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JP6037894B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置 - Google Patents
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有機エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法、表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、表示装置や照明装置に好適に用いられる有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子およびその製造方法に関する。
有機EL素子は、薄く、柔軟でフレキシブルである。また、有機EL素子を用いた表示装置は、現在主流となっている液晶表示装置やプラズマ表示装置と比べて、高輝度、高精細な表示が可能である。さらに、有機EL素子を用いた表示装置は、液晶表示装置に比べて視野角が広い。このため、有機EL素子は、今後、テレビや携帯電話のディスプレイ等として、利用の拡大が期待されている。
また、有機EL素子は、照明装置としての利用も期待されている。
有機EL素子は、陰極と陽極との間に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等の複数の層が積層された構造を有している。有機EL素子には、基板と発光層との間に陽極が配置された順構造のものと、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造のものとがある。
また、有機EL素子の1つとして、無機化合物を用いて有機EL素子を構成する層の一部を形成した有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子(以下、「HOILED素子」と記す場合がある。)がある。
逆構造の有機EL素子は、陽極から発光層に注入する正孔の速度が早く、正孔輸送性に優れている。しかし、逆構造の有機EL素子では、陰極から発光層に注入する電子の速度が遅いため、陽極から注入される正孔を発光に充分に活用できない。このため、逆構造の有機EL素子においては、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善し、発光効率を高めることが要求されている。
従来、逆構造の有機EL素子において、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善するために、陰極と発光層との間に、様々な材料を用いて電子注入層を配置することが提案されている。
例えば、非特許文献1には、ポリエチレンイミンからなる電子注入層を有する有機電界発光素子が記載されている。また、非特許文献2および非特許文献3には、アミンが電子の注入速度改善に有効であることが記載されている。
また、有機EL素子を製造する際には、有機EL素子を安定して製造するために、素子のリークを低減することが要求される。通常、有機EL素子においては、製造時における素子の電流漏れを低減するために、基板上に形成した電極上に、塗布法により、ある程度の膜厚でPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸))を成膜している。
また、基板上に形成した電極上に、塗布法によりポリエチレンイミン膜を形成することで、製造時における素子のリークを低減できるとともに、ポリエチレンイミン膜上に形成する有機膜の結晶化を抑制でき、得られた有機EL素子のリークを低減できることが知られている。
ジャンシャン チェン(Jiangshan Chen)外6名「ジャーナル オブ マテリアルズ ケミストリー(Journal Of Materials Chemistry)」、第22巻、2012年、p5164−5170 ヒョサン チョイ(Hyosung Choi)外8名「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第23巻、2011年、p2759 ウェンジン チェン(Wenjin Zeng)外6名「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第19巻、2007年、p810
陰極と発光層との間に無機の酸化物層が設けられている逆構造のHOILED素子では、酸化物層の表面が凹凸を有するものとなりやすい。表面に凹凸を有する酸化物層上に発光層を形成すると、酸化物層の表面に形成されている凹凸が結晶核となって、発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、得られたHOILED素子が、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一であるものとなりやすく、実用に耐えるものとならない場合があった。
この問題を解決するとともに、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善し、製造時における素子のリークを低減するために、例えば、無機の酸化物層と発光層との間にポリエチレンイミンからなる電子注入層を形成することが考えられる。しかし、ポリエチレンイミン膜からなる電子注入層は、電荷を運ぶ能力が乏しいという不都合がある。このため、電子注入層としてポリエチレンイミン膜を形成すると、得られたHOILED素子の駆動電圧が高くなる。しかし、HOILED素子の駆動電圧の上昇を抑制するために、ポリエチレンイミン膜の膜厚を薄くすると、酸化物層の上面に形成されている凹凸を覆うことができず、平滑な表面が得られないし、HOILED素子の製造時にリークが生じやすくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、陰極と発光層との間に無機の酸化物層が設けられている逆構造の有機EL素子において、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善して素子の発光効率を向上させることができ、製造時における素子のリークを低減して安定して製造でき、リーク電流の抑制された均一な発光面が得られる有機EL素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記有機EL素子の製造方法、上記有機EL素子を備える表示装置および照明装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、陰極と発光層との間に無機の酸化物層が設けられている逆構造の有機EL素子において、陰極と発光層との間に設けるバッファ層の材料として、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善でき、素子の発光効率を向上させることができるとともに、製造時および製造後における素子のリークを防止できる十分な厚みで形成しても、有機EL素子の駆動電圧の上昇を抑制できる材料について種々検討した。
その結果、バッファ層として、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含むものを形成すればよいことを見出した。
すなわち、このようなバッファ層では、第1材料を含むことによって、陰極から発光層への電子の注入の速度を改善できるとともに、製造時における素子のリークを防止できる。しかも、このようなバッファ層は、第2材料の電子を輸送する作用によって、有機EL素子の駆動電圧の上昇を抑制できるものであるため、酸化物層の表面が凹凸を有するものであっても、凹凸を覆って平滑な表面を得ることができ、製造時および製造後における素子のリークを防止できる十分な厚みで形成できる。
さらに、本発明者は、バッファ層として、第1材料と第2材料に加えて、前記第1材料および前記第2材料に化学的なドーピングが可能な第3材料を含有するものを形成することで、より一層バッファ層における電子の輸送性を向上させることができ、より効果的に有機EL素子の駆動電圧の上昇を抑制できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わるものである。
(1)基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とがこの順に形成され、前記バッファ層が、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含むものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(2)前記バッファ層の平均厚さが5〜100nmであることを特徴とする(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(3)前記バッファ層に含まれる第2材料の含有量は、10〜90質量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(4)前記バッファ層が、前記第1材料および前記第2材料に化学的なドーピングが可能な第3材料を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(5)前記第1材料が、ポリアミンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(6)前記第2材料が、ホスフィンオキサイド誘導体、金属錯体、ピリジン誘導体ポリエチレンイミンから選ばれるいずれか一種であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(7)前記第3材料が、リチウムキノリンまたは炭酸セシウムであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(8)前記陽極と前記発光層との間に正孔注入層が配置されていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(9)基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とをこの順に形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であり、前記バッファ層を形成する工程は、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含む混合溶液を塗布する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(10)(1)〜(8)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。
(11)(1)〜(8)のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とがこの順に形成され、バッファ層が、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含むものであるので、陰極から発光層への電子の注入の速度が速いものとなる。このため、陽極から注入される正孔のうち、発光に利用される正孔の割合が高くなり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させることができる。
しかも、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、バッファ層に含まれる第2材料の電子を輸送する作用によって、有機EL素子の駆動電圧の上昇を抑制できるため、バッファ層を製造時における素子のリークを防止できる十分な厚みで形成でき、安定して製造できる。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、バッファ層を設けることによる駆動電圧の上昇が抑制されているため、酸化物層の表面が凹凸を有するものであっても、バッファ層を十分な厚みで形成することにより、酸化物層による凹凸を覆って平滑な表面を得ることができる。よって、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、バッファ層上に形成される発光層の結晶化が抑制され、リーク電流の抑制されたものとなる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、優れた発光効率が得られ、安定して製造できるものであり、表示装置や照明装置等に好適に用いることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とをこの順に形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であり、バッファ層を形成する工程は、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含む混合溶液を塗布する工程を含む方法であるので、酸化物層の表面が凹凸を有するものであっても、表面の平滑なバッファ層が得られる。その結果、製造時における素子のリークを低減できるとともに、バッファ層を形成した後に形成される発光層の結晶化が抑制され、リーク電流の抑制された有機エレクトロルミネッセンス素子が得られる。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を説明するための概略断面図である。 図2(a)は素子1〜4の電圧印加と発光輝度との関係を示したグラフである。図2(b)は素子1〜4の電圧印加と電流密度との関係を示したグラフである。図2(c)は素子1〜4の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。 図3は、素子5〜8の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。 図4(a)は素子9、10の電圧印加と発光輝度との関係を示したグラフである。図4(b)は素子9、10の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。 図5は素子9、11、12の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
以下、本発明の有機EL素子について、例を挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を説明するための概略断面図である。図1に示す本実施形態の有機EL素子1は、基板2上に陰極3と、無機の酸化物層4と、バッファ層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とがこの順に形成された積層構造を有するものである。
図1に示す有機EL素子1は、基板2上に形成された有機EL素子1を構成する積層構造に、無機化合物からなる層が含まれているHOILED素子である。図1に示す有機EL素子1では、無機化合物からなる層として、無機の酸化物からなる酸化物層4と、無機の酸化物からなる正孔注入層8とが設けられている。
無機化合物は、有機化合物と比較して安定であるため、HOILED素子は、無機化合物からなる層を含まない有機EL素子と比較して、酸素や水に対する耐性が高く、好ましい。
なお、図1に示す有機EL素子1においては、無機化合物からなる層として、無機の酸化物からなる酸化物層4と、無機の酸化物からなる正孔注入層8とが設けられている場合を例に挙げて説明するが、例えば、正孔注入層8はなくてもよい。また、図1に示す有機EL素子1においては、正孔注入層8に代えて、有機化合物からなる正孔注入層を設けてもよい。
また、図1に示す有機EL素子1は、基板2側と反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
また、図1に示す有機EL素子1は、基板2上に陰極3が形成され、基板2と発光層6との間に陰極3が配置された逆構造のものである。なお、「基板上に形成された陰極」とは、陰極3が基板2に直接接触して形成されていることを意味する。
「基板」
基板2の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明のものを用いる。
有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明のものだけでなく不透明のものも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
基板2の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましく、0.1〜10mmであることがより好ましい。基板2の平均厚さは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定できる。
「陰極」
陰極3の材料としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物等が挙げられる。この中でも、陰極3の材料として、ITO、IZO、FTOを用いることが好ましい。
陰極3の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましく、100〜200nmであることがより好ましい。
陰極3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
「酸化物層」
酸化物層4は、無機の酸化物からなるものであり、電子注入層としての機能や、電極(陰極)としての機能を備えるものであってもよい。
酸化物層4は、単体の金属酸化物の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層であることが好ましい。
酸化物層4に含まれる金属酸化物としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる金属元素の酸化物が挙げられる。
酸化物層4が、二種類以上の金属酸化物を含むものである場合、二種類以上の金属酸化物に含まれる金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、アルミニウム、ケイ素であることが好ましい。
具体的には、酸化物層4には、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素からなる群から選ばれる金属酸化物が含まれていることが好ましい。
酸化物層4が、上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である場合、例えば、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられ、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO・7Alも含まれる。
酸化物層4の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましい。
酸化物層4の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
「バッファ層」
バッファ層5は、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含むものである。
第1材料は、バッファ層5に対して、陰極から発光層6への電子の注入の速度を改善する電子注入層としての機能と、製造時における素子のリークを防止する機能とを付与するものである。
第1材料としては、例えば、ポリビニルピロリドンのようなピロリドン類、ポリピロールのようなピロール類又はポリアニリンのようなアニリン類、又はポリビニルピリジンのようなピリジン類、同様に、ピロリジン類、イミダゾール類、ピペリジン類、ピリミジン類、トリアジン類などの含窒素複素環を有する化合物や、アミン化合物が挙げられる。その中でも、窒素含有率の多い化合物が好ましく、ポリアミン類又はトリアジン環含有化合物が好ましい。
第1材料としてポリアミン類を用いた場合、ポリアミン類が全原子数に対する窒素原子数の比率が高いものであるため、電子注入性の高いバッファ層5を有する駆動安定性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。なお、低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
低分子化合物としては、ジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられる。
高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられ、中でもポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体を用いることが好ましい。このような構造の重合体を用いることで、素子駆動安定性と素子寿命のより優れた有機EL素子が得られる。これは、ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は直鎖状構造であることから固体であり、これにより、デバイス中で安定に存在することによるものと推定される。
ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体は、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の大半が直鎖状に連結したものであればよく、一部に分岐構造を有するものであってもよい。
ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体は、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の80%以上が直鎖状に連結したものであることが好ましく、より好ましくは90%以上が直鎖状に連結したものであり、更に好ましくは95%以上が直鎖状に連結したものであり、最も好ましくは主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の100%以上が直鎖状に連結したものである。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体のポリアルキレンイミン構造は、炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成された構造であることが好ましく、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成された構造であることがより好ましい。上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造を有するものであればよく、ポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が、ポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する場合、ポリアルキレンイミン構造以外の構造の原料となる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重合体の主鎖骨格を形成する単量体成分100質量%のうち、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が50質量%以上であることが好ましく、66質量%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、80質量%以上である。最も好ましくは、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が100質量%であること、すなわち、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体がポリアルキレンイミンのホモポリマーであることである。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。重量平均分子量が100000以下のものを用い、重合体が分解する温度での加熱処理を行って層を形成することで、有機EL素子をより駆動安定性に優れたものとすることができる。ポリアルキレンイミン構造を有する重合体の重量平均分子量は、より好ましくは10000以下であり、更に好ましくは100〜1000である。
また、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が、上述した直鎖状構造の重合体である場合には、重合体の重量平均分子量は、より好ましくは、250000以下であり、更に好ましくは、10000−50000である。
ポリアルキレンイミン構造を有する重合体の重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
第1材料としてトリアジン環含有化合物を用いた場合、トリアジン環含有化合物が窒素含有環状化合物であって、全原子数に対する窒素原子数の比率が高いものであることと、剛直であることとにより、電子注入性の高いバッファ層5を有する駆動安定性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。トリアジン環含有化合物としては、メラミンやベンゾグアナミン/アセトグアナミン等のグアナミン類の他、メチロール化されたメラミンやグアナミン類、メラミン樹脂/グアナミン樹脂等のメラミン/グアナミン骨格を有する化合物の1種又は2種以上を用いることができ、これらの中でも、化合物を構成する全原子中の窒素原子の割合が高い点でメラミンが好ましい。
第1材料としては、具体的には、ポリエチレンイミン、ポリ(9,9−ビス(6’’−トリメチルアンモニウムヘキシル)フルオレン−コ−アルト−フェニレン)ウィズブロマイドコウンテリオンズ(FPQ−Br)、ポリ(9,9−ビス(3’−ジメチルアミノ)プロピル)2,7−フルオレン−アルト−2,7−(9、9−ジオクティルフルオレン)(PFNR)、ポリアルキレンオキシド、下記式(1)〜(9)で表されるアミンを有する構造の繰り返し単位を有する重合体、式(10)で表されるトリエチルアミン、式(11)で表されるエチレンジアミンを好適に用いることができる。
Figure 0006037894
Figure 0006037894
第2材料は、バッファ層5に電子を輸送する機能を付与するものである。第2材料としては、例えば、9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(SPPO1)やフェニル−ディピレニルホスフィンオキサイド(POPy)のようなホスフィンオキサイド誘導体、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの第2材料の中でも9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(SPPO1)やPOPyのようなホスフィンオキサイド誘導体、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
バッファ層5に含まれる第2材料の含有量は、10〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。第2材料の含有量が上記範囲である場合、第1材料による電子注入層としての機能および製造時における素子のリークを防止する機能、第2材料による電子を輸送する機能のいずれもが、効果的に機能するものとなる。
バッファ層5は、第1材料と第2材料に加えて、第3材料を含むことが好ましい。第3材料は、第1材料および第2材料に化学的なドーピングが可能なものであり、電子供与性を有するものであることが好ましい。このような第3材料としては、例えば、リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウム・セシウム・フランシウム等のアルカリ金属やベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウム・ラジウム等のアルカリ土類金属を含む有機化合物および無機化合物が挙げられる。第3材料として用いられる有機化合物の代表例としては、リチウムキノリン(Liq)が挙げられ、無機化合物の代表例としては炭酸セシウムが挙げられる。第3材料が、リチウムキノリンまたは炭酸セシウムである場合、第3材料が電子供与性の材料であることにより、バッファ層5の電子輸送性を効果的に高めることができ、好ましい。
バッファ層5が第3材料を含むものである場合、バッファ層5に含まれる第3材料の含有量は、第2材料の1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。第3材料の含有量が上記範囲である場合、第1材料および第2材料を含むことによる機能に支障を来すことなく、第3材料を含むことによるバッファ層5の電子の輸送性を向上させる効果が十分に得られる。
バッファ層5の平均厚さは、5〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。バッファ層5の平均厚さが上記範囲である場合、有機EL素子1の製造時におけるリークを十分に防止できるとともに、バッファ層5を設けることによる有機EL素子の駆動電圧の上昇を十分に抑制できる。
バッファ層5の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
「発光層」
発光層6を形成する材料としては、発光層6の材料として通常用いることができるいずれの材料を用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。具体的には、例えば、発光層6として、ビス[10−ヒドロキシベンゾキノリネート]ベリリウム(Bebq)と、トリス[1−フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq))とを含むものとすることができる。
また、発光層6を形成する材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
発光層6を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010−230995号、特願2011−6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
発光層6を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009−155325号公報、特開2011−184430号および特願2011−6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。
発光層6の平均厚さは、触針式段差計により測定してもよいし、水晶振動子膜厚計により発光層6の成膜時に測定してもよい。
「正孔輸送層」
正孔輸送層7に用いる正孔輸送性有機材料としては、各種p型の高分子材料(有機ポリマー)や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
具体的には、正孔輸送層7の材料として、例えば、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送層7の材料は、他の化合物との混合物として用いることもでき、一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
正孔輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることがより好ましい。
正孔輸送層7の平均厚さは、例えば、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
「正孔注入層」
本実施形態における正孔注入層8は、無機の酸化物からなるものであり、金属酸化物層であることが好ましい。金属酸化物層としては、特に制限されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、正孔注入層8は、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。正孔注入層8が酸化バナジウムおよび/または酸化モリブテンを主成分とするものである場合、陽極9から正孔を注入して発光層6又は正孔輸送層7へ輸送する正孔注入層8としての機能が、より優れたものとなる。また、酸化バナジウムおよび酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極9から発光層6又は正孔輸送層7への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止できる。
正孔注入層8が、無機の酸化物からなるものでない場合には、正孔注入層8の材料として通常用いることができるいずれの化合物を用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。具体的には、正孔注入層8の材料として、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
正孔注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。
正孔注入層8の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
「陽極」
陽極9としては、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられる。この中でも、陽極9としてAu、Ag、Alを用いることが好ましい。
陽極9の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましくい。また、陽極9として不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用できる。
陽極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により陽極9の成膜時に測定できる。
「製造方法」
次に、本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、図1に示す有機EL素子1の製造方法を説明する。
図1に示す有機EL素子1を製造するには、まず、基板2上に陰極3を形成する。
陰極3は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陰極3の形成には、金属箔を接合する方法を用いてもよい。
次に、陰極3上に無機の酸化物層4を形成する。
酸化物層4は、例えば、スプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法、真空蒸着法等の方法を用いて形成する。このようにして形成された酸化物層4の表面は、平滑ではなく凹凸を有するものとなる。
次に、酸化物層4上にバッファ層5を形成する。
バッファ層5を形成する工程においては、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含む混合溶液を塗布する。混合溶液は、第1材料と第2材料に加えて、第3材料を含むものであることが好ましい。
混合溶液を製造する際に、第1材料と、第2材料と、必要に応じて含有される第3材料とを含む材料を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
混合溶液を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。
本実施形態においては、混合溶液を塗布する方法によりバッファ層5を形成するため、塗布法以外の他の方法を用いてバッファ層5を形成した場合と比較して、表面の平滑なバッファ層5が得られる。その結果、バッファ層5を形成した後に形成される発光層6の結晶化が抑制され、均一な面発光が得られるとともに、リーク電流の抑制された有機EL素子1が得られる。
また、本実施形態においては、無機の酸化物層4上に、酸化物層4に接して混合溶液を塗布する方法により、バッファ層5を形成するため、酸化物層4の表面が凹凸を有するものであっても、形成されたバッファ層5の表面は平滑なものとなる。
したがって、本実施形態においては、酸化物層4の表面が凹凸を有するものであって、バッファ層5を形成した後に形成される発光層6として結晶化しやすい材料を用いたとしても、発光層6の結晶化を効果的に抑制できる。
なお、本実施形態においては、バッファ層5に含まれる第2材料の電子を輸送する作用によって、例えば、ポリエチレンイミンのみからなるバッファ層を形成した場合と比較して、バッファ層5を設けることによる有機EL素子1の駆動電圧の上昇を抑制できる。このため、バッファ層5の被形成面(本実施形態においては酸化物層4の上面)に形成されている凹凸を覆って平滑な表面を得るために、十分な厚みでバッファ層5を形成できる。
これに対し、例えば、無機の酸化物層4の上にバッファ層5を設けず、酸化物層4に接して真空蒸着等の方法で、結晶化しやすい材料からなる発光層6を形成すると、酸化物層4の表面に形成されている凹凸が結晶核となって、酸化物層4に接する発光層6を形成する材料の結晶化が促進される。このため、得られた有機EL素子が、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一であるものとなりやすく、実用に耐えるものとならない場合があった。
次に、バッファ層5上に発光層6と、正孔輸送層7とをこの順に形成する。
本実施形態の有機EL素子1の製造方法において、発光層6や正孔輸送層7などの有機化合物から形成される層の形成方法は、特に限定されず、材料の特性に合わせて従来公知の種々の有機化合物から形成される層の形成方法を適宜用いることができる。
例えば、有機化合物から形成される層は、有機化合物から形成される層となる有機化合物溶液を塗布する塗布法を用いて形成してもよい。この場合、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。これらの塗布法の中でも、膜厚をより制御しやすいという点で、スピンコート法やスリットコート法を用いることが好ましい。
また、有機化合物から形成される層を形成する方法は、塗布法を用いる方法に限定されるものではなく、例えば、有機化合物から形成される層の溶媒溶解性が低い場合などには、真空蒸着法や、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra−dilute Solution)法などを用いることが好ましい。
上記有機化合物から形成される層を、塗布法を用いて形成する場合に、有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、無機溶媒や有機溶媒、またはこれらを含む混合溶媒等を用いることができる。
無機溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒等が挙げられる。
これらの溶媒の中でも、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
次に、正孔輸送層7上に正孔注入層8と、陽極9とをこの順に形成する。
正孔注入層8は、例えば、酸化物層4と同様にして形成できる。
陽極9は、例えば、陰極3と同様にして形成できる。
以上の工程により、図1に示す有機EL素子1が得られる。
次に、このようにして形成された有機EL素子1を封止することが好ましい。図1に示す有機EL素子1は、無機化合物からなる層が含まれているHOILED素子であり、無機化合物からなる層を含まない有機EL素子と比較して、酸素や水に対する耐性が高いため、厳密な封止は必要ないが、必要に応じて封止を施しても良い。
封止工程としては、有機EL素子の封止に用いられる通常の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器内に有機EL素子1を接着する方法や、有機EL素子1の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。封止容器を用いて封止する場合、封止容器内に水分吸収材を封入してもよい。また、封止膜を形成する場合、封止膜に水分吸収材を含有させてもよい。
本発明の有機EL素子は、図1に示す有機EL素子1に限定されるものではない。
例えば、図1に示す有機EL素子1において、バッファ層5と発光層6との間に、電子輸送層を備えていてもよい。
図1に示す有機EL素子1が電子輸送層を有するものである場合、その材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの材料を用いてもよい。
具体的には、電子輸送層の材料として、フェニル−ディピレニルホスフィンオキサイド(POPy)のようなホスフィンオキサイド誘導体、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの電子輸送層の材料の中でも、POPyのようなホスフィンオキサイド誘導体、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体を用いることが好ましい。
電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、20〜100nmであることが、より好ましい。
電子輸送層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
また、本発明の有機EL素子においては、基板2上に陰極3と、無機の酸化物層4と、バッファ層5と、発光層6と、陽極9とがこの順に形成されていればよく、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層は、必要に応じて形成すればよい。
また、本発明の有機EL素子は、図1に示す各層の間に他の層を有していてもよいが、以下に示す各層からなるものであることが好ましい。すなわち、陰極3と、酸化物層4と、バッファ層5と、必要に応じて設けられる電子輸送層と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とがこの順に隣接して積層された有機EL素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
なお、上記構成の有機EL素子が電子輸送層を有さない場合には、バッファ層5と発光層6とが隣接することになる。
また、上記構成の有機EL素子が、正孔輸送層7、正孔注入層8のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層6と陽極9とに隣接して積層されることになり、正孔輸送層7と正孔注入層8の両方が設けられていない場合には、発光層6と陽極9とが隣接して積層されることになる。
本発明の有機EL素子においては、有機EL素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて例えば、正孔阻止層、電子素子層などを有していてもよい。
これらの層を形成するための材料としては、これらの層を形成するために通常用いられる材料を用いることができる。また、これらの層を形成する方法としては、これらの層を形成するために通常用いられる方法を用いることができる。
本発明の有機EL素子は、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。
本発明の表示装置は、優れた発光効率が得られ、安定して製造できる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えるものである。このため、表示装置として好ましいものとなる。
また、本発明の照明装置は、優れた発光効率が得られ、安定して製造できる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えるものである。このため、照明装置として好ましいものとなる。
「実施例」
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
(実施例1)
(有機EL素子の作製)
以下に示す方法により、図1に示す有機EL素子1を製造した。
[工程1]
基板2として、ITOからなる幅2mmのパターニングされた電極(陰極3)が形成されている平均厚さ0.7mmの市販されている透明ガラス基板を用意した。
そして、基板2を、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。その後、基板2を、イソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[工程2]
[工程1]において洗浄した基板2を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。スパッタ装置のチャンバー内を、約1×10−4Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、基板2上に膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作製した。酸化亜鉛層を作製する際には、メタルマスクを用いて、ITO電極(陰極3)の一部の上に、電極取り出しのため、酸化亜鉛が成膜されないようにした。その後、大気中、400℃にセットしたホットプレートで1時間焼成することにより、酸化亜鉛層(酸化物層4)を形成した。
[工程3]
市販のポリエチレンイミン(日本触媒製 P1000)0.5%エタノール溶液を作製し、このエタノール溶液に含まれるポリエチレンイミン(第1材料)と同じ質量の9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(SPPO1)(第2材料)を、0.5%エタノール溶液に加え、エタノールで1.5倍に希釈して混合溶液とした。また、[工程2]で作製した酸化亜鉛薄膜付き基板2をスピンコーターにセットした。そして、基板2上に混合溶液を滴下し、毎分2000回転で30秒間回転させ、バッファ層5を形成した。
混合溶液から作製したバッファ層5の平均厚さは30nmであった。
[工程4]
バッファ層5まで形成した基板2を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。ビス[10−ヒドロキシベンゾキノリネート]ベリリウム(Bebq)、トリス[1−フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq))、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)をそれぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、Bebqをホスト、Ir(piq)をドーパントとして35nm共蒸着し、発光層6を成膜した。この時、ドープ濃度はIr(piq)が発光層6全体に対して6重量%となるようにした。次に、発光層6まで形成した基板2をα−NPDを60nm蒸着し、正孔輸送層7を成膜した。
[工程5]
次に、一度窒素パージした後、三酸化モリブデン、金をアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−5Paまで減圧し、正孔輸送層7まで形成した基板2上に、三酸化モリブデン(正孔注入層8)を膜厚10nmになるように蒸着した。
次に、正孔注入層8まで形成した基板2上に、金(陽極9)を膜厚50nmになるように蒸着し、「素子5」を作製した。陽極9を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した素子5の発光面積は4mmとした。
(実施例2)
実施例1の[工程3]において、実施例1で作製した混合溶液に、SPPO1の質量に対してリチウムキノリン(第3材料)を1%、5%、10%加えて、三種類の混合溶液を作製した。実施例1の[工程3]において、バッファ層5を形成する際に用いた混合溶液に代えて、三種類の混合溶液をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、素子6(リチウムキノリン1%)、素子7(リチウムキノリン5%)、素子8(リチウムキノリン10%)を作製した。
作製したバッファ層5の平均厚さはいずれも20nmであった。
(比較例1)
[工程3−1]
市販のポリエチレンイミン(日本触媒製 P1000)の1%、5%および10%エタノール溶液を作製した。実施例1の[工程3]において、バッファ層5を形成する際に用いた混合溶液に代えて、各ポリエチレンイミン−エタノール溶液を成膜に用いた以外は実施例1と同様にして、素子1(ポリエチレンイミン1%)、素子2(3)(ポリエチレンイミン5%)、素子4(ポリエチレンイミン10%)を作製した。
ポリエチレンイミン1%溶液から作製したバッファ層の平均厚さは1nm、ポリエチレンイミン5%溶液から作製したバッファ層の平均厚さは5nm、ポリエチレンイミン10%溶液から作製したバッファ層の平均厚さは10nmであった。
(素子1〜8の発光特性測定)
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。また、コニカミノルタ社製の「LS−100」により、発光輝度を測定した。さらに、測定した電流密度と輝度および発光スペクトルから外部量子効率を算出した。
なお、5%ポリエチレンイミン溶液を用いた素子については、測定場所Aと、測定場所Aと異なる場所である測定場所Bとについて、それぞれ上記の各発光特性を測定した。以下、測定場所Aについての結果を素子2の結果といい、測定場所Bについての結果を素子3の結果という。
(素子1〜4の発光特性)
図2(a)は素子1〜4の電圧印加と発光輝度との関係を示したグラフである。図2(b)は素子1〜4の電圧印加と電流密度との関係を示したグラフである。図2(c)は素子1〜4の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図2(a)に示すように、素子1〜4では、ポリエチレンイミン溶液の濃度が薄い(バッファ層の厚みが薄い)ほど、低い電圧で高い輝度が得られている。このことから、ポリエチレンイミンにより電子注入の速度は改善できるが、厚膜化すると駆動電圧が高くなり、優れた発光効率が得られないことがわかる。
図2(b)に示す素子1(1nm)のように、バッファ層の膜厚が薄すぎると電流のリークが観測される。また、図2(b)に示す素子4(10nm)のように、バッファ層の膜厚を厚くするとリークは抑制できるものの、電流が流れにくくなる。したがって、優れた発光効率を得るためには、素子2、3(5nm)のように、5%程度のポリエチレンイミン溶液を用いるのが好ましいと考えられる。
しかし、図2(c)に示すように、1%ポリエチレンイミン溶液を用いた素子1(1nm)と、5%ポリエチレンイミン溶液を用いた素子3(5nm)では、電流密度が10−5程度に抑えられているべき低い印加電圧の領域において、電流密度が高くなっている。このことから、素子1、素子3では、リークが発生していることが分かる。なお、素子2ではリークが観測されておらず、5%ポリエチレンイミン溶液を用いた素子2、3(5nm)では、バッファ層の膜厚が薄いため、測定場所によってリークが発生することが分かった。したがって、バッファ層がポリエチレンイミンからなるものであって膜厚が5nmである場合、優れた発光効率を有する素子を安定的に作製することができない。
(素子1〜8の発光特性)
表1に、素子1〜4(比較例)および素子5〜8(実施例)の素子の特性をまとめたものを示す。
Figure 0006037894
表1に示す電流密度の値から分かる通り、混合溶媒を用いた素子5〜8においては、電流のリークがほとんど観測されていない。これは、バッファ層の平均厚さが20nm以上であり、バッファ層がリークを抑制できる十分な膜厚を有しているためである。
また、素子4では低かった外部量子効率についても、素子5〜8については高い値が得られている。これは素子5〜8のバッファ層に含まれている電子輸送性のSPPO1により、バッファ層内で電子が輸送されたためと考えられる。
素子5で示す通り、ポリエチレンイミンとSPPO1の2種類の材料からなるバッファ層を形成した場合、十分な外部量子効率が得られる。素子7〜8に示すように、ポリエチレンイミンとSPPO1とLIqの3種類の材料からなるバッファ層を形成した場合には、さらに高い外部量子効率が得られている。
図3は素子5〜8の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図3に示すように、ポリエチレンイミンとSPPO1とLIqの3種類の材料からなるバッファ層を形成した素子6〜8を、ポリエチレンイミンとSPPO1の2種類の材料からなるバッファ層を形成した素子5と比較すると、電流が良好に流れている。これはリチウムキノリン(Liq)の化学的なドーピングにより、バッファ層の電子輸送性が向上したためであると考えられる。
(実施例3)
[工程3−2]
市販のポリエチレンイミン(日本触媒製 P1000)0.5%エタノール溶液を作製し、このエタノール溶液に含まれるポリエチレンイミン(第1材料)と同じ質量の9,9−スピロビフルオレン−2−イル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(SPPO1)(第2材料)を、0.5%エタノール溶液に加え、さらにSPPO1の質量に対してリチウムキノリン(第3材料)を1%加え、混合溶液とした。
このようにして得られた混合溶液を、実施例1の[工程3]において、バッファ層5を形成する際に用いた混合溶液に代えて成膜に用いた以外は、実施例1と同様にして「素子9」を作製した。
また、素子9の作製に使用した混合溶液をエタノールで1.5倍に希釈した混合溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして「素子10」を作製した。
素子10において作製したバッファ層の平均膜厚は30nmであった。また、混合溶液を希釈せずに使用して作製した素子9のバッファ層の膜厚はそれよりも厚いものであった。
(素子9、10の発光特性)
素子9、10について、それぞれ素子1と同様にして素子への電圧印加と、電流測定を行った。また、素子9、10について、素子1と同様にして発光輝度を測定し、外部量子効率を算出した。その結果を図4に示す。
図4(a)は素子9、10の電圧印加と発光輝度との関係を示したグラフである。図4(b)は素子9、10の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図4に示すように、素子9と素子10とを比較すると、バッファ層の厚みが薄い素子10の方が、低い駆動で高い輝度が得られ、高い外部量子効率が得られた。また、素子9、10は、いずれも外部量子効率の最大値は15%程度であった。
(実施例4)
[工程3−3]
市販のポリエチレンイミン(日本触媒製 P1000)0.5%エタノール溶液を作製し、このエタノール溶液に含まれるポリエチレンイミン(第1材料)の質量に対して、ポリエチレンイミンとSPPO1(第2材料)の質量比が1:0.5、1:1.5となるようにSPPO1を0.5%エタノール溶液に加え、さらにSPPO1の質量に対してリチウムキノリン(第3材料)を1%加え、混合溶液とした。
このようにして得られた混合溶液を、実施例1の[工程3]において、バッファ層5を形成する際に用いた混合溶液に代えて成膜に用いた以外は、実施例1と同様にして素子11(ポリエチレンイミン:SPPO1=1:0.5)と、素子12(ポリエチレンイミン:SPPO1=1:1.5)とを作製した。
(素子11、12の発光特性)
素子11、12について、それぞれ素子1と同様にして電流密度と外部量子効率との関係を調べた。その結果を、素子9の結果とともに図5に示す。
図5は素子9、11、12の電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図5に示すように、素子9、11、12は、いずれも外部量子効率の最大値は15%程度であった。
1:有機EL素子、2:基板、3:陰極、4:酸化物層、5:バッファ層、6:発光層、7:正孔輸送層、8:正孔注入層、9:陽極。

Claims (11)

  1. 基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とがこの順に形成され、
    前記バッファ層が、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含むものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記バッファ層の平均厚さが5〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記バッファ層に含まれる第2材料の含有量は、10〜90質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記バッファ層が、前記第1材料および前記第2材料に化学的なドーピングが可能な第3材料を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記第1材料が、ポリアミンであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記第2材料が、ホスフィンオキサイド誘導体、金属錯体、ピリジン誘導体ポリエチレンイミンから選ばれるいずれか一種であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記第3材料が、リチウムキノリンまたは炭酸セシウムであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 前記陽極と前記発光層との間に正孔注入層が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 基板上に陰極と、無機の酸化物層と、バッファ層と、発光層と、陽極とをこの順に形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であり、
    前記バッファ層を形成する工程は、1〜4級のアミンを有する構造または炭素数2〜4のアルキレンオキシドを有する構造からなる第1材料と、電子を輸送する第2材料とを含む混合溶液を塗布する工程を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  10. 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする表示装置。
  11. 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備えることを特徴とする照明装置。
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