX−2転写物が発現する結果でもあり得る。異常なLOX−1転写物および/または異常なLOX−2転写物は、例えば、スプライス部位における変異に起因する、転写物の異常なスプライシングにより引き起こされ得る。したがって、本発明のオオムギ植物体は、5’側スプライス部位または3’側スプライス部位などのスプライス部位における、例えば、イントロンの最も5’側の1つまたは2つにおける、またはイントロンの最も3’側の1つにおける変異を有し得る。LOX−1転写物の異常なスプライシングを有する変異体の例は、WO2005/087934において、変異体A618として記載されている。LOX−1またはLOX−2をコードする転写物の発現は、例えば、ノーザンブロッティング実験により検出することもでき、RT−PCR実験により検出することもできる。
本発明のオオムギ植物体における機能的LOX−1酵素および機能的LOX−2酵素の完全な喪失は、変異により引き起こされる。したがって、本発明のオオムギ植物体は、一般に、LOX−1遺伝子において変異を有する。前記変異は、制御領域内、例えば、プロモーター内またはイントロン内の場合もあり、コード領域内の場合もある。変異はまた、コード領域全体の欠失など、LOX−1遺伝子またはその一部の欠失でもあり得る。同様に、本発明のオオムギ植物体は、一般に、LOX−2遺伝子において変異を有する。前記変異は、制御領域内、例えば、プロモーター内またはイントロン内の場合もあり、コード領域内の場合もある。変異はまた、コード領域全体の欠失など、LOX−2遺伝子またはその一部の欠失でもあり得る。したがって、機能的LOX−1酵素および/または機能的LOX−2酵素の完全な喪失の原因はまた、LOX−1をコードする遺伝子内、またはLOX−2をコードする遺伝子における変異を同定することによっても検出することができる。LOX−1をコードする遺伝子内およびLOX−2をコードする遺伝子における変異は、例えば、前記遺伝子を配列決定することにより検出することができる。変異を同定した後で、LOX−1活性および/またはLOX−2活性について調べることにより、機能の完全な喪失を確認することが好ましい。
「LOX−1タンパク質」という用語は、配列番号3(WO2005/087934の配列番号3に対応する)、またはWO2005/087934の配列番号7で示されるオオムギの全長LOX−1タンパク質またはその機能的相同体を包含することを意図する。LOX−1の活性部位は、該酵素のC末端部分に位置する。特に、アミノ酸残基520〜862の範囲の領域またはその一部(好ましくは、アミノ酸番号520〜862の領域全体)が、LOX−1活性に関与すると予測される。したがって、一実施形態では、ヌルLOX−1のオオムギが、LOX−1のアミノ酸520〜862のうちの一部または全部を欠く、LOX−1の変異形態をコードする遺伝子を含むことが好ましい。前記変異LOX−1はまた、野生型のLOX−1には存在する他のアミノ酸残基も欠く可能性がある。
したがって、本発明の二重ヌルLOXのオオムギは、機能的でないLOX−1の切断形態(N末端切断形態またはC末端切断形態など)を含み得る。前記切断形態は、含むLOX−1の連続アミノ酸が、800以下、より好ましくは750以下、なおより好ましくは700以下、さらにまたより好ましくは690以下、なおより好ましくは680以下、さらにまたより好ましくは670以下、たとえば、含む配列番号3(WO2005/087934の配列番号3に対応する)のLOX−1の連続アミノ酸が、665以下、例えば、650以下、例えば、600以下、例えば、550以下、例えば、500以下、例えば、450以下、例えば、425以下、例えば、399以下であることが好ましい。前記切断形態は、LOX−1のN末端断片だけを含むことが好ましく、含む配列番号3(WO2005/087934の配列番号3に対応する)のN末端アミノ酸が、好ましくは最大で800、より好ましくは最大で750、なおより好ましくは最大で700、さらにまたより好ましくは最大で690、なおより好ましくは最大で680、さらにまたより好ましくは最大で670、さらにより好ましくは最大で665、たとえば、含む配列番号3(WO2005/087934の配列番号3に対応する)のN末端アミノ酸が665以下、例えば、650以下、例えば、600以下、例えば、最大で550、例えば、最大で500、例えば、最大で450、例えば、最大で425、例えば、最大で399であることが好ましい。LOX−1の断片に加えて、前記切断形態は、必要に応じて、野生型のLOX−1においては存在しないさらなるC末端配列を含み得る。これは、特に、該切断形態が異常なスプライシングから生じた場合にそうであり得る。前記さらなるC末端配列は、最大で50、より好ましくは最大で30、なおより好ましくは最大で10、さらにまたより好ましくは、 最大で4、または最大で1のアミノ酸からなることが好ましい。
極めて好ましい一実施形態では、切断形態が、配列番号3(WO2005/087934の配列番号3に対応する)のアミノ酸1〜665からなり得る。
本発明の好ましい実施形態では、オオムギ植物体が、野生型LOX−1 mRNAの終止コドンの上流において、ナンセンスコドンまたは終止コドンを含むmRNAへと転写される、LOX−1コード遺伝子を含む。本明細書では、このようなナンセンスコドンを、未熟ナンセンスコドンと表わした。前記植物体のmRNAへと転写されるすべてのLOX−1コード遺伝子は、未熟ナンセンスコドンまたは未熟終止コドンを含む。該ナンセンスコドンまたは終止コドンは、開始コドンの最大で800コドン下流に位置することが好ましく、より好ましくは最大で750コドン、なおより好ましくは最大で700コドン、さらにまたより好ましくは最大で690コドン、なおより好ましくは最大で680コドン、さらにまたより好ましくは最大で670コドン、なおより好ましくは最大で665コドン下流に位置する。LOX−1をコードする野生型ゲノムDNAの配列は、配列番号1(WO2005/087934の配列番号1に対応する)、またはWO2005/087934の配列番号5において与えられる。
好ましい一実施形態では、本発明のオオムギ植物体が、LOX−1をコードする遺伝子を含み、前記遺伝子から転写される対応するプレmRNAが、WO2005/087934の配列番号2に対応する配列を含む。
本発明の極めて好ましい実施形態では、本発明による二重ヌルLOXのオオムギ植物体の変異体LOX−1をコードする遺伝子が、ナンセンス変異を含み、前記変異が、WO2005/087934の配列番号1の3574位におけるG→A置換に対応する。
「LOX−2タンパク質」という用語は、本公開の配列番号7(国際特許出願PCT/DK2009/050355の配列番号5に対応する)で示されるオオムギの全長LOX−2タンパク質またはその機能的相同体を包含することを意味する。LOX−2の活性部位は、LOX−2のC末端部分に位置する。特に、アミノ酸残基515〜717の範囲の領域またはその一部が、LOX−2活性に関与すると予測される。ダイズLOX−1の結晶構造についての検討に基づくと、オオムギのLOX−2酵素の活性部位のくぼみについて予測される配列の範囲は、アミノ酸残基515〜525および707〜717により表される。翻訳された、変異LOX−2タンパク質、すなわち、二重ヌルLOXのオオムギの変異体A689のLOX−2のC末端切断形態が含有する残基は最大で684であり、したがって、活性部位のくぼみの第2の配列の範囲を欠く(これを不活性にする)。したがって、本発明の一実施形態では、本発明の二重ヌルLOXのオオムギが、LOX−2のアミノ酸515〜717のうちの一部または全部を欠く、好ましくはアミノ酸707〜717のうちの一部または全部を欠く、なおより好ましくはアミノ酸707〜717のうちの全部を欠く、LOX−2の変異体形態をコードする遺伝子を含むことが好ましい。前記変異体のLOX−2はまた、野生型のLOX−2には存在する他のアミノ酸残基も欠く場合もある。
したがって、二重ヌル−LOXのオオムギは、N末端切断形態またはC末端切断形態など、機能的でないLOX−2の切断形態を含み得る。前記切断形態は、含む配列番号7(国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の配列番号5に対応する)のLOX−2の連続アミノ酸が、800以下、より好ましくは750以下、なおより好ましくは725以下、さらにまたより好ましくは700以下、なおより好ましくは690以下、さらにまたより好ましくは684以下であることが好ましい。前記切断形態は、LOX−2のN末端断片だけを含むことが好ましい。よって、前記切断形態は、含む配列番号7(国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の配列番号5に対応する)のN末端アミノ酸が、最大で800、より好ましくは最大で750、なおより好ましくは最大で725、さらにまたより好ましくは最大で700、なおより好ましくは最大で690、さらにまたより好ましくは最大で684であることが好ましい。LOX−12の断片に加えて、前記切断形態は、必要に応じて、野生型のLOX−2においては存在しないさらなるC末端配列を含み得る。これは、特に、該切断形態が異常なスプライシングから生じた場合にそうであり得る。前記さらなるC末端配列は、最大で50、より好ましくは最大で30、なおより好ましくは最大で10、さらにまたより好ましくは、最大で4、または最大で1のアミノ酸からなることが好ましい。
極めて好ましい一実施形態では、切断形態が、配列番号7(国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の配列番号5に対応する)のアミノ酸1〜684からなり得る。
本発明の好ましい実施形態では、オオムギ植物体が、野生型LOX−2 mRNAの終止コドンの上流において、ナンセンスコドンまたは終止コドンを含む、LOX−2のmRNAへと転写される遺伝子を含む。本明細書では、このようなナンセンスコドンを、未熟ナンセンスコドンと称した。前記植物体のLOX−2をコードするmRNAへと転写されるすべての遺伝子は、未熟ナンセンスコドンまたは未熟終止コドンを含む。該ナンセンスコドンまたは終止コドンは、開始コドンの最大で800コドン下流に位置することが好ましく、より好ましくは最大で750コドン、なおより好ましくは最大で725コドン、さらにまたより好ましくは最大で700コドン、なおより好ましくは最大で690コドン、さらにまたより好ましくは最大で684コドン下流に位置する。LOX−2をコードする野生型ゲノムDNAの配列は、配列番号5(国際特許出願PCT/DK2009/050355の配列番号1に対応する)において与えられる。
本発明の極めて好ましい実施形態では、二重ヌルLOXのオオムギ植物体の変異LOX−2をコードする遺伝子が、ナンセンス変異を含み、前記変異が、配列番号5(国際特許出願第PCT/DK2009/050355号の配列番号1に対応する)の2689位におけるG→A置換に対応する。
本発明によるオオムギ植物体は、当業者に公知の任意の適切な方法により、好ましくは、本明細書の下記の節 「二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギの調製」で概説される方法のうちの1つにより調製することができる。
機能的MMTの喪失
本発明は、第1、第2の変異および第3の変異を有するオオムギ植物体(またはそれらの一部、またはそれらの植物生成物)に関し、該第1の変異は、機能的LOX−1の完全な喪失をもたらし、該第2の変異は、機能的LOX−2の完全な喪失をもたらす(どちらも、本明細書の上記の節「機能的LOXの喪失」において詳述した)。第3の変異は、機能的MMTの完全な喪失をもたらす。
機能的MMTの完全な喪失は、異なる機構に基づき得る。例えば、機能的MMTの完全な喪失は、前記植物体における機能不全のタンパク質、すなわち、検出可能な活性を示さない変異体MMTタンパク質など、機能不全のMMT酵素に起因し得る。例えば、変異体のMMTタンパク質は、切断型タンパク質であり得る。MMT活性の喪失は、同様に、異なる機構に基づき得、例えば、機能不全のMMTタンパク質により引き起こされ得る。
変異MMTタンパク質の活性は、SAMからMetへのメチル基の転移を触媒し、これにより、SMMを形成するその能力により決定することが好ましい。これは、例えば、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例4に記載されている通りに行うことができる。変異MMTのアミノ酸配列は、対応する、単離されたオオムギcDNAの翻訳される配列を決定することにより得ることが好ましい。これは、基本的に、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例8に記載されている通りに行うことができる。あるいは、本発明のオオムギ植物体の変異MMTは、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例11および実施例12に記載されている通りに細菌の細胞培養物において異種性発現させることにより得、その後、組換えタンパク質がMMT酵素として不活性であることを検証する。
機能的MMTの完全な喪失は、MMTタンパク質の欠如により実現することができる。MMTタンパク質の欠如は、MMT機能の喪失をもたらす。したがって、オオムギ植物体は、検出可能なMMTタンパク質を含まない場合もあり、ごくわずかだけ含む場合もあるが、検出可能なMMTタンパク質を含まない場合が好ましい。MMTタンパク質の存在または非存在は、当業者に公知の任意の適切な手段により検出することができる。しかし、該タンパク質(複数可)は、MMTタンパク質が、MMTを認識する特異的抗体により検出される技法により解析されることが好ましい。前記技法は、例えば、ウェスタンブロッティングアッセイの場合もあり、酵素結合免疫吸着測定法の場合もあり、前記特異的抗体は、モノクローナル抗体の場合もあり、ポリクローナル抗体の場合もある。しかし、前記抗体は、MMTタンパク質における複数の異なるエピトープを認識するポリクローナル抗体であることが好ましい。これはまた、例えば、MMT活性を決定する方法によって間接的に検出することもできる。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、オオムギ植物体においてMMTタンパク質が検出可能でない場合、前記植物体が、MMTをコードする遺伝子における変異を有し、このため、MMT活性の完全な喪失を引き起こすという。特に、これは、質量が約120kD(±10%)であるMMTタンパク質が、ウェスタンブロット法による解析で、前記オオムギ植物体において(好ましくは、前記オオムギ植物体の穀粒において)検出されない場合である。
機能的MMTの完全な喪失はまた、MMT mRNAの転写がないという結果の場合もあり、これがごくわずかしかないという結果の場合もあるが、MMT mRNAの転写がないという結果の場合であることが好ましい。当業者は、MMT転写物の非存在もまた、その結果としてMMTタンパク質の非存在をもたらすことを認める。
しかし、機能的MMTの完全な喪失は、異常なMMT転写物が発現するという結果であることが好ましい。前記転写物は、例えば、スプライス部位における変異に起因する、好ましくは、一次転写物の異常なスプライシングイベントにより引き起こされ得る。MMTをコードする転写物の発現は、例えば、ノーザンブロット法により検出することもでき、RT−PCR法により検出することもできる。
本発明のオオムギ植物体における機能的MMTの完全な喪失は、1つ以上の変異により引き起こされる。したがって、本発明のオオムギ植物体は、一般に、MMT遺伝子において少なくとも1つの変異を有する。前記変異(複数可)は、制御領域内、例えば、プロモーター内またはイントロン内の場合もあり、タンパク質コード領域内の場合もある。変異はまた、例えば、MMT遺伝子のコード領域の欠失など、MMT遺伝子またはその一部の欠失でもあり得る。したがって、機能的MMTの喪失はまた、MMTをコードする遺伝子における変異を解析することによっても検出することができる。MMTをコードする遺伝子における変異は、例えば、前記遺伝子について配列決定した後に、それを野生型の配列、好ましくは、配列番号9(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号において配列番号3で示される配列に対応する)で示される栽培品種Prestigeの野生型の配列または栽培品種Sebastian(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号16に対応する配列番号11)の野生型の配列と比較することにより検出することができる。変異を同定した後、MMT活性を、例えば、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例2または実施例4に記載されている通りに試験することにより機能の喪失を確認することが好ましい。
MMTタンパク質という用語は、配列番号13(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号6に対応する)で示されるオオムギの全長MMTタンパク質またはその機能的相同体を包含することを意味する。この文脈において、機能的相同体は、MMT活性レベルが、配列番号13で示されるオオムギのMMTタンパク質のMMT活性レベルと±25%で同じレベルのMMT活性を有するMMTタンパク質であり、ここで、MMT活性は、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の実施例2または実施例4に記載されている通りに決定する。
MMT活性の完全な喪失を引き起こす第3の変異を有するオオムギ植物体は、N末端切断形態またはC末端切断形態など、機能的でないMMTの切断形態を含み得る。オオムギ植物体は、2つ、または例えば3つ、または3つ超の異なるMMTの切断形態など、2つ以上のMMTの切断形態を含み得、それは、異常にスプライシングされた転写物に起因し得る。前記切断形態は、MMTのN末端断片のみを含む。野生型MMTのN末端断片に加えて、前記MMTの切断形態は、野生型MMTにおいては見出されないさらなるC末端配列を含み得る。前記さらなるC末端配列は、例えば、異常なスプライシングによって変異体mRNA内に含まれるものなど、翻訳されるイントロン配列であり得る。前記MMTの切断形態は、含む配列番号13(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号6に対応する)のN末端アミノ酸残基が、最大で500、より好ましくは最大で450、なおより好ましくは最大で400、さらにまたより好ましくは最大で350、なおより好ましくは最大で320、さらにまたより好ましくは最大で311、または最大で288であることが好ましい。これは特に、前記オオムギ植物体が、MMT活性の完全な喪失を有する場合にそうである。しかし、MMTは、含む配列番号13(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号6に対応する)のN末端アミノ酸が、300以下、例えば、250以下、200以下、例えば、最大で150、例えば、147以下、または133以下など、それよりも少なくてよい。
極めて好ましい一実施形態では、MMTの切断形態は、配列番号13(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号6に対応する)のアミノ酸1〜311またはアミノ酸1〜288、および、必要に応じて、野生型MMTにおいては存在しないさらなるC末端配列からなってよい。前記さらなるC末端配列は、最大で50、より好ましくは最大で30、なおより好ましくは最大で10、さらにまたより好ましくは、最大で4、または最大で1のアミノ酸からなることが好ましい。極めて好ましい一実施形態では、MMTの切断形態は、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号11、または国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号13、または国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号15によるタンパク質であり得る。国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号11、配列番号13、および配列番号15のタンパク質はいずれも機能的MMT酵素を表さない。
別の極めて好ましい実施形態では、MMTの切断形態は、配列番号14(国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号18に対応する)のアミノ酸1〜147、またはアミノ酸1〜133、および必要に応じて、野生型MMTにおいては存在しないさらなるC末端配列からなってよい。前記さらなるC末端配列は、最大で50、より好ましくは最大で40、なおより好ましくは最大で39、または最大で33、または最大で30のアミノ酸からなることが好ましい。極めて好ましい一実施形態では、MMTの切断形態は、配列番号15、配列番号16または配列番号17(それぞれ、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号22、または配列番号24、または配列番号26に対応する)によるタンパク質であり得る。配列番号15、配列番号16および配列番号17(それぞれ、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の配列番号22、または配列番号24、または配列番号26に対応する)のタンパク質はいずれも機能的MMT酵素ではない。
上述のMMTの切断形態は、例えば、MMT遺伝子内に変異を有するオオムギ植物体において存在し得、前記変異により未熟終止コドンが導入されることにより、上述のMMTの切断形態をコードする遺伝子がもたらされる。
本発明の好ましい実施形態では、オオムギ植物体は介入を伴わずに一緒にスプライシングされる野生型MMT遺伝子のすべてではないが一部を含む、mRNAへと転写されるMMT遺伝子を含む(オオムギの野生型MMT遺伝子のイントロン−エクソン構造は国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の図9に示されている)。したがって、本発明の一実施形態では、本発明によるオオムギ植物体のMMT mRNAが、最大で、介入を伴わずに一緒にスプライシングされるエクソン1、2、3、4、および5を含む、または例えば、最大で、介入を伴わずにスプライシングされるエクソン1および2を含むことが好ましい。前記一緒にスプライシングされるエクソンに加えて、本発明によるオオムギ植物体のMMT mRNAは、野生型のイントロンおよび/またはエクソンに由来するさらなる3’末端配列を含み得、ここで、イントロンによりエクソン配列が分離されている。RT−PCRによって決定され、したがって、断片の長さがbp単位である、本発明によるオオムギ植物体の異常なMMT mRNAの好ましい例が、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の図12および図16に例示されている。本発明によるオオムギ植物体の異常なmRNAは、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の図12に例示されている、5’末端にエクソン1および2をさらに含むmRNA、または、国際特許出願第PCT/DK2009/050315号の図16に例示されている、5’末端にエクソン1をさらに含むmRNAであることがより好ましい。
本発明の極めて好ましい実施形態では、MMTの遺伝子内に機能的MMTの完全な喪失を引き起こす第3の変異を有するオオムギ植物体は、MMT遺伝子におけるスプライス部位において、異常にスプライシングされるmRNAをもたらす変異を含む。前記変異は、MMT遺伝子のイントロン、なおより好ましくは、イントロン1(エクソン1と2を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロン2(エクソン2と3を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロン3(エクソン3と4を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロン4(エクソン4と5を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロン5(エクソン5と6を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロン6(エクソン6と7を分離するイントロン)上の5’側スプライス部位など、イントロンの5’側スプライス部位、最も好ましくは、イントロン2またはイントロン5の5’側スプライス部位に位置することがより好ましい。
前記変異とは、前述のイントロンの5’末端の塩基のG→A変異であることが好ましい。したがって、極めて好ましい変異とは、イントロン2の5’末端の塩基のG→A変異、またはイントロン5の最も5’側の塩基のG→A変異である。
本発明によるオオムギ植物体は、当業者に公知の任意の適切な方法により、好ましくは本明細書の下記の節「二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギの調製」で概説される方法により調製することができる。
二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギの調製
本発明によるオオムギ植物体は、当業者に公知の任意の適切な方法によって調製できる。好ましくは本発明のオオムギ植物体は、オオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発する工程に続いて、機能的LOX−1の完全な喪失、機能的LOX−2の完全な喪失および/または機能的MMTの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択する工程を含む方法によって調製される。
本発明によるオオムギ植物体は、少なくとも3個の変異を含む。したがって植物体は、変異の内の1つだけを含む別々のオオムギ植物体を調製し、続いて3つすべての変異を有するオオムギ植物体を得るために前記オオムギ植物体を異種交配する工程によって、もしくはオオムギ植物体に成功裏に変異を導入する工程によってまたはこれらの方法の組合せによって調製できる。
したがって本発明によるオオムギ植物体は、オオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発し、続いて機能的LOX−1の完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択することによって、ならびに別のオオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発し、続いて機能的LOX−2の完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択することによって、ならびにさらにまた別のオオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発し、続いて機能的MMTの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択することによって調製され得る。選択されたオオムギ植物体は、3つすべての変異を有するオオムギ植物体を得るために最終的に数回異種交配できる。
代替として本発明のオオムギ植物体は、オオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発し、続いて機能的XXの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択することによって調製できる。前記選択されたオオムギ植物体を必要に応じて繁殖させることができ、次いでこれらのオオムギ植物体(またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒)は変異誘発されてよく、続いて機能的YYの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択することができる。前記選択されたオオムギ植物体またはそれらの一部を必要に応じて繁殖させることができ、次いで:
(i)これらのオオムギ植物体(またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒)は変異誘発され、続いて、機能的ZZの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択し得るか;あるいは
(ii)これらのオオムギ植物体は、機能的ZZの完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体と異種交配できる。
上に記載の異種交配において、XX、YYおよびZZそれぞれは、LOX−1、LOX−2またはMMTのいずれかを意味し、ここでXXは、ZZとは異なるYYと異なる。
好ましい一実施形態において、オオムギ植物体は、機能的LOX−1酵素の完全な喪失を引き起こす変異を既に有しているオオムギ植物体またはそれらの一部、例えばオオムギ穀粒を変異誘発し、続いて、機能的LOX−2の完全な喪失を引き起こす変異をさらに有しているオオムギ植物体(すなわちヌルLOX−1−ヌルLOX−2または二重ヌルLOXの植物体)をスクリーニングおよび選択する工程を含む方法によって調製できる。本方法は、他のオオムギ植物体またはそれらの一部を変異誘発し、機能的MMTの完全な喪失を有するオオムギ植物体をスクリーニングおよび選択し、最終的にこれらのオオムギ植物体をヌルLOX−1−ヌルLOX−2のオオムギ植物体と異種交配させることをさらに含む。
適切なヌルLOX−1のオオムギ植物体は、例えば、国際特許出願WO2005/087934に記載されている。
スクリーニング方法が、機能的LOX−2の完全な喪失によって特徴付けられるオオムギ植物体の同定のための出発材料として発芽胚を利用することは好ましい。興味深いことに、本発明者らは、単一ヌルLOX−2のオオムギ変異体が明らかにならなかった21,000個もの成熟胚のスクリーニングに基づいて、LOX−2活性に関するスクリーニングのための出発材料としての成熟胚を使用することがあまり好ましくないことを見出している。
(i)二重ヌルLOXのオオムギ植物体を調製する工程と;(ii)ヌルMMTのオオムギ植物体を調製する工程と;(iii)前記二重ヌルLOXのオオムギ植物体と前記ヌルMMTのオオムギ植物体とを異種交配する工程と;(iv)二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を選択する工程とを含む、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を調製する方法を提供することが本発明の目的である。
前記二重ヌルLOXのオオムギ植物体の調製は;
(i)機能的LOX−1酵素の完全な喪失など、LOX−1活性の機能を完全に喪失させたオオムギ植物体またはそれらの一部を供給する工程と;
(ii)前記オオムギ植物体、ならびに/または前記オオムギ植物体由来のオオムギ細胞、および/もしくはオオムギ組織、および/もしくはオオムギ穀粒、および/もしくはオオムギ胚を変異誘発し、これによりM0世代のオオムギを得る工程と;
(iii)前記変異誘発されたオオムギ植物体、穀粒、および/または胚を少なくとも2世代にわたり育種し、これにより、Mx(ここで、xは、≧2の整数である)世代のオオムギ植物体を得る工程と;
(iv)前記Mx世代のオオムギ植物体から胚を得る工程と;
(v)前記胚を発芽させる工程と;
(vi)前記発芽させた胚またはそれらの一部におけるLOX−1活性およびLOX−2活性を決定する工程と;
(vii)発芽させた胚においてLOX−1活性およびLOX−2活性を完全に喪失させた植物体を選択する工程と;
(viii)LOX−1遺伝子内およびLOX−2遺伝子における変異について解析する工程と;
(ix)LOX−1遺伝子内およびLOX−2遺伝子内に変異を有する植物体(すなわち二重ヌルLOXの植物体)を選択する工程と
を含む方法によって好ましくは行うことができ、これらにより、機能的LOX−1および機能的LOX−2の完全な喪失を引き起こす変異をLOX−1およびLOX−2に対する遺伝子内に有するオオムギ植物体を得ることができる。
前記ヌルMMTのオオムギ植物体の調製は:
(i)オオムギ植物体、および/またはオオムギ細胞、および/またはオオムギ組織、および/またはオオムギ穀粒、および/またはオオムギ胚を変異誘発し、これにより、M0世代のオオムギを得る工程と;
(ii)前記変異誘発されたオオムギ植物体、穀粒、および/または胚を、≧2世代、例えば育種によって繁殖させ、これによりMx(ここで、xは、≧2の整数である)世代のオオムギ植物体を得る工程と;
(iii)前記Mx世代のオオムギ植物体の試料を得る工程と;
(iv)前記試料中のSMMのレベルを決定する工程と;
(v)試料が10ppb未満のSMMを含む、好ましくは5ppb未満のSMMを含む、より好ましくは検出可能なSMMを含まない植物体を選択する工程と;
(vi)MMT遺伝子の少なくとも一部分を配列決定する工程と;
(vii)MMT遺伝子内に変異を有する植物体を選択する工程と
を含む方法を使用することによって好ましくは行うことができる。
LOX−1活性を完全に喪失させた前述のオオムギ植物体は、例えば、WO2005/087934において記載される、LOX−1活性を完全に喪失させたオオムギ植物体のうちのいずれかであり得、変異体D112またはその子孫植物体であることが好ましい。
前述の方法における変異誘発させる工程は、オオムギ植物体、オオムギ細胞、オオムギ組織、オオムギ穀粒、およびオオムギ胚芽からなる群から選択され、好ましくは、オオムギ植物体、オオムギ穀粒、およびオオムギ胚芽からなる群から選択される生存材料、より好ましくは、オオムギ穀粒を変異誘発する工程を伴い得る。
変異誘発は、任意の適切な方法により実施することができる。一実施形態では、オオムギ植物体、またはその一部(例えば、オオムギ穀粒またはオオムギに由来する個々の細胞)を、変異誘発剤と共にインキュベートすることにより、変異誘発を実施する。前記剤は当業者に公知であり、例えば、アジドナトリウム(NaN3)、メタンスルホン酸エチル(EMS)、アジドグリセロール(AG、3−アジド−1,2−プロパンジオール)、メチルニトロソウレア(MNU)、およびマレインヒドラジド(MH)が含まれるが、これらに限定されない。
別の実施形態では、例えば、オオムギ植物体または穀粒などその一部を紫外線で照射することにより、変異誘発を実施する。本発明の好ましい実施形態では、本明細書の下記の節「化学的変異誘発」において概説される方法のうちのいずれかにより、変異誘発を実施する。適切な変異誘発プロトコールの非限定的な例は、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例2において与えられている。
変異誘発は、M3世代のオオムギをスクリーニングするとき、所望の変異体の予測頻度が、穀粒10,000個当たり0.5〜5個の範囲内など、少なくとも0.5個、例えば、0.9〜2.3個の範囲内であるように実施することが好ましい。好ましい実施形態では、オオムギ穀粒に対して変異誘発を実施する。変異誘発物質に適用される穀粒を、M0世代と称する(図8もまた参照されたい)。
LOX活性は、発芽オオムギ胚芽からなる試料において、好ましくは、発芽しているオオムギ胚芽の液体抽出物において決定することができる。前記抽出物などの前記試料は、前記発芽している胚芽の任意の適切な一部から調製することができる。一般に、前記試料の抽出物を調製し、LOX−2活性を決定する前に、任意の適切な方法を用いて、オオムギ試料をホモジナイズしなければならない。特に、発芽している胚芽またはその一部からタンパク質抽出物を調製し、前記抽出物を用いてLOX活性を決定することが好ましい。ホモジナイゼーションは、例えば、機械的な力を用いて、例えば、ガラスビーズまたは砂ビーズなど、ビーズの存在下において振とうすることによるなど、振とうまたは撹拌することにより実施することができる。
好ましい実施形態では、発芽している胚芽が、Mx(ここで、xは、≧2の整数であり;xは、好ましくは2〜10の範囲内、より好ましくは3〜8の範囲内の整数である)世代のものである。極めて好ましい実施形態では、LOX活性を、M3世代の発芽している胚芽、またはこのような胚芽に由来する試料において決定する。その実施形態では、変異誘発したM0世代のオオムギ穀粒を成長させてオオムギ植物体を得、これを異種交配させてM1世代の穀粒を得ることが好ましい。M3世代の穀粒が利用可能になるまで、この手順を反復する(図8も参照されたい)。
LOX活性の決定は、任意の適切なアッセイを用いて、好ましくは、本明細書の下記で概説する方法のうちの1つにより実施することができる。特に、アッセイは、LOX−1およびLOX−2により、リノール酸から、9−HPODEおよび13−HPODEをもたらす二原子酸素添加反応についてのデータを提供することが好ましい。したがって、一般に、アッセイする工程は、
(i)発芽したオオムギ胚芽またはその一部から調製されるタンパク質抽出物を供給する工程と;
(ii)リノール酸を供給する工程と;
(iii)前記タンパク質抽出物を、前記リノール酸と共にインキュベートする工程と;
(iv)リノール酸から9−HPODEおよび13−HPODEをもたらす二原子酸素添加反応を検出する工程と
を含む。
該方法の工程(iv)は、前記発芽している胚芽において、好ましくは前記発芽している胚芽から調製されたタンパク質抽出物において、9−HPODEレベルおよび13−HPODEレベルを決定する工程を含むことが好ましい。該工程は、9−HPODEレベルおよび13−HPODEレベルを直接的または間接的に決定することを含み得る。全HPODEの総レベルを決定することができるが、この場合は、確認のために9−HPODEの特異的な測定および13−HPODEの特異的な測定を実施することが好ましい。例えば、1つの方法は、発芽している胚芽からのタンパク質抽出物を、9−HPODEおよび13−HPODEを形成させるための基質としてのリノール酸と共にインキュベートする方法であり得る。その場合、前記HPODEは、各種の方法により検出することができる。1つの方法は、色素など、検出可能な化合物の生成を伴い得る。例えば、該方法は、ヘモグロビンの存在下において、3−ジメチルアミノ安息香酸と、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンとを酸化的に結合させ、形成されたHPODEによる触媒でインダミン色素を形成することであり得、これを、分光光度計を用いて、A595で測定することができる。このような方法の例を、国際特許出願PCT/DK2009/050355における実施例1および2に記載する。このアッセイを用いると、吸光度の読取り値が、0.2A595単位未満であれば、LOX−1活性の非存在およびLOX−2活性の非存在を示すものとして考えられる。しかし、LOX−1活性およびLOX−2活性を決定するためのより正確な方法は、発芽している胚芽からのタンパク質抽出物を、リノール酸と共にインキュベートし、その後、9−HPODE含量および13−HPODE含量を決定することである。9−HPODE含量および13−HPODE含量は、例えば、HPLCベースの解析を用いて決定することができる。
リノール酸から9−HPODEおよび13−HPODEをもたらす二原子酸素添加反応は、直接的に測定することもでき、間接的に測定することもできる。任意の適切な検出法を、本発明と共に用いることができる。本発明の一実施形態では、リノール酸ヒドロペルオキシドが検出される。9−HPODEおよび13−HPODEは、例えば、国際特許出願PCT/DK2009/050355における実施例4に記載されるHPLCなどのクロマトグラフィー法により直接的に検出することができる。
本発明は、LOX活性の決定について発芽している胚芽からタンパク質を抽出するための手順の特定の側面が極めて重要であることを開示する。したがって、酸性緩衝液、好ましくはpHが2〜6の範囲内、より好ましくは3〜5の範囲内、なおより好ましくは3.5〜5の範囲内、さらにまたより好ましくは4〜5の範囲内にある、なおより好ましくはpHが4.5の緩衝液を用いてタンパク質を抽出することが好ましい。抽出に用いられる緩衝液は、有機酸に基づくことが好ましく、乳酸緩衝液であることがより好ましい。タンパク質抽出物は、pH4.5の100mM乳酸緩衝液を用いて調製されることが最も好ましい。
本発明の一部の実施形態は、ヌルLOX−1およびヌルLOX−2植物体を検出するための方法であって、9−HPODEおよび13−HPODEが、色素、例えば、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンと反応することを伴う方法を開示する。前記色素、例えば、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンは、リノール酸を添加した後で、タンパク質抽出物に添加することが好ましい。該色素は、タンパク質抽出物を、リノール酸と接触させた後の、好ましくは少なくとも1分、より好ましくは少なくとも5分、なおより好ましくは少なくとも10分、例えば、1〜60分間の範囲内、例えば、5〜30分間の範囲内、例えば、10〜20分間の範囲内に添加することが好ましい。
本発明によるオオムギ植物体を選択するのに好ましい方法については、国際特許出願PCT/DK2009/050355における実施例2で詳述する。
選択手順を、マイクロ滴定プレートベースのアッセイ手順、または他の公知の反復的なハイスループットアッセイフォーマットについて調整して、多くの試料の迅速なスクリーニングを可能とすることができる。少なくとも5000個、例えば、少なくとも7500個、例えば、少なくとも10,000個、例えば、少なくとも15,000個、例えば、少なくとも20,000個、例えば、少なくとも25,000個の変異誘発したオオムギ植物体を、LOX−1活性およびLOX−2活性について解析することが好ましい。
LOX−1をコードする遺伝子における変異の決定は、複数の異なる方法により実施することができる。例えば、LOX−1遺伝子を完全にまたは部分的に配列決定することができ、該配列を、配列番号1(WO2005/087934の配列番号1に対応する)またはWO2005/087934の配列番号5と比較することができる。特定の変異を検索する場合は、SNP解析を適用することができる。当業者は、LOX−1のコード配列において未熟終止コドン(例えば、本明細書の上に記載した未熟終止コドンのうちのいずれか)をもたらす変異など、所与の特定の変異を検出するのに有用なプライマーをデザインすることができる。LOX−1遺伝子の3474位のヌクレオチドにおけるG→A変異を検出するのに有用なプライマーによりSNP解析を実施する方法のうちの一例については、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例10に記載する。
LOX−2をコードする遺伝子における変異の決定は、複数の異なる方法により実施することができる。例えば、LOX−2遺伝子を完全にまたは部分的に配列決定することができ、該配列を、配列番号5(国際特許出願PCT/DK2009/050355の配列番号1に対応する)と比較することができる。特定の変異を検索する場合は、SNP解析を適用することができる。当業者は、LOX−2のコード配列において未熟終止コドン(例えば、本明細書の上に記載した未熟終止コドンのうちのいずれか)をもたらす変異など、所与の特定の変異を検出するのに有用なプライマーをデザインすることができる。LOX−2の遺伝子の2689位のヌクレオチドにおけるG→A変異を検出するのに有用なプライマーによりSNP解析を実施する方法のうちの一例については、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例10に記載する。
本明細書の上記の本節に詳述した、二重ヌルLOXのオオムギ植物体を調製する方法の工程(viii)および(ix)を、工程(vi)および(vii)の前に実施することができ、この場合、該方法は、工程(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(viii)、(ix)、(vi)、および(vii)を、この順序で含む。特に、これは、例えば、既に同定された二重ヌルLOXのオオムギ植物体の子孫植物体において特定の変異を検索する場合であり得る。
好ましくは機能的MMTを完全に喪失させたオオムギ植物体の選択は、変異誘発されたオオムギ植物体から、好ましくは発芽させた変異誘発されたオオムギ植物体から、なおより好ましくは変異誘発された(4日間発芽させている)オオムギ植物体から、試料を得る工程を含む。試料が、子葉鞘および/または初生葉由来である、好ましくは葉由来であることは好ましい。したがって試料は例えば1cmから3cmの範囲内の葉組織であってよい。
試料は、異なる溶媒および結合材料の継続的な使用を伴う、本明細書に記載される、新規に開発されたマルチプロセスのプロトコールに従い、抽出および解析することができる。一般に、試料は、例えば、溶媒または溶媒の混合物、好ましくは、水および/または有機溶媒により抽出することができる。有機溶媒は、例えば、アルコール、好ましくはメタノールであり得る(または、有機溶媒は、例えば、ハロゲン化アルキル、好ましくはクロロホルムであり得る)。好ましい一実施形態では、溶媒が、水、メタノール、およびクロロホルムの混合物である。前記抽出は、例えば、シェーカーまたはミキサーを用いて混合しながら実施すると有利であり得る。該溶媒/試料混合物には、固体支持体(例えば、ガラスビーズなどのビーズ)を添加することができる。
好ましい実施形態では、MMT活性を決定するための前述の葉試料を、Mx(ここで、xは、≧2の整数、好ましくは、2〜10の範囲内の整数、より好ましくは、3〜8の範囲内の整数である)世代の穀粒から採取する。極めて好ましい実施形態では、M3世代の発芽植物体またはその試料(葉など)において、SMMのレベルを決定する。前記実施形態では、変異誘発したM0世代のオオムギ穀粒を成長させてオオムギ植物体を得、その後、これを異種交配させてM1世代の穀粒を得ることが好ましい。M3世代の穀粒が入手可能になるまで、この手順を反復する(図8を参照されたい)。
SMMレベルの決定は、下記で説明される新規の手順に基づくことが好ましい。興味深いことに、この方法は、ハイスループットのスクリーニングを可能とし、これにより、機能的MMTの完全な喪失を特徴とするオオムギ植物体の同定が実行可能となる。
一般的に述べると、該方法は、試料、または好ましくは、上に記載された通りに調製された前記試料の抽出物を、SMMに結合することが可能な化合物と反応させる工程を含む。本明細書の下記ではOPAとだけ称するOPA試薬(Sigma社製、型番P7914;国際特許出願PCT/DK2009/050315の図2を参照されたい)が、SMMレベルを決定するのに特に有用であることが判明した。OPAは、とりわけ、SMMと反応して、SMM−OPAと称する分子を形成する(国際特許出願PCT/DK2009/050315の図2を参照されたい)。反応は、OPAを、上に記載した通りに調製された試料の抽出物と共にインキュベートする工程を含むことが好ましい。加えて、該反応混合物に、3−メルカプトプロピオン酸を添加することが好ましい。混合物は、アルカリ性のpH、好ましくはpH8〜pH11の範囲内、より好ましくはpH9〜pH11の範囲内、なおより好ましくは、pH10など、pH9.5〜pH10.5の範囲内に保つことが好ましい。インキュベーションは、0℃〜10℃の範囲内、好ましくは1℃〜8℃の範囲内、なおより好ましくは2℃〜6℃の範囲内、さらにまたより好ましくは、4℃など、3℃〜5℃の範囲内にある温度で実施することが好ましい。インキュベーション時間は、≧10分間であることが好ましい。
SMM−OPAが、それぞれ、340nmおよび450nmの光を吸光および発光するという観察に基づき、蛍光分光分析を用いることにより、その検出が可能となった。検出の初期のプロセスは、カラムにより、好ましくは、30×2mmのGemini 3μ C18カラム(Phenomenex社製、型番00A−4439−80; Phenomenex社、2006年)上において抽出物を分離した後で、ハイスループットの液体クロマトグラフィーシステム、好ましくは、340nmの励起および450nmの発光を有する分子の蛍光レベルを同定および測定するようにデザインされた、Ultra Performance液体クロマトグラフィー(Waters社製、UPLCシステム)を用いる蛍光の検出を伴うことが好ましい。この方法を用いる場合、「検出可能なSMMはない」とは、SMMと共に共溶出する検出可能な化合物が非存在であることを意味する。この文脈において、クロマトグラムピークにおける小さな「肩」は、アーチファクトのピークであると考えられる。したがって、Asn/Serピークの右側における小さな肩(図2を参照されたい)は、SMMピークを表すとは考えられない。したがって、例として述べると、図2Bに示される上方の2つのクロマトグラムが、「検出可能なSMMはない」を示すと考えられるのに対し、前記図中下方のクロマトグラムは、SMMを含む試料の分離を表す。
SMMの検出は、実施例2または実施例4に記載する通りに行うことが好ましい。本発明によるオオムギ植物体を選択するのに好ましい方法は、本明細書の下記の実施例2に記載する。分析のための組織は、発芽しているオオムギ植物体、なおより好ましくは、発芽以来4日間が経過したオオムギ植物体から好ましくは採取される。上述のスクリーニング法が特に有用であることは、注目に値する。何よりもまず、該解析法は新規である。さらに、それが、発芽しているオオムギ植物体の葉など、発芽しているオオムギ植物体におけるSMMレベルを決定するために確立されていることは、上記の方法の顕著な利点である。発芽しているオオムギから試料採取するタイミングにより、UPLCベースでSMMを検出するための、予測外に清明な調製物が作製される。他の試料、例えば、上に記載したのと同様の穀粒によるウォート試料は、組成が複雑に過ぎ、一般に、SMMレベルを決定するための、言及されたクロマトグラフィー法で用いることはできない。
SMMが10ppb未満であり、好ましくは、検出可能なSMMを有さないオオムギ植物体を同定した後で、対応するMMT遺伝子またはその一部を配列決定して、問題のオオムギ植物体が、該MMT遺伝子における変異を有するものとして分類され得るかどうかを決定することが典型的である。次いで、検出可能なSMMを有さないことを特徴とし、MMTをコードする遺伝子のうちの1つ以上の塩基が野生型配列と比較して異なるオオムギ植物体を選択する。この文脈で、野生型配列とは、対応する野生型オオムギ栽培種で見出される配列であることが好ましく、配列番号9(国際特許出願PCT/DK2009/050315の配列番号3に対応する)として示される配列であることが好ましい。好ましい変異は、本明細書の上に記載されている。
選択されたオオムギ変異体は、さらに繁殖させることができ、続く世代の植物体はSMM含有量について再スクリーニングできる。有用なオオムギ植物体の選択後に、これらは、本明細書の下の「植物育種」の節に記載する従来法を利用する育種プログラムに含まれることができる。
LOX−1遺伝子内に特定の変異およびLOX−2遺伝子内に特定の変異およびMMT遺伝子内に特定の変異(上に述べた任意の変異など)を含有する二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体が一旦同定されると、同一の変異を有するさらなるオオムギ植物体を当業者に周知のものなどの従来の育種法によって作製できる。例えば前記二重ヌルLOXのオオムギ植物体は、別のオオムギ栽培品種と戻し交配することができる。
機能的LOX−1、LOX−2およびMMTを完全に喪失させた有用なオオムギ植物体の選択に続いて、1つ以上のさらなるスクリーニングを必要に応じて実施できる。例えば選択された変異体をさらに繁殖させることができ、新世代の植物体を機能的LOX−1、LOX−2およびMMTの完全な喪失について調べることができる。
本発明の一実施形態において、本発明による二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体が野生型オオムギと同様の植物成長の生理学的特徴および穀粒の発生を有することは好ましい。したがって、二重ヌルLOX−1−ヌルMMTのオオムギ植物体が、草高、植物体あたりの分げつ(tiller)数、開花の開始、および/または1穂当たりの穀粒数に関して野生型オオムギ(好ましくは栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalina)と同様であることが好ましい。
さらに、本発明による二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体が、草高、出穂日(heading date)、病害耐性、倒伏(lodging)、穂切り(ear−breakage)、成熟期間、および収量に関して野生型オオムギと同様であること、詳細には栽培品種Powerまたは栽培品種Quenchと同様であることが好ましい。本文脈において「同様」は、数の場合、同一±10%であるとして理解される。これらのパラメーターは本明細書で下の実施例5に記載する通りに決定することができる。
本発明の非常に好ましい実施形態において、オオムギ植物体は、オオムギA689系統(ATCC特許寄託番号:PTA−9640)とオオムギ8063系統(ATCC特許寄託番号:PTA−9543)との異種交配によって調製され、必要に応じてさらなる育種が続く。
オオムギA689系統の種子は、「オオムギ、Hordeum vulgare L.:A689系統」という名称で、2008年12月4日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Patent Depository、10801 University Blvd、Manassas、VA20110、United Statesに寄託(寄託番号PTA−9640)された。
オオムギ8063系統の種子は、2008年10月13日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Patent Depository、10801 University Blvd、Manassas、VA20110、United Statesに寄託(ATCC特許寄託番号PTA−9543)され、「オオムギ、Hordeum vulgare :8063系統」と称された。
化学的変異誘発
本発明による二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を作製するために、任意の適切な変異誘発法により、例えばオオムギ穀粒の化学的変異誘発の使用により極めて多数のオオムギ変異体が、典型的には複数回(multiple rounds)で、調製される。この方法は、無作為的に変異を誘導することが公知である。オオムギの変異誘発は、任意の変異誘発化学物質を使用して実施することができる。しかし穀粒をNaN3で処理し、生存する穀粒を発芽させた後、子孫植物体を解析することにより実施することが好ましい。M0世代と称する、変異誘発させた穀粒から成長する植物体世代は、任意の所与の変異について、ヘテロ接合体のキメラを含有する。自己授粉後に回収された子孫植物体をM1世代と称するが、ここでは、所与の変異が、対応するヘテロ接合体およびホモ接合体へと分離する(図8を参照されたい)。
処理後における穀粒は、一部の非変異体細胞と、DNAの変異を有する各種の細胞とを含有するので、穀粒をNaN3で処理することは、単一の細胞を処理することと等価ではない。生殖細胞系列をもたらさない細胞系統では変異が失われるので、これは、生殖組織へと生育し、M1世代の発生に寄与する少数の細胞を、変異誘発物質の標的とすることが目的である。
全体的な変異効率を評価するため、M0世代およびM1世代において、アルビノキメラおよびアルビノ植物体をカウントすることができる。変異体の数を生存植物体数の関数としてスコア化することにより、変異の効率についての推定値が得られる一方、変異体数を、処理した種子数の関数としてスコア化することにより、変異の効率と、穀粒死滅との両方についての組合せが測定される。
細胞が、遺伝子発現のほとんどどの段階でも、変異の損傷的効果をおそらく緩和する、品質保証機構を有することは注目に値する。真核生物において十分に研究されている一例は、NMDと称し、潜在的に有害な、未熟の切断型タンパク質の合成を防止する、ナンセンス媒介性mRNA分解(nonsense−mediated mRNA decay)(MaquatおよびCarmichael、2001年;Wu ら、2007年)である。NMDでは、終止コドンが、下流の不安定化エレメントに対するその位置により未熟であると同定される。未熟終止(ナンセンス)コドン(PTC)を発生させる変異は、場合によって、原因となる変異をスキップし、これにより、タンパク質機能を潜在的に保全する、選択的スプライシングの転写物のレベルを上昇させることがある(MendellおよびDietz、2001年)。
植物体の育種
本発明の一実施形態では、二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質を含む、農業的に有用なオオムギ植物体を提供することが目的である。作物の育成は、新規の形質の導入と共に始まる、長期間にわたる困難なプロセスであることが多い。しかし、植物育種家の視点からすると、この工程は、ほとんど常に、農業形質の全体的プロファイルの所望の程度が、市販される現行の品種より劣る植物体を結果としてもたらす。
二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質に加えて、例えば穀粒収量および穀粒サイズである麦芽製造および/または醸造および/または飲料のベースとして有用な商業用オオムギ品種を作製する技術分野においても考慮される場合があるさらなる因子、ならびに麦芽製造生産力または醸造生産力に関する他のパラメーターも存在する。関連する多くの形質(すべてではないにせよ)が、遺伝子の制御下にあることが示されていることから、本発明は本公開で開示される二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体との異種交配から調製できる新しいホモ接合性で高収量の麦芽製造栽培品種も提供する。オオムギ育種の当業者は、(二重ヌルLOXのオオムギ−ヌルMMTのオオムギと異種交配させた後で)優れた栽培品種を結果としてもたらすオオムギ植物体を、選択および育成できる。代替的にオオムギの育種家は、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギに由来する新規栽培品種を作製するためのさらなる変異誘発のために本発明の植物体を利用できる。
二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質が後代系統において維持されることを確認する1つの方法は、LOX−1遺伝子、LOX−2遺伝子およびMMT遺伝子のSNP解析に関する。好ましくはLOX−1活性、LOX−2活性およびMMT活性も決定される。
本発明によるオオムギ植物体は、任意の適切な育種のスキームへ導入することができる。
本発明の別の目的は、二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質を含む、農業的に優良なオオムギ植物体を提供することである。したがって、本発明は、第1の親オオムギ植物体を、第2の親オオムギ植物体と異種交配させることにより、新規の二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体を作製するための方法であって、第1または第2の植物体が、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギである方法も対象とする。加えて、第1および第2の親オオムギ植物体は両方とも、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ品種に由来することができる。したがって、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ品種を使用する(自家受粉、戻し交配、集団への異種交配などの)任意のこのような方法は、本発明の一部である。二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ品種に由来する品種から発生した植物体を含め、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ品種を親として用いて作製されるすべての植物体は、本発明の範囲内にある。二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギは、二重ヌルLOX−ヌルMMTの植物体または植物体組織に外因性DNAを導入し、発現させる場合において遺伝子形質変換にも用いることができる。
戻し交配法は、変異誘発したオオムギ植物体の二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質を、別の栽培品種、例えば栽培品種Scarlettまたは栽培品種Jerseyまたは栽培品種Quenchまたは栽培品種Rosalina(これらは、新型の高収量の麦芽製造オオムギ栽培品種である)に導入するために本発明と共に用いることができる。標準的な戻し交配のプロトコールにおいては、問題の元の品種(すなわち反復親植物体)を移入される問題の変異LOX遺伝子を有している第2の品種(非反復親植物体)と異種交配させる。この異種交配から得られる二重ヌルLOXの子孫植物体を、続いて反復親植物体に異種交配させ、非反復親植物体の二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質に加えて生成された植物体において反復親によって特定される本質的にすべての特徴が回復しているオオムギ植物体が得られるまでこのプロセスが繰り返される。最終的に、最後に生成された戻し交配された植物体を純粋な二重ヌルLOX−ヌルMMTの育種子孫植物体を得るために自家受粉させる。
植物体育種のプロセスを加速化する方法は、組織培養および組織再生の技術を応用することによる生成された変異体の初期繁殖を含む。したがって、本発明の別の態様は、増殖および分化により二重ヌルLOX−ヌルMMTの形質を有するオオムギ植物体を生成する細胞を提供することである。例えば、育種は、伝統的異種交配、葯に由来する繁殖力のある植物体の調製、または小胞子培養の使用を伴うことができる。
LOX経路による生成物
各種の実施形態では、本発明は、低いレベルのT2NおよびT2Nポテンシャルを含む、オオムギ植物体およびそれらの生成物に関する。LOX酵素は、cis−1,cis−4ペンタジエン系によるポリ不飽和脂肪酸の二原子酸素添加反応を触媒する。オオムギでは、C18のポリ不飽和脂肪酸であるリノール酸(18:2Δ9,12)およびα−リノール酸(18:3Δ9,12,15)が、主要なLOXの基質である。脂肪酸代謝のリポキシゲナーゼ経路は、アシル鎖のC−9位(LOX−1により大半が触媒される)またはC−13位(LOX−2により大半が触媒される)において分子状酸素を付加することにより開始され、対応する9−HPODEおよび13−HPODEをもたらす[基質がα−リノール酸の場合は、9−ヒドロペルオキシオクタデカトリエン酸および13−ヒドロペルオキシオクタデカトリエン酸(HPOTE)が生成物であるが、HPOTEは、T2Nの前駆体としては機能しない]。LOX経路のヒドロペルオキシドリアーゼのブランチでは、9−HPODEおよび13−HPODEの両方が、短鎖のオキソ酸およびアルデヒドへと切断され得る(図1Aを参照されたい)。特に、9−HPODEが切断されて、T2Nへと変換されるcis−ノネナールを形成し得るのに対し、13−HPODEは、2−E−ヘキセナールの前駆体である。したがって、LOX−2により触媒されるリノール酸の二原子酸素添加反応の主要な生成物である13−HPODEが、T2Nの劣化風味を形成させる該経路内の上流の成分であるとは予測されていなかった。
本発明は、LOX−1またはLOX−2により触媒される反応の直接的な生成物として生成されるわけではないが、後続の一連の反応の結果として生成される、LOX−1触媒およびLOX−2触媒による下流の代謝物の生成に影響を及ぼすことも包含することが認識される。これらには、自発性、因子誘導性、または酵素触媒性の異性化および変換が含まれる。したがって、これらの下流の代謝物の生成には、該経路の他の成分、例えば、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HPL)の発現を調節することにより影響を及ぼし得る。
T2NおよびDMSならびにそれらの前駆体
本発明は、1つ以上のオフフレーバーおよびその前駆体のレベルが低い飲料を調製するための方法に関する。好ましくは、前記オフフレーバーは、T2NおよびDMSであり、その前記前駆体はそれぞれT2NポテンシャルおよびDMSPである。
したがって、本発明の1つの目的は、T2Nポテンシャルを低下させるまたは除去することである。したがって、T2N前駆体およびアルデヒド付加物の形成を低下させることは本発明の目的である。ビールの劣化に関連するいくつかの化学反応は解明されていないが、T2Nポテンシャルからの遊離T2Nの生成は、ビール生成物における劣化風味の発生の主な原因として認識されている(Kurodaら、上掲)。したがって、T2Nポテンシャルレベルが低い飲料およびT2N前駆体のレベルが低い飲料を提供することは本発明の目的である。
T2Nポテンシャルの大半は、ウォートから完成したビールへと移り、ここで、遊離T2Nが放出され得る(Liegeoisら、2002年)が、このプロセスでは、酸性条件および温度条件が重要な因子である。本発明との関連では、T2Nポテンシャルを、本明細書の上の定義に記載した通りに定義する。T2Nポテンシャルレベルを決定するための他の方法もまた、用いることができる。混乱を避ける目的で、本文脈における「T2Nポテンシャル」の意味は、本明細書の上の定義に記載した通りである。本明細書では、T2Nを放出するか、またはT2Nへと変換される能力を有する化学物質を「T2N前駆体」と称し、T2Nポテンシャルを決定するための方法以外の代替的な方法により決定または測定されるT2N前駆体を、「T2N前駆体」と称する。T2N前駆体は、まず、T2Nを放出するか、またはT2Nへと変換される能力を有するその化学物質のうちの本質的にすべて(好ましくはすべて)が、実際に、それぞれ、T2Nを放出し、かつ/またはT2Nへと変換されるように、試料を最初に処理することにより、特に決定することができる。その後、T2Nレベルを決定する。
本発明のオオムギ穀粒は、MMT活性を含まないことに加えて、LOX−1活性およびLOX−2活性を含まない。興味深いことに、そのようなオオムギ穀粒は極めて少量しかT2Nポテンシャルを含有しない。
したがって、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒を用いて生産されるビールは、極めて低いレベルのT2Nを有するだけでなく、T2Nポテンシャルレベルも極めて低い。本発明の範囲内にあるのは、極めて低いレベルのT2Nポテンシャルを含有する、好ましくは野生型のオオムギ(好ましくは栽培品種Power)から同じ方法で生産した同様のビール生成物の60%未満、より好ましくは50%未満のレベルのT2Nポテンシャルを含有するビール生成物をもたらす二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒である。
二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒に由来する植物生成物が極めて低いT2N前駆体レベルを有することも好ましい。本発明の範囲内にあるのは、二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ穀粒から調製され、野生型のオオムギ(好ましくは栽培品種Power)から同じ方法で生産した同様の植物生成物の60%未満、より好ましくは50%未満のT2N前駆体を含有する植物生成物である。
マイクロモルティングされた原料の試料において、ならびにこれに由来する生成物において測定されるT2N値は、より大きなスケールで、例えば、30kgの大規模パイロットモルティングされた試料から作製された原料に由来するT2N値よりも高値であることが多いことは注目に値する。しかし、大スケールでの実験と、小スケールでの実験との間の相対的な、実験によるT2Nの値は、一般に同様である。
同様に、マイクロモルティングされた原料の試料において、ならびにこれに由来する生成物において測定されるT2NポテンシャルおよびT2N前駆体は、より大きなスケールで、例えば、30kgの大規模パイロットモルティングされた試料から作製された原料に由来するT2NポテンシャルおよびT2N前駆体よりも高いことが多いことは注目に値する。しかし、大スケールでの実験と、小スケールでの実験との間の相対的な、実験によるT2Nポテンシャル値は、一般に同様である。
DMSおよびDMSPを低下させるまたは除去することも本発明の目的であり、ここでDMSPは好ましくはSMMである。
植物生成物中のSMMおよびDMSの量は、任意の適切な方法によって決定できる。SMMは、オオムギ試料におけるSMMレベルの決定が記載されている本明細書の上の節「二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ植物体の調製」において本質的に記載の通り決定できる。したがってSMMは、OPAなどの化合物とカップリングさせる工程および例えばUPLCシステムを使用して蛍光を測定する工程によって決定できる。定量的測定のために、SMMピークに対応するクロマトグラム面積を決定できる。
より正確な測定のために、DMSおよびDMSP(SMMなど)両方の量(後者の化合物は活性化後にDMSとして測定される)は、好ましくは高分解能キャピラリーガスクロマトグラフィーを使用して決定される。ウォートまたはビールの試料中の総DMSは、本明細書において遊離DMSと、DMSPを意味するその前駆体形態との定量的合計として定義される。この定義を使用してウォートまたはビールの試料中のDMSPの量は、総DMS(煮沸試料において、好ましくはアルカリ性条件下で1時間煮沸された試料において測定される)と遊離DMS(非煮沸試料において測定される)との間の差として決定できる。実施例4は、総DMSおよび遊離DMSのレベルを測定するための好ましい方法を詳述する。
本明細書においてDMSPの量およびSMMの量は、アルカリ性条件下で1時間煮沸することによって前記DMSPまたは前記SMMから遊離され得るDMSの濃度として与えられる。
本明細書における実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、本発明を限定するものとして考えるべきではない。
別段に示さない限り、核酸および細菌を操作するためには、SambrookおよびRussel(2001年)において記載される基本的な分子生物学の技法を実施した。
(実施例1)
発芽オオムギ胚内における低LOX−2活性についてのスクリーニング
改良型スクリーニング材料 異種交配(ヌルLOX−1変異体D112×Jersey)×Sebastianにより生成したヌルLOX−1系統Ca211901のオオムギ植物体から採取した穀粒を、Kleinhofsら(1978年)により示された詳細に従って変異誘発物質NaN3と共にインキュベートした。オオムギのヌルLOX−1変異体D112はWO2005/087934に記載され、2003年9月11日に番号PTA−5487の下でAmerican Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Boulevard、Manassas、VA.20110、USAに寄託された。
この手順は、オオムギのゲノムDNAにおいて点変異を誘導し、最終的に、変異誘発されたDNAによりコードされるタンパク質におけるアミノ酸残基の置換、または切断をもたらすことが公知であるので、選択された。本刊行物の変異誘発実験では、M1世代の変異した穀粒を、後続する2世代にわたり圃場試験区において繁殖させることを選択し、これにより、最終的に、スクリーニングを目的とするための、高比率のホモ接合性植物体がもたらされた(図8を参照されたい)。M2世代の穀粒は、主に、比較的高比率のヘテロ接合性点変異を含有すると予測されたため、スクリーニングしなかったのに対し、M3世代の変異体穀粒をスクリーニング材料として用い、穀粒10,000個当たり、0.9〜2.3個の変異を予測した(Kleinhofsら、上掲)。
驚くべきことに、本発明者らは、発芽している胚芽の解析により、成熟胚芽の抽出物の解析(国際出願PCT/DK2009/050355の実施例1に記載される)と比較して、アッセイ結果がはるかに改善されることを見出した。これにより、その胚盤組織を含め、発芽している胚芽におけるLOX−2活性を測定するための、ハイスループットのスクリーニング手順を確立した。
35,125穂のオオムギ(ヌルLOX−1変異体D112のM4世代の20,977系統、および、ヌルLOX−1系統であるCa211901系統のM3世代の14,148系統)による成熟穀粒から胚芽2つずつを単離し、96ウェル保存プレート(ABgene社製)へと移した。各ウェルに20μlの水を添加し、湿らせたKimnettティッシュおよびプラスチック製のふたによりこれを覆った後で、胚芽の発芽を開始させた。プラスチック製のバッグ内、20℃で48時間にわたり、プレートをインキュベートした。インキュベーション後、LOX−2酵素を抽出した;まず、各ウェルに5mmのガラスビーズおよび200μlの抽出緩衝液(pH4.5の100mM乳酸溶液)を添加した後に、MM 300実験用ミル(Retsch社製)において、35秒間にわたり27秒−1の振動数で破砕した。その後、プレートを、Allegra 6R遠心分離機(Bechman−Coulter社製)において、4℃で10分間にわたり、4,000rpmで遠心分離し、不溶性物質を沈殿させた。LOX−2活性は、基本的に、成熟胚芽抽出物のLOX−2活性の解析(国際出願PCT/DK2009/050355の実施例1を参照)について記載した通りに決定したが、アッセイ1回当たりに用いる抽出物が、40μlではなく、30μlに過ぎない点だけが異なった。
潜在的な変異体の同定:上に記載した通り、上述の35,125のオオムギ系統各々について、穀粒2つずつをLOX−2活性について解析し、前記活性が、ヌルLOX−1穀粒および野生型の穀粒と比較した場合に大きく低下する穀粒を同定することを目的とした。Ca211901系統のM3世代では、合計7個の潜在的な原変異体(raw mutant)が同定された。これらを温室内でさらに繁殖させ、収穫し、次いで、極めて低度のLOX活性に関する形質について再スクリーニングした。最終的に、変異体A689と称する、Ca211901系統で唯一の変異体が、LOX−2活性を本質的に示さないことが示された。LOX活性がほぼLOX−2だけによりもたらされる発芽した胚芽の抽出物により、総LOX活性の詳細な測定が実施された(Schmittおよびvan Mechelen、1997年)。変異体A689のM3世代の穀粒の発芽した胚芽では、総LOX活性(比色分析によるLOXアッセイにより決定された)が、発芽した胚芽1個あたりA595単位で0.163±5.5%であったのに対し、ヌルLOX−1母品種であるCa211901の総LOX活性は、発芽した胚芽1個あたりA595単位で1.224±3.8%(ヌルLOX−1原変異体D112についての対応する値は、発芽した胚芽1個あたりA595単位で1.215±6.0%)であった。
オオムギA689系統の種子は、「オオムギ、Hordeum vulgare L.;A689系統」という名称で、2008年12月4日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Patent Depository、10801 University Blvd.、Manassas、VA20110、United Statesに寄託された(寄託番号PTA−9640)。
変異体A689におけるHPODEの解析は、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例4に記載されている。
変異体A689の特性は、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例5に記載されている。
オオムギ変異体A689におけるLOX−2についての遺伝子の配列決定は、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例10に記載されており、その表7は変異体A689のLOX−1およびLOX−2遺伝子における変異を要約している。
二重ヌルLOX変異体A689を検出するための方法は、国際特許出願PCT/DK2009/050355の実施例11に記載されている。方法は、LOX−1内の変異およびLOX−2内の変異を検出するためのSNPに基づく方法である。
(実施例2)
ヌルMMTのオオムギ変異体に関するスクリーニング
栽培品種Prestigeおよび栽培品種Sebastianのオオムギ植物体から採取した穀粒を、別々に、Kleinhofsら(1978年)によって提供された実験の詳細に従って、変異誘発物質NaN3と一緒にインキュベートした。この手順を選択したのは、オオムギのゲノムDNAにおいて点変異を誘発するその潜在力が公知であるからであった。
本実験では、M1世代の変異した穀粒を、畑の小区画において次の2世代を通して繁殖させ、最終的に、スクリーニング目的ために、高比率のホモ接合性のM3世代の植物体を得た。M3世代の変異した穀粒は、穀粒10,000個当たり0.9〜2.3の頻度で遺伝子変異を含有することが予想された(Kleinhofsら、上掲)。M2の穀粒がスクリーニングされなかったことは注目に値する。
興味深いことに、本発明は、麦芽製造の間の検出可能なSMM合成の喪失をもたらす、MMT活性を喪失したM3の変異体オオムギ穀粒を検出するための高速ハイスループットスクリーニング手順を記載している。したがって、本発明により、SMMが、発芽しているオオムギの子葉鞘および初生葉に主に蓄積したこと、および4日齢の発芽した穀粒の押しつぶした葉組織からアミノ酸を抽出し、続いて抽出したアミノ酸をOPAと反応させて高度に蛍光性の生成物を形成することによって、SMMの検出を行うことができることが見出された(図2参照)。
実際的に述べると、各アッセイは、閉じたプラスチックの箱の中で、Whatman#1濾紙(296×20.9mm)1枚を用いて94種の可能性のある変異体および2つの野生型植物体のそれぞれからの2つの穀粒を発芽させることによって行った。多数の、可能性のある変異穀粒に対してアッセイを繰り返した(下記を参照されたい)。発芽の開始のときに水道水25mL、続いて発芽の2日目に付加的な水道水15mLを前記プラスチックの箱に加えた。発芽の4日後に、1〜3cmの葉組織を、1.2mLの96ウェルのそれぞれが直径5mmのガラスビーズおよび水:メタノール:クロロホルムの12:5:6(v/v/v)混合物500μLを含む、貯蔵プレート(ABgene)に移した。次いで、プレートを、MM300ラボ用破砕器(Retsch)内で30Hzの振動数で45秒間振とうした。その後、プレートを遠心分離機(Rotanta460R、Hettich)に移し、4,000rpmで15分間、室温で、不溶性物質が沈殿するまで回転させた。上清10μLを96ウェル貯蔵プレート(Waters、カタログ番号186002481)に移し、200μLのH2OおよびOPA試薬(Sigma、カタログ番号P7914):3−メルカプトプロピオン酸(Aldrich、カタログ番号M5801)の15,000:45(v/v)混合物を含有する反応溶液60μLと混合した。混合物を4℃で少なくとも10分間インキュベートしてOPAによる試料アミノ酸の定量的誘導体化を得た。蛍光検出器を備えたWatersに基づくUPLCシステムを使用して、誘導体化された混合物2μLを2.1×30mmの、3μmの粒子のC18 Geminiカラム(Phenomenex、カタログ番号00A−4439−80)において、移動相A(40mMのNaH2PO4緩衝液、pH7.8に調整)と移動相B[記載されている通り(Phenomenex、2006年)、アセトニトリル:メタノール:水の45:45:10(v:v:v)溶液]を混合することによる勾配溶出を使用して分離した。溶出されたOPA誘導体の励起は340nmであった、その一方で、光の放射は450nmにおいて測定された。クロマトグラムの例を図2に示して、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン(Asn)、セリン(Ser)およびSMMの溶出プロファイルを例示している。後者の化合物は、全体的なプロジェクトの目的が、SMMを合成する能力を喪失したオオムギ植物体、すなわち、対応するクロマトグラムのピークが非常に小さいまたは好ましくはピークが存在しない植物体を同定することであったので、それを含めた。
オオムギ栽培品種Prestigeおよび栽培品種Sebastianのそれぞれ10,248個および3,858個のすべてのNaN3変異誘発穀粒を、SMM含有量に関して野生型穀粒と比較した場合に前記含有量が大きく低下しているものを同定する目的でスクリーニングした。M3世代の潜在的変異体2個だけ、すなわち試料番号8,063の穀粒(栽培品種Prestige由来、本明細書の以下において変異体8063と記載し、名称は続く世代の穀粒に対しても使用する)および試料番号14,018の穀粒(栽培品種Sebastian由来、本明細書の以下において変異体14018と記載し、名称は続く世代の穀粒に対しても使用する)が同定された。各変異体の穀粒をM4世代に繁殖させ、次いで収穫し、最終的に再分析した。結果は、変異体8063および変異体14018の穀粒は極めて低いSMM含有量であること、場合によってSMMを完全に欠失していることを実証した。
ウェスタンブロット解析は、変異体8063および変異体14018がMMT酵素を欠失したことを実証している(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例3を参照されたい)。
MMT活性測定は、変異体8063がMMT活性を欠失していることも実証している(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例4を参照されたい)。
国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例9に記載の通りオオムギ変異体8063におけるMMTに関する遺伝子の配列決定は、イントロン5の最初の塩基におけるG→A塩基の転移(配列番号10のヌクレオチド番号3076、国際特許出願PCT/DK2009/050315の配列番号8に対応する)を明らかにした。国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例14に記載の通りオオムギ変異体14018におけるMMTに関する遺伝子の配列決定は、イントロン2の最初の塩基における、エクソン2のすぐ下流のスプライスドナー部位での、より詳細にはヌクレオチド番号1462番でのG→A塩基の転移を明らかにした。
MMT mRNAが変異体8063では切断されていること(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例11を参照されたい)および、前記切断されたmRNAによってコードされている変異体MMTタンパク質がMMT活性を有さないこと(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例12を参照されたい)がさらに確認されている。MMT mRNAが変異体14018では切断されていること(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例15を参照されたい)および、前記切断されたmRNAによってコードされている変異体MMTタンパク質がMMT活性を有さないこと(国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例16を参照されたい)も確認されている。
変異体8063のMMT遺伝子における変異の存在を検出するための方法は、国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例11に記載されており、変異体14018のMMT遺伝子における変異の存在を検出するための方法は、国際特許出願PCT/DK2009/050315の実施例17に記載されている。
(実施例3)
オオムギ異種交配
図3は、本発明の二重ヌルLOX−ヌルMMTのオオムギ系統が、オオムギ系統A689(二重ヌルLOX、PCT特許出願第PCT/DK2009/050355号を参照されたい)と8063系統(ヌルMMT、PCT特許出願第PCT/DK2009/050315号を参照されたい)との最初の異種交配によってどのように育成されたのかを要約している。標準的育種技術を使用して倍加半数体系統を育成し、温室で繁殖させた。このうち農業生産力ならびにLOX−1活性の欠如(Breddam,K.らへの米国特許第7,420,105号の実施例2を参照されたい)、LOX−2活性の欠如(PCT出願第PCT/DK2009/050355号の実施例2および本明細書の実施例1を参照されたい)ならびにSMM活性およびMMT活性の欠如(PCT出願第PCT/DK2009/050315号の実施例2および4ならびに本明細書の実施例2を参照されたい)に関する最良の成績の(the best−performing)系統をさらなる繁殖および解析のために選択した。これらの系統は、本明細書において「三重ヌル」と記載される。LOX活性決定のために一般に、倍加半数体系統の種子を収穫し、次いで各系統および対照品種の穀粒12個を解析し、測定に関する標準偏差は<5%であった(図4)。
(実施例4)
SMMレベルの決定
SMMの測定は、PCT出願PCT/DK2009/050315に本質的に記載の通り実施した。最初にSMMを、各ウェルが直径5mmのガラスビーズおよび水:メタノール:クロロホルムの12:5:6(v/v/v)混合物500μLを含有するマイクロタイタープレートの1.2mLウェル中に置いたオオムギ葉の1〜3cm長の切片から抽出した。次いでプレートを30Hzの振動数で振とうするように電子的に調整したMM300実験用ミル(Retsch)で45秒間インキュベートした。遠心分離後、上清10μLを96ウェル保存プレート(Waters、カタログ番号186002481)に移し、水200μLおよび反応溶液(OPA試薬(Sigma、カタログ番号P7914):3−メルカプトプロピオン酸(Aldrich、カタログ番号M5801)の15,000:45(v/v)の混合物を含有する)60μLと混合した。試料のアミノ酸を定量的にOPAで誘導体化するために混合物を4℃で少なくとも10分間インキュベートした。蛍光光度計を備えたUPLCシステム(Waters)を使用して、誘導体化混合物2μLを3μm粒子の2.1×30mm C18 Geminiカラム(Phenomenex、カタログ番号00A−4439−80)上でpH7.8に調製し、アセトニトリル:メタノール:水の45:45:10(v:v:v)溶液を含有した40mM Na−リン酸緩衝液を移動相として使用して分離した(Phenomenex 2006)。OPA誘導体の励起は340nmであり、発光は450nmで測定した。野生型由来および三重ヌルの変異体由来のアスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン(Asn)、セリン(Ser)およびSMMの溶出プロファイルを例示するためにクロマトグラムの例を図5に示す。SMMを合成する能力の顕著な欠失が三重ヌルの変異体について観察された。
(実施例5)
農業生産力
商業用栽培品種QuenchおよびPowerならびにヌルLOX−1、ヌルMMT、ヌルLOX−1−ヌルLOX−2(二重ヌルLOX)、ヌルLOX−1−ヌルMMTおよび三重ヌルの植物体をこれらの農業生産力を比較するために野外試験で検査した。データは、草高、出穂日、病害耐性、倒伏、成熟期間および収量について定期的に得た(表1を参照されたい)。
試験は、野外試験についての標準的手順に従って実施した。したがって商業品種および変異体系統の等量の穀粒を2カ所にそれぞれ3回反復で7.88m2区画内に播種した。農業形質に関しては、変異体と商業用品種の間に大きな差異は観察されなかった。異なる変異体系統および品種のオオムギ品質解析は、麦芽製造および醸造に関しては収穫したすべての穀粒が優良で許容可能な特性を有していたことを実証した。
(実施例6)
マイクロモルティングおよびマイクロマッシング
実験設定
マイクロモルティングおよびマイクロマッシング実験は、次の6つの異なるオオムギ系統および栽培品種で実施した(図6A)、(本明細書の以下に記載する実験ワークフローも例示する):(1)三重ヌル;(2)ヌルLOX−1−ヌルMMT;(3)ヌルLOX−1−ヌルLOX−2(オオムギA689系統);(4)ヌルMMT(オオムギ8063系統);(5)ヌルLOX−1(オオムギD112系統);(6)栽培品種Power。
マイクロモルティング実験は、前述の系統または栽培品種のそれぞれ由来の3種の225gオオムギ試料で実施した。スティーピングおよび発芽は:
(i)16℃でのスティーピング;3時間、湿らせる;21時間、乾燥させる;3時間、湿らせる;21時間、乾燥させる;3時間、湿らせる;21時間、乾燥させる;最終含水率45%;
(ii)発芽;16℃で48〜72時間、>95%改変まで
の通り実施した。
発芽後、3種の試料を異なる乾燥管理に供した(図6Aのキルン乾燥に記載):
(i)85℃−乾燥:12.5時間で30℃開始から55℃への勾配に続いて7.5時間で85℃への勾配;85℃、1.5時間
(ii)75℃−乾燥:12.5時間で30℃開始から55℃への勾配に続いて7.5時間で75℃への勾配;75℃、1.5時間
(iii)40℃−乾燥:40℃、48時間。
85℃および40℃で乾燥した試料は、発芽の直後に処理したが残りの試料は2日間凍結し、融解し、次に75℃で上に概説の通り乾燥した。
マイクロマッシングは、破砕した麦芽試料90gを水道水270mLと混合し、続いて500mLボトル中で、40℃、20分間インキュベーションすることによって実施した。温度は25分間で65℃へ勾配させ、60分間65℃での糖化休止が続いた。次に78℃での10分間のマッシングオフ段階の前に温度を13分間で78℃へ勾配させた。得られたウォートを次いで氷上で冷却し、氷冷水道水700mLで希釈し、保持されたMN−616 1/4フィルター(Macherey−Nagel)を使用して濾過した。ウォート400mLを500mLボトルに移し、蓋をきつく締め、60分間沸騰水浴中で加熱した。さらなる加熱は行わずにボトルを追加的に60分間水浴中に置いた。
DMSPレベルについてのデータ
野生型麦芽および本出願の変異体麦芽において種々のキルン乾燥温度がDMSP含有量にどのような影響を与えるかについて試験するために、穀粒を最初にマイクロモルティングし、続いて3種の異なる温度40℃、75℃および85℃でのキルニングの前に一定分量に分けた。
野生型MMT遺伝子を含有するオオムギ系統の穀粒は、最終麦芽中の高レベルのDMSPによって特徴付けられた。しかしより高い温度でのキルニング後では低下したレベルが測定された(表2)。対照的にヌルMMT遺伝型のすべての麦芽においては顕著に低いレベルのDMSPが測定された。
DMSPレベルは、上述の麦芽から作製されたウォートにおいても測定され、その麦芽において測定されたものと一致するDMSPレベルを与えた。この発見は、麦芽とウォートとの間でのDMSP含有量の密接な関係を記載したDickensonおよびAnderson(1981年)の以前の結果と一致する。麦芽が作製されたキルン乾燥温度とは関係なくすべてのヌルMMT遺伝型について、対応するウォートにおける顕著に低いDMSPレベルが測定された。
T2N前駆体および遊離T2Nのレベルについてのデータ
種々のキルン乾燥温度が遊離T2NおよびT2N前駆体のレベルにどのような影響を与えるかについて試験するために、本明細書の上に記載のマイクロモルティングおよびマイクロマッシングによって作製されたスイートウォートおよび冷却ウォートにおいて前記化合物の濃度を決定した。結果を表3に示す。
野生型麦芽のウォートについてキルン乾燥温度はT2NおよびT2N前駆体の濃度に顕著に影響した。野生型麦芽を使用する場合にはT2N前駆体の高い生成を回避するために高いキルニング温度が不可欠であった。
キルニング温度は、ヌルLOX−1−ヌルMMTの麦芽ではT2Nおよびその付加物の生成にあまり影響しなかった。
三重ヌルの麦芽のウォートについて、遊離T2Nおよびその前駆体の濃度がキルン乾燥温度と関係なく対応するすべての上記試料において低かったことも注目に値する。
(実施例7)
麦芽にしていないオオムギでのマイクロマッシング
麦芽にしていない栽培品種Powerおよび三重ヌルのオオムギのマイクロマッシングを、破砕したオオムギ試料90gを水道水270mLおよびオオムギ醸造用酵素混合物Ondea Pro(Novozymes)0.12gと混合し、続いて500mLボトル中で、54℃、30分間インキュベーションすることによって達成した。温度を10分間で64℃へ勾配させ、45分間64℃での糖化休止が続いた。これに14分間での78℃への勾配が続き、その後前記温度での10分間のマッシングオフ段階が続いた。次に冷却、希釈、濾過および加熱手順をマイクロモルトマッシングについての記載の通り(実施例4を参照されたい)実施した。
栽培品種Powerおよび三重ヌルのオオムギフラワーから作製したウォートにおいてDMSPレベルを測定した(表4)。三重ヌルのオオムギから作製したウォートにおけるDMSP含有量が野生型栽培品種Powerのそれよりも顕著に低いことは明らかであった。これは、オオムギがDMSPを含有すると考えられていないことから、驚くべき発見であった(Yang, B.ら、Factors involved in the formation of two precursors of dimethylsulphide during malting、J. Am. Soc. Brew. Chem.56巻:85〜92頁、1998年)。
PCT特許出願第PCT/DK2009/050355号に示される通り(前記出願の図12および実施例9を参照されたい)、煮沸されたオオムギ醸造物および通常ウォートのT2N前駆体のレベルは二重ヌルLOX由来の試料において顕著に低かった。したがって同様の特性が三重ヌルのオオムギのウォートを特徴付け、三重ヌルのオオムギをT2NおよびDMSオフフレーバーが少ないまたはそれを完全に欠いているオオムギ醸造飲料のための高品質な原材料にすることが期待される。
(実施例8)
パイロット規模での麦芽製造および醸造
実験設定
三重ヌルおよび栽培品種Quench(対照麦芽)の麦芽での麦芽製造および醸造解析は以下の:(i)麦芽にする工程;(ii)ウォートを調製する工程;(iii)ウォートを分離する工程;(iv)ウォートを煮沸する工程;(v)ウォートを酵母Saccharomyces carlsbergensisを用いて発酵させる工程;(vi)ビールのラガリング工程;(vii)ブライトビールを濾過する工程;および(viii)ビールをボトル詰めする工程(図6B、Cを参照されたい)、を含んだ。
麦芽製造実験は、20kgの大規模で三重ヌルおよび栽培品種Quenchの穀粒について実行し、麦芽製造所内で以下:
(i)16℃でのスティーピング:1時間、湿らせる;1時間、乾燥させる;1時間、湿らせる;1時間、乾燥させる;1時間、湿らせる;最終含水率45%;
(ii)発芽、16℃で開始、120時間で14℃への勾配;
(iii)乾燥:65℃で開始、14時間で85℃への勾配、;85℃で3時間
の通り実施した。
三重ヌルおよび栽培品種Quench(後者を対照として使用)の両方のマッシングのために麦芽試料25kgを使用した。個々の麦芽試料の破砕に続いて水道水を容量146Lとなるように加えた。マッシングインを40℃、20分間実施し、25分間で40℃から65℃への勾配が続いた。65℃での糖化休止は60分間であり、13分間の78℃への加熱段階および10分間、78℃でのマッシングオフが続いた。
野生型栽培品種Quenchのウォート試料1個および三重ヌルの1個は、別に101℃で60分間煮沸し(6.7%の蒸発を生じた)、一方残りの2個のウォート試料は98℃、60分間加熱した(3.9%の蒸発を生じた)。本明細書の上に参照される残りの醸造工程(すなわち濾過、旋回分離、発酵、ラガリングおよび緑色ガラスボトルへの封入)は、標準的醸造実施のための仕様に従った。
DMSPおよびDMSレベルは、350B 硫黄化学発光検出器(Sievers)上の静的ヘッドスペースガスクロマトグラフィーを使用する硫黄特異的検出で、本質的にHysertら(1980年)により記載された通り測定した。ヘッドスペース試料採取はHS−40 自動化装置(Perkin Elmer)を使用して実施した。
DMSの総レベル(すなわち、ウォートならびに緑麦芽およびキルン処理された(kilned)麦芽の抽出物における遊離DMSとDMSPとの合計)は、それぞれの試料をアルカリ性条件下で1時間煮沸することによって得た。次に、煮沸および非煮沸試料をDMSレベルの決定のためにヘッドスペース解析に供した。総DMS(煮沸試料において測定)と遊離DMS(非煮沸試料において測定)との間の差異が試料中に存在するDMSPの量と等しいと定義した。ビール中の遊離DMSの量は、本質的にウォートにおいてと同様に決定した(Hysertら、上掲)。
ウォート試料中のDMSP/DMSおよびT2N前駆体/遊離T2Nのレベルについてのデータ
現在の醸造用装置を使用すると、対応する完成したビールにおいて良好なDMSレベル(すなわち、オフフレーバーのヒト味覚閾値レベルである[DMS]<50ppb)を達成するために6〜10%のウォートの蒸発が通常必要である。これらの事実に基づいてパイロット醸造試験を上に記載の通り設計した。目的は、加圧インキュベーションによる非煮沸などのエネルギー投入量削減の、ウォートおよび最終ビール(final beer)におけるDMSレベルへの影響を検査することであった。したがって実験設定は標準的条件によるウォート煮沸との比較を含んだ。
高レベルのDMSPおよび遊離DMSが栽培品種Quenchのウォートの加熱中に、加圧ウォートで時間と共に観察された遊離DMSレベルの増大を伴って測定された。対照的に、煮沸、蒸発ウォートは煮沸の最後までDMSをあまり蓄積せず、その後遊離DMSが再度蓄積した。本明細書の上に記載のマイクロマッシングに続く結果と並行して、パイロット規模の三重ヌルの麦芽のウォートは、栽培品種Quench由来の同様の試料と比較して極めて低いレベルのDMSPおよび遊離DMSによって特徴付けられた(表5を参照されたい)。ウォートにおいてさえ三重ヌルの麦芽の前記DMSレベルが50ppbの味覚閾値レベルを十分に下回ったことは注目に値する。
野生型麦芽栽培品種Quenchおよび三重ヌルの麦芽由来のウォートおよびビール中のT2N前駆体および遊離T2Nの濃度は、本質的にGronqvistら(1993年)によって記載されたようにカルボニルのO−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシルアミンでの誘導体化に続くGC−MSによって決定した。
高い濃度のT2N前駆体が栽培品種Quenchのウォートの加熱中に測定され、煮沸/加熱処理の開始のときに最大が見出された(表6)。三重ヌルの麦芽から作製されたウォートについては、顕著に低いレベルのT2N前駆体(野生型原材料を使用した場合のおよそ40%)が見出され、それはやはり煮沸/加熱処理の開始のときが最大であった。低エネルギー加熱管理(すなわち加圧加熱処理を適用)は、両方の麦芽型についてT2N前駆体のレベルにあまり影響しなかった。すべてのウォート試料において低レベルの遊離T2Nが決定された。
ヌルLOX−1およびヌルLOX−2の変異の有益な効果が、エネルギー投入量削減がウォート加熱中に適用された場合においてさえも明確に現れることは重要である。
ビール試料中のDMSおよびT2N前駆体/遊離T2Nのレベルについてのデータ
三重ヌルの麦芽および野生型麦芽栽培品種Quenchから本明細書の上に記載のような2種の異なる煮沸/加熱管理を使用して作製された新鮮ビールにおいて、DMSの濃度を測定した。結果を表7に要約する。
栽培品種Quenchの野生型麦芽から標準的煮沸管理を使用して作製したビールは、DMS 65ppb(すなわち50ppbの味覚閾値をわずかに上回る)を含有する。本明細書の上に記載の「加圧インキュベーションによる非煮沸」などの省エネルギー手順を野生型麦芽に使用すると、最終ビール中で非常に高濃度のDMS(151ppb)を生じた。
対照的に三重ヌルの麦芽から作製されたビールは、加熱手順に関係なく極めて低いレベルのDMSを含有した。
適用されたウォート調製方法にかかわらず、三重ヌルの麦芽から作製されたビールは、煮沸方法にかかわらず野生型麦芽栽培品種Quenchから作製されたビールよりもさらに少ないT2N前駆体(56から58%低減になる)を含有していた(表7)。
新鮮なビール中の遊離T2Nレベルは、検査した4つすべての新鮮なビール(すなわち栽培品種Quenchまたは三重ヌルの麦芽を、蒸発が許容されたまたは加圧のウォート調製と組み合わせて使用)において低かったが、37℃、2週間の強制エイジング(aging)後には顕著な差異が見られた。標準的煮沸または加圧加熱で野生型麦芽から作製された両方のビールが、0.041ppbおよび0.061ppbのT2Nをそれぞれ含有した一方で、三重ヌルの麦芽から作製したビールについての対応する値はより低かった(すなわちそれぞれ95%および64%に低減した)(表7)。
ビール泡についてのデータ
栽培品種Quench(図6Bを参照されたい)および三重ヌル(図6Cを参照されたい)の麦芽のウォート加熱において蒸発または加圧のいずれかで作製されたパイロット醸造ビールを比較した。ビールは、試料採取ポイント9(図6B、Cを参照されたい)で採取し、50mL H2Oを150mLビールに加える前に超音波浴中で20分間脱気した。長さ16cm、幅7cmのガラス管(底部および上端部に、それぞれガラスフィルターおよびコネクターを伴う)からなる発泡タワー中に、混合物をゆっくり注入した。流速400mL/分のN2ガスを、ビール泡を生成するために底部から混合物に通した。これを管内に導き、秤の上に置いた計量沈降コーン内に回収した。
4種のビールそれぞれの泡の総重量を、泡の発生が止まるまで5分間隔で記録した(図7)。蒸発または加圧手順にかかわらず泡のレベルは同様であった。しかし泡の発生は三重ヌルの麦芽を原材料として使用したビールにおいて顕著に改善していた。
ビール試飲
熟練の試飲パネルは4つの(すなわち栽培品種Quenchまたは三重ヌルの麦芽を、蒸発が許容されたまたは加圧のウォート調製と組み合わせて使用して)作製したビールを、新鮮作製ビールならびに37℃、1週間および2週間での強制エイジング後に評価した(表8)。
三重ヌルの麦芽から作製した新鮮ビールが、煮沸方法にかかわらず最も高い合計風味スコアを得た。対照的に、わずかに低い合計風味スコアが野生型麦芽から標準的煮沸管理を使用して作製されたビールについて得られ、「わずかにDMS」と見なされた。加圧加熱技術の適用は、非常に低い合計風味スコアのビールを生じ、「強くDMS」と見なされた。
37℃、1週間または2週間での強制エイジング後に、三重ヌルの麦芽から作製したビールは、特にエイジング成分T2Nの低い濃度に由来して生じる「紙質の風味」についての低いスコアにより、野生型麦芽から作製したビールよりも顕著に低い合計エイジングスコアを得た。
(実施例9)
パイロット規模での麦芽製造および醸造
実験設定
三重ヌル(二重ヌルLOX−ヌルMMT)および栽培品種Rosalina(参照用野生型)の麦芽での麦芽製造および醸造解析は以下の:(i)麦芽にする工程;(ii)ウォートを調製する工程;(iii)ウォートを分離する工程;(iv)ウォートを煮沸する工程;(v)ウォートを酵母Saccharomyces carlsbergensisを用いて発酵させる工程;(vi)ビールのラガリング工程;(vii)ブライトビールを濾過する工程;および(viii)ビールをボトル詰めする工程、を含んだ。
麦芽製造実験は、21kgの大規模で三重ヌルおよび栽培品種Rosalinaの穀粒について実行し、麦芽製造所内で以下:
(i)16℃でのスティーピング:1時間、湿らせる;1時間、乾燥させる;1時間、湿らせる;1時間、乾燥させる;1時間、湿らせる;最終含水率45%まで36時間にわたる水の滴下、;
(ii)発芽、16℃で開始、120時間で14℃への勾配;
(iii)発芽穀粒の乾燥/キルニングは、パイロットキルンにおいて通常温度プログラムまたは低温プログラムのいずれかであった;
(iv)通常乾燥/キルニングプログラム、45℃で開始、14時間で85℃への勾配、続いて85℃、2時間インキュベーション;
(v)低温乾燥/キルニングプログラム、45℃で開始、12時間で75℃への勾配、続いて75℃、2時間インキュベーション;
の通り実施した。
三重ヌルおよび栽培品種Rosalinaの両方のマッシングのために麦芽試料34kgを使用した。個々の麦芽試料の破砕に続いて水道水を容量180Lとなるように加えた。マッシングインを60℃、20分間実施し、5分間で60℃から65℃への勾配が続いた。65℃での糖化休止は60分間であり、13分間の78℃への加熱段階および78℃での10分間のマッシングオフが続いた。
野生型栽培品種Rosalinaおよび三重ヌルのウォート試料は、別々に開放容器で60分間、100℃で煮沸した(4.5%の蒸発を生じた)または、密閉容器中で99.5℃に加熱し、60分間、99.5℃に保った(0%の蒸発を生じた)。
6つの異なるウォートを栽培品種、キルニング条件および煮沸条件のさまざまな組合せで作製した(表9を参照されたい)。
本明細書の上に参照される残りの醸造工程(すなわち旋回分離、発酵、ラガリング、濾過および緑色ガラスボトルへの封入)は、標準的醸造実施のための仕様に従った。
DMSPおよびDMSレベルは、本明細書の上の実施例8に記載の通り測定した。
麦芽試料中のDMSP/DMSレベルについてのデータ
現在の麦芽製造プラントでは、キュアリング温度85℃で少なくとも2時間の穀粒の乾燥が、十分なDMSレベルであるウォートを得ることができる麦芽を得るために、麦芽中のDMSPを低レベル(すなわち麦芽1kgあたり4.5mg未満)に低減するために通常必要である(下を参照されたい)。
これらの事実に基づいてパイロット麦芽製造試験を上に記載の通り設計した。目的は、低温乾燥などのエネルギー投入量削減の、麦芽、ウォートおよび最終ビールにおけるDMSおよびDMSPレベルへの影響を検査することであった。したがって実験設定は標準的条件による穀粒乾燥との比較を含んだ。
85℃での標準的乾燥を使用して栽培品種Rosalinaで作製した麦芽において、DMSPを麦芽1kg当たり4.7mgと測定した。75℃での乾燥を使用して作製した栽培品種Rosalinaの麦芽において、DMSPを16.2mg/kgと測定した(表10)。三重ヌルの穀粒で作製した麦芽においては、極めて低いDMSPレベル(実際には検出限界以下)を乾燥温度にかかわらず得た。
ウォート試料中のDMSP/DMSのレベルについてのデータ
現在の醸造技術を使用すると、対応する完成したビールにおいて良好なDMSレベル(好ましくは[DMS]<50ppb)を達成するために4.5〜10%のウォートの蒸発を伴う少なくとも1時間の煮沸が通常必要である。これらの事実に基づいて醸造試験を上に記載の通り設計した。目的は、低温穀粒乾燥または密閉容器中での蒸発を伴わない加熱処理などのエネルギー投入量削減の、ウォートおよび最終ビールにおけるDMSレベルへの影響を検査することであった。したがって実験設定は標準的条件による穀粒乾燥およびウォート煮沸との比較を含んだ。
高レベルのDMSPおよび遊離DMSが通常の乾燥で作製された栽培品種Rosalinaのウォートの加熱中に測定された。遊離DMSレベルにおける増大が密閉容器中において時間とともに観察された。対照的に、煮沸、蒸発ウォートは煮沸の最後までDMSをあまり蓄積せず、その後遊離DMSが再度蓄積した(表11)。栽培品種Rosalinaで低温乾燥を使用すると、DMSPおよびDMSレベルは通常乾燥よりもさらに高かった。栽培品種Rosalinaで作製した3つすべてのウォートにおいて最終ウォートは50ppbより高いDMSレベルを有していた。
本明細書の上に記載の他の結果と並行して、三重ヌルの麦芽のウォートは、栽培品種Rosalina由来の同様の試料と比較して極めて低いレベルのDMSPおよび遊離DMSによって特徴付けられた。ウォートにおいてさえ三重ヌルの麦芽の前記DMSレベルがキルニングおよび煮沸管理にかかわらず50ppbを十分に下回ったことは注目に値する。
ウォート試料中のT2N前駆体/遊離T2Nレベルについてのデータ
野生型麦芽栽培品種Rosalinaおよび三重ヌルの麦芽由来のウォートおよびビール中のT2N前駆体および遊離T2Nの濃度は、本質的にGroenqvistら(1993年)によって記載されたようにカルボニルのO−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)−ヒドロキシルアミンでの誘導体化に続くGC−MSによって決定した。
高濃度のT2N前駆体が栽培品種Rosalinaのウォート中で測定された(表12)。三重ヌルの麦芽から作製されたウォートについては、顕著に低いレベルのT2N前駆体(野生型原材料を使用した場合のおよそ40%)が見出された。低エネルギー加熱管理(すなわち低温キルニングまたは密閉容器中での蒸発を伴わないウォートの加熱処理)は、両方の麦芽型についてT2N前駆体のレベルにあまり影響しなかった。すべてのウォート試料において低レベルの遊離T2Nが決定された。
ヌルLOX−1およびヌルLOX−2の変異の有益な効果が、削減されたエネルギー投入量が適用された場合においてさえも明確に現れることは重要である。
ビール試料中のDMSおよびT2N前駆体/遊離T2Nのレベルについてのデータ
三重ヌルの麦芽および栽培品種Rosalinaの野生型麦芽から本明細書の上に記載のように2つの異なる穀粒乾燥および煮沸/加熱管理を使用して作製された新鮮ビールにおいて、DMSの濃度を測定した。結果を表13に要約する。
標準的乾燥条件を使用して作製した栽培品種Rosalinaの野生型麦芽から、標準的煮沸管理を使用して作製したビールは、DMS 117ppb(すなわち50ppbを上回る)を含有した。本明細書の上に記載の「密閉容器中での非蒸発」などの省エネルギー手順を野生型麦芽に使用するとDMS 174ppb(すなわち最終のビール中でオフフレーバーの非常に高い濃度)を生じた。
対照的に三重ヌルの麦芽から作製されたビールは、煮沸およびキルニング手順に関係なく非常に低いレベルのDMSを含有した。
新鮮なビール中の遊離T2Nレベルは、検査したすべてのビール(すなわち栽培品種Rosalinaまたは三重ヌルの麦芽を、蒸発が許容された煮沸または密閉容器中での蒸発を伴わない加熱処理と組み合わせて使用)において低かったが、37℃、2週間の強制エイジング後には顕著な差異が見られた。野生型麦芽から標準的煮沸で作製されたビールおよび密閉容器中での蒸発を伴わない加熱処理で作製されたビールは、それぞれ0.055ppbおよび0.035ppbのT2Nを含有した一方で、三重ヌルの麦芽から作製したビールについての対応する値は顕著により低かった(すなわちそれぞれ67%および51%に低下していた)(表13を参照されたい)。
ビール試飲
熟練の試飲パネルは6通りの(すなわち栽培品種Rosalinaまたは三重ヌルの麦芽を、蒸発が許容された煮沸または密閉容器中での蒸発を伴わない加熱処理または標準温度もしくは低温乾燥と組み合わせて使用して)作製したビールを、新鮮作製ビールについておよび37℃、2週間での強制エイジング後に評価した(表14)。
三重ヌルの麦芽から作製した新鮮ビールが、キルニングおよび煮沸方法にかかわらず最も高い合計風味スコアを得た。対照的に、より低い合計風味スコアが85℃でキルン処理された野生型麦芽から標準的煮沸管理を使用して作製したビールについて得られ、「顕著にDMS」と見なされた。ウォート調製における密閉容器中での蒸発を伴わない加熱処理の適用は、さらに低い合計風味スコアのビールを生じ、それは「強くDMS」と見なされた。
37℃、2週間での強制エイジング後に、85℃でキルン処理された三重ヌルの麦芽から通常の煮沸で作製したビールは、野生型麦芽から作製した対応するビールよりも顕著に低い合計エイジングスコアを、特にエイジング成分T2Nのより低い濃度に由来する「紙質の風味」属性についての低いスコアに起因して得た。
野生型麦芽から作製したビールについての劣化特徴の評価は、主に顕著に強いDMSオフフレーバーのため実際には不可能だった。
(実施例10)
オオムギ醸造と通常のビールとの比較−THA
リノール酸由来のビール特異的THAは、既に数十年前に記載された(Drostら、1974年)。それ以来、種々の報告がビール中のTHAの総含有量はおよそ5〜12ppmの範囲内であることを実証している(Hamberg、1991年;およびその参考文献)。一方9,12,13−THAは、ビール中のTHAの通常75〜85%を構成し、9,10,13−THA量は15〜25%であり、他の異性体は痕跡量で検出される。
オオムギ三重ヌルの麦芽から調製されたウォートから作製されたビールにおいて(実施例9を参照されたい)、9,12,13−THAの濃度は栽培品種Rosalinaの麦芽から作製された対照ビールと比較して80〜87%低下していた(表15)。9,10,13−THA異性体については65〜72%の低下が観察された。これらの測定は、標準的HPLC−質量分析を使用して実行された(Hamberg、上掲)。
(実施例11)
ビール中の原材料由来DNAの増幅
麦芽フラワー混合物中の種特異的DNA配列の存在または非存在を確立するためにPCR法を使用できる場合、ビール試料の認証はより挑戦的になる。ビール生産において原材料由来ヌクレアーゼの組合せ効果、温度上昇および濾過は、植物体遺伝子断片の増幅のための無傷なDNAをほんの低レベル含むビール生成物を提供する。本明細書において、(可視化のために十分な量のDNAを生成する)DNA抽出および増幅の組合せのための効果的で新規の方法が記載される。
新規の4工程プロトコールは、ビール試料の原材料認証のために開発された。それは、3つの生体分子キットの試薬およびプロトコールを連続的に利用し、最終的に可視化のためのDNA断片の増幅をもたらした:
(i)磁気ビーズへの結合を介したビールからのDNAの抽出(DNA Extraction Kit、Speciation(Tepnel Biosystems Ltd.、カタログ番号901040N)の液体試料用の指示における推奨に従った);
(ii)等温鎖置換によるDNAの増幅(Illustra GenomiPhi V2 DNA Amplification Kit、GE Healthcare、カタログ番号25−6600−30);
(iii)REDExtract−N−Amp PCR ReadyMix(Sigma、カタログ番号XNAP−1KT)を使用する、特異的DNA変異の検出用プライマーを用いたPCR;
(iv)増幅産物を分離するためのアガロースゲル電気泳動に続く、これらを可視化するための臭化エチジウムでの染色。
上の工程(i)は、以下の試料:
(a)Tuborg Green Pilsner、野生型麦芽:オオムギの75%:25%混合物のフラワーを使用して生産した(Carlsberg Breweries A/S;ラベル銘字26.11.11 704);
(b)ヌルLOX−1の麦芽を50%含む混合物(Carlsberg試験名2C10084)を使用してパイロット規模で生産したビール;
(c)三重ヌルのオオムギから作製した麦芽(Carlsberg試験名2C11001)を使用してパイロット規模醸造した非煮沸ウォート;
(d)三重ヌルの麦芽(Carlsberg試験名2C11001)を使用してパイロット規模醸造した煮沸ウォート、すなわち上の(c)において記載されたものから処理したウォート
の400μL一定分量からのDNAの精製に関係した。
上に述べた試料(a)、(b)、(c)および(d)のそれぞれから精製したDNAを最終的に10mM Tris−EDTA緩衝液pH7.4 50μLに再懸濁した。
上の工程(ii)において、ウォートまたはビール由来DNA((i)において詳述の通り精製した)の1μL一定分量の試料を増幅に供した。DNAは短時間熱変性し、次いでDNAに非特異的に結合するランダムヘキサマーを含有する試料緩衝液中で冷却した。DNAポリメラーゼ、ランダムヘキサマー、ヌクレオチド、塩および緩衝剤を含有するマスターミックスを添加し、等温増幅を30℃で2時間、最終反応容量20μLを使用して実施した。続いて65℃での10分間のインキュベーションでポリメラーゼを熱不活性化した。
上の工程(iii)に関して、14μL PCR増幅のパラメーター(上の(ii)において記載の通り調製した試料の、1.0または4.2μLいずれかの鋳型一定分量、およびヌルLOX−1の変異を検出するためのプライマーFL820(WO2010/075860の配列番号10)およびFL823(WO2010/075860の配列番号11)の各々7pmolを含む;Skadhauge,B.らへのWO2010/075860中の図18Bを参照されたい)は:
(i)96℃で、2分間の変性を1サイクル;
(ii)(a)95℃で、1分間の変性
(b)68℃で、1分間のアニーリング
(c)72℃で、1分間の伸長
を30サイクル;
(iii)72℃で、10分間の最終伸長
(iv)ホールド
の通りであった。
上の工程(iv)は、臭化エチジウムを混合した2%(w/v)アガロースゲル中でのPCR混合物全体の電気泳動分離からなる。電気泳動に続いてゲルにUV光を照射し、写真撮影する(図10)。
図10に示すDNAバンドパターンの解析は、Tuborgビールの一定分量からの増幅産物が無く、その原材料が野生型由来のものである(すなわちヌルLOX−1のオオムギに由来しない)という予想された結果を明らかにした。しかし予想された長さの増幅産物がヌルLOX−1の麦芽を50%含む混合物で醸造したビール由来の試料で検出できた。同様に、しかしより明白に、染色が三重ヌルの麦芽から調製した非煮沸ウォートにおいて得られた。おそらく加熱損傷および続く沈殿のために、三重ヌルの原材料の煮沸ウォート試料においてPCR産物はあまり増幅されなかった。
上の(ii)に記載の増幅産物をプライマー対FL1034−FL1039(WO2010/075860のそれぞれ配列番号9および配列番号8;SkadhaugeらへのWO2010/075860中の図18も参照されたい)、プライマーセット20(WO2010/063288の配列番号77および配列番号81)およびプライマーセット21(WO2010/063288の配列番号78および配列番号82;KnudsenらへのWO2010/063288A2中の図15も参照されたい)を別々のPCR(しかし、本実施例において上に詳述したものと同様の条件)において利用して、ウォートまたはビール試料が三重ヌルの原材料の使用によって作製されるかどうかが確かめられる。